【開催報告】企業とNPO等の協働が社会課題解決への新たな一歩に「東京マッチング会 成果報告会」
東京都
JANPIAは2026年7月16日、「休眠預金活用団体(NPO等)×企業で社会的インパクトを!東京マッチング会 成果報告会」を東京・日比谷にて開催しました。会場とオンラインのハイブリッド開催で、参加者は150名(会場65名、オンライン85名)にのぼりました。本報告会では、2025年11月の東京マッチング会をきっかけに実現した、企業と休眠預金活用団体との連携事例を紹介。休眠預金活用事業における企業連携の意義や成果、今後の可能性について、資金分配団体、実行団体、連携企業それぞれの立場から共有されました。
JANPIAは2026年7月16日、「休眠預金活用団体(NPO等)×企業で社会的インパクトを!東京マッチング会 成果報告会」を東京・日比谷にて開催しました。会場とオンラインのハイブリッド開催で、参加者は150名(会場65名、オンライン85名)にのぼりました。本報告会では、2025年11月の東京マッチング会をきっかけに実現した、企業と休眠預金活用団体との連携事例を紹介。休眠預金活用事業における企業連携の意義や成果、今後の可能性について、資金分配団体、実行団体、連携企業それぞれの立場から共有されました。
<プログラム>
| 14:00~ | JANPIA・関経連 開会の挨拶 |
| 14:10~ | 休眠預金活用事業の概要の紹介、本会の趣旨説明 |
| 14:30~ | 事例紹介1 双方向の知見・リソース活用(イベントボランティア、職業講話、社内講演会) |
| 15:00~ | パネルディスカッション |
| 15:30~ | 事例紹介2 地域活性の協働プログラム(地域貢献企画に就労訓練プログラムを活用) |
| 15:50~ | パネルディスカッション |
| 16:20~ | クロージング(総括・北海道マッチング会の案内) |
| 16:30~ | 交流・名刺交換会 |
開会挨拶、休眠預金活用事業の概要の紹介・本会の趣旨説明
最初に、JANPIA理事長の二宮雅也が開会の挨拶を行いました。本事業について、「企業とのマッチング会は今回で5回目となり、回を重ねるごとに連携の質が高まり、つながりも広がっている。これまでに確認できた連携事例は90件に達した」と紹介。「企業が持つ経営資源と、ソーシャルセクターが現場で培ってきた知見や実践力が結び付くことで、単独では実現できない新たな社会的価値やインパクトを創出できる」と述べ、企業との協働が社会課題解決に果たす役割への期待を語りました。

次に、JANPIAの設立を主導した一般社団法人日本経済団体連合会から、専務理事の長谷川知子氏が代表として挨拶を行いました。長谷川氏は、「サステナビリティ課題の解決を中長期の経営戦略に取り入れることは、もはや一部の先進企業だけの取り組みではなくなっている」と説明。企業とNPO等を単につなぐだけでなく、双方の関心や強みを丁寧に整理しながら連携を形にしていく伴走支援の重要性に触れ、「JANPIAが担う役割は非常に大きい」と期待を寄せました。

動画〈YouTube〉|開会の挨拶[外部リンク]
休眠預金等活用制度が目指す、多様な主体による社会課題解決
続いて、JANPIA企業連携チームの太田和正から、休眠預金等活用制度の概要と、本報告会の趣旨について説明が行われました。

休眠預金等活用制度は、10年間取引のない「休眠預金」の一部を活用して、公的制度だけでは十分に対応することが難しい社会課題の解決を目指す仕組みです。JANPIA、資金分配団体、実行団体による三層構造を基盤としながら、多様な組織との連携を促進しています。 その中で太田は、「複雑化・多様化する社会課題の解決には、一つの組織だけでは限界がある」と述べ、JANPIAが企業と資金分配団体・実行団体をつなぐ「触媒」として機能し、それぞれの強みを生かした協働を支援していることを紹介しました。

動画〈YouTube〉|概要紹介[外部リンク]
資料〈PDF〉|休眠預金制度・事業のご紹介および本報告会の趣旨のご説明
事例紹介に先駆けて、ファシリテーターを務めた株式会社NTTデータグループの金田晃一氏は、企業における社会参画の新たな潮流として、「ERG(Employee Resource Group/従業員リソースグループ)」を紹介しました。ERGとは、社員が自ら集まり、それぞれが関心を持つ社会課題の解決や、社内外への提案活動に取り組む自主的な活動です。金田氏は、こうした動きが今後さらに広がっていく可能性に触れ、「企業とNPOの協働のあり方も新たな段階に入りつつある」と期待を示しました。
動画〈YouTube〉|ファシリテーター紹介[外部リンク]
資料〈PDF〉|NTTデータ金田氏登壇資料
事例① 企業とNPOが互いの強みを生かし、若者支援の輪を広げる
事例紹介では、資金分配団体の認定NPO法人キッズドア(以下、キッズドア)と、実行団体のNPO法人キャリアbase(以下、キャリアbase)、そして連携企業である有限責任 あずさ監査法人(以下、あずさ監査法人)の3者による取り組みが紹介されました。

キッズドアは、発達障害やメンタルヘルスの不調、家庭環境などのさまざまな要因により、高校中退や不登校、進路未決定のまま卒業するリスクのある若者の支援をしています。
キッズドアの大橋早由里氏は東京マッチング会を振り返り、プレゼンテーションや対話セッションを通じた企業との接点づくり、名刺交換後のスピード感を持ったコミュニケーションなど、今回の連携を実現する上でのコーディネーターとしての関わり方について報告しました。
キャリアbaseは、「学校と社会の架け橋に」をスローガンに、1都3県の通信制高校に通う生徒を対象としたキャリア教育や就労支援の実施、拠点となる千葉県では「居場所」の運営を通して若者を支援しています。理事長の草場勇介氏は、今回の連携について、通信制高校生のためのクリスマス会へあずさ監査法人の社員がボランティア参加したこと、同法人内のランチタイム講演会に草場氏が登壇したことなどを報告。「生徒にとって親や先生以外の多様な大人と出会い、話す体験が自己肯定感を高めるステップになった」と語りました。
あずさ監査法人では、「機会格差のある若者への教育と就労支援」を注力テーマとして、社員に対してボランティア機会の提供や、勉強の場を設けるなど、社会課題への取り組みを進めています。広報部の菅野香織氏は今回の連携を振り返り、クリスマス会への参加者募集が30分ほどで定員に達したこと、ランチタイム講演会に85人以上が参加したことから、「社会課題に関わりたい社員が想像以上に多いことを実感した」と話し、「共感できるテーマであること」「企業とNPOが互いの前提の違いを理解すること」「小さくてもまず始めること」が連携を成功させる上で重要だったと報告しました。
「まず関わることから始まる」――企業とNPOが現場で見つけた、それぞれの役割
事例紹介後のパネルディスカッションでは、キッズドア、キャリアbase、あずさ監査法人、JANPIAの登壇者が、今回の連携が生まれた背景や、企業とNPOが協働する上で大切にすべきことについて意見を交わしました。

あずさ監査法人の菅野氏は、通信制高校は身近な存在ではなかったため、当初は戸惑いがあったとしつつ、クリスマス会での高校生との交流を通して感じた温かい空気感を振り返り、連携企業にとっては、まず現場を見に行くことが大切だと話しました。
キャリアbaseの草場氏もあずさ監査法人について、「クリスマスらしい仮装をして現場に来てくださって、生徒と同じ目線で接していただけたのがありがたかった」と話し、「いかにも“視察”という雰囲気で腕組みをした人たちに来られると、生徒は警戒する」と、企業側が現場に来る際の注意点についても共有しました。
キッズドアの大橋氏はコーディネーターの立場から、企業とNPOの間には、互いの考えや期待値が見えにくい部分があると指摘。その点で、今回の連携では早い段階で企業側が現場に足を運んだことが功を奏したと話し、実際に会って人となりを知った上で意思疎通を図ることの重要性を強調しました。
JANPIAのキッズドア担当プログラムオフィサーの菅﨑真輝も、今回の連携について、「お互いの知見・リソースを活用し、双方向で刺激し合いながら生まれた理想的な事例だった」と振り返り、今後については、「将来的には社会貢献活動だけでなく、事業を生み出すような企業連携へと発展させたい」と期待を寄せました。
動画〈YouTube〉|事例紹介①[外部リンク]
資料〈PDF〉|【コーディネーター】認定NPO法人キッズドア
資料〈PDF〉|【連携団体】NPO法人キャリアbase
資料〈PDF〉|【連携企業】有限責任 あずさ監査法人
事例② 農福連携を通じた地域との協働が、新たな可能性を生む
続いて紹介されたのは、資金分配団体の公益社団法人日本フィランソロピー協会(以下、日本フィランソロピー協会)、実行団体の社会福祉法人土穂会(以下、土穂会)、連携企業のENEOSリニューアブル・エナジー株式会社(以下、ENEOSリニューアブル・エナジー)による取り組みです。

日本フィランソロピー協会は、「健全な民主主義社会の実現」を使命として、主に企業とその従業員による社会貢献活動や慈善活動を支援する中間支援団体です。休眠預金活用事業では、農業に障がい者等の就労の機会をマッチングする「農福連携」を地域で推進する仕組みづくりをしています。同協会の石川紗織氏は、資金分配団体として、実行団体と企業の連携を進めていくためには「知らないことに共感は生まれない。まずは課題や取り組みを知ってもらうことが必要」と語りました。東京マッチング会においても、企業との連携を希望する実行団体のニーズを言語化し、企業にしっかりと伝えられるように、資料づくりをサポートしました。
土穂会は、心身に障がいのある方への就労支援や生活支援を行う団体で、休眠預金活用事業においては、千葉県夷隅地域で「農福連携」を進めるべく、就労困難者と農家のマッチングや、就労支援プログラムなどを実施。また、いすみ市で就労困難者と地域住民が一緒に農作業を行うユニバーサル農園「はじめの一歩農場」も運営しています。職員の内野美佐氏は、ENEOSリニューアブル・エナジーとの連携について、「担当の近藤さんが名刺交換の翌日に農場に足を運び、実際に作業を体験してくれた姿勢に信頼感が湧いた」と振り返ります。その後、同社が主催する農泊企画に「はじめの一歩農場」を組み入れる形で、1泊2日の地域活性協働プログラムを企画。プログラム実施を経て、企業との協働では「福祉の言葉ではなく、企業に伝わる言葉を使うこと」「企業の目的や担当者の思い、意思決定、スケジュールなど、相手を理解すること」などが大切だと強調しました。
ENEOSリニューアブル・エナジーは、地域との共存・共栄と信頼関係の構築を重視し、持続可能な社会に貢献するため、取り組みを進めています。地域連携・共創グループの近藤有希氏は今回の連携について、「参加者が地域に滞在し、地域の方と直接会話してもらうこと」「単に作業を手伝うだけでなく、地域に溶け込むことの楽しさを知ってもらうこと」を重視したと語りました。また、当該プログラムを題材にした社内研修に参加した社員からは、「地域と企業の双方の思いや、丁寧な対話の共有を経て、はじめて共創というアクションにつながるのではないか」「地域の歴史や文化を学びながら共通体験を積み上げることの重要性を改めて認識した」といった声が上がったといいます。
信頼関係から生まれる――地域共生につながる協働のかたち
続くパネルディスカッションでは、日本フィランソロピー協会、土穂会、ENEOSリニューアブル・エナジー、JANPIAの登壇者が、農福連携の取り組みを通じて生まれた企業と地域の協働について振り返りました。

今回の連携で特徴的だったのは、担当者同士の信頼関係が、法人間の協働へと発展していった点です。土穂会の内野氏は、ENEOSリニューアブル・エナジーの近藤氏について、「協力できることはありますか、と聞かれることは多くても、実際に長靴で現場に来てもらえることは稀」「どんな目的でどういうことをしたいかを早い段階で腹を割って話し合い、互いに関わることの利点を見つけることができた」と語りました。
近藤氏も、「企業から一方向に支援するのではなく、お互いにアイデアを出しながら進められたことがよかった」とコメント。土穂会から具体的な提案や新しい視点が示されたことで、企業側も取り組みの可能性を広げることができたと語りました。
日本フィランソロピー協会の石川氏は、「これまでの伴走支援の経験から、情報を整理すること、企業とやりたいことを言語化できたことが結果につながった」と振り返り、ロジックモデルなどを活用しながら、目指す成果や連携の可能性を整理することが大切だと語りました。
また、JANPIAの助成事業部長であり、企業連携チームのリーダーを務める内田淳は、内野氏と近藤氏の信頼関係に加え、企業としてENEOSリニューアブル・エナジーが地域との共創を重視していることも、マッチングが成功する要因となったのではないかと語りました。企業とNPO、それぞれが持つ強みを生かして地域や社会の課題解決に向けて共に取り組むためには、制度や仕組みだけではなく、人と人とのつながりが欠かせないことが改めて示されました。
連携の第一歩は「知ること」「関わること」から
クロージングでは、まずJANPIAの内田が全体の総括を述べました。内田は「件数だけでは見えない連携の中身を、今回の成果報告会では立体的に示すことができた」と伝え、双方にとってメリットのある関係性が築かれていることを振り返りました。また、「支援してください」という一方向の関係ではなく、企業と団体が互いの強みを生かしながら取り組むことの重要性を強調。「関わることから始まる。まず知ること、知った上で行動することが大切」と語り、報告会を締めくくりました。
続いて、認定NPO法人北海道NPOファンド(以下、北海道NPOファンド)の高山大祐氏より、11月6日に開催される「北海道マッチング会」についての紹介が行われました。初の北海道開催となる今回は、2つの資金分配団体「北海道NPOファンド」「NPO法人北海道エンブリッジ」との共催となります。

成果報告会終了後には交流・名刺交換会も開催され、企業担当者、実行団体、資金分配団体など多くの参加者が活発に交流しました。会場では、名札の色分けによって所属が分かる工夫もされ、参加者同士が自発的に声をかけ合う姿が見られました。


JANPIAでは、今後も企業をはじめとする多様なセクターとの連携を促進し、社会課題の解決に向けた取り組みを推進していきます。
