取材記事

休プラ編集部

連載「ガバナンス支援の現場から」 Vol.2 -資金分配団体から活動支援団体へ――「知識・意識・行動」で取り組む、ジャパン・プラットフォームのガバナンス体制整備支援-

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連載「ガバナンス支援の現場から」 Vol.2 -資金分配団体から活動支援団体へ――「知識・意識・行動」で取り組む、ジャパン・プラットフォームのガバナンス体制整備支援-

休眠預金活用事業では、休眠預金を原資に、社会課題の解決に取り組む団体への支援が行われています。なかには、災害時の緊急支援事業なども実施されており、こうした取組を着実に進めるためには、透明性・公正性の確保に加えて、緊急時でも確実な意思決定と資金執行等を行うことができる組織基盤が欠かせません。その土台となるのが、ガバナンス・コンプライアンスの整備です。

本シリーズでは、休眠預金活用事業に携わる団体の皆さんが、ガバナンス・コンプライアンスの整備にどのように取り組み、それを組織の成長や事業の成果へとつなげているのかを、具体的な事例を通じて紹介します。第2回は、資金分配団体・活動支援団体である特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム(認定NPO法人)の取組を取り上げます。

国内外で緊急人道支援を担う、「ジャパン・プラットフォーム」 

JPFの設立25周年記念ページより

特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム(以下、JPF)は、2000年に発足した民間団体で、災害や紛争などに伴う国内外の緊急人道支援に取り組んできました。設立以来、総額967億円以上、65以上の国・地域において、2,400件以上の事業を実施してきた実績を有します。(2025年7月現在)

休眠預金活用事業には制度開始初期の2019年度から参画し、資金分配団体や活動支援団体として主に4つの領域に取り組んでいます。1つ目は災害時に迅速な支援を行う緊急災害支援、2つ目は防災・減災の観点から、平時の備えや初動対応の体制整備を進める災害対応準備の支援、3つ目は災害対応に備えて支援の担い手を増やすため、活動支援団体として行う団体の基盤強化、そして4つ目が制度や言語の壁等により災害時などに支援が届きにくい在留外国人の支援です。

JPFの特徴の一つは災害など「緊急」の局面における迅速な支援です。平時から緊急事態を見据えた支援体制をコミュニティと連携しながら整え、資金管理の厳格性をはじめとする適切な運用体制を確保した上で、発生時には迅速な判断のもと、出動・助成を行っています。本インタビューでは、国内事業部長の藤原航さん、アドバイザーの阪田斉弘さん、活動支援事業担当の小宮ふゆきさんにお話を伺い、ガバナンス支援を軸に、その取組の背景から理念、具体的な支援内容までを紐解きます。

「緊急時」に備える鍵は、ガバナンス・コンプライアンスの整備

–––ガバナンス・コンプライアンスの整備に力を入れることとなった経緯を教えてください。

藤原航さん(以下、藤原)「きっかけとなったのは、休眠預金活用事業への応募でした。国内支援は、ODA(政府開発援助)などで公金が充てられる海外支援とは異なり、主な財源が民間寄付であるため、慢性的に資金が不足しがちです。だからこそ、『なんとか資金を獲得したい』という切実な思いが出発点だったと思います」

JPF国内事業部長の藤原航さん

–––JPFが取り組む「災害支援事業」の特性を教えてください。また、それらはガバナンス・コンプライアンスの整備とどのように影響しているでしょうか?

藤原「特性は大きく2つあり、どちらもガバナンス・コンプライアンス整備と密接に関わっています。1つ目は資金調達面です。災害対応は支援ニーズが災害発生直後など特定の時期に集中しやすく、迅速に資金を集める力が求められます。近年は、寄付をくださる企業を中心に、活動実績だけでなくガバナンス・コンプライアンスが整っている団体に寄付をしたいという傾向が強まっているように感じています。つまり、平時から体制を整えておくことが、信頼を得て資金調達を安定させる前提になっています。2つ目は実務面です。災害時は短期間で業務量が急増し、支出も大きく膨らみます。ルールや手続きが曖昧なまま対応してしまうと、後から不備が発覚したり事故が発生したりするリスクが高まります。そのため、ワークフローやルールの整備は、中長期的には資金調達の基盤となり、短期的には現場のリスクを抑えることにつながります。こうした特性を踏まえ、JPFでは団体の規模や人員、活動内容などの違いを丁寧に確認しながら、各団体の実情に合わせたオーダーメイド型で規程類の整備を支援しています」

資金分配団体から活動支援団体へ――中長期を見据えたガバナンス・コンプライアンス整備支援

–––資金分配団体として、ガバナンス・コンプライアンス整備においてどのような課題や問題意識がありましたか? あわせて、活動支援団体としても取り組まれることとなった背景を教えてください。


阪田斉弘さん(以下、阪田)「これまでの資金分配団体としての活動を通じて、団体ごとにガバナンス・コンプライアンスの整備状況や組織内の浸透状況に大きなばらつきがあることを課題に感じていました。こうした状況を踏まえ、2023年度から活動支援団体として『災害に対応できる民間支援団体の増加と基盤強化事業』に着手しました。これは、休眠預金活用事業への参画を検討しているものの、規程類の整備に対して課題感を持っている団体が、ガバナンス・コンプライアンス体制をあらかじめ整えておくことで、速やかに応募できるよう支援する事業です。災害支援に携わる団体の数を増やしていくうえで、ガバナンス・コンプライアンス整備がハードルになっている現状を変えたいという思いがありました」

JPFアドバイザーの阪田斉弘さん

–––資金分配団体としての伴走と、活動支援団体としての伴走では、支援の位置づけにどのような違いがありますか?

藤原「資金分配団体として実行団体を伴走する際は、採択後に速やかに事業を進める必要があるため、活動と並行して規程類の整備を支えるなど、実務的な支援が中心になります。一方で、活動支援団体は、相談者の立場でじっくり対話し、団体の中長期的なあり方まで含めて整理していくことができます。規程類を何度も修正するのは効果的ではないため、団体からこれまで災害時の活動や強み、今後の方向性を丁寧に聞き取り、現状の規程類の過不足を明らかにしたうえで、休眠預金活用事業の応募に必要な規程と、継続・発展のための体制整備を切り分け、中長期の見通しを持って支援を進めています」

阪田「資金分配団体としての伴走は、規程類の文言追加や表現調整といった最低限の整備にとどまる場合があります。一方、活動支援団体としては『なぜこの項目が必要か』という理解づくりから始めることができます。最終的に休眠預金活用事業で求められる必須58項目を揃えるだけでなく、研修等を通じて規程類が組織内で実際に機能するよう定着まで支援できる点が大きな違いです」

–––具体的にどのような研修を行っていますか?

小宮ふゆきさん(以下、小宮)「今回、支援対象団体として採択させていただいたのは8団体です。実質数名で運営されている小規模団体から数十名規模の団体まで、体制や規程類の整い具合はさまざまでした。そこでまず、各団体の運営体制のバランスを踏まえ、規模と実情に合った規程類の整備を重視しました。そのうえで、整備した規程類を、“他人ごと”ではなく“自分ごと”として捉えてもらえるよう研修を設計し、実施してきました。例えば、リスクマネジメントをテーマとした研修では、不祥事や事故が起こるプロセスを整理し、規程の必要性を実感できる内容としました。実際の不祥事事例も紹介して、どのように対処したのかについて当事者にお話しいただく研修も実施しています。た、利益相反については、『自団体では何が該当するか分かりづらい』といった声に応え、具体性を重視した内容としました。現在は、整備した規程類をどのように運営に活かすか、いかに維持継続させていくかに焦点を当てた研修も企画しています」

JPF研修を担当する小宮ふゆきさん

ガバナンス・コンプライアンスの整備がもたらす、多くの気づき

–––今回の取り組みには弁護士などの専門家も関わっているということですが、具体的にはどのような形で関与しているのでしょうか?

小宮「規程類が十分に揃っていない団体がゼロから58項目を網羅するのは負担が大きいため、JPFでは規程類のひな形も提供しています。規程類は団体内のルール基盤とものであるため規定類と団体の運営体制の平仄が取れるものであること、また法律的に問題がない・解釈の揺れが生じないように、弁護士の助言を受けながら団体規模に応じた2〜3種類のひな型を作成しました。また、私たちだけではなく、弁護士にも支援対象団体の方からの質問・相談にご対応いただける体制を整えています」

阪田「活動を進める中で、状況に応じて新たな規程が必要となり、弁護士に相談したケースもあります。例えば、通常は無報酬の役員が災害支援で長期間現地に入る際に、活動に対して報酬を検討したケースです。『報酬をどのような基準で、どのようなプロセスで決定するか』を弁護士に相談し、必要な手順や規程を追加したことがありました」

–––支援に対する団体からの評価や反響はどのようなものがありましたか?

藤原「資金分配団体としての伴走支援では、『休眠預金活用事業で求められている規程類を整備したことで、それ以外にも自分たちで整えるべき規程があることに気がつけた』という声がありました。結果として、体制整備に対する理解が深まったと受け止めています。また、一度規程類を整備したことで、次回の休眠預金事業への応募が円滑に進められたという話も聞いています」

小宮「活動支援団体として主に支援しているのは、『規程類の整備ができていないので支援してほしい』と手を挙げた団体です。整備が進んだことへの感謝に加え、『団体として何が必要か理解できた』といった意識の高まりも見られます。研修についても『ほかの職員にも参加させたい』『動画を共有したい』といった要望が寄せられる一方、ガバナンス・コンプライアンスを学ぶ機会が十分でない現状も明らかになりました。今後は、こうした学びの場を広げていきたいと考えています」

阪田「私たち自身もそうでしたが、これまでJPFで採択してきた53事業の実行団体のうち、多くが『休眠預金活用事業への応募を機に規程類の整備に着手した』と話しています。休眠預金活用制度は、日本のNPOのガバナンス・コンプライアンス整備を後押ししている側面があると感じています」

オンラインで実施した集合研修の一コマより

参加する人を増やし、支援活動を大きく広げていくために

–––今回の取り組みを踏まえ、今後どのような点を強化していきたいですか?

阪田「ガバナンス・コンプライアンスに対する理解は、実務者だけでなく意思決定層も含めて深めていく必要があると考えています。休眠預金活用事業の採択団体が公開している規程類を参照すれば、形式的に必要書類を整えることも可能ですが、それだけでは本質的な体制整備にはつながりません。研修は実務者が中心になりがちですが、団体のトップの意識や姿勢は、組織のあり方に大きく影響します。トップ自らが『私たちはどのような団体なのか』を言葉にし、内外に示していくことが不可欠だと感じています」

小宮「今後のガバナンス・コンプライアンス整備における課題は、休眠預金活用事業に取り組む団体同士の情報共有の場を広げること、そして、悩みが生じた際に安心して相談できる先をつくることです。私たちが活動支援団体として関われる団体数には限りがあるからこそ、どのようにしたら全体としての底上げができるのかを考える必要があると思っています。」

–––最後に、初めてガバナンス・コンプライアンス整備に取り組む団体へのご助言をお願いします。

阪田「資金分配団体としては、実行団体が決定した段階で、まずガバナンス・コンプライアンスに特化したミーティングを設け、実行団体に『なぜこの規程が定められているのか』を理解してもらうところから始めるとよいと考えます。例えば、経理責任者と出納責任者の峻別など、中小規模の団体では前提となる体制が整っていないこともあるため、その背景から説明していくと分かりやすいのではないでしょうか。PO(プログラムオフィサー)が定期的に意識づけを行うことも有効だと思います」

小宮「規程類は、その団体の実情に合っていなければ機能しません。形式だけ整えるのではなく、自分たちの組織のものとして理解し、維持し継承していくことが重要です」

藤原「全体の姿勢として、阪田から『知識・意識・行動』という標語の提案があり、私たちもこれを常に意識しています。災害支援事業もガバナンス・コンプライアンスも、最終的には行動に落とし込まれてこそ意味があります。支援対象団体向けの研修も、知識を得て意識を高め、それを日々の行動につなげることを目的に設計しました。この姿勢を忘れずにいることが大切だと考えています」

JPF25周年記念シンポジウム会場にて

休プラ編集部