取材記事

休プラ編集部

“誰も取りこぼさない社会”をどう実現するか。こども食堂支援から広がる、地域ネットワークのつくり方

全国対象事業

“誰も取りこぼさない社会”をどう実現するか。こども食堂支援から広がる、地域ネットワークのつくり方

子どもが一人でも行くことができ、無料、もしくは低価格で食事をとりながら、地域ともつながれる場「こども食堂」。現在、その数は全国で12,602カ所※にのぼります。特定非営利活動法人全国こども食堂支援センター・むすびえ(以下、むすびえ)は、こうした取り組みを支える中間支援団体です。休眠預金活用事業においては、2020年度の緊急支援枠で採択されて以来、資金分配団体としてさまざまな実行団体への助成を行ってきました。さらに活動支援団体としても採択されるなど、幅広い支援を展開しています。

今回は、2023年度の活動支援団体・プロジェクトリーダーを務める中谷純さんに、むすびえが取り組む活動支援団体としての取り組みやその意義について伺いました。

※むすびえ「こども食堂全国箇所数調査2025結果のポイント【確定値】」

食事提供だけではない、地域交流の拠点となる「こども食堂」の役割

 むすびえは、“こども食堂の支援を通じて、誰も取りこぼさない社会をつくる”ことをビジョンに掲げ、2018年に設立されました。これまで、こども食堂は「貧困対策」というイメージで捉えられがちでした。しかし、むすびえでは食事提供だけではなく、孤食の解消や地域交流、高齢者の生きがいづくりなど、子どもの貧困対策にとどまらず、子育て支援や地域づくりといった、さまざまな社会課題を包括的に予防するポテンシャルがある取り組みとして位置づけ、支援を続けています。

主な活動は、全国各地で、地域のこども食堂同士のつながり(ネットワーク)をつくり、交流を促進している団体(地域ネットワーク団体※)を支援する「地域ネットワーク支援事業」、こども食堂に対する企業や団体からの支援をつなぐ「企業・団体との協働事業」、こども食堂の実態の「調査・研究事業」の3つ。こども食堂が全国のどこにでもあり、誰もが安心して行ける場所となる環境を整えるとともに、多くの人が社会活動に参加できる未来を目指しています。

※地域ネットワーク団体:都道府県または市区町村単位で、公平・中⽴な⽴場から地域のこども⾷堂同⼠のつながり(ネットワーク)をつくり、交流を促進する団体。現在、47都道府県において都道府県単位で活動している団体が存在し、担い⼿は社会福祉協議会やNPO法⼈、⼀般社団法⼈、任意団体など多岐にわたる。

むすびえは、2020年度のコロナ禍における「緊急支援枠」から休眠預金活用事業に初めて採択され、その後も資金分配団体として「居場所の包括連携によるモデル地域づくり」(2020年度通常枠)や、「地域の居場所のトータルコーディネート事業」(2022年度通常枠)など、数々の事業に取り組んできました。

市区町村域での地域ネットワーク団体を、立ち上げから支援していく取り組み

現在、中谷さんが取り組んでいるのは、2023年度の活動支援団体として採択された、「こども食堂ネットワーク団体基盤強化への伴走支援プログラムと持続的な『学びあいプラットフォーム』構築支援事業」です。これは、主に都道府県域での地域ネットワーク団体の支援に取り組んできたむすびえが、近年立ち上げが活発化している市区町村域の地域ネットワーク団体へと支援対象を広げた事業です。立ち上げ初期フェーズの市区町村域の団体に対し、役割や機能の強化を図ることを目的としています。

具体的には、採択された5つの支援対象団体に対して、「共通プログラム」「個別伴走支援」「まなびあいプラットフォームの構築」の3つのアプローチで支援を進めています。

「共通プログラム」では、広報・ファンドレイジング(資金調達)のセミナーや団体基盤の整備、コミュニティ・オーガナイジング(仲間を集めて協働することで社会を変革する活動)の研修プログラムなどを全団体に提供しています。「個別伴走支援」は、各団体にむすびえから2〜3人1組の伴走者がつき、それぞれの組織の課題に応じたきめ細やかなサポートを行うものです。

また、「まなびあいプラットフォーム」は、地域ネットワーク団体の運営者やこれから運営を考えている方々に向けた登録制のオンラインプラットフォームです。仮想空間上で学び合いのプログラムや交流ができる「お宝ひろば」、登録者同士が情報交換を行う「お宝チャット」、全国の取り組みが閲覧できる参考情報のデータベース「お宝資料館」の3つを展開しています。このプラットフォームは、支援対象団体だけでなく、登録を希望した団体が参加可能です。

「お宝ひろば」内はアバターで自由に移動でき、近づくと映像と音声がつながり交流できる

中谷「『共通プログラム』は、専門家と連携して、支援対象団体向けに研修等を実施しています。また、『個別伴走支援』では一つひとつの団体への寄り添いを特に大切にしながら、それぞれの団体のフェーズに合わせた支援をしています。一方、『まなびあいプラットフォーム』は、都道府県域の地域ネットワーク支援で実績のあった取り組みを応用したものです。仮想空間で実践者同士がつながることで、私たちがアドバイスする以上に、より具体的な学び合いが生まれると考えています」

全員の合意を得ながら進めることで、団体に生まれた変化

支援対象団体として採択された5団体は、設立間もないところから、既に法人化しているところまで、成熟度や規模、抱える課題が大きく異なります。そのため、「個別伴走支援」では各団体の状況に応じた工夫が求められています。

中谷「最初の1年間は、地域ネットワーク団体への訪問をはじめ、地域での定例会議やイベントへの参加、ワークショップ等を通じて状況把握と関係性の構築に努めました。そのうえで、関係者の合意を得ながら事業の推進や組織改善を共に進めることができる体制をつくり、事業計画に沿って伴走を行いました」

例えば、「こども食堂を増やしたい」という団体もあれば、「まずは地域ネットワークを生み出したい」という団体もあるなど、地域ネットワーク団体内でも目標はさまざまです。

中谷「私たちから『これをやってください』と提示するやり方ではうまくいきません。だからこそ、各団体の状況を見極め、彼ら自身にできることをアウトプットしてもらい、合意形成を図りながら進めました。また、取り組みをさらに広げていくには、ステークホルダーをはじめとした周囲を巻き込んでいく必要があります。重要なのは、団体の一人ひとりに当事者意識を持って活動してもらうこと。実際に、これまで代表者中心で進めていた団体でも、『自分たちに何が担えるのか』を考えるようになり、メンバーが自律的に動き出すような変化が生まれています」

採択された「観音寺市子ども食堂ネットワーク」主催のイベントでは、地域のこども食堂やボランティアと連携し、約500人にカレーを提供

合意形成に欠かせないのが「対話」です。中谷さんは、当事者意識を育むうえでも、この対話の質が重要だといいます。

中谷「対話では多様な意見が出ますが、お互いの違いを認め合える場づくりが重要です。また、話し合いだけで終わらせず、情報を整理して全員が共通の認識を持てるように工夫しました。言語化するだけでなく、キーワードを表にしてまとめたり、イラストを使ってビジュアル化したりして、よりわかりやすく情報を共有できるようにしています」

「チーム制」で進める伴走支援。属人化を防ぐ仕組みとは

伴走支援においては、「伴走の質が個人のスキルに依存し、属人化してしまう」という課題がありました。むすびえは今回の事業で「チーム制」を取り入れ、この課題の解決を図っています。

中谷「伴走支援が属人化してしまうと、伴走の質にばらつきが生まれます。そこで今回は、むすびえ全体の伴走力を底上げするためにも、2人1組のチーム体制にし、経験や知見を担当者間で共有するとともに、起きていることをチーム内で相談しやすくしました」

具体的には、伴走者同士のペアミーティングと事業全体ミーティングを週1回実施するほか、隔週で伴走者のみのミーティングも行っています。これらの場で進捗や課題を共有し、自分たちだけでは解決が難しい課題は、別のチームにコメントをもらう仕組みにしています。さらに、中間報告の際も、特定の担当者が聞き取り調査をして報告書にまとめるのではなく、伴走者全員が考えていることを率直に出し合う「ワークショップ形式」を採用。多角的な視点を報告書に反映させています。全員が安心して本音を話し合えるような「場」をつくり出すことも、中谷さんが心を砕いた取り組みの一つです。

各団体が抱える共通課題をケースで考え、現場に活かす実践型の合同研修会も実施

中谷さんは「団体と伴走者のペアで難しければ全体で相談し、それでも難しいときは団体の他のメンバー、外部の専門家や他団体と連携すればいい。地域ネットワーク支援では、こうした連携が自然にできる環境づくりが大きな意味を持ちます」と、現場に寄り添うミクロな視点と、全体を俯瞰するマクロな視点の両立の大切さを語ります。
 
伴走支援では、支援先に寄り添い、相手の立場に立って考える姿勢が重要である一方、全体を俯瞰する視点も欠かせません。そのバランスをどのようにとっていけばよいのかという課題に対しても、チーム制での取り組みが有効に機能しています。

支援のための仕組みを整え、自律的な広がりを目指して

むすびえでは、伴走支援をより体系化するため、支援に必要な能力やそのあり方の研究・開発にも取り組んできました。伴走支援を5つのステージに整理し、各段階で求められる能力を言語化。これらは、担当者にとってどのような姿勢や能力を身につければいいのかを考えるうえでの参考となっています。

中谷「伴走支援の意図的な協働関係には『コンサルタント』『メンター』『コーチ/ファシリテーター』『コーディネーター』などがあり、必要な力は非常に多岐にわたります。もちろん、すべての能力を備えるのは難しいですが、こうしたあり方を意識して伴走に臨むことで、よりよい協働や伴走先との信頼関係の構築につながっていると感じています」

参加者が手を挙げて意見を交わす、活気あふれるキックオフ研修会の様子

本事業においてむすびえが目指すのは、伴走する地域ネットワーク団体が、それぞれの地域に根ざしながら自律的に活動を展開できるようになること。立ち上げ初期フェーズにある団体に対して基盤づくりを支援しつつ、最終的には各地域の中核として人や資源をつなぎ、活動が継続的に広がっていく状態の実現を重視しています。

中谷「こども食堂に関わる活動は、『子どもたちや地域のために何かしたい』という自律的な思いから始まっています。本事業でも、その主体性を大切にしています。外から支えるだけでなく、それぞれの団体が地域における必要性を自ら納得し、自分たちの力で動き続けられる状態をつくることが重要だと考えています」

さらに、その広がりを支えるカギとなるのが「対話」だと、中谷さんは語ります。

中谷「私たちの理想は、“こども食堂の支援を通じて、誰も取りこぼさない社会をつくる”ことです。その実現に向けては、各地に土台を築くことが欠かせません。本事業でも、対話を通じて地域の人たちと関係を育み、輪を広げていきます。そのうえで、一つひとつの地域でそれぞれが役割を担い、協働し、共によりよい社会へとつなげていきたいですね」

画像提供:認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ

■事業基礎情報

活動支援団体特定非営利活動法人全国こども食堂支援センター・むすびえ
事業名こども食堂ネットワーク団体基盤強化への伴走支援プログラムと持続的な「学びあいプラットフォーム」構築支援事業
採択事業年度2023年度活動支援
活動対象地域全国
支援対象団体やちよ子どもネットワーク
やちよ子どもネットワーク基盤強化と地域資源の共有・循環促進事業

こどもまんなか居場所ネットワーク沖縄
沖縄県全域のこどもの居場所ネットワーク立上げと基盤強化事業

観音寺市子ども食堂ネットワーク
観音寺市子ども食堂ネットワーク基盤強化のための学びあいプラットフォーム構築事業

ひのみんなの食堂ネットワーク
こども食堂ネットワーク団体基盤強化への伴走支援プログラムと継続的なネットワーク運営事業

特定非営利活動法人 あいあう
妙高市の子ども支援団体ネットワークの発足とあいあうの組織基盤強化

休プラ編集部