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休プラ編集部

子ども・若者支援×起業家育成のシナジーが支えた持続可能な組織基盤づくり|連載「ガバナンス支援の現場から」Vol.4

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子ども・若者支援×起業家育成のシナジーが支えた持続可能な組織基盤づくり|連載「ガバナンス支援の現場から」Vol.4

社会課題の解決に取り組む団体が持続的な活動を展開していくうえで、ガバナンス・コンプライアンスの整備は強固な土台となります。特に、創業期や成長期の団体にとっては、規程整備や会計・労務管理の体制づくりといった組織基盤の強化が、事業の継続や社会的信頼の獲得につながります。

連載「ガバナンス支援の現場から」では、休眠預金活用事業に携わる団体が、ガバナンス・コンプライアンスの整備にどのように取り組み、それを組織の成長や事業の成果へとつなげているのか、具体的な事例を通じて紹介します。第4回となる今回は、子ども・若者支援に専門性を持つ認定NPO法人カタリバ(以下、カタリバ)と、起業家支援・中間支援で豊富な実績のある認定NPO法人ETIC.(以下、エティック)がコンソーシアムを組み、実行団体の組織基盤強化に挑んだ事例を取り上げます。

実行団体の成長を支えるため、組織基盤強化の伴走支援に参画 

エティックは、1993年の活動開始以来、起業家育成や社会課題解決に挑むリーダーの支援に取り組んできました。地域に根差したプレイヤーへの経営ノウハウや資金の提供、ネットワーク形成支援などを通じ、数多くの社会起業家や団体の成長を後押ししています。
休眠預金活用事業においては、2019年度通常枠「子どもの未来のための協働促進助成事業」に始まり、資金分配団体として数多くの事業に携わっています。



今回紹介する2021年度通常枠「地方における10代の居場所づくり支援事業」では、法人カタリバを幹事団体とするコンソーシアムに参画しました。
本事業は、10代の居場所(ユースセンター等)の立ち上げや運営に挑戦する全国各地の団体を支援するものです。子ども・若者支援に関する専門的なノウハウを持つカタリバに対し、エティックは起業家育成や組織運営支援の知見を活かし、ガバナンス・コンプライアンスを含む組織基盤強化の支援をはじめとする、起業支援ノウハウの移転と共同での伴走を担いました。


では、エティックはどのような課題を見据え、どのような伴走支援を行ったのでしょうか。今回の事業を中心となって進めた、エティック ソーシャルイノベーション事業部・シニアコーディネーターの白鳥環さんと、規程整備等に携わったローカルイノベーション事業部 事務局の西谷緑さんにお話を伺いました。

エティック ソーシャルイノベーション事業部・シニアコーディネーターの白鳥環さん
エティック ローカルイノベーション事業部 事務局の西谷緑さん

創業期の実行団体が抱える組織運営上の課題

–––「地方における10代の居場所づくり支援事業」にコンソーシアムとして参画された背景を教えてください。

白鳥環さん(以下、白鳥)「実はカタリバさんは、2001年の創立時にエティックが創業支援をした団体です。その後、組織として大きく成長され、自らの実践知を全国各地の団体へ広げていくフェーズに入りました。一方で、全国の団体を支援する中間支援の役割や、伴走支援・助成事業の運営については新たな挑戦でもありました。そこで、『地域で活動する団体の成長を支援したいが、どのような仕組みや支援体制が必要なのか』というご相談をいただいたことが、今回のコンソーシアムを組んだきっかけです」


–––事業開始前、実行団体の組織運営・ガバナンス面に対してどのような課題があると考えていましたか?

白鳥「今回の事業は、全国各地で10代の居場所(主に中高生世代のための、家庭でも学校でもない「第三の居場所」)を立ち上げや運営に挑戦する団体の創業・成長を支援するものです。対象となる団体は、子ども支援に関する活動実績はある一方で、組織のガバナンスやコンプライアンスに関する知見はまだ十分でないケースが多いと想定していました。実際、子どもと向き合う現場経験は豊富でも、人を雇用した経験がない、法人運営をしたことがない、会計や契約実務に携わったことがないという団体も多くいます。そうした団体が地域の中で継続的に活動し、信頼を得ながら成長していくためには、組織基盤の整備が欠かせないと考えていました」


–––特に重視していたことは何だったのでしょうか。

白鳥 「私たちが最も重視していたのは、『経営者やリーダーの成長』です。会計や労務の知識は、伴走支援や研修などを通じて身につけていくことができます。しかし、ガバナンスやコンプライアンスの重要性を理解し、地域社会に対して責任を持つ組織をつくろうとする姿勢は、知識だけでは身につきません。
組織を動かすのは人です。だからこそ、地域で信頼される経営者として成長しようとする意識や、自ら学び、柔軟に変化し続ける姿勢を持った方かどうかを、実行団体を選定する段階から重視していました。そのため審査には、実際に組織運営や事業経営の経験を持つ方々にも審査員として関わっていただきました」



–––支援に向けては、どのような準備を行ったのでしょうか。

白鳥 「カタリバさんと議論を重ねながら、団体の成長を段階的に捉え、その達成度を測るためのルーブリックを設定しました。
居場所運営や子ども支援の専門性についてはカタリバさん、経営計画の策定や組織運営、ガバナンス・コンプライアンスの整備についてはエティックが中心となり、それぞれの観点から検討しました。
各実行団体の成長段階に応じて何が必要なのかを明確にしながら、伴走支援を進めるための土台づくりを行ったのです」

–––カタリバとの役割分担はどのようなものでしたか。

白鳥「大まかには、経営や組織基盤強化支援はエティック、子ども支援の専門領域はカタリバさんという役割分担でした。ただし、実際の支援では、必ず両団体から1名ずつ参加し、伴走チームとして対応していました。実行団体への支援だけでなく、お互いの知見を共有しながら、より良い伴走支援のあり方を一緒に模索していきました。
私たちも、子ども支援や居場所運営について学ばせていただきましたし、カタリバさんにも経営や組織運営の考え方をお伝えしてきました。支援そのものが、お互いの学び合いの場にもなっていました」

ガバナンス・事務局機能・現場機能の3つの視点で支援を実施

–––採択後、実際の支援はどのように進められたのでしょうか。


白鳥「まず私たちは、ガバナンス・コンプライアンスをできるだけ具体的な機能に分解して考えました。ガバナンスやコンプライアンスという言葉だけでは抽象的で、創業期の団体にとっては何から取り組めばよいのか分かりにくい部分があります。そこで、『ガバナンス』『事務局機能』『現場機能』の3つの観点から整理し、それぞれに必要な支援を進めていきました」


白鳥「ガバナンスについては、『理事会が適切に機能すること』を重視しました。経営チームとの定期的な面談を通じて、理事会の構成や運営状況、意思決定の方法などを確認しながら、団体の成長フェーズに合わせて助言を行いました。
また、利益相反への対応や理事会議事録の整備などについても、ガイドラインやフォーマットを提供しながら支援しました。組織が成長していく過程では、適切な理事会の組成だけではなく、理事会に集中していた権限を現場へ適切に委譲していくことも重要なテーマでした」


白鳥「事務局機能を支援するために、弁護士・税理士・社会保険労務士による専門家チームを組成しました。会計や労務、契約実務などの基礎知識を学ぶ研修を実施したほか、個別相談や面談も行いました。
実際には、『初めて職員を雇用する』『納税手続きが分からない』『契約書を確認してほしい』といった相談も少なくありませんでした。日々の精算や会計処理、雇用管理など、団体運営の基礎となる部分について、実情を聞きながら必要な支援を提供していきました。
また、事業期間中は定期的な相談会も開催しました。この取り組みは、休眠預金活用事業終了後も、カタリバさんの自主事業として『バックオフィス相談会』という形で継続されています」



白鳥「現場機能については、主にカタリバさんが中心となって、ユースセンター運営に関するリスク管理研修や各種フォーマットの提供を行いました。
カタリバさんからは、ユースワーカーとして子どもたちに適切な関係性を築くための研修や、各種のフォーマットや規約類の使い方に関する実践的な知識を伝えていただいたほか、現場訪問も実施し、防火設備や避難経路、トラブル発生時の対応体制なども確認しながら改善を支援しました。子どもの居場所づくりでは、会計や規程類整備だけでなく、現場そのものが安全に運営されていることも重要です。そのため、組織運営と現場運営の両方を意識しながら伴走していきました」

信頼関係の構築と段階的な支援が定着の鍵に

–––ガバナンス・コンプライアンスの整備を進めるうえで、特に工夫された点や重視された点を教えてください。

白鳥「一番大切にしたのは、実行団体との信頼関係づくりです。私たちが支援した団体の多くは、子ども支援の経験は豊富でも、組織運営や会計、労務については初めて経験することが少なくありませんでした。だからこそ、『困ったことがあれば何でも相談できる関係』をつくることを重視しました。定期的な面談や現場訪問を重ねながら、それぞれの団体がどのような状況にあり、何に困っているのかを丁寧に把握していきました」

白鳥「例えば同じ会計処理の相談でも、団体によって背景は異なります。
現場でどのような活動が行われているのか、なぜその経費が発生したのかを理解しなければ、本当に必要な支援はできません。私たち自身も現場を訪問し、活動内容や組織の状況を理解することを意識していました」


白鳥「もう一つ重視したのは、成長の段階に応じた支援を進めることです。
創業期の団体に対して、いきなり高度なガバナンス体制や規程整備を求めても現場の負担が大きくなってしまいます。
そのため、事前に作成したルーブリックを活用しながら、『まずはここまでできればよい』『次はこのレベルを目指しましょう』という形で支援を進めました。
例えば、まずは会計や労務など最低限必要な体制を整え、その後に理事会運営や権限委譲など、組織の成長に応じた取り組みへと段階的に広げていきました」


白鳥「ガバナンスやコンプライアンスは、どうしても『やらなければならないこと』として受け止められがちです。
でも本来は、団体が地域から信頼され、継続的に活動していくために必要なものです。そのため、規程やルールの説明だけではなく、『なぜ必要なのか』『整備することでどのような成長につながるのか』という背景まで丁寧に伝えることを意識しました。
実行団体の皆さんは地域や子どもたちのために真剣に活動している方ばかりです。必要性を理解していただければ、皆さん前向きに取り組んでくださいました」

地域で自走する組織へ。伴走支援を通じて見えた成果と学び

–––伴走支援を通じて、実行団体にはどのような変化が見られましたか。

白鳥「まず分かりやすい成果としては、会計や労務の体制整備、規程類の整備、理事会運営の改善などが進んだことがあります。
ただ、私たちが目指していたのは単に規程を整備することではありません。地域の中で信頼され、継続的に活動できる組織へ成長していくことが本来の目的でした。
その意味では、多くの団体が創業期から、地域の中で必要とされる存在へと成長していったことが大きな成果だったと思います。
助成期間終了後、新たに行政事業を受託したり、自ら寄付を集めたりするなど、活動を発展させる力を身につけた団体もあります。ガバナンスやコンプライアンスの整備が進展したことも、団体としての信頼性向上や持続可能な運営につながったのではないかと感じています」


–––コンソーシアムで支援したことで生まれた価値や相乗効果について教えてください。

白鳥「今回の伴走支援は、子ども支援の専門性だけでも、経営支援の専門性だけでも成立しなかったと思います。
3年間を通じて、私たちはカタリバさんから子ども支援の現場やユースワークの考え方について学びました。一方で、カタリバさんには経営や組織基盤強化の視点を共有してきました。
結果として、お互いの支援の質そのものが高まったと感じています。
例えば、子ども支援の領域では、事業の成長や効率性よりも、子どもの権利や安全を最優先に考えなければなりません。私たち自身も、その視点を踏まえた助言の精度が高まりました」


–––最後に、今後同様の伴走支援に取り組む団体へのメッセージをお願いします。

西谷緑さん「規程やルールは大切ですが、まずは『なぜそれが必要なのか』を理解していただくことが重要だと思います。
特に小規模な団体の場合、大きな組織向けにつくられたひな形をそのまま当てはめても機能しません。その団体の実態に合わせながら、一緒に仕組みを考えていくことが大切だと感じています」


白鳥「私たちが重要だと感じているのは三つあります。
一つ目は、ルールや規程だけでなく、その背景や目的まで伝えることです。
二つ目は、支援する側が現場を深く理解することです。領収書一枚を見ても、その活動がどのような現場で行われているのかを理解していなければ、本当に必要な支援はできません。
そして三つ目は、支援する組織自身もガバナンス・コンプライアンスの向上に取り組み続けることです。
私自身、エティックの組織改革に携わった経験が、実行団体への伴走支援に生かされています。他団体の成長を支援する立場だからこそ、自分たち自身もガバナンス・コンプライアンスを高め続け、実践し続ける姿勢が大切だと思います」

休プラ編集部

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