取材記事

休プラ編集部

「創造性の格差」をなくす。みんなのコードが全国の団体と挑んだ、新たな子どもの居場所づくり

全国対象事業

「創造性の格差」をなくす。みんなのコードが全国の団体と挑んだ、新たな子どもの居場所づくり

「誰もがテクノロジーを創造的に楽しむ国にする」を掲げ、2015年に設立された特定非営利活動法人みんなのコード(以下、みんなのコード)。現在、子どもたちの情報教育における家庭・地域・学校間の格差が大きな課題となっている中、その格差を埋めるために、学校教育支援と学校外拠点の運営に取り組んでいます。 

 2022年度には資金分配団体として事業を展開し、6つの実行団体と共に子どもたちが気軽にテクノロジーに触れられる場づくりを進めました。各団体に伴走した末廣優太さんに、事業で得た手応えや今後の展望などを伺います。

予算が取れない地方自治体にこそ、拠点づくりが必要 

みんなのコードは、2019年から自治体や企業とタッグを組み、10代の子どもたちへ「テクノロジー×子どもの居場所」を提供する「みんなのクリエイティブハブ」事業を展開してきました。石川県加賀市に最初の拠点をオープンした際には、全国初の試みとして注目され、メディアにも取り上げられたといいます。その後、石川県金沢市と高知県須崎市にも拠点を開設。これらの拠点には、プログラミングで動かせるロボットや3Dプリンタといった機材、グラフィック・映像・楽曲制作ソフトなどを備え、10~18歳の子どもなら誰でも無償で使うことができます。 

拠点でテクノロジーに触れる子どもたち

末廣「私はこれらの拠点の立ち上げに“ゼロ”から携わってきました。同様の拠点をもっと全国各地に広げていきたいと考える中で、多くの自治体や団体などから視察依頼をいただき、関心の高さを実感しました。ただ、その後すぐに新しい拠点が各地で生まれたわけではありません。人口減少による税収減で、地方自治体には新規事業に投資する余力が限られているためです。一方で、『自分たちの町にこんな拠点をつくりたい』という意思を持った人がいることも事実。そこで、休眠預金活用事業を通じて全国に拠点を生み出し、成果を示すことができれば、その後の展開にもつながるはずだと考え、資金分配団体への申請を決めました」 

2022年度の通常枠で採択された事業「『創造性』の格差を埋める~イノベーション人材となる機会を、すべての子どもに」は、READYFOR株式会社(以下、READYFOR)とコンソーシアムを構成し、2団体で6つの実行団体を支援することに。拠点運営の実績を持つみんなのコードと、さまざまな団体の事業伴走の実績や休眠預金活用事業の経験を持つREADYFORが、両者の長所を生かしながら実行団体に伴走する体制です。 

末廣「みんなのコードが拠点運営に関することを、READYFORさんが資金管理や事業戦略といった組織運営に関することを担いました。例えば、拠点開設に適したエリアやテナント、現地スタッフを募集する際の媒体の選び方や、開所式をするなら誰を招待して何をするかという細かな運営ノウハウをレクチャーし、サポートしてきたのが私たちです。一方で、拠点のオープン日から逆算していつまでにどんなタスクを設ければいいか、予定通りにタスクはこなせているか、資金は適切に使用されているかなどの実務的なサポートをREADYFORさんが担当しました。実行団体の中にはスタッフを雇うのが初めてというケースもあり、雇用に関するアドバイスも丁寧に行ってきました」 

こうして、二人三脚で北海道から奄美大島まで全国各地の6団体を伴走支援し、デジタル創作の居場所となる拠点のオープンをサポートしてきました。

北海道美唄市で活動する採択団体「PITAAAN!」の開所式の様子

日々のサポートに加え、事業継続の支援も

本事業においては、「人口20万人未満の市町村(特に2万人未満)」での拠点開設にこだわったといいます。それは、地域間格差に配慮するためです。 

末廣「税収の少ない小さな自治体ほど、新たな事業にチャレンジしづらい。それに、人口2万人を下回るような自治体では、放課後の習いごとや部活動の選択肢が限られてしまう傾向にあり、子どもたちの選択肢を増やしたい想いもありました。そうした不利な環境にありながらも、子どもたちのために頑張ろうとしている団体とご一緒できたらと考えたのです」 

日本全国から採択された6団体の一覧

加えて、デジタル機材の無償提供と、大学生などのメンター常駐を要件としました。無償としたのは、格差をなくすことが目的の場で、子どもや保護者から利用料を受け取る仕組みは適さないと考えたためです。また、過疎地域では近隣に大学などの高等教育機関がないことも多く、子どもたちが日常の中で大学生世代と関わる機会がほとんどありません。だからこそ、少し年上の先輩たちとの交流が良い刺激となり、進学や就職を含めた多様な選択肢をフラットに知ったり、自らの将来を具体的にイメージしたりするきっかけにもなると話します。 

末廣「プログラミングや映像・楽曲制作、ドローン操作、3Dプリンタでのものづくりなど、子どもたちは自由に創作・表現活動ができますが、最初から『これをやりたい』と目的がはっきりしている子はそう多くありません。ですからメンターは、興味関心を促す役割も果たします。地域のデザイナーやエンジニア、音楽家などにもお声がけして、専門的な知見でアドバイスをいただく機会を設け、レベルアップを図れる工夫もしています」 

6団体はそれぞれ、もともとの活動内容や規模、リソースなどが異なります。同一の伴走内容では過不足が生まれるため、READYFORと相談しながら、各団体に合わせて柔軟に調整して進めていきました。そんな中でも、隔週のオンライン面談と月1回のスタッフ交流会・研修会は共通して実施したといいます。 

末廣「各団体に個性はあれど、共通の目的を持って集い、始まった事業です。目線を合わせるうえで定期的なコミュニケーションは欠かせません。面談では進捗状況の確認はもちろん、運営にまつわる悩みごとの相談など、あらゆる話を聞き、その都度ベストなアドバイスを心がけてきました。また、年に1回、6団体はもちろん、みんなのコードの3拠点や同じコンセプトで活動している全国の団体にも声をかけ、2泊3日の対面研修を実施しました。日頃、拠点の運営に追われていると目的を見失いがちですが、あらためて何のために活動しているのかを振り返る機会になっています。同じような悩みを抱えた仲間同士、事例を紹介し合うなど意義のある場です」 

全国13団体が集結。2泊3日の対面研修の様子

さらに、3年間の活動が終わった後の事業継続に向けたサポートも実施。無償で提供される場であるからこそ、資金の安定的な調達は不可欠です。自治体からの委託事業を目指す、企業から支援を受ける、別の助成金を獲得する……など、どのような形で事業を継続するのか、その実現には何が必要なのか。こうしたことを共に考え、実現に向けた行動を起こすまでを後押ししたのです。自治体との連携を創出するため、末廣さんがある団体の市長訪問に同行したこともあったといいます。 

この結果、6団体中5団体が事業継続を実現(1団体は、団体側の事情により事業期間の途中で休止)。地方の子どもたちが安心して挑戦でき、創作を通じて自己肯定感が育まれる拠点が、引き続き運営されています。

資金分配団体だからこそ得られた「喜び」と「価値」 

この事業によって、3年間でのべ1万人を超える子どもたちがテクノロジーに触れる体験をしました。「休眠預金活用事業に手を挙げていなければ、達成できなかったことです」と末廣さん。また、現在6団体中2団体が、本事業で開設した拠点以外にも、自ら新たな拠点を立ち上げようと動いています。本事業が、各団体の活動を勢いづけるきっかけにもなっているのです。資金分配団体としても、大きな成果を得たと語ります。 

末廣「手を挙げた当初は、同じ方向を向いてテクノロジーの学びの場をつくりたいと考えている人が、果たして本当にいるのだろうかという想いもありました。けれど実際、34団体から応募をいただき、6団体と事業を共にすることができました。自分たちが抱いている課題感を解決するための仲間ができた。これは、資金分配団体にしか得られない喜びなのではないでしょうか」 

事業終了時、ある採択団体から資金分配団体スタッフ一人ひとりに感謝状が贈られた 

今後、資金分配団体に挑戦したいと考えている団体に向け、こんなアドバイスもいただきました。 

末廣「多様な団体に寄り添って伴走する3年間は、悩み多き期間でもありました。けれど、実現したい未来に向け、より充実した課題解決をするためには、多くの他者を巻き込むのがベストだと思います。そうした意味で、1つの方針に向かって他者と協働していく資金分配団体の経験は、この先の活動にとっての良い財産になるはずです。事業に共感し、同じ想いで活動する仲間を全国に増やせることが、資金分配団体になる価値なのだと思います」 

そして2026年3月、末廣さんは、みんなのコードからスピンオフする形で特定非営利活動法人LoCoBridge(以下、LoCoBridge)を設立し、同法人の代表を務めます。 

末廣「この先、同様の拠点をより増やしていこうと見据えた時、みんなのコードが自らの活動を広げながら他の団体を支援する形ではなく、支援に特化した別団体を立ち上げる必要があると考えました。これは、休眠預金活用事業の3年間でわかったこと。単に支援する側・される側という関係を超えて、地域の実践者同士がフラットで対等に想いを分かち合い、応援し合えるコミュニティを目指す。その実現に向けて生まれたのが、LoCoBridgeです。“テクノロジー×子どもの居場所”を、図書館と同じように地域のインフラにしたい。そのために、全国の団体が連携を取りながら安心して活動できる基盤をつくっていきます」 

あらゆる市町村に、“テクノロジー×子どもの居場所”がある世界へ。子どもたちが格差なくテクノロジーに触れ、新しい価値を創造していける未来へ。末廣さん、LoCoBridge、みんなのコード、そして各団体の挑戦はこれからも続きます。 

■事業基礎情報

資金分配団体特定非営利活動法人みんなのコード
<コンソーシアム構成団体>
READYFOR株式会社
事業名「創造性」の格差を埋める~イノベーション人材となる機会を、すべての子どもに
採択事業年度2022年度通常枠
活動対象地域全国
実行団体■合同会社G-experience
ハイラボ

■株式会社トラックセッション
過疎地の限界をテクノロジーの力で超える!

■一般社団法人エンター
格差なく子供の可能性が発揮できる居場所

■株式会社イトナブ
プログラミングLAB美唄

■特定非営利活動法人フリースクールMINE
デジタルで繋ぐ・繋がる子どもの居場所事業

■一般社団法人あわらテクノロジー協議会
テクノロジーで繋がる教育事業

休プラ編集部