【開催報告】認知度調査の結果と子ども・若者支援の事例から、制度の意義と課題を共有「第1回 JANPIAメディアセミナー」
高知県 東京都 全国対象事業
JANPIAは2026年3月24日、「第1回 JANPIAメディアセミナー」を東京・日比谷にて開催しました。本セミナーでは、休眠預金等活用制度に関する認知度調査の結果を公表するとともに、「虐待等から子どもを守る取り組み」をテーマに、子ども・若者支援の現場事例を紹介。NHKキャスターの有馬嘉男氏をファシリテーターに迎えたクロストークも行われ、制度の意義や課題をメディア関係者と共有しました。
- <プログラム>
| 13:30~ | 開会・休眠預金等活用制度の概要 |
| 13:40~ | 認知度調査結果の公表(質疑応答) |
| 14:00~ | 事例紹介1 認定NPO法人 第3の家族 |
| 14:15~ | 事例紹介2 特定非営利活動法人 子どもシェルターおるき |
| 14:30~ | クロストーク(質疑応答) |
| 15:00 | 閉会 |
開会・休眠預金活用事業の概要を紹介

最初に、JANPIA事務局長の大川昌晴が、休眠預金等活用制度の概要について説明しました。
同制度では、10年間取引のない「休眠預金」の一部が、国から指定を受けた指定活用団体であるJANPIAに交付されています。その後、資金分配団体・活動支援団体といった中間支援組織を通じて、行政だけでは解決の難しい社会課題に取り組む実行団体・支援対象団体の活動や団体の担い手の育成に活用されています。

大川は本制度が資金支援にとどまらず、民間公益活動の担い手育成や、資金を自ら調達できる体制の整備にも寄与してきた点を強調。多様な関係者の連携のもと、全国でさまざまな社会課題に向き合う取り組みが広がっていると伝えました。
社会課題への関心と制度理解のギャップ。最新の認知度調査の結果を公表

続いて、JANPIA企画広報部長の芥田真理子より、2025年11月に実施した「休眠預金等活用制度に関する認知度調査」の結果が報告されました。まず示されたのは、制度の認知と理解の間にあるギャップです。制度の存在は一定程度知られている一方で、取り組みの内容まで理解している人は19%にとどまり、理解が十分に進んでいない実態が明らかになりました。

制度への共感や信頼についても、「どちらともいえない」と判断を保留する人が多く見られました。不信の理由としては、資金使途の透明性や支援団体の選定基準への懸念が上位に挙がっています。芥田は「これまで透明性や説明責任を重視して活動してきたものの、十分に伝わっていない」と説明します。

制度への期待としては、子ども・若者への支援や、地域課題・災害への対応などが多く挙げられました。制度を認知していない層からも「行政だけでは支援が届きにくい分野への対応」を求める声があり、制度の趣旨と重なる結果となりました。また、公的制度だけでは支援が行き届かない“制度のはざま”にある課題については半数以上が認識し、民間公益活動への評価も高い一方で、支援に関わる活動への参加までは結びついていない状況も浮かび上がりました。
これらを踏まえ、芥田は「社会課題への認識と制度理解・信頼のギャップを埋めていくことが重要」と総括。メディアに向けて、「社会課題解決に向けた現場の取り組みをわかりやすく伝えることが制度の理解と信頼につながる」と強調しました。併せてJANPIAを「全国約1,500の団体の取り組みが集まる『社会課題の情報基地』」と位置づけ、メディア関係者に対して、情報発信のパートナーとしての連携を呼びかけました。

事例紹介1|虐待リスクを抱える子どもをITで予防支援「認定NPO法人 第3の家族」
続く第二部では、虐待等から子どもを守る活動を行う実行団体から事例紹介が行われました。進行を務めたのは、NHK「新プロジェクトX〜挑戦者たち〜」メインキャスターの有馬嘉男氏です。

認定NPO法人 第3の家族(以下、第3の家族)は、家庭環境に問題を抱えながらも既存制度では支援につながりにくい中高生を対象に、ITを活用した支援を行う団体です。理事長の奥村春香氏は、家庭に問題を抱える中高生のうち、児童相談所などの専門機関につながるのは一部にとどまり、多くの若者が制度の“はざま”で孤立している現状を報告。「殴られるけど毎日ではない」などの支援を求めていいのか迷う状況や、「家族を壊したくない」という葛藤、思春期特有の「支援されることへの抵抗感」が声をあげにくくさせています。さらに「現代の子どもは仮面をかぶるのが上手で、問題を隠してしまう」と傾向を述べます。

そこで第3の家族では、虐待リスクのある家庭の子どもを対象に、匿名かつ返信のない仕組みで悩みを投稿できるオンライン掲示板「gedokun」と、社会資源や経験談を紹介する情報サイト「nigeruno」を運営。子どもが気軽に悩みを吐き出し、共感や支援情報を得られる場を提供しています。奥村氏は「第3の家族はインターネット上の“居場所”であり、本当の居場所ではありません。支援制度から取りこぼされている子どもたちのセーフティネットとして、現実の支援につなぎ、最終的には家庭や地域に還すことを目指しています」と説明しました。

これらのサービスのユーザーの8割は既存の支援制度を利用した経験がなく、第3の家族のサービスをきっかけに児童相談所やスクールカウンセラーへの相談行動に踏み出すケースも増えるなど、既存制度では届きにくい層へのアプローチとして成果が報告されました。
休眠預金活用事業については、複数年にわたる資金支援を受けられる点を評価。「単年度の助成金が多い中、中長期的な視点で計画的に取り組むことができました」と述べました。また、人件費の確保や伴走支援を通じて、バックオフィス体制や経営面も強化できたと振り返ります。虐待と認定される前の予防的アプローチが評価された点にも触れ、行政やほかの助成制度では対象になりにくい領域に取り組める点も、この制度の意義だといいます。
最後に奥村氏は、「第3の家族だけでなく、行政や他団体といった多様な主体が連携すれば、大きな社会的インパクトが生まれる」とし、その基盤となる休眠預金活用事業への期待を示しました。
事例紹介2|居場所を失った子どものためのシェルターを。「特定非営利活動法人 子どもシェルターおるき」
続いて、高知県で「子どもシェルターおるき」を運営する特定非営利活動法人 子どもシェルターおるき(以下、おるき)の理事・中島香織氏より、事業内容が紹介されました。おるきは、子ども中心の居場所づくりに取り組む団体です。その名称は土佐弁で「いるから」を意味し、「私たちはここにいる。あなたが私たちを必要としなくなっても」というメッセージが込められています。

中島氏は「子どもは大人によって行き先を選別されてしまう」と指摘。虐待や家出・非行などを背景に居場所を失い、既存の支援制度からもこぼれてしまう子どもたちの存在を示しました。さらに、施設生活になじめないケースや、心身ともに疲弊し「まずは休みたい」子どもにとって、既存の支援が合わない場合もあると説明します。
こうした子どもたちを受けとめるのが「子どもシェルター」です。シェルターでは生活支援のほか、一人ひとりに子ども担当弁護士が付き、子どもの権利回復と意思尊重を最優先に法的支援を行っています。2024年の開設以来、子どもがいなかった日はなく、「強いニーズを実感しています」と伝えました。

中島氏は「休眠預金がなければ、このシェルターはできなかった」と明言し、公的支援ではカバーされない開設前の費用を支えられた点を強調。「お金がないからできない」から、「あるからやってみよう」へと踏み出せたといいます。また、「3年間という助成期間があったからこそ、“みんなでつくる”ことができた」とし、弁護士や医師など多職種による協議会で議論を重ね、目指すシェルターのあり方を共有しながら形にしてきたことが、事業の持続性につながると説明。「単年度では、ここまではできませんでした」と振り返ります。
資金分配団体による伴走支援についても、「何がわからないかもわからない中、月次ミーティングで随時相談できたのが助かりました」と中島氏。事業計画の見直しにも柔軟に対応してもらえたといいます。3年間で規程類の整備や活動実績の整理も進み、「取り組みを外部に示す“パッケージ”が整い、自走できる状態で事業を終えられたことは大きな成果」と話します。現在は新たな助成金の獲得に取り組むほか、アウトリーチやシェルター開設支援などへと活動を広げています。
最後に中島氏は、「子どもたちは家に帰れない切実な実情を抱えています。子どもの手を離さず、既存の支援者とも手を取り合いながら、進んでいきたい」と語りました。
クロストーク|子ども支援のあり方と制度運用をめぐって
奥村氏、中島氏と有馬氏によるクロストークでは、現場目線の子ども支援と助成制度の運用の実情について意見が交わされました。
「周りに迷惑をかけまいと多くの子どもが自分を押し殺していると聞いてショックを受けた」という有馬氏に対し、奥村氏は海外の事例を挙げ、フランスでは子ども自身が支援を受ける権利を前提に行動していると説明。日本では声を上げにくく、問題が深刻化してから支援につながるケースが多いとし、「問題はあるが緊急ではない“はざま”の段階での支援が重要。介入が早いほど回復がいい」と指摘しました。

また、有馬氏の「シェルターは緊急避難にすぎないのではないか」という問いに対し、中島氏は子ども担当弁護士(通称“コタン”)の役割に言及。シェルターでは、コタンが親との交渉や関係機関との調整を担い、子どもの意思を尊重しながら支援にあたります。「『あなたがどんなあなたであっても構わない。これから先のことを一緒に考える』と寄り添う中で、コタンが子どもの思いを代弁することで親や支援機関の意識にも変化が生まれます。子どもの声を聴くことで、大人は変わります」と語りました。
休眠預金等活用制度の運用については「提出する書類が多くて大変」と実感が語られる一方、「公平性や透明性のためには必要」との理解も示されました。伴走支援についても、有馬氏は「ありがたいが、負担に感じる場面もあったのではないか」と踏み込みました。これに対し奥村氏は、「そんなことはなく、資金分配団体の伴走はまるで“親”のように、いい意味でお節介を焼いてくれて非常に助けられた」と振り返ります。中島氏も「資金支援のみでは、ここまでの成果を得られませんでした。資金分配団体とともに、どう活用していくかを二人三脚で考えられたことがよかった」と所感を述べました。

メディアからは民間助成も含めた制度運用の課題について質問が寄せられました。助成団体ごとに申請書式が異なることや、それによる申請のハードル、成果の見えにくい活動が評価されづらい現状などが共有されました。
有馬氏は最後に、「本日のメディアセミナーは“第1回”。 今後の継続的な活動に期待したい。主催者のJANPIAには、『社会課題の情報基地』『情報発信のパートナー』という掲げた旗を下げることなく、取り組みを続けてほしい」と述べ、セッションを締めくくりました。
【まとめ】制度の認知と理解を広げ、支援を必要としている人々に届ける
本セミナーでは、休眠預金等活用制度がどのように社会課題の解決を支えているのか、十分に伝わっていない現状が示されました。一方、事例紹介では、休眠預金を活用し、支援が届きにくい課題への取り組みが着実に進んでいることも明らかになりました。
支援を本当に必要としている人々へ届けるためには、制度の「認知」と「理解」のさらなる広がりが不可欠といえます。今後も継続して開催される「メディアセミナー」を通じて、メディアとの連携を強化することで、多角的な情報発信と制度の理解浸透が加速していくことが期待されます。