イベント報告

休プラ編集部

【開催レポート】RISTEX×JANPIA共催イベント第4弾「研究者とのマッチング広場『知る・話す・つながる』」

東京都

【開催レポート】RISTEX×JANPIA共催イベント第4弾「研究者とのマッチング広場『知る・話す・つながる』」

JANPIAと国立研究開発法人科学技術振興機構 社会技術研究開発センター(以下、RISTEX)との共催イベント「研究者とのマッチング広場『知る・話す・つながる』」が2026年1月22日(木)に、東京・日比谷にて、対面とオンラインのハイブリッド形式(オンラインの場合は第1部の参加のみ)で開催されました。今回のイベントは社会課題解決に取り組む研究者と休眠預金を活用する団体がお互いの活動を知り、連携の可能性を探るための交流イベント。「知る」「話す」「つながる」の3パートに分かれており、現場の課題感と研究の知見を持ち寄りながら、社会課題解決に向けた対話ができる場となっています。8名の研究者と、会場とオンラインあわせて24名の休眠預金を活用する団体の担当者が集まった、イベント当日の様子をお伝えします。

  • プログラム
オープニング開会の挨拶、本日のプログラムの紹介
第1部(ハイブリット形式)研究者によるピッチトーク

質疑応答
第2部(対面)ファシリテーターによるトークセッション

ワールド・カフェ

ポスターセッション・名刺交換
クロージング(対面)ファシリテーターによる振り返り

閉会の挨拶

まずは研究者の取り組みを“知る”ピッチトークから

イベントは、JANPIA事務局長の大川昌晴による開会の挨拶から始まりました。大川は研究者と団体の連携により、新しい価値が生み出されることに期待を込めました。専門的な知見と確かなエビデンスをもとに活動する研究者と、現場をよく知り、ニーズに基づいた活動を実践する休眠預金を活用する団体の連携は、行政だけでは対応困難な社会課題を解決するための大きな一歩となります。本日の機会を将来の連携のきっかけづくりとして、有効活用していただければと挨拶を締めくくりました。

司会者より本日のプログラム紹介が行われたのち、さっそく第1部がスタート。第1部は“知る”を目的とした研究者8名によるピッチトークです。社会課題解決に向けた研究者のアプローチや取り組みについて知ることで、自団体と活動の領域が重なる点や連携の可能性について、イメージを膨らませてもらうことを目的としています。登壇した研究者と研究テーマは以下のとおりです(順不同)。

プログラム名研究者名・取り組む社会課題テーマ
社会的孤立・孤独の予防と多様な社会的ネットワークの構築・片桐恵子/神戸大学ウェルビーイング先端研究センター教授
「都市集合住宅高齢者の社会的孤立を予防する持続可能なコミュニティ構築」(発表資料

・斎藤真緒/ 立命館大学産業社会学部教授
「ケアの葛藤によりそい、ケアラーの社会的孤立・孤独を予防する包括的支援システムの構築」(発表資料

・宮地菜穂子/ 同朋大学社会福祉学部准教授
「社会的養護経験者(ケアリーバー)の社会的孤立を防ぎ、支援と繋がりながら自立を支える仕組みを創る」(発表資料

・米澤拓郎/ 名古屋大学大学院工学研究科准教授
「サービス・モビリティと多形態コミュニティの繋がりによる社会的孤立・孤独予防モデル(発表資料
シナリオ創出フェーズ、ソリューション創出フェーズ・門田行史/ 自治医科大学小児科学准教授
「ヤングケアラー負担ゼロに向けた家族まるごと支援を促進するシナリオ創出」(発表資料

・菖蒲川由郷/新潟大学大学院医歯学総合研究科特任教授
「多様なリンクワーカーとともにつくる社会的処方とテクノロジーがつなぐ地域主導の未来型健康社会のソリューション創出」(発表資料

・村川友美/ 株式会社リバー・ヴィレッジ代表取締役
「Jet Peers〜村づくり主体形成を支える小水力発電モジュールと多地域連携プラットフォームの開発〜」(発表資料
情報社会における​社会的側面からのトラスト形成・鳥海不二夫/東京大学大学院工学系研究科教授
「可視化によるトラスト形成:パーソナライズされたデジタル情報空間のリテラシー教育」(発表資料

研究者は各5分で、社会課題テーマを設定した背景や、現在取り組んでいるプロジェクトの内容、研究成果などを語りました。特に研究成果を社会実装する際の課題や将来の可能性、具体的な連携イメージについての話は、休眠預金を活用する団体がマッチングの可能性を探る大きなヒントになったようです。団体担当者はメモを取りながら、研究者の話に熱心に耳を傾けていました。

“話す”をテーマに交流のきっかけづくり

 “話す”をテーマにした第2部がスタート。現場と研究で重なり合う課題意識や視点を言語化して整理する時間です。まずファシリテーター3名によるトークセッションが行われました。今回ファシリテーターとして登壇するのは、研究者との取り組み実績を持つ、認定NPO法人育て上げネット 理事長 工藤啓氏、NPO法人ETIC. シニアコーディネーター 山内幸治氏、NPO法人ADDS 共同代表 竹内弓乃氏の3名。いずれも休眠預金を活用する団体のご所属です。JANPIA大川の進行のもと、第1部の感想や、今後の関係づくりのポイントについて語っていただきました。

「助成が決まってから協働に向けて動き出すのではなく、日常的に関係を築いておく。それが相互理解を深めることにつながり、取り組みのスピードを加速させます」と話したのは工藤氏。さらに、「立ち位置が違う状態から良い関係を築くには、研究者の困りごとや、どういった点で関われるかの視点での対話が大事」と語りました。

続けて山内氏が語ったのは、お互いにコミュニケーションをとるうえでの視座の重要性。「研究者と団体の関係だけでなく、企業や財団など資金を提供してくださる側がどういった戦略を考え、議論しているかまで思考を巡らせることが大事です。まずは研究者と団体が取り組む社会課題を改めて俯瞰的に見て、その本質を捉え直すための会話から連携を始めるのもひとつの手だと思います」とアドバイスしました。

竹内氏は「研究者の先生方も自身の研究成果をどのように全国的に展開していくか、出口戦略に悩まれているので、団体の皆さんの現場でのノウハウが力になるはずです」とコメント。そして、「今日は研究者、NPOの職員という役割を一旦脱ぎ捨てて、今の社会課題を見過ごせない仲間としてつながるところから始めるとよいと思います」と会場のコミュニケーションを後押ししました。

(左からETIC.山内氏、育て上げネット工藤氏、ADDS竹内氏)

続くワールド・カフェは研究者の知見と現場でのノウハウ・課題を共有し、互いの考えや視点を整理して理解する時間です。研究者を3組に分け、団体担当者が10分ずつそれぞれのテーブルを移動する形で、各ファシリテーターの進行のもと情報交換が行われました。各テーブルでは団体担当者がピッチトークの感想や日々の取り組みを伝えたり、研究者が興味をもっている連携の形について語ったりなど話が弾み、またたく間に活気のある雰囲気に。ときには団体が抱える課題について、研究者から具体的なアイデアが寄せられるなど、活発な対話が生まれていました。

参加した団体の担当者からは「研究者の方々の取り組みや思いを詳しく知ることができてよかったです。ポスターセッションの前に少人数で自己紹介する時間があったことで、その後のコミュニケーションがより取りやすかったのではないかと思います」とポジティブな感想がありました。

相互理解を深めて“つながる”場

最後は、これまでの情報交換によって生まれた関心や共通点を、個別の対話に発展させる“つながる”場です。ポスターセッションでは、各研究者が立つブースでそれぞれの取り組みをまとめたパネルが設置されました。団体担当者は興味をもった研究者のブースを訪れ、より対話を重ねることができます。なかにはプロジェクトで開発したツールを体験できるよう用意されているブースもありました。

ポスターセッションは終始盛り上がりを見せ、会場のいたるところで活発なコミュニケーションが生まれていました。

資金分配団体の担当者に話を聞くと、「行政の制度では拾いきれない部分の社会課題の解決が重要だと感じています。研究者の方々はまさに制度の隙間となる部分の担い手を増やすための研究を行っていて、こういった活動に対する理解がもっと広まるとよいなと思いました」といった感想が。

さらに実行団体の担当者からは「さまざまな方と対話できたので、非常に有意義な時間になったと感じています。お話をするなかで、同じ分野でなくても連携の可能性があることに気付けたのが、今日の大きな収穫です」と今後の連携に向けた前向きなコメントも聞けました。

今後の連携への第一歩となった交流イベント

最後に、ファシリテーターの3名から今回のイベントの振り返りと、今後に向けたアドバイスが語られました。

まずは竹内氏が「お互いの代表者だけでなく、若手も含めてチーム同士の交流会から始めるのも有意義だと思います」と今後のコミュニケーションについてアドバイス。工藤氏は「今日をきっかけに研究者と団体が連携し、社会のための新しい活動が生まれることを願っています」とコメントしました。山内氏も「今後対話を重ねるなかで最初の想定とは違った連携の形が生まれることもあるので、ぜひ可能性を探ってみてください」と参加者に呼びかけました。

最後に、RISTEXの企画運営室 室長 大矢克氏が登壇。参加者や関係者への感謝を述べつつ、「普段なかなか出会えない方々と対話できたことで、今までにない議論が生まれたのではないか」と今日の成果を振り返りました。

RISTEXの企画運営室 室長 大矢克氏

研究者と団体をつなげる交流イベントは、大盛況のうちに幕を閉じました。イベント終了後、ファシリテーターの工藤氏に改めて話を聞くと、「これまで研究者と団体のマッチングに特化した交流会はあまりなかったと思います。こうした種まきはすぐに大きな成果が出るものではありませんが、長期的な視点でこれからも活動を継続していくことで、数年後の成果につながっていくのではないでしょうか」とコメントをいただきました。JANPIAでは、今後もこうしたイベントを通じて、研究者とソーシャルセクターのマッチングを促進し、新たな取り組みの創出につなげていきます。

休プラ編集部