【アジア・フィランソロピー会議2025】休眠預金活用事業セッションの登壇をレポート
東京都
JANPIAは2025年12月4日、インターコンチネンタル東京ベイにて開催された日本財団主催の「アジア・フィランソロピー会議 2025」の中で、「休眠預金活用事業のプラットフォームが繋ぐ、 企業とソーシャルセクター ~ 届ける、支えるこころ…寄贈・寄付からの広がり~」というセッションを企画・登壇しました。「アジア・フィランソロピー会議」は、アジア地域において社会課題解決に取り組む財団などフィランソロピー(社会貢献活動)分野の組織のトップを招き、課題解決に向けた協力と連携を促すイベントです。
JANPIAのセッションでは、企業やソーシャルセクターの方との連携や可能性などについて対話しました。
セッションの概要
株式会社フェリシモが実施している「ハッピートイズプロジェクト」にJANPIAと連携した事例をもとに、企業とソーシャルセクターをつなぐ連携のあり方についてトークしました。
登壇者は、フェリシモの経営企画室でフェリシモ基金事務局事務局長を務める湯本京子氏に加えて、JANPIAとフェリシモをつなぐきっかけをつくった、NPO法人ETIC.のシニアコーディネーター・小泉愛子氏。モデレーターはJANPIAのプログラムオフィサー石田美奈子が務めました。
セッションの冒頭では、JANPIA事務局長大川昌晴より、休眠預金活用事業の概要と企業との連携の事例紹介がありました。その後小泉氏、湯本氏それぞれから、自身のプロフィールと所属企業・団体の取り組みが紹介されました。
NPO法人ETIC.の事業紹介
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ETIC.小泉氏が所属するETIC.は、アントレプレナーシップ(起業家精神)のある人材を増やすために、「こんなことをやってみたい」という個人の挑戦を、支援している団体です。休眠預金活用事業では資金分配団体として、子どもの未来のための協働促進事業や災害支援事業をはじめとする活動を実施しています。
ETIC.の取り組みの一つに、さまざまな企業・NPOが集まって、社会課題解決やイノベーション創出に取り組む共創コンソーシアム「and Beyondカンパニー」があります。そこから生まれた数々のプロジェクトを共有し発展させるため、2022年にスタートしたのが、共創プロジェクトの見本市「Beyondカンファレンス」。さまざまな組織に属する人が壁を越えて学び合い、話し合う場となっていて、年に一度のペースで、場所を変えながら開催されています。
株式会社フェリシモの事業紹介
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(写真提供:日本財団)
続いて湯本氏がフェリシモについて紹介しました。フェリシモは、ファッションアイテムや生活雑貨、手芸・趣味用品、食品などの通信販売を主軸とする企業です。誰もがしあわせの創り手となり、贈り手となる「ともにしあわせになるしあわせ」をコアバリューに掲げ、お客さま参加型の基金活動をはじめとする、さまざまな社会・文化活動に取り組んでいます。
今回のセッションで取り上げる「ハッピートイズプロジェクト」は、1997年の阪神・淡路大震災で被災した神戸の街に、手作りのクマのぬいぐるみを飾ったクリスマスツリーを設置し、笑顔と灯りを届けようと始まりました。顧客に参加を呼びかけたところ、1,000名以上が賛同し、1,100体ものクマのぬいぐるみが集まり、以来継続的な取り組みとして実施されています。顧客がぬいぐるみの図案を購入し、お気に入りの布や思い出の服などを使って製作したぬいぐるみをフェリシモへ送付する仕組みとなっており、集まったぬいぐるみは、毎年クリスマスシーズンに各地で展示された後、日本を含む60の国と地域へ寄贈されています。
ハッピートイズプロジェクトにおける連携のきっかけ
「ハッピートイズ」寄贈におけるJANPIA、ETIC.フェリシモの連携は、ETIC.主催の「Beyondカンファレンス2024」での出会いを機に始まりました。同カンファレンスでは、「握手から、はじめよう」というテーマのもと、偶然隣り合った参加者同士が握手を交わしながら自己紹介を行うが時間がありました。当日、JANPIA職員の隣に偶然座ったのが、フェリシモ の社員です。その際に交わした握手と対話をきっかけに、両者の連携が始まりました。まず2024年の年末に、JANPIAの助成先で、休眠預金活用事業でこどもの支援をしている22の実行団体に「ハッピートイズプロジェクト」で集まった1,000体のぬいぐるみを寄贈。好評により2025年も継続が決定し、この2年間で、国内の子どもたちへ4,000体の寄贈が実現しました。
「ハッピートイズプロジェクト」における連携の経緯について、「握手から本当に始まったんだというところは、とても嬉しく思っていたところでした」と言う小泉氏。「Beyond カンファレンス2024」のプログラムにおいて、「握手から、はじめよう」という言葉にはどのような思いが込められていたのかという質問に対しては「初めから『共創しよう』というより、『ちょっと広げる』ことで生まれる化学反応もあると思います。そこで、まずは肩を組むよりも、握手ぐらいから始めようという思いを込めてテーマを設定しました」と答えました。
この言葉を受けて湯本氏は、「想定していなかった偶発的な出会いが、スピーディーに、具体的なプロジェクトにつながった点が面白いなと感じています。実はJANPIAとは、ハッピートイズプロジェクトにとどまらず、他の広がりも生まれて、この約1年の間に複数のご縁が同時に動き出しています」と語りました。例えば休眠預金活用事業の実行団体の支援をフェリシモの社員がプロボノとして行っていたり、フェリシモの基金を通じて休眠預金活用事業の助成が終わったあとの団体への資金提供を行っていたりと、支援の輪はどんどん広がりをみせています。
プロジェクト成功のポイントと今後の展望
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こうした共創プロジェクトがスムーズに進む理由について、小泉氏からは「Beyondカンファレンスに参加してくださる方々は、『一人ではできないことをほかの人と一緒にやっていきたい』という気持ちを持っている方が多いです。相手の話をしっかりと聞く姿勢があることも大きいと思います」という答えがありました。湯本氏もこれに同調し、「特に私たちがカバーしきれていない分野に関するリソースをお持ちの方から声をかけてもらうと、共創が生まれやすいですね。
ハッピートイズプロジェクトにおいては、私たちはJANPIAさんに「資金分配団体や実行団体につないでいただいて、ぬいぐるみの寄贈先に繋げることができました」と語りました。さらに湯本氏は、JANPIAとの連携を次のように振り返ります。「JANPIAさんを通じて募集をかけたところ、国内の多くの団体から応募がありました。これまでは海外の難民キャンプや東日本大震災の被災地など、特に困難な状況におかれている地域のお子さんにお贈りすることが多かったため、国内にこれほどニーズがあったことを知り驚きました。また、これはJANPIAさんが団体との関係性をしっかり構築されていて、信頼があるからこその応答だと実感しました」
最後に、今後の活動について聞かれると、湯本氏は「これまで私たちは、生活者や個人の方々の想いを社会に届けるための間に立つ役割を担ってきました。今後はそれだけにとどまらず、これまでご縁のなかった企業を含め、団体や行政など異なるセクターの方々とも協働しながら、それぞれの強みを持ち寄ることでより大きな広がりをもった取り組みへと発展させていけるのではないかと考えています 」と、本日のセッションの参加者にも連携の大切さを語りました。
小泉氏は、「社会課題に取り組みたいと考える企業は増えていますが、企業ごとに立ち位置や取り組み方、成果を出していくまでの時間軸も大きな違いがあります。また個人として何かやりたいと思っていても、組織として求められる成果と自分が関心を寄せる成果を紐づけることも難しいという相談も受けるようになりました。だからこそ、企業に所属しながらも、既存の役割や評価軸だけではない、異なる物差しを取り入れられるようなラーニングやトレーニングの機会をつくっていきたいと考えています」と語りました。
登壇を終えて
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セッション終了後に、登壇者のお二人にお話をうかがいました。
小泉氏「今回、『Beyondカンファレンス2024』をきっかけとしたフェリシモさんとJANPIAさんのつながりについてお話したことで、セッション終了後に参加者の方から『実はあの場の出会いから、今、こんなプロジェクトが生まれているんです』といったとても嬉しい報告もいただきました。ETIC.では今、企業から『社員を社会課題に対する取り組みに参画させたい』という声を多くいただいています。企業からのニーズも、受け取り手側のニーズも多様ですが、それをうまくコーディネートできればと思っています」
湯本氏「セッションの後で、企業や学校法人など、ぬいぐるみの寄贈に興味のある方からたくさんお声かけをいただきました。連携して取り組むことで、活動はさらに広がっていくのではないかと感じています。これはひとつの事例ですが、JANPIAさんやETICさんがつないでくださるご縁をきっかけに多くの連携が生まれて社会に大きなうねりをつくっていける可能性を感じています」
本セッションでは、休眠預金活用事業を通じて、活動の担い手であるNPOなど現場の団体のニーズをくみ取り、企業が自社サービスや寄贈品を活用して支援を展開する事例をご紹介しました。こうした取り組みは、資金支援と非資金的支援の両面を組み合わせ、休眠預金活用事業というフレームワークを介して効果的に実現されています。
企業のフィランソロピーの在り方や役割を理解し、取り組みを深めていくために、事例発表を通じて関係者が何を考え、どう行動し、どのようなつながりを生み出しているのかを皆様と一緒に考える時間となりました。JANPIAとしても、こうした対話を起点に、企業とソーシャルセクターの橋渡しを進め、新たな連携を生み出していきたいと考えています。