休眠預金活用団体 (NPO等)×企業「SDGsへの貢献につなげる関西マッチング会 成果報告会」を開催!
大阪府 兵庫県 奈良県

2025年7月24日、JANPIA主催・関西経済連合会共催による休眠預金活用団体×企業「SDGsへの貢献につなげる関西マッチング会 成果報告会」を大阪市のグランフロント大阪にて開催しました。会場とオンラインのハイブリッド開催で、参加者は160名(会場40名、オンライン120名)にのぼりました。会場は終始熱気に包まれ、来場者は熱心に話に耳を傾けていました。
2025年7月24日、休眠預金活用団体(NPO等)×企業「SDGsへの貢献につなげる関西マッチング会 成果報告会」を開催しました。これに先立ち2024年11月に同会場で実施したマッチング会には、20の実行団体(NPO等)と31の企業が参加しました。(マッチング会の記事はこちらから>>【開催報告】SDGsへの貢献につなげる『関西マッチング会』 | 休眠預金活用プラットフォーム)
「社会的インパクト創出・可視化に向けて」をテーマにした報告会では、マッチング会から生まれた45案件(協議中・検討中案件含む)のうち3事例をご紹介しました。
<プログラム>
テーマ:社会的インパクト創出・可視化に向けて
14:00~ | JANPIA・関経連 開会の挨拶 |
14:10~ | 休眠預金活用事業の概要の紹介 |
14:30~ | 登壇者・事例紹介(3事例) |
15:50~ | パネルディスカッション(3事例の登壇企業) |
16:55~ | クロージング |
開会の挨拶、休眠預金活用事業の概要の紹介
まずはJANPIA助成事業部長 内田淳、続いて関西経済連合会の企画広報部担当部長 西村和芳氏が開会の挨拶を行いました。次に、JANPIAシニア・プロジェクト・コーディネーター 鈴木均が休眠預金活用事業の概要とマッチング会の成果等を紹介しました。

動画〈YouTube〉|JANPIAからの挨拶[外部リンク]
動画〈YouTube〉|関西経済連合会からの挨拶[外部リンク]
動画〈YouTube〉|休眠預金活用事業の概要の紹介[外部リンク]
資料〈PDF〉|休眠預金活用事業の概要の紹介 [外部リンク]
連携が実現した3つの事例をご紹介
事例紹介では、3事例の連携企業と連携団体(実行団体)が順に登壇して、今回の取り組みや成果、今後に向けた思いなどについて話をしました。NTTデータグループ サステナビリティ経営推進本部 シニア・スペシャリストの金田晃一氏がモデレーターを務めました。

動画〈YouTube〉|モデレーター紹介[外部リンク]
資料〈PDF〉|モデレーター紹介 [外部リンク]
事例紹介1|多角的な連携(寄贈、助成、イベントボランティア)
【連携企業】住友ゴム工業株式会社
【連携団体】認定NPO法人宝塚NPOセンター

タイヤ、スポーツ、産業品等の事業を展開する住友ゴム工業株式会社(以下、住友ゴム)は、社会貢献活動の一環として、住友ゴムCSR基金を運営しています。社員が自主的に募金を行い、会社が同額を拠出する方式で、地域で活動するNPOやボランティア団体に対して助成金を提供しています。
一方、認定NPO法人宝塚NPOセンターは、「まちづくり」と「就労支援」を2本柱として、1999年から兵庫県内で活動しています。中長期アウトカム(目指す成果)として「母子家庭が住まいに困ることがなく、適切な支援に繋がることができる地域になる」ことを掲げています。シングルマザーの就労支援をするプログラムを進める中でマッチング会に参加し、住友ゴムと出会い、3つの支援を受けました。
1つ目は、母子家庭用のアパートに図書室を作りたいという希望を聞いた住友ゴムの担当者が、自宅にある児童書の寄贈を社員に呼び掛けようと提案し、1週間で約100冊が集まりました。2つ目は住友ゴムCSR基金の助成に採択され、助成金は、朝ご飯を食べられない状況の子どもに朝ご飯を提供する食堂、地域食堂、夏休みの縁日の実施に活用されました。また、3つ目として住友ゴムの社員が宝塚NPOセンターが開催する夏休みの縁日のボランティアに参加することも検討中です。
宝塚NPOセンター 理事長 中山光子氏は「マッチング会で多くの企業と出会う機会をいただき、企業も活動者である私たちも、より良い社会を作るために取り組んでいると分かった。手をつないで進めば、大きな歩幅で力強く一歩を踏み出せると感じた」と明るい笑顔で振り返りました。
事例紹介2|プロボノ支援(子どもの主体性を育むイベント企画)
[連携企業] PwC Japan有限責任監査法人
[連携団体] NPO法人こどもサポートステーション・たねとしずく

PwC Japan有限責任監査法人(以下、PwC Japan監査法人)は、日本で監査やアドバイザリー業務を提供する法人ですが、 PwCグローバルネットワークのパーパス、「社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する」を体現する活動のひとつである、プロボノ活動にも力を入れています。
NPO法人こどもサポートステーション・たねとしずくは、困難な状況にある子どもたちが安心して暮らし育つための支援を目的として、2023年に兵庫県西宮市で設立されました。家庭を訪問する家族支援と、子どもの居場所運営の2つを軸に活動しています。子どもの体験格差を埋める活動を、地域や企業に支えてほしいという思いからマッチング会に参加し、複数の企業と連携が始まりました。
PwC Japan監査法人は、たねとしずくを利用する子どもたちが夏祭りに出店する際の企画立案をサポートすることになりました。子どもの主体性と信頼関係を大切にしながら、ワークショップでアイデアを引き出し、考え方のフレームワークを提示し、イベント企画やお金の流れについてもレクチャーを行いました。
たねとしずく 代表理事 大和陽子氏は「私たちの活動を理解し伴走してくださって、ありがたかった。プロジェクトが終わっても私たちの活動を見守ってもらえればと思うし、私たちが企業に貢献できることを見つけて、何かあったときに相談し合える関係づくりができればいいなと思う」と今後の期待を語りました。
動画〈YouTube〉|事例紹介2[外部リンク]
事例紹介3|社会的弱者の就労支援(就労困難者のICTスキルを活用)
[連携企業] 間口ロジスティクス株式会社
[連携団体] あたつく福祉型事業協同組合

間口ロジスティクス株式会社は、1901年に創業した物流企業・マグチグループの一つで、主に物流センターの運営や構内オペレーションを担っています。物流の現場では外国人をはじめ働く人材が多様化し、業務内容や仕事の使命を正確に伝えることの難しさが課題になっています。そこで、視覚的に業務を理解できる動画マニュアルを作成したいと思っていました。
一方、あたつく福祉型事業協同組合は、福祉を中心に、多様な分野の企業や団体が参加しています。奈良県の小さな事業体が集まり、地元の仕事を受注するため2017年に設立され、どんな人でも働くことを諦めない社会を目指しています。その一環として、就労困難者にICT講習や実習の場を提供しており、今回は動画編集のスキルを身につけた人に、間口ロジスティクスの動画マニュアルを業務委託の形で作ってもらうことにしました。
間口ロジスティクスにとっては、高品質な教育用動画マニュアルを、コストをおさえて作成できるだけでなく、管理者の業務負担軽減につながり、取り組み自体が企業理念である社会貢献を実践する機会となりました。あたつく組合に所属する就労困難者にとっては、動画制作を通じてICTスキルを向上させ、民間企業との連携による社会参加を実感することができました。あたつく組合の石塚康司氏は「この動画を作って終わりではなく、これからもいろいろな展開をさせてもらい、双方が成果を得られるWin-Winの関係を続けていきたい」と力を込めました。
パネルディスカッション
連携企業の3人が登壇し、パネルディスカッションが行われました。まずモデレーターの金田氏が全員に対して、ご自身以外の2つのケースに関する感想を聞きました。
PwC Japan監査法人の三澤伴暁氏は「住友ゴムは地域密着型で社会貢献活動をされていること、間口ロジスティクスは誰もが社会参加でき、スキルを活かして形に残るものを作られたことが印象的だった」、住友ゴムの越公美氏は「PwC Japan監査法人は団体の基盤づくりに関わっている点が素晴らしいと思った。間口ロジスティクスは、企業が経営リソースを提供する側というイメージを持っていたが、逆に連携先団体からお仕事をしていただくことで社会貢献になるというのが目からウロコだった」、間口ロジスティクスの大家龍時氏は「住友ゴムの地域密着というところに共感し、PwC Japan監査法人が子どもたちの活動をサポートされていたことに感銘を受けた。子どもの貧困が社会問題になっているので、我々もできることを模索したい」と話しました。

次に、金田氏はNPOと連携したメリットを3人に尋ねました。PwC Japan監査法人の三澤氏は「現地訪問で子どもやスタッフと直接関わることで、相手を理解することが出来、信頼関係の構築につながった。プロボノはクライアントサービスと同じく、初対面から対話を通じて課題の本質を見極め、課題解決に向かっていく。若手メンバーにとってもチャレンジしやすいプロボノは、業務に活かせる経験を積める貴重な機会にもなっている」と答え、さらに「職員のモチベーション向上、会社としてのブランディングにもつながっている。中途採用市場や新卒採用市場の人材に社会貢献をしたいと考える人が多いようで、採用活動にも効果がある」と語りました。
住友ゴムの越氏は「地域の困りごとに敏感なNPOの言葉や知見は、私たちにとって新規事業のヒントとなり、当社が目指す経済的価値と社会的価値の両輪を回す要素の一つと捉えている。当社では長年にわたり、地域を元気にする活動を各拠点で展開していて、地域や会社への愛着が育まれている」と話しました。間口ロジスティクスの大家氏は、あたつく組合が制作した動画を会場で流した上で「物流センターの社員はITスキルが高いわけでもなく余裕がない中、マッチング会であたつく組合と知り合い、コストをおさえて高品質な動画を作ってもらい、多様な人に仕事の内容や使命を映像で伝えられるようになった。それが就労困難者のスキルアップにつながり、双方にとって良い関係を作ることが出来た」とメリットを強調しました。金田氏は、社会貢献活動と本業の連動性は経済界でも議論されているとして、経団連の企業行動憲章、経済同友会の共助資本主義を紹介しました。
続いて、金田氏は、さらなる向上を目指して改善点や注意点について質問しました。
PwC Japan監査法人の三澤氏は「期間限定のプロジェクトでは終了後も効果が継続する形を意識し、専門用語や横文字を使わないように配慮した。子どもたちに接する際のグランドルールを教えてもらい、子どもたちが初めて直接触れ合う社会の大人としての責任を実感した。最も重視したのは支援内容のすり合わせで、してほしいこと・できること・できないことを率直に伝え合うこと、それができる信頼関係を築くことが大切だと考えている」と答えました。住友ゴムの越氏は「今回の活動で困ることはなく、全てスムーズに進んだ。それは宝塚NPOセンターの目指すゴールがとても明確で、そこに向かうために私たちができることを悩むことなく考えられたからだ。JANPIAと資金分配団体が団体に寄り添い、支えている効果が出ていると感じた」、間口ロジスティクスの大家氏は「苦労した点はなく、数回の打ち合わせで思いをくみ取ってもらい、うまく進んだ。今回の動画はオーソドックスな内容だったが、今後、物流センターごとにアレンジして連携させてもらえるなら、工夫が必要になってくるかもしれない」と話しました。
パネルディスカッションの締めとして、金田氏から3人に、今後の広がりについて聞きました。
PwC Japan監査法人の三澤氏は「法人としては、企業間連携を広める等、さらに活動の幅を広げていきたい。2年前のJANPIA主催の成果報告会でご一緒した企業との連携を皮切りに、産官学連携を促進している。今年から、共催で、企業のCSR担当者が集まる場づくりにも取り組んでおり、今後も業界や業種の垣根を越えて様々な方々のつながりを生む機会を提供していきたい。」と力強く話しました。住友ゴムの越氏は「これからは、NPOの基盤強化に貢献するプロボノ活動に挑戦していきたい。地域の課題に敏感で課題をよく認識されているNPOとの関係を作っていくことは、当社のCSV(共通価値の創造)につながると考えている。そのためにも、NPOとしっかりつながり対等に対話できる環境を整えることが重要になってくる」。間口ロジスティクスの大家氏は「間口ロジスティクスは障がい者雇用率が4.16%で、法定雇用率の2.5%を大きく上回っている。今回の取り組みを通じて、今後は障がい者や外国人、高齢者など皆さんが気持ちよく働ける環境をグループとして作っていければと思っている」と前向きに展望を語りました。
動画〈YouTube〉|パネルディスカッション[外部リンク]
