居場所の包括連携による全国モデルづくりに向けたアクションリサーチ : 大阪府高槻市における市域広域事業の取り組みから(1)~(3)|関西大学|関西大学人権問題研究室紀要 第85~87号|論文紹介
大阪府 全国対象事業
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休眠預金活用事業が取り上げられた論文を紹介する「論文紹介」。今回は「関西大学人権問題研究室紀要」に掲載された論文『居場所の包括連携による全国モデルづくりに向けたアクションリサーチ : 大阪府高槻市における市域広域事業の取り組みから(1)~(3) (岡本 工介)』を紹介します。
居場所の包括連携による全国モデルづくりに向けたアクションリサーチ : 大阪府高槻市における市域広域事業の取り組みから
【著者】
岡本 工介
(関西大学研究員・講師/タウンスペースWAKWAK業務執行理事兼事務局長)
【要約】(論文より引用)
岡本(2022)は、昨今、新型コロナ禍、社会的不利を抱える家庭に起こる課題の深刻化と支援の必要性について述べ、それらの状況に対し大阪の被差別部落を中心に社会的企業として課題解決を図ろうとする取り組みを取り上げた。そして、大阪府高槻市富田地区(以下富田地区)において一般社団法人タウンスペース WAKWAK(以下 WAKWAK)が支援を行うべく立ち上げた「市域広域包摂的なみまもりつながり事業」(以下市域広域事業)実践の一つである高槻市子どもみまもり・つながり訪問事業について実践報告としてまとめた。
今回の事例では、同事業のもう一つの実践である「居場所の包括連携によるモデル地域づくり(全国)(認定 NPO 法人全国子ども食堂支援センター・むすびえ休眠預金事業)を取り上げ、居場所の包括連携を生み出していくプロセスについてコミュニティ・オーガナイジング(以下、CO と略)の考え方を参照しながら実践報告としてまとめる。
藤井(2021)は英国において発展してきたシティズンズ UK による COについて論文『連帯の技法としてのコミュニティ・オーガナイジング―イ
ースト・ロンドンにおけるコミュニティ開発の現場から―』において以下のように紹介している。
CO は、米国の産業地域財団を創設し、公民権運動にも大きな影響を与えたソウル・アリンスキーを源流とする社会運動の技法であり、多様なアクターとの間で関係性を作り出すことでパワーを高め、社会変革を前進させる方法論である。(藤井 2021,107)CO については幾つかの流派が存在する。今回紹介する事業の基盤とな
る大阪府高槻市富田地区における社会変革の共創の取り組みについてはマーシャル・ガンツ博士によるパブリック・ナラティブに焦点を置いた COの技法を参照に拙著「コミュニティ・オーガナイジングによる社会変革の共創―高槻富田地区子どもの居場所づくりの取り組み―」としてまとめた。
そこで、本稿では、藤井(2020)が紹介する英国において発展してきたシティズンズ UK の CO を参照し「社会運動性」にも着目しながらまとめる。
以下では、まず WAKWAK の取り組みの経過とまちづくりの方向性の転換を紹介し、CO を通じて市域全域においていかに多セクターの共創を生み出したのか、そのプロセスをまとめる。また、それによって生み出された実際の事業について整理し論じていく。ここでいう「包摂」とは社会的包摂のことを指し、岩田(2008)による「排除されやすい立場にある人々を見過ごすことなく、社会の中へ包摂する考え方」のこととする。また共
創については大阪大学西尾総長(2020)による「共創(Co-creation)とは、
社会と『共に新たな価値を創造する』ことを目指す理念」とする。
本稿の取り組みは、筆者自身が一般社団法人タウンスペース WAKWAK業務執行理事兼事務局長としてこの実践に関わってきたため、筆者自身の活動紹介という側面も併せ持つ。
【本文中で紹介されている団体】
団体名 | 認定特定非営利活動法人 全国子ども食堂支援センタ ー・むすびえ |
採択情報 | ■2020年度通常枠〈資金分配団体〉 事業名:居場所の包括連携によるモデル地域づくり ■2020年度緊急枠〈資金分配団体〉 事業名:こども食堂への包括的支援事業 ■2021年度通常枠〈資金分配団体〉 事業名:こども食堂をハブとした地域資源の循環促進事業 ■2021年度緊急枠〈資金分配団体〉 事業名:こども食堂を通じた復興格差是正・防止事業 ■2022年度通常枠〈資金分配団体〉 事業名:地域の居場所のトータルコーディネート事業 ■2023年度通常枠〈資金分配団体〉 事業名:居場所のインパクト可視化を通じた地域活性化事業 ■2023年度活動支援〈活動支援団体〉 事業名:こども食堂ネットワーク団体基盤強化への伴走支援プログラムと持続的な「学びあいプラットフォーム」構築支援事業 ■2024年度通常枠〈実行団体〉 事業名:こども食堂を中心とした災害時の食の提供ネットワーク構築事業 ▷資金分配団体:特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム |
団体名 | 一般社団法人 タウンスペース WAKWAK |
採択情報 | ■2019年度通常枠〈実行団体〉 事業名:被災者支援からインクルーシブコミュニティネットワーク構築事業 ▷資金分配団体:一般財団法人 大阪府地域支援人権金融公社 ■2020年度通常枠〈実行団体〉 事業名:市域広域包摂的なみまもり・つながり構築事業 ▷資金分配団体:認定特定非営利活動法人 全国子ども食堂支援センタ ー・むすびえ ■2024年度通常枠〈実行団体〉 事業名:『未来にわたり住み続けたいまち・富田』を住民とともに創る休眠預金事業 ▷資金分配団体:一般財団法人 大阪府地域支援人権金融公社 ■2024年度緊急枠〈実行団体〉 事業名:低所得のひとり親家庭をはじめ社会的不利を抱える家庭のSOSを官と民、多セクター連携により発見し支援を届ける事業 ▷資金分配団体:グッドネーバーズ・ジャパン |