「対話」によって築いてきた連携ー休眠預金等活用制度の今までとこれからについて、事務局長に聞きました。 

休眠預金等活用法における指定活用団体である一般財団法人 日本民間公益活動連携機構(JANPIA)の活動が始まってから6年が経過。設立から今までの変遷と成果を振り返るとともに、2024年度の総合評価(速報版)の内容にも触れながら、今後の展望について大川昌晴事務局長に聞きました。 

対話を重ねて共に築いてきた、信頼と仕組み 

―まずは、JANPIA設立の背景について教えてください。 

2018年1月に「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律」(休眠預金等活用法)が施行されました。この法律は10年以上取引のない預金、いわゆる休眠預金を、NPOなどの公益的な活動を担う団体が事業に活用することで、社会課題の解決に貢献することを目的としています。こうした制度の理念を受けて、同法に基づく指定活用団体となることを目指して、同年7月に一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)によりJANPIAが設立され、公募の結果、2019年1月、内閣府により指定活用団体に指定されました。 

―2019年の4月から助成事業を開始されています。約6年間の事業のなかで、どのようなことを大切にされてきましたか? 

この事業は、社会課題の解消に向けて現場でさまざまな活動に取り組む「実行団体」、その中間に立って実行団体への資金支援や伴走支援を行う「資金分配団体」と、「指定活用団体」である私たちJANPIAの3団体が連携・協働して取り組んでいます。初年度は特に、休眠預金というお金の性質から助成金を受け取る団体に求める要件の設定など、適切に制度を運用していくための試行錯誤の時期がありました。そのような中で、私たちが最も大切にしてきたのが「対話」です。資金分配団体の代表者と意見交換をする場を設けたり、資金分配団体のプログラムオフィサーを中心とした有志の皆さまと業務改善のチームを設け、話し合いを重ねてきました。特に運用面について積極的に対話の機会を作り、改善に結びつけることができてきたと考えています。 

ほかにもさまざまな課題はありましたが、対話を大切にすることによって、資金分配団体の皆さまとの関係性を築いていくことにより、多くのステークホルダーとの連携と協働による、円滑な活動が可能になってきたのだと思います。 

―特に注力してきたのはどのような取り組みですか? 

私たちの活動の特徴の一つは、社会的インパクト評価を制度として取り入れていることです。実行団体は、開始・中間・終了の時点において、自団体で評価指針に基づいた評価の実施と報告を行う必要があります。一方で、評価の経験がある団体ばかりではないことから、資金分配団体向けに研修を実施したり、実行団体向けのハンドブックなども作成しています。 

また、資金配布団体にプログラムオフィサー(PO)という役割の人がいることを必須とし、事業の評価やプログラム設計、進捗のモニタリングといった実行団体への非資金的な伴走支援を行っていることも大きな特徴です。POの伴走支援と評価が組み合さることで、事業を効果的に進めるだけでなく、組織としての運営体制を整えることもできます。制度を活用している実行団体の多くは小規模な組織です。そのため、助成をきっかけに、初めて団体の規程類を定めたり、公開したりするケースが多々あります。助成を通じて事業を行うだけでなく運営体制を整えることで、団体としての基盤が整備され、持続的な活動につながっています。 

事業活動を振り返り、印象深かった出来事はありましたか? 

2020年からのコロナ禍という未曽有の状況において、休眠預金活用事業の枠組みを活用して私たちができることを考え、多くの関係者との意見交換を重ねて「新型コロナウイルス対応緊急支援助成」を行ったことは、制度にも大きな影響を与えました。助成期間が通常枠は最長3年のところ、緊急支援枠は最長1年とし、緊急的な支援を円滑に行っていただくために申請要件を見直したり、年に複数回の公募を行いました。そのこともあり、多くの事業へ助成を実施することができ、制度の活用も広がりました。 

この枠組みは、2022年にはウクライナ情勢に伴う原油価格・物価高騰に対応したり、2024年1月には能登半島地震に伴って深刻化した社会課題への緊急的な支援に対応するなど、緊急的に発生する課題に対応しながら継続しています。2025年度は、名称を「緊急枠」として、1年間で集中的に支援が必要な課題に即応する枠組みとして運用していく計画です。 

公募説明会で解説する大川事務局長

成果と課題——「2024年度総合評価」から振り返る

現在(2025年3月)速報版が公開されている「2024年度総合評価」では、助成終了後の団体の動きを追う「フォローアップ調査」が盛り込まれていますが、どのような目的があるのでしょうか?

休眠預金という、国民の資産を活用する制度である以上、その成果を分かりやすく提示する必要があります。特に、事業が終了した後にその団体がどうなっているのか、制度として中長期的にどんな成果が残せているのかを把握する必要がありました。そうした課題意識から実施したのが「フォローアップ調査」です。この調査では、成果を確認するだけでなく、どのような要因があれば事業が継続されやすいのかといった知見も得ることができました。

フォローアップ調査では、対象となった2019年度、2020年度通常枠採択団体のうち、助成終了後も支援活動を「拡大・発展している」「同規模で継続している」と回答した団体が77%と、事業継続率が高いことが示されています。こうした成果の要因について教えてください。

今回の調査で見えてきたのは、助成によって対象の領域に資金が投入されることで、現場にどのような変化が起きるのかという点です。支援活動が始まり、支援対象者と実際につながると、いわゆる「顔が見える」状態になり、必要な支援や適切なアプローチがより具体化していきます。ニーズに合った支援によって成果が得られると、団体もその事業の有用性を実感し、事業を継続するという次のステップへと進んでいくことが多く見られました。例えば、事業を発展させて収益化に取り組む団体もありますし、収益化が難しい場合でも、ニーズの可視化によって行政が関心を持ったり、企業との連携が進んだり、ボランティアが集まりやすくなったりといったポジティブな変化が起こっています。先に挙げたようにPOなどによる非資金的な伴走支援により実行団体の基盤整備が可能になり、組織として強化されたことも、こうした変化に寄与しているでしょう。

一方で事業が継続できないケースについても、いくつかの要因が明らかになりました。例えばコロナ禍などの影響もあったかもしれないのですが活動量が少なかった、当初予定した取り組みが機能しなかった、継続のための人材が確保できなかった、支援対象や地域のニーズとのミスマッチがあったなどです。。一方で、当初目的としていた課題が解決されたことで事業の必要がなくなったというケースや、行政に引き継がれたというケースもあります。今後は、こうした成果や背景を丁寧に検証しながら、真に支援を必要とする課題を見落とさないようにしていくことが大切だと考えています。

―「2024年度総合評価」には、休眠預金活用事業のロジックモデルや「JANPIAが目指す社会」も掲載されていますが、これらはどのような目的で作成されたのでしょうか?

ロジックモデルは、制度の戦略を可視化し、評価の枠組みを整理するとともに、私たち自身の業務改善にもつなげていくことを目的として作成しました。事業によってどのような成果(アウトカム)を目指すのかを明確にしています。

「JANPIAが目指す社会」については、JANPIAが指定活用団体としての役割を担い、資金分配団体や実行団体などの関係者とともに目指す世界観を共有し、分かりやすく対外的に説明していくツールとして作成しました。

作成にあたっては、JANPIA職員が全4回のワークショップを実施し、職員自身が日々の活動を振り返り、原案を作成。それをベースに、主に資金分配団体と意見交換を行い、取りまとめました。総合評価速報版の時点では制作過程のものを掲載していましたが、その後に議論を重ね、より共有がすすむようにイラスト化にも取り組みました。これを活用しながら、さらに刷新を続けていく予定です。

制度の力を未来へつなぐ

―今後のビジョンについて教えてください。

私たちの事業は、休眠預金を原資とさせていただいていますが、元はと言えば国民の資産であり、限りある貴重な資金です。新たな資金の流れとして、2023年度からは出資事業もスタートしましたが、先のフォローアップ調査の結果を踏まえて、出資で対応すべき事業領域も見極めていきたいと考えています。必ずしも事業化に適した領域のみを選ぶのではなく、財務的なリターンは大きくないかもしれないが課題解決のために民間の資金が入りにくい領域に出資するなど、必要なバランスを探っていくことがJANPIAとしての役割だと思います。

また、今まで取り組んできた活動を継続しつつ、これまでに蓄積されてきたものを5年後、10年後に向けてどう活かすかを考え、その担い手を増やしていくことにも力を入れたいと思っています。2024年に開設した休眠預金活用プラットフォームは、その起点となるものです。フォローアップ調査で判明したように、助成事業を機に関係者がつながっていき、連携によって自走していくことが可能になります。私たちはそうした人材をつなぐ橋渡し役を果たすと同時に、その担い手を育てていくことが、これからますます重要になっていくと感じています。

その担い手を育てる仕組みの一つが、「活動支援団体」の制度です。活動支援団体は、民間公益活動の担い手、または将来的にその担い手を目指す団体(支援対象団体)に対し、専門的なアドバイスや非資金的な支援を行う団体です。これまでは、現場で活動していく中で、評価の仕方や基盤整備に悩むケースも少なくありませんでしたが、活動支援団体が早い段階から伴走することで、より効果を生み出しやすくなることが期待されています。

6年間さまざまな変化をしてきましたが、事業開始以来大切にしている「連携」と「協働」、その実現のための「対話」の姿勢、これは揺らぐことはありません。誰のために、何のためにやっているのかという原点に、常に立ち返ることができる組織でありたいと思っています。


(取材日:2025年3月18日)

【追加情報】

本文中でご紹介している、「総合評価第3回」が2025年5月29日に公表されました。

以下リンク先からご覧いただけます。

総合評価 | 一般財団法人 日本民間公益活動連携機構(JANPIA)

休眠預金等活用法に基づく資金分配団体(助成)の公募に申請をご検討中の皆さまに向けて、2023年度通常枠・緊急支援枠、2021年度・2020年度通常枠の資金分配団体である「ちくご川コミュニティ財団」の栁田あかねさんに、休眠預金活用事業に申請した背景と現在の活動についてのお話を伺いました。 

休眠預金活用事業に申請した背景を自団体の活動と合わせて教えてください

一般財団法人ちくご川コミュニティ財団は、人の役に立ちたいという思いと活動をつなぐプラットフォームです。2019年に市民の力を得て、福岡県で初めてのコミュニティ財団として設立されました。

初めて休眠預金活用事業にチャレンジしたのは、2020年度通常枠の事業です。3か年の計画で、困難を抱える子ども若者の孤立解消と育成というテーマに絞って事業を進めました。次の2021年度通常枠の事業では、誰一人取り残さない居場所づくり、学びの場における子ども若者の孤立解消と育成というテーマで、いわゆる不登校の子ども若者をサポートする実行団体と3年間の事業を始めました。2023年度通常枠の事業では、困難を抱える家庭を取り残さない仕組みづくり、子ども若者とその家族のためのコレクティブインパクトと題した3か年の事業を始めました。さらに2023年度第4次募集の緊急支援枠の事業にチャレンジして、子育てに困難を抱える家庭へのアクセシビリティ改善事業、多様なつながりが生まれる仕組みづくりということで、限られた期間の中でとにかく支援が必要な層に、必要な支援を届けようという事業をスタートさせました。

ちくご川コミュニティ財団は、この4つの事業を一連の流れとして取り組んでおります。

申請を行うために準備で取り組んだことを教えてください

4つの事業の申請をはじめるにあたり、最初に取り組んだことは、自団体のメンバーで話し合うことからでした。どこに社会課題を感じているか、どの地域でその事業を調査分析していくかなどをメンバー全員で考え、同じ目標を持つところから始めました。

次に、その対象地域の中で調査を始めました。その地域で活動している様々な市民社会組織の方々にアンケートを取り、アンケートの中で明らかになった社会課題を解決するために、市民社会組織の皆さんや行政などにヒアリングをしていきました。ヒアリングの結果を分析し、評価アドバイザーにも相談しながら、事業設計を行いました。

実行団体の伴走支援の内容や工夫していることを教えてください

私たちの伴走支援はすごく強力で、すごく濃密なものになっています。また、分野も多岐にわたっております。

例えば、休眠預金活用事業ですごく大事されている評価です。事前評価、中間それから事後、それぞれの評価のフェーズに沿って伴走しています。もちろん評価に取り組むことは、ある意味負荷がかかることでもあると私たちも思っていますが、評価に取り組むことで実行団体の事業終了後に絶対、力はつくと思っていますので、出口戦略の一つとしても、評価については力を入れています。また、事業そのものの運営を持続可能なものにするための資金調達では、ファンドレイザーの資格を持つPOがしっかり実行団体の無理のないように計画を立て、その時抱えている悩みと照らし合わせながら、資金調達の計画を一緒に立てていきます。広報の面では、例えば、伝わるウェブサイトにするにはどうしたらいいのか、定款や規程類をどういうところにおけば団体が信頼を得られるかかなども、一緒に考えています。

それから日々、受益者や支援してくれる方に向けて、あるいはその地域の行政や企業の方々に向けても、様々なステークホルダーごとの情報伝達の仕方について一緒に考えています。SNSだけではなく、紙で作るニュースレターなどの定期刊行物、アニュアルレポートの発行や編集のアドバイスもしています。

休眠預金活用事業を通じて、よかったことについて教えてください

休眠預金活用事業で一番いいと思うのは、三層構造だということです。JANPIAと資金分配団体と実行団体が同じ目標に向かって社会課題解決のために走っていく、この仕組みがすごくいいなと私は思っています。資金分配団体である私たちが助成金を交付するというフローにはなっていますが、お金を届けだけではなくて、実行団体の伴走も行います。また、何より資金分配団体の私たち自身も、JANPIAに伴走されており、3者そろって同じ目標に向かっていけるのが一番いいと思っているポイントにです。

申請を考えている方へメッセージをお願いします

休眠預金活用事業の資金分配団体になると、たくさんの仲間と出会うことができます。例えば、ちくご川コミュニティ財団の場合、最初はたったひとりのPOしかいませんでしたが、事業を始めて4年目の今は6人のPOがいます。自分たちの団体での仲間がだんだん増えていくだけではなく、地域で一緒に社会課題を解決するための仲間、つまり実行団体の方々と出会うことができます。

さらに、全国にいる資金分配団体の仲間と出会うことができます。横のつながりがどんどん広がっていくことによって、自分たちが日々やりたいことや解決したいことに向けてグッと背中を押してもらえる。そんな存在に、この休眠預金活用事業を通して出会えると思っています。

ぜひ、資金分配団体にチャレンジして、まだ出会っていない仲間のに出会ってください。

〈このインタビューは、YouTubeで視聴可能です! 〉



(取材日:2024年6月13日)

グラミン日本 2023年度休眠預金活用事業「デジタル・スキル研修&就労支援を通じたシングルマザーのエンパワーメントと地域格差の解消」に採択された実行団体BlessUの代表 中居知子さんのインタビュー動画をご紹介します。

グラミン日本 2023年度休眠預金活用事業「デジタル・スキル研修&就労支援を通じたシングルマザーのエンパワーメントと地域格差の解消」に採択された実行団体キャリアマムの代表 堤 香苗さんのインタビュー動画をご紹介します。

グラミン日本 2023年度休眠預金活用事業「デジタル・スキル研修&就労支援を通じたシングルマザーのエンパワーメントと地域格差の解消」に採択された徳島の実行団体ウィズワークラボの代表 角 香里さんのインタビュー動画をご紹介します。

グラミン日本 2023年度休眠預金活用事業「デジタル・スキル研修&就労支援を通じたシングルマザーのエンパワーメントと地域格差の解消」に採択された実行団体株式会社うむさんラボの代表 比屋根 隆さんのインタビュー動画をご紹介します。

休眠預金等活用法に基づく資金分配団体(助成)の公募申請をご検討中の皆さま向けて2023年度通常枠・緊急支援2021年度・2020年度通常枠の資金分配団体である「ちくご川コミュニティ財団」の栁田あかねさんに、休眠預金活用事業に申請した背景と現在の活動についてのお話を伺いました。

有限責任事業組合まちとしごと総合研究所 2022年度休眠預金活用事業「京都の若者へ寄り添うアプローチによる生きる基盤支援事業」で採択された実行団体 特定非営利法人happinessの代表 宇香 明香さんのインタビュー動画をご紹介します。

一般財団法人ちくご川コミュニティ財団(福岡県久留米市)は、2020年度から福岡県久留米市を中心とした筑後川流域の実行団体の伴走を続けています。ちくご川コミュニティ財団 理事でありプログラムオフィサーでもある庄田清人さんは、理学療法士の経験から「評価は治療と表裏一体だった」と話し、治療と同じように事業にとっても評価が重要だと指摘します。社会的インパクト評価に対する考え方や、実行団体に「社会的インパクト評価」を浸透させるためのアプローチについて聞きました。(「資金分配団体に聞く社会的インパクト評価への挑戦Ⅱ」です)

ちくご川コミュニティ財団とは?

ーーまず、ちくご川コミュニティ財団のミッションや設立の経緯を教えていただけますか。

庄田清人さん(以下、庄田):ちくご川コミュニティ財団は、筑後川関係地域の市民・企業の皆さんの「人の役に立ちたい」という想いと活動をつなぐことをミッションに、市民や企業の方々が資金、スキル、情報等様々な資源を、筑後川関係地域の課題解決に取り組むCSO(市民社会組織)へ提供しています。CSOの方々と支援者の方々を繋ぎ合わせるプラットフォームの役割です。

私たちの財団がある福岡県久留米市は人口30万人ほどで、九州の中では比較的大きな中核市です。CSOは多いのですが、行政による中間支援が十分とは言えません。そこで、市民が主体的に公益を担う社会を実現するために、2019年8月にちくご川コミュニティ財団が立ち上がりました。福岡では初のコミュニティ財団です。

お話を伺った庄田さん

ーーなぜ団体の所在地である「久留米」ではなく、「ちくご川」を財団名にしたのですか?

庄田:九州最大の河川である筑後川流域は、生活や文化が重なっているエリアです。例えば、久留米市から佐賀に通う人も、その逆もいます。CSOの活動は行政区分を跨って生活圏に沿って行われていることが多いのに、私たちが活動対象とする地域を行政区分で区切ると、地域によって私たちの支援も区切られてしまって、連携や協働が起きにくいのではないかと考えました。そこで、「ちくご川コミュニティ財団」と名前をつけ、筑後川関係地域(佐賀、福岡、大分、熊本県)を活動地域としました。

実施している助成プログラムについて

ーー休眠預金活用事業への申請にはきっかけがあったのでしょうか

庄田:私たちは設立前からお隣の佐賀県にある佐賀未来創造基金をお手本にしていて、休眠預金等活用制度についても教えていただいていました。なので財団設立前から休眠預金活用事業にチャレンジしようと考えていました。2019年8月に財団ができて、その翌年にはチャレンジし、2020年度の通常枠で最初の採択をいただきました。

ーー現在、休眠預金活用事業で取り組まれている2020年度、2021年度通常枠の2つの助成プログラムについて教えてください。

庄田:2020年度の通常枠事業では、「子どもの貧困」「若者の社会的孤立」の2つのテーマで実行団体を公募し、2団体を選定しました。
1つ目は、久留米市内で貧困世帯の子どもたちに対して、無料の塾と食支援を10年以上やられてきた「認定NPO法人わたしと僕の夢」です。支援してきた子どもたちが高校入学後に退学や不登校になってしまう課題が見えてきたため、高校生支援をメインに居場所づくりやピアサポートなどに取り組んでいます。

2つ目は、朝倉市の中山間地域で児童養護施設を退所した後の若者たちをメインに受け入れる家づくりに取り組む「みんなの家みんか」です。自立援助ホームなどもありますが、年齢制限や様々な理由で退所してしまう若者に居場所を提供しています。また、豊かな自然資源を利用し担い手不足が深刻な一次産業の担い手になってもらうことも目指しています。

「わたしと僕の夢」による学習支援の様子(左)、「みんなの家みんか」による自然学習の様子(右)
「わたしと僕の夢」による学習支援の様子(左)、「みんなの家みんか」による自然学習の様子(右)

2021年度通常枠事業では、「学校に行けない、行かない子ども若者(所謂、不登校の子ども若者)」をテーマにしています。2021年度の不登校数は全国で24万人を超えてきていて、課題として大きくなっています。我々も地域の将来を考えた時に、その担い手となる子どもたちに学びや成長の場がないという状況は、喫緊の課題だと考えました。そのため、このテーマを選定し、案件組成を行いました。

公募した結果、フリースクールを運営している3団体を選定しました。

1つ目は、フリースクールを17年続けている認定NPO法人箱崎自由学舎ESPERANZAです。フリースクールの月謝は全国平均で3万3000円という文科省の調査結果があります。それが払えずにフリースクールに通えない子どももいます。通ってほしいのに通えない、そういった子どもたちに対しての家計支援制度を考えていくための調査研究事業に取り組んでいます。

2つ目は一般社団法人家庭教育研究機構で、学校の中に校内フリースクール立ち上げる事業を行っています。九州では初めての取り組みです。校内にあることで、長年、学校に行けてなかった子どもがそのフリースクールに通い出してすぐに普通学級にも通えるようになったケースもありました。この団体は、課題を抱える子どもたちにアウトリーチしていくために、学校外フリースクールや家庭への訪問活動も取り組んでおり、それに加えて校内フリースクールを立ち上げ、3本柱で活動を進めています。

3つ目の団体が、久留米市のNPO法人未来学舎です。このフリースクールは個性豊かな子どもたちを受け入れて、地域との関わりを大事にしながら、生きる力を育てています。音楽を通して子どもたちの成長を促すなど、ユニークな取り組みをしています。また、通信制高校のサポート校やカフェ運営による若者の就労支援など多様な方法で子ども、若者を支えています。

認定NPO法人箱崎自由学舎ESPERANZによる学習支援の様子(上左) NPO法人未来学舎による梅しごとの様子(上右) 一般社団法人家庭教育研究機構による昼食準備の様子(下)
認定NPO法人箱崎自由学舎ESPERANZによる学習支援の様子(上左) NPO法人未来学舎による梅しごとの様子(上右) 一般社団法人家庭教育研究機構による昼食準備の様子(下)

ー21年度は3つの実行団体が「フリースクール」という同じテーマで取り組まれていますが、20年度との違いはありますか?

庄田:どの団体も共通した課題意識を持っていることが大きいです。今年2月に事前評価のワークショップをやったのですが、実行団体同士での共通の悩み、課題感があるのですごく深いところまで意見交換をできました。ただ、三者三様に色が違う団体なので、資金分配団体としてどうまとめていくかが力の見せどころです。これがうまくいけば、フリースクールに通う子ども向けの経済的な支援制度についての道筋が見えたり、校内フリースクールが他の地域でも展開できる見通しがついたりするはずです。あと2年ですが、達成できそうなことが見えてきたのではないかと思います。

社会的インパクト評価は事業と表裏一体

ーー庄田さんはこれまでにも事業評価に関わった経験があったのでしょうか。

庄田:元々、私は理学療法士として働いていました。理学療法士の教育の中で1番最初に教えられるのが「評価」で、「評価は治療の一部」「評価に始まり、評価に終わる」とまで言われています。なので、休眠預金等活用制度でも「評価」も大事だと最初に聞いた時、人の体が事業に置き換わったということだなと納得感がありました。

例えば理学療法士だと、治療のために筋力トレーニングをする際にも、この負荷量だとこの人の筋肉は成長しない、というような評価をしつつ進めていきます。治療によってどんな変化が起こったかを見るのも評価の一つです。そういう意味で、「評価」と「治療」は表裏一体で当たり前にぐるぐる回しながらやっていました。


さらに2014年から2年間、青年海外協力隊としてアフリカのマラウイに行っていました。ワークショップなどで地域住民のニーズを引き出して、プロジェクトを企画運営していく活動です。その中で自分なりにロジックモデルに似たものを作り、事業をどう動かしていくか考えてきた経験も今に活きていると感じます。

ーー実際に社会的インパクト評価をやってみて、医療での評価と違う難しさはありましたか?

庄田:「人の体」と「事業」は、変数が違いますね。医療だと、僕が患者さんを一人で常に見ることができるので変化もわかりやすい。事業になると、人の体と違って、関わるステークホルダーがとても多く、組織自体の状況、財務的な状況などの変数も関わってきます。そのため例えば何か活動に介入をして変化が起こった時に、それが介入によって起こった変化なのかがわかりづらいという難しさは非常に感じます。


でも本質的には一緒です。その変数をしっかりと把握することが大事だと思っています。その変数の把握をするために、おそらく私たちPOの専門性が必要になってくるのではないかと思います。

ーー実行団体に対して評価の重要性を伝えるアプローチとして、どんなことをされていますか?

庄田:「評価」という言葉になるべく早く触れてもらうようにしていて、実行団体の公募の申請時点で、「評価」については必ずお話しています。「ロジックモデル」をやってもらうと、どの実行団体さんも「頭の中がスッキリした」と言われるので、これを入口に評価に入ってもらう流れです。本当は公募申請時の「ロジックモデル」の提出を必須にしたいと思っていますが、現在は「推奨」している状況です。

ただやはり、事前評価が終わるまでは、実行団体も頭ではわかっているけれど評価の有効性を実感することは難しいとも感じています。ただ、事前評価は重要だと考えているので、約半年ほどかけて事前評価をやりながら事業も実施してもらっています。評価は治療と表裏一体のため、事業(治療)を進めることによって新たにわかる対象者の変化を測定すること(評価)も重要視しています。なかなか厳しいですが、筋力をつけていくため負荷をかけて頑張ってもらっています。

ーー事前評価の後は、通常の活動の中でどのように評価を取り入れている状況でしょうか?

庄田:実行団体の皆さんは、評価に取り組むことで、必要なアンケートの設計や、参与観察などの調査方法が確実にできるようになってきています。アンケート一つでも、項目をどうするのか、どうやって収集するのか、どう結果をまとめるのかなど、かなりの要素があります。このような調査が定期的にやっていけるようになったのは、とても価値があることだと感じています。

最近は、評価の継続について考えています。休眠預金活用事業が終わった団体は、「評価」をやらなくなってしまうのではないかという懸念があります。マンパワーという課題以外にも、評価に取り組む動機づけも必要ですし、調査した結果をロジックモデルや事業設計に反映させていく際には壁打ち役も必要なので、助成終了後の伴走の仕組みがあってもいいのではないかと思っています。

事業キックオフミーティングの様子(左:2020年度、右:2021年度)
事業キックオフミーティングの様子(左:2020年度、右:2021年度)

地域の持続可能性向上のために、組織の成長をめざす

ーー最後に、今後どのように伴走されていくのかや今後の展望を教えてください。

庄田:「クールヘッド」と「ウォームハート」が絶対に必要だと思っています。根拠に基づかないウォームハートは、本当の優しさではありません。そこを大事にしながら、実行団体さんに伴走していきたいと思っています。中長期的には、この地域の持続可能性をどう向上するかが非常に重要だと考えています。子どもの貧困、若者の社会的孤立、不登校などの取り組んでいるテーマがそこにつながってくるのかなと思います。

実行団体の皆さんだけでなく、ちくご川コミュニティ財団自身が休眠預金等活用制度に育ててもらっていると感じています。休眠預金活用事業を行っている中で、「環境整備・組織基盤強化・資金支援」を私たちが継続的にできるようになっていけば、筑後川関係地域の市民活動は活性化できることが見えてきました。加えて、資金調達についてみると、休眠預金活用事業を始める前と比べると、我々の財団への寄付額が3倍になりました。長期的には私たちの活動を休眠預金等活用制度に頼らずにどうやっていくかということも考えなければなりません。この制度を通じて学んできたものを持続可能にするために、ちくご川コミュニティ財団自身も実行団体とともに組織として成長していきたいです。

庄田さんによる実行団体への伴走支援の様子、2021年度事前評価WSの様子
庄田さんによる実行団体への伴走支援の様子、2021年度事前評価WSの様子

■ 事業基礎情報【1】

資金分配団体一般財団法人 ちくご川コミュニティ財団
事業名

困難を抱える子ども若者の孤立解消と育成 ~子ども・若者が学び、自立するための居場所とふるさとをつくる~
<2020年度通常枠>

活動対象地域筑後川関係地域(福岡都市圏及びその周辺地域)
実行団体

・みんなの家みんか

・特定非営利活動法人 わたしと僕の夢

■ 事業基礎情報【2】    

資金分配団体一般財団法人 ちくご川コミュニティ財団
事業名

誰ひとり取り残さない居場所づくり<2021年度通常枠>

活動対象地域

筑後川関係地域(福岡県、佐賀県東部、大分県西部、熊本県北部)

実行団体

・一般社団法人 家庭教育研究機構・特定非営利活動法人 未来学舎・特定非営利活動法人 箱崎自由学舎ESPERANZA

休眠預金活用事業では、社会的インパクト評価の実施が特徴の一つとなっています。一方、資金分配団体や実行団体の中には評価の経験があまりない団体も少なくありません。 NPO法人 地球と未来の環境基金 (EFF:Eco Future Fund) とそのコンソーシアム構成団体である NPO法人持続可能な環境共生林業を実現する自伐型林業推進協会(自伐協)も初めて評価に本格的に取り組む団体の一つでした。評価の実践を通じての気づきと成果、実行団体に伴走する上で実感した課題や成功体験、そして社会的インパクト評価の視点が活かされたエピソードなどについて、自伐協事務局の中塚さんと、 EFFの理事・プログラムオフィサー美濃部さんにお話を伺いました。”

そもそも、自伐型林業とは?

───まず、今回の事業の趣旨である「自伐型林業」とは、どのようなものなのか。中塚さんより簡単にご説明いただけますでしょうか。


中塚高士さん以下、中塚)はい。自伐型林業とは、地域の山を地域の人たちで管理する形の林業です。チェーンソーと小型重機・運搬用のトラックがあれば、個人や少人数で低コストから始めることができます。

そもそも従来の林業は、大規模な伐採が必要な「現行林業」が主流でした。戦後復興に伴い木材の需要が高まっていた時代、山林にたくさんの大型機械と人材を投入し、大規模に植樹と伐採を行うスタイルが確立していたのです。

しかし需要が落ち込むに連れ、そのような大規模な林業の経営を持続的に行うことが難しくなっていきました。そこで近年注目されているのが、「自伐型林業」です。

林業従事者が減少し続ける中、「新しい田舎での暮らし・仕事のあり方」として若者や移住者からの注目も集まっています。また国土の7割を占める日本にとって、山林を活用した「地方創生の鍵」としても全国の自治体から期待が高まっています。

「休眠預金活用事業」への申請の背景

「失業者を救う自伐型林業参入支援事業」の実行団体である東北・広域森林マネジメント機構の研修風景
「失業者を救う自伐型林業参入支援事業」の実行団体である東北・広域森林マネジメント機構の研修風景

───そういった林業の歴史やスタイルを踏まえ、休眠預金活用事業への申請の背景・経緯について、お聞かせいただけますか。 

 

中塚:現行林業については、国の取り組みとして林業従事者を育成する支援も多く実施されてきました。しかし自伐型林業を含め、小さな林業従事者に向けた育成や研修プログラムはほとんどありません。「地域の山を守る仕事がしたい」「新しい働き方として林業に挑戦したい」と意欲ある新規参入者がいる一方で、機械の使い方や木の切り方がわからない、学ぶ場もない……、という課題がありました。 

 

それならば、国の手が行き届かない小さな林業従事者に向けた育成・研修支援を実施しよう!と決意をし、その資金繰りとして、休眠預金活用事業への申請を検討し始めました 

 

そのような中、自伐協にもコロナで生活困窮されている方からの声は届いていました。 

 

「もう都会を離れて田舎でやるしかない」 

「勤めている会社が業績悪化で休業状態なんです」 

「観光客が減ってしまったから、林業も兼業したい」 

 

そういった方々に向けて、何かできることはないか?と考えていたところ、資金分配団体(20年度コロナ枠)の公募が始まったので、非常に良いタイミングで申請をさせていただいたと思っています。 

「失業者を救う自伐型林業参入支援事業」の実行団体である九州地区自伐型林業研究会の研修メンバー(左)と道を作ってる様子(右)
「失業者を救う自伐型林業参入支援事業」の実行団体である九州地区自伐型林業研究会の研修メンバー(左)と道を作ってる様子(右)

事業をする中で感じた課題・難しさ

───今回の事業を進める上で課題や難しさはありましたか? 

 

美濃部 真光さん(以下、美濃部)実行団体のさんも、私たち自身も、自型林業に関わる団体なので、森づくりの活動についての計画や目標設定は得意分野なのです。しかしコロナ枠ではコロナ禍においての失業者されている方を救うための助成という慣れないテーマということで、もちろん志は高く持っていましたが事業を進めるうえでは四苦八苦しました。そのため実行団体の事業計画策定の時期に、これまで経験がある「森づくりに関する研修の実施」にどうしてもフォーカスしてしまって、コロナによる生活困窮支援という視点が弱くなっていたことに事業実施途中で気が付いたのです。 

 

どれくらいコロナ禍における生活困窮支援につながったのか?という部分の目標設定曖昧だと、事業の成果も正確に測れません。当時は緊急助成ということで事業の実施を急いでいたこともありましたが、そこが一番の反省点でしたただ実際実行団体の各現場では、研修を実施して終わりではなく、受講された一人一人に対して丁寧に相談対応されていたので、その成果示すために、研修参加者に事後的にアンケートをとました。アンケート結果を実行団体の皆さんがコロナ枠の事業の後半戦に生かしてくださったっていうところが、事業の成果を高めるうえでとても大きかったと思っております。 

 

───他に、社会的インパクト評価を実施する上でも難しさありましたか? 

 

中塚:休眠預金を活用させてもらっている以上、成果報告もしっかり行いたいと思う一方、林業従事者の方々にとって書類作成の作業は不慣れな部分が多く、サポートをする私たちも苦戦しました。実際、書類の中で実施内容と成果をごちゃ混ぜに書いてきたり、要点がまとまっていなかったり。やって終わり、ではなく評価を可視化する難しさを感じました。 

「失業者を救う自伐型林業参入支援事業」の実行団体である奥利根水源地域ネットワークによる道づくり(左)と薪づくり(右)
「失業者を救う自伐型林業参入支援事業」の実行団体である奥利根水源地域ネットワークによる道づくり(左)と薪づくり(右)

“評価”をやってみての気づき

───評価に取り組んで、どのようなことを感じていますか? 

 

中塚:苦労はしましたが、これまでやってこなかった「評価」を意識できたのは良い経験でした。最近、伐協においても、自治体との事業非常に増えてきたのですが、これまでだったら勢い任せに「研修をやりますよ!」と提案していたところも、根拠や計画を示しながら要素を整理して説明できるようになりました。どうやったら自型林業が、個人の生業に、地域の貢献につながるか?」を定量・定性の側面からお伝えできています。 

 

美濃部:私もこれまでは、ロジックモデルの構築やアウトカムを想定した目標設定などに不慣れだった分、休眠預金活用事業を通じて経験できたことで大変勉強になりました。NPO法人が解決したいと思う社会課題は、人々の関心が寄せられていないからこそ、そこに課題があると思っています。無関心層の人々に対して、いかにしてコミュニケーションを取るべきか。そこを論理的に説明できなければ、私たちを含めたNPO法人の発展性はないと思っています。なので評価を含めた本事業の運営を経験できたことは、今後の私たち自身の活動にとっても良かったと思います。 

 

「失業者を救う自伐型林業参入支援事業」の実行団体である天竜小さな林業春野研究組合がめざす「役場機能を真ん中に、食・水・森林・エネルギー・教育・育児・医療・福祉をつなぐ持続可能なコミュニティ」(左)と作業小屋と団体メンバー(右)
「失業者を救う自伐型林業参入支援事業」の実行団体である天竜小さな林業春野研究組合がめざす「役場機能を真ん中に、食・水・森林・エネルギー・教育・育児・医療・福祉をつなぐ持続可能なコミュニティ」(左)と作業小屋と団体メンバー(右)

───実際に、評価が活かされたと感じるエピソードはありますか? 

中塚:各実行団体で行った研修の講師陣が、研修終了後も受講生と連絡を取り、定着のサポートをしていたことです。そこまでの講師陣の熱量の高まりは想定外のできごとでした。 

事務的に研修を行い、人数や日数といった数字だけを気にするのではなく、今回の事業の目的である「コロナ禍による生活困窮支援」ということを評価を通じて講師陣もしっかり認識し、それぞれの地域に戻って就業していく受講生たちのこれからを慮り、その後の活動や人生にも目を向けたサポートをしたい!という想いが芽生えたようです。 

実際、事業終了後も、受講生の地域を見に行ったり電話で連絡を取ったりと、研修の域を超えた関係が続いているとのことです。これは思いもよらぬアウトカムでした。定着までしっかりサポートしようという講師陣の姿勢は、評価に向き合ってきたからこそ、つながったのではないかと考えています。 

「失業者を救う自伐型林業参入支援事業」の実行団体であるふくい美山きときとき隊の研修風景(左)とチェンソーの安全講習(右)
「失業者を救う自伐型林業参入支援事業」の実行団体であるふくい美山きときとき隊の研修風景(左)とチェンソーの安全講習(右)

今後について

───最後に、今後の展望についてもお聞かせください。 

 

中塚:研修に参加さる方や関心を持ってくださる方には、林業の技術だけでなく、生業にしていくために必要な知識もセットでお伝えしていきたいです。 

 

実際、地域で自伐型林業を始めるとなると、山や機械を確保したり、販路を考えたり、他の自治体の事例を見せながらどんな地域貢献につながるかを自治体に説明したり、やらなければならないことが多方面にわたって出てきます。 

 

新たに採択を受けた22年度コロナ枠では、実行団体の皆さんとそういった自伐型林業を続けていくため必要な総合的な支援を生活困窮者の皆さんに向けてお伝えし就業に結び付けていけたらと考えています。助成規模も20年度コロナ枠と比較して大きくなりましたし実行団体の採択も全国に広げていきたいです 


美濃部:休眠預金活用事業に取り組めたこと自体が、とても良かったと感じています。EFFの強みである助成金プログラムの運営を活かしつつ、中塚さんたち自伐協や、ランドブレイン株式会社という他分野の団体とコンソーシアムを組んで助成事業を展開できたことは非常に学びがありました。 

 

実際、今回を機に多方面から「一緒に休眠預金活用事業ができないか?」というような声もいただいていて。これからは農業や福祉との連携など、さまざまな切り口での展開に可能性を感じています。なのでこれからまた、申請について検討し、ご相談させていただくかもしれません。よろしくお願いします!

取材に応じてくださった美濃部さん(左)と中塚さん
取材に応じてくださった美濃部さん(左)と中塚さん

【事業基礎情報】

資金分配団体

特定非営利活動法人 地球と未来の環境基金

2020年度緊急支援枠コンソーシアム構成団体
・特定非営利活動法人 持続可能な環境共生林業を実現する自伐型林業推進協会

▽2020年度通常枠&2022年度コロナ・物価高騰枠コンソーシアム構成団体
・特定非営利活動法人 持続可能な環境共生林業を実現する自伐型林業推進協会
・ランドブレイン株式会社

助成事業

〈2020年度緊急支援枠〉
失業者を救う自伐型林業参入支援事業
~アフターコロナの持続・自立した生業の創出~[事業完了]

〈2020年度通常枠〉
地域の森林を守り育てる生業創出支援事業
~中山間地域における複業型ライフスタイルモデルの再構築~

〈2022年度コロナ・物価高騰対応支援枠〉
自伐型林業地域実装による森の就労支援事業
ー生活困窮者が未来に希望を見出す仕事の創造ー 

活動対象地域
全国
実行団体

〈2020年度緊急支援枠〉

  • 一般社団法人 東北・広域森林マネジメント機構
  • 特定非営利活動法人 奥利根水源地域ネットワーク
  • 天竜小さな林業春野研究組合
  • 一般社団法人 ふくい美山きときとき隊
  • 九州地区自伐型林業連絡会


〈2020年度通常枠〉

  • 合同会社 百
  • 株式会社 ワイルドウインド
  • 株式会社FOREST WORKER
  • 一般社団法人 ディバースライン
  • 株式会社皐月屋

〈2022年度コロナ・物価高騰対応支援枠〉
※審査中