【事後評価】九州のスター的な農家による農福連携事業(株式会社クロスエイジ)
報告書要約
本事業は、一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)が公募する休眠預金等活用事業
の一環として、株式会社クロスエイジを資金分配団体とし、九州を中心とした売上規模のある農業法人
6 団体(春口農園・耕佑・常笑ファーム・なかせ農園・山都でしか・朝日のあたる家)を実行団体として採
択・実施した「九州のスター的な農家による農福連携事業」である。
事業の背景には 3 つの社会課題がある。第一に、農村部における慢性的な人手不足と高齢化。第二
に、原油・物価高騰による農家所得の圧迫。第三に、都市部と地方における障がい者の就労機会の不
均衡である。これらを同時に解決するため、大規模農業法人が福祉部門(就労支援事業所)を内製化
し、障がい者の安定的な就労機会を創出する「農業経営内製型農福連携モデル」を構築することを事業
目的とした。単なる業務委託型の農福連携ではなく、農業経営の中核に福祉機能を組み込み、持続可
能な事業として成立させることを重視した点に本事業の特徴がある。
3 年間の事業期間を通じて、全 6 団体が就労支援事業所(A 型または B 型)を開設し、合計 70 名の
障がい者が利用者として就労するに至った。設立時期には団体間で差が生じたものの、出口戦略として
掲げた「全団体での事業所開設・始動」は助成期間内に達成された。資金的支援として施設整備・設備
導入等の初期投資を手当てし、非資金的支援としてガバナンス規程整備(全団体で 58 項目・19 規程を
100%完備)、月次伴走支援、集団視察研修(3 年間で 6 回)を実施した。
成果面では、春口農園が A 型事業所で当初目標 10 名に対し利用者 19 名を確保し月額約 300 万円
の制度収入を安定的に確保するなど、先行 4 団体は収益基盤を確立しつつある。朝日のあたる家は農
福連携の枠を超え、廃棄物を活用した堆肥化事業や環境省事業への採択など循環型農業への展開を
見せた。後発 2 団体は開設直後であり、利用者の定員充足と運営安定化が当面の焦点となる。
得られた教訓として、農業と福祉の論理を「翻訳」できるコーディネーター人材の不可欠さ、作業切り出
しの標準化・可視化が生産性と利用者の安心感の双方に直結すること、中山間地域におけるサービス
管理責任者(サビ管)の確保が構造的なボトルネックであることが明らかになった。
今後は、本事業で構築した基盤を活かし、作業切り出しノウハウの共有による面的展開、大規模農業
法人の内製化に限定しない多様な参入経路の提示、さらには林業・水産業への「産福連携」への拡張
が、本事業の成果を社会全体に波及させる鍵となる。本事業は、農福連携を業務委託型から経営戦略
型へと昇華させる可能性を示すものであり、地域農業と福祉双方にとっての新たな事業モデルの実践
知として活用されることを願っている。
引用資料
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