【事後評価】困難を抱える若年女性に対する多様な<居場所>の創出・拡大事業(特定非営利活動法人Sisterhood)
報告書要約
山形県村山地方において、若年女性が直面する社会的孤立と〈生きづらさ〉の解消を目指した本事業
は、地域特有の保守的な性役割意識や不安定な雇用環境という構造的課題に対し、安心できる〈居場所〉の
創出と支援ネットワークの構築という多層的なアプローチを展開し、事後評価時点において確かな社会的イ
ンパクトを創出した。女性の非正規雇用率が男性の約3 倍に達し、三世代同居率が全国1 位という家父長
制的な価値観が根強いこの地域では、既存の行政支援からこぼれ落ちていた単身・未婚の若年女性が「支援
の空白地帯」に置かれていた。本事業は、市民活動組織ならではの柔軟さで〈ジェンダー・センシティヴな
視点〉をもった支援を提供することで、この構造的な問題に挑んだものである。
活動の核となった常設のフリースペース「Mayflower」の運営は、食料提供や就活スーツ貸与といった
生存基盤の保障にとどまらず、複雑な社会制度との「翻訳者」としての伴走支援、さらには「DV・虐待」
「ヤングケアラー」といった概念提示を通じた自己理解の促進など、若年女性にとって不可欠な複合的セー
フティネットとして機能した。利用者は延べ296 名に達し、利用者へのヒアリングからは、否定されない
空間での対話が、自己決定権や自律的な感覚の回復に寄与していることが確認された。一方で、助成要件に
よる「35 歳の壁」が、支援を必要とする30 代後半以降の層を心理的に排除してしまうという制度的ジレ
ンマも、現場の実践を通じて浮き彫りとなった。
支援者育成の面では、「連続講座」を計20 回開催し、延べ312 名の参加を得たことで、支援者が当事
者を「指導・矯正」するのではなく、社会構造を理解し「ジャッジせずに信じる」伴走型支援へのパラダイ
ムシフトを地域にもたらした。これにより官民31 団体で活動する支援者らとの人的交流が生まれ、制度の
隙間を埋める有機的な支援資源ネットワークが構築された。情報発信においては、SNS アカウントのフォ
ロワーが計2,500 名を超え、地元メディアでの報道も30 回超を記録したが、特筆すべき成果は情報を信
頼とともに媒介する「ハブ・メンバー」を目標の約2 倍となる98 名発掘・育成したことである。医師や教
員、農家、議員、アパート経営者など多岐にわたる彼女/彼らが「個人メディア」として機能したことで、
孤立層が支援につながる際の心理的ハードルを劇的に下げ、支援情報を「地域の話題」へと押しあげること
に成功した。
当事者主体の〈ピア・コミュニティ〉形成については、「子育て世代のもやもや女子会」の創設という
質的成果を得た。山形という監視社会的な側面をもつ地域において、性役割規範から解放され「固有名」で
呼ばれる場としての意義は極めて大きい。しかし、自律的な運営には高い障壁があり、今後はより精緻な伴
走モデルが必要であるとの教訓を得た。本事業の最も大きな波及効果は、他団体と共同で行った山形県知事
への提言が触媒となり、2025 年度から県内全4 地域に「女性の居場所」が県の事業として設置されるとい
う政策変容をもたらしたことである。一実行団体の活動が県全体の支援の質を向上させる社会的価値を生み
出した意義は大きい。
資金面では、クラウドファンディングで目標を上回る3,229,000 円を416 名の市民から調達し、活動
の公共性と社会的意義への承認を地域社会から獲得した。これは助成終了後の「若年女性支援の中間支援セ
ンター」への発展に向けた強固な基盤となった。自己評価としては、課題やニーズの適切性は最高評価の
「想定以上」とし、事業成果の達成度は一部改善点があるものの確かな成果を上げたと判断した。本事業か
ら得られた最大の学びは、専門家主導の介入以上に「共感的な媒介者」をエンパワーメントすることが、孤
立層への最短の到達経路になるという知見である。構築された〈居場所ビオトープ〉は、助成終了後も地域
の支援資源の生態系を変容させ、若年女性の尊厳を支え続ける基盤となるであろう。
引用資料
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