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  • 2022年度

長野県

【事後評価】医療的ケア児者等・誰も取り残さないつながりづくり事業(社会福祉法人長野県社会福祉協議会)

報告書要約


(1)背景と課題
令和元年台風第 19 号災害において、医療的ケア児者家庭が「指定避難所では受入れ環境が整わず、電源を求めて車で市内をさまよった」との深刻な体験を報告された。
これを教訓に、個別避難計画の策定は最優先課題となったが、行政組織の縦割り(防災・福祉・保健)による主幹部局の不明確さや、適切な避難先の不足から、計画策定が停滞するケースが散見された。また、当事者家族は日々のケアに追われ地域との接点が希薄であり、地域住民側も知識不足から「専門的すぎて関われない」という先入観(心理的障壁)を抱いているなど、相互の「つながりの欠如」が大きな壁となっていた。こうした膠着状態を打破するため、本会は長野県医療的ケア児等支援センターと連携し、社協のネットワークを活かした新たな支援モデルを企図した。災害ボランティアセンターにおける外部給電車両(EV・PHV)の活用実績に着目し、「電源ボランティア」を突破口とした地域住民とのマッチングおよび共感型啓発を軸に据え、3 年間の事業を展開した。
(2)事業の目的と主な取組み
本事業では、医療的ケア児者と地域の確かな「つながり」を構築するため、以下の 4点を活動の柱とした。
• 親の会の活動支援と情報発信:各地の「親の会」によるイベント・研修会を支援するとともに、ネットワーク化を図るためのポータルサイトを構築した。
• 共感型啓発活動の展開:防災イベント等において電源車を展示の「看板」とし、来場者に当事者の暮らしや生活実態を伝える啓発を実施した。
• 電源ボランティアのマッチングモデル構築:長野市更北地区住民自治協議会の協力により、近隣の電源車オーナーをボランティアとして登録・マッチングするモデル事業を試行した。
• 実効性のある避難先の確保:発災初期の数日間を地域で繋ぐため、家族とともに滞在可能な避難所を発掘し、個別避難計画への具体的な反映を促進した。
(3)中間評価をふまえた目標の再設定と軌道修正
事業開始後、電源車を活用したイベントは高い関心を集め、自動車販売会社等との民間連携も拡大した。1年目に 15 件の給電車デモンストレーション等啓発活動を行ったことで、2 年目には市町村からの個別避難計画にむけた訓練の相談件数も大幅に増加し(1 年目訓練0箇所→2 年目4箇所→3 年目 8 箇所)、本事業のコーディネーターが中立的な調整役を担うことで、計画策定の機運が醸成された。 一方で、更北地区での個別マッチングにおいて住民の反応が限定的であることや、単なる知識伝達を超えた「住民同士としての共感」をいかに育むかが課題として浮き彫りとなった。これを受け、中間評価を経て以下の取組目標を追加した。
• 住民の感性に訴える「共感を呼ぶ啓発手法(紙芝居等)」の導入
• 福祉・医療の未経験者である市町村職員を支援するための「実務ツールの開発」
(4)事業の成果
3 年間の活動を通じ、主に以下の 4 点において大きな成果を収めた。
1. 民間連携の制度化:県内 32 カ所での啓発イベントを通じ、認知度が向上した。特に、長野県自動車販売店協会が事業終了後も継続して啓発活動に取り組む体制を整えたことは、持続可能性の観点から極めて有意義な成果である。
2. 啓発手法の深化(「共感の紙芝居」):清泉大学短期大学部の塚原成幸教授の協力により、オリジナル紙芝居を制作。デジタル(電源車)とアナログ(紙芝居)を組み合わせた実演は、特にファミリー層へ「楽しみながら、共感を持って学ぶ」機会を提供し、各地の保育園等への波及効果も期待されている。
3. 個別避難計画づくりの促進:本事業のコーディネーターが伴走支援し、避難訓練という「体験」を介在させたことで、行政・専門職・家族が同じテーブルで協議する場が定着し、実効性のある計画策定が加速した。
4. 計画策定支援ツールの開発:現場のニーズに応え、以下のツールを配備した。
o 「防災担当者のためのハンドブック」:専門知識が乏しい担当者でも手順を学べる実践的指針。
o 避難計画作成カードゲーム「ここクエ」:対話を通じて避難課題を自分事化できるツール。 令和 8 年1月の報告会では、これらのツールに対し「自組織で直ちに活用したい」との高い期待が寄せられた。

(5)令和 6 年能登半島地震に伴う緊急支援
本会が幹事団体を務める長野県災害派遣福祉チーム(DWAT)は、能登半島地震に際し、石川県能登町での支援活動を実施した。指定福祉避難所が立ち上がらない中、町からの依頼を受け臨時福祉避難所を設置・運営し、3 月末までに延べ 30 名の要配慮者を地域内でケアした。 当時、全国的な DWAT の派遣体制は未だ途上であったが、長野県 DWAT は本事業(休眠預金助成金)の柔軟な資金枠組を最大限に活用し、迅速な単独派遣を遂行した。この実績は、その後の法改正における DWAT の派遣ルール策定や活動内容拡大に直接的な影響を与えており、民間財源による先行的な取組みが国の制度設計を動かす一助となったと自負する。
(6)今後に向けて
医療的ケア児者は、災害時において極めて高いリスクにさらされるが、同時に地域で共に暮らすかけがえのない存在である。本事業で創出した「共感の紙芝居」「防災担当者用ハンドブック」「避難計画カードゲーム(ここクエ)」の 3 点セットは、専
門職と地域の心理的距離を縮める強力な武器となる。 今後、これらのツールを普及させ、日常の場で子どもたちが「医療的ケアは友達の個性の一つ」と自然に受け入れ、気軽に声を掛け合える地域社会の実現を目指し、本事業の成果を継承していく。

引用資料

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