【事後評価】地域支援のエンパワメントによる外国ルーツ住民への自立支援体制構築事業(公益社団法人シャンティ国際ボランティア会)
報告書要約
本事業は、公的機関と民間の支援者との連携強化による包括的な支援体制を構築し、外国人が安心して相談できるアウトリーチ型の支援実施を目指した事業である。「先行地域」として東京都豊島区、「新規事業地」として東京都練馬区やその周辺を対象地域として実施した。豊島区では「としまる」、練馬区では「ねりんく」という名称で、活動を行っている。
外国ルーツ住民人口が急増する中、集住傾向が特に強い先行地域では外国ルーツ住民支援を 2021 年 5 月から実施していた。本事業では、先行地域での連携強化による基盤構築を行いながら、これまでのノウハウを生かし、新規事業地での同様の事業の立ち上げを目指した。尚、新規事業地においては、2023 年は事前評価および地域でのネットワーク構築、研修会開催等の実施準備に努め、2024 年 3 月より支援活動を開始した。
本事業では、以下の 3 点を短期アウトカムとして設定している。
1「対象地域において、困窮状態にある外国ルーツ住民が支援・サービスを認知しアクセスできるようになる」
2「対象地域において、育成された外国ルーツ相談員が相談内容に応じて支援先につなぐなど、コーディネーターとしての役割を担っている」
3「対象地域において、外国ルーツ住民への相談及び支援基盤の強化が図れている」
1については、フードパントリー・相談会と個別支援の実施を軸に、公的な支援を含む地域の支援リソースとのつながりが弱い外国ルーツ住民に対して、支援アクセスの向上を目指した。先行地域においては、計画を上回るペースで活動を行い、個別支援の補完的な活動としての「相談窓口」活動も開始した。事業期間を通して、質量ともに地域の外国ルーツ住民に対する支援の充実を図ることができた。新規事業地では、当初の想定よりも少ないペースでの活動実施になったが、
同地域における初の試みとして、外国ルーツ住民への開かれた相談の場を民間主体で作ることができた。また、相談会に合わせて行われる食料配布は、想定外の物価高騰の中で、生活に困窮する相談者への緊急支援としての意義が大きい活動であった。アウトリーチにも効果的であったほか、外部の協力(ボランティア、食料提供など)を得やすい活動であり、地域に対するアウトリーチとしての効果も高く評価できる。特に新規事業地においては、毎回ボランティアが参加し、食料の配布などを担った。
2については、事業期間を通して外国ルーツ相談員 5 名が活動し、相談対応も概ね計画通り行われた。その対応の評価ポイントとしては、母国語を使って相談できる体制、通訳の枠を超えて支援を行うコーディネーターとしての役割、多職種連携の中に外国ルーツ相談員が位置付けられる先駆性などが挙げられる。相談者からの評価も、概ね高い結果となった。一方、育成という観点からは、研修などを実施したものの OJT 中心となり、体系的な育成プロセスを構築できなかった点は、今後の事業の教訓とすべきである。
3は、本事業で最も力を入れたアウトカムである。事業期間を通して、核となる連携団体(社会福祉協議会、法律事務所)とは強固な連携体制の下、事業を実施することができた。活動レベルでは、医療や住まいといった連携団体だけではカバーできない分野の連携も生まれ、対応の幅が大きく広がった。また、連携団体はこれまで外国ルーツ住民支援を専門に取り組んできた団体ではないが、分野横断的な体制のもと本事業に関わることで、それぞれの専門性を発揮し、補い合って活動に取り組むことができた。事業を通して外国ルーツ住民の課題を把握することで、各団体のリソースを生かした新規の取組にもつながった。
事業中盤からは、先行地域の区役所との連携も強化し、区役所における相談対応の実施や、合同勉強会の開催など、従来の枠を超えた連携が実現した。これにより、地域の支援基盤強化や、相談対応の向上につながった。2026 年からは、外国ルーツの子ども支援の事業を当団体が区から受託することになった。本事業における複数年の取り組みの成果と言える。
新規事業地での事業展開は、本事業の大きな目的である。東京都練馬区において、社会福祉協議会・法律事務所とともに、フードパントリー・相談会などの活動を立ち上げ、継続することができた。量的には当初の計画を下回ったものの、先行地域でのノウハウを基に、新しい活動を開始することができたことは、高く評価できる。事業終了後の継続性を鑑み、連携団体の主体性を生かした活動を展開したが、本事業終了後も連携団体を軸とした事業継続が決まっている。一方で、連携体制がまったく無い中での新規事業地における活動開始は、非常に多くの時間と人的コストがかかるという教訓を得た。本事業における新規事業地での活動は、事前評価に力を入れ、複数年事業だからこそ実現できたと言える。地域の状況は多様であり、先行地域の方法がすべて有効に活用できるとは限らず、各地域に合わせた事業計画が求められる。
そのため、新規事業地では活動実施に取り掛かる前に、地域の課題を丁寧にアセスメントし、地域の連携団体と共通の課題と目標を持ち、関係性を強化してい
く必要がある。その上で、地域や連携団体の状況や意向を確認し、丁寧に活動計画を立て、活動の際は先行地域で得た事業運営のノウハウを生かしながら、実
施していくことが重要である。先行地域の方法を参考にしつつも縛られることなく、絶えずモニタリングとプランニングを繰り返していくことで、その地域に合った方法を
見出していくことができる。
引用資料
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