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  • 2022年度

大阪府

【事後評価】大阪市生野区における多文化ソーシャルワーク実践の地域ロールモデルの構築事業(IKUNO・多文化ふらっと)

報告書要約


本報告書は、休眠預金を活用して実施した本事業における取り組みと成果、ならびにそこから得られた教訓を整理し、本事業の成果を一過性のものに終わらせることなく、今後の持続・発展および他地域への展開に活かすことを目的として取りまとめたものである。

近年、国際秩序や人権、多様性をめぐる価値観が揺らぐ中で、戦後の国際人権に裏打ちされてきたDEI(多様性・公平性・包摂性)の潮流は各地で後退の兆しを見せている。こうした状況のもと、「多文化共生」は理念として掲げられる一方で、その社会的基盤自体が脆弱化しつつある転換期にある。

大阪市生野区は、外国籍住民比率が24%を超え、多国籍・多文化化と貧困、少子高齢化が重なり合う「課題先進エリア」であり、現代社会が抱える構造的課題が集中的に表出する地域である。当団体は、こうした地域特性を背景に、生野区を拠点として、外国人住民を含む多様な人々が安心して暮らせる「多文化共生のまちづくり」を目的とした実践を継続してきた。

本事業では、外国ルーツ青少年および住民が、言語や制度、社会的孤立を背景に「社会の枠外」に置かれやすいという社会構造上の不利な状況に着目し、教育・生活・就労等にまたがる複合的な課題に対して、アウトリーチを前提とした学習支援、多言語相談支援、さらに公民連携による実態調査および施策提言を一体的に実施した。これにより、包括的な多文化ソーシャルワーク実践の地域ロールモデルの構築を目指した。
具体的には、既存の対面型支援では届きにくい外国ルーツ青少年や家庭に対し、オンラインを含む学習支援の拡充と、多言語による生活相談支援体制を整備した。また、支援実践を通じて把握された課題やニーズをもとに、区役所からの委託を受け、生野区における外国人住民実態調査および施策提言を行った。

その結果、外国ルーツ青少年の学習継続や進路形成が促進されるとともに、保護者においても在留資格、就労、子育て等に関する課題の整理と解決につながる支援が実現した。相談者からは、母語で安心して相談できる場にアクセスできたことや、生活上の不安や困難が軽減されたことが確認された。
さらに、多文化共生の地域拠点「いくのパーク」をハブとして、相談・学習・交流・参画が重なり合う実践が積み重ねられた結果、「教育・福祉・就労・経済」が連動する地域内循環の仕組みが具体化し、生野区においては「公民連携による多文化共生のまちづくり施策(多文化共生共創プロジェクト)」が公表されるに至った。これにより、多文化共生が特定の属性を持つ人々への支援にとどまらず、地域全体の公共性を再生する基盤となり得ることが示された。

本事業を通じて得られた教訓として、1アウトリーチを前提とした支援設計、2相談・学習・居場所を一体的に行う包括的な多文化ソーシャルワーク、3現場実践を起点とした公民連携による地域内循環の仕組みづくりの重要性が明らかとなった。これらは生野区に固有の取り組みにとどまらず、地域の実情に応じて調整・応用することで、他地域においても有効に機能し得る。

今後は、本事業で培われた実践知と関係性を活かし、市民・行政・企業等が対等な立場で連携しながら、現場の実践と施策が相互に更新される自走的な仕組みへと発展させていくことが求められる。本事業は、現場実践を起点として制度や地域を動かしていく可能性を示した点に大きな意義があり、生野区から社会全体へと波及する多文化共生のモデル構築に向けた重要な一歩となった。

引用資料

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