【事後評価】ハイラボ(合同会社G-experience)
報告書要約
総括
秋田の人にとって、遠い存在(フカヒレ)だったテクノロジーを、自分たちの日常(シュウマイ)へと引き寄せることで『創造性の格差』を埋め、失敗を面白がれる安心感の中で10代が『仕事』として大人と対等な関係性を築けることを証明した。
事業の背景と目的
本事業は、秋田県五城目町および周辺地域において、人口減少・高齢化(高齢化率50.5%)や都市部との教育格差、デジタルテクノロジーへのアクセス制限といった社会課題を解決するために立ち上げられた。大学進学率が全国最下位水準である秋田県において、子どもたちが経済環境や学校への通学状況に関わらず、自由にデジタル技術に触れ、多様なキャリアを模索できる居場所と創造的学習機会の提供を目的としている。
事業の実績と活動概要
2023年8月から2026年2月までの期間、合同会社G-experienceが実行団体となり、五城目町での拠点運営と、地域外へのアウトリーチ(出張ハイラボ)の両輪で活動を展開した。
● 拠点運営とアウトリーチ:五城目町の拠点を中心に、延べ1571名(ユニーク610名)の子どもたちが参加した。特に秋田高専や児童養護施設、学童保育への出張授業を通じ、地理的・経済的制約のある層へのリーチを強化した。
● 多彩なプログラム:プログラミング、3DCAD・3Dプリンター、電子工作、音楽制作(DTM)など、子どもたちの興味に合わせた個別最適化の取り組みを推進した。
● インプット:助成金約3,911万円と自己資金約259万円を投入し、レーザーカッターや高スペックPC、iMacなどの高度な機材環境を整備した。
事業成果に関する結論(アウトカムの達成状況)
社会的インパクト評価の結果、設定した8つの短期アウトカム指標のうち6つを達成、2つは達成率90%を超えた。
1子どもの自己肯定感とレジリエンスの向上
アンケートでは「ここでは失敗しても大丈夫だと思える」と回答した子どもが88%に。テクノロジー創作に不可欠な試行錯誤のプロセスが、失敗を前向きに捉える心理的安全性を育み、自己肯定感の向上に大きく寄与した。
不登校生徒が世界的なアプリ開発コンテストで入賞し、ロールモデルとなる事例も生まれている。
2「消費者から生産者へ」:仕事の創出実績
本事業の成果は、10代の子どもたちが具体的な「仕事」を通じて社会参画を果たした点である。「自ら仕事を生み出す力」については、目標を大幅に上回る28名(達成率140%)が実績を残した。
● 地域企業からの画像認識プログラム受託・納品(中学生)
● 地域施設のイベントデザイン作成やLINEスタンプ販売(中学生)
● 3Dプリンター作品のガチャガチャ販売や飲食店用コースター制作(小学生・中学生)
これらの事例は、適切な伴走支援があれば、義務教育期の子どもも高度な技術を用いて社会的・経済的価値を生み出せることを実証した。
3地域コミュニティのハブ化
大人の来訪者数は実績248名(目標比約500%)となり、保護者や地域住民、行政関係者を巻き込む地域の教育ハブとして機能した。子どもが家庭でスマートスピーカー等の設定を担う逆メンタリング現象も発生し、家族内での役割変化や多世代のデジタルリテラシー向上という波及効果も見られた。
課題と学び
● リテラシーの二極化への対応:想定以上に初心者層(マウス操作未経験等)が多く、習得から仕事化までのステップを細分化する必要性が明らかになった。今後は「初心者向けコミュニティ(領域4/p.44図)」と「プロ志向のインキュベーション(領域1/p.44図)」の体制分離が検討されている。
● 自立モデルのジレンマ:子どもは常に無料という居場所の価値を維持しつつ、持続的な資金源を確保することの難しさが浮き彫りとなった。現在はDX支援やワークショップの利益を居場所運営に充当する内部補助モデルを模索している。
今後の展望
自己評価として、課題やニーズの捉え方は想定した水準以上であり、事業成果も想定した水準にあると結論づけた。今後は、助成終了後も事業規模を維持・拡大し、五城目町での拠点を維持(一部縮小)しつつ、秋田県全域へのアウトリーチを強化する方針。特定の自治体予算に依存せず、企業連携や広域的な受託事業を主軸とした持続可能な地方発テクノロジー教育モデルの確立を目指す。
引用資料
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