• 公開情報
  • 2022年度

富山県

【事後評価】「地域のつながりと資源の循環」を新規就農者が生み出す事業(株式会社ツチカラ)

団体
株式会社ツチカラ
種別
実行団体
事業
「地域のつながりと資源の循環」を新規就農者が生み出す事業
種別
通常枠(草の根活動支援事業)

報告書要約


本事業は、化学肥料・農薬依存に伴う環境負荷と供給不安、新規就農者の離農や低所得、農業従事者の高齢化と農地承継の停滞といった農業全体の課題に対し、有機農業や自然栽培を志す新規就農者を中心に支援を行うものである。土壌診断と施肥設計に基づく堆肥を活用した土づくり支援、販路開拓や飲食店との連携、収穫祭や農業体験ツアーを通じた都市住民との交流、高齢農業者の農地情報の集約とマッチングなどを組み合わせ、新規就農者が地域に根ざし営農を継続できる環境づくりを目指した。
事業期間中、農政課および県農林振興センターとの協力によって新規就農後 10 年以内の就農者を把握し、南砺幸せ未来基金によるアンケート調査を通じて 9 名の対象者とつながった。そのうち 3 名には土壌診断と施肥設計を実施し、4 名には後継者不在農地とのマッチングを進めた。また、4 名には飲食店や事業者との連携づくり、販路の紹介を行い、販売面を含む経営基盤の強化に寄与した。これらの支援は栽培管理、生育確認、堆肥施用後のフォローを含む伴走型として展開された。
収穫祭や農業体験ツアーなど都市住民と地域をつなぐ取り組みも行われ、新規就農者が多様な人々とつながり、営農の意義を再認識する場となった。落ち葉、刈草、ビール粕といった未利用有機物を活用した堆肥づくりも進み、地域資源の循環と環境負荷の低減に好影響が見られた。さらに本事業を通じ、地域内外の協働が広がり、付加価値の創出につながる動きが生まれている。三笑楽酒造と新規就農者である八田氏をつなぎ、酒米栽培に加え、酒粕と五箇山の世界遺産・合掌造りのふき替え古萱を活用した堆肥づくりを実施し、それを再び水田へ戻す循環的な酒造りが始まりつつある。
また、2021 年休眠預金採択団体である大鋸屋営農組合が主催した若手農業者育成塾での講師活動や、月次の PO ミーティングを通じて関係が深まり、中山間地にある稲作が難しい農地を活用するため、堆肥施用、緑肥栽培、ライ麦、さらに不耕起による大豆栽培といった一連の実験的な取り組みを実施した。これにより、地域資源や地形条件を活かした持続的な農法の可能性が具体的に検証されている。こうした積み重ねを土台に、地域ブリュワリーである NAT.BREW および隣接市の若鶴酒造との連携が進み、「二条大麦栽培プロジェクト」が始動した。ツチカラがビール粕を堆肥化し農地へ循環させていたことから、「この循環システムを大麦栽培にも活かせないか」と提案したことで議論が進展し、若鶴酒造が富山県産二条大麦の調達を検討していた時期と合致したことからプロジェクトが具体化したものである。
現在、大鋸屋地区でビール・ウイスキー用の二条大麦栽培が始まり、今後はビール粕・ウイスキー粕を堆肥として循環させ再び大麦を育てる、地域資源循環型の付加価値ある酒類づくりが本格化する見込みである。これを契機に、大鋸屋地域づくり協議会には若い新規就農者の参画が生まれ、高齢化が進む大鋸屋営農組合にとっても好影響が見られている。また、2024 年の農業体験ツアーでは、岐阜県からの参加者家族が実際に移住・就農につながるなど、交流人口の増加にも成果が表れている。これらの取り組みにより、新規就農者を支える相談体制が形成されつつあり、生産性向上、関係人口の増加、農地承継の進展など前向きな変化が確認できた。対象の新規就農者全員を支援できなかった課題は残るものの、地域や新規就農者、行政との協働によって改善に向けた一歩を踏み出すことができた。今後も地域とともに、未利用資源の循環、営農・生活両面の支援、農地承継の体制を丁寧に育て、新規就農者が安心して営農を継続できる環境づくりを進めていく。

引用資料

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