【事後評価】ヘルSee佐久プロジェクト(一般社団法人 佐久産業支援センター)
報告書要約
ヘルSee佐久プロジェクトは、長野県佐久地域で暮らす市民に自身の健康に関心を持ち、維持・増進するための行
動変容を促すとともに、健康増進施策ならびに健康経営の推進により、佐久市と地域企業が、健康的なくらし・経
営で注目された地域社会となることを目的とした取り組みである。佐久市は「健康快適都市」の実現を目指し、健康
づくり施策を推進してきたが、市民の特定健診受診率やがん検診受診率は低迷し、健康経営を実践する企業の数
も限られていた。本プロジェクトでは、こうした状況を改善し、健康意識の向上や企業の健康経営の推進、地域全体
のヘルスケア・エコシステムの構築への動きといった具体的な変化を生み出すことに取り組んだ。
本プロジェクトでは、まず、市民の健康に関する意識や行動を変えるための施策を検討した。健康アンケートや個別イ
ンタビューを実施し、健康に無関心な人々がどのような心理的・行動的特徴を持つのかを分析した結果、従来の健
康推進施策では「健康の重要性は理解しているが、実際の行動にはつながらない」という課題が浮かび上がった。
そこで、生活の中で自然と健康に関心を持てる仕組みとして、行動変容アプリ「ほとウェル」を開発した。このアプリで
は、ウエアラブル端末を活用して健康状態を可視化し、さらに写真投稿機能やポイント制度を導入することで、楽し
みながら健康的な行動を継続できるよう工夫した。2024年に行われた実証実験では、111名がこのアプリを使用
し、69%の参加者が「健康への意識が向上した」と回答し、日頃あまり運動しない層の健康に対する関心度が最も
向上したことから、行動無関心層の行動変容への効果があったと考えられる。
また、地域全体の健康環境を整えるため、佐久市や医療機関、市民団体と連携し、健康づくりに関する意見交換
を行った。その結果、2024年10月には「社会実装専門部会」が設立され、健康推進の仕組みを地域に根付かせ
るための本格的な検討が始まった。この専門部会では、健康データの活用や行政・企業・市民が連携する仕組みづ
くりが議論されており、今後、健康施策の制度化や新たな支援策の導入が期待される。
さらに、企業の健康経営を促進するため、経営者向けの啓発活動を強化した。「健康経営ゼミ」や「しあわせ経営実
践塾」を開催し、企業が従業員の健康を経営資源と捉え、健康づくりを事業戦略の一環として取り入れることを推奨
した。こうした取り組みにより、佐久市内の健康優良法人の取得企業数は2022年の17社から2024年には27社へ
と増加し、企業の健康経営に対する意識が高まったことが確認された。
また、健康サービス事業者との連携も進められた。SAKUメッセでの啓発活動や情報交換を通じて、ウエアラブル端末
や健康アプリの開発に関する5件の事業提案が示された。健康データの利活用やインセンティブを取り入れた新しい
健康支援サービスが含まれており、これらが地域全体のヘルスケア・エコシステムに組入れられることが期待される。
本プロジェクトの成果として、市民の健康意識の向上、企業の健康経営の推進、地域全体のヘルスケア・エコシステ
ムに向けた議論といった具体的な変化が生まれた。特に、実証実験の参加者が健康や運動への関心を高めたことは
大きな進展である。一方で、こうした変化を持続的なものとするためには、行政の積極的な関与や財政的な支援の
確保、パーソナル・ヘルス・レコード(PHR)の整備などが必要であり、今後の課題として残されている。
今後は、ヘルSee佐久プロジェクトが中心となり、関係者間の情報共有を促進しながら、健康経営を実践する企業
の増加と、市民の健康意識向上を両立させる仕組みを整備していく。また、佐久市の医療機関と連携し、健康デー
タを活用した予防医療を推進することで、地域全体の医療費削減にも寄与することが期待される。こうした取り組み
を継続し、地域住民の健康行動を支援し、健康長寿のまちづくりを実現することが、本プロジェクトの最終的な目標
である。
引用資料
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