• 公開情報
  • 2022年度

全国

【事後評価】難民の背景を持つ移住女性の社会統合促進事業(社会福祉法人日本国際社会事業団)

団体
社会福祉法人日本国際社会事業団
種別
実行団体
事業
難民の背景を持つ移住女性の社会統合促進事業
種別
通常枠(草の根活動支援事業)

報告書要約


日本社会において外国人労働者の受け入れが加速する中、家族として来日することの多い移住女性は言語や情報の壁、さらには家庭内のケアの提供者としての役割の固定化といった多層的な障壁に直面し、母国でのキャリアや才能をもちながらも、社会的孤立や自己効力感の低下を招いている 。本事業は、帰国という選択肢を持たない難民としての脆弱性と、移住女性としての立場の弱さを併せ持つ難民の背景を持つ移住女性を対象とし、日本社会でのキャリア形成を目指せる道筋づくりを目指したものである。

事業の実施においては、「伴走型スキルアップ支援」を主軸とし、「受入社会への働きかけ」、「個別相談支援」の3点を連動させることを意識した。具体的には、就労のための日本語力強化やパソコン、ビジネスマナー、簿記、さらには起業準備や法人化サポートなど、個々のニーズに合わせた7種類のオーダーメイド型の講座を提供した。また、プログラムへの参加と継続を支えるため、就労以外の生活や家族に関する個別の相談を受け付け、必要に応じてケースワークを行うことで、当事者が学びを継続できるように環境調整も行った点が特徴の一つと言える。さらに、受け入れ社会側のニーズを把握するために、商工会議所等へのアンケート調査も実施した。

事業の実績として、55 名のプログラム参加者のうち 50%にあたる 26 名が新たに資格や許可を取得した。ルーブリック評価を用いたアクションレベルの向上については、1段階以上の向上が 6 割を超える一方で、2 段階以上の大幅な向上は目標値に届かなかった。この要因として、初期値が高い層ほど変化が数値化されにくいという評価設計上の課題が挙げられるが、定性的な分析においては、多くの受講者がスキルアップや起業を「遠い夢」ではなく「現実的な選択肢」として捉え直すという極めて重要な心理的変化を遂げたと言える。

本事業を通じて、当事者が直面しているのは単なる情報の欠如ではなく、その情報を活用して「目標設定→準備/計画→実行」という時間軸を伴うステップを構築する「プロセス/体験の欠如」ということに気が付かされた。彼女たちが持つ「アドホック的な突破力」は、日本社会で信頼を得るための前提ともなる「長期的視野に基づく計画性」との間に乖離がある。このギャップを単なる文化の違いとして片付けず、具体的なステップの違いとして可視化し、埋めていくような伴走支援をプログラムに組み込んでいくことが必要となる。

また、「地域企業における外国人の雇用に関する実態調査」からも、企業が外国人を雇用するためのルート・パターンが技能実習生・特定技能を中心に概念として固定化しつつあることが伺えた。すでに地域で暮らしている定住外国人は働き手としてあまり意識されず、外から労働者を入れるためのコストと負担を考えて外国人労働者の受け入れに踏み切れない中小企業も少なくない。地域に定住する多様な人々を担い手として再定義し、適切な訓練や採用の仕組みを構築できれば、地域における労働市場も活性化し、循環が生み出されると考えられる。既存の女性活躍施策やリスキリング支援は、当事者にとっては依然として参加ハードルが高いが、そこにつなげるための橋渡しとなるようなプログラムや、移住女性のアクセスを前提とした伴走型支援等がパッケージ化されたプログラムなどが生まれれば、女性たちの日本でのキャリア形成の道筋も見えてくる。

移住女性の社会統合を促進することは、当事者の尊厳回復だけでなく、深刻化する日本社会の人手不足や分断の防止、地域経済の活性化に寄与する。母親である女性が社会に参加し、自己効力感を高めていく姿は、その子どもたちにも影響を与え、次世代の健全な育成にもつながる。長期的な視点に立ったキャリア形成と、多様なロールモデルの発現は地域社会に裨益するものであることから、移住女性の社会参加と社会統合を促していく政策・取り組みが求められる。

引用資料

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