【事後評価】「食品ロスはフードバンクに」が当たり前となる社会実現に向けた、組織基盤安定モデル構築事業(認定特定非営利活動法人フードバンク北九州 ライフアゲイン)
報告書要約
【本事業の目的】
北九州市には経済的困難を抱える子育て世帯が約8,000世帯あり、食料支援を必要とする世帯は増加し続けている。しかし、当団体の運営体制及び経営基盤は脆弱であり、支援の拡大も質の向上も、このままでは実現できない。本事業は、組織基盤の強化を通じて、より多くの困窮世帯に質の高い食料支援が届く状態をつくることを最終的な目的とした。目的を達成するために推進すべき活動として、以下の取り組みを実施した。
1広報活動の強化
2寄付金増加に向けた取り組み
→特別法人会員制度の創設と推進及びマンスリーサポーター強化
3他団体・地域との連携の強化
→行政・社会福祉協議会・商工会議所との連携
4組織運営体制の強化
→組織改編・ビジョン・ミッションの策定
【3つの成果】
成果1 :広報活動の確立と強化
ミッションに共感する専任スタッフ2名を採用し、SNS・HP・メディア発信を飛躍的に拡大。地域における団体の認知度が大きく向上し、寄付件数増、食品寄贈増、ボランティア参加増、行政連携強化など、すべての活動に波及効果をもたらした。
成果2:教育委員会との連携実現
福祉行政との5年以上の連携実績を土台に、教育委員会との連携を実現。
就学援助受給世帯約22,000世帯への案内配布が可能となり、LINE公式アカウント登録者数が1,843世帯→3,985世帯に倍増。支援を必要とする世帯との接点が大幅に拡大した。
成果3 :商工会議所との連携深化
北九州商工会議所食品部会との連携により、フードバンクデー(月1回定期寄贈)を実現。2024年に「食品ロス削減推進大臣賞」を受賞し、部会単位から商工会議所全体との関係性へと発展。合意書締結企業数は153社→269社に増加した。
【2つの課題】
課題1 特別法人会員制度の未達
目標200社に対し実績22社。目標設定の甘さ、専任人材の未確保、リスクマネジメント不足が要因。
総寄付額にも影響を及ぼした。ただし、制度そのものの設計・導入は実現しており、登録企業とは寄付以外の多面的な協力関係が構築できている。
課題2 人材確保・育成の遅れ
資金調達の停滞が人材投資に連鎖。企業担当スタッフの採用が実現できず、人員不足と業務負担増が発生。人材確保とその育成体制の構築、及びそれを支える安定的な資金確保は、引き続き最重要課題である。
【5つの知見・教訓】
1 広報専任者の配置は組織基盤強化の鍵
たとえ人員的な厳しさがあっても、基盤強化策として最優先に検討すべきである。ミッション共感人材×専門性×複数体制×現場との両輪関係が成功の4条件。
2 行政連携は福祉と教育の両輪で推進
福祉行政と教育委員会の両方との連携が実現したことで、支援世帯数が大幅に増加。本事業が最終受益者への支援拡大に直結した最も顕著な成果。
3 商工会議所との連携は食品寄贈にとどまらず、多方面の展開を可能にする。
物流面の協力に加え、人材育成・将来の労働力確保など、地域社会への貢献と企業メリットが同時に実現する道筋が拡がった。
4 団体の成功事例を安易に自組織に適用せず、十分な検証を行う。
特別法人会員制度の未達から得た教訓。地域性・対象企業の特性・組織の推進体制を踏まえた独自の検証プロセスが不可欠。
5組織方針(ビジョン・ミッション等)は参加型プロセスで合意形成。策定の過程で団体関係者の意識
向上と繋がりの深化が生まれ、それ自体が体制強化につながった。ただし、策定後の組織内浸透と行動規範への落とし込みは現在進行形の課題。
【総括】
本事業の組織基盤強化により、広報力の向上、行政連携の実現、フードサポート事業の定例化、支援を必要とする世帯の掘り起こし、という因果の連鎖が機能し始めている。食料支援に対する満足度も3年連続で上昇した。総合的には当初の目的に向けて大きく前進できたが、安定した資金調達力の面では課題を残した。本報告書では、各取り組みの成果と課題を実績数値・インタビュー・アンケート等から検証し、他団体にも活用可能な知見・教訓を整理する。
引用資料
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