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  • 2022年度

兵庫県

【事後評価】困難を抱える女性のための「六甲ウィメンズハウス」整備と生活支援、就労支援(女性と子ども支援センターウィメンズネット・こうべ)

報告書要約


本事業は、DV 等の暴力被害により深刻なトラウマを抱える女性と子どもの回復と自立を目指し、2024 年 2 月から 2026 年 2 月まで実施された「六甲ウィメンズハウス(RWH)」の整備と包括的な支援(生活・就労支援)を統合的に実践したものである。事後評価の結果、当初設定した目標に対し極めて高いレベルで成果を上げ、今後の活動の持続可能性と発展に向けた強固な基盤を確立できたと結論付けられた。全体として、設定された 14 項目の短期アウトカムのうち 85.7%にあたる 12 項目が「想定した水準にある」または「想定した水準を上回っている」と判定されており、事業は達成されたと評価されている。特に実行団体の変化に関する項目はすべて達成され、支援体制の構築と専門的知見の向上が著しい成果を上げたことが確認された。
この成功の主因は、トラウマインフォームドアプローチ(TIA)に基づくソフト面の支援と、安全性や快適性を追求したハード面の環境整備が相互に補完し合った点にある。ソフト面では、月 1~2 回継続的に実施された「専門家を交えたケース会議」が中核となり、支援者が直面する課題を専門的な視点から深掘りし、具体的な支援方針を共有する「実践と理論の往還」が繰り返された。公認心理師やスーパーバイザーとの対話を通じ、スタッフは「安全・信頼・選択・協働・エンパワメント」という TIA の原則を個々のケースに適用する力を養い、支援計画の策定・実行・評価の質を飛躍的に向上させた。
ハード面においては、水周り改善・エアコン工事や天井の設置、キッズスペースへのマット設置等が実施され、単なる物理的改善を超えて、居住者が心理的に「守られている」と感じるための重要な基盤となった。清潔で快適な環境は身体的ストレスを軽減し、天井のある落ち着ける空間はトラウマを抱える居住者にとって「安全な基地」としての機能を強化した。特に子どもの回復は顕著であり、入居当初に見られた過度な叫びや問題行動が劇的に改善し、安全な遊び場の中で自己肯定感を回復させていく様子が実証されている。母親についても、スタッフとの信頼関係構築を通じて恐怖心が軽減し、8 割以上の居住者が「支えられている」「一個人として尊重されている」と感じるなど、心理的安定に直結する成果が得られた。
組織面では、支援者が孤立しないためのチームケア体制が確立された。日々のブリーフィングやデブリーフィング、スーパービジョンの仕組みが組織文化として定着したことで、高いストレス環境下にある支援者のバーンアウトが防止され、人材の定着と専門的知見の蓄積が可能となった。さらに、本事業の実践知は「回復支援プログラム」や「支援者ガイド」として体系化され、属人化を防ぎ支援の質を標準化する「共有財」として創出された。これらは今後、新規スタッフの育成や他団体への展開において中核的なツールとして機能することが期待される。
一方で、今後の課題として「経済的・社会的自立」と「地域住民の関与」の 2 点が部分的達成に留まった。居住者が人生を再構築しようとする意欲を持ちつつも、重篤な健康問題やトラウマに起因する認知・行動面の課題、さらに硬直的な雇用市場といった構造的な社会課題が自立の大きな障壁となっている。これらは助成期間中だけでは解決が困難な複合的課題であり、今後は医療や就労支援機関との戦略的な多機関連携をさらに強化する必要がある。また、地域住民の関与については、プライバシー保護の観点から参加のハードルが高く、安全な形でのボランティアプログラム等の開発が次なるステップである。
総括すると、本事業は 40 世帯という大規模居住支援における先進的モデルを構築し、母子の心理的回復という測定可能な成果と、持続可能な組織基盤の両方を確立した。今後は「女性支援新法」の理念に基づく官民協働を強化し、居住者の内面的な課題と社会構造的な課題の双方にアプローチすることで、地域における社会課題解決の役割をさらに発展させていくことが結論として示された。本事業で得られた、理論と実践の往還、ハードとソフトの統合、そして支援者を大切にする組織文化の重要性は、困難を抱える人々への支援全般に共通する普遍的な知見である。

引用資料

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