• 公開情報
  • 2022年度

神奈川県

【事後評価】困難な問題を抱える女性の包括的自立支援事業(さくらんぼ)

団体
さくらんぼ
種別
実行団体
事業
困難な問題を抱える女性の包括的自立支援事業
種別
通常枠(草の根活動支援事業)

報告書要約


本事業は、神奈川県横浜市(港北区・旭区)を中心に、虐待・DV・貧困・疾病・家族関係不調など複合的困難を抱える若年女性等に対し、安価で安全な住まいと食の確保を起点に、生活コーディネーターの伴走および外部資源との接続により、「孤立せず、支援を受け入れながら次の選択に向かうための土台」を整えることを目的に実施した。制度と制度のあいだに立ち、支援が途切れやすい局面で関係をつなぎ続ける中間支援として位置づけられる。

評価対象期間は2023年12月から2025年12月である。活動記録(E01等)、利用者アンケート(回答者10名、支援前後で比較可能な設問6~8項目)、連携記録等を用いて分析を行った。

居住支援におけるアウトカム①~④および食支援におけるアウトカムについては、1~4段階のルーブリックにより到達度を整理し、定量データと定性記録を照合して総合的に評価した。アウトカム⑤(支援スタッフ育成)およびアウトカム⑥(ネットワーク形成)については、評価アドバイザーとの協議に基づきルーブリックは設定せず、指標に基づく達成状況の整理により評価している。

アウトプットとして、居住支援(「下宿屋With」「Nagomo」等)はアフターケアを含む18名を中心に支援を継続し、食支援(「くろーばーマーケット」)は開所131日・延べ利用者5,709人(1日平均約43.6人)・登録者233名(期間中新規63名)・食品提供総量28,936kg、提供元32団体・個人多数の協力により地域のセーフティネットとして機能した。

アウトカム①(安全・余裕)は概ね達成(3)。アンケートでは「帰れる場所」3.5→5.0、「安心して眠る」3.5→4.375、「生きていて良かった」3.125→4.0など、生基盤とウェルビーイングの回復傾向が確認された。

アウトカム②(つながり)は一部達成(2)で、相談関係は形成されつつも、対人不安や安全配慮から参加の拡大は限定的であった。

アウトカム③(見通し)は一部達成(2)で、将来を語る余地や意欲の維持は確認された一方、具体的行動の継続が安定しているケースは限定的であり、直線的前進ではなく「選び直し」や再設計として現れた。

アウトカム④(肯定的自己イメージ)は一部達成(2)で、内面的変化は長期的支援を要する。

支援者側では、会議体・スーパーバイズ等を通じて支援判断を支援者個人に委ねない判断共有体制が機能し、地域・関係機関との接続構造も拡充した(⑤・⑥はいずれも指標上は概ね達成)。

総じて、住まいと食の同時確保、日常的接点、支援判断を支援者個人に委ねない体制(判断共有)、再接続可能なネットワークという条件が重なったとき、対象者の「孤立を深めず支援につながり続けられる土台(戻れる・選び直せる環境)」の形成が進みやすかった。一方、医療・心理課題や金銭管理の未経験等により、期間内に完結しないケースも多かった。

本事業を通じて浮かび上がったのは、「もっと早く支援が届いていれば」という課題である。支援は若年期に限定されるものではなく、子ども期からの人生の軌跡を見据え、切れ目なく接続される必要がある。居住支援は短期的自立の場ではなく、揺れを含みながらも「戻れる・選び直せる環境」を保障する中間的居場所として機能した。離脱や不安定化があっても排除せず、関係を切らない運用が、再接続と支援につながり続けられる状態を支えた。

地域においては、実践知が記録化・共有化され、他主体が参照可能な「共有財」として整理された。住まいと食を連動させた予防的支援は、困難の重篤化を未然に防ぐという観点からも意義を持ち、結果として公的資源の最適化にも資する構造的可能性を有している。

引用資料

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