• 公開情報
  • 2023年度

佐賀県

【事後評価】佐賀県内における被災世帯・農地への支援に向けた連携体制構築を目指した災害対応事業(おもやい)

報告書要約


佐賀県では 2023 年 12 月に県内総人口が 80 万人を下回り、特に中山間地域での著しい
人口減少と高齢化が深刻な課題となっている。加えて、気候変動の影響による豪雨災害も
頻発し、2023 年 7 月には佐賀市、唐津市、神埼市などで家屋、農地、ビニールハウス、
農道に至るまで様々な被害が発生した。こうした状況を受けて、本事業では制度の支援対
象とならない農地の復旧ニーズを把握し、被災農家の離農を防ぐとともに、地域が災害に
対応できる基盤整備を目指して活動を展開した。

事業の実施を通じて、行政との連携体制や地域のキーパーソンの有無が成果に大きく影
響することが明らかになった。佐賀市では行政や地元キーパーソンとの連携により迅速な
対応が可能であったのに対し、神埼市ではそれが難しく、支援の実施に課題が残った。ま
た、休眠預金の制度自体が認知されていたことにより、住民からの信頼を得て事業がスム
ーズに進行した点も成功要因の一つである。一方で、「農地を諦める=手をつけない」と
いった認識や、営農継続へのプレッシャーにより支援依頼を控えた世帯も存在し、農地復
旧に対する住民の心理的なハードルも課題となった。

中山間地におけるボランティアの受け入れ体制にも限界があり、「何をどのようにされ
るのか分からない」という不安や、「申し訳なさ」という心理的負担が存在した。ただ
し、これらの経験が将来の災害時に「今度は自分たちが支援する側になりたい」という意
識へとつながっている側面もあり、支え合いの循環形成への可能性も見出された。

自己評価としては、課題やニーズの適切性、事業設計の整合性、成果の達成度はいずれ
もおおむね想定水準に達していたが、実施状況については一部改善点が見られた。制度で
対応できなかった背景には、制度の対象外(個人所有物が含まれる、倉庫など営農に必要
でも非対象)や、金銭的・時間的制約、業者不足といった現実的な課題がある。医療分野
の高額療養費制度のように、農地復旧にも所得に応じた自己負担上限の導入が検討される
べきであり、また木の処理やその後の廃棄の負担を考慮した制度の再設計も必要である。
業者不足という全国的課題については、広域的なコーディネート体制の構築可能性につ
いても検討する余地がある。復旧に向けた対応は、当事者の努力だけでは限界があり、地
域として農地を維持管理していく支援枠組みの構築が不可欠である。農業は本来集団的な
営みであるにもかかわらず、機械化により個別化が進んできたが、災害を契機に再び助け
合いや組織化の必要性が高まっている。地域住民だけでなく、ボランティアや里山保全な
どに関心のある域外の人々も含むような柔軟な組織化が、今後の災害対応の基盤となりう
る。

今回の事業を通じて得られた知見として、農地支援へのボランティア活用はハードルが
高いことが再認識された。今後も災害が重なることで農地放棄や市街地への移住が進む可
能性があるため、災害時の対応に加え、平時からの継続的な支援と地域の持続性を確保す
る取り組みこそが、地域社会の強靭化に寄与することが明確になった。

引用資料

RELATED

同じプロセスの関連ナレッジ

MORE

他のプロセスの関連ナレッジ