JANPIAは2023年12月1日、日本財団主催の「アジア・フィランソロピー会議 2023」の中で、「多様な「はたらく」、「まなぶ」の意思を尊重、機会創出の実現へ! ~休眠預金活用事業の事例から~」というセッションを企画・発表しました。「アジア・フィランソロピー会議」は、アジア地域におけるフィランソロピー活動に焦点を当てた国際的な会議で、今回のテーマは、 DE&I(多様性、公平性、包括性)。JANPIAのセッションでは、今回のテーマに関わる事業に取り組まれている実行団体の代表者と、休眠預金活用事業の可能性などについて対話しました。
活動概要
2023年12月1日、公益財団法人 日本財団の主催による「アジア・フィランソロピー会議」が、ホテル雅叙園東京にて開催されました。2回目の開催となる今回は、「DE&I(多様性、公平性、包括性)」(※1)をテーマとし、社会課題の解決に取り組む財団をはじめとしたアジアのフィラソロピーセクターのリーダーが一堂に会し、各セッションに分かれ様々な議論が行われました。
同会議のパラレルセッション4にて、JANPIAは、『多様な「はたらく」、「まなぶ」の意思を尊重、機会創出の実現へ!~休眠預金活用事業の事例から~』と題し、休眠預金活用事業の事例を紹介しました。
セッション4の様子は、動画と記事でご覧いただけます。

※1:「DE&I」は、Diversity(ダイバーシティ、多様性)、Equity(エクイティ、公平性)、Inclusion(インクルージョン、包括性)の頭文字を取った略称。
活動紹介
休眠預金活用事業説明(JANPIA)

はじめに、JANPIA 事務局長の大川より、休眠預金活用事業の紹介と今回のセッションの説明をしました。 「休眠預金等活用法よりJANPIAが2019年に指定活用団体に選定されて以来、全国で1,000を超える実行団体が休眠預金を活用し、社会課題の解決に取り組んでいます。今回は、その中から、今回の会議のテーマに合った事業に取り組まれている団体の代表者をお招きしました。会場やオンラインの皆様含めて、様々な観点から意見交換できたらと思います。」
▲JANPIA 事務局長 大川 資料〈PDF〉|休眠預金活用事業説明|JANPIA[外部リンク]
各団体の取り組み
[1]一般社団法人 ローランズプラスの事例紹介
株式会社ローランズ 代表取締役 / 一般社団法人 ローランズプラス 代表理事 福寿 満希氏
福寿:私たちは東京都の原宿をメイン拠点としながら、花や緑のサービスを提供している会社です。特徴的なのは、従業員80名のうち7割の約50名が、障害や難病と向き合いながら働いているということです。私たちは、「排除なく、誰もが花咲く社会を作る」をスローガンとしており、Flower&Green事業、就労継続支援事業、障害者雇用サポート事業の大きく3つの活動を行っています。

休眠預金活用事業には、過去に3回採択されています。1つ目の「障害者共同雇用の仕組み作り」という事業(※2)は、READYFOR株式会社が資金分配団体で、新型コロナウイルス対応緊急支援助成で採択されました。コロナ禍により、障害当事者の方たちの失業率が高まり、特に中小企業での雇用維持が大変でした。1社だけでは雇用が難しいため、例えば10企業でグループを作り、グループ全体で仕事をつくり、雇用を生み出していきましょうという仕組みづくりです。この事業によって30名程の新しい雇用が生まれ、助成終了後の今も、自走してしっかり回っている状態になっています。
2つ目は、「花を通じた働く人のうつ病予防project」事業(※3)です。資金分配団体は、特定非営利活動法人 こどもたちのこどもたちのこどもたちのために 様で、花を通してうつ病を予防していくという取り組みです。企業の花を通じたウェルネスプログラムとして、会社から従業員に対して、10分割できる花をプレゼントし、10人に「ありがとう」を伝える機会をプレゼントします。ある調査では、「ありがとう」の言葉は、伝える側の方が幸福度が高くなるというデータが出ています。「ありがとう」の伝えることの重要性を知り、求めるのではなく、自発的にその言葉を伝えていければ、幸福度が高まる機会が増え、結果的にうつ病が予防されていく仕組み作りに挑戦しています。3年間で4千人へアプローチすることを目標に取り組んでいます。
3つ目は、資金分配団体である株式会社トラストバンク 様と取り組んでいる「地域循環型ファームパーク構築」事業(※4)です。神奈川県横須賀市で花の生産と体験型農業(ファームパーク)の運営を行うことで、地域の障害当事者の就労機会を創ることに取り組んでいます。慣れ親しんだ地域に仕事を作り、障害当事者が地元で活き活きと働き、その対価を得ながら地域循環の元で生活をしていけるモデルを作ろうとしています。横須賀地域の福祉団体と連携して、福祉団体から採用していくという流れをとっています。先ずは横須賀で形をつくり、そこから、その他の地域循環モデルが広がっていったら良いなと思い取り組んでいます。

※2:2020年度 緊急枠 「ウィズコロナ時代の障がい者共同雇用事業」
(資金分配団体:READYFOR株式会社)【関連記事】ウィズコロナ時代の障がい者共同雇用
※3:2022年度 通常枠 「植物療法を通じた働く人のうつ病予防プロジェクト」
(資金分配団体:特定非営利活動法人 こどもたちのこどもたちのこどもたちのために〈イノベーション企画支援事業〉)
※4:2022年度 通常枠 「障がい当事者が活躍できる地域循環型ファームパーク構築事業」
(資金分配団体:株式会社トラストバンク〈ソーシャルビジネス形成支援事業〉)
[2]認定NPO法人 グッド・エイジング・エールズの事例紹介
認定NPO法人 グッド・エイジング・エールズ 代表 松中 権氏
松中:まず「プライドハウス東京」というプロジェクトについてご説明します。まだまだ社会の中にはLGBTQ+(※5)の方への差別偏見があり、孤独感を感じている方も少なくありません。そこで、性的マイノリティの方々が横で繋がったり、安心・安全に訪れることができる場所をつくろうという取り組みが、「プライドハウス東京」です。2023年11月現在、31の団体・専門家、32の企業、19の駐⽇各国⼤使館などと連携して取り組んでいます。

【関連記事】
世界でいちばんカラフルな場所を目指して!| グッド・エイジング・エールズ 松中権さん × エッセイスト 小島慶子さん【聞き手】
「プライドハウス東京」設立プロジェクトは、特定非営利活動法人エティックが資金分配団体を務める事業で採択され(※6)、当初は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の時期に合わせて期間限定の場所をつくり、その後、2022年頃に常設の大型のセンターを造ろうという計画でした。
しかし2020年に緊急アンケートを行ったところ、新型コロナウイルス感染拡大の影響でLGBTQ+の若者が大変な状況にあるということが分かってきました。実は、73.1%の方々が、同居人の方との生活に困難を抱えていることが分かりました。また、36.4%のLGBTQ+の若者が、コロナ禍でセクシュアリティについて安⼼して話せる相⼿や場所との繋がりを失ってしまったと回答しました。この緊急アンケートによって明らかになった「居場所のニーズ」により、当初の計画を前倒しし、2020年の秋、常設のセンターを開設することになりました。
LGBTQ+に関する様々な調査の中で、政府も調査していることの一つが自殺の事です。政府が自殺対策の指針として定める「自殺総合対策大綱」によると、性的マイノリティはハイリスク層と言われています。そうした方々が、安心・安全に集えるようなコミュニティスペースが、「プライドハウス東京レガシー」です。また、休眠預金を活用した事業が動き出したことによって、「プライドハウス東京」に関する高い信頼が得られ、翌年には厚生労働省の自殺対策(自殺防止対策事業)の交付金を受けることになりました。自殺対策の相談窓口は電話やSNSが多いですが、「プライドハウス東京レガシー」では、対面型の相談サービスを提供しています。2023年11⽉現在の来館者数は、延べ1万人を超えたというところです。

※5:LGBTQ+…レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランジェンダー、クエスチョニング(自分の性別や性的指向に疑問を持ったり迷ったりしている人)/ クィア(規範的な性のあり方に違和を感じている人や性的少数者を包摂する言葉)の英語表記の頭文字を並べ、LGBTQだけではない性の多様性を「+」で表現している。
※6:2019年度 通常枠
「日本初の大型総合LGBTQセンター「プライドハウス東京」設立プロジェクト」
(資金分配団体:特定非営利活動法人エティック(子どもの未来のための協働促進助成事業))
パネルセッション
続いて、JANPIA 加藤の進行により、パネルセッションが行われました。本セッションでは、お互いの発表に対する意見交換から始まり、続いて今回のテーマである「DE&I(多様性、公平性、包括性)」について、そして最後に、休眠預金活用事業への期待や展望について、登壇者の二人からお話を伺いました。

登壇者:
・株式会社ローランズ 代表取締役 / 一般社団法人ローランズプラス 代表理事 福寿 満希氏
・認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ 代表 松中 権氏
司会:
一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)
企画広報部 広報戦略担当 加藤 剛

休眠預金の活用について、福寿氏は、「やりたかったけれどもやれていない事業や、やったら絶対に意義があると思っているけど、資金的・人的リソースが足りず、なかなか挑戦できない新規の事業で申請することが多かった」「障害者手帳をお持ちではないグレーゾーンの方もいらっしゃったりするので、そのような制度に引っ掛からない方たちにも支援が届けられたらと思った」と語りました。グッド・エイジング・エールズの松中氏は、「一般的な助成だと一番大切な居場所をつくるための家賃や人件費がサポートいただけないことが多かったので、休眠預金を知ったときは、これだったら居場所がつくれるのではないかと思い、申請した。常勤のスタッフが安心して働けるからこそ、新しいプロジェクトや寄付金が集められる」と続けました。また、お互いの活動について、松中氏は、「是非、連携させていただきたいと思った」と、今後の事業連携の可能性について盛り上がりました。
今回のテーマ『DE&I~すべての人々が自分の能力を最大限に発揮できる社会を目指して~』について、松中氏は、「LGBTQ+の当事者の若者が、卒業後に働く現場の一つとして、これらのコミュニティに関わるとか、企業のDE&Iに関わる部署への配属を希望できるようになるなど、卒業後にDE&Iを仕事としていくことが想像できるようになると良いなと考えている」と回答。また、福寿氏は、「障害者手帳もそうだが、名称の括りがあると、何か特別なものように思ってしまいがちなので、たまたま障害当事者のために業務を分かり易くしたところ、結果としてそれが同じ拠点で働くみんなのためにもなったといったように、障害者雇用が特別なものではない社会になったら良いなと思って取り組んでいる」と答えました。
また、休眠預金活用事業への期待や展望について、松中氏は、「取り組みの地域格差をどれくらい埋められるかというのが課題だと思っている。例えば、LGBTQ+センターは東京だけではなく、全国各地にあった方が良いと考えるが、地域によっては資金分配団体がなかったり、あったとしても掲げるテーマからなかなか採択に至るのは難しい状況もある。もっと全国各地の団体が参画しやすい仕組みになれば良いなと思う」と話しました。福寿氏は、「通常枠は約3年だが、自走できる仕組みづくりには時間がかかり、形ができてやっと活動を拡げるという手前で事業が終了してしまうので、拡がりが期待できる事業に対しては、ネクストチャレンジのような仕組みがあったら良いなと思う。有難いことに3つの事業で採択していただいており、現在2事業が実施中だが、どれも休眠預金が無ければ挑戦できなかった事業。社会課題の解決を後押ししてくれる制度なので、是非活用する事業者の方が増えていったら嬉しい」と話しました。
最後に、JANPIA 事務局長の大川より挨拶があり、「今日の学びを制度全体の発展にも活かせるよう、私どもJANPIAもしっかり取り組んで参りたい」と、このパネルセッションを締め括りました。

登壇者の皆さん

【1】事業基礎情報
実行団体 | 一般社団法人 ローランズプラス |
事業名 | ウィズコロナ時代の障がい者共同雇用事業 |
活動対象地域 | 全国 |
資金分配団体 | READYFOR株式会社 |
採択助成事業 | 新型コロナウイルス対応緊急支援事業 〈2020年度緊急支援枠〉 |
【4】事業基礎情報
実行団体 | 特定非営利活動法人グッド・エイジング・エールズ |
事業名 | 日本初の大型総合LGBTQセンター「プライドハウス東京」設立プロジェクト -情報・支援を全国へ届ける仕組みを創り、 LGBTQの子ども/若者も安心して暮らせる未来へー |
活動対象地域 | 東京都、及び全国 |
資金分配団体 | 特定非営利活動法人エティック |
採択助成事業 | 子どもの未来のための協働促進助成事業 ー不条理の連鎖を癒し、皆が共に生きる地域エコシステムの共創ー 〈2019年度通常枠〉 |
【5】事業基礎情報
実行団体 | 特定非営利活動法人グッド・エイジング・エールズ |
事業名 | LGBTQ中高齢者の働きがい・生きがい創出 |
活動対象地域 | 全国 |
資金分配団体 | READYFOR株式会社 |
採択助成事業 | 新型コロナウィルス対応緊急支援事業 ー子ども・社会的弱者向け包括支援プログラムー 〈2020年度新型コロナウィルス対応緊急支援助成〉 |
【2】事業基礎情報
実行団体 | 一般社団法人 ローランズプラス |
事業名 | 植物療法を通じた働く人のうつ病予防プロジェクト -花のチカラでうつ病発症を食い止めるー |
活動対象地域 | 東京都 |
資金分配団体 | 特定非営利活動法人 こどもたちのこどもたちのこどもたちのために |
採択助成事業 | うつ病予防支援 〜東京で働く人をうつ病にさせない〜 〈2022年度通常枠〉(イノベーション企画支援事業) |
【3】事業基礎情報
実行団体 | 一般社団法人 ローランズプラス |
事業名 | 障がい当事者が活躍できる地域循環型ファームパーク構築事業 ー障がい当事者が地域経済に参画することで、新しい社会包摂モデルを構築するー |
活動対象地域 | 神奈川県横須賀市 |
資金分配団体 | 株式会社トラストバンク |
採択助成事業 | 地域特産品及びサービス開発を通じた、 地域事業者によるソーシャルビジネス形成の支援事業 〈2022年度通常枠〉(イノベーション企画支援事業) |
東京都を拠点に、ベトナム人技能実習生や留学生への支援活動を行う「日越ともいき支援会」。日本に在留するベトナム人の技能実習生や留学生の数は急増していますが、劣悪な環境に置かれていることも少なくありません。「日越ともいき支援会」は、そんなベトナム人の「駆け込み寺」として、住居の確保、帰国できない若者の保護、就労支援など、さまざまな活動を行っています。2020年度、2021年度の休眠預金活用事業(コロナ枠)では、コロナ禍で生活困窮者となった約1万人以上のベトナム人を支援してきました。今回は、コロナ禍、そして現在の支援事業について、同団体の代表理事・吉水慈豊さんにお話を伺いました。[コロナ枠の成果を探るNo.4]です。
「ベトナム人の命と人権を守る」活動を始めたきっかけとは
ベトナム人の命と人権を守る。これは、「日越ともいき支援会」が支援活動の目的として掲げているものです。吉水さんがこの思いを強く持つようになった理由は、幼少期まで遡ります。

吉水さんは埼玉県にある浄土宗寺院の出身で、住職であるお父様がベトナム人への支援を行っていました。お寺の離れにはベトナム人僧侶が暮らしていて、幼い頃からベトナム人とともに暮らしてきたのだそうです。
2013年頃から、吉水さんはお父様の支援活動のサポートを始めます。東京都港区の寺院を拠点にしていたこともあり、亡くなった技能実習生や留学生たちをベトナムに帰国させたり、お葬式をしたりといった支援を行っていました。そのような中、吉水さんが支援について深く考えるきっかけとなる出来事が起こります。
「その当時、支援を行っていた実習生の数人が自殺してしまったのです。『どうしてこんなことが起こってしまうのだろう』と、技能実習の制度などを調べました。そのとき『ベトナム人の命と人権を守るにはどうすればいいのか』と考えたことが、現在の支援活動の根っこの部分になっています」
その後、コロナ禍で保護しなければならないベトナム人が爆発的に増えたことを受けて、2020年1月にNPO法人として認証を受けました。
コロナ禍での物資支援や保護にくわえ、勉強会や就労支援も実施
コロナ禍では、職を失い困窮したベトナム人の若者が急増。約1万人に物資の支援を行い、数千人は港区の寺院などで一時的に保護をしました。
当時はベトナムが海外からの入国制限を実施したこともあり、ベトナムに帰れない若者が多くいました。妊婦や高齢者は帰国が優先されましたが、それ以外のベトナム人は帰国することができず、最大何万人というベトナム人が帰国待ちという状況に陥ったのです。
吉水さんは、彼らを保護すると同時に、出入国在留管理庁(入管庁)や法務省と掛け合い、在留資格の交付をお願いしました。その甲斐もあってか、国は技能実習生に対する雇用維持支援を発表。これは特定技能を目指す外国人に対し、最大で1年間の在留を認めるというものです。
ただし、日本で生活し続けるためには、在留期間中に特定技能試験に合格すれば良いという単純な話ではありません。「若者たちをただ保護するだけではダメで、日本語や特定技能試験の勉強もして、新しい職場に繋げていかなくてはならない。当時はかなり切羽詰まった状況で、物資支援や保護に加えて、勉強会などの支援を行っていました」

その際、役に立ったのがコロナ禍での助成金です。以前は寄付金で支援を行っていましたが、コロナウイルスの流行が長引くにつれ、それだけでは難しい状況になったそうです。
「衣食住の確保だけでも、かなりのお金がかかります。食費は毎日数万円かかっていましたし、着の身着のまま逃げていた人たちへは衣服の支援もしていたので、助成金の存在は本当に助かりました。また、勉強会には日本語の先生や、ベトナム語で教えられる留学生にも有償で来てもらっていました。ボランティアではなく有償でできたのは、助成金があったからにほかなりません」
ほかにも、妊産婦や病気になった人への医療支援にも力を入れています。技能実習生や留学生たちは日常会話レベルの日本語はできるものの、医療や法律に関する話を日本語でやりとりするのは難しく、日本人の支援が必要不可欠だと吉水さんは考えています。
SNSの活用など、ベトナム人の若者目線で考えた支援を
コロナ禍は数千人の保護を行ってきた「日越ともいき支援会」。それだけの規模で支援を行うとなると、お金はもちろん、人手も必要です。しかし、「日越ともいき支援会」のスタッフは日本人6人、ベトナム人12人の計18人のみ。スタッフだけでは到底この規模の支援は行えません。にもかかわらず、大規模な支援ができたのはなぜか——そのヒントは、各分野のスペシャリストとの連携にありました。
「たとえば、就労関係は連合東京、医療関係は病院の先生、行政関係は区役所の方といったように、専門分野の方々と連携して支援を行ってきました。こうした方々は、父の時代から繋がっている人もいましたし、テレビなどのメディアに取り上げられたことをきっかけに連絡をくれる方もいましたね」
吉水さんたちが自ら発信することはほとんどなかったそうですが、それでもたくさんのメディアが「日越ともいき支援会」を取り上げました。当時、東京を拠点とする支援団体のなかで「日越ともいき支援会」がかなり大規模だったことにくわえ、取材依頼を一切断らなかったことがメディア露出の機会を増やしたのでは、と吉水さんは考えています。
「業界の襟を正すにはメディアの力も重要です。技能実習制度の問題を多くの人に知ってもらうため、現在も技能実習生へのインタビューなどは積極的に受けています」
吉水さんたちが自ら発信することはほとんどなかったそうですが、それでもたくさんのメディアが「日越ともいき支援会」を取り上げました。当時、東京を拠点とする支援団体のなかで「日越ともいき支援会」がかなり大規模だったことにくわえ、取材依頼を一切断らなかったことがメディア露出の機会を増やしたのでは、と吉水さんは考えています。 「業界の襟を正すにはメディアの力も重要です。技能実習制度の問題を多くの人に知ってもらうため、現在も技能実習生へのインタビューなどは積極的に受けています」

支援する側の人手を充実させる一方で、もう一つ重要なのが、困窮しているベトナム人に支援の情報を届けること。「日越ともいき支援会」は約1万人へ物資支援、数千人の保護を行いましたが、これだけ大規模な支援ができた背景には、日頃からSNSでベトナム人と繋がる地道な活動がありました。
「コロナ前からFacebookのMessengerを通して、ベトナム人の若者と積極的に繋がっていたのです。『ベトナム人を助ける日本人がいる』ということを、ベトナム人コミュニティの中で周知することが大事だと考えていました」
その活動の成果は、コロナ禍に顕著に現れます。吉水さんのもとへ、ベトナム人からSOSの連絡がひっきりなしに届くようになったのです。こうしたSOSに対し、東京近辺に住んでいる人に対しては寺院に来てもらい、遠方で東京に来るお金がない人に対しては、東京までの交通費を振り込み、来てもらったのだそう。多いときには1日何百件と来ていたSOSを、吉水さんは一つも断りませんでした。

コロナが落ち着いた現在は、Facebookでベトナム人と繋がるのはもちろんのこと、TikTokを活用した啓発事業も実施。TikTokでは、日本の法律についてや、就労のための窓口紹介など、日本で生活するにあたって必要な事柄を伝えています。 「ベトナム人が使っているSNSはFacebookとTikTokが多いので、私たちもこの2つを活用しています。相談窓口などで『何かあったら電話して』と言われることも多いのですが、彼らはSIMカードを持っていない人がほとんど。自分のスマートフォンから電話ができないので、電話は手段としてはあまり意味がありません。支援を私たちの自己満足で終わらせないためにも、彼らの目線で考えることが重要です」
技能実習生の人権を守るために。重要なのは、しっかりとした支援体制の構築
コロナ禍ではさまざまな支援活動を行ってきましたが、なかでも印象に残っているのは、2022年11月に愛媛県西予市の縫製工場に対して、技能実習生11人への不払い金2,700万円の支払いを求めたこと。この問題が明るみに出ると、生産委託元のワコールホールディングスは技能実習生の生活を支援するとして、「日越ともいき支援会」に500万円の寄付をしました。ほかにも、問題を知ったいくつもの会社が声を上げたり、ニュースを見た一般の人から暖かい声をかけてもらったりしたといいます。
「厚生労働省の方に『歴史を変えてくれてありがとう』、周りの方からは『頑張ったね』などと声をかけてもらったことが本当に嬉しかったです。私としては特別頑張ったわけではなくて、いつも通りの支援をしていたのですが、その結果たくさんの人に知ってもらうことができました」

愛媛県西予市の縫製工場の問題は、不払い金の額も大きかったため、多くのメディアに取り上げられ話題になりました。しかし、これは氷山の一角に過ぎず、日本各地ではこうした不払い金問題をはじめとして、企業から不当に解雇されるなどトラブルが相次いでいます。
こうした状況を受けて、政府の有識者会議は2023年4月、現在の技能実習制度を廃止し、新しい制度へと移行する案を示しました。この新制度について、吉水さんは根本的な問題解決にはなっていないと話します。
「たとえば、現在は原則不可とされている転職について緩和の方針が示されていますが、転職できないから失踪などの問題が起こるわけではありません。何かあった際に技能実習生から相談を受けたり、支援したりする体制が機能していないことが問題なんです」
本来であれば、企業と技能実習生の間にトラブルが起こった場合、実習生の受け入れ先に指導を行う「監理団体」と呼ばれる組織や、監理団体から報告を受けるなどする「外国人技能実習機構」が問題解決や支援を行います。しかし、こうした仕組みが十分機能していないために、労働環境や人権侵害に関するトラブルが後を経たないと吉水さんは考えています。
「まずは監理団体、そのあとに外国人技能実習機構、と相談ステップを踏むわけですが、ここで問題解決に繋がらないと、実習生たちも諦めるしかなく失踪してしまうんです。その問題を解決しないまま転職の制限を緩和しても、『1年我慢して働いたら、より時給の高い東京に行こう』といった実習生が増えるだけ。まずはしっかりとした支援体制を構築することが必要だと思います」

技能実習生を取り巻く環境は少しずつ変化の兆しを見せていますが、現在も「日越ともいき支援会」には日々相談やSOSの連絡が届きます。吉水さんはこうした現場の声を東京出入国在留管理局や厚生労働省に届け、ベトナム人の保護や支援だけでなく、国側にも支援の充実を図るよう働きかけています。
日本人とベトナム人がともに生きる社会を目指して、「日越ともいき支援会」はこれからもベトナム人の命と人権を守る活動を続けていきます。
事業基礎情報【1】
実行団体 | 特定非営利活動法人 ⽇越ともいき⽀援会 |
事業名 | 在留外国人コロナ緊急支援事業 |
活動対象地域 | 全国 |
資金分配団体 | 特定非営利活動法人 ジャパン・プラットフォーム |
採択助成事業 | 2020年度新型コロナウイルス対応支援助成<随時募集3次> |
事業基礎情報【2】
実行団体 | 特定非営利活動法人 ⽇越ともいき⽀援会 |
事業名 | 在留外国人コロナ緊急支援事業 |
活動対象地域 | 全国 |
資金分配団体 | 公益財団法人 日本国際交流センター |
採択助成事業 | 2021年度新型コロナウイルス対応支援助成<随時募集7次> |
2013年に福岡県初のフードバンク団体として設立された、NPO法人フードバンク北九州ライフアゲインは、「すべての子どもたちが大切とされる社会」を目指し、子育て世帯を中心とした食料支援に取り組んでいます。コロナ禍で急増した「食料支援の需要」と「食品ロス」の問題を受けて、同団体は食料を配布するだけでなく、サプライチェーンの効率化やステークホルダーの連携促進にも尽力しています。食料品店、中間支援組織、行政等と協力して22年度に集まった食料品は136t以上。月35世帯ほどだった支援規模は月100〜150世帯にまで増加しました。こうした功績の背景にはどんな工夫があったのか。理事の陶山惠子さんにお話を伺いました。[コロナ枠の成果を探るNo.3]です。
「食料支援の需要」と「食品ロス」の問題に向き合い、延べ4,000世帯を支援
子どもの通う学校が休校になり、働きに出られず、職を失った。自宅にこもる時間が増え、ストレスが蓄積されたことで家庭が崩壊した。2020年、新型コロナウイルスがもたらしたこのような問題は北九州市でも深刻を極めていた、と陶山さんは振り返ります。
「コロナが原因で失職や離婚した家庭が増え、食料支援を求める世帯が急増。2019年度末には月30〜40世帯だったのが、2020年度にはゆうに100世帯を超えるほどに。同時に人の流れや物流が滞った影響で、土産品が売れ残ったり、給食用の食材も廃棄になったりと、食品ロスの問題も深刻化する一方でした」

この問題に立ち上がったのが、陶山さんが理事を務める、NPO法人フードバンク北九州ライフアゲイン(以下、ライフアゲイン)です。同団体は、2013年の設立時より、食品ロスを食料支援につなげる環境活動と、経済的に厳しい子育て家庭への支援という福祉活動の両方に取り組んできました。
コロナ禍において、ライフアゲインがLINE公式アカウントコミュニティ463名に対して実施したアンケートによると、257件あった回答のうち約7割が「家計の中で最も『食費』を充実させたい」と回答。こうした現場のニーズを出発点に、食料支援の体制を強化し、食品ロスの増加を食い止めるため、ライフアゲインによる休眠預金活用事業ははじまりました。

事務所の近くに食品を保管するための倉庫を借り、スタッフを雇用したり、食品棚や搬入用の機材を購入したり。休眠預金を主に食品の管理環境や体制を整えるために活用することで、より幅広い層へのスムーズな食料支援につながったと言います。
「主な支援の対象は子育て世帯ですが、生活困窮者の方たちにも、必要に応じて行政やケースワーカーさんを通じて食料支援をすることがあります。北九州市が積極的に取り組んでいる『子ども食堂』や連携先の大学で自主的なフードパントリー(※)を実施しました」
※日々の食品や日用品の入手が困難な方に対して、企業や団体などからの提供を受け、身近な地域で無料で配付する活動のこと

2022年末までの事業期間を経て、ライフアゲインが食品提供先として連携する福祉施設、および支援する団体の数は145団体(自治体福祉課・社会福祉協議会を除く)にのぼり、食品を提供した企業は188団体へ。
食料支援件数は延べ4,000世帯を超え、寄贈された食品の受け入れ重量は2021年は110t、2022年度は130t以上と、一般的なフードバンク事業と比較し、圧倒的な規模での支援実績を記録しました。
100を超える団体や行政と連携し、支援のアウトリーチを強化
なぜ、これだけの規模で各所から食品が集まり、支援が可能になったのか。取材を通じて見えてきたのは、ステークホルダーとの連携力の強さ。それを証明した取り組みの一つが、食料配布のサプライチェーンの効率化です。
2019年、ライフアゲインは福岡県リサイクル総合研究事業化センターが主催する「食品ロス」をテーマとした研究事業にチームリーダーとして参画し、複数の団体と協力して、食品ロスの削減に向けた取り組みを進めることに。 結果、福岡県内でフードバンク活動の機運を高めるために新設されたのが、「福岡県フードバンク協議会」です。

「現在、県内には8つのフードバンク団体が活動していますが、個別に食品を提供してくれる企業を開拓するのは大変ですし、企業にとっても一つひとつの団体と合意書を結ぶなどの対応をするのは相当な手間になります。逆に言えば、それらが解消されたなら、より多くの食品が効率的に集まるはず。そう考え、フードバンク団体と食品を提供する企業をつなぐ窓口の機能を一箇所にまとめるために協議会を設置しました」
食品寄贈企業の開拓を始め、寄贈された食品の受付や管理、フードバンク団体への支援を呼びかける啓蒙活動や行政への政策提言を含む広報活動…。こうした役割を福岡県フードバンク協議会が積極的に担う体制が実現したことで、以前よりも集まってくる食品の数は格段に増えたと言います。

そして、なにより重要なのは、集まった食品をいかに必要としている人に届けるか。北九州市内における相対的貧困世帯は母子世帯だけでも7,000にのぼると推測される一方、2019年度末時点で、ライフアゲインが支援する子育て世帯は50にとどまっていました。 当事者からの支援要請を待つのではなく、こちらから積極的に当事者とつながっていく「アウトリーチ」を強化する。その必要性を実感したライフアゲインは、支援希望者とつながるLINE公式アカウントを開設し、行政と連携して団体の活動を広く告知。これが支援者の拡大に大きく貢献したと、陶山さんは話します。
「市内の各区役所に案内を設置し、2021年の冬休み前には行政からの提案で、児童扶養手当の受給者を対象とした配布物の中にチラシを同封してもらいました。送付先は約1万人。当初は300世帯だった支援対象の幅を、思い切って1,000世帯にまで広げました。支援希望者にはLINE公式アカウントへの登録を促したところ、新たに1,200名とつながることができたんです」

口コミの力も相まって活動の認知はさらに広がり、取材時点でLINE公式アカウントに登録している支援希望者は1,800名にまで増加しました。現在も学校の長期休み前には、LINEを通じて食料支援の希望を聞いています。
「共に助け合う心」の強さ。未来の孤立を防ぐために
ステークホルダーとの連携により、これまで以上に幅広い世代への食料支援が実現したころ、ライフアゲインの事務所には支援を利用した方からのお礼のメッセージが続々と届き始めました。
「孤独じゃないと実感して勇気づけられた」「私たち家族のことを想ってくれる人がいると実感して元気が出た」ーーそんな感謝の声が溢れる中、とりわけ胸を打たれたメッセージについて、陶山さんは話してくれました。
「中学生の女の子から、こんな手紙が届いたのです。『ありがとうございます。これでお母さんと一緒にご飯が食べられます。お母さんはいつも私達がお腹いっぱい食べられるようにと、余りものばかりを食べて、まともな食事をしていません。食料を届けてくれたおかげで、家族みんなでご飯を食べられることが何より嬉しいです』と。食料支援を希望する人の生活は、私たちが想像するよりもはるかに厳しいのだと思い知らされると同時に、必要な人に支援が届くことの意義を実感できた瞬間でした」

「私は決して独りじゃなかった」。食料支援を受け取った多くの人がそう感じたように、ライフアゲインもまた、支援を実施する中でステークホルダーによるサポートの心強さを実感していました。
「1,000世帯に食料支援のボックスを届ける際、梱包作業がとにかく大変だったんです。そこで食料を寄贈してくださった企業にお声がけをしたら、多くの方が箱詰めのボランティアに参加してくれました。また、送料を賄うためにクラウドファンディングで支援を募ったら、目標金額を超える120万円の寄付が集まりましたし、資金分配団体の一般社団法人全国フードバンク推進協議会さんも他団体の参考になる情報を共有してくださるなど、常に相談しやすい関係性を築いてくださいました。
あとは何より、活動を続ける中で行政との関係性が変化してきたなと実感しています。最近では市が主催するフードバンクの事業に対して提言を求められることもあり、相互に頼り、頼られる関係性が醸成されてきたなと感じています」

つながり続ける関係の中で、助けを求めることは決して恥ずかしいことじゃないーー「家計は苦しいけれど、食料支援を受けるのは抵抗がある」という人も少なからずいる中、ライフアゲインはそんなメッセージを発信し続けてきたと言います。
困っている人には手を差し伸べ、自分が困っているなら周りに助けを求める。ライフアゲインの“共助”の姿勢は周囲にも伝播し、大きな力となって、誰一人孤立しない未来を引き寄せ続けるに違いありません。
最後に陶山さんは、団体の今後についてこう語ってくれました。
「昨今は物価高騰の問題もあり、子育て世代はもちろん、さまざまな事情から困窮し、孤立している人が増え続けています。私たちとしては、フードバンク事業を着実に続けながら、これまで以上に福祉活動にも力を入れたいなと。取り組みの一つとして、2022年からは家庭訪問型の子育て支援の準備も進めており、新しく借りた事業所ではさまざまな困りごとに耳を傾ける相談室を開こうと考えています。今後は食料支援を入口に、支援を必要としている一人でも多くの人とつながり、安心できる関係性を築くことで、困ったときには気軽に頼ってもらえる存在になりたいです」
【事業基礎情報】
実行団体 | 認定特定非営利活動法人フードバンク北九州 ライフアゲイン |
事業名 | コロナ禍でも届く持続可能な食支援強化事業 |
活動対象地域 | 北九州市及び近郊地域 |
資金分配団体 | 一般社団法人 全国フードバンク推進協議会 |
採択助成事業 | 2020年度新型コロナウイルス対応支援助成 |
福岡県・北九州市に拠点を置くNPO法人抱樸(以下、抱樸)は、ホームレスや生活困窮者を始め、さまざまな生きづらさを抱えた人たちの人生に伴走する活動を、30年以上にわたって続けてきました。2021年1月より、公益財団法人パブリックリソース財団(2019年度通常枠資金分配団体)の採択を受け、単に身を置くだけの場所ではなく、人とのつながりを持ち、心の拠りどころにもなる住居として「プラザ抱樸」の拡充に勤しんでいます。この取り組みの背景に見えるのは、持続可能な「伴走型支援」のあり方を模索する姿勢。そもそも伴走型支援とは何か、なぜ必要なのか。その持続性をどう担保していくのか。抱樸の常務理事を務める山田耕司さんにお話を聞きました。”
「家族と制度の間」を担い続けて広がった支援
抱樸が活動開始発足したのは、1988年12月。当時は「北九州日雇越冬実行委員会」という名称でした。始まりは路上生活者の現状調査を行ったことからと言います。

「福岡の日雇労働組合と共同し、路上生活者にヒアリングをすることになったんです。仕事が終わった夜に会いに行って、『話を聞かせてもらうのに手ぶらだと申し訳ないから』と、手土産におにぎりを握っていった。調査が進み路上生活者の実態が明るみになると、当然、自分たちにできることを考えますよね。そこから、炊き出しが始まったと聞いています」
大学時代は社会運動系のサークルに入っていた山田さんが、抱樸に出会ったのは1997年。友人の誘いで炊き出しやパトロールのボランティアに参加するようになり、2004年に抱樸が北九州市からの委託で「ホームレス自立支援センター」を始めると同時に入職しました。

以来、20年近くにわたって抱樸が出会うさまざまな障害や生きづらさを抱えた人たちの声に耳を傾け、現在は常務理事として休眠預金活用事業を含め、多岐にわたる取り組みを統括しています。
日雇労働者やホームレスのための炊き出しから始まった抱樸の支援。入口こそ「労働問題」でしたが、山田さんは「支援を続けるうちに『労働問題以外の課題』も見えてきた」と振り返ります。
「私自身、最初は『就労支援をして、ホームレスの方が自立すれば万事解決』と思っていました。ところが、実際は軽度の知的障害や精神障害を含め、さまざまな障害が原因で就労や独居が難しかったり、社会的に家族や企業の機能が衰えたことから周りに頼れる人がおらず孤独に陥ってしまったり。リーマンショック以降は若年困窮者も増え、その多くは高校中退以下で十分な学習の機会を得られていなかったり。一筋縄には解決できない問題が山積みだったんです」
困窮者・ホームレス支援に始まり、子ども・家族支援、居住支援、就労支援、障害福祉、高齢福祉に更生支援(刑務所出所者への支援)――人の属性に囚われず、さまざまな生きづらさを抱えた人たちを対象にした抱樸の支援は、現在27の事業まで広がっています。
なぜ、ここまで広がり得たのでしょうか?
「ホームレス支援から始まった、というのが大きな理由だと感じています。ホームレスになる人は、社会的な制度や福祉から排除されてきた方々なんです。障害の問題もスルーされ続け、雇用保険も受けられず、生活保護すら申請できない。結果、住まいを失い、就職活動もできなくなる。そうした方々への支援を考えるうえで、活用できる制度があるならもちろん活用します。一方で、既存の枠組みに過度な期待は寄せず、『必要だと思うのにないものがあるなら自分たちで作っていこう』という発想が、もともとすごく大きいんだと思います」
誰ひとり取り残されない社会を創るため、家族と制度の間を担い続けた抱樸。手土産におにぎりを握り始めた日々から34年。これまでに約3,700人以上が、ホームレス状態から生活を取り戻したと報告されています。
入居者の人生に“伴走”する居住支援を目指して
2019年度、パブリックリソース財団による公募で採択を受けたのは、抱樸が2001年から実施していた「居住支援」における取り組み。当初は大家さんから物件を一括で借り上げて入居者に転貸するサブリースの形式を活用し、その後、生活困窮者に無料または低額な料金で宿泊所を提供する「無料定額宿泊所(以下、無低)」としての居住支援を行っていました。

一方、世間では「無低は利用者の無知や弱みにつけこみ、入居者の生活保護費を搾取する貧困ビジネスの温床になっている」と問題視され始めます。入居したものの、ソフト面での支援は十分になく、再び路上生活に戻ってしまうケースも少なくありませんでした。 こうした背景を受け、山田さんは「単に住まいを提供するだけでなく、入居後も見守り続ける居住支援を広げていきたい思いがあった」と話します。
「居住支援を始めた頃から、アフターケアは行っていました。入居者の多くが高齢者だったことも理由の一つですが、障害や依存症の問題から金銭管理や衛生面でのトラブルが生じることも少なくなかったんです。家族のように困ったときに頼れる人が側にいないと、安定的に暮らしていくのは難しいのだと、この頃から、実感していました」
入居後もつながり続け、一人ひとりの人生に伴走する。そんな居住支援を持続可能なものにするためには、見守り続ける人材の確保や育成のためにも、ある程度、安定した資金繰りが必要になります。しかし、実状は北九州市の住宅扶助の基準額(当時)である 3万1,500円で物件を借り、同額で貸していたため収益はゼロ。
理想とする居住支援のあり方を広げるために、何か打てる手はないだろうか?
模索し続ける中で見つけたのが、休眠預金活用事業の公募として、パブリックリソース財団が打ち出した「支援付き住宅建設・人材育成事業」でした。
2020年4月に無低の規制が強化されるのと並行して、単独での居住が困難な人への日常生活を支援する制度(日常生活支援住居施設)が創設。同事業は、その流れを受けて新基準に対応した無低の改築・建替え費用を助成するとともに、入居者を見守る人材の育成を推進。「住まい」と「生活支援」をセットで提供するソーシャルビジネスのビジネスモデルの構築を目指すものでした。
「これまでも多くの助成金や補助金を活用しましたが、基本的に物件の“所有”は認められず、借りるしかありませんでした。そのうえ単年度の助成が大半ですが、単年度では成果や実績が上がらないこともあり、資金が途絶えれば物件を借りられなくなるリスクも大きかったんです。その点、今回は物件の購入も認められ、複数年度の支援だったことが魅力的でしたね。パブリックリソース財団さんとも月一でミーティングを実施し、情報共有はもちろん、手続きの面でも手厚くサポートしてくださったので、大変心強かったです」
審査を経て採択された抱樸は、2018年より借りていたマンション一棟を購入。見守り支援つき住宅「プラザ抱樸」として再出発し、入居者の相談に乗る支援員の人件費や研修費にも充てながら、日々施設の拡充に取り組んでいます。

審査を経て採択された抱樸は、2018年より借りていたマンション一棟を購入。見守り支援つき住宅「プラザ抱樸」として再出発し、入居者の相談に乗る支援員の人件費や研修費にも充てながら、日々施設の拡充に取り組んでいます。 ここでは相談支援員による生活サポートがあり、いつでも「困りごと」を相談できるように常駐する管理人を配置。障害者向けのグループホームも併設されています。取材時(2022年10月)には、入居可能な88室がほぼ満室。10〜80代まで、老若男女を問わずに幅広い世代が暮らしています。
中には中学生で妊娠し、シングルマザーになるも、さまざまな事情で家族と同居が難しくなった入居者も。彼女は現在、生活保護を受け、アルバイトをしながら抱樸のサポートにより通信制の高校に通っていると言います。
「ホームレスの方だけでなく、さまざまな事情で家が借りられない、行き場がない、生活全般に困難を抱えた方々が地域にこんなにもおられるのかと。『プラザ抱樸』を始めて、よりその事実を痛感しました」

“つながり”を対等なものにする
住まいの提供だけでなく、入居後も見守り続けるスタイルは、抱樸が20年以上にわたって住居支援を行う中で理想の形を模索し続けてきた結果でもあります。同時に、このスタイルから浮き彫りになるのは、抱樸の「支援」に対する考え方。
抱樸は、支援には「問題解決型支援」と「伴走型支援」があると定義しています。住居支援を例に考えれば、行き場のない人に住まいを提供するのが「問題解決型支援」であり、入居後も見守り続けるのが「伴走型支援」です。
これらは「支援の両輪」として実施されるべきだと、抱樸の代表を務める奥田知志さんの著書に記されています。
私は「諦念」の中にたたずむ路上の人を大勢見てきました。そういう人がもう一度立ち上がるためには、居住や就労の支援に加え「私はあなたを応援している。一緒に頑張ろう」と呼びかける他者の存在が必要だったのです。「誰のために働くか」という問いとその答えをもつこと。「あの人が応援してくれるから」「愛する人のためだから」、これら「外発的な動機」をもつ人は踏ん張ることができます。(『伴走型支援 新しい支援と社会のカタチ』より)

コロナ禍の炊き出しでは、お弁当に添えるお手紙をボランティアから募ったことも。
山田さんも「伴走型支援が必要なのは、ホームレスや生活困窮者、障害がある人など一部の人に限られた話ではない」と主張します。 「家族や親戚、友人や企業に制度。私たちも多様な人に支えられて日々生きています。人が生きていくためには、誰かしらに支えられる……伴走される必要があるのだろうと。抱樸が支援をしている方達は、たまたま伴走相手が私たちだった。ただ、それだけのことだと思うんです」

すべての「いのち」は等しく尊い。だから、ひとりにさせないために「つながり」続ける。そして、その「つながり」を平等にしていくために、抱樸は今日もあらゆる人の生きづらさに向き合っています。
「伴走型支援」を持続可能にするために
支援つき住宅を持続的に提供していくため、2020年には初のクラウドファンディングを実施した抱樸。1万人を超える支援者から集まった寄附額は、約1億2,000万円。これを機に拠点の北九州だけでなく、北海道や大阪、愛知、岡山など、10地域の困窮者支援団体と連携を取り、全国に支援を拡大しています。

noteやYouTubeなどのSNSを活用した積極的な発信も相まり、団体の思いに共感する人の輪は広がり、スタッフの数も増加。仲間が増えるのは心強い反面、組織の規模が大きくなるがゆえの難しさも痛感していると、山田さんは話します。
「スタッフの人数が増えると、部署ごとの縦割りが起こりがちになります。今は社会福祉法人化への準備も進んでおり、団体としての過渡期でもあります。そんな中で抱樸がこれまで大切にしてきた思いをどのように共有しながら、連携を強めていくのかが直近の課題です」

「抱樸」とは、「原木・荒木(樸)を抱きとめること」。ささくれ立ち、棘のある荒木を抱けば、ときに傷を負うこともあります。生半可な気持ちでは続けられない。
だからこそ、働きに見合った対価が得られる組織でありたい。それが、生きづらさを抱えた一人でも多くの人とつながり続ける、伴走型支援を持続可能にする鍵になるだろうから。
山田さんの力強い言葉からは、走り続けることを決めた抱樸の“覚悟”が滲むようでした。
「2010年頃から増え始めた新卒採用の初期メンバーは、30代に突入しました。結婚や出産といったライフプランもある中、やりがいや思いだけで仕事を続けるのは難しいと思います。だから、事業の収益性にもこだわり、職員の待遇を向上していく必要がある。休眠預金活用事業を通じて取得した「プラザ抱樸」では利益が生まれ始めています。その事実も踏まえ、持続可能な団体として今後どうあるべきか、しっかり考えていきたいです」
■資金分配団体POからのメッセージ
今回のプラザ抱樸というプロジェクトは、休眠預金活用事業の中でもかなり大きなインパクトのある事業です。まず、マンション1棟をまるごと買い上げ、様々な福祉制度を組み合わせた「ごちゃまぜ型」の支援付き住宅群としたこと。次に一般向けの賃貸には古く、空室の多くなったマンションを福祉用途に全面転換することで、未活用の住宅ストックを地域課題の解決に役立てていること。これらは地域リソースを最大限に活かした先駆的事例であり、全国の高齢化や空き家問題対策のロールモデルともなりうるので、しっかりとこの事業の成果評価を発信していきたいと思っています。(公益財団法人 パブリックリソース財団 プログラムオフィサー)
【事業基礎情報】
実行団体 | 特定非営利活動法人 抱樸 |
事業名 | 支援付き住宅の複合モデル「プラザ抱樸」の拡充と整備事業・抱樸 |
活動対象地域 | 北九州市 |
資金分配団体 | 公益財団法人 パブリックリソース財団 |
採択助成事業 | 2019年度通常枠・実行団体・ソーシャルビジネス形成支援事業 |
今回の活動スナップは、休眠預金活用事業が取り上げられた論文「コロナ禍におけるキャッシュ・フォー・ワーク」が、2022年度 地域安全学会技術賞を受賞した際の授賞式の様子をお伝えします。
活動の概要
一般財団法人 リープ共創基金は、休眠預金活用事業(新型コロナウイルス対応緊急支援助成)の資金分配団体として、「キャッシュ・フォー・ワーク」(※1)の手法を用い、2020年度より「地域課題の解決を目指した中間的就労支援事業」、2021年度より「コロナ後社会の働き方づくりのための助成」に取り組んでいます。
その2つの事業の概要と成果がまとめられた論文、「コロナ禍におけるキャッシュ・フォー・ワーク」が、この度、地域安全学会の2022年度 技術賞(「キャッシュ・フォー・ワーク:災害レジリエンスを高める社会技術」)を受賞しました。
コロナ禍におけるキャッシュ・フォー・ワーク|地域安全学会梗概集 No.50, 2022.5
※1「キャッシュ・フォー・ワーク」(Cash for Work)とは、災害復旧・復興事業に被災者を雇用し、賃金を支払うことによって、被災者の自立を促すと同時に、よりよい災害対応や復興を促進する手法のこと。(地域安全学会梗概集(NO.50、2022.5)「1.キャシュ・フォー・ワークとは何か」より引用)。
震災・復興時に実践された手法として、永松 伸吾教授(関西大学・防災科学技術研究所)が提唱。
活動スナップ
2023年5月27日、神奈川大学 みなとみらいキャンパスにて、論文の表彰式が行われました。地域安全学会 村尾 修会長より、永松 伸吾教授(関西大学・防災科学技術研究所)、加藤 徹生 代表理事(リープ共創基金)、竹之下倫志 プログラム・オフィサー(JANPIA)に対し、表彰状と記念品が手渡されました。
※共同受賞者は、永松 伸吾教授のほか、加藤 徹生・新宅 圭峰・細田 幸恵(リープ共創基金)、竹之下倫志(JANPIA)の4名です。

△左から 村尾会長(地域安全学会)、加藤代表理事(リープ共創基金)、永松教授(関西大学・防災科学技術研究所)、竹之下 プログラム・オフィサー(JANPIA)と、同席した鈴木 均 シニア・プロジェクト・コーディネーター(JANPIA)

授与式終了後、永松教授による基調講演が行われました。講演では、リープ共創基金が実施した休眠預金活用事業の実行団体として、延べ24団体が採択され、コロナ禍で発生した64件の地域課題解決の試みが行われたことや、421人の若者の雇用が生まれたことなど、事業の成果が紹介されました。 永松教授からは、「今回の受賞は大変励みになる」として、JANPIAをはじめ、プロジェクトに携わった方々への感謝の意が述べられました。
■事業基礎情報【1】
資金分配団体 | 一般財団法人 リープ共創基金 |
事業名 | 地域課題の解決を目指した中間的就労支援事業〈2020年度緊急支援枠〉 |
活動対象地域 | 全国 |
実行団体 | ・特定非営利活動法人 北海道エンブリッジ ・認定特定非営利活動法人 Switch ・特定非営利活動法人 農スクール ・認定特定非営利活動法人 コロンブスアカデミー ・特定非営利活動法人 G-net ・一般社団法人 サステイナブル・サポート ・一般社団法人 フミダス ・特定非営利活動法人 LAMP ・株式会社キズキ ・一般社団法人 グラミン日本 ・特定非営利活動法人 全国福祉理美容師養成協会 ・特定非営利活動法人 学生人材バンク ・一般社団法人 YOU MAKE IT |
■事業基礎情報【2】
資金分配団体 | 一般財団法人 リープ共創基金 |
事業名 | コロナ後社会の働き方づくりのための助成〈2021年度緊急支援枠〉 |
活動対象地域 | 全国 |
実行団体 | ・特定非営利活動法人 学生人材バンク ・一般社団法人 ステップフォワード ・特定非営利活動法人 WELgee ・特定非営利活動法人 全国福祉理美容師養成協会 ・特定非営利活動法人 なんとかなる ・ディースタンダード株式会社/特定非営利活動法人 み・らいず2 ・一般社団法人 グラミン日本/特定非営利活動法人 北海道エンブリッジ ・特定非営利活動法人 どりぃむスイッチ ・認定特定非営利活動法人 キドックス ・特定非営利活動法人 G-net |
2023年3月よりJANPIAで活動を始めたインターン生の「活動日誌」を発信していきます。記念すべき第1回は、2023年3月23日に開催された調査研究シンポジウム「罪を犯した人の立ち直りを地域で支えるために〜地域の生態系の視点から〜」のリポートです!
はじめまして!
JANPIAにてインターン生として活動しているSです。
「インターン生の活動日誌」第1回の今回の記事では、2023年3月23日に開催された休眠預金活用事業・調査研究シンポジウム「罪を犯した人の立ち直りを地域で支えるために ~地域の生態系の視点から~」に参加し、学んだことをリポートさせていただきます!
シンポジウムの概要はこちらです。

また、シンポジウムの様子・動画はこちらの記事をご参照ください。
https://www.kyuplat.com/media-channel/1191/
シンポジウムに参加しての学び
今回のシンポジウムでは、生態系マップ(エコマップ)を用いた調査結果の共有が行われていました。生態系マップは、利用者を中心に、社会資源との関係性を図にし、可視化するものです。
この生態系マップを活用することで、
①実行団体の活動により被支援者にどのような変化が生じているのか、地域の資源の関係性はどのように形成されているかなどを追うことができる
②資源とのつながりを可視化して定期的にアップデートすることで事業の進捗の共有ができる
③多くの団体と共有することで地域の資源や個々のアクターをより広く把握できる
④客観的な視点からリソースの偏りなどを確認できる
といった特徴があるのではないかという気づきを得ることができました。

そもそも更生とは?
犯罪歴のある方の更生と一口に言っても、関係する機関は行政・司法・警察だけではなく、出所してからの生活の支援なども継続的に行わなければ、再犯につながってしまうこともあるということを学びました。
そもそも、何をもって「更生」したといえるのか、何を基準に「更生する」という言葉を用いるのか、シンポジウムに参加して疑問が残りました。
「更生する」ことを支援する国の活動を「更生保護」といい、担当POに聞いたところ、「更生保護は「社会内処遇」とよばれ、保護期間が定められており、その期間を終了すると、被保護者でなくなります。保護司は、支援対象者について口外せず、その期間が終了したら対象者に町であっても話しかけない(前歴を周囲に知られないため)等、徹底されている」そうです。また、「更生保護」だけでは再犯を完全に防止するには不十分であり、そのため、民間公益活動団体やボランティアが地域で更生を支えるための活動をされています。今回の休眠預金活用事業でも、そうした民間公益活動団体が制度の狭間を埋めるものとして活用されたことが分かりました。
また、関連する専門書も多数事務所にあり、その中でも「よくわかる更生保護 」(藤本 哲也(編)、 ミネルヴァ書房)を勧めてもらいました。是非手に取ってみようと思います。

最後に
今回のシンポジウムに参加し、今まで漠然と抱いていた「更生保護」の活動や具体的な支援内容、アプローチ、エコマップを使った調査方法について学ぶことができ、また、1人1人に寄り添うことや当事者を孤立させないことの重要性について知ることができました。
発表された団体や調査研究グループの皆様、ありがとうございました!
休眠預金活用事業の成果物として資金分配団体や実行団体で作成された報告書等をご紹介する「成果物レポート」。今回は、実行団体『保見団地プロジェクト[資金分配団体:一般財団法人 中部圏地域創造ファンド〈19年度通常枠〉]』が発行したパンフレット『保見団地将来ビジョンブック』を紹介します。
保見団地将来ビジョンブック
「住みやすく楽しい保見団地に」という想いのもと、色々な団体や人たちの力を合わせて3年間取り組んできた保見団地プロジェクト。
コロナ禍での苦労も乗り越え、その成果として、わたしたちの「夢」がたくさんつまった将来ビジョンが作成できたことを、心から喜んでいます。
この将来ビジョンを作成した後も、住民の方々と一緒に様々な取組を行い、ビジョンに盛り込まれた「夢」をひとつでも多く、現実のものにしていきたいと思っていますので、今後とも、よろしくお願いします。
【事業基礎情報】
資金分配団体 | 一般財団法人 中部圏地域創造ファンド |
事業名 | 日本社会における在留外国人が抱える課題解決への支援と多文化共生 |
活動対象地域 | 愛知県 |
実行団体 | <保見団地プロジェクト:チーム構成団体> |
愛知県県営住宅自治会連絡協議会 | |
県営保見自治区 | |
特定非営利活動法人 トルシーダ | |
保見プロジェクト(中京大学) | |
外国人との共生を考える会 | |
採択助成事業 | <2019年度通常枠> NPOによる協働・連携構築事業 副題:寄り添い型包括的支援で困難な課題にチャレンジ!創造性を応援! |
保見団地は小高い丘陵地帯に広がるマンモス団地。一時期は10,000人を超える住民を擁していたそうですが、他地域の団地と同様に住民の減少と高齢化が進んでいます。一方、1980年代後半から近隣の自動車製造企業等の企業に働きに来たにブラジルやペルー等の人々の入居率が高まってきています。その中で生じたのが、日本人と外国人との間で起こる、言葉や文化・習慣の違いからのさまざまな問題です。その1つ1つの問題の解決めざし、日本人も外国人もそこに暮らす者同士として共生し、保見団地を“多文化多様性が輝く場”にするために立ち上がった休眠預金を活用した事業『保見団地プロジェクト』(資金分配団体:一般財団法人中部圏地域創造ファンド)を取材しました。”
住民の7~8割が外国人という環境
広場に設えられた屋台式のカフェのそばで、おしゃべりを楽しんでいる数人の外国人であろう若者たち。彼らに「銀行に行こうと思ったら、コーヒーの香りがしたから来ちゃった」と気軽に話しかける、白い割烹着を着た日本人女性。この光景が繰り広げられているのは、愛知県豊田市の北西部にある保見団地です。土曜日の午後の一コマであるそんな光景にも、この場が秘めている多様性の楽しさを感じます。
保見団地は豊田市の北西側に位置するマンモス団地。一戸建て住宅の保見緑苑自治区、UR 都市再生機構の公団保見ケ丘自治区、保見ケ丘六区自治区、県営住宅の県営保見自治区の 4 つの住民組織があり、通称「保見団地」と呼ばれています。保見団地の居住者の半数はブラジルの方々です。さらに県営住宅では、800世帯入居するなか住民は約2,000人で、その7割がブラジル人の方々です。その他にペルー人、中国人、ベトナム人なども暮らしていますが、ブラジル人は87%を占めています。
こうした中で、言葉・生活習慣や文化の違いから、さまざまな問題が起こってきました。例えば、ゴミを収集日以外の日にゴミ捨て場に出してしまう、ルール通りの分別をしていない、夜間に騒音をたてる人がいる等です。
2020年12月に保見団地プロジェクトが実施した調査では、生活で困っていることとして外国人では「近所付き合いが少ない」、日本人では「規則を守らない」ということが1位に上がりました。さらに日本人の生活で困ったことを見ると、「言葉が通じない」「習慣の違い」が続きました。

取材日、お話を伺った県営保見自治区で副区長を務める藤田パウロさんは言います。
「外国人がマナーを守らないということがあります。確かに、守らない人もいます。でも、反対に日本人が暮らしのマナーを彼らに伝える努力を充分にしてきたのでしょうか? 外国人と日本人がともに暮らしていくためには、互いの考えや習慣を知って、理解し合うことが大切です。なかなか伝わらないから、あきらめるのではなく、たとえ一人であっても伝えれば、そのうち一人が二人。二人が三人にと増え、それが重なっていけば外国人も日本のマナーも理解して暮らせるようになるのだと思います」と。
さまざまな壁はあるとしても、互いに互いの文化・習慣を理解しようとしながら関係を築いていくことで解決への道筋がある。そのことに気づき、行動しようとした人たちがつながり、保見団地プロジェクトははじまっていったのです。
事業のきっかけとなった、「HOMIアートプロジェクト」
保見団地では、前述のように言葉・生活習慣や文化の違いから、さまざまな問題が生まれていました。愛知県県営住宅自治会連絡協議会や、県営保見自治区の方々がその解決に向けて議論を進め試行錯誤してきましたが、団地の住民を一斉に集めて交流をはかっていく試みは、あまり成功したことがありませんでした。
そのような中、地域の外国籍の子どもたちに学習支援で関わっていたNPO法人トルシーダが、アートの力で、より豊かな団地をつくろうと2019年に「HOMIアートプロジェクト」を始めました。
このプロジェクトは、子どもから大人まで国籍に関係なく、団地の外国人を中心とした住民と アートを通して言葉を超えた交流の機会をつくるものです。プロジェクトには、アーティストのほか、中京大学、外国人との共生を考える会もメンバーも加わりました。

プロジェクトの集大成は、2020年3月に実施された壁面アート制作です。 場所は団地の憩いの場として設けられていたスペース。円形のベンチが設置され、床にはタイルが敷き詰められたそのスペースは、アートプロジェクトに取り掛かる以前は落書きで白い壁は汚され「憩い」とはほど遠い状況でした。
しかし、その場所が子どもたちやアーティストたちの手によって美しい壁画に変わったのです。壁画を一つ一つ丁寧に見ていくと、テレビなどで見かけるタレントや団地内で見かける人の顔を見つけることができます。また名刹の庭に見るような枝ぶりの松や風神雷神のような獅子、楽園に集う人々など、それぞれに表情豊かな絵が描かれました。

トルシーダのワークショップなどを通してアートに触れ、表情豊かに生まれ変わった壁を目にし、子どもたちは、隣接する23棟・24棟にも壁画を描く愛知県立大学の学生による活動にも、目を輝かせて参加したということです。
「やっぱりきれいになると嬉しくて、次は自分たちが住むところもキレイにしたくなるんです」と語る県営保見自治区で区長を務める木村友彦さんも、アートが生み出す力を感じたといいます。

トルシーダによる「HOMIアートプロジェクト」は、言葉が通じなくてもきっかけとつながりがあれば、住民たちが課題解決にむけて協力しあうことができることを示した、象徴的な取り組み。また、この活動を通じて、保見団地で活動する複数団体の分野横断的な協働も始まりました。
その一つが、中京大学の教員・学生との連携です。中京大学と保見団地は近い場所にあります。2019 年度秋学期に現代社会学部で実施された「国際理解教育Ⅱ」という科目で取り組んだ内閣府・豊田市・中京大学の3 者連携による規制緩和事業で、履修者たちが取りまとめた「多文化共生」に関しての提言を背景に、当時現代社会学部で教鞭をとっていた斉藤尚文さんのもと、学生たちがプロジェクトに参加したことで連携が実現しました。
「HOMIアートプロジェクト」は、住民の心の変化を呼び起こすきっかけであるとともに、「保見団地プロジェクト」のきっかけにもなったのです。
5つの団体と休眠預金を活用し具現化した『保見団地プロジェクト』
「HOMIアートプロジェクト」から生まれた保見団地の課題を解決していく「きっかけ」ですが、さらに取り組みを拡げていくためには、多くの人の協力と資金が必要になります。
ちょうどこのとき中部圏地域創造ファンドが、タイミングよく休眠預金を活用して市民活動への助成を行う「NPOによる協働・連携構築事業」を公募していることがわかりました。その公募要領には、チームを組んで申請することとあります。そこでトルシーダ、県営保見自治区、保見プロジェクト(中京大学)、外国人の共生を考える会、愛知県県営住宅自治会連絡協議会の5団体が「保見団地プロジェクト」としてチームを組んで申請し、審査に臨みました。そして、みごと採択され具体的な活動が始まったのです。
この「チームを組んで」という条件について、資金分配団体である中部圏地域創造ファンドの大西光夫さんに聞きました。
「地域で課題解決に取り組む団体にはさまざまに強みを持った団体があります。団体がそれぞれに自律した活動を展開しながら、さらに協働して取り組みを進めていくことができれば、団体が単体で活動するよりも、大きな成果を得ることができます。それは支援を受ける側にとっていいことです。加えて、協働して取り組むことで助成終了後にも持続する関係が作れるのだと考えています。保見団地においても、様々な立場の組織が助け合いのコミュニティづくりに取り組むことで、地域が抱える多様な課題を解決していけるのではないかと考えました。」
こうして生まれたのが、保見団地を「住みやすく、きれいに、楽しい場所」にするために、「ゴミ」「子育て」「高齢者」「アート」「防災」「団地自治」等の多角的なテーマに取り組む「保見団地プロジェクト」です。
このプロジェクトを構成する団体とその役割は次の図の通りです。

これに加えて、中京大学の学生としてトルシーダの活動等に参加していた吉村迅翔さんが代表を務める「JUNTOS(じゅんとす)」という団体が、中京大学の保見プロジェクトと連携し活動を展開しています。外国にルーツを持つ方々に語学学習や交流の場を提供し、さまざまな面で選択肢を広げることを目指しています。いまでは保見団地プロジェクトにおいて、欠かせない存在となっています。
活動のポイントは「一緒に過ごす時間を長く作る」こと
それぞれの団体が担う役割や思いは異なり、様々な活動が展開されました。主な活動は以下の通りです。
活動内容 |
▶子ども食堂、高齢者サロン等による集会所を拠点とした交流の促進 ▶集会所・アートプロジェクトの空間・公園等を活用した自主的な交流活動の進展 ▶生活課題を抱える人に対する食糧配布等の支援、出前型支援、相談体制の充実 ▶外国にルーツを持つ子どもの教育支援、地域活動参加の促進 ▶自主サークル、防災活動、コミュニティビジネスを通じた外国人住民の自治活動の促進 ▶ルール違反のごみ問題に対する住民参加型のごみ回収、ルールの啓発 ▶生活や自治活動に関わる情報を住民に届ける多言語情報発信 |
活動トピックス1:移動式公民館 |

活動トピック2:自治区と中京大が協働したゴミに関わる取り組み 自治区で行う清掃活動に中京大生がお手伝いを行う他、ゴミ出しについての多言語放送、分別ルールの動画づくり、ルール違反のゴミ観察を行って防止用の照明を設置する取り組みなど、チーム団体間で力を合わせることで、今までとは異なるアプローチ・工夫が可能になりました。結果、より多くの住民がゴミ問題を意識するようになってきています。 |

しかし、プロジェクトを進めるなかには、同じように考え、足並みをそろえながらの作業が求められる場合もあるはず。そんな場合の難しさはなかったのでしょうか。
「もちろんありましたよ!一例をあげると、2020年に行った団地住民へのアンケートの時のことです。そこで最も付き合いが長く理解し合っていたはずのトルシーダと私がぶつかったのです」と斉藤さん。
その衝突はアンケート発送間際に発覚したミスの対応だったそう。この件は、話し合いをしたものの、結局、折衷案を見つけられずに、トルシーダがその対応を行ったとのこと。様々な活動を進める中では、実際に保見団地の住民を代表してまとめる立場である人と、斉藤さんたち実行団体のメンバーのように外部から入ってきた人たちの間にも、時には思いの違いから折り合いがつかない場面もあったといいます。それらをうまく乗り越えるためのコツを、斉藤さんは次のように教えてくれました。
「最大のポイントは、相手と一緒に過ごす時間を長く作ることです。何気ないやり取り、雑談を重ねる中で、お互いに気心が知れる関係を築くことができます。」

一方で、住民代表である県営保見自治区自治区 区長の木村さんは、ぶつかり合うことにも前向きです。 「居住者のなかには、外部からさまざまな人たちが入ってきて活動することを反対する人もいます。でも、私は斉藤さんをはじめとした皆さんは県営住宅をよりよくしようとの思いから、さまざまなことに取り組んでくれていることがわかっています。だから大賛成!多少、ルールの壁があったとしても、よりよくなればいいのです。」
多様な人とのつながりの中で活動を実施するためには、衝突を避けることができません。互いの主張が違うのは当たり前。多様性への理解が、活動を前へと進めているのです。
保見団地プロジェクトを支える手
チーム団体以外にも、保見団地プロジェクトの連携は広がっています。例えば、保見団地内には介護・ホームヘルプ事業等を担う「ケアセンターほみ」。ここは、訪問ホームヘルプ、障がい児デイサービス、障がい者の訪問サービス等を行っていて、県営保見自治区で副区長の藤田さんやJUNTOSの吉村さんも児童指導員として勤務しています。センターは、土曜日はJUNTOSの学習支援の場として一般の子どもたちに開放され、子どもたちは宿題をしたり、おしゃべりをしたり、遊んだりして過ごします。
実は、JUNTOSは学習支援を集会所で行っていたのがコロナ禍で使えなくなってしまいました。それを知った「ケアセンターほみ」を運営する上江洲恵子さんが、ケアセンターを使ってもよいとの声を掛けてくれたのです。今は、毎週金曜日にトルシーダと保見プロジェクトで行うフードパントリー・子ども食堂でも、センターの軒下を使わせていただいています。
県営保見自治区 副区長の藤田さんは、ケアセンターほみに関わる中で、気づきがあったといいます。「日本人と外国人には言葉の壁があると言います。でも、わたしは障害をもつ子との関わりを通して、それは関係ないと感じているのです。言葉を話すことができない子は、全身を使って私や上江洲さんに会えた喜びや要求を伝えてきます。言葉がなくても、しっかり私たちに伝わってくるのです。言葉よりも日々を共に過ごすことの積み重ねが、何よりも大切です。これはよりよい保見団地を考えていく上でも、大切な視点だと感じています。」と話してくれました。
「ケアセンターほみ」が単なるケアセンターとしてだけではなく、団地内の人々と保見団地プロジェクトの実行団体やその活動、そして心をつなぐハブセンターになっています。
保見団地プロジェクトは、このように「ケアセンターほみ」に代表される様々な支え手にも恵まれながら、着実に前に進んでいるのです。

活動のビジョンづくりは住民主体で
保見団地プロジェクトを実施中に、新たな出会いがありました。建築家の筒井伸さんです。筒井さんはコロナ禍以前は南米の都市や建築・文化に関する調査や建築設計を主に活動としていましたが、コロナ禍でそれが難しくなり、そこで、学生時代の友人が住んでいた保見団地なら南米に関する活動ができるのではないか、との思いから保見団地プロジェクトのメンバーとなりました。トルシーダが行う移動式公民館やアートプロジェクト(=プラゴミにアイロンを使ってバッグをつくるワークショップ)に参画。現在では、「保見団地プロジェクト」が取り組む保見団地の将来ビジョンを検討する会議のファシリテーターとして関わっています。
筒井さんは、保見団地プロジェクトのビジョンづくりの特徴を次のように話します。
「一般的にまちづくりのビジョン作成は、アンケート調査やマーケティング調査などを行って、その結果を基にまとめるといった作られ方が多いと思います。しかし、保見団地の場合は違います。ワークショップを開くなどして住民の方の意見を聞き、地域の方々がどんな場所を作りたいかといった思いを聴きだし、それを我々が形にします。ですから、もし地域の方々の気持ちが変われば、その段階でビジョンも更新するといった方法です。住民の皆さんの声を聞き入れTrial and error を重ねながら希望のかたちを作り上げていきます」
ワークショップは計4回開催。大人も子どもも外国人も日本人も、様々な人が参加し、だんだんとビジョンが形作られていきました。

こうして2023年2月には、「保見団地将来ビジョンブック」が完成しました。
この中には、「保見団地の歴史」や「将来ビジョン策定のプロセス」などが掲載されているとともに、ワークショップを通じて参加者が体感した多様な価値観を、さらに拡大し未来につなげていこうという思いのもと生まれた、将来ビジョンのコンセプト「保見21世紀のユートピア」というキャッチフレーズや、そのイメージ図なども掲載されています。

2023年3月で休眠預金活用事業の「保見団地プロジェクト」は終了となりましたが、4月以降は「保見団地センター」という名称で活動を引き続き展開していく計画です。
「保見団地プロジェクト」から生まれた様々なつながりを背景に「保見団地センター」は、「将来ビジョン」の実現に向けて、これからも一歩一歩、歩んでいきます。
【事業基礎情報】
実行団体 | <保見団地プロジェクト:チーム構成団体> |
事業名 | 日本社会における在留外国人が抱える課題解決への支援と多文化共生 |
活動対象地域 | 愛知県 |
資金分配団体 | 一般財団法人中部圏地域創造ファンド |
採択助成事業 | <2019年度通常枠>NPOによる協働・連携構築事業副題 :寄り添い型包括的支援で困難な課題にチャレンジ!創造性を応援! |
2023年3月23日に開催しました、休眠預金活用事業・調査研究シンポジウム「罪を犯した人の立ち直りを地域で支えるために ~地域の生態系の視点から~」の動画をご紹介します。
<プログラム>
【第一部】
<開催挨拶>
動画▶ https://youtu.be/Mc431Q9RbRY
<事業紹介>
動画▶ https://youtu.be/D5igPXI44mM
<調査研究報告>
動画▶ https://youtu.be/3daVAqDZOPs
【第二部】
<パネル・ディスカッション>
動画▶ https://youtu.be/xj6QYu5v0io
会場:
オンライン:
(司会:津富 宏)
<質疑応答>
動画▶ https://youtu.be/Le3kxnjAf08
※フロアディスカッションの様子は、休眠預金活用事業サイトで当日の写真をご覧いただけます。
<終了挨拶>
動画▶ https://youtu.be/-ms5NGbvQec
津富 宏氏 静岡県⽴⼤学教授/NPO法⼈青少年就労支援ネットワーク静岡顧問
〈関連記事リンク〉
JANPIA主催 休眠預金活用事業・調査研究シンポジウムを開催!|JANPIA|活動スナップ | 休眠預金活用事業サイト (kyuminyokin.info)
今回の活動スナップは、NEC(日本電気株式会社)と日本更生保護協会(19年度通常枠・22年度通常枠 資金分配団体)が行った備蓄米寄贈式の様子をお伝えします。
活動の概要
更生保護法人 日本更生保護協会は、資金分配団体として2019年度より「安全・安心な地域社会づくり支援事業」、2022年度は「立ち直りを支える地域支援ネットワーク創出事業」に取り組んでいます。
JANPIAの仲介を通じて、NECが日本更生保護協会の実行団体に対し、社員の専門スキルを活かしたプロボノ支援(シンポジウムの映像配信など)を提供したことをきっかけに、同協会の活動に参画する中で、人・モノ・資金等が不足している現場の課題を知り、この度の備蓄米寄贈の実現に繋がりました。
[きっかけとなったプロボノ支援]
19年度通常枠の実行団体である全国再非行防止ネットワーク協議会が中心となり設立した「日本自立準備ホーム協議会」の設立記念シンポジウム(2022年3月実施)で、NECのプロボノ倶楽部の皆さんにオンライン配信などのご支援を頂きました。

活動スナップ
2023年4月5日(水)、東京の更生保護会館にて備蓄米の寄贈式が行われました。今回寄贈された災害用備蓄米(1150 食)は、日本更生保護協会が全国の保護施設に対し行ったニーズ調査で、希望のあった 6 団体に贈られます。
寄贈式では、NEC 人事総務統括部 玉川総務部長の山本さんから、寄贈先を代表して日本更生保護協会 常務理事 幸島さんと日本自立準備ホーム協議会 常務理事 稲葉さんが目録を受け取りました。

出席者のご発言(要旨)は以下のとおりです。
NECプロボノ倶楽部 代表 川本さん
「一昨年からプロボノでご支援させていただいた「日本自立準備ホーム協議会」団体立ち上げで、更生保護で活躍される団体や更生保護で活動される保護司やボランティアの活動における課題やご苦労を知り、私たちにも何かご支援できないかと考え、今回の寄贈につながった。いろんな縁が繋がってここにあると思っている。一回限りというよりも、今後も良い関係を続け、地域のため社会のために貢献していきたい。」
NEC 人事総務統括部 玉川総務部長 山本さん
「NECの事業所や工場では社員の出社を前提に災害時の非常食を用意しているが、コロナ禍で出社が減っており、備える量が多くなってしまい食品ロスとなる可能性が高くなった。そのような中、今回全国にお米をお配りいただけるということで、こういった機会を大変有難く思っている。引き続き努力し、こういった関係をつくっていきたい。」
日本更生保護協会 常務理事 幸島さん
「今般このようなお気遣い以上の心配りを賜ったことを本当にありがたく存じる。こういう素晴らしい機会をいただき、また今後に繋げていくためにはどういう工夫が必要なのか、私をはじめ職員みんなで、あるいは関係団体の皆さんと知恵を出しながら、前に進んでいきたい。」
日本自立準備ホーム協議会 常務理事 稲葉さん
「全国の自立準備ホームとどうやって連携していくかというのが、課題となっている。私たちの協議会も、まだまだこれからというところなので、ご支援・連携をさせていただければ本当に有難く、今後ともよろしくお願いしたい。」

寄贈式に同席したJANPIA シニア・プロジェクト・コーディネーターの鈴木からは、「包括的な関係づくり、長く続くような支援関係へと繋がっていくというのは新たな共助の姿ではないかと思う。引続きこのような連携が続き、また広がるよう支援をしていきたい」と期待が述べられました。
<備蓄米寄贈先>
日本更生保護協会「安全・安心な地域社会づくり支援事業」(19年度通常枠)の実行団体
(以下の 5 団体)他、1 団体。
・更生保護法人 ウィズ広島
・更生保護法人 滋賀県更生保護事業協会
・全国再非行防止ネットワーク協議会(NPO法人 再非行防止サポート愛知)
・認定NPO法人 ジャパンマック
・NPO法人 のわみサポートセンター

【休眠預金活用事業サイトよりお知らせ】
今回の寄贈式の様子はNECの公式SNS(Twitter・Facebook)やプロボノ倶楽部Facebookでも情報が掲載されました。
▶NEC公式Twitter[外部リンク]
▶NEC公式Facebook[外部リンク]
▶NECプロボノ倶楽部Facebook[外部リンク]
資金分配団体 | 更生保護法人 日本更生保護協会 |
採択助成事業 | 安全・安心な地域社会づくり支援事業〈2019年通常枠〉 立ち直りを支える地域支援ネットワーク創出事業〈2022年通常枠〉 |
活動対象地域 | 全国 |