特定非営利活動法人ワーカーズコレクティブういず主催「ロジハブ学習会inちば」のご案内

休眠預金活用事業に係るイベント・セミナー等をご案内するページです。今回は、特定非営利活動法人ワーカーズコレクティブういず主催「ロジハブ学習会inちば」を紹介します。

ロジハブ学習会inちば

地域食堂、こども食堂、「食」のある居場所、会食会、配食など、地域の食支援活動を応援する寄付食品の流通ネットワークづくりに向けて、県や市町村を越える流通の役割と寄付された食品のトレーサビリティを確保する仕組みを学びます。
ご興味のある方はぜひご参加ください。

 

【イベント情報】

日時2025年6月20日(金)14:00~16:00
開催形式

会場+オンラインでのハイブリッド開催

会場ラコルタ柏2階 多目的研修室1・2

(〒277-0005 千葉県柏市柏5丁目-8-12 教育福祉会館内)【MAP】
定員会場参加は先着40名(オンライン参加も可)
対象◆企業:食品等の寄付、配送・保管の支援、資金的支援ほかの社会貢献に関心のある企業
◆行政:子育て支援、生活支援、地域福祉、まちづくり、食品ロス削減等
◆地域の活動を支援する団体:社協、中間支援組織フードバンク、地域のネットワーク など
参加費参加無料(要申込)
プログラム◆地域の食支援活動を応援する仕組みづくり
 ・(一社)全国食支援活動協力会
◆県域の配送拠点(ロジ拠点)の状況
 ・(特非)ワーカーズコレクティブういず
◆地域の配送拠点(ハブ拠点)からの事例報告―寄付食品の活用と効果、今後の課題など
 ・さくらあったか食堂ネットワーク(佐倉市社会福祉協議会)
 ・印西フードバンクISS
 ・八千代こどもネットワーク
◆自治体と連携した寄付食品の活用
 ・(特非)ワーカーズコレクティブういず、柏市こども福祉課
◆連携企業からの事例報告
 ・(株)伊藤ハム 米久プラント株式会社
 ・(株)信濃運輸株式会社
◆講 評:千葉大学人文科学研究院・教授・清水洋行さん
◆質疑応答・意見交換
◆名刺交換タイム
主催特定非営利活動法人ワーカーズコレクティブういず
共催一般社団法人全国食支援活動協力会
お申込み以下のQRコードよりお申し込みください。
お問い合わせ特定非営利活動法人 ワーカーズコレクティブういず
[携帯]090-2318-8949
[E-mail]withhappy0927@gmail.com

 

休眠預金活用事業に係るイベント・セミナー等をご案内するページです。今回は、NPO法人青少年自立支援センター、公益財団法人日本国際交流センター共催「初めて外国ルーツ当事者と出会う支援者に知ってほしい―外国ルーツ支援・基本のき― 」を紹介します。

初めて外国ルーツ当事者と出会う支援者に知ってほしい
―外国ルーツ支援・基本のき―

 近年、在留外国人が増加しているのはご存じですか?生活の中で外国ルーツの方を目にする機会も増えているのではないでしょうか。もしかしたら既に皆様の支援現場にも外国籍、外国ルーツの方々がつながり始めているかもしれません。その際、どのように対応したらよいのだろうと悩むことはありませんか?
 例えば、子ども食堂にイスラム教徒のお子さんがつながってきたり、生活相談の現場に日本語が話せない方々が来たりすることもあるのではないでしょうか。
本セミナーでは、2010年度より外国にルーツを持つ子供・若者を対象に日本語教育、教科学習支援、進学・就労支援などを実施してきたYSC・グローバルスクールが、外国ルーツ支援の現状や課題を整理しつつ、支援を考える上での基本となるポイントをお伝えいたします。
 また、今夏から公募を始める予定の休眠預金活事業の支援対象団体向け「外国ルーツ支援における地域的・分野的広がり応援事業」のプレ説明会も実施いたします。

 

【イベント情報】

日時2025年6月11日(水)13:00~14:30(※途中入退室可)
開催形式

オンライン配信(Zoom)

※開催日前日にZOOMのURLをご連絡いたします。
※希望者には、後日配信をいたします。
参加費無料
内容①ソーシャルセクターにおける外国ルーツの現状と課題の整理
➁休眠預金活用事業 支援対象団体向け「外国ルーツ支援における地域的・分野的ひろがり応援事業」(研修、基盤整備等)の説明
登壇者NPO法人青少年自立援助センター 定住外国人支援事業部責任者

田中 宝紀(たなか いき)
共催NPO法人青少年自立支援センター
公益財団法人日本国際交流センター
お申込み事前申し込み制 ※希望者のみ後日配信有
参加・後日配信希望の申し込みはこちら(2025年6月10日午後12時まで)
https://forms.gle/sxUkmPfPgYse2AHc8
お問い合わせNPO法人青少年自立支援センター
[E-mail]activity-support-24@npo-ysc.jp

 

フードバンク活動とは、品質には問題がないのに包装の破損や過剰在庫、印字ミスなどで流通に出すことができない食品を企業などが寄贈し、必要としている施設や団体、困窮世帯に無償で提供する取り組みのことです。生活困窮者への支援とともに食品ロス削減にもつながる活動として、ここ数年で注目が高まっています。今回は、2023年度緊急枠に採択された「フードバンクふじさわ等冷凍食品物流・保管機能の強化支援事業」の実行団体「認定NPO法人ぐるーぷ藤」をはじめとする関連団体・組織の方々に集まっていただき、これまでの取り組みや今後の展望について伺いました。

コロナ禍での困窮者支援に立ち上がった、地域福祉の草の根活動メンバーたち

フードバンクふじさわが設立されたのは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、生活困窮者の支援が急務となっていた2021年3月のことです。神奈川県藤沢市内の地域福祉に携わるNPO法人が集う「ふじさわ福祉NPO法人連絡会」では、地域のさまざまな課題を共有しながら支援の方向性が議論されていました。そこで浮き彫りになった喫緊の課題の1つが、ひとり親家庭など孤立しがちな生活困窮者への支援です。その解決策を模索する中で、食品ロスを減らしながら必要な人に食品を届けるフードバンクかながわの取り組みに関心が寄せられ、フードバンクの設立が検討されました。

こうした背景のもと、フードバンクふじさわ設立準備会が発足し、関係者が協力して準備を開始。当時の経緯について、フードバンクふじさわ代表の野副妙子さんに聞きました。

野副妙子さん(以下、野副)「食品支援の必要性について話し合っている時に、フードバンクかながわから『藤沢市にもフードバンクをつくらないか』という声かけがありました。そこで、フードバンクかながわに足繁く通って、現場を見て学び、フードバンクふじさわの構想が固まり始めたころ、折悪しくコロナ禍が始まりました。『状況が落ち着いてから立ち上げよう』という声もありましたが、困難な時期だからこそ『今立ち上げなくてどうする』という、ふじさわ福祉NPO法人連絡会代表の鷲尾さんの提言があり、設立準備を進めました。そして、藤沢市内のさまざまな福祉団体や賛同する市民の方、行政、社協、企業、フードバンクかながわの協力により、フードバンクふじさわを立ち上げることができたのです」

フードバンクふじさわ 代表 野副妙子さん

市民団体と一体となって活動する市や社会福祉協議会

フードバンクふじさわの発足に先駆け、藤沢市社会福祉協議会(以下、社協)は2018年からフードバンクかながわと連携し、支援を必要とする人々に食品の提供を行ってきました。フードバンクふじさわ発足以降は、フードドライブ(家庭で余っている食品を集める仕組み)を通じて集めた食品を、市役所や社協の職員が食品保管・仕分けの拠点へ配送するほか、拠点の借り上げや企業との窓口になるなど、幅広い支援を行っています。

社会福祉法人 藤沢市社会福祉協議会 事務局長・村上尚さん(以下、村上)「フードバンクふじさわは、さまざまな団体・組織が協力する共同体です。比較的珍しいケースだと思いますが、私たち社協もその一員として活動に参加しています。立ち上げ時から社協が加わり、共に活動してきました。『地域をよくしていこう』という共通の目標を見据えることが連携のカギだと思います。

そもそも市の社会福祉協議会という組織は地域福祉を推進する団体。地域の課題に対して、先駆的に柔軟に取り組むことが使命です。制度化された支援では対応しきれない部分をフードバンク活動が補い、市民団体と連携することで、ひとり親家庭などへの個別支援も可能になりました。フードバンク活動はすべてをバックアップできるわけではありませんが、困窮に陥っている方々が一息ついてもらうための支えになります。連携を通し、地域支援のために私たちができることの幅が大きく広がっていると思います」

藤沢市社会福祉協議会 事務局長 村上尚さん

コロナ禍以降も物価高騰の影響で利用者が急増し、ニーズに応えきれない状況に

フードバンクふじさわ設立翌月の4月には、市内3カ所に、食品支援を必要としている方が食品を受け取れる拠点としてフードパントリーを設置し、第1回の食品配布を実施。ひとり親世帯やひとり暮らしの大学生ら(※)に、米やカップ麺、缶詰、飲料などを無償で提供しました。

※ 大学生への提供は2023年10月まで

その後、2022年3月までの1年間でのべ2,195人の利用があり、翌22年度は2,805人と増加。23年度は最初の2カ月で利用者が500人を超えるなど、コロナ禍は落ち着いたものの物価高騰の影響で利用者が大幅に増えていました。しかし、利用者が増加する反面、物価高騰により缶詰やレトルト食品などの常温保存できる食品の寄付は減少しており、ニーズに応えきれない状況に陥っていました。

これは全国のフードバンク共通の課題でもありました。フードバンクかながわは、取り扱う食品を増やすため、神奈川県内に食品倉庫を持つマルハニチロ株式会社に寄付を依頼。その結果、ツナ缶などの常温食品は市場でのニーズが高く余剰がほとんどないものの、冷凍食品は外箱の破損などで廃棄されるものがあり、提供が可能だと回答を受けます。ただ、冷凍食品の寄付を受けるには、品質を保つためのコールドチェーン(冷蔵・冷凍といった所定の温度を維持したまま輸送・保管などの流通プロセスをつなげること)を作り上げることと、寄付した商品がどこに届けられたのかというトレーサビリティを実現することが条件でした。

野副「フードバンクかながわから冷凍食品の取り扱いについて打診があり、そのための準備を行いました。当時は少しだけの取り扱いしかできませんでしたが、冷凍食品は、電子レンジさえあればすぐに食べられるためとても人気がありました」

そんな時、フードバンクかながわが「神奈川県及びその周辺の食支援ネットワーク発展のために〜冷凍食品を活かした支援食品のレベル向上」という事業で、休眠預金活用事業の資金分配団体に採択されたことを知り、フードバンクふじさわも応募を考えましたが、法人格がないことから、一緒に活動を共にしてきた認定NPO法人ぐるーぷ藤を代表団体として申請し、採択されるに至りました。

休眠預金の活用で取り扱い食品量が大幅に増え、子ども食堂にも提供が可能に

フードバンクふじさわは助成金を活用して、冷凍車、冷凍庫、保冷ケースを購入し、コールドチェーンをつくり上げます。また、フードパントリー利用者にも保冷バッグによる持ち帰りを厳守とし、冷凍食品の品質管理を徹底しています。

村上「2024年9月には待望の冷凍車が購入され、冷凍食品の物流倉庫がある神奈川県川崎市の扇島まで直接受け取りにいくことができるようになりました。また、大型の冷凍庫4台も購入され、社協が福祉物流拠点として借り上げている湘南藤沢地方卸売市場の店舗内の一区画に設置しています。実は、冷凍車いっぱいに冷凍食品を積み込むと、ちょうどこの4台の冷凍庫に収まりきるようになっているんです。
集まった食品は、フードパントリー拠点で配布する分や子ども食堂で使ってもらう分へと仕分けします。本格的に冷凍食品を取り扱うことで、フードバンク活動だけでなく子ども食堂にも提供できるほどの量を調達できるようになったのは、本当にありがたいですね」

冷凍食品の保管と輸送体制を強化するため導入された冷凍庫と冷凍車

野副「休眠預金活用事業のおかげで、大きな課題であった利用者の増加に伴う食品ニーズの拡大に応えることができるようになりました。寄付でいただく冷凍食品には業務用のものもあるため、それらは子ども食堂で使っていただいています。冷凍食品は歓迎されていて、特にからあげなどの肉類は子どもたちに大人気です」

認定NPO法人ぐるーぷ藤 理事長・藤井美和さん(以下、藤井)「私たちのフードバンク活動でのおもな支援対象は、ひとり親世帯のため、誰でも簡単に調理ができる冷凍食品はニーズに合っているようです。取り扱い量が増えたことで、親子で好きなものを選んでもらうこともできるようになりました。嬉しそうに保冷バッグを持って帰る姿を見ると、本当にやりがいを感じます。また、冷凍食品はお弁当にも適しているので、子育て中の世帯にはそういった点でも非常に喜んでもらえているようです」

利用者に寄り添う「伴走型」の支援で、新たな窓口への橋渡しも

フードバンクふじさわの活動は、食品の支援にとどまりません。地域の居場所づくりや生活支援コーディネート業務等に携わってきたメンバーも数多く参加していることから、フードパントリーでも訪れた人に積極的に声をかけ、支援が必要な人には適切な窓口への橋渡しなども行っています。また、ひきこもりの当事者をフードバンク活動のボランティアとして受け入れ、その後の就業へと結びつけるなど、ひきこもり支援と連携した活動も展開しています。

藤井「ぐるーぷ藤の理念は『歳をとっても病気になっても障がいがあってもいつまでも自分らしく暮らせる街を創りたい』というもの。お互いさまの気持ちを大切に、地域住民同士の助け合いを目指しています。フードバンク活動においても『伴走型』が基本。相手に寄り添い、食品支援にとどまらないサポートを行っています」

ぐるーぷ藤 理事長 藤井美和さん

村上「フードパントリーに来られる方の中には課題を抱えて困っている方も多くいます。そうした人と顔を合わすことで、社協の相談支援へつなげることができるのです。逆に、私たちが普段相談を受けている方の中で、ひとり親の方などフードバンク活動の対象となる方には、食品配布の紹介をすることもあります。いきなり社協や市の窓口に相談に来るのはハードルが高いと思う方もいると思いますが、フードバンクを通じて自然につながることができるのは、大きな意義があると感じています」


人と人とのつながりを、大切にすることが活動の基本

最後に、フードバンクふじさわの活動を支えるメンバーに、今後に向けた取り組みについて語ってもらいました。

野副「藤沢市の取り組みが、ほかの市にも広がっていくことを願っています。社協と自治体が連携しながら生活困窮者への支援に力を尽くしてくれていることが伝われば、地域の市民団体も一緒にがんばっていこうという気持ちになってくれると思いますから。また、フードバンクふじさわの報告会に、毎年市長をはじめ、社会福祉協議会の会長や、民生委員児童委員協議会の会長、企業の皆さんといった方々が参加してくれます。これが『藤沢型フードバンク』と私たちが称しているゆえんです」

フードバンクふじさわ事務局・小野淑子さん「フードバンクふじさわは、『小さく産んで大きく育てる』の合言葉のもと任意団体としてスタートし丸4年が経ちました。そして2025年4月には一般社団法人化を予定しています。これまで任意団体でありながらも多くの支援をいただいてきましたが、法人化によって、さらに信頼を得ることができ、活動が広がっていくのではないかと期待しています」

藤井「フードバンクふじさわの活動で生まれた人と人とのつながりがこの先も続いていくことを願っています。伴走型の活動によっていろいろな縁があり、ぐるーぷ藤で就労された方もいますし、障害のある方の就労のきっかけにもなっています。食品を提供するだけでなく、人のつながりを広げる場として活動していきたいです」

村上「地域の困窮者を支える方法やしくみづくりは、社会全体で考えていかないといけない問題ですが、すぐに解決できるものはありません。だから、フードバンクの活動はそういう人たちの『今』を支える大切な役割を果たしていると思います。また、フードドライブなど、みんなが地域福祉に関心を持つきっかけにもなってほしいですね。そして、今フードパントリーに来ている子どもたちが、将来『地域のために何かしよう』と思えるような循環が生まれる場であり続けてほしいです」

社会福祉法人 藤沢市社会福祉協議会 事務局参与・倉持泰雄さん「フードバンク活動は、困難を抱えた方を地域社会で支える大切なしくみです。助成金のおかげでコールドチェーンが整いましたが、今後は冷凍車の管理運営など新たな課題に取り組んでいく必要があります。引き続き、地域の支援のために尽力していきたいです」

取材に対応してくださった方々。左からフードバンクかながわの萩原妙子さん、フードバンクふじさわの小野淑子さん・野副妙子さん、ぐるーぷ藤の藤井美和さん、藤沢市社会福祉協議会の倉持泰雄さん・村上尚さん、フードバンクかながわの藤田誠さん
 



■資金分配団体POからのメッセージ

フードバンク活動に対して社会の認知も少しずつ高まってきましたが、まだまだ具体的な活動について知らない団体、企業、行政担当者もいらっしゃいます。具体的にどんな活動ができるのか、1人でも多くの人に知ってほしいですね。また、フードバンク活動は食品ロスの削減にも貢献し、ゴミ処理費用の削減やCO2排出削減にもつながります。ぜひ小さな子どもさんから大人まで、多くの人に関心を持ってもらえたら嬉しいです。

(公益社団法人フードバンクかながわ/事務局長 藤田 誠さん)

フードバンクかながわには多くの冷凍食品が集まる中、私たちだけではなかなか輸送や保管、配布に回しきれない状況となっています。そのため、神奈川県の各自治体に1つはフードバンクが必要となっており、さらにハブとなる拠点を作ることが重要だと考えています。フードバンクふじさわのように活動ができる団体が今後もっと増えていくために、冷凍食品のフードバンク活動の価値を広め、全国で「うちのフードバンクでも冷凍食品を扱いたい」という声が自治体を動かすことを期待しています。

(公益社団法人フードバンクかながわ/理事 萩原妙子さん)

【事業基礎情報】

実行団体
NPO法人ぐるーぷ藤
事業名

フードバンクふじさわ等冷凍食品物流・保管機能の強化支援事業(2023年度緊急枠)

活動対象地域
神奈川県藤沢市
資金分配団体
公益社団法人フードバンクかながわ

採択助成事業

神奈川県及びその周辺の食支援ネットワーク発展のために

休眠預金活用事業の成果物として資金分配団体や実行団体で作成された報告書等をご紹介する「成果物レポート」。今回は、資金分配団体 公益財団法人みらいファンド沖縄が発行したレポート『「認知症と共生する これからの地域づくり白書」わたしが認知症になっても、自分らしく生き続ける社会を目指して』を紹介します。

認知症と共生する これからの地域づくり白書~わたしが認知症になっても、自分らしく生き続ける社会を目指して~

我が国では、65歳以上の10人に約1人が認知症、3人に約1人が認知機能に関わる症状があると推定されています。
この白書は認知症の方々に対して「地域」でできることを、当事者の「外出支援」と「居場所づくり」という視点から調査と実証に取り組んだ5団体とともに作成した報告と提案です。

この事業に至った馴れ初めは、2007年に愛知で起こった、認知症の方が起こしてしまった踏切事故に対して、鉄道会社がその家族に高額賠償請求を起こした訴訟が、メディアをにぎわせていた2016年初頭(同年3月に最高裁が逆転判決無罪に!)のことでした。

この訴訟は、「家族が責任を問われるなら、認知症患者は家に閉じ込めておくしかないということか」という問いを世に投げかけました。

ちょうどそのころ(公財)みらいファンド沖縄に持ち込まれた、自動販売機を通して社会貢献ができないかという相談案件があり、前段の問いへのソリューションとして、自販機の特徴を活かした捜索システムを事業開発しようということで、徘徊時(当時は道迷いを徘徊という言葉を使っていた)に、早期に認知症の方を見つける「ミマモライド」というシステムを開発し、その事業会社を起こすこととなります。ミマモライドが沖縄県宜野湾市に採択され、一定の手応えが出てくる中で、道迷いになってしまう方々の自治体のエリアを超えて見守る必要性から、その広域化と認知症の方々の行ける場所の開発を目論んだ「認知症の方々も安心・安全な外出を担保できるまちづくり事業」を企画し、休眠預金活用事業に採択される運びとなったのです。

公募により、5つの団体を採択し、2022年から事業はスタートします。コロナの余波も色濃く残る時期、事業自体は様々な理由で進捗が遅れ、決して順風満帆といえる足取りとはいえないものでした。これらの固難に対して、事業担当のプログラムオフィサーは奮闘し、課題を共有し、一緒に乗り越える伴走をしてもらったことに敬意を表します。

この道程で我々は多くの気付きがあり、何度かの路線変更を経て事業を遂行し、この白書発行にたどり着きました。
この事業はこれまでの地域での「見守り」という活動のあり方に一石を投じるのもとなったと確信しております。私どもの提案を、これから示す報告とともに味わっていただければ幸いです。

 

【事業基礎情報】

資金分配団体特定公益財団法人 みらいファンド沖縄
公益社団法人 沖縄県地域振興協会
事業名

認知症の方々も安心・安全な外出を担保できるまちづくり

活動対象地域宜野湾市及びその周辺
実行団体認定特定非営医療法人 アガぺ会
合同会社 GreenStarOKINAWA
特定非営利活動法人 グランアーク
南風原町社会福祉協議会
西原町社会福祉協議会

休眠預金活用事業の成果物として資金分配団体や実行団体で作成された報告書等をご紹介する「成果物レポート」。今回は、実行団体 宝塚NPOセンター作成したレポート『「With」事業報告書2022.3-2025.2』を紹介します。

「With」事業報告書2022.3-2025.2

認定NPO法人宝塚NPOセンター(兵庫県宝塚市)は、一般社団法人 全国古民家再生協会(東京都千代田区)の2021年度「空き家・古民家を活用した母子家庭向けハウス設立事業」で実行団体として「孤立孤独/生活苦を抱える若者への緊急支援事業」事業を実施しました。

宝塚市内在住、あるいは宝塚市に転居を希望する“非正規雇用で働く母親とその子どもで構成されているひとり親世帯”を対象にしたシングルマザーハウス「With」での活動をまとめた事業報告書を公開します。

 

【事業基礎情報】

実行団体認定特定非営利活動法人 宝塚NPOセンター
事業名

地域で支える母子ハウス事業

活動対象地域兵庫県宝塚市
資金分配団体一般社団法人 全国古民家再生協会

 

コロナ禍による入国規制の解除後、日本で難民認定を申請する外国人が増えています。申請中で在留資格のない外国人は就労できず、公的支援も受けられないため、生活が困窮し、精神的にも追い詰められる傾向にあります。こうした難民認定申請者や非正規滞在者を支援するため、2023年度の休眠預金活用事業(緊急支援枠、資金分配団体:NPO法人青少年自立援助センター)による緊急人道支援を行っているのがNPO法人アクセプト・インターナショナルです。同団体は国内外で紛争や人道危機、社会的排除などの問題解決に取り組んでいます。今回は、団体の活動やその背景などについて、代表理事の永井陽右さん、国内事業局 局長の吉野京子さんを中心にお話を伺いました。

ソマリアから始まった「平和の担い手」を増やす取り組み

アクセプト・インターナショナルは「誰しもが平和の担い手となり、共に憎しみの連鎖をほどいていく」ことを目指し、世界の紛争地や日本で活動する団体です。2011年、大学1年生だった永井陽右さんは、世界で最も深刻な紛争国の一つとされていたソマリアの惨状を知り、「このまま見過ごしてはいけない」との思いから、仲間とともに活動を開始しました。

当時のソマリアは、頻発するテロや紛争によって貧困や飢餓が深刻化し、2年間で約26万人もの人々が命を落としていました。それにもかかわらず「危険すぎる」「解決策がない」からと、世界から見放されている状況に「そんな理由で支援が届かないのはおかしい」と強く感じた永井さん。「支援が必要とされているのに、難しさを理由に誰も手を差し伸べないのであれば、自分たちがやる」——その決意が活動の原点となっています。

永井さんたちはソマリアのテロや紛争を止めようと、若者が武装組織から抜け出し、社会復帰する支援を開始。2017年にはNPO法人アクセプト・インターナショナルを設立し、イエメンやケニア、インドネシア、コロンビア、パレスチナなど、世界の紛争地へと取り組みを広げていきました。

永井陽右さん(以下、永井)「テロリストの多くは、社会に居場所がないことや生活苦、脅迫などから武器を持たざるを得なかった若者たち。彼らを排除しても負の連鎖は終わりません。私たちが目指すのは、彼らが本来の若者らしく希望を持って生き、私たちと一緒に平和な世界をつくっていくことです」

団体設立の背景についてお話しされる永井陽右さん
団体設立の背景についてお話しされる永井陽右さん

海外での経験を活かし、日本でも「難しくて取り残されている問題」に着手

海外の経験を活かして日本でも「解決の担い手がいない難しい問題」に取り組もうと、2020年からは国内事業も開始。コロナ禍で海外事業の継続が困難になった時期とも重なり、国内の課題にあらためて目を向けるようになりました。現在は主に、非行少年の更生支援と、在日ムスリム(イスラム教徒)を中心とした在日外国人支援の2つの事業を展開しています。

非行少年の更生支援では、とくに社会の受け入れが難しい、重い犯罪に関与した若者の社会復帰を支援。相談支援をはじめ、社会復帰を後押しするための社会定着支援、居住支援、生活支援を実施し、さらに、啓発や教育の一環としてオンラインゼミも開講しています。

在日外国人支援では、日本社会におけるムスリムへの理解不足や文化の違いなどから、在日ムスリムが孤立しやすい現状をふまえ、とくにコロナ禍で生活が困窮している在日ムスリムを支援。現在もイスラム教徒が食べることができる「ハラル食品」の提供や生活相談、在日ムスリムによる共助ネットワークづくりなどを行っています。

「海外事業も日本事業も、つまるところは、課題を抱える当事者が社会の一員として主体的に生きていくための伴走支援。本質は変わりません」と永井さん。海外事業でテロの加害者だった若者と向き合ってきた経験が非行少年の更生事業に、多くのイスラム教徒と活動してきた経験が在日ムスリム支援に活かされるなど、これまでの知見が国内支援でも活かされています。

休眠預金を活用し、行き場のない難民認定申請者に緊急支援を実施

国内に活動を広げる中、コロナ禍が明けると、在日外国人からの相談にある変化が生じます。入国規制の解除にともない日本への入国者数が増え、それに比例して、難民認定申請者や非正規滞在者など在留資格が不安定な外国人からの食料や住居を求める相談が急増しました。それまでは定住している在日外国人からの相談が大半を占めていましたが、相談者も相談内容も大きく変わったのです。長年にわたり難民支援に携わってきた吉野さんは、その背景をこう説明します。

吉野京子さん(以下、吉野)「難民認定申請者は、紛争や迫害などさまざまな事情から逃れる中、たまたま日本の観光ビザを取得して日本へ来たという方がほとんど。入国後に難民申請するものの、その多くは難民認定がおりないまま、在留資格がない状態で日本に留まることになります。在留資格がなければ行政サービスを受けられず、国民健康保険にも加入できず、働くこともできないため、生活は困窮し、路上生活に追いこまれる人も……。収入がなく、行政の支援にもつなげられない彼らを、民間の支援団体や個人だけで支えるのには限界があり、支援から取り残されていたのです」

難民認定申請者が直面する課題や、支援の必要性について説明する吉野京子さん
難民認定申請者が直面する課題や、支援の必要性について説明する吉野京子さん

「これは自分たちがやるべき問題」と判断したアクセプト・インターナショナルは、 NPO法人 青少年自立援助センターが公募していた2023年度緊急支援枠の休眠預金活用事業に申請。これに採択され、難民認定申請者と非正規滞在者に向けた緊急人道支援事業を始めます。具体的には、食料物資の支援や、一時的に住む場所を確保する緊急居住支援、日本語教育、利用できる支援サービスへの橋渡しなどです。また、アウトリーチの手段として、世界で普及しているメッセージングアプリの「WhatsApp」を活用。これにより、支援情報が瞬く間に拡散し、短期間で多くの支援を必要とする外国人にリーチすることができました。

取材時点(2025年1月28日)で、相談登録者は約170名。フードパントリーやWhatsAppを通して相談者のニーズを聞き取り、それぞれが必要とする支援を届けています。イスラム教徒にはハラル食品を、フルーツが必要な人にはパイナップルやミカンなどの缶詰を、自分で料理をしたい人には小麦粉や豆、オイルなどの食材を提供するなど、個々の希望に寄り添った支援を実施。食料以外にも、子どもがいる家庭には成長に合わせた衣服を、女性には生理用品を配るなど、生活状況に応じたきめ細かなサポートを行っています。

吉野「こちらが良かれと思って送った食料でも、相手にとってはそうではないことが何度かありました。そんなときは、『何か別のものが必要だったのかな?』と考えるようにしています。可能な限りどんなものが必要かを聞き取ることで、本当に必要なものを知ることができ、相手も『受け止めてもらえた』と安心してもらえます。その安心感が、信頼につながりますから」

イスラム教徒が安心して食べられる「ハラル食品」の提供を含む食料物資支援を実施
イスラム教徒が安心して食べられる「ハラル食品」の提供を含む食料物資支援を実施

日本語を学びたいというニーズも高く、希望者には週1回、1人30分のオンライン日本語教室を実施。授業を担当するメルテンス甲斐さんは、単なる言語学習にとどまらず、コミュニケーションの場としての役割も大切にしています。

メルテンス甲斐さん「家族友人と遠く離れ、コミュニティから隔絶された生活を送る受講者にとって、授業は人とつながることのできる数少ない機会です。雑談を交えたり、生活相談を受けたりすることで、少しでも孤立感の解消につながればと思っています」

一方、「相談を待つだけでなく、こちらから能動的にアプローチすることも大切」と話すのは、食料物資支援を担当する冨山里桜さん。 

冨山里桜さん「相談者の中には、特にムスリマ(イスラム教徒の女性)のように、宗教的な背景や文化的な要因、周囲に頼れる人が少ないことなどから、支援を必要としていても声をあげられないケースもあります。実際、WhatsAppで連絡がつかないので訪問してみると、電気もガスも止まっていたという母子家庭のケースがありました。そうした方たちも取り残さないよう、こちらからこまめにコンタクトを取ることでフォローし、支援につなげるようにしています」

社会参加を通じて未来を切り開く支援のかたち

日本では難民認定率が低く、多くの難民認定申請者が中長期の展望を持ちにくい状況にあります。そんな中、「今回の事業では、まずは緊急支援として、難民認定申請者が人間として最低限の尊厳を保てることを第一の目標にしています」と吉野さん。その上で、専門家と連携し、相談者自身も交えて中長期的なプランを話し合い、日本で安定した生活を送るための法的支援も行っているそうです。また、在留資格がない外国人の子どもでも学校に通える制度を活用し、自治体と交渉して就学機会を確保するなど、今できる支援を重ねながら希望をつなげています。

こうした相談者のニーズを満たす支援だけでなく、相談者の主体性を促すはたらきかけも大切にしています。例えば、ガーナ人の青年に「公園で寝て過ごしているなら、うちへ来たら?」と事務所に誘ったところ、メンバーと一緒に食料物資支援の整理や荷物運びをするように。最初はほとんど口をきかなかったのが、今やアクセプト・インターナショナルの頼もしいメンバーになっているのだそうです。

永井「ボランティアでも小さいことでも、社会に参加することに大きな意義があります。困難な状況にある彼らだからこそ、できることがたくさんあるはず。その可能性に光を当て、引き出していくことも私たちの役割です。彼らが参加できる場をたくさんつくって、新たなステップにつながる機会を少しでも多く提供していきたいですね」


ホームレス状態にある人々への食料支援の様子
ホームレス状態にある人々への食料支援の様子

休眠預金活用事業をきっかけに生まれた3団体の連携

アクセプト・インターナショナルがこの事業を通じて得られた大きな成果の一つが、団体同士の連携です。同時期に休眠預金活用事業の実行団体として採択されたのを機に、Mother’s Tree Japan、つくろい東京ファンドの2団体とつながり、思いがけない強力な支援ネットワークが生まれました。例えば、路上生活をしていたムスリマの妊婦のケースでは、Mother’s Tree Japanが出産可能な病院を探し、イスラム教の文化に配慮して女医を手配。つくろい東京ファンドが居所を確保し、アクセプト・インターナショナルがハラル食品の提供を実施しました。各団体の専門性を活かした支援が迅速に展開され、適切なサポートを提供することができたのです。

吉野「自分たちが不得意なところは、得意な団体にお任せする大切さを改めて学びました。今も3団体で情報を共有しながら、連携を深めています」

「後進の育成」も今回の事業を通じて得られた大きな成果です。日本では難民支援の経験者が少ない中、今回の事業を通して若手メンバーが多様なケースを経験し、実践を積む機会を得ました。

吉野「若手メンバーが現場での経験を重ねることで、知識やノウハウをしっかり継承できました。今では、自ら判断し行動できるまでに成長し、今後のさらなる支援につながると期待しています」

アクセプト・インターナショナルは事業終了後も、当事者が中長期の展望を持てるよう、可能な限りバックアップを継続。「平和の担い手を増やす」活動として、テロ・紛争に関わる若者を保護する活動に加え、在日ムスリムのネットワーク強化など、国内外の活動に引き続き力を入れていきます。

永井「私は、テロリストも非行少年も、在日ムスリムも難民もみんな、社会の担い手、平和の担い手になれると心から思っています。これからも彼らに伴走し、その可能性を探り続けていくとともに、まだアプローチできていない『解決の担い手がいない難しい問題』にもチャレンジしていきます」


取材に対応してくださった、アクセプト・インターナショナルのメンバー。左から冨山さん、吉野さん、永井さん、メルテンスさん
取材に対応してくださった、アクセプト・インターナショナルのメンバー。左から冨山さん、吉野さん、永井さん、メルテンスさん

■資金分配団体POからのメッセージ
アクセプト・インターナショナルの強みは、「難しい問題こそ自分たちがやる」という高いプロフェッショナル意識と、海外で培った独自のノウハウにあると考えています。今回その強みを活かし、既存の支援団体では対応が難しかった在留資格が不安定な在日外国人への支援が可能になりました。また、私たちが資金分配団体を務めるにあたり重視していたのが、団体同士のつながりです。実際に実行団体間の連携が生まれ、情報共有も進んだことは、大きな成果の一つです。今後さらに、さまざまな強みを持つ団体同士の連携が進み、支援の輪が広がることを願っています。

(NPO法人 青少年自立援助センター YSC Global School/浅倉みさきさん)

【事業基礎情報】

実行団体
特定非営利活動法人 Accept International
事業名

難民認定申請者及び非正規滞在者への緊急人道支援事業(2023年度緊急支援枠)

活動対象地域
東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県
資金分配団体
特定非営利活動法人 青少年自立援助センター

採択助成事業

急増する「海外にルーツを持つ子育て家庭・若者・困窮者」緊急支援事業

「盲ろう者」とは目(視覚)と耳(聴覚)の両方に障害を併せ持つ人のこと。厚生労働省の調査によると、その人数は全国に1万4千人ほどと推定されています。視覚と聴覚に障害があると、日常生活においてさまざまな困難が生じますが、そうした盲ろう者の自立と社会参加を目指して活動しているのが全国各地の「盲ろう者友の会」です。今回は、2021年度通常枠に採択された「NPO法人千葉盲ろう者友の会」(資金分配団体:社会福祉法人全国盲ろう者協会)を訪問。同会の活動や課題、今後の展望についてお話をうかがいました。インタビューに答えていただいたのは、ご自身も盲ろう者である理事長の加藤清道さん、事務局の田中幾子さん、奥村由貴子さん、秦綾子さん、時松周子さんです。

交流会からスタートし、さまざまな支援事業へと活動範囲を広げる

1991年に東京都で「東京盲ろう者友の会」が誕生したことをきっかけに、全国各地で盲ろう者友の会設立に向けての動きが活発になりました。千葉県では、かねてから県内の盲ろう者が交流会を開いており、そこから友の会設立に向けての動きが始まったそう。そんな中、2004年11月に任意団体として「千葉盲ろう者友の会」が設立され、2009年に NPO 法人化。現在に至っています。

加藤清道さん(以下、加藤)「任意団体の頃は、会員である盲ろう者の交流が活動の中心で、そのほかはPR活動くらいでした。NPO法人になった2009年からは千葉県の委託事業として盲ろう者向けの通訳・介助者の派遣事業や育成事業を行ったり、当事者に向けて生活訓練事業や相談支援事業も始めたりと、活動の幅を広げていきました」

NPO 化した当初から取り組んでいる活動の一つが、通訳・介助者を育成し、求めている人の元へ派遣することです。盲ろう者は、周りの人と会話することが難しく、情報が入りにくい。また、移動するのにも困難があり、一人では安心して外出することができない人もいます。そのため、盲ろう者が安全・快適な生活を送るには、通訳・介助者の存在は非常に重要です。

しかし、一言で盲ろう者といっても、人によって必要な支援は異なります。例えば、少し聴力が残っている方であれば、耳元や補聴器のマイクに向かって話しかけることができますし、視力が残っている場合は、紙や筆談ボードで見えやすい大きさの文字を書いて伝えることができます。まったく見えず聞こえない「全盲ろう」の場合は、手のひらに文字を書いたり(手のひら書き)、手話を手で触って読み取ってもらったり(触手話)して伝えることができます。そのため、通訳・介助者は、こうしたさまざまなコミュニケーション手段を身につけ、相手に応じたやり方でサポートしなければなりません。こうした専門的な知識や技術を持つ、通訳・介助者を世に送り出すことは、大切な活動です。

様々なコミュニケーションのサポート
様々なコミュニケーションのサポート

盲ろう者自身が声を上げることで、伝えられるものがある

最近は、支援を求めている盲ろう者を探す“掘り起こし”や、社会に向けた啓発活動にも力を入れています。今、千葉県内には視覚と聴覚両方の障害者手帳を持っている人は約300人と推計されていますが、千葉盲ろう者友の会で把握している人数は40人ほどにすぎません。つまり、県内でもまだ出会えていない盲ろう者がたくさんいるということ。その中には、必要な支援を受けられていない人や、孤独な状況に置かれている人もいるかもしれません。盲ろう者本人やその家族なども、周囲との交流がなく、ほかの盲ろう者がどのような生活をしているかを知らないことも多いのが現状です。

そこで、県内の全市町村を訪問し、盲ろう者についての説明やパンフレットを配布。「身近に目と耳の両方が不自由な方がいらっしゃったら教えてください」と呼びかけることで、盲ろう者とのつながりを広げていこうとしています。


また、多くの人に盲ろう者のことを正しく知ってもらうための啓発活動として、福祉関連イベント等に積極的に参加。当事者による講演会や、触手話や指点字といったコミュニケーションの体験会によって、盲ろう者への理解を深めてもらうことと、千葉盲ろう者友の会の認知向上を図っています。

指点字体験会の様子
指点字体験会の様子

加藤「適切なサポートを受けるためには、まずは知ってもらうこと。ですが、多くの人は、盲ろう者のことをあまり知りません。目も耳も不自由だとどんな生活をしているのだろうか、家にずっと引きこもっているのだろうか、などと思われがちです。盲ろう者はコミュニケーションに困難を抱えていますが、それでも自分の言葉で一生懸命に伝えることが、周囲の人の心を動かし、支援につながるのではないかと考えています。」

実際に、多くの人が想像している以上に、盲ろう者にはさまざまなことができるそう。加藤さんは自身の経験もまじえながら語ります。

加藤「私自身、40代半ばに盲ろう者になり、仕事を辞めようかと考えたこともあったのですが、会社に相談して拡大読書器や視覚障害者向けのソフトを購入してもらい、それらを使いこなすことで、60歳の定年退職の年まで勤め上げることができました。毎朝、千葉から東京まで1時間かけて通勤もしていましたね。こうした私自身の経験から、盲ろう者であっても本人の努力と周囲のサポートがあれば、できることがたくさんあると感じています。そのことを盲ろう者やその家族、そして盲ろう者のことを知らない人にも伝えたいんです」

取材に応じる加藤さん(左)とコミュニケーションのサポートをする事務局長の田中幾子さん
取材に応じる加藤さん(左)とコミュニケーションのサポートをする事務局長の田中幾子さん

資金不足の解消によって、新たな盲ろう者支援へと踏み出す

千葉盲ろう者友の会は、2021年度に社会福祉法人全国盲ろう者協会(資金分配団体)によって、「盲ろう者の地域団体の創業支援事業」の実行団体として採択され、その資金を活用して盲ろう者向け同行援護事業をスタート。盲ろう者の同行援護事業とは、盲ろう者の外出時における移動やコミュニケーションの支援を指します。

盲ろう者の外出時における移動支援の様子
盲ろう者の外出時における移動支援の様子

奥村由貴子さん(以下、奥村)「以前から同行援護事業に興味はあったのですが、資金が十分ではなく、現実的ではありませんでした。ですが、2018年に全国で、盲ろう者向けの同行援護事業が始まり、機運が高まったことで、私たちの会でもやってみたいという思いが高まりました。また、そもそも私たちの活動全般において、資金不足は長年の課題でした。予算に限りがあるために、通訳・介助者を思うように派遣できないというケースも。そこで、助成金を得ることができれば、同行援護事業にチャレンジできるのと同時に、会を運営する費用もまかなえるのではないかと考えたんです」

早速準備会を立ち上げ、実現のために動き出した友の会メンバー。まずは、同行援護事業のサービス提供責任者の資格を取得。これまでの盲ろう者向け通訳・介助員の皆さんに声をかけて、同行援護従業者のための研修会なども行い、人員を確保しました。その後、実行団体として無事に採択され、晴れて2023年1月に「同行援護事業所かがやき」を開所することができました。

秦綾子さん(以下、秦):「全国盲ろう者協会の方々には、書類の作成など、事務的な面でさまざまな相談に乗ってもらいました。経理のこともふくめて、基礎的なことから専門的なことまで、迷ったら相談できる存在がある点は、本当に助かりました」

助成金の用途としては、「同行援護事業所かがやき」の開所だけではなく、同行援護従業者の養成研修会をはじめとした人材育成、友の会のさまざまな活動について発信するホームページの制作などにも活用。さらに、盲ろう者の掘り起こしや社会啓発活動もさらに拡大していきました。今までも各市町村役場訪問や地域の福祉イベントなどには積極的に参加していましたが、千葉県は広いため、資金不足でなかなか訪問しづらい市町村もありました。それが解消されたことで範囲を広げることができました。2024年度中には千葉県内すべての市町村役場に足を運ぶことができる見込みです。

田中幾子さん(以下、田中):「市町村を直接訪問することは、私たちにとって大切な活動だと感じています。そもそも市町村では、管轄内の盲ろう者の数を正確に把握していないことがほとんどでした。なぜかというと、視覚障害者や聴覚障害者であれば、それぞれ視覚障害者手帳・聴覚障害者手帳を発行するので、その手続きを通じて人数を把握することができるのですが、両方の手帳を持っている人については、確認をしていなかったからです。今回、盲ろう者の数の把握や社会啓発活動のための訪問をしたいと、各市町村に事前に伝えてしておくことで、担当者の方が訪問時までに数を調べておいてくださるなどして、より正確な状況を把握することができました」

奥村:「ただ、個人情報のため私たちが行政を通じて対象者と直接つながることはできません。ですから、直接訪問した先の福祉イベントなどでパンフレットなどを配布し、『もしお近くに盲ろう者と思われる方がいたら、NPO法人千葉盲ろう者友の会のことを伝えていただけませんか』とお願いをしています」

時松周子さん(以下、時松):「そうした活動の甲斐があって、今年は新たに1名の盲ろう者の方と繋がることができました。数だけでみるとたった1名とも思えるかもしれませんが、その方には友の会のいろいろな活動に参加していただけるようになり、非常に大きな意義があったと思っています。

また、掘り起こしをしていく中で、国や県の基準からは外れていて、サポートを求めている人がたくさんいることも実感しました。例えば、千葉県の盲ろう者向け派遣事業では、原則として視覚障害者手帳と聴覚障害者手帳、両方を持つ人のみが、支援の対象となっています。でも実際には、どちらか一つの手帳しか持っていなくても、病気や加齢によって少しずつ視覚や聴覚が低下していき、生活に困難を抱えている人もいます。なので、私たちの同行援護事業は、そうした人にも利用してもらえるようにしています」

千葉盲ろう者友の会の活動の大きな特色となっているのは、こうした「支援を必要とする人のところに、可能な限り支援の手を伸ばす」という姿勢。盲ろう者といっても、その状況はさまざまです。大きく分けるだけでも、まったく見えず聞こえない「全盲ろう」、全く見えないが少し聞こえる「全盲難聴」、少し見えるが聞こえない「弱視ろう」、少し見えて少し聞こえる「弱視難聴」の4つのタイプがあり、それぞれの障害が生まれつきのものなのか、成年になってから徐々に進行したものなのかによっても、必要なサポートは異なるでしょう。そのため、同会では、公のルールにおける「盲ろう者」に限らず、視覚・聴覚が不自由な人を探し、何に困っているかを聞き、一人一人に寄り添った支援を提供しているのです。

千葉盲ろう者友の会によるイベントの一コマより
千葉盲ろう者友の会によるイベントの一コマより

盲ろうという障害がある人もない人も、共に生きる社会を実現したい

最後に、事務局の皆さんに、今後、どのような活動をしていきたいかを伺いました。盲ろう者といっても、障害の程度や状況もさまざまで、コミュニケーション方法も多様であり、だからこそ通訳・介助員といった支援者の育成が難しいという課題があるそうです。それでも、そうした課題を一つ一つ乗り越えて、盲ろう者にとってもっと社会参加がしやすい方向に進めていきたいとお話しくださいました。
加藤さんにも今後の活動や、その先にどのような社会を望んでいるのかを伺いました。

加藤「盲ろう者が社会から取り残されないような活動を目指していきたいですね。盲ろうという障害がある人とない人の間にあるバリアがなくなり、共に生きる社会を実現していきたいと思っています。そのためには、例えば情報機器の発達なども大きな力になると思います。盲ろう者の視覚や聴覚の代わりとなるような機器がどんどん発達していってほしいと思います。盲ろう者は障害によって一般的な会社で働くことが難しいという現状があります。ですが、これからは障害者だから福祉作業所という一択ではなく、もっと普通に働き、自分で稼ぎ、そのお金で旅行をしたりスポーツをしたり、芸術を楽しんだりできる社会になってほしい。人間らしく生きることができる社会ですね。私たちの会ができることは小さなことかもしれませんが、その小さな力を集めることで、大きなことが実現できると信じています」


取材に対応してくださった左から奥村さん、時松さん、加藤さん、田中さん、秦さん
取材に対応してくださった左から奥村さん、時松さん、加藤さん、田中さん、秦さん

【事業基礎情報】

実行団体
NPO法人 千葉盲ろう者友の会
事業名

盲ろう者の地域団体の創業支援事業

活動対象地域
千葉県内
資金分配団体
社会福祉法人 全国盲ろう者協会

採択助成事業

2021年度通常枠

2023年3月よりJANPIAで活動を始めたインターン生の「活動日誌」を発信していきます。第3回は、22年度通常枠の実行団体である一般社団法人にじいろほっかいどう(資金分配団体:認定NPO法人北海道NPOファンド)の取り組みについてのリポートです!

JANPIAインターン生のSです。
今回は北海道で活動する一般社団法人にじいろほっかいどうさんを取材させて頂きました。
インタビューに応じて下さったのは、理事長の国見亮佑(くにみ りょうすけ)さん、副理事長のたかしさん、事務局長の真田陽(さなだ あさひ)さんの3名です。
取材を通じて、団体設立のきっかけや、現在の活動内容まで詳しくお聞きしてきました!

1. 一般社団法人にじいろほっかいどうとは

1-a 団体概要、活動内容について

一般社団法人にじいろほっかいどうは、北海道に暮らすLGBTQ+当事者への差別や偏見、社会的孤立をなくす活動を行っている団体です。
交流会や居場所づくりを通じたLGBTQ+当事者の孤立の解消、講演会などのイベントによる啓発活動を主軸として活動する団体であり、休眠預金支援事業2022年度の通常枠に実行団体として採択されています。(資金分配団体:認定NPO法人北海道NPOファンド)

1-b 団体立ち上げのきっかけ

にじいろほっかいどうは2015年に、現在の理事長である国見さんによって立ち上げられました。国見さんご自身がゲイの当事者であることから、団体設立前からLGBTQ+当事者の孤立解消を目的とした交流イベントや学校現場での講演などの活動を展開されていた経緯があり、講演依頼を受ける団体としてにじいろほっかいどうを設立するに至ったそうです。

現在団体で事務局長を務める真田さんは、にじいろほっかいどうとしての最初の講演会イベントの参加者。その出会いがきっかけで現在の活動に参画されたそうで、「あれからもう10年か!」と国見さんと顔を見合わせる姿がとても印象的でした。

2. ついにオープン!「はこにじ」とは?

2-a はこにじをオープンするに至った経緯

これまでの活動の中で、性的マイノリティの方々が安心して過ごすことのできる居場所の必要性は感じられていたと言う国見さん。しかし、人件費や家賃のコスト面での懸念から居場所づくりは諦めていた所に休眠預金事業の話を聞き、「はこにじ」をオープンすることを決められたそうです。

「はこにじ」とは、LGBTQ+や障がいを持った方が自由に訪れることのできる居場所です。 はこにじでは、入場料300円を払うことで飲み物やお菓子を食べてくつろぐことができます。

「はこにじ」とは、LGBTQ+や障がいを持った方が自由に訪れることのできる居場所です。 はこにじでは、入場料300円を払うことで飲み物やお菓子を食べてくつろぐことができます。

また、はこにじでは飲食メニューも充実しており、長時間ゆったりと過ごすことができます。 2024年5/13にオープンして間もなくですが、連日多くの方が訪れているようです。

また、はこにじでは飲食メニューも充実しており、長時間ゆったりと過ごすことができます。 2024年5/13にオープンして間もなくですが、連日多くの方が訪れているようです。

2-b オープンするまでの苦労

はこにじのオープンにあたって、部屋のリフォームや事務作業を一手に担われていたのが副理事長のたかしさん。慣れない事務作業や内装などに手探りで挑戦し、オープン日を迎えることができたそうです。

元々民家だった場所を改装して、完成したはこにじ。 リフォーム前は、この写真のように「どこから手を付けたら、、、」という状態だったよう。 そこからリフォームを行って出来上がったのが、こちら。

元々民家だった場所を改装して、完成したはこにじ。 リフォーム前は、この写真のように「どこから手を付けたら、、、」という状態だったよう。 そこからリフォームを行って出来上がったのが、こちら。

水色を基調とした内装へと生まれ変わったはこにじ。 壁側には、階段状の足場を設けることで講演会なども実施できるようになったと満足そうに語って下さいました。

水色を基調とした内装へと生まれ変わったはこにじ。 壁側には、階段状の足場を設けることで講演会なども実施できるようになったと満足そうに語って下さいました。

2-c 内装で意識されたこと

にじいろほっかいどうの皆さんが共通して持っていたのが、「はこにじをアットホームな空間にしたい」という思いです。
レトロな雰囲気を残し、ショールームのような綺麗な内装にならないようにデザインされた空間は、絶妙なバランスで調和が取られており、皆さんの思いが反映された居心地の良い空間がそこにありました。

はこにじの室内で、特に目を引く内装の工夫がもう一点あります。 それは、あえて不揃いに用意された形の異なる椅子の数々です。 たかしさんが札幌の劇場で目にしたHIVを題材に扱った劇から着想を得て、あえて様々な種類の椅子を内装に取り入れられたそうです。

はこにじの室内で、特に目を引く内装の工夫がもう一点あります。 それは、あえて不揃いに用意された形の異なる椅子の数々です。 たかしさんが札幌の劇場で目にしたHIVを題材に扱った劇から着想を得て、あえて様々な種類の椅子を内装に取り入れられたそうです。


余談ですが、副理事長のたかしさんは芸術家としての一面もお持ちで、はこにじと同じ長屋の2階のギャラリー「home coming」にてたかしさんの作品が展示されていました。
このギャラリーも、はこにじと一緒ににじいろほっかいどうが運営していて、今後は様々なアーティストの展覧会を予定しているとのこと。
どれも素晴らしい作品なので、はこにじを訪れた際には是非足を運んでみて下さい!

3. にじいろほっかいどうの活動

にじいろほっかいどうは、「はこにじ」の活動以外にも、交流会や居場所づくりを通じたLGBTQ+当事者の孤立の解消、講演会などのイベントによる啓発活動に取り組まれています。活動の中で感じる性的マイノリティを巡る社会環境や、活動に込めた想いについて伺いました。

3-a 北海道における自治体の取組について

LGBTQという言葉の認知が近年で拡大したこともあり、パートナーシップ制度などを導入する自治体が北海道内でも出てきたと国見さん。
国見さんは実際に、長年居住していた帯広市の職員さんと共にパートナーシップ制度の創設を行い、パートナーであるたかしさんと共にパートナーシップ制度認定を受けられたそうです。
しかし、道内全体ではまだ制度的に充実しているとは言えず、今後も政治や司法に働きかけていく必要性があると仰られていました。

3-b当事者同士の交流機会の重要性

次に、活動の軸として挙げられている交流の機会の重要性について国見さんにお聞きしました。
やはり、日々の生活の中で同じLGBTの人と会うことが難しく、性的マイノリティの方々は孤立しやすい現状がまだ日本社会には存在しています。
そういった方々が、安心して集まれる場所を作り、カミングアウトや家族・パートナーについての悩みを共有できるような相手を見つけられる交流の機会が大事との思いから、長年交流イベントを企画・開催されているそうです。

取材の様子
取材の様子

3-c 講演会の活動から見える実態

実は、理事長の国見さん、事務局長の真田さんは共に教職員。そのお二人の背景を活かし、北海道の教職員を対象とした講演会活動に取り組まれています。
お二人のお話を聞く中で、印象に残ったのは講演会の内容がより実践的な内容であるという点です。
近年、教育現場にて実際に性的マイノリティの児童から相談を受ける機会が増えてきており、「児童との接し方」についての質問が多いそうです。それに伴い、講演会の中でも「カミングアウトを児童から受けたとしても、児童の同意なしに他の教職員に内容を共有しない」等のケースバイケースに対応した講演が行われていると聞き、とても驚きました。

4. まとめ・感想

今回は、函館で活動されているにじいろほっかいどう様へ取材をさせて頂きました。
取材を通じて、社会全体として性的マイノリティの方々が安心して過ごすことができる居場所の必要性を痛感したと共に、教職現場での実態など目から鱗のお話を沢山お聞きすることができました。
「休眠預金事業を始めてから、忙しくなり喧嘩が増えた」と笑いながら話す国見さんとたかしさん。そして、それを微笑ましく見守る真田さん。
御三方の素敵な関係性によって運営されるはこにじは、暖かく、優しい雰囲気に包まれた空間
でした。
この記事を読んでにじいろほっかいどう様の活動に興味を持たれた方は、是非HPやはこにじを訪れてみてください!

にじいろほっかいどう

■ 事業基礎情報

実行団体一般社団法人にじいろほっかいどう
事業名社会的居場所を核とした働き方と暮らし方の共生の実現〜地域コミュニティにおける障がいのあるLGBTQの受容を目指して
活動対象地域北海道函館市及び道南地域
資金分配団体認定NPO法人 北海道NPOファンド
採択助成事業2022年度通常枠

今回の活動スナップでは、山梨県富士川町で活動する実行団体スペースふう[資金分配団体: 富士山クラブ]の政策提言が実現したことを受け、活動の様子などをお伝えします。

活動概要

「リユースお弁当箱がつなぐ地域デザイン事業」は、山梨県富士川町で活動する実行団体スペースふうが2021年秋より、富士川町に住む「孤独」「孤立」を感じやすい産後のママさんをはじめ、子育て家庭を対象にリユース食器などを使用した宅配お弁当サービスです。この事業ではこれまでに、作る人、運ぶ人、情報発信する人など多くの人のサポートを受けながら、70人以上の産後ママに利用されてきました。お弁当は、地元の食材を使って作られた手作りで、自己負担金は1回100円で受け取ることができます。使用しているお弁当箱をリユースにすることで環境にもやさしく、届けるとき、容器を回収するときに産後のママさんや子育て中のお母さんとも多くのコミュニケーションを生み、社会との繋がりを感じられる事業が実施されてきました。

【スペースふう】hottos(ホットス)取り組み内容チラシ

母親に配食支援 おむつ費も補助 | さんにちEye 山梨日日新聞電子版

政策提言

休眠預金活用事業で始まった宅配お弁当サービスが、助成期間の終了後も継続して行えるように政策提言がなされました。

政策提言が実現したことにより、産後のしんどさを個々で抱え、孤立しやすい時期の産後ママにとって、「産後うつ」「虐待」の手前の手前の予防策としても本事業は機能し続けます。また、行政の専門的な相談やサポートに加え、お弁当を手渡すときの何気ない言葉のやり取りが「この町の人たちの応援エール」として子育て家庭に届けられることで「安心して子育てできる富士川町」としてさらに町が充実し、発展していくことになると期待されます。

【事業基礎情報】

実行団体

認定特定非営利活動法人 スペースふう

事業名
リユースお弁当箱がつなぐ地域デザイン事業
活動対象地域
山梨県 峡南地域・中巨摩地域
資金分配団体
認定特定非営利活動法人 富士山クラブ
採択助成事業甲信地域支援と地域資源連携事業
~こども若者が自ら課題を解決する力を持てる地域づくり事業~

今回のJANPIAスナップでは、JANPIA×RISTEX共催イベントを開催した様子をお届けします。

イベント概要

JANPIAはRISTEXとの共催イベントとして、2024年1月24日に第1弾ラウンドテーブル「孤立・孤独という社会課題にどう向き合うか?~直面する課題に立ち向かう現場×研究による予防的アプローチ~」、2月1日に、第2弾セミナー「現場と研究のつながりが社会課題解決を促進する~企業がつないだ事例「シングルペアレンツ・エンパワメント・プログラム」から~」を開催しました。

第1弾:ラウンドテーブル「孤立・孤独という社会課題にどう向き合うか?~直面する課題に立ち向かう現場×研究による予防的アプローチ~」

「社会的孤立・孤独」の課題に対し、当事者への日常的な直接の支援に取り組むJANPIAの民間団体と、孤立が発生する因子にフォーカスした研究に取り組むRISTEXの研究者が登壇し、相互の活動を知り、知見の交換を図るラウンドテーブルを行いました。

様々な孤独、孤立を考えるにあたり、フィールドが異なる皆様から、ご報告いただきました。
多様な世代へのアプローチ、アウトリーチ、子ども・若者(ユース世代)の分野では、相談できる場所がない、親に頼れないなどの事情を抱えているケースが多い。
また、地域によっては「世間体」を気にする人が多くオーダーメイド方式で対応している。本人が「孤立」している、「孤独」を自覚している人がいないなど地域の文脈を理解しながら支援することが必要であるというコメントがありました。

登壇者のご紹介

左から、一般社団法人Team Norishiro 理事 野々村 光子 氏、認定NPO法人D×P 代表理事 今井 紀明 氏、同朋大学 社会福祉学部 准教授 宮地 菜穂子 氏、弘前大学大学院保健学研究科 助教 櫛引 夏歩 氏、追手門学院大学 教授/広島大学 名誉教授 浦 光博 氏、JANPIA職員 高木陽子
左から、一般社団法人Team Norishiro 理事 野々村 光子 氏、認定NPO法人D×P 代表理事 今井 紀明 氏、同朋大学 社会福祉学部 准教授 宮地 菜穂子 氏、弘前大学大学院保健学研究科 助教 櫛引 夏歩 氏、追手門学院大学 教授/広島大学 名誉教授 浦 光博 氏、JANPIA職員 高木陽子

当日の動画

 動画〈YouTube[外部リンク]

第2弾:「現場と研究のつながりが社会課題解決を促進する~企業がつないだ事例「シングルペアレンツ・エンパワメント・プログラム」から~」

左から、ファシリテーター伊藤 健 氏、NPO法人全国ひとり親居住支援機構 代表理事 秋山 怜史 氏、武庫川女子大学 心理・社会福祉学部社会福祉学科 准教授/一般社団法人TICC共同代表 大岡 由佳 氏、アメリカン・エキスプレス 広報担当バイスプレジデント  佐藤 克哉 氏
左から、ファシリテーター伊藤 健 氏、NPO法人全国ひとり親居住支援機構 代表理事 秋山 怜史 氏、武庫川女子大学 心理・社会福祉学部社会福祉学科 准教授/一般社団法人TICC共同代表 大岡 由佳 氏、アメリカン・エキスプレス 広報担当バイスプレジデント  佐藤 克哉 氏

異なるセクターの協働による社会課題解決事業の参考となる事例として、企業が研究者と民間公益活動を行う団体をつなぎ実施している「シングルペアレンツ・エンパワメント・プログラム※」の事例を参考に、同じ社会課題解決を目指す研究者と非営利組織、企業がどのような役割をもって事業を実施してきたのかを振り返りながら、マルチセクターで協働するメリットや、有機的なつながりをつくるコツなど、課題解決において相乗効果を生むために役立つヒントについて、セミナー形式で行いました。

当日の動画

 動画〈YouTube[外部リンク]

当プログラムをマネジメントする立場であるAVPN伊藤氏をファシリテーターとし、秋山氏からは民間公益活動を行う団体の視点から、大岡氏からは研究者として、佐藤氏は企業として活動をサポートする立場から、シングルペアレントの居住問題とメンタルヘルスが、なぜセットで語られるのか?に目をむけ、シングルペアレントの背景を知り連携することで、シナジーを生み出している事例が紹介されました。
また、NPOなどの支援者が居住支援にかかわる様々な支援者がトラウマのことをよく知って関わる姿勢(トラウマインフォームドケア)を学ぶことで、トラウマを抱えたシングルペアレントの背景を尊重しながらケアをしていくことが重要であり、この連携事例が大きな意味を持つことが確認されました。
さらには、企業視点での連携における難しさやそれを克服するための工夫なども紹介され、それぞれが違う立場で同じ目標に向かって活動を推進することの意義が話し合われました。

シングルペアレンツ・エンパワメント・プログラム by American Express
アメリカン・エキスプレスの支援により2023年4月から2024年3月までAVPNが運営する事業です。複数の企業と非営利組織の連携により、対象者(いわゆる「シングルマザー」や予期せぬ妊娠をした方)が必要とする住まいとメンタルヘルスケアのサービスを提供しています。