今回の活動スナップは、JANPIA主催「休眠預金活用事業・調査研究シンポジウム“罪を犯した人の立ち直りを地域で支えるために~地域の生態系の視点から~”」の様子をお届けします。
活動概要
2023年3月23日(木)、JANPIAと更生保護法人 日本更生保護協会の共催により、「休眠預金活用事業・調査研究シンポジウム“罪を犯した人の立ち直りを地域で支えるために~地域の生態系の視点から~”」を開催しました。
本シンポジウムは、「安全・安心な地域社会づくり支援事業」(2019年度通常枠 資金分配団体:日本更生保護協会)について、JANPIAが委託した調査研究チーム(代表:津富 宏 [静岡県立大学])が、3つの実行団体を対象に行った調査・研究の成果を報告し、その成果を地域の再犯防止の取組みに生かすことを目的に行われました。
当日は、再犯防止推進計画を推進している全国各地の自治体関係者や保護司の皆さまをはじめ、法務省や地域の立ち直り支援に関心のある方々合計173名(会場参加25名)のお申し込みを頂き開催し、活発な意見交換が行われました。ご参加・ご視聴いただいた皆さま、ありがとうございました。

活動スナップ
【第一部】
開会の挨拶・事務局説明

事務局説明 根尾 智子 (JANPIA プログラム・オフィサー)[左]
主催者挨拶 岡田 太造 (JANPIA 専務理事)[右]
動画〈YouTube〉|開会の挨拶 [外部リンク]
事業紹介

1. 資金分配団体 :「安全・安心な地域社会づくり支援事業」 更生保護法人 日本更生保護協会
藤井 郁子氏 事業担当プログラム・オフィサー [左上]
2. 実行団体1 :「息の長い支援基盤整備事業」 更生保護法人 滋賀県更生保護事業協会
新庄 博志氏 事務局長 [右上]
3. 実行団体2 :「犯罪を犯した依存症者の支援拠点づくり」 特定非営利活動法人 ジャパンマック
末永 直美氏 エール施設長 [左下]
4. 実行団体3: 「パープルエイド・ブルークロス運動」 特定非営利活動法人TFG
大西 良氏 一般社団法人 ソーシャルワーク・オフィス福岡 代表理事
中山日向子氏 一般社団法人 ソーシャルワーク・オフィス福岡 理事 [右下]
動画〈YouTube〉|事例紹介 [外部リンク]
資料〈PDF〉|事業紹介 [外部リンク]
調査研究報告

1. 松川 杏寧氏 防災科学技術研究所
特別研究員 報告 [左上]2. 竹中 祐⼆氏 北陸学院大学准教授 報告[右上]3. 中村 秀郷氏 西南学院大学講師 元保護観察官 報告[左下]4. 津富 宏氏 静岡県立大学教授/NPO法⼈ ⻘少年就労⽀援ネットワーク静岡顧問 報告[右下]
動画〈YouTube〉|事例紹介 [外部リンク]
資料〈PDF〉|調査研究報告 [外部リンク]
【第二部】
パネル・ディスカッションの様子

[登壇者]

[会場]
・藤井 郁子氏 更生保護法人 日本更⽣保護協会 事業担当プログラム・オフィサー [上段、左]
・新庄 博志氏 更生保護法人 滋賀県更⽣保護事業協会 事務局長 [上段、中央左]
・末永 直美氏 特定非営利活動法人 ジャパンマック エール施設長 [上段、中央右]
・岡⽥ 昌之氏 特定非営利活動法人 ジャパンマック 総括施設長 [上段、右]
[オンライン]
・大西 良氏 筑紫女学園大学 准教授/⼀般社団法人 ソーシャルワーク・オフィス福岡 代表理事
中山日向子氏 一般社団法人 ソーシャルワーク・オフィス福岡 理事 [下段・右]
・加藤 豊氏 静岡市 保健福祉長寿局 健康福祉部 福祉総務課 [下段、左]
[司会進行]
津富 宏氏 静岡県立大学教授
動画〈YouTube〉|パネル・ディスカッション [外部リンク]
フロア・ディスカッションの様子
フロア・ディスカッションでは、会場・オンライン毎でグループに分かれ、調査報告やパネル・ディスカッションを聞いての感想やご意見、再犯防止を地域で進めていく上での展望や課題等についての意見交換が行われました。今回出されたご意見は、この度の調査研究の最終報告書へ反映される予定です。

[司会進行]
松川 杏寧氏 防災科学技術研究所
特別研究員
質疑応答

動画〈YouTube〉|質疑応答 [外部リンク]
閉会のご挨拶

閉会のご挨拶 津富 宏氏(静岡県立大学教授)

動画〈YouTube〉|閉会のご挨拶 [外部リンク]
ご協力いただいたスタッフの皆さん

今回のシンポジウムは、ご登壇頂いた皆さまはもとより、配信スタッフのZAN FILMSの皆さん、会場となった日比谷国際ビル コンファレンス スクエアの皆さんとの連携で実現しました。この場を借りてお礼申し上げます。
今回の活動スナップは、NEC(日本電気株式会社)と日本更生保護協会(19年度通常枠・22年度通常枠 資金分配団体)が行った備蓄米寄贈式の様子をお伝えします。
活動の概要
更生保護法人 日本更生保護協会は、資金分配団体として2019年度より「安全・安心な地域社会づくり支援事業」、2022年度は「立ち直りを支える地域支援ネットワーク創出事業」に取り組んでいます。
JANPIAの仲介を通じて、NECが日本更生保護協会の実行団体に対し、社員の専門スキルを活かしたプロボノ支援(シンポジウムの映像配信など)を提供したことをきっかけに、同協会の活動に参画する中で、人・モノ・資金等が不足している現場の課題を知り、この度の備蓄米寄贈の実現に繋がりました。
[きっかけとなったプロボノ支援]
19年度通常枠の実行団体である全国再非行防止ネットワーク協議会が中心となり設立した「日本自立準備ホーム協議会」の設立記念シンポジウム(2022年3月実施)で、NECのプロボノ倶楽部の皆さんにオンライン配信などのご支援を頂きました。

活動スナップ
2023年4月5日(水)、東京の更生保護会館にて備蓄米の寄贈式が行われました。今回寄贈された災害用備蓄米(1150 食)は、日本更生保護協会が全国の保護施設に対し行ったニーズ調査で、希望のあった 6 団体に贈られます。
寄贈式では、NEC 人事総務統括部 玉川総務部長の山本さんから、寄贈先を代表して日本更生保護協会 常務理事 幸島さんと日本自立準備ホーム協議会 常務理事 稲葉さんが目録を受け取りました。

出席者のご発言(要旨)は以下のとおりです。
NECプロボノ倶楽部 代表 川本さん
「一昨年からプロボノでご支援させていただいた「日本自立準備ホーム協議会」団体立ち上げで、更生保護で活躍される団体や更生保護で活動される保護司やボランティアの活動における課題やご苦労を知り、私たちにも何かご支援できないかと考え、今回の寄贈につながった。いろんな縁が繋がってここにあると思っている。一回限りというよりも、今後も良い関係を続け、地域のため社会のために貢献していきたい。」
NEC 人事総務統括部 玉川総務部長 山本さん
「NECの事業所や工場では社員の出社を前提に災害時の非常食を用意しているが、コロナ禍で出社が減っており、備える量が多くなってしまい食品ロスとなる可能性が高くなった。そのような中、今回全国にお米をお配りいただけるということで、こういった機会を大変有難く思っている。引き続き努力し、こういった関係をつくっていきたい。」
日本更生保護協会 常務理事 幸島さん
「今般このようなお気遣い以上の心配りを賜ったことを本当にありがたく存じる。こういう素晴らしい機会をいただき、また今後に繋げていくためにはどういう工夫が必要なのか、私をはじめ職員みんなで、あるいは関係団体の皆さんと知恵を出しながら、前に進んでいきたい。」
日本自立準備ホーム協議会 常務理事 稲葉さん
「全国の自立準備ホームとどうやって連携していくかというのが、課題となっている。私たちの協議会も、まだまだこれからというところなので、ご支援・連携をさせていただければ本当に有難く、今後ともよろしくお願いしたい。」

寄贈式に同席したJANPIA シニア・プロジェクト・コーディネーターの鈴木からは、「包括的な関係づくり、長く続くような支援関係へと繋がっていくというのは新たな共助の姿ではないかと思う。引続きこのような連携が続き、また広がるよう支援をしていきたい」と期待が述べられました。
<備蓄米寄贈先>
日本更生保護協会「安全・安心な地域社会づくり支援事業」(19年度通常枠)の実行団体
(以下の 5 団体)他、1 団体。
・更生保護法人 ウィズ広島
・更生保護法人 滋賀県更生保護事業協会
・全国再非行防止ネットワーク協議会(NPO法人 再非行防止サポート愛知)
・認定NPO法人 ジャパンマック
・NPO法人 のわみサポートセンター

【休眠預金活用事業サイトよりお知らせ】
今回の寄贈式の様子はNECの公式SNS(Twitter・Facebook)やプロボノ倶楽部Facebookでも情報が掲載されました。
▶NEC公式Twitter[外部リンク]
▶NEC公式Facebook[外部リンク]
▶NECプロボノ倶楽部Facebook[外部リンク]
資金分配団体 | 更生保護法人 日本更生保護協会 |
採択助成事業 | 安全・安心な地域社会づくり支援事業〈2019年通常枠〉 立ち直りを支える地域支援ネットワーク創出事業〈2022年通常枠〉 |
活動対象地域 | 全国 |
『誰ひとり取り残さないために災害時に向けて平時からできること ~ネットワーキングの重要性を考える~[2022年10月26日開催]』の様子をお届けします。
活動概要
「課題・テーマ別ラウンドテーブル」の第2弾を開催。テーマは『災害対応』です。
大小様々な自然災害(地震、豪雨、豪雪等)が多発する昨今、休眠預金活用事業が対象とするあらゆる領域において平常時からの災害への備えが重要という認識が広まりつつあります。
休眠預金活用事業のプラットフォームにおいて、日頃からどのような連携ができるのか…。どのようなネットワーキングをすれば、万が一の発災の際に慌てることなく目の前の社会課題解決に取り組むことができるのか…。『誰ひとり取り残さないため』に平時からできることを、“災害”に特化した団体ではない皆様と考える場とし、意見交換を行い、発災時にすみやかに、そして円滑に機能するネットワークづくりについて皆さまと議論・共有しました。
※本イベントではご要望をいただき、「手話同時通訳」を試験的に実施しました。一部動画がうまく反映できていない部分もありますがご了承ください。
221026開催‗災害対応ラウンドテーブル‗当日のご意見紹介.pdf[外部リンク]
活動スナップ
登壇者のご紹介

【第1部】 平時のネットワーキングに取り組む皆様からお話を聞く!
第1部は災害支援の現場の実践を通じた学びや、既にネットワーク形成に取り組んでおられる皆様から事例のご紹介いただきました。
【第2部】 平時からの様々な関係者との連携について考える
第2部は、平時からのネットワーキングや活動の担い手の確保、様々な関係者の巻き込みや、企業との連携、休眠預金活用事業にかかわっている皆様で連携することでできることはないか?、等の視点で皆様と議論を深めました。
休眠預金活用事業では、社会的インパクト評価の実施が特徴の一つとなっています。一方、資金分配団体や実行団体の中には評価の経験があまりない団体も少なくありません。 NPO法人 地球と未来の環境基金 (EFF:Eco Future Fund) とそのコンソーシアム構成団体である NPO法人持続可能な環境共生林業を実現する自伐型林業推進協会(自伐協)も初めて評価に本格的に取り組む団体の一つでした。評価の実践を通じての気づきと成果、実行団体に伴走する上で実感した課題や成功体験、そして社会的インパクト評価の視点が活かされたエピソードなどについて、自伐協事務局の中塚さんと、 EFFの理事・プログラムオフィサー美濃部さんにお話を伺いました。”
そもそも、自伐型林業とは?
───まず、今回の事業の趣旨である「自伐型林業」とは、どのようなものなのか。中塚さんより簡単にご説明いただけますでしょうか。
中塚高士さん(以下、中塚):はい。自伐型林業とは、地域の山を地域の人たちで管理する形の林業です。チェーンソーと小型重機・運搬用のトラックがあれば、個人や少人数で低コストから始めることができます。
そもそも従来の林業は、大規模な伐採が必要な「現行林業」が主流でした。戦後復興に伴い木材の需要が高まっていた時代、山林にたくさんの大型機械と人材を投入し、大規模に植樹と伐採を行うスタイルが確立していたのです。
しかし需要が落ち込むに連れ、そのような大規模な林業の経営を持続的に行うことが難しくなっていきました。そこで近年注目されているのが、「自伐型林業」です。
林業従事者が減少し続ける中、「新しい田舎での暮らし・仕事のあり方」として若者や移住者からの注目も集まっています。また国土の7割を占める日本にとって、山林を活用した「地方創生の鍵」としても全国の自治体から期待が高まっています。
「休眠預金活用事業」への申請の背景

───そういった林業の歴史やスタイルを踏まえ、休眠預金活用事業への申請の背景・経緯について、お聞かせいただけますか。
中塚:現行林業については、国の取り組みとして林業従事者を育成する支援も多く実施されてきました。しかし自伐型林業を含め、小さな林業従事者に向けた育成や研修プログラムはほとんどありません。「地域の山を守る仕事がしたい」「新しい働き方として林業に挑戦したい」と意欲ある新規参入者がいる一方で、機械の使い方や木の切り方がわからない、学ぶ場もない……、という課題がありました。
それならば、国の手が行き届かない小さな林業従事者に向けた育成・研修支援を実施しよう!と決意をし、その資金繰りとして、休眠預金活用事業への申請を検討し始めました。
そのような中、自伐協にもコロナ禍で生活困窮されている方からの声は届いていました。
「もう都会を離れて田舎でやるしかない」
「勤めている会社が業績悪化で休業状態なんです」
「観光客が減ってしまったから、林業も兼業したい」
そういった方々に向けて、何かできることはないか?と考えていたところ、資金分配団体(20年度コロナ枠)の公募が始まったので、非常に良いタイミングで申請をさせていただいたと思っています。

事業をする中で感じた課題・難しさ
───今回の事業を進める上で課題や難しさはありましたか?
美濃部 真光さん(以下、美濃部):実行団体の皆さんも、私たち自身も、自伐型林業に関わる団体なので、森づくりの活動についての計画や目標設定は得意分野なのです。しかしコロナ枠ではコロナ禍においての失業者されている方を救うための助成という慣れないテーマということで、もちろん志は高く持っていましたが事業を進めるうえでは四苦八苦しました。そのため、実行団体の事業計画策定の時期に、これまで経験がある「森づくりに関する研修の実施」にどうしてもフォーカスしてしまって、「コロナ禍による生活困窮支援」という視点が弱くなっていたことに事業実施途中で気が付いたのです。
「どれくらいコロナ禍における生活困窮支援につながったのか?」という部分の目標設定が曖昧だと、事業の成果も正確に測れません。当時は緊急助成ということで事業の実施を急いでいたこともありましたが、そこが一番の反省点でした。ただ実際、実行団体の各現場では、研修を実施して終わりではなく、受講された一人一人に対して丁寧に相談対応されていたので、その成果を示すために、研修参加者に事後的にアンケートをとりました。アンケート結果を実行団体の皆さんがコロナ枠の事業の後半戦に生かしてくださったっていうところが、事業の成果を高めるうえでとても大きかったと思っております。
───他に、社会的インパクト評価を実施する上でも難しさはありましたか?
中塚:休眠預金を活用させてもらっている以上、成果の報告もしっかり行いたいと思う一方、林業従事者の方々にとって書類作成の作業は不慣れな部分が多く、サポートをする私たちも苦戦しました。実際、書類の中で実施内容と成果をごちゃ混ぜに書いてきたり、要点がまとまっていなかったり。やって終わり、ではなく評価を可視化する難しさを感じました。

“評価”をやってみての気づき
───評価に取り組んで、どのようなことを感じていますか?
中塚:苦労はしましたが、これまでやってこなかった「評価」を意識できたのは良い経験でした。最近、自伐協においても、自治体との事業が非常に増えてきたのですが、これまでだったら勢い任せに「研修をやりますよ!」と提案していたところも、根拠や計画を示しながら要素を整理して説明できるようになりました。「どうやったら自伐型林業が、個人の生業に、地域の貢献につながるか?」を定量・定性の側面からお伝えできています。
美濃部:私もこれまでは、ロジックモデルの構築やアウトカムを想定した目標設定などに不慣れだった分、休眠預金活用事業を通じて経験できたことで大変勉強になりました。NPO法人が解決したいと思う社会課題は、人々の関心が寄せられていないからこそ、そこに課題があると思っています。無関心層の人々に対して、いかにしてコミュニケーションを取るべきか。そこを論理的に説明できなければ、私たちを含めたNPO法人の発展性はないと思っています。なので評価を含めた本事業の運営を経験できたことは、今後の私たち自身の活動にとっても良かったと思います。

───実際に、評価が活かされたと感じるエピソードはありますか?
中塚:各実行団体で行った研修の講師陣が、研修終了後も受講生と連絡を取り、定着のサポートをしていたことです。そこまでの講師陣の熱量の高まりは想定外のできごとでした。
事務的に研修を行い、人数や日数といった数字だけを気にするのではなく、今回の事業の目的である「コロナ禍による生活困窮支援」ということを評価を通じて講師陣もしっかり認識し、それぞれの地域に戻って就業していく受講生たちのこれからを慮り、その後の活動や人生にも目を向けたサポートをしたい!という想いが芽生えたようです。
実際、事業終了後も、受講生の地域を見に行ったり電話で連絡を取ったりと、研修の域を超えた関係が続いているとのことです。これは思いもよらぬアウトカムでした。定着までしっかりサポートしようという講師陣の姿勢は、評価に向き合ってきたからこそ、つながったのではないかと考えています。

今後について
───最後に、今後の展望についてもお聞かせください。
中塚:研修に参加される方や関心を持ってくださる方には、林業の技術だけでなく、生業にしていくために必要な知識もセットでお伝えしていきたいです。
実際、地域で自伐型林業を始めるとなると、山や機械を確保したり、販路を考えたり、他の自治体の事例を見せながらどんな地域貢献につながるかを自治体に説明したり、やらなければならないことが多方面にわたって出てきます。
新たに採択を受けた22年度のコロナ枠では、実行団体の皆さんとそういった自伐型林業を続けていくための必要な総合的な支援を生活困窮者の皆さんに向けてお伝えし就業に結び付けていけたらと考えています。助成規模も20年度コロナ枠と比較して大きくなりましたし、実行団体の採択も全国に広げていきたいです。
美濃部:休眠預金活用事業に取り組めたこと自体が、とても良かったと感じています。EFFの強みである助成金プログラムの運営を活かしつつ、中塚さんたち自伐協や、ランドブレイン株式会社という他分野の団体とコンソーシアムを組んで助成事業を展開できたことは非常に学びがありました。
実際、今回を機に多方面から「一緒に休眠預金活用事業ができないか?」というような声もいただいていて。これからは農業や福祉との連携など、さまざまな切り口での展開に可能性を感じています。なのでこれからまた、申請について検討し、ご相談させていただくかもしれません。よろしくお願いします!
【事業基礎情報】
資金分配団体 | 特定非営利活動法人 地球と未来の環境基金 ▽2020年度緊急支援枠コンソーシアム構成団体 ▽2020年度通常枠&2022年度コロナ・物価高騰枠コンソーシアム構成団体 |
助成事業 | 〈2020年度緊急支援枠〉 〈2020年度通常枠〉 〈2022年度コロナ・物価高騰対応支援枠〉 |
活動対象地域 | 全国 |
実行団体 | 〈2020年度緊急支援枠〉
〈2020年度通常枠〉
〈2022年度コロナ・物価高騰対応支援枠〉 |
台風、地震、豪雨、洪水、土砂災害……日本はその立地や地形、気象などの条件から、災害が発生しやすい国土と言われています。いつどこで起きるかわからない災害に備えて活動されているのが、資金分配団体(2019年度通常枠)である「全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)」と、その3つの実行団体である「北の国災害サポートチーム」「いわて連携復興センター」「岡山NPOセンター」です。4団体が目標として掲げている共通のキーワードが「ネットワークの構築」。4団体への取材から、災害時に地域内外の団体が連携するためには、平時から組織を超えたつながりが大事だということが見えてきました。
災害時に求められる「ネットワーク」とは?
そもそも災害時に「ネットワーク」の形成が求められるようになった背景について、 特定非営利活動法人(NPO法人)全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)のプログラム・オフィサー(PO)である鈴木さんにお話を伺いました。
国内で大きな災害が発生したとき、支援の仕組みはまだまだ確立できていない現状があります。その現状があらわになったのが、2011年の東日本大震災でした。
一口に「民間の支援組織団体」と言っても、普段の活動領域も活動テーマもさまざま。東日本大震災では多様な団体が現場に入ったものの、それらの団体をどこが受け入れて調整するのか明確に決まっておらず、現場で混乱が発生したのです。
そうなると、どこでどのような支援が入っているのかわからず、支援を行う関係者間でも連携を取ることも難しくなりました。このように、災害支援に入る団体は多くあってもその連携が取れていないと、広範囲での効率的な支援が難しくなってしまいます。
そこで立ち上げられたのが、JVOADです。東日本大震災での経験を踏まえて、支援の調整ができる環境を整えた仕組みづくりを目指し、各都道府県での災害支援のネットワーク構築を目指しています。
この「ネットワーク」にはさまざまな関係の構築が必要とされますが、JVOADが特に重視しているのが、主に制度による支援を行う「行政」、災害ボランティアセンターを中心的に運営する「社会福祉協議会」、NPOや企業などが含まれる「民間の支援団体」による「三者連携」です。
JVOADは全国域でこの体制づくりを試みながら、同時に都道府県域でも三者の連携を目指しています。今回ご紹介する実行団体「北の国災害サポートチーム」、「いわて連携復興センター」、「岡山NPOセンター」はそういった都道府県の災害時の中間支援を担う団体として、三者連携をベースに支援関係者同士のネットワーク構築を目指して奔走しているのです。

ここからは、それぞれのエリアの特徴を踏まえてネットワークを構築する3団体と、その3団体のパートナーとして伴走するJVOADについてご紹介します。
北の国災害サポートチーム(きたサポ)

北海道における災害中間支援組織、北の国災害サポートチーム(以下、きたサポ)の代表を務める篠原さんと、チームメンバーの本田さん、定森さんにお話を伺いました。
179の市町村があり、小規模自治体が多い北海道。交通網が止まったら外部から救援できなくなる土地柄に対して、NPOが蓄積しているノウハウにもばらつきがあり、災害時にどのようにして組織的支援を送るのかが課題になっていました。
2016年8月、台風第10号による災害が北海道で発生。NPOの中長期支援が動きづらい事態が発生し、これを契機に、全道各地で災害時にNPOが担うべき役割についての意見交換会が実施されました。
道内にNPOのネットワークが少しずつ生まれてきた矢先に、2018年9月、北海道胆振(いぶり)東部地震が発生。しかし2016年から積み重ねてきた活動により、胆振東部地震ではNPO間の連携が可能になりました。このような動きのなかで、これまで取り組んできたことを整理して「北の国災害サポートチーム」を組織したのです。

きたサポは、全道各地にあるNPOの中間支援センターも加盟しています。各エリアの中間支援センターは、エリア内で災害時に連携を取りやすいように行政やNPOと関係を構築しながら、きたサポで道内のネットワーク構築を進める仕組みです。
きたサポが、休眠預金活用事業で、北海道内で災害のリスクが高いと言われる釧路と有珠山周辺地域の2箇所でのネットワーク構築を重点的に行ってきました。意見交換会を開催したり周辺地域の団体と連携を図ったりと、重点地域を絞ったことで休眠預金を活用してきた成果が見られています。

幹事団体がそれぞれ本業を持ち、複数の団体で事務局を組織しているきたサポのスタンスは、それぞれの団体が自主的に考えて動くこと。
どこで災害が起きても、交通網が遮断されればエリアを超えた支援が難しくなる可能性が高い土地柄を踏まえて、「きたサポの活動を通じて培ってきたことを各自で活かす。それでいいと思っています」。
そんな自主性を重視する姿勢は着実に広まり、重点地域である釧路と有珠山での災害シミュレーションに参加した別のエリアの中間支援センターが、自分たちのエリアでもシミュレーションを実施するなど、自発的な取り組みが道内各地に派生していくケースも増えています。
「休眠預金活用事業で手応えを感じているのは、胆振東部地震の記録をまとめたことです(きたサポ報告書「平成30年北海道胆振東部地震 情報共有会議の記録(A4版)」)。完成して嬉しかったですし、今後の活動に展開できる大切なものを作れたと思っています」
きたサポが窓口機能を担うことで、きたサポがなければ蓄積されていなかった情報と関係性がストックされてきた活動3年目。これからも北海道内で被災者支援の拡大ができる仕組みづくりや文化を根付かせるために、活動を続けていきます。
いわて連携復興センター
特定非営利活動法人いわて連携復興センターの瀬川さんと千葉さんには、同センターが事務局を担っている『いわてNPO災害支援ネットワーク(INDS)』の活動についてお話を伺いました。

いわてNPO災害支援ネットワーク(以下、INDS)が立ち上がったのは、2016年9月。前月に台風
10号が発生し、東日本大震災からの復興途中であった岩手県に大きな傷跡が残されました。
災害支援において、連携と協働の必要性が浮き彫りになった東日本大震災。台風10号の際も、被害が大きかった岩泉町・久慈市・宮古市で災害ボランティアセンターが設置されて熱心な復旧作業が行われたものの、なかなか連携協働まで至らなかったと言います。
「実際はそこまで現場で混乱が生じたわけではないのですが、もっと情報連携できたら役場への問い合わせが一本化されたり、それぞれのNPO団体の得意分野が発揮できる支援をお願いできたりと、より効率的・効果的な支援をできたのではないかなと考えました。広範囲の岩手県をカバーする上で、調整し合うことが重要だと思います」
このような背景から「オール岩手」での取り組みを目指して立ち上げられたのが、いわてNPO災害ネットワークです。県内のさまざまなNPOによって構成され、JVOADと一緒に広域のコーディネートに動くこともあれば現場で泥出しの対応に入ることもあり、被災地に応じた支援に取り組んでいます。
休眠預金活用事業に応募したのは、より安定的な活動を展開する基盤づくりのため。岩手県の広域をカバーしながら県と県の社会福祉協議会と関係構築を進める上で、休眠預金活用事業が単年度ではなく長期的であることがメリットになっていると言います。
「支援活動のための関係構築には、日常のコミュニケーションがすごく重要になってきます。休眠預金活用事業が単年ではなく3年間だからこそ、年度を超えて長期的に会議を設定できたり計画的に研修を実施できたりするのはありがたいですね」
一言に「関係構築」といえど、行政の担当者には異動があり、コロナ禍で直接顔を合わせる機会が格段に減ってしまったため、この取り組みは容易ではありません。それでも県内でINDSの名前が知られるようになったりINDSと連携できる人が増えたりと、着実に変化が見られています。
「JVOADの伴走支援があることで、県内だけでなく県外での災害対応にも参加するようになりました。そこで最新の支援方法を知れたり県外の方々とつながれたりして、岩手に持ち帰れるものがあります。防災には終わりがないので、少しずつ仲間を増やしながら、見える成果を出していきたいです」
岡山NPOセンター

岡山NPOセンターが掲げるのは「自然治癒力の高いまち」。問題が発生したら協働して解決していける。足りないところを補い合って、問題自体の発生を無くせるような「自然治癒力」を高めることが目標です。
そのため、岡山NPOセンターはNPOだけに限らず、セクターを越えて課題解決や価値創造の取組が生まれ、続いていくようにファシリテートしています。そのなかで2018年に立ち上げたのが「災害支援ネットワークおかやま」です。
2018年7月、「西日本豪雨」と呼ばれる広域に及ぶ被害をもたらした災害が発生しました。岡山NPOセンターは、発災した翌日には岡山県社会福祉協議会、岡山県と話し合い「災害支援ネットワークおかやま」を立ち上げ。ここまで迅速に動けたのは、岡山NPOセンターが平時から、行政、関係支援機関、民間団体、企業と協働で事業を通じて築き上げてきた関係性があったからです。

三者連携が進んできたとはいえ、組織文化か進め方も異なるためにまだまだ難しい行政機関と民間との災害支援に関する連携。災害支援ネットワークおかやまは平時の備えからの関係性の構築や継続を目指しています。
詩叶さんが理想的な関係を築けているケースのひとつとして挙げたのが、倉敷市一般廃棄物対策課との協働です。倉敷市の災害廃棄物の対策マニュアルの作成に参加して、訓練にも参加しましています。このようなマニュアル作成にNPOが参加したのは全国で初めてのケースだと言います。
「このような関係をどの市町村とも築けると、いつどのように発災しても、私たちから団体や企業をつなげますし、市町村も支援を受け入れられるんですよね。災害を平時の地域づくりから切り離さずに、常に地域を多面的に接続していくことが重要だと思います」
詩叶さんは休眠預金活用に参加してよかったことのひとつとして、通常の補助金では予算がつかないところにも予算をつけられる点を挙げられました。
「例えば水害時の復旧ロードマップは、デザイナーと編集者がいるからこそ、被災された住民の方に見て理解してもらえるものが完成しました。通常の助成金だと、そのように災害にデザインを持ち込むことが予算として認められないんですよね。でも休眠預金活用事業では予算として活用させていただけるので、その柔軟さがありがたいです」

普段からさまざまな部会をつくって話し合いをし、コミュニケーションを通じてアウトプットを決めている災害支援ネットワークおかやま。西日本豪雨の経験だけでなく、全国の災害中間支援組織とも連携しながら、常にアップデートした災害対応を県内外に伝えています。
全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)

ここまでご紹介してきた3団体の資金分配団体でありパートナーとして伴走を続けるのが、全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)です。JVOADの鈴木さん、明城さん、小竹(しの)さん、古越さんにお話を伺いました。
JVOADは「行政」、「社会福祉協議会」、「民間の支援団体」のによる災害支援のネットワーク構築のモデル化を目指しながら、全国域の災害中間支援組織と連携して情報共有を図っています。
「災害の文脈で『中間支援組織』について行政から語られるようになったのは、2018年の西日本豪雨の頃からです。それでも『中間支援組織』とは何なのか、どこまで何をやるのか定義されていないため、手探りで進めています。各地の災害に関する中間支援組織が目指すイメージもさまざまなので、まずは休眠預金を活用されている3道県と一緒に、目指すあり方を積み上げているところです」
JVOADは全国域の災害中間支援組織であり、先の3団体は県域の災害中間支援組織であるため、対応する範囲は違えど、同じ課題意識を持っているパートナー。
3団体が休眠預金活用事業を終えるのは、2023年3月。残り半年の活動期間で、3団体が積み重ねてきた活動を可視化したいと考えています。
「モデルとなる中核的災害支援ネットワークを確立し、三者連携の必要な要素を可視化することを休眠預金活用事業では目指しているので、3団体の皆さんが取り組んでこられたことをまとめていきたいと思います。災害中間支援組織の活動内容をできるだけわかりやすく伝えることで、この活動を他の地域へも展開したいと思っていただけるように橋渡ししたいです」
ゆくゆくは、全国47都道府県に災害中間支援組織がある状態を目指しているJVOAD。各地域で始まっている動きをサポートできるよう取り組んでいきたいです。
取材・執筆:菊池百合子
【事業基礎情報】
資金分配団体 | 特定非営利活動法人 全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD) |
助成事業 | 中核的災害支援ネットワーク構築 〜大規模災害に備え、ネットワーキングから始まる地域の支援力強化〜 〈2019年度通常枠〉 |
活動対象地域 | 全国 |
実行団体 | ★北の国災害サポートチーム 「広域・分散型 災害支援ネットワーク構築事業」 ★特定非営利活動法人いわて連携復興センター 「岩手県内の支援体制構築と支援者の育成・創出事業」 ★特定非営利活動法人岡山NPOセンター 「岡山県内市町村との連携体制と災害時支援スキームの確立事業」 |
一般社団法人Kids Code Clubは、「子どもへのテクノロジー学習の支援を通じて、子どもたちが笑顔で希望を持って生きていける社会をつくる」というビジョンを掲げて活動しています。コロナ禍で、子どもたちが遊び・学び・交流する機会が激減する中、2020年度新型コロナウイルス対応緊急支援助成(資金分配団体:一般社団法人SINKa)を活用し、「生きる力を育む子どもの居場所づくり事業」に取り組まれた同団体の代表理事・石川麻衣子さんに話を伺いました。
自身の経験から「全ての子が学べる環境づくり」を志す
Kids Code Clubは、2016年から福岡を拠点として、プログラミング学習の機会を小中学生の子どもたちに無料で提供する活動を行っています。
「私たちの目的は、プログラミングのスキルをただ身につけてもらうことではありません。あくまでもプログラミング学習は手段であって、それを通して子どもの生きる力を育み、居場所をつくりたいと思っているのです」と石川さん。その思いは、ご自身の原体験から生まれています。

石川さんはいわゆる貧困世帯で生まれ育ち、学費を払えずに九州大学を中退。「ひとり暮らしで日雇いバイトを続ける毎日。月給の仕事に就きたくても数日先のお金に困る状態で、生活はどん底でした」と当時を振り返ります。そんな中、友人から古いパソコンをもらい、ウェブサイトを作る方法を独学で懸命にマスターし、2008年に28歳でウェブの制作会社を立ち上げました。
2015年、貧困であるがゆえに子どもが命を落とすという悲惨な事件が千葉で起こり、連日報道されました。この事件に、母親になっていた石川さんは大きなショックを受けたといいます。
「私は生きる力を身につけて、貧困からどうにか生活を立て直しました。自分にできることがないかと考え、ちょうどその頃に注目され始めたプログラミング教育に着目して、どんな子でもプログラミングを学べる環境をつくろうと決意しました。」
海外とつなぐイベントやクラブを無料で開催
2016年、小中学生を対象として、プログラミングを体験できる無料のイベントをスタート。本業の傍ら、石川さんの思いに賛同したボランティアの人たちと一緒に、できる範囲で活動していました。
そのうち、シアトルのNPOから声がかかり、日本とシアトルをネット中継でつなぎ、現地の名だたるIT企業に勤める日本人エンジニアなどから学ぶ「英語で学ぶコンピュータ・サイエンス」プロジェクトも開始。当時、インターネットを介して授業を受けるスタイルは珍しく、先進的でした。
そして2020年、日本でコロナ感染症が拡大し、4月に全国一斉休校になりました。子どもが学ぶ機会や交流する場、居場所がなくなり、孤立してしまうことに危機感を抱いた石川さんは、「放課後プログラミングクラブ」を立ち上げました。毎週火曜と金曜の17:00~18:00、小中学生がオンラインで集まってプログラミングで作品づくりに取り組むクラブです。
「コロナ禍で休校が増えて、『子どもがずっと家にいて友達と遊べないので、どうにかしたい』と登録する親子がどんどん増えていきました」。
2020年11月からこれまで128回開催し、会員311人、参加者はのべ2307人にのぼります(2022年1月末現在)。

放課後プログラミングクラブでは、子どもたちがゲームやアニメなどの作品づくりに、自分のペースで取り組んでいます。バーチャル空間を会場として、分からないことはスタッフや子ども同士でサポート。活動を通して、子どもに変化も生まれてきたそうです。
「クラブに参加するのは元気な子やシャイな子、不登校や病気の子など、たくさんいます。最初はパソコンのカメラもマイクもオフにして、人がいない端っこにいた子が、何度か参加するうちに人の輪に近づいて、マイクをオンにして話し出すこともあります。いろんな背景を持つ子どもたちが、自分のペースで成長していると実感しています。子どもの居場所づくりは一朝一夕にはできなくて、継続していることで確実に変化が生まれています。」
他にもLINEでメッセージを送っても最初は無反応だった保護者から返信が来て「ありがとう。」と言われたり、ITは分からないと拒絶していた保護者が興味を持つケースもありました。
「オンラインでも、人と人がコミュニケーションを取り続けることは、すごく力があるんですよね。」と手応えを語ってくださいました。
コロナ禍でも、オンラインで成長できる居場所に
2021年には、SINKaが資金分配団体となって実施した新型コロナウイルス対応緊急支援助成に実行団体として採択されて、「生きる力を育む子どもの居場所づくり事業」として活動を実施しました。
「Kids Code Clubの活動は全て無料で、講師やスタッフは全員プロボノ。大学や企業、行政、NPOの皆さんから会場や設備を提供いただき、支えてもらっています。本業の傍ら手弁当でやってきて、ファンドレイジングに力を入れる余裕がありませんでした。でも、背中を押してくれる人たちがいて、今回、SINKaさんの公募にチャレンジして、本当に良かったと思っています。」
応募に際しては、自分たちの強みを知るため、活動に参加する保護者など40人にヒアリングを行い、事業計画を練り上げました。
「話を聞いてみると『クラブが毎回楽しみで、パソコンの前で正座して待っている』とか、子どもたちの居場所になっていること、いきいきと楽しく成長するきっかけになっていることがよく分かりました。私たちは子どもが楽しむことを第一にして、おまけとして21世紀型スキルや自己肯定感、創造力、ITリテラシーなどがついてくると考えています。その思いが少しずつ形になっていると思えました」

たくさんの方にご支援頂きながら、親子に多様でグローバルなIT体験・プログラミング学習の機会と、孤立を防ぐ居場所を展開。事業期間を通じて、福岡エリアで約300世帯、全国で約600世帯、のべ2,500名以上に提供し、コロナ禍の孤立と心の貧困の解消に尽力してきました。
主な活動と参加者数の実績は以下のとおりです。
主な活動と参加者数の実績
- 放課後プログラミングクラブ 78回開催 のべ1850名参加
- 英語でまなぶコンピュータ・サイエンス 13回開催 のべ370名参加
- 親子で1分間プログラミング 21回開催 のべ300名参加
- プログラミング学習サイトの運営 利用者数22万人(UU)
- 子ども作品サイトの構築(会員のみ利用可)
- PC操作やプログラミング学習に関するチャット相談受付 やりとり数1,000件以上
子どもの力を信じ、みんなで社会を変えていきたい
そして、Kids Code Clubは、次に向けて動き出しています。
「もともとパソコン環境がない子どもにも参加してほしいという思いがありました。今回の事業で自分たちの活動は意義があると自信を持てたので、次に2021年度新型コロナウイルス対応緊急支援助成(資金分配団体:READYFOR株式会社・特定非営利活動法人 キッズドア)の実行団体へ採択いただき、パソコンとWi-Fi30セットを無料貸与できました。他の団体さんと連携して、丁寧に研修した上で貸し出し、放課後クラブに入ってもらってサポートしています。」
石川さんには、さらなる夢があります。それは「お金がなくても子どもたちが学べる仕組みをつくる」こと。
「今はお金を払って大人に教えてもらうことが基本になっていて、お金がなければ教育を受けられません。子どもが支援を受けるだけでなく、子どもが誰かに教えられる仕組みができれば、少し光が見えてくると思っています。」
そこで、放課後クラブに「キッズTA(ティーチング・アシスタント)」制度を導入。プログラミング初心者をサポートしてくれる小中学生を募集したところ、予想以上に18人が集まりました。

「放課後クラブは大人がつきっきりで教えるのではなく、子ども同士でも教え合うコミュニティになっています。それが世界に広がれば、どんな家庭環境の子でも学べる社会になるはず。そんな夢に向けて、小さな一歩を踏み出したところです。支援や参加をしてくださる皆さんのおかげでチャレンジできることに深く感謝していますし、必ず成果をあげたいと思っています。
子どもが子どもに教えられるのか疑問に思われるかもしれません。でも、きっとできると大人が信じて任せることで、今まで変わらなかったものが少しずつ変わっていくのではないでしょうか。私たちは子どもたちの力を信じて、子どもの力を原動力に、みんなで社会を変えていきたいと考えています。」と力強く語ってくださいました。
■休眠預金活用事業に参画しての感想は?
コロナの影響で本業の仕事が減る中、ボランティアで続けていくことは精神的にも厳しい状況になっていました。応募するにあたって自分たち団体の強みを徹底的に洗い出せたこと、採択という形で活動を認めてもらえたことをとてもうれしく思っています。そして、SINKaさんには先を見据えた伴走支援をしていただき、感謝しています。この実績をきっかけとして活動を広げていきたいです。(石川さん)
■資金分配団体POからのメッセージ
Kids Code Clubさんは「お金がなくても教育が受けられる社会をつくる」という壮大なビジョンに向かわれていて、私たちも一緒に向かっていきたいと思っています。いい成功事例として、ぜひどんどん表に出てほしいです。(SINKa 濱砂さん)
石川さんとは棚卸と評価についてよく話をしました。とても努力家で、しっかり考えて行動されています。大きく羽ばたかれるように応援していきたいです。(SINKa 外山さん)
【事業基礎情報I】
実行団体 | 一般社団法人Kids Code Club |
事業名 | 生きる力を育む子どもの居場所づくり事業 |
活動対象地域 | 福岡県 |
資金分配団体 | 一般社団法人 SINKa |
採択助成事業 | 福岡子ども若者、困窮者応援笑顔創造事業 |
【事業基礎情報II】
実行団体 | 一般社団法人Kids Code Club |
事業名 | 生きる力を育む子どもの居場所・体験事業 |
活動対象地域 | 福岡県・全国 |
資金分配団体 | READYFOR株式会社 (コンソーシアム構成団体:特定非営利活動法人 キッズドア) |
採択助成事業 | 深刻化する「コロナ学習格差」緊急支援事業 |
その助成先のひとつ、認知症の人や介護家族が、いきいきと自分らしく暮らせるためのピアサポートネットワークの構築と人材育成事業をおこなう、公益社団法人認知症の人と家族の会の活動紹介です。
公益社団法人認知症の人と家族の会
https://www.alzheimer.or.jp/
その助成先のひとつ、ひきこもりの本人と家族が孤立しないための、ひきこもりピアサポーター養成研修及び実践活動を全国展開する事業をおこなう特定非営利活動法人KHJ全国引きこもり家族会連合会の活動紹介です。
特定非営利活動法人KHJ全国引きこもり家族会連合会
https://www.khj-h.com/
その助成先のひとつ、DV被害にあった女性とその子供たちのための支援事業をおこなう、特定非営利活動法人女性ネットSaya-Sayaの活動紹介です。
特定非営利活動法人Saya-Saya
https://saya-saya.net/