テクノロジー体験を通して、全ての子どもが笑顔で未来を切り拓ける社会へ | Kids Code Club

一般社団法人Kids Code Clubは、「子どもへのテクノロジー学習の支援を通じて、子どもたちが笑顔で希望を持って生きていける社会をつくる」というビジョンを掲げて活動しています。コロナ禍で、子どもたちが遊び・学び・交流する機会が激減する中、2020年度新型コロナウイルス対応緊急支援助成(資金分配団体:一般社団法人SINKa)を活用し、「生きる力を育む子どもの居場所づくり事業」に取り組まれた同団体の代表理事・石川麻衣子さんに話を伺いました。

自身の経験から「全ての子が学べる環境づくり」を志す

Kids Code Clubは、2016年から福岡を拠点として、プログラミング学習の機会を小中学生の子どもたちに無料で提供する活動を行っています。
「私たちの目的は、プログラミングのスキルをただ身につけてもらうことではありません。あくまでもプログラミング学習は手段であって、それを通して子どもの生きる力を育み、居場所をつくりたいと思っているのです」と石川さん。その思いは、ご自身の原体験から生まれています。

Kids Code Club 代表理事 石川麻衣子さん

石川さんはいわゆる貧困世帯で生まれ育ち、学費を払えずに九州大学を中退。「ひとり暮らしで日雇いバイトを続ける毎日。月給の仕事に就きたくても数日先のお金に困る状態で、生活はどん底でした」と当時を振り返ります。そんな中、友人から古いパソコンをもらい、ウェブサイトを作る方法を独学で懸命にマスターし、2008年に28歳でウェブの制作会社を立ち上げました。

2015年、貧困であるがゆえに子どもが命を落とすという悲惨な事件が千葉で起こり、連日報道されました。この事件に、母親になっていた石川さんは大きなショックを受けたといいます。
「私は生きる力を身につけて、貧困からどうにか生活を立て直しました。自分にできることがないかと考え、ちょうどその頃に注目され始めたプログラミング教育に着目して、どんな子でもプログラミングを学べる環境をつくろうと決意しました。」

海外とつなぐイベントやクラブを無料で開催

2016年、小中学生を対象として、プログラミングを体験できる無料のイベントをスタート。本業の傍ら、石川さんの思いに賛同したボランティアの人たちと一緒に、できる範囲で活動していました。
そのうち、シアトルのNPOから声がかかり、日本とシアトルをネット中継でつなぎ、現地の名だたるIT企業に勤める日本人エンジニアなどから学ぶ「英語で学ぶコンピュータ・サイエンス」プロジェクトも開始。当時、インターネットを介して授業を受けるスタイルは珍しく、先進的でした。

そして2020年、日本でコロナ感染症が拡大し、4月に全国一斉休校になりました。子どもが学ぶ機会や交流する場、居場所がなくなり、孤立してしまうことに危機感を抱いた石川さんは、「放課後プログラミングクラブ」を立ち上げました。毎週火曜と金曜の17:00~18:00、小中学生がオンラインで集まってプログラミングで作品づくりに取り組むクラブです。

「コロナ禍で休校が増えて、『子どもがずっと家にいて友達と遊べないので、どうにかしたい』と登録する親子がどんどん増えていきました」。
2020年11月からこれまで128回開催し、会員311人、参加者はのべ2307人にのぼります(2022年1月末現在)。

(左)コロナ禍以前に対面でやっていた時の「英語で学ぶコンピュータ・サイエンス」の様子、(右)事業期間中、オンラインに移行した「英語で学ぶコンピュータ・サイエンス」の様子

放課後プログラミングクラブでは、子どもたちがゲームやアニメなどの作品づくりに、自分のペースで取り組んでいます。バーチャル空間を会場として、分からないことはスタッフや子ども同士でサポート。活動を通して、子どもに変化も生まれてきたそうです。

「クラブに参加するのは元気な子やシャイな子、不登校や病気の子など、たくさんいます。最初はパソコンのカメラもマイクもオフにして、人がいない端っこにいた子が、何度か参加するうちに人の輪に近づいて、マイクをオンにして話し出すこともあります。いろんな背景を持つ子どもたちが、自分のペースで成長していると実感しています。子どもの居場所づくりは一朝一夕にはできなくて、継続していることで確実に変化が生まれています。」

他にもLINEでメッセージを送っても最初は無反応だった保護者から返信が来て「ありがとう。」と言われたり、ITは分からないと拒絶していた保護者が興味を持つケースもありました。
「オンラインでも、人と人がコミュニケーションを取り続けることは、すごく力があるんですよね。」と手応えを語ってくださいました。

コロナ禍でも、オンラインで成長できる居場所に

 2021年には、SINKaが資金分配団体となって実施した新型コロナウイルス対応緊急支援助成に実行団体として採択されて、「生きる力を育む子どもの居場所づくり事業」として活動を実施しました。

「Kids Code Clubの活動は全て無料で、講師やスタッフは全員プロボノ。大学や企業、行政、NPOの皆さんから会場や設備を提供いただき、支えてもらっています。本業の傍ら手弁当でやってきて、ファンドレイジングに力を入れる余裕がありませんでした。でも、背中を押してくれる人たちがいて、今回、SINKaさんの公募にチャレンジして、本当に良かったと思っています。」

応募に際しては、自分たちの強みを知るため、活動に参加する保護者など40人にヒアリングを行い、事業計画を練り上げました。

「話を聞いてみると『クラブが毎回楽しみで、パソコンの前で正座して待っている』とか、子どもたちの居場所になっていること、いきいきと楽しく成長するきっかけになっていることがよく分かりました。私たちは子どもが楽しむことを第一にして、おまけとして21世紀型スキルや自己肯定感、創造力、ITリテラシーなどがついてくると考えています。その思いが少しずつ形になっていると思えました」

(左)放課後プログラミングクラブのバーチャル会場の様子、(右)子どもたちのプログラミング作品。会員専用の作品サイトに掲載されています。

たくさんの方にご支援頂きながら、親子に多様でグローバルなIT体験・プログラミング学習の機会と、孤立を防ぐ居場所を展開。事業期間を通じて、福岡エリアで約300世帯、全国で約600世帯、のべ2,500名以上に提供し、コロナ禍の孤立と心の貧困の解消に尽力してきました。
主な活動と参加者数の実績は以下のとおりです。

主な活動と参加者数の実績

  • 放課後プログラミングクラブ 78回開催 のべ1850名参加
  • 英語でまなぶコンピュータ・サイエンス 13回開催 のべ370名参加
  • 親子で1分間プログラミング 21回開催 のべ300名参加
  • プログラミング学習サイトの運営 利用者数22万人(UU)
  • 子ども作品サイトの構築(会員のみ利用可)
  • PC操作やプログラミング学習に関するチャット相談受付 やりとり数1,000件以上

子どもの力を信じ、みんなで社会を変えていきたい

そして、Kids Code Clubは、次に向けて動き出しています。

「もともとパソコン環境がない子どもにも参加してほしいという思いがありました。今回の事業で自分たちの活動は意義があると自信を持てたので、次に2021年度新型コロナウイルス対応緊急支援助成(資金分配団体:READYFOR株式会社・特定非営利活動法人 キッズドア)の実行団体へ採択いただき、パソコンとWi-Fi30セットを無料貸与できました。他の団体さんと連携して、丁寧に研修した上で貸し出し、放課後クラブに入ってもらってサポートしています。」

石川さんには、さらなる夢があります。それは「お金がなくても子どもたちが学べる仕組みをつくる」こと。
「今はお金を払って大人に教えてもらうことが基本になっていて、お金がなければ教育を受けられません。子どもが支援を受けるだけでなく、子どもが誰かに教えられる仕組みができれば、少し光が見えてくると思っています。」

そこで、放課後クラブに「キッズTA(ティーチング・アシスタント)」制度を導入。プログラミング初心者をサポートしてくれる小中学生を募集したところ、予想以上に18人が集まりました。

(左)無償貸与を行っているパソコン。プログラミング作業に耐えられる性能のものを採用しています。(右)キッズTAたちが担当テーブルで他の子どもたちをサポートしている様子。

「放課後クラブは大人がつきっきりで教えるのではなく、子ども同士でも教え合うコミュニティになっています。それが世界に広がれば、どんな家庭環境の子でも学べる社会になるはず。そんな夢に向けて、小さな一歩を踏み出したところです。支援や参加をしてくださる皆さんのおかげでチャレンジできることに深く感謝していますし、必ず成果をあげたいと思っています。

子どもが子どもに教えられるのか疑問に思われるかもしれません。でも、きっとできると大人が信じて任せることで、今まで変わらなかったものが少しずつ変わっていくのではないでしょうか。私たちは子どもたちの力を信じて、子どもの力を原動力に、みんなで社会を変えていきたいと考えています。」と力強く語ってくださいました。

■休眠預金活用事業に参画しての感想は?
コロナの影響で本業の仕事が減る中、ボランティアで続けていくことは精神的にも厳しい状況になっていました。応募するにあたって自分たち団体の強みを徹底的に洗い出せたこと、採択という形で活動を認めてもらえたことをとてもうれしく思っています。そして、SINKaさんには先を見据えた伴走支援をしていただき、感謝しています。この実績をきっかけとして活動を広げていきたいです。(石川さん)

■資金分配団体POからのメッセージ
Kids Code Clubさんは「お金がなくても教育が受けられる社会をつくる」という壮大なビジョンに向かわれていて、私たちも一緒に向かっていきたいと思っています。いい成功事例として、ぜひどんどん表に出てほしいです。(SINKa 濱砂さん)
石川さんとは棚卸と評価についてよく話をしました。とても努力家で、しっかり考えて行動されています。大きく羽ばたかれるように応援していきたいです。(SINKa 外山さん)

【事業基礎情報I】

実行団体
一般社団法人Kids Code Club
事業名
生きる力を育む子どもの居場所づくり事業
活動対象地域福岡県
資金分配団体一般社団法人 SINKa
採択助成事業

福岡子ども若者、困窮者応援笑顔創造事業
〈2020年度緊急支援枠・随時募集3次〉

【事業基礎情報II】

実行団体一般社団法人Kids Code Club
事業名生きる力を育む子どもの居場所・体験事業
活動対象地域福岡県・全国
資金分配団体READYFOR株式会社
(コンソーシアム構成団体:特定非営利活動法人 キッズドア)
採択助成事業

深刻化する「コロナ学習格差」緊急支援事業
〈2021年度コロナ対応支援枠〉

2021年10月初旬、佐賀県と長崎県で外国人を支援する実行団体4団体と資金分配団体(佐賀未来創造基金・未来基金ながさき)がオンライン上で集まり、約2時間にわたって成果報告会を実施しました。その様子を、前半・後半の2回に分けて紹介します。今回は「前半・プレゼン編」です!

コロナ禍における外国人分野の支援を実現

日本に住む外国人の方々は、生活に関わる情報を母国語で得ることが難しいという課題があります。ある在留外国人向けに実施された調査では、在留外国人の9割が「日本語がわからないことで困った経験がある」と回答しています※。特に、新型コロナウイルス感染症や自然災害など非常事態に見舞われると、言語の壁はさらに大きな問題になります。非常事態における「母国語での情報」や「日本語学習の支援」がどれだけ心強い支えになるのかは想像に難くありません。

2020年度新型コロナウイルス対応支援助成の資金分配団体である公益財団法人 佐賀未来創造基金(コンソーシアム構成団体:一般財団法人未来基金ながさき)は、コロナ禍における外国人分野の支援を実現するため、4つの実行団体を選定し活動しています。今回の成果報告会は、その4実行団体と資金分配団体がオンライン上で集い、「新型コロナウイルス対応緊急支援助成での取り組みと成果」を共有し、その成果を発信することを目的に開催されました。会の前半では、実行団体4団体がそれぞれの休眠預金活用事業での取り組み内容についてプレゼンを行いました。以下、それぞれの団体のプレゼンの概要をご紹介します。

※在留外国人総合調査「日本語学習について」株式会社サーベイリサーチセンター(2020年9月23日)

佐賀県国際交流協会(SPIRA)「外国人住民に対する多言語情報提供事業」

報告者は、「公益財団法人佐賀県国際交流協会(SPIRA)」の矢富明徳さん
報告者は、「公益財団法人佐賀県国際交流協会(SPIRA)」の矢富明徳さん

1990年に設立されたSPIRAは、「国の国境をなくそう!」(Free Your Heart of Borders!)をスローガンとして活動しています。佐賀県に住んでいる外国人は7,031人(2020年1月1日時点)で、うち40%が技能実習生。国籍はベトナムが一番多く、次いで中国、フィリピン、韓国、朝鮮、インドネシアの順になっています。

SPIRAが「外国人住民に対する多言語情報提供事業」に取り組んだ背景には、日本語が苦手な外国人住民は日本での生活が困難な状況にあり、さらに新型コロナウイルス感染症の情報へリーチできずに深刻さを増しているという課題がありました。そこで、新型コロナウイルス感染症に関する様々な情報や手続きなどについて、母語による情報提供や相談対応ができる環境を整備することにしました。具体的には、協会職員等で対応可能な英語・中国語・韓国語・やさしい日本語に加えて、ベトナム語・インドネシア語・タガログ語・ネパール語ができる人を採用して週1回勤務してもらい、多言語による情報提供と国際交流プラザでの対応を目標としました。

事業の成果として、まずはSNS等による情報の随時発信があります。
「佐賀県から出ないようにというメッセージが出ても、外国人の方に届かなければ出かけてしまい、外国人への偏見につながりかねない。できるだけ早く伝える必要があり、随時発信してきました」と矢富さん。

Facebookの発信には絵をつけて、一目で内容が分かるように工夫しています。ホームページでも多言語で情報を提供し、ワクチン接種の流れを紹介したり、YouTubeの説明動画に10言語の字幕をつけたりしています。また、市から要請を受けて、集団接種の会場で受付から接種完了まで外国人をサポートしました。そのほか、2021年8月に佐賀で豪雨災害が起こった際には、8言語で情報を提供しました。

Facebookの発信には絵をつけて、一目で内容が分かるように工夫しています。ホームページでも多言語で情報を提供し、ワクチン接種の流れを紹介したり、YouTubeの説明動画に10言語の字幕をつけたりしています。また、市から要請を受けて、集団接種の会場で受付から接種完了まで外国人をサポートしました。そのほか、2021年8月に佐賀で豪雨災害が起こった際には、8言語で情報を提供しました。

「多言語パートナーと県職員などで力を合わせて取り組んでいます。みんなが暮らしやすい佐賀になるように今後も続けていきます」と意気込みを語りました。

ユニバーサル⼈材開発研究所「平時から備える災害時多言語発信~母語グループ設立による包括的外国人支援~」

報告者は、一般社団法人ユニバーサル人材開発研究所とコンソーシアムを組む「サワディー佐賀」代表の山路健造さん
報告者は、一般社団法人ユニバーサル人材開発研究所とコンソーシアムを組む「サワディー佐賀」代表の山路健造さん

サワディー佐賀はタイ人のネットワークを作るため、2018年にスタートした団体です。タイ料理教室や東京五輪のホストタウンとしてのおもてなし、祐徳稲荷神社への通訳ボランティアの派遣などを行い、災害時はタイ語での発信にも力を入れていました。それらの活動が評価されて、2020年度「ふるさとづくり大賞」で団体表彰(総務大臣表彰)を受賞しました。

佐賀県では災害が起こると佐賀県災害時多言語支援センターが立ち上がり、8言語で対応されます。サワディー佐賀では、行政でカバーできていない残り4%のミャンマー語・タイ語・シンハラ語に対応すべく、事業に申請しました。そして、タイをモデルケースとして、ミャンマーとスリランカのFacebookのページを作りました。今年2月にミャンマーでクーデターが起こった際は、ミャンマー人を対象としてオンラインの生活相談会も行いました。

佐賀県では災害が起こると佐賀県災害時多言語支援センターが立ち上がり、8言語で対応されます。サワディー佐賀では、行政でカバーできていない残り4%のミャンマー語・タイ語・シンハラ語に対応すべく、事業に申請しました。そして、タイをモデルケースとして、ミャンマーとスリランカのFacebookのページを作りました。今年2月にミャンマーでクーデターが起こった際は、ミャンマー人を対象としてオンラインの生活相談会も行いました。

サワディー佐賀では、通常LINEグループ(62人登録)でやり取りをしています。災害など外国人に知らせたい情報が発生した場合は、山路さんがやさしい日本語に変換し、翻訳チームがタイ語に翻訳し、タイ人メンバーがネイティブチェックをしてから発信するようにしています。ミャンマー語とシンハラ語も同様の仕組みにしました。2021年8月豪雨の際は、タイ語・ミャンマー語・シンハラ語で情報発信を行いました。

「平時からグループを組織化していたことで、スムーズな情報発信ができた。平時こそ、こういう体制を作っておくことが重要だと改めて実感しました」と山路さんは力を込めます。

山路さんは、NPOが災害情報を発信するメリットは多いと指摘します。まず、行政は公平性を担保するために同時発信に配慮するが、NPOは翻訳が完了した言語からスピーディに発信できること。翻訳のソースとして、行政の情報だけでなく新聞やテレビ、気象庁など多岐にわたる情報を扱えること。

また、「翻訳スタッフに謝金を支払えることも大きい。ボランティアでお願いしているといずれ息切れしてしまう」と山路さん。さらに、グループ化によって顔が見えているため、必要とされる情報だけ翻訳すればいいという状況ができました。

今後は、少数言語による情報を県単位ではなく広域で共有できるプラットフォームを作りたいと考えています。同事業は地球市民の会で継承し、佐賀県の企業版ふるさと納税を一つの財源とし、地域おこし協力隊をスタッフとして続けていくそうです。

Treasures of The Planet「長崎発信型在住外国人支援プロジェクト」

報告者は、「NPO法人Treasures of The Planet」理事長の松尾佳美さん
報告者は、「NPO法人Treasures of The Planet」理事長の松尾佳美さん

「長崎発信型在住外国人支援プロジェクト」では、長崎市在住の外国人を対象としてオンライン・アンケートや面接インタビューを行い、新型コロナウイルス感染症の広がりによって直面している問題を把握。多言語対応のポータルサイト(UNIVERSALAID.JP)を制作して、その結果を公開するとともに、新型コロナに関する医療や福祉情報をはじめ、長崎在住の外国人が必要としている情報を掲載して運営・管理するという事業を実施しています。プロジェクトは長崎大学の多国籍な先生や学生たちの協力のもとで進めています。

まずは学生たちとアンケートの質問事項を検討の上、12か国語に翻訳。アンケートを依頼するチラシとアンケート用のサイトを作り、約360人から回答を得ることができました。その結果を集計して、英語のレポートと、要点を11か国語に翻訳したレポートをUNIVERSALAID.JPのサイトにアップしました。また、アンケートの回答などをもとに、長崎在住の外国人が求めている情報をリストアップして、それらが掲載されているウェブサイトをピックアップ。WHO、厚生労働省、みんなの外国人ネットワーク、長崎県国際交流協会、長崎県や長崎市の国際関係や生活支援の部署などに連絡を取り、コンテンツの共有とリンク、多言語翻訳、サイトへの掲載許可をもらい、UNIVERSALAID.JPで公開しています。なお、翻訳は長崎大学の留学生グループなどにチェックしてもらっています。

サイトについてプレスリリースを出したところ、西日本新聞と長崎新聞、インドネシアのサイトで紹介されました。Googleアナリティクスによると、現在のユーザーは約490人で、リピーターが約2割になっています。

サイトについてプレスリリースを出したところ、西日本新聞と長崎新聞、インドネシアのサイトで紹介されました。Googleアナリティクスによると、現在のユーザーは約490人で、リピーターが約2割になっています。

松尾さんは「外国人の方々に話を聞いてみると、すでにあった外国人向けの情報サイトと比べて、UNIVERSALAID.JPは非常に分かりやすくて使いやすいと評価いただいています。今後は、新型コロナ感染症の情報だけでなく災害情報やゴミの出し方などいろいろな記事を掲載して、サイトを見てくれる人やリピーターを増やしていきたい」と総括しました。

フリースクールクレイン・ハーバー「在留外国人親子の日本語習得&不登校支援」

「特定非営利活動法人フリースクールクレイン・ハーバー」理事長の中村尊さん
「特定非営利活動法人フリースクールクレイン・ハーバー」理事長の中村尊さん

フリースクールクレイン・ハーバーは長崎で、不登校の子どもたちの支援を17年にわたり行ってきました。「外国人の親を持つ子どもが、日本の学校に行きづらさを感じて不登校になるケースも見てきました」と高村さん。また、同団体では、使わなくなった学生服とランドセルを生活困窮家庭やひとり親家庭に寄付する活動をしており、外国人の子どもに寄付することもありました。

そんな中、新型コロナウイルス感染症の影響で仕事を失ったり就業が困難になったりしている外国人親子を支援しようと、日本語専門学校のあさひ日本語学校と連携して事業に取り組むことにしました。事業の概要は、長崎県内在住の外国人を対象に、就労を目的とした日本語教育をオンラインで無料で行うというもので、必要に応じて子どもにも支援を行います。オンライン授業のため、離島を含めて広い範囲の外国人を支援することが可能です。県内の9市町村の役所や社会福祉業議会などにチラシを配って周知を図り、長崎新聞にも記事が掲載されました。その結果、現在4人にオンラインで授業を行っており、うち1人は実際に仕事に就くことができました。

課題としては、目標の10人になかなか届かないことが挙げられ、「問い合わせをいただいても、対面での授業がいい、夜間に授業してほしい、就業は望んでいないなどと条件が合わなかったケースもあります」とのこと。また、今のところ受講者に子どもがいないため、子どもとつながって支援した事例がないことも課題であり、「これまでとは違う子ども関係の部署や教育委員会に周知するなど、アプローチの方法を工夫していきたい」と高村さん。「コロナ禍でマイノリティの方々にしわ寄せがきている。そのような方に優しい長崎でありたいと思っています。次年度以降については、コロナの状況をみながら、どうやってニーズに対応していくかを考えて、もっと多くの外国人親子に関わっていきたい」と今後に向けての意気込みも話しました。

課題としては、目標の10人になかなか届かないことが挙げられ、「問い合わせをいただいても、対面での授業がいい、夜間に授業してほしい、就業は望んでいないなどと条件が合わなかったケースもあります」とのこと。また、今のところ受講者に子どもがいないため、子どもとつながって支援した事例がないことも課題であり、「これまでとは違う子ども関係の部署や教育委員会に周知するなど、アプローチの方法を工夫していきたい」と高村さん。「コロナ禍でマイノリティの方々にしわ寄せがきている。そのような方に優しい長崎でありたいと思っています。次年度以降については、コロナの状況をみながら、どうやってニーズに対応していくかを考えて、もっと多くの外国人親子に関わっていきたい」と今後に向けての意気込みも話しました。


資金分配団体

公益財団法人佐賀未来創造基金

(コンソーシアム構成団体:一般財団法人未来基金ながさき)

事業名

新型コロナ禍における地域包摂型社会の構築

~地域で暮らす全ての人の安心と未来をつなぐ~

対象地域佐賀県、長崎県
実行団体

★公益財団法人佐賀県国際交流協会(SPIRA)

★一般社団法人ユニバーサル人材開発研究所

★NPO法人Treasures of The Planet

★特定非営利活動法人フリースクールクレイン・ハーバー

・九州ケータリング協会

・佐賀県地域共生ステーション連絡会

・NPO法人ナガサキリハビリテーションネットワーク

・一般社団法人すまいサポートさが


★:今回の記事で紹介されている団体

「資金分配団体の公募〈通常枠〉」へ申請検討中の団体に向けて、活動中の資金分配団体にお話を伺いました。

現在JANPIAでは「資金分配団体の公募〈通常枠〉」を実施中です。2021年度 資金分配団体の公募〈通常枠〉の申請をご検討中の皆さま向けに、19年度・20年度資金分配団体である公益財団法人 公益財団法人佐賀未来創造基金 理事長 山田 健一郎さんにお話を伺いました。

佐賀未来創造基金 休眠預金活用事業 基礎情報

【採択事業】

■2019年度 通常枠 草の根活動支援事業(地域)

【事業名】人口減少と社会包摂型コレクティブインパクト事業-人口減少における3分野の地域包摂型コレクティブインパクト 

■2020年度 緊急支援枠〈初回〉(コンソーシアム申請) 
<コンソーシアム構成団体>公益財団法人佐賀未来創造基金、一般財団法人未来基金ながさき 
【事業名】新型コロナ禍における地域包摂型社会の構築-地域で暮ら全ての人の安心と未来をつなぐ 

■2020年度緊急支援枠〈随時募集1次〉(コンソーシアム申請) 
<コンソーシアム構成団体>公益財団法人佐賀未来創造基金、一般財団法人 日本未来創造公益資本財団、特定非営利活動法人 宮崎文化本舗、一般財団法人 未来基金ながさき、公益財団法人 おおいた共創基金
【事業名】新型コロナ禍における緊急被災者支援事業-九州全県の被災者の緊急・復旧・復興支援

休眠預金活用事業に申請した背景を自団体の活動と合わせて教えてください。

当初、佐賀未来創造基金では、2019年度の休眠預金活用事業にはエントリーはしないという方針でしたが、一方で地域の方々と休眠預金等活用審議会専門委員の方を招いての休眠預金活用の勉強会を実施したり、助成先となりうる団体の方へのヒアリング、県内外の中間支援組織の方々との意見交換など、さまざまな議論を重ねました。その結果、金額の規模感や複数年支援など、通常の佐賀未来創造基金で実施している助成だけでは実現できないことをでき、それに加えて評価のことも含めて、自分たちのスキルアップや現場の方々への新たな支援策のチャレンジとなることから、やったほうがよいのではないかという結論になりました。

条件としては、今までやってきた業務内容、ベースとなる助成事業は変えないこと、職員も急激に増やさないこと、加えて、エリアもいきなり広げるのではなく、まずは、佐賀県内をしっかりやっていくこと、解決すべき社会課題は全分野を対象とすることなどを確認し、それでも採択されるのであれば挑戦しようということでチャレンジさせていただきました。

助成事業を開始して1年半が経ちました。自団体や支援先に起こった変化があれば教えてください。

佐賀未来創造基金では、これまでの助成事業のやり方をベースにしながらも、休眠預金活用事業で実施する評価の観点や、ロジックモデル等を使い3年から5年後くらいの中長期でのビジョンを立てていくというのは、今までなかったチャレンジとなりました。自団体が成長するための変化や、地域への波及効果を意識しながらやっていましたので、そのチャレンジの中で「変化のきざし」が見えてきた一年半だったと思います。

また、コロナ禍での助成事業でもあったので、外的変化に対応するため、「生活困窮者の方の増加に対応するための生活困窮者と空き家をつなげるマッチング」や、「発達障がいの方々への学習支援を就学前からの支援を仕組化するアプローチ」など新たな動きも出てきました。今までになかったような「地域の中での社会課題解決へのチャレンジ」を新たな担い手の方々と、私たちと実行団体、JANPIA含め、一緒にやることができた一年半でもありました。休眠預金の活用を通じて、地域の持続可能性に少しずつ変化が見えてきた状況です。

事業統括者として、よかったこと、苦労していることはどんなことがありますか。

休眠預金活用事業の業務改善に向けては資金分配団体の有志とJANPIAで色々と話し合いをしていただいているところではあるのですが、事務手続きなど若干業務過多になっているところもあります。しかし、全体の業務の見直しの機会に恵まれ、大変であるけれど、ある意味よかったと感じています。

事務手続きや評価など、必要であるけどまだまだ工数がかかっている業務の意義や必要性・活かし方をどう実行団体に伝えていくかなど、POとしての伴走支援の方法を、いろいろと検討しながらチャレンジしているというのが現状です。

また、実行団体さんとの関係性も事業実施期間が最大3年という長期間でしっかり関わっていくプログラムなので、今取り組もうとしていることの確認をはじめ、今後の目標を達成していくために必要なことについても、我々も一緒になって考えています。大変ではありますが、「持続可能な地域づくりにどう近付いていけるか」について、実行団体さんと共にチャレンジできていることが、よかったことだと感じています。

休眠預金を活用する前後で、地域からの反応に変化はありましたか。

CSO(市民社会組織)の方々はじめ行政の方々、なにより企業の方々に関しては、休眠預金を活用したことで、信頼と期待は以前より増してきていると感じています。特に企業については、よりアプローチしやすくなりました。休眠預金の活用は、社会全体としての認知度もあるので、社会課題を解決していくための企業の役割や立ち位置、SDGsへの取り組みを引き出すいい機会として活用し、戦略的に使いこなしていきたいとも考えています。

佐賀未来創造基金としては、「通常の助成事業」と「休眠預金活用事業」とでやっていること自体はあまり変わりませんし、休眠預金活用事業は、いい意味で道具の一つだと考えています。しっかりと使いこなしながら、そもそもの地域資源の循環・活用、地域の巻き込みなどに、違った角度からチャレンジできるということに、ありがたさを感じています。

休眠預金を活用することがきっかけで、連携の拡がりはありましたか。

現在、「2019年度通常枠」、「2020年度緊急支援枠」の〈初回〉と〈随時募集1次〉で採択されています。
当初、「2019年度通常枠」では佐賀県内の地域に共通的な課題の解決への取り組みを行い、その取り組みをモデル化することで九州全体に広げ、つなげていくということを主眼にやってきました。しかし、コロナの影響を受け、その動きが若干変化して加速しているというのが現状です。

具体的には「2020年度緊急支援枠〈初回〉」では、長崎と佐賀でコンソーシアムを組んで<高齢者等の福祉分野の緊急支援>と、<多文化共生における外国人やマイノリティの方々への緊急支援>を行っています。「2020年度緊急支援枠 〈随時募集1次〉」では、九州5県で連携してコロナ禍における災害対策を連携してやっています。

これまでも中間支援組織やコミュニティ財団、ほかの助成機関との連携として、九州ブロック単位での会議や勉強会、財団の設立支援などをやってきました。そのような形で連携していた団体さんと、一蓮托生となり、具体的に一緒に仕事をしている状況になってきているというのは新しい動きですし、休眠預金活用事業でしかやれなかったことだと思っています。

佐賀未来創造基金 山田さんのインタビューの様子
佐賀未来創造基金 山田さんのインタビューの様子

休眠預金活用事業を経て、3年後・5年後にどのような社会にしていきたいですか。

休眠預金活用事業のチャンスをいただいておりますが、これは「梃子(てこ)」だと思っています。佐賀県はじめ、九州のそれぞれの地域で一緒になってチャレンジして、SDGsのゴールにも重なる目標の「誰ひとり取り残さない地域社会」へのきっかけや土台づくりをこの3年・5年で実現していきたいと考えています。

また、コロナのように想定していないことや災害がこれからも起こると考えています。そうした課題に一緒に立ち向かっていく仲間を、地域の中で、そして全国に広げていくきっかけに、この休眠預金活用事業がなればいいなと思います。そうなれば、事業そのものが良かった、悪かったという話だけではなく、地域の担い手やソーシャルセクターの仲間が増えていき、その先に持続可能な地域社会が広がっていくと感じています。

申請をご検討の団体の皆さんに、メッセージをお願いします。

休眠預金活用に関して、今でも様々な議論があるのは承知していますが、私たち佐賀未来創造基金としては、あくまでも地域を応援していく中で必要な支援策の一つとして休眠預金を活用させていただいています。同時に、休眠預金の活用は地域社会を変える大きな外的要因のひとつであることは間違いないと思いながら、この事業にチャレンジしています。

休眠預金は意思のないお金ともいわれますが、お金そのものには色はつかないからこそ、ソーシャルセクター全体で最大限に活用し、そこに意味をつけること、すなわち「助成先で色が付き、花が咲いて、地域が変わっていく」ということを実現することが求められているのだと思います。

また、国民・市民のためにあるこの制度そのものをよりよく改善していくことも、休眠預金活用事業にチャレンジしている我々がやっていくことなんだと思っています。そのためにも、地域の方々はもちろんのこと、JANPIAや他団体の皆さんとも対話し、チャレンジできる土壌を作っていくこと、チャレンジして地域をよりよくするお金にしていくことが大事なんだと思います。

休眠預金の活用は、誰もやったことがないことなので、答えはないと思っています。だからこそ、行政だけでは解決できない課題解決の担い手の育成や資金循環の環境整備を通して、持続可能な仕組みづくりをしていくことが大切です。
それぞれの地域で実践しながら、制度そのものも改善し、よりよい地域社会をつくっていくためには仲間が必要です。一緒にチャレンジできる仲間が増えていけばと思っております。

〈このインタビューは、YouTubeで視聴可能です! 〉

※動画では時間の関係でカットとなったお話も、記事に含んでいます。
※この動画は公募説明会で上映したものです。

(取材日:2021年5月7日)

【本記事に関する問い合わせ先】JANPIA 企画広報部 info@janpia.or.jp

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