【資金分配団体からのメッセージ〈24年夏〉】ちくご川コミュニティ財団・柳田あかねさん

休眠預金等活用法に基づく資金分配団体(助成)の公募に申請をご検討中の皆さまに向けて、2023年度通常枠・緊急支援枠、2021年度・2020年度通常枠の資金分配団体である「ちくご川コミュニティ財団」の柳田あかねさんに、休眠預金活用事業に申請した背景と現在の活動についてのお話を伺いました。 

休眠預金活用事業に申請した背景を自団体の活動と合わせて教えてください

一般財団法人ちくご川コミュニティ財団は、人の役に立ちたいという思いと活動をつなぐプラットフォームです。2019年に市民の力を得て、福岡県で初めてのコミュニティ財団として設立されました。

初めて休眠預金活用事業にチャレンジしたのは、2020年度通常枠の事業です。3か年の計画で、困難を抱える子ども若者の孤立解消と育成というテーマに絞って事業を進めました。次の2021年度通常枠の事業では、誰一人取り残さない居場所づくり、学びの場における子ども若者の孤立解消と育成というテーマで、いわゆる不登校の子ども若者をサポートする実行団体と3年間の事業を始めました。2023年度通常枠の事業では、困難を抱える家庭を取り残さない仕組みづくり、子ども若者とその家族のためのコレクティブインパクトと題した3か年の事業を始めました。さらに2023年度第4次募集の緊急支援枠の事業にチャレンジして、子育てに困難を抱える家庭へのアクセシビリティ改善事業、多様なつながりが生まれる仕組みづくりということで、限られた期間の中でとにかく支援が必要な層に、必要な支援を届けようという事業をスタートさせました。

ちくご川コミュニティ財団は、この4つの事業を一連の流れとして取り組んでおります。

申請を行うために準備で取り組んだことを教えてください

4つの事業の申請をはじめるにあたり、最初に取り組んだことは、自団体のメンバーで話し合うことからでした。どこに社会課題を感じているか、どの地域でその事業を調査分析していくかなどをメンバー全員で考え、同じ目標を持つところから始めました。

次に、その対象地域の中で調査を始めました。その地域で活動している様々な市民社会組織の方々にアンケートを取り、アンケートの中で明らかになった社会課題を解決するために、市民社会組織の皆さんや行政などにヒアリングをしていきました。ヒアリングの結果を分析し、評価アドバイザーにも相談しながら、事業設計を行いました。

実行団体の伴走支援の内容や工夫していることを教えてください

私たちの伴走支援はすごく強力で、すごく濃密なものになっています。また、分野も多岐にわたっております。

例えば、休眠預金活用事業ですごく大事されている評価です。事前評価、中間それから事後、それぞれの評価のフェーズに沿って伴走しています。もちろん評価に取り組むことは、ある意味負荷がかかることでもあると私たちも思っていますが、評価に取り組むことで実行団体の事業終了後に絶対、力はつくと思っていますので、出口戦略の一つとしても、評価については力を入れています。また、事業そのものの運営を持続可能なものにするための資金調達では、ファンドレイザーの資格を持つPOがしっかり実行団体の無理のないように計画を立て、その時抱えている悩みと照らし合わせながら、資金調達の計画を一緒に立てていきます。広報の面では、例えば、伝わるウェブサイトにするにはどうしたらいいのか、定款や規程類をどういうところにおけば団体が信頼を得られるかかなども、一緒に考えています。

それから日々、受益者や支援してくれる方に向けて、あるいはその地域の行政や企業の方々に向けても、様々なステークホルダーごとの情報伝達の仕方について一緒に考えています。SNSだけではなく、紙で作るニュースレターなどの定期刊行物、アニュアルレポートの発行や編集のアドバイスもしています。

休眠預金活用事業を通じて、よかったことについて教えてください

休眠預金活用事業で一番いいと思うのは、三層構造だということです。JANPIAと資金分配団体と実行団体が同じ目標に向かって社会課題解決のために走っていく、この仕組みがすごくいいなと私は思っています。資金分配団体である私たちが助成金を交付するというフローにはなっていますが、お金を届けだけではなくて、実行団体の伴走も行います。また、何より資金分配団体の私たち自身も、JANPIAに伴走されており、3者そろって同じ目標に向かっていけるのが一番いいと思っているポイントにです。

申請を考えている方へメッセージをお願いします

休眠預金活用事業の資金分配団体になると、たくさんの仲間と出会うことができます。例えば、ちくご川コミュニティ財団の場合、最初はたったひとりのPOしかいませんでしたが、事業を始めて4年目の今は6人のPOがいます。自分たちの団体での仲間がだんだん増えていくだけではなく、地域で一緒に社会課題を解決するための仲間、つまり実行団体の方々と出会うことができます。

さらに、全国にいる資金分配団体の仲間と出会うことができます。横のつながりがどんどん広がっていくことによって、自分たちが日々やりたいことや解決したいことに向けてグッと背中を押してもらえる。そんな存在に、この休眠預金活用事業を通して出会えると思っています。

ぜひ、資金分配団体にチャレンジして、まだ出会っていない仲間のに出会ってください。

〈このインタビューは、YouTubeで視聴可能です! 〉



(取材日:2024年6月13日)

休眠預金等活用法に基づく資金分配団体(助成)の公募申請をご検討中の皆さま向けて2023年度通常枠・緊急支援2021年度・2020年度通常枠の資金分配団体である「ちくご川コミュニティ財団」の柳田あかねさんに、休眠預金活用事業に申請した背景と現在の活動についてのお話を伺いました。

2024年7月17日、JANPIA主催・九州経済団体連合会共催の休眠預金活用団体×企業「SDGsへの貢献につなげる九州マッチング会成果報告会」を福岡市の電気ビル共創館にて開催しました。会場とオンラインのハイブリット開催で、参加者は150名を超え、関心の高さがうかがえました。

2024年7月17日、休眠預金活用団体(NPO等)×企業「SDGsへの貢献につなげる九州マッチング会成果報告会」が開催されました。先立って2023年11月に同会場で実施したマッチング会には、21の実行団体と企業30社が参加。本会では、そこから生まれた30連携(協議中案件含む)の中から5事例についてご紹介しました。

<プログラム>

14:00~JANPIA・九経連 開会の挨拶
14:10~休眠預金活用事業の概要の紹介
14:30~事例紹介(5つの事例)
15:50~パネルディスカッション(5事例の登壇企業)
17:00クロージング

開会の挨拶・休眠預金活用事業の概要の紹介

まずはJANPIAシニア・プロジェクト・コーディネーターの鈴木均、続いて九州経済連合会の堀江広重専務理事が開催の挨拶を行いました。次に、鈴木が休眠預金活用事業の概要を紹介しました。

JANPIAからの挨拶 JANPIA シニア・プロジェクト・コーディネーター 鈴木 均

 動画〈YouTube〉|JANPIAからの挨拶[外部リンク]

九州経済連合会からの挨拶 九州経済連合会 専務理事 堀江広重氏

 動画〈YouTube〉|九州経済連合会からの挨拶[外部リンク]

休眠預金活用事業の概要の紹介 JANPIA シニア・プロジェクト・コーディネーター 鈴木 均

動画〈YouTube〉|休眠預金活用事業の概要の紹介[外部リンク]

資料〈PDF〉|休眠預金活用事業の概要の紹介 [外部リンク]

連携が実現した5つの事例をご紹介

5つの事例紹介では、それぞれ連携企業と実行団体、及びコーディネーター(資金分配団体)が順に登壇して、今回の取り組みや成果、思いなどについて話をしました。福岡出身で京都市ソーシャルイノベーション研究所(SILK)の井上良子氏がコーディネーターを務めました。

ファシリテーター紹介 京都市ソーシャルイノベーション研究所(SILK) 井上 良子氏

 動画〈YouTube〉|ファシリテーター紹介[外部リンク]

事例紹介1|耕作放棄地の活用による事業連携

連携団体の株式会社フリップザミントは、耕作放棄地でハーブを栽培し、フレグランスやお茶などを作る事業を行っています。連携企業の株式会社サワライズは、マッチング会で同社のプレゼンを聞いて、耕作放棄地や廃棄されるものを活用する意義を認識。お互いの課題解決と強みに注目して、幅広い自社の事業と連携する可能性を検討しました。その結果、敷地内でバジルの栽培、ヘアサロン事業で香りの活用、地域イベントでワークショップの企画を行いました。コーディネーターの一般社団法人SINKaは、フリップザミントはマッチング会で4社と縁があり、そのうちサワライズと連携を進めていて、今後一緒に社会インパクトを重視するビジネスを作ることを期待していると語りました。

事例紹介1|耕作放棄地の活用による事業連携
【連携企業】株式会社サワライズ
【連携団体】株式会社フリップザミント
【コーディネーター】一般社団法人SINKa

事例紹介2|職業体験会から始まる就労支援

連携団体のNPO法人未来学舎は、不登校の子どもや社会とつながれない若者を対象に、スクール事業やカフェの運営を行っています。連携企業の株式会社にしけいは、空港の手荷物検査業務などを行う警備会社で、人手不足や企業認知度の向上、SDGsへのさらなる活動に課題を感じていました。そこで、未来学舎の子どもたちに、にしけいが手荷物検査の職業体験会を実施。和気あいあいとした雰囲気で、参加した子どもから「素敵な仕事だなと思いました」「危険なものを1ミリも見逃さない意識で仕事に従事されているところがかっこいい」などの感想が聞かれて、双方が手応えを感じていました。長い目で就労につながっていければとの思いで連携を進めていきます。コーディネーターの一般財団法人ちくご川コミュニティ財団は、マッチング前に就労というニーズを把握し、資金分配団体も含めた関係構築が重要だったと話しました。

事例紹介2|職業体験会から始まる就労支援

【連携企業】株式会社にしけい
【連携団体】NPO法人未来学舎
【コーディネーター】一般財団法人ちくご川コミュニティ財団

動画〈YouTube〉|事例紹介2[外部リンク]

資料〈PDF〉|【連携企業】株式会社にしけい [外部リンク]

資料〈PDF〉|【連携団体】NPO法人未来学舎 [外部リンク]

資料〈PDF〉|【コーディネーター】一般財団法人ちくご川コミュニティ財団 [外部リンク]

事例紹介3|プロボノによる経理業務支援

連携団体の一般社団法人熊本県こども食堂ネットワークは、子ども食堂を運営する有志らが設立した団体です。11月のプレゼンで5つの課題を発表し、その中の1つは会計ソフトを導入したものの活用できていないという内容でした。そこで、会計監査のプロであるPwC JAPAN有限責任監査法人福岡事務所が連携企業として手を挙げました。PwCでは、担当者が会計やシステムに強みのある5人のチームを編成。団体が自走できることを目指して、シンプルなマニュアルを提供するとともに、団体の事務所を訪れて現場支援にあたりました。コーディネーターの認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえは、情報を開示し切ってプロの力をお借りできて、経営の透明性という大事なところをサポートしていただいたと振り返りました。

事例紹介3|プロボノによる経理業務支援

【連携企業】PwC Japan 有限責任監査法人 福岡事務所
【連携団体】一般社団法人熊本県こども食堂ネットワーク
【コーディネーター】認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ

動画〈YouTube〉|事例紹介3[外部リンク]

資料〈PDF〉|【連携企業】PwC Japan 有限責任監査法人 福岡事務所 [外部リンク]

資料〈PDF〉|【連携団体】一般社団法人熊本県こども食堂ネットワーク [外部リンク]

資料〈PDF〉|【コーディネーター】認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ [外部リンク]

事例紹介4|フードドライブから始める街づくり

連携団体の認定NPO法人フードバンク北九州ライフアゲインは、子どもの負の連鎖を断ち切るための手段として、フードバンク事業を展開しています。連携企業の株式会社西鉄ストアは、フードバンクに興味があったものの今まで実現する機会がなく、今回のマッチングをきっかけに北九州の2店舗で初めて実施しました。お客様や従業員から寄付が集まり、企業の価値向上や従業員の教育、自治体との関係性にもプラスの影響があったとのこと。今後も街の課題を解決するスーパーを目指して活動していきたいと思いを語りました。コーディネーターの一般社団法人全国フードバンク推進協議会は、間接的に実行団体の事業成果を高めることで最終受益者に支援を届けられて、企業のSDGsの受け皿にもなったと話しました。

事例紹介4|フードドライブから始める街づくり

【連携企業】株式会社西鉄ストア
【連携団体】認定NPO法人フードバンク北九州ライフアゲイン
【コーディネーター】一般社団法人全国フードバンク推進協議会

動画〈YouTube〉|事例紹介4[外部リンク]

 資料〈PDF〉|【連携企業】株式会社西鉄ストア [外部リンク]

 資料〈PDF〉|【連携団体】認定NPO法人フードバンク北九州ライフアゲイン [外部リンク]

 資料〈PDF〉|【コーディネーター】一般社団法人全国フードバンク推進協議会 [外部リンク]

事例紹介5|団体の講師派遣による防災セミナー

連携企業の城山観光株式会社は、鹿児島で「城山ホテル鹿児島」を運営しています。11月のマッチング会で連携団体であるNPO法人YNFから被災者支援活動について話を聞き、災害支援のあり方や大規模災害への備えについて考えたいとアプローチしました。YNFが城山ホテル鹿児島を訪れ、従業員向けのセミナーを開催。ホテル周辺を視察して災害リスクの調査や備蓄倉庫のチェックも行いました。城山ホテル鹿児島にとって、大規模災害を自分事として捉え、ホテルが地域の二次避難所としても機能できると気づくきっかけになったと話しました。今後中長期的な連携関係に進めていく予定とのこと。YNFは顔の見える関係を作っておかないと、災害が起きてから協力を呼び掛けてもうまく進まないことがあると話しました。コーディネーターの認定NPO法人ジャパン・プラットフォームは、両者ができることと求めることを明確にし、すり合わせを行ったと説明しました。

事例紹介5|団体の講師派遣による防災セミナー

【連携企業】城山観光株式会社
【連携団体】NPO法人YNF
【コーディネーター】認定NPO法人ジャパン・プラットフォーム

動画〈YouTube〉|事例紹介5[外部リンク]

資料〈PDF〉|【連携企業】城山観光株式会社 [外部リンク]

資料〈PDF〉|【連携団体】NPO法人YNF [外部リンク]

資料〈PDF〉|【コーディネーター】認定NPO法人ジャパン・プラットフォーム [外部リンク]

パネルディスカッション

次に、連携企業の5人が登壇し、パネルディスカッションが行われました。まずはファシリテーターの井上氏が全員に対して「休眠預金活用事業だからこそ生まれた学びや価値はどんなところだったか」と質問を投げかけました。サワライズの猿渡氏は「休眠預金活用制度やソーシャルビジネスに触れたことがなく、アプローチ法が全く分からなかったが、マッチング会で糸口が見えてフォローもあり、やりやすくて助かった」、にしけいの勝野氏は「休眠預金活用のことを知らなかった。参加して3団体とマッチングできた。日頃のビジネス上のお付き合いとは違い、団体とのつながりから地域貢献や弊社のプラスになる事業が生まれてくるのではないかと期待している」、PwCの實政氏は「11月のマッチング会のピッチでは、連携団体が自分たちの課題と支援ニーズを簡潔に話されたので、自分たちがどの団体に何を提供できるか分かりやすかった」、西鉄ストアの渡邉氏は「皆さんと打ち合わせをする中で、それぞれの立場からアドバイスやサポートいただき、流れとして素晴らしいと思った」、城山観光の安川氏は「マッチング会当日はYNFさんと挨拶できずに帰ったが、JANPIAの方から何度もフォローいただいたので今回の企画を実現できた。マッチング会では九州全域でいろいろな団体が活動していると知り、さまざまな気づきがあった」と話しました。話を受けて、井上氏は「マッチング会の前後にもフォローや仕組みができていたからこそ、これだけのマッチングが成立したと改めて浮き彫りになった」とコメントしました。

次に、井上氏から各社に個別の質問をして、話を掘り下げていきました。もともと事業連携の機会が多かったのかと問われたサワライズの猿渡氏は「いろいろやってきたが、ソーシャル分野は糸口がなかった。今回の出会いによって種から芽が出てきたので、収穫までいけたらと思う」と答えました。就労支援を意識して、どんなことをしていきたいかと聞かれたにしけいの勝野氏は「弊社では子ども防犯教室などをやっていて、社会貢献としても仕事体験や経験の場を提供していきたい。最終的ににしけいに就職する人が出てくればいいかなと思っている」と話しました。支援チームの5人について問われたPwCの實政氏は「大阪と東京、福岡のメンバーで、会計に強い人やシステムに強い人などを集めて組成したことで、うまくいった。メンバーから自分たちにも多くの気づきがあるなどポジティブなフィードバックをもらった」と言いました。フードドライブをきっかけに街づくりにも発展させていきたいという意向を井上氏に確認された西鉄ストアの渡邉氏は「企業は利益を追い求めるので、その視点からNPO等との連携メリットなどについて社内でいろいろ説明して協力してもらい、ようやく1歩を踏み出せた。いろんな地域で広がっていけばと思う」と話しました。マッチング会に参加する前にどんな課題感があったのかと問われた城山観光の安川氏は「災害がいつ起こってもおかしくないという危機感を持って取り組んでいたかというと、そうではなかった。会社として災害分野で寄付をしてきたが、YNFの江崎さんの話を聞いて、必要なものを必要なときに必要な人に届けられていたかなと考えた。江崎さんの話を多くの人に聞いてほしい」と話しました。

続いて、井上氏から全員に「今回の経験を通常業務にどのように活かすか」と問いかけました。サワライズの猿渡氏は「今回つながってみて、意外と簡単にできると分かった。地域ごとに定期的に交流を続けていくことがいいのかなと思う」、にしけいの勝野氏は「公立の学校には常設されているAEDが、フリースクールには設置されていない。地域の防災や安心安全につながっていくように、行政の力を借りるなどして、配置できるように考えていかなければと思った」、PwCの實政氏は「取り組みとして点と点が結びつくだけでなく、こういう機会のように面と面が向き合って対話することが大事だと気づいた。」、西鉄ストアの渡邉氏は「従業員が働く意義を感じてモチべーションアップにつながると思う。また、スーパーは地域のプラットフォームで公民館的な存在として、いろんな人とつながって活動が発展する中心になれればと望んでいる」、城山観光の安川氏は「ホテルに泊まっている間に幸せであるのはもちろん、ホテルに関わったステークホルダーと一緒にウェルビーイングを目指していきたい。こういう場で得たつながりをどう継続していくかを考えながら、お互いに無理しない形で関係を作っていくことが大切だと思う」と話しました。

会場の参加者から全員に「今後も継続して支援していくつもりか」と質問が出ました。サワライズの猿渡氏は「支援というよりビジネスパートナーで、一緒に利益を生み出して社会に還元する発想でやっている。弊社にはいろいろなアセットやナレッジがあり、お互いに活かせば社会にいいものを残せる、お互いに良くなればいいなと思う」、にしけいの勝野氏は「3者と連携していて、継続して取り組んでいきたい。社会貢献的な活動がいずれ自社の採用に返ってくればいいと思っている」、PwCの實政氏は「こういう機会をたくさん作っていきたい。オフィシャルには期限を決める必要があるが、関係を続けていきたい」、西鉄ストアの渡邉氏は「事業を継続し拡大していきたい。デジタルを活用したマッチングもできるといいなと思う」、城山観光の安川氏は「ホテルとしてはコロナ禍に危機に直面し、地域の持続可能性と企業の持続可能性は相関関係があると痛感した。いらっしゃるお客様が幸せであればいいだけでなく、地域全体がどう幸せで持続可能であるかを追求して、活動を継続していきたい」と答えました。

最後に井上氏は「今後やっていきたいことをアピールしてください」と伝えました。サワライズの猿渡氏は「事業をやって、しっかりマネタイズして続けていくことが重要だと思っている。弊社にはいろいろな事業があるので、興味を持っていただけたらお声がけください」、にしけいの勝野氏は「留学生の就労支援として外国人雇用を本格的にスタートするので、アドバイスをいただければうれしい。また、幼稚園や学校でやっている防犯教室を、学校に行けない子どもが通うところでも実施していきたい」、PwCの實政氏は「社会課題に興味を持つ人が入社することも増えている。今、九州・山口で6つの休眠預金を活用する団体を支援していて、横につなげられるといいなと思っている」、西鉄ストアの渡邉氏は「九州の人がさらに地域を好きになれる街づくりを行っていきたい。全てのステークホルダーとつながって、ビジネスの循環もサステナビリティも両立させる街を目指したい」、城山観光の安川氏は「何ができるか日々考えながら取り組みを進めているが、ホテルで働いているだけでは気づけないことがある。団体さんからもお声がけいただきたい」と呼びかけました。
 井上氏は「連携で大事なことは、自分たちでは見えていない可能性を一緒に探せることだと感じた。また、九州だからこその可能性があって、地域に根差す企業の皆様だからこそパートナーになりやすい。地域発のモデルケースを皆様と一緒に生み出して、ひいては日本全体が元気になればすごく楽しみだと思った」と総括しました。

パネルディスカッション

 動画〈YouTube〉|パネルディスカッション[外部リンク]

2024年7月17日に開催しました「休眠預金活用団体(NPO 等)×企業『SDGsへの貢献につなげる九州マッチング会 成果報告会』」の動画をご紹介します。

2023年11月に実施したマッチング会には休眠預金活用21実行団体と企業30社が参加。そこから生まれた30連携(協議中案件含む)の中から5事例をご紹介します。

 

<プログラム></

■開会の挨拶
動画▶ https://youtu.be/f7GXdjTRnV8

 

■九経連の挨拶
動画▶ https://youtu.be/H_8jtGmqRwo

 

■休眠預金活用事業の紹介
動画▶ https://youtu.be/XkhGd-MsrG0

 

■ファシリテーター紹介
動画▶ https://youtu.be/Og3q1HawjbQ

 

■事例紹介1:耕作放棄地の活用による事業連携
動画▶ https://youtu.be/1VRWp9P5fXU

  • 【連携企業】株式会社サワライズ
  • 【連携団体】株式会社フリップザミント
  • 【コーディネーター】一般社団法人SINKa
  •  

■事例紹介2:職業体験会から始まる就労支援
動画▶ https://youtu.be/4p8kmP31t0U

  • 【連携企業】株式会社にしけい
  • 【連携団体】NPO法人未来学舎
  • 【コーディネーター】一般財団法人ちくご川コミュニティ財団
  •  

■事例紹介3:プロボノによる経理業務支援
動画▶ https://youtu.be/RtkbsfhPzzA

  • 【連携企業】PwC Japan 有限責任監査法人 福岡事務所
  • 【連携団体】一般社団法人熊本県こども食堂ネットワーク
  • 【コーディネーター】認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ
  •  

■事例紹介4:フードドライブから始める街づくり
動画▶ https://youtu.be/zYjuYP77YPg

  • 【連携企業】株式会社西鉄ストア
  • 【連携団体】認定NPO法人フードバンク北九州ライフアゲイン
  • 【コーディネーター】一般社団法人全国フードバンク推進協議会
  •  

■事例紹介5:団体の講師派遣による防災セミナー
動画▶ https://youtu.be/YVrg4UHDLWE

  • 【連携企業】城山観光株式会社
  • 【連携団体】NPO法人YNF
  • 【コーディネーター】認定NPO法人ジャパン・プラットフォーム
  •  

■パネルディスカッション
動画▶ https://youtu.be/xmSSFeMiJJQ

バランスの良い食事とあたたかい団らんは、子どもの心身の健やかな成長に欠かせません。各地の「子どもの居場所」でボランティアメンバーたちが愛情を込めて準備している食卓には、民間企業からもさまざまな支援が寄せられているのをご存知でしょうか。地域に根差した企業が地元の新鮮な食材を寄附したり、全国に展開する食品企業が出来立てのお弁当を提供したりしながら、それぞれの強みを生かして子どもたちの食事を支えているのです。資金分配団体:全国食支援活動協力会の実行団体である一般社団法人コミュニティシンクタンク北九州や社会福祉法人那覇市社会福祉協議会と連携してユニークな支援を展開する株式会社吉野家と響灘菜園株式会社の担当者に、支援に寄せる思いを聞きました。

子どもを思う地域の人々をトマトがつなぐ|響灘菜園株式会社

関門海峡の北西に広がる響灘に面した響灘菜園株式会社は、食品大手のカゴメ株式会社(カゴメ)と電力会社の電源開発株式会社(Jパワー)によって設立され、2006年からトマトの通年栽培を行っています。敷地内には、東京ドームや福岡ドームよりも広大な8.5ヘクタールにおよぶ温室があり、ハイテクな栽培技術を駆使して20万本のトマトを栽培しており、年間の収穫量は3000トンに上ります。

そんな同社は、「トマトのファンを増やしたい」が口ぐせだという猪狩英之社長の強い後押しを受け、自社のトマトを通じた社会貢献に熱心に取り組んでいます。特に、市内の子ども食堂に対する支援は積極的で、コミュニティシンクタンク北九州が事務局を務める「こども食堂ネットワーク北九州」を通じて、年間2500キロ、約2万個のトマトを無償で提供しているほか、市内の大学や企業などと連携し、トマトを使ったレトルトカレーの開発にも取り組んでいます。
同社が手塩にかけて育てたトマトによって、子どもの見守りや、魅力的なコミュニティづくりに意欲を燃やす地元の人々が有機的につながり、思いが広がっていく様子を二度にわたって取材しました。誇りを持って菜園の中で働く同社の社員たちの姿とともに、ぜひお目通しください。

コラム | 響灘菜園 | トマトカレーがつなぐ思いの循環.pdf [外部リンク]

コラム | 響灘菜園 | トマトを通じて地域に貢献.pdf [外部リンク]

使命感から生まれた新しい寄附文化で広がる笑顔|株式会社吉野家

近年、日本では、所得が全国平均の半分に満たない、貧困状態の家庭で暮らす子どもや、一人で孤独に食事することが常態化している子どもが増加し、成長への悪影響が強く懸念されています。
株式会社吉野家は、未来を担う子どもたちの状況を憂い、「食に携わる企業として貢献したい」という意識を抱いていた河村泰貴・代表取締役社長のリーダーシップの下、2020年に子ども支援事業の立ち上げについて検討を開始しました。当初は連携先の選定に苦労していましたが、社会福祉法人那覇市社会福祉協議会が運営する「こども食堂サポートセンター那覇」との出会いを機に、両者は強力なタッグを組んで支援の形やオペレーション方法を詰めていき、同年9月には那覇市内の店舗で初となる牛丼弁当の配布にこぎつけました。
同社はその後、この方法を他の都市にも横展開し、各地の社会福祉協議会と連携しながら支援を広げています。プロジェクトの進捗や子どもたちの反応については全国1100店舗のスタッフにも報告を欠かさず、社を挙げて思いを共有するよう努めているうえ、他の飲食業の経営陣にもノウハウを積極的に伝えているという同社から伝わってくる使命感と矜持、そして芽吹きつつある新しい寄付文化の機運を、ぜひご覧ください。

(いずれも吉野家提供)

コラム | 吉野家 | 一杯の牛丼に思いをのせて.pdf [外部リンク]

■ 事業基礎情報【1】

実行団体一般社団法人 コミュニティシンクタンク北九州
事業名⼦ども食堂ネットワーク北九州機能強化事業
活動対象地域福岡県北九州市
採択事業2019年度通常枠

■ 事業基礎情報【2】

実行団体社会福祉法人 那覇市社会福祉協議会
事業名こども食堂等支援事業〈2019年度通常枠〉
活動対象地域沖縄県那覇市
資金分配団体一般社団法人 全国食支援活動協力会
採択事業2019年度通常枠

学校帰りや週末に地元の子どもたちが三々五々集まり、一緒に食事をしたり、遊んだり、宿題をしたりしながら思い思いに過ごす「子どもの居場所」。地域により活動の内容はさまざまですが、子どもたちが年齢を超えて交流し、大人と触れ合い、さまざまな経験を重ねて健やかに成長してほしいという運営者たちの願いは同じです。2019年度の休眠預金を活用した「こども食堂サポート機能設置事業」(資金分配団体:一般社団法人全国食支援活動協力会)の支援を受け、一般社団法人コミュニティシンクタンク北九州と社会福祉法人那覇市社会福祉協議会が物資の供給や助成金の情報提供、ネットワーク化支援などを行っている居場所の中から9カ所を取り上げ、活動に込められた思いを取材しました。

行政とともに特色あるコミュニティづくりを通じた子どもの見守りを|一般社団法人 コミュニティシンクタンク北九州

製鉄や石炭産業の発展に伴い、戦後いち早く復興事業が進められ、官営八幡製鐵所をはじめ多くの近代化産業遺産を擁する北九州市。都心としてにぎわう小倉北区や、戦前の駐屯地が農地として払い下げられ宅地開発が進められてきた小倉南区、製鉄所の遊休地を生かした再開発が進む八幡東区など、地域によって特色のある街づくりが進められている同市ですが、その一方で、保護者の帰宅が遅い家庭が少なくありません。
そんな北九州市にある「子どもの居場所」は、市が自治会やPTA、警察、消防と連携して設置した「まちづくり協議会」の「市民センター」で活動していたり、フードバンクを行うNPOのサポートを受けながら食事支援や学習支援、生活習慣の習得支援に取り組んでいたり、女性の生理用品を配布していたりと、活動の内容も形態もさまざまです。しかし、どの居場所も、地元の子どもの見守りやコミュニティづくりに熱い思いを寄せる人たちが、「子ども食堂ネットワーク北九州」(一般社団法人コミュニティシンクタンク北九州がコーディネーターを担当)を通じて、北九州市役所や教育委員会を巻き込みながら活動を広げてきました。
2020年3月頃から始まったコロナ禍によって活動の一時中止を余儀なくされながらも、豊富な経験とネットワークを生かし、柔軟に形を変えつつ支援を続けてきた関係者たちの思いに迫りました。

絆キッチン

コラム | 子ども食堂☆きらきら清水 | ネットワークで地域をつなぐ.pdf[外部リンク]

コラム | こあらのおうち | 若園地区に広がる賛同の輪.pdf[外部リンク]

コラム | 子ども食堂「尾倉っ子ホーム」 | 食卓を囲んで愛情を伝える.pdf[外部リンク]

コラム | 絆キッチン | 支援に依存しない居場所づくりを模索.pdf[外部リンク]

世代を超えた学び合いとコミュニティの新しい見守りの形を模索|社会福祉法人 那覇市社会福祉協議会

沖縄県は、一人親世帯や貧困家庭の割合が全国平均に比べて高い状況にあります。特に、県庁所在地の那覇市は、観光関連のサービス業に従事している人が多いため、親が夜遅くまで帰宅できない家庭も少なくありません。また、核家族化や少子高齢化も急速に進んでおり、大人と交流する機会がほとんどない子どもや、生活に困窮する高齢者が増加しているほか、長期にわたって引きこもる50代前後の子どもの面倒を80代前後の親がみなければならない「8050問題」も深刻化し、社会が直面する問題は年を追うごとに複雑になっています。
こうした状況を受け、那覇市でも多くの「子どもの居場所」が立ち上げられ、ユニークな活動を展開しています。地元で長年にわたり食堂を営んできた母娘や、子育てに悩んだ自分の経験から「家庭でも学校でもない、第三の居場所」をつくることを決意した女性、豊富なネットワークと知見を有する民生委員の経験者たちなど、運営者のバックグラウンドは居場所によって異なります。しかし、どの居場所の活動からも、社会福祉法人那覇市社会福祉協議会が運営する「糸」や「こども食堂サポートセンター那覇」に絶大な信頼を寄せ、密に連絡や相談をしながら取り組んでいる様子が浮かび上がってきます。
近隣の子ども食堂や自治体とも連携し、子どもに限らず保護者や高齢者も広く支援対象に入れ、世代を超えた学び合いの場をつくり、地域を盛り上げるとともに、現代ならではの課題に応えることでコミュニティの新しい見守りの形を実践しようと挑戦を続ける居場所の運営者たちに、それぞれの思いを聞きました。

ワクワクゆんたく食堂

コラム | こばんち | 母と子の居場所をつくりたい.pdf[外部リンク]

コラム | にじの森文庫 | 「生きる力を身に付けさせたい」 .pdf[外部リンク]

コラム | ほのぼのカフェ | 子ども食堂から始まるまちづくり.pdf[外部リンク]

コラム | にぬふぁぶし | たどり着いた「食支援ではなく学習支援を」という思い.pdf[外部リンク]

コラム | ワクワクゆんたく食堂 | 団地から広がる見守りの仕組み.pdf[外部リンク]

■ 事業基礎情報【1】

実行団体一般社団法人 コミュニティシンクタンク北九州
事業名⼦ども食堂ネットワーク北九州機能強化事業
活動対象地域福岡県北九州市
採択事業2019年度通常枠

■ 事業基礎情報【2】

実行団体社会福祉法人 那覇市社会福祉協議会
事業名こども食堂等支援事業〈2019年度通常枠〉
活動対象地域沖縄県那覇市
資金分配団体一般社団法人 全国食支援活動協力会
採択事業2019年度通常枠

JANPIAは2023年11月22日、休眠預金を活用して社会課題の解決を目指す団体と企業とのマッチング会「SDGsへの貢献につなげる 九州マッチング会」を福岡市の電気ビル共創館で開催しました。JANPIAとしては3回目のマッチング会で、福岡での対面開催は初となります。地元を中心とする企業30社、九州・沖縄・山口で休眠預金活用事業を進めている21の実行団体、そのパートナーである10の資金分配団体、行政機関などから多くの方々が参加して、とても熱気あふれる場となりました。

九州マッチング会はJANPIA主催・一般社団法人九州経済連合会共催で、電気ビル共創館3階のカンファレンスAにて14:00~17:00に開催しました。

九州マッチング会はJANPIA主催・一般社団法人九州経済連合会共催で、電気ビル共創館3階のカンファレンスAにて14:00~17:00に開催しました。

<プログラム>

14:00~
JANPIA・九経連 開会の挨拶
14:10~
休眠預金活用事業の概要の紹介
14:30~
休眠預金活用団体のショートプレゼンテーション
15:30~
企業と休眠預金活用団体との対話会
16:50~
閉会


開会の挨拶と事業概要の紹介からスタート

まずは、JANPIA理事長の二宮雅也が挨拶をしました。JANPIAが2019年政府から指定活用団体に選定されて以来、170以上の助成事業が累計1000を超える実行団体で展開されており、ユニークな日本型モデルの構築が着実に進んでいると紹介。団体の皆様には企業と連携して社会課題の解決を目指したいという強い期待があり、企業も社会を構成する一員として、誰ひとり取り残すことなく未来の子どもたちにサステナブルな社会を引き継ぐために、ぜひ積極的に連携いただきたいと力を込めました。

次に、九州経済連合会専務理事の堀江広重氏が挨拶をしました。九経連では2022年9月に九州・沖縄・山口ESG投融資方針を策定して、2022年は環境省と環境投資の推進を目的としたマッチング会を行い、今年は人への投資を促進するこの会を開催している旨を話しました。

JANPIA理事長 二宮雅也(左)、九州経済連合会 専務理事 堀江広重氏(右)
JANPIA理事長 二宮雅也(左)、九州経済連合会 専務理事 堀江広重氏(右)

続いて、JANPIAシニア・プロジェクト・コーディネーターの鈴木均が「休眠預金活用事業の概要」と「企業との連携強化」について説明しました。

JANPIA シニア・プロジェクト・コーディネーター 鈴木均が登壇
JANPIA シニア・プロジェクト・コーディネーター 鈴木均が登壇

休眠預金活用団体によるショートプレゼンテーション

14:30からは、21の実行団体が次々に登壇し、活動内容や支援ニーズなどについて1団体3分程度でプレゼンテーションを行いました。登壇した団体は、次の通りです。


<福岡県>
一般社団法人家庭教育研究機構(福岡県)、NPO法人未来学舎(福岡県久留米市)、認定NPO法人箱崎自由学舎ESPERANZA(福岡県)、一般社団法人みんなの家みんか(福岡県)、有限会社トラスト/株式会社マイソル(九州)、株式会社ホンジョー(九州)、株式会社ボーダレス・ジャパン(全国)、認定NPO法人フードバンク北九州ライフアゲイン(福岡県北九州市)、一般社団法人YOU MAKE IT(福岡県福岡市)、NPO法人YNF(福岡県・佐賀県・大分県・熊本県)、NPO法人ジャパンマック福岡(福岡県福岡市)、NPO法人福岡子どもホスピスプロジェクト(九州・山口)
<佐賀県>
一般社団法人さが・こども未来応援プロジェクト実行委員会(佐賀県)
<長崎県>
一般社団法人MIT(長崎県対馬市)
<熊本県>
一般社団法人熊本県こども食堂ネットワーク(熊本県)、株式会社フリップザミント(熊本県)、一般社団法人熊本私学教育支援事業団(熊本県)、ワールドフレンズ天草(熊本県天草地域)
<鹿児島県>
NPO法人かごしまこども食堂支援センターたくして(鹿児島県)
<沖縄県>
株式会社よしもとラフ&ピース(沖縄県)
<山口県>
NPO法人山口せわやきネットワーク(山口県)


それぞれの団体が、活動のきっかけや活動内容、強み、課題、企業への連携の提案などを分かりやすく紹介しました。個性豊かで情熱的なプレゼンの数々に、参加者たちはどんどん引き込まれて、熱心に聞き入っていました。メモを取る方もいました。企業の参加者からは「休眠預金がこんなにしっかり活用されていることを知らなかったので、視野が広がりました。どのように関われるか考えてみます」、「実行団体の皆さんの熱意に驚きました。ポスターセッションで直接お話しできるのが楽しみです」という声が聞かれました。

団体のプレゼンテーションの様子
団体のプレゼンテーションの様子

企業と休眠預金活用団体との対話会

10分間の休憩を挟んで、15:40から1時間程度、企業と休眠預金活用団体との対話会を行いました。会場後方には実行団体の紹介パネルが設置されており、企業の方々は興味のある団体のところへ行き、名刺交換をして、じっくり話を聞いていました。どの団体も休憩時間から活発な交流が続き、予定の1時間を超えても対話が終わらないほど大いに盛り上がり、終始、会場は熱気に包まれていました。

ポスターセッション
ポスターセッション

資金分配団体の担当者は「企業とはなかなか接点がない中、今回は対面で活動と熱量まで伝えられるとても貴重な機会でした。企業の方々には親身になって話を聞いていただき、関心の高さがうかがえました。これを機にコミュニケーションを続けていければと思います」と感想を語りました。

実行団体の担当者は「そもそもフリースクールとは何か、子どもと社会にどんな課題があるのか、企業の方にはあまり知られていないと実感しました。私たちの活動をさらにかみ砕いて説明し、もっと広く知ってもらう必要があると改めて感じました」、「企業と連携することで支援いただくとともに、自分たちのリソースを使って企業に提供できることもたくさんあると気づき、さまざまな可能性が見えてきました」と、確かな手応えを感じていました。

企業の皆様からは「新たな価値の創造を目指す部署が社内に新設されて、自分たちができることを模索しています。今日はさまざまな分野で活動される団体とご縁ができたので、社内に持ち帰って、連携などについて具体的に検討していきたい」など、前向きなコメントが多く聞かれました。

皆様のご協力のおかげで、ここから新たな連携が次々と生まれていくことを期待できる、素晴らしいイベントとなりました。

当日登壇された団体の皆さん、九経連・JANPIAでの集合写真
当日登壇された団体の皆さん、九経連・JANPIAでの集合写真

​​2013年に福岡県初のフードバンク団体として設立された、NPO法人フードバンク北九州ライフアゲインは、「すべての子どもたちが大切とされる社会」を目指し、子育て世帯を中心とした食料支援に取り組んでいます。コロナ禍で急増した「食料支援の需要」と「食品ロス」の問題を受けて、同団体は​​食料を配布するだけでなく、サプライチェーンの効率化やステークホルダーの連携促進にも尽力しています。食料品店、中間支援組織、行政等と協力して22年度に集まった食料品は136t以上。月35世帯ほどだった支援規模は​​​​月100〜150世帯​​にまで増加しました。こうした功績の背景にはどんな工夫があったのか。理事の​​​​​​陶山惠子さんにお話を伺いました。[コロナ枠の成果を探るNo.3]です。

​​「食料支援の需要」と「食品ロス」の問題に向き合い、延べ4,000世帯を支援​

​​子どもの通う学校が休校になり、働きに出られず、職を失った。自宅にこもる時間が増え、ストレスが蓄積されたことで家庭が崩壊した。2020年、新型コロナウイルスがもたらしたこのような問題は北九州市でも深刻を極めていた、と陶山さんは振り返ります。​

​​「コロナが原因で失職や離婚した家庭が増え、食料支援を求める世帯が急増。2019年度末には月30〜40世帯だったのが、2020年度にはゆうに100世帯を超えるほどに。同時に人の流れや物流が滞った影響で、土産品が売れ残ったり、給食用の食材も廃棄になったりと、食品ロスの問題も深刻化する一方でした」​

お話を伺ったNPO法人フードバンク北九州ライフアゲインの​​陶山惠子さん
お話を伺ったNPO法人フードバンク北九州ライフアゲインの​​陶山惠子さん

​​この問題に立ち上がったのが、陶山さんが理事を務める、NPO法人フードバンク北九州ライフアゲイン(以下、ライフアゲイン)です。同団体は、2013年の設立時より、食品ロスを食料支援につなげる環境活動と、経済的に厳しい子育て家庭への支援という福祉活動の両方に取り組んできました。​

​​コロナ禍において、ライフアゲインがLINE公式アカウントコミュニティ463名に対して実施したアンケートによると、257件あった回答のうち約7割が「家計の中で最も『食費』を充実させたい」と回答。こうした現場のニーズを出発点に、食料支援の体制を強化し、食品ロスの増加を食い止めるため、ライフアゲインによる休眠預金活用事業ははじまりました。​

実施したアンケートの結果
実施したアンケートの結果

​​事務所の近くに食品を保管するための倉庫を借り、スタッフを雇用したり、食品棚や搬入用の機材を購入したり。休眠預金を主に食品の管理環境や体制を整えるために活用することで、より幅広い層へのスムーズな食料支援につながったと言います。​


​​「主な支援の対象は子育て世帯ですが、生活困窮者の方たちにも、必要に応じて行政やケースワーカーさんを通じて食料支援をすることがあります。北九州市が積極的に取り組んでいる『子ども食堂』や連携先の大学で自主的なフードパントリー(※)を実施しました」​

​​※​​日々の食品や日用品の入手が困難な方に対して、企業や団体などからの提供を受け、身近な地域で無料で配付する活動のこと​

大学で実施したフードパントリー
大学で実施したフードパントリー

​​​​2022年末までの事業期間を経て、​​ライフアゲインが食品提供先として連携する福祉施設、および支援する団体の数は145団体(自治体福祉課・社会福祉協議会を除く)にのぼり、食品を提供した企業は188団体へ。​

​​​​食料支援件数は延べ4,000世帯を超え、寄贈された食品の受け入れ重量は2021年は110t、2022年度は130t以上​​と、一般的なフードバンク事業と比較し、圧倒的な規模での支援実績を記録しました。​

​​100を超える団体や行政と連携し、支援のアウトリーチを強化​

​​なぜ、これだけの規模で各所から食品が集まり、支援が可能になったのか。取材を通じて見えてきたのは、​​ステークホルダーとの連携力の強さ​​。それを証明した取り組みの一つが、​​食料配布のサプライチェーンの効率化です。​

2019年、​​ライフアゲインは福岡県リサイクル総合研究事業化センターが主催する「食品ロス」をテーマとした研究事業にチームリーダーとして参画し、複数の団体と協力して、食品ロスの削減に向けた取り組みを進めることに。​ ​結果、福岡県内でフードバンク活動の機運を高めるために新設されたのが、「福岡県フードバンク協議会」です。

​​​​2019年、​​ライフアゲインは福岡県リサイクル総合研究事業化センターが主催する「食品ロス」をテーマとした研究事業にチームリーダーとして参画し、複数の団体と協力して、食品ロスの削減に向けた取り組みを進めることに。​ ​結果、福岡県内でフードバンク活動の機運を高めるために新設されたのが、「福岡県フードバンク協議会」です。
​​​​研究事業の一環で県庁で行った食品ロスに関する合意締結式の様子

「現在、県内には8つのフードバンク団体が活動していますが、個別に食品を提供してくれる企業を開拓するのは大変ですし、企業にとっても一つひとつの団体と合意書を結ぶなどの対応をするのは相当な手間になります。逆に言えば、それらが解消されたなら、より多くの食品が効率的に集まるはず。そう考え、フードバンク団体と食品を提供する企業をつなぐ窓口の機能を一箇所にまとめるために協議会を設置しました」​

​​食品寄贈企業の開拓を始め、寄贈された食品の受付や管理、フードバンク団体への支援を呼びかける啓蒙活動や行政への政策提言を含む広報活動…。こうした役割を福岡県フードバンク協議会が積極的に担う体制が実現したことで、以前よりも集まってくる食品の数は格段に増えたと言います。​

そして、なにより重要なのは、集まった食品をいかに必要としている人に届けるか。​​北九州市内における相対的貧困世帯は母子世帯だけでも7,000にのぼると推測される一方、2019年度末時点で、ライフアゲインが支援する子育て世帯は50にとどまっていました。​ ​​当事者からの支援要請を待つのではなく、こちらから積極的に当事者とつながっていく「アウトリーチ」を強化する。​​その必要性を実感したライフアゲインは、支援希望者とつながるLINE公式アカウントを開設し、行政と連携して団体の活動を広く告知。これが支援者の拡大に大きく貢献したと、陶山さんは話します。​
​寄贈された食品

そして、なにより重要なのは、集まった食品をいかに必要としている人に届けるか。​​北九州市内における相対的貧困世帯は母子世帯だけでも7,000にのぼると推測される一方、2019年度末時点で、ライフアゲインが支援する子育て世帯は50にとどまっていました。​ ​​当事者からの支援要請を待つのではなく、こちらから積極的に当事者とつながっていく「アウトリーチ」を強化する。​​その必要性を実感したライフアゲインは、支援希望者とつながるLINE公式アカウントを開設し、行政と連携して団体の活動を広く告知。これが支援者の拡大に大きく貢献したと、陶山さんは話します。

「市内の各区役所に案内を設置し、2021年の冬休み前には行政からの提案で、児童扶養手当の受給者を対象とした配布物の中にチラシを同封してもらいました。送付先は約1万人。当初は300世帯だった支援対象の幅を、思い切って1,000世帯にまで広げました。支援希望者にはLINE公式アカウントへの登録を促したところ、新たに1,200名とつながることができたんです 

​​食料支援のボックスの中身​
​​食料支援のボックスの中身​

​口コミの力も相まって活動の認知はさらに広がり、取材時点でLINE公式アカウントに登録している支援希望者は1,800名にまで増加しました。現在も学校の長期休み前には、LINEを通じて食料支援の希望を聞いています。

​​「共に助け合う心」の強さ。未来の孤立を防ぐために​

ステークホルダーとの連携により、これまで以上に幅広い世代への食料支援が実現したころ、ライフアゲインの事務所には支援利用した方からのお礼のメッセージが続々と届き始めました。

 

「孤独じゃないと実感して勇気づけられた」「私たち家族のことを想ってくれる人がいると実感して元気が出た」ーーそんな感謝の声が溢れる中、とりわけ胸を打たれたメッセージについて、陶山さんは話してくれました。 


「中学生の女の子から、こんな手紙が届いたです。『ありがとうございます。これでお母さんと一緒にご飯が食べられます。お母さんはいつも私達がお腹いっぱい食べられるようにと、余りものばかりを食べて、まともな食事をしていません。食料を届けてくれたおかげで、家族みんなでご飯を食べられることが何より嬉しいです』と。食料支援を希望する人の生活は、私たちが想像するよりもはるかに厳しいのだと思い知らされると同時に、必要な人に支援が届くことの意義を実感できた瞬間でした」 


​​「私は決して独りじゃなかった」。食料支援を受け取った多くの人がそう感じたように、ライフアゲインもまた、支援を実施する中でステークホルダーによるサポートの心強さを実感していました。​

​​「1,000世帯に食料支援のボックスを届ける際、梱包作業がとにかく大変だったんです。そこで食料を寄贈してくださった企業にお声がけをしたら、多くの方が箱詰めのボランティアに参加してくれました。また、送料を賄うためにクラウドファンディングで支援を募ったら、目標金額を超える120万円の寄付が集まりましたし、資金分配団体の一般社団法人全国フードバンク推進協議会さんも他団体の参考になる情報を共有してくださるなど、常に相談しやすい関係性を築いてくださいました。​

​​あとは何より、活動を続ける中で行政との関係性が変化してきたなと実感しています。最近では市が主催するフードバンクの事業に対して提言を求められることもあり、相互に頼り、頼られる関係性が醸成されてきたなと感じています」​

エフコープ生活協同組合と連携して行った食品配布の様子
エフコープ生活協同組合と連携して行った食品配布の様子

つながり続ける関係の中で、助けを求めることは決して恥ずかしいことじゃないーー「家計は苦しいけれど、食料支援を受けるのは抵抗がある」という人も少なからずいる中、ライフアゲインはそんなメッセージを発信し続けてきたと言います。 


困っている人には手を差し伸べ、自分が困っているなら周りに助けを求める。ライフアゲインの“共助”の姿勢は周囲にも伝播し、大きな力となって、誰一人孤立しない未来を引き寄せ続けるに違いありません。

 

最後に陶山さんは、団体の今後についてこう語ってくれました。 


「昨今は物価高騰の問題もあり、子育て世代はもちろん、さまざまな事情から困窮し、孤立している人が増え続けています。私たちとしては、フードバンク事業を着実に続けながら、これまで以上に福祉活動にも力を入れたいなと。取り組みの一つとして、2022年からは家庭訪問型の子育て支援の準備も進めており、新しく借りた事業所ではさまざまな困りごとに耳を傾ける相談室を開こうと考えています。今後は食料支援を入口に、支援を必要としている一人でも多くの人とつながり、安心できる関係性を築くことで、困ったときには気軽に頼ってもらえる存在になりたいです」 

 

 

 

【事業基礎情報】

実行団体認定特定非営利活動法人フードバンク北九州 ライフアゲイン
事業名コロナ禍でも届く持続可能な食支援強化事業
活動対象地域北九州市及び近郊地域
資金分配団体一般社団法人 全国フードバンク推進協議会
採択助成事業2020年度新型コロナウイルス対応支援助成

福岡県・北九州市に拠点を置くNPO法人抱樸(以下、抱樸)は、ホームレスや生活困窮者を始め、さまざまな生きづらさを抱えた人たちの人生に伴走する活動を、30年以上にわたって続けてきました。2021年1月より、公益財団法人パブリックリソース財団(2019年度通常枠資金分配団体)の採択を受け、単に身を置くだけの場所ではなく、人とのつながりを持ち、心の拠りどころにもなる住居として「プラザ抱樸」の拡充に勤しんでいます。この取り組みの背景に見えるのは、持続可能な「伴走型支援」のあり方を模索する姿勢。そもそも伴走型支援とは何か、なぜ必要なのか。その持続性をどう担保していくのか。抱樸の常務理事を務める山田耕司さんにお話を聞きました。”

「家族と制度の間」を担い続けて広がった支援

抱樸が活動開始発足したのは、1988年12月。当時は「北九州日雇越冬実行委員会」という名称でした。始まりは路上生活者の現状調査を行ったことからと言います。

「福岡の日雇労働組合と共同し、路上生活者にヒアリングをすることになったんです。仕事が終わった夜に会いに行って、『話を聞かせてもらうのに手ぶらだと申し訳ないから』と、手土産におにぎりを握っていった。調査が進み路上生活者の実態が明るみになると、当然、自分たちにできることを考えますよね。そこから、炊き出しが始まったと聞いています」
炊き出しの様子

「福岡の日雇労働組合と共同し、路上生活者にヒアリングをすることになったんです。仕事が終わった夜に会いに行って、『話を聞かせてもらうのに手ぶらだと申し訳ないから』と、手土産におにぎりを握っていった。調査が進み路上生活者の実態が明るみになると、当然、自分たちにできることを考えますよね。そこから、炊き出しが始まったと聞いています」

大学時代は社会運動系のサークルに入っていた山田さんが、抱樸に出会ったのは1997年。友人の誘いで炊き出しやパトロールのボランティアに参加するようになり、2004年に抱樸が北九州市からの委託で「ホームレス自立支援センター」を始めると同時に入職しました。

以来、20年近くにわたって抱樸が出会うさまざまな障害や生きづらさを抱えた人たちの声に耳を傾け、現在は常務理事として休眠預金活用事業を含め、多岐にわたる取り組みを統括しています。 日雇労働者やホームレスのための炊き出しから始まった抱樸の支援。入口こそ「労働問題」でしたが、山田さんは「支援を続けるうちに『労働問題以外の課題』も見えてきた」と振り返ります。
インタビューに答えてくださった常務理事の山田耕司さん

以来、20年近くにわたって抱樸が出会うさまざまな障害や生きづらさを抱えた人たちの声に耳を傾け、現在は常務理事として休眠預金活用事業を含め、多岐にわたる取り組みを統括しています。

日雇労働者やホームレスのための炊き出しから始まった抱樸の支援。入口こそ「労働問題」でしたが、山田さんは「支援を続けるうちに『労働問題以外の課題』も見えてきた」と振り返ります。

「私自身、最初は『就労支援をして、ホームレスの方が自立すれば万事解決』と思っていました。ところが、実際は軽度の知的障害や精神障害を含め、さまざまな障害が原因で就労や独居が難しかったり、社会的に家族や企業の機能が衰えたことから周りに頼れる人がおらず孤独に陥ってしまったり。リーマンショック以降は若年困窮者も増え、その多くは高校中退以下で十分な学習の機会を得られていなかったり。一筋縄には解決できない問題が山積みだったんです」

困窮者・ホームレス支援に始まり、子ども・家族支援、居住支援、就労支援、障害福祉、高齢福祉に更生支援(刑務所出所者への支援)――人の属性に囚われず、さまざまな生きづらさを抱えた人たちを対象にした抱樸の支援は、現在27の事業まで広がっています。

なぜ、ここまで広がり得たのでしょうか?

「ホームレス支援から始まった、というのが大きな理由だと感じています。ホームレスになる人は、社会的な制度や福祉から排除されてきた方々なんです。障害の問題もスルーされ続け、雇用保険も受けられず、生活保護すら申請できない。結果、住まいを失い、就職活動もできなくなる。そうした方々への支援を考えるうえで、活用できる制度があるならもちろん活用します。一方で、既存の枠組みに過度な期待は寄せず、『必要だと思うのにないものがあるなら自分たちで作っていこう』という発想が、もともとすごく大きいんだと思います」

誰ひとり取り残されない社会を創るため、家族と制度の間を担い続けた抱樸。手土産におにぎりを握り始めた日々から34年。これまでに約3,700人以上が、ホームレス状態から生活を取り戻したと報告されています。

入居者の人生に“伴走”する居住支援を目指して

2019年度、パブリックリソース財団による公募で採択を受けたのは、抱樸が2001年から実施していた「居住支援」における取り組み。当初は大家さんから物件を一括で借り上げて入居者に転貸するサブリースの形式を活用し、その後、生活困窮者に無料または低額な料金で宿泊所を提供する「無料定額宿泊所(以下、無低)」としての居住支援を行っていました。

一方、世間では「無低は利用者の無知や弱みにつけこみ、入居者の生活保護費を搾取する貧困ビジネスの温床になっている」と問題視され始めます。入居したものの、ソフト面での支援は十分になく、再び路上生活に戻ってしまうケースも少なくありませんでした。 こうした背景を受け、山田さんは「単に住まいを提供するだけでなく、入居後も見守り続ける居住支援を広げていきたい思いがあった」と話します。 
 

一方、世間では「無低は利用者の無知や弱みにつけこみ、入居者の生活保護費を搾取する貧困ビジネスの温床になっている」と問題視され始めます。入居したものの、ソフト面での支援は十分になく、再び路上生活に戻ってしまうケースも少なくありませんでした。 こうした背景を受け、山田さんは「単に住まいを提供するだけでなく、入居後も見守り続ける居住支援を広げていきたい思いがあった」と話します。

「居住支援を始めた頃から、アフターケアは行っていました。入居者の多くが高齢者だったことも理由の一つですが、障害や依存症の問題から金銭管理や衛生面でのトラブルが生じることも少なくなかったんです。家族のように困ったときに頼れる人が側にいないと、安定的に暮らしていくのは難しいのだと、この頃から、実感していました」

入居後もつながり続け、一人ひとりの人生に伴走する。そんな居住支援を持続可能なものにするためには、見守り続ける人材の確保や育成のためにも、ある程度、安定した資金繰りが必要になります。しかし、実状は北九州市の住宅扶助の基準額(当時)である 3万1,500円で物件を借り、同額で貸していたため収益はゼロ。

理想とする居住支援のあり方を広げるために、何か打てる手はないだろうか?

模索し続ける中で見つけたのが、休眠預金活用事業の公募として、パブリックリソース財団が打ち出した「支援付き住宅建設・人材育成事業」でした。

2020年4月に無低の規制が強化されるのと並行して、単独での居住が困難な人への日常生活を支援する制度(日常生活支援住居施設)が創設。同事業は、その流れを受けて新基準に対応した無低の改築・建替え費用を助成するとともに、入居者を見守る人材の育成を推進。「住まい」と「生活支援」をセットで提供するソーシャルビジネスのビジネスモデルの構築を目指すものでした。

「これまでも多くの助成金や補助金を活用しましたが、基本的に物件の“所有”は認められず、借りるしかありませんでした。そのうえ単年度の助成が大半ですが、単年度では成果や実績が上がらないこともあり、資金が途絶えれば物件を借りられなくなるリスクも大きかったんです。その点、今回は物件の購入も認められ、複数年度の支援だったことが魅力的でしたね。パブリックリソース財団さんとも月一でミーティングを実施し、情報共有はもちろん、手続きの面でも手厚くサポートしてくださったので、大変心強かったです」

審査を経て採択された抱樸は、2018年より借りていたマンション一棟を購入。見守り支援つき住宅「プラザ抱樸」として再出発し、入居者の相談に乗る支援員の人件費や研修費にも充てながら、日々施設の拡充に取り組んでいます。

審査を経て採択された抱樸は、2018年より借りていたマンション一棟を購入。見守り支援つき住宅「プラザ抱樸」として再出発し、入居者の相談に乗る支援員の人件費や研修費にも充てながら、日々施設の拡充に取り組んでいます。 ここでは相談支援員による生活サポートがあり、いつでも「困りごと」を相談できるように常駐する管理人を配置。障害者向けのグループホームも併設されています。取材時(2022年10月)には、入居可能な88室がほぼ満室。10〜80代まで、老若男女を問わずに幅広い世代が暮らしています。
プラザ抱樸の外観

審査を経て採択された抱樸は、2018年より借りていたマンション一棟を購入。見守り支援つき住宅「プラザ抱樸」として再出発し、入居者の相談に乗る支援員の人件費や研修費にも充てながら、日々施設の拡充に取り組んでいます。 ここでは相談支援員による生活サポートがあり、いつでも「困りごと」を相談できるように常駐する管理人を配置。障害者向けのグループホームも併設されています。取材時(2022年10月)には、入居可能な88室がほぼ満室。10〜80代まで、老若男女を問わずに幅広い世代が暮らしています。

中には中学生で妊娠し、シングルマザーになるも、さまざまな事情で家族と同居が難しくなった入居者も。彼女は現在、生活保護を受け、アルバイトをしながら抱樸のサポートにより通信制の高校に通っていると言います。

「ホームレスの方だけでなく、さまざまな事情で家が借りられない、行き場がない、生活全般に困難を抱えた方々が地域にこんなにもおられるのかと。『プラザ抱樸』を始めて、よりその事実を痛感しました」

“つながり”を対等なものにする

住まいの提供だけでなく、入居後も見守り続けるスタイルは、抱樸が20年以上にわたって住居支援を行う中で理想の形を模索し続けてきた結果でもあります。同時に、このスタイルから浮き彫りになるのは、抱樸の「支援」に対する考え方。

抱樸は、支援には「問題解決型支援」と「伴走型支援」があると定義しています。住居支援を例に考えれば、行き場のない人に住まいを提供するのが「問題解決型支援」であり、入居後も見守り続けるのが「伴走型支援」です。

これらは「支援の両輪」として実施されるべきだと、抱樸の代表を務める奥田知志さんの著書に記されています。

私は「諦念」の中にたたずむ路上の人を大勢見てきました。そういう人がもう一度立ち上がるためには、居住や就労の支援に加え「私はあなたを応援している。一緒に頑張ろう」と呼びかける他者の存在が必要だったのです。「誰のために働くか」という問いとその答えをもつこと。「あの人が応援してくれるから」「愛する人のためだから」、これら「外発的な動機」をもつ人は踏ん張ることができます。(『伴走型支援 新しい支援と社会のカタチ』より)

山田さんも「伴走型支援が必要なのは、ホームレスや生活困窮者、障害がある人など一部の人に限られた話ではない」と主張します。 「家族や親戚、友人や企業に制度。私たちも多様な人に支えられて日々生きています。人が生きていくためには、誰かしらに支えられる……伴走される必要があるのだろうと。抱樸が支援をしている方達は、たまたま伴走相手が私たちだった。ただ、それだけのことだと思うんです」

コロナ禍の炊き出しでは、お弁当に添えるお手紙をボランティアから募ったことも。

山田さんも「伴走型支援が必要なのは、ホームレスや生活困窮者、障害がある人など一部の人に限られた話ではない」と主張します。 「家族や親戚、友人や企業に制度。私たちも多様な人に支えられて日々生きています。人が生きていくためには、誰かしらに支えられる……伴走される必要があるのだろうと。抱樸が支援をしている方達は、たまたま伴走相手が私たちだった。ただ、それだけのことだと思うんです」

すべての「いのち」は等しく尊い。だから、ひとりにさせないために「つながり」続ける。そして、その「つながり」を平等にしていくために、抱樸は今日もあらゆる人の生きづらさに向き合っています。

「伴走型支援」を持続可能にするために

支援つき住宅を持続的に提供していくため、2020年には初のクラウドファンディングを実施した抱樸。1万人を超える支援者から集まった寄附額は、約1億2,000万円。これを機に拠点の北九州だけでなく、北海道や大阪、愛知、岡山など、10地域の困窮者支援団体と連携を取り、全国に支援を拡大しています。

noteやYouTubeなどのSNSを活用した積極的な発信も相まり、団体の思いに共感する人の輪は広がり、スタッフの数も増加。仲間が増えるのは心強い反面、組織の規模が大きくなるがゆえの難しさも痛感していると、山田さんは話します。

「スタッフの人数が増えると、部署ごとの縦割りが起こりがちになります。今は社会福祉法人化への準備も進んでおり、団体としての過渡期でもあります。そんな中で抱樸がこれまで大切にしてきた思いをどのように共有しながら、連携を強めていくのかが直近の課題です」

「抱樸」とは、「原木・荒木(樸)を抱きとめること」。ささくれ立ち、棘のある荒木を抱けば、ときに傷を負うこともあります。生半可な気持ちでは続けられない。

だからこそ、働きに見合った対価が得られる組織でありたい。それが、生きづらさを抱えた一人でも多くの人とつながり続ける、伴走型支援を持続可能にする鍵になるだろうから。

山田さんの力強い言葉からは、走り続けることを決めた抱樸の“覚悟”が滲むようでした。

「2010年頃から増え始めた新卒採用の初期メンバーは、30代に突入しました。結婚や出産といったライフプランもある中、やりがいや思いだけで仕事を続けるのは難しいと思います。だから、事業の収益性にもこだわり、職員の待遇を向上していく必要がある。休眠預金活用事業を通じて取得した「プラザ抱樸」では利益が生まれ始めています。その事実も踏まえ、持続可能な団体として今後どうあるべきか、しっかり考えていきたいです」

■資金分配団体POからのメッセージ
今回のプラザ抱樸というプロジェクトは、休眠預金活用事業の中でもかなり大きなインパクトのある事業です。まず、マンション1棟をまるごと買い上げ、様々な福祉制度を組み合わせた「ごちゃまぜ型」の支援付き住宅群としたこと。次に一般向けの賃貸には古く、空室の多くなったマンションを福祉用途に全面転換することで、未活用の住宅ストックを地域課題の解決に役立てていること。これらは地域リソースを最大限に活かした先駆的事例であり、全国の高齢化や空き家問題対策のロールモデルともなりうるので、しっかりとこの事業の成果評価を発信していきたいと思っています。(公益財団法人 パブリックリソース財団 プログラムオフィサー)

【事業基礎情報】

実行団体
特定非営利活動法人 抱樸
事業名
支援付き住宅の複合モデル「プラザ抱樸」の拡充と整備事業・抱樸
活動対象地域
北九州市
資金分配団体
公益財団法人 パブリックリソース財団

採択助成事業

2019年度通常枠・実行団体・ソーシャルビジネス形成支援事業

一般財団法人ちくご川コミュニティ財団(福岡県久留米市)は、2020年度から福岡県久留米市を中心とした筑後川流域の実行団体の伴走を続けています。ちくご川コミュニティ財団 理事でありプログラムオフィサーでもある庄田清人さんは、理学療法士の経験から「評価は治療と表裏一体だった」と話し、治療と同じように事業にとっても評価が重要だと指摘します。社会的インパクト評価に対する考え方や、実行団体に「社会的インパクト評価」を浸透させるためのアプローチについて聞きました。(「資金分配団体に聞く社会的インパクト評価への挑戦Ⅱ」です)

ちくご川コミュニティ財団とは?

ーーまず、ちくご川コミュニティ財団のミッションや設立の経緯を教えていただけますか。

庄田清人さん(以下、庄田):ちくご川コミュニティ財団は、筑後川関係地域の市民・企業の皆さんの「人の役に立ちたい」という想いと活動をつなぐことをミッションに、市民や企業の方々が資金、スキル、情報等様々な資源を、筑後川関係地域の課題解決に取り組むCSO(市民社会組織)へ提供しています。CSOの方々と支援者の方々を繋ぎ合わせるプラットフォームの役割です。

私たちの財団がある福岡県久留米市は人口30万人ほどで、九州の中では比較的大きな中核市です。CSOは多いのですが、行政による中間支援が十分とは言えません。そこで、市民が主体的に公益を担う社会を実現するために、2019年8月にちくご川コミュニティ財団が立ち上がりました。福岡では初のコミュニティ財団です。

お話を伺った庄田さん

ーーなぜ団体の所在地である「久留米」ではなく、「ちくご川」を財団名にしたのですか?

庄田:九州最大の河川である筑後川流域は、生活や文化が重なっているエリアです。例えば、久留米市から佐賀に通う人も、その逆もいます。CSOの活動は行政区分を跨って生活圏に沿って行われていることが多いのに、私たちが活動対象とする地域を行政区分で区切ると、地域によって私たちの支援も区切られてしまって、連携や協働が起きにくいのではないかと考えました。そこで、「ちくご川コミュニティ財団」と名前をつけ、筑後川関係地域(佐賀、福岡、大分、熊本県)を活動地域としました。

実施している助成プログラムについて

ーー休眠預金活用事業への申請にはきっかけがあったのでしょうか

庄田:私たちは設立前からお隣の佐賀県にある佐賀未来創造基金をお手本にしていて、休眠預金等活用制度についても教えていただいていました。なので財団設立前から休眠預金活用事業にチャレンジしようと考えていました。2019年8月に財団ができて、その翌年にはチャレンジし、2020年度の通常枠で最初の採択をいただきました。

ーー現在、休眠預金活用事業で取り組まれている2020年度、2021年度通常枠の2つの助成プログラムについて教えてください。

庄田:2020年度の通常枠事業では、「子どもの貧困」「若者の社会的孤立」の2つのテーマで実行団体を公募し、2団体を選定しました。
1つ目は、久留米市内で貧困世帯の子どもたちに対して、無料の塾と食支援を10年以上やられてきた「認定NPO法人わたしと僕の夢」です。支援してきた子どもたちが高校入学後に退学や不登校になってしまう課題が見えてきたため、高校生支援をメインに居場所づくりやピアサポートなどに取り組んでいます。

2つ目は、朝倉市の中山間地域で児童養護施設を退所した後の若者たちをメインに受け入れる家づくりに取り組む「みんなの家みんか」です。自立援助ホームなどもありますが、年齢制限や様々な理由で退所してしまう若者に居場所を提供しています。また、豊かな自然資源を利用し担い手不足が深刻な一次産業の担い手になってもらうことも目指しています。

「わたしと僕の夢」による学習支援の様子(左)、「みんなの家みんか」による自然学習の様子(右)
「わたしと僕の夢」による学習支援の様子(左)、「みんなの家みんか」による自然学習の様子(右)

2021年度通常枠事業では、「学校に行けない、行かない子ども若者(所謂、不登校の子ども若者)」をテーマにしています。2021年度の不登校数は全国で24万人を超えてきていて、課題として大きくなっています。我々も地域の将来を考えた時に、その担い手となる子どもたちに学びや成長の場がないという状況は、喫緊の課題だと考えました。そのため、このテーマを選定し、案件組成を行いました。

公募した結果、フリースクールを運営している3団体を選定しました。

1つ目は、フリースクールを17年続けている認定NPO法人箱崎自由学舎ESPERANZAです。フリースクールの月謝は全国平均で3万3000円という文科省の調査結果があります。それが払えずにフリースクールに通えない子どももいます。通ってほしいのに通えない、そういった子どもたちに対しての家計支援制度を考えていくための調査研究事業に取り組んでいます。

2つ目は一般社団法人家庭教育研究機構で、学校の中に校内フリースクール立ち上げる事業を行っています。九州では初めての取り組みです。校内にあることで、長年、学校に行けてなかった子どもがそのフリースクールに通い出してすぐに普通学級にも通えるようになったケースもありました。この団体は、課題を抱える子どもたちにアウトリーチしていくために、学校外フリースクールや家庭への訪問活動も取り組んでおり、それに加えて校内フリースクールを立ち上げ、3本柱で活動を進めています。

3つ目の団体が、久留米市のNPO法人未来学舎です。このフリースクールは個性豊かな子どもたちを受け入れて、地域との関わりを大事にしながら、生きる力を育てています。音楽を通して子どもたちの成長を促すなど、ユニークな取り組みをしています。また、通信制高校のサポート校やカフェ運営による若者の就労支援など多様な方法で子ども、若者を支えています。

認定NPO法人箱崎自由学舎ESPERANZによる学習支援の様子(上左) NPO法人未来学舎による梅しごとの様子(上右) 一般社団法人家庭教育研究機構による昼食準備の様子(下)
認定NPO法人箱崎自由学舎ESPERANZによる学習支援の様子(上左) NPO法人未来学舎による梅しごとの様子(上右) 一般社団法人家庭教育研究機構による昼食準備の様子(下)

ー21年度は3つの実行団体が「フリースクール」という同じテーマで取り組まれていますが、20年度との違いはありますか?

庄田:どの団体も共通した課題意識を持っていることが大きいです。今年2月に事前評価のワークショップをやったのですが、実行団体同士での共通の悩み、課題感があるのですごく深いところまで意見交換をできました。ただ、三者三様に色が違う団体なので、資金分配団体としてどうまとめていくかが力の見せどころです。これがうまくいけば、フリースクールに通う子ども向けの経済的な支援制度についての道筋が見えたり、校内フリースクールが他の地域でも展開できる見通しがついたりするはずです。あと2年ですが、達成できそうなことが見えてきたのではないかと思います。

社会的インパクト評価は事業と表裏一体

ーー庄田さんはこれまでにも事業評価に関わった経験があったのでしょうか。

庄田:元々、私は理学療法士として働いていました。理学療法士の教育の中で1番最初に教えられるのが「評価」で、「評価は治療の一部」「評価に始まり、評価に終わる」とまで言われています。なので、休眠預金等活用制度でも「評価」も大事だと最初に聞いた時、人の体が事業に置き換わったということだなと納得感がありました。

例えば理学療法士だと、治療のために筋力トレーニングをする際にも、この負荷量だとこの人の筋肉は成長しない、というような評価をしつつ進めていきます。治療によってどんな変化が起こったかを見るのも評価の一つです。そういう意味で、「評価」と「治療」は表裏一体で当たり前にぐるぐる回しながらやっていました。


さらに2014年から2年間、青年海外協力隊としてアフリカのマラウイに行っていました。ワークショップなどで地域住民のニーズを引き出して、プロジェクトを企画運営していく活動です。その中で自分なりにロジックモデルに似たものを作り、事業をどう動かしていくか考えてきた経験も今に活きていると感じます。

ーー実際に社会的インパクト評価をやってみて、医療での評価と違う難しさはありましたか?

庄田:「人の体」と「事業」は、変数が違いますね。医療だと、僕が患者さんを一人で常に見ることができるので変化もわかりやすい。事業になると、人の体と違って、関わるステークホルダーがとても多く、組織自体の状況、財務的な状況などの変数も関わってきます。そのため例えば何か活動に介入をして変化が起こった時に、それが介入によって起こった変化なのかがわかりづらいという難しさは非常に感じます。


でも本質的には一緒です。その変数をしっかりと把握することが大事だと思っています。その変数の把握をするために、おそらく私たちPOの専門性が必要になってくるのではないかと思います。

ーー実行団体に対して評価の重要性を伝えるアプローチとして、どんなことをされていますか?

庄田:「評価」という言葉になるべく早く触れてもらうようにしていて、実行団体の公募の申請時点で、「評価」については必ずお話しています。「ロジックモデル」をやってもらうと、どの実行団体さんも「頭の中がスッキリした」と言われるので、これを入口に評価に入ってもらう流れです。本当は公募申請時の「ロジックモデル」の提出を必須にしたいと思っていますが、現在は「推奨」している状況です。

ただやはり、事前評価が終わるまでは、実行団体も頭ではわかっているけれど評価の有効性を実感することは難しいとも感じています。ただ、事前評価は重要だと考えているので、約半年ほどかけて事前評価をやりながら事業も実施してもらっています。評価は治療と表裏一体のため、事業(治療)を進めることによって新たにわかる対象者の変化を測定すること(評価)も重要視しています。なかなか厳しいですが、筋力をつけていくため負荷をかけて頑張ってもらっています。

ーー事前評価の後は、通常の活動の中でどのように評価を取り入れている状況でしょうか?

庄田:実行団体の皆さんは、評価に取り組むことで、必要なアンケートの設計や、参与観察などの調査方法が確実にできるようになってきています。アンケート一つでも、項目をどうするのか、どうやって収集するのか、どう結果をまとめるのかなど、かなりの要素があります。このような調査が定期的にやっていけるようになったのは、とても価値があることだと感じています。

最近は、評価の継続について考えています。休眠預金活用事業が終わった団体は、「評価」をやらなくなってしまうのではないかという懸念があります。マンパワーという課題以外にも、評価に取り組む動機づけも必要ですし、調査した結果をロジックモデルや事業設計に反映させていく際には壁打ち役も必要なので、助成終了後の伴走の仕組みがあってもいいのではないかと思っています。

事業キックオフミーティングの様子(左:2020年度、右:2021年度)
事業キックオフミーティングの様子(左:2020年度、右:2021年度)

地域の持続可能性向上のために、組織の成長をめざす

ーー最後に、今後どのように伴走されていくのかや今後の展望を教えてください。

庄田:「クールヘッド」と「ウォームハート」が絶対に必要だと思っています。根拠に基づかないウォームハートは、本当の優しさではありません。そこを大事にしながら、実行団体さんに伴走していきたいと思っています。中長期的には、この地域の持続可能性をどう向上するかが非常に重要だと考えています。子どもの貧困、若者の社会的孤立、不登校などの取り組んでいるテーマがそこにつながってくるのかなと思います。

実行団体の皆さんだけでなく、ちくご川コミュニティ財団自身が休眠預金等活用制度に育ててもらっていると感じています。休眠預金活用事業を行っている中で、「環境整備・組織基盤強化・資金支援」を私たちが継続的にできるようになっていけば、筑後川関係地域の市民活動は活性化できることが見えてきました。加えて、資金調達についてみると、休眠預金活用事業を始める前と比べると、我々の財団への寄付額が3倍になりました。長期的には私たちの活動を休眠預金等活用制度に頼らずにどうやっていくかということも考えなければなりません。この制度を通じて学んできたものを持続可能にするために、ちくご川コミュニティ財団自身も実行団体とともに組織として成長していきたいです。

庄田さんによる実行団体への伴走支援の様子、2021年度事前評価WSの様子
庄田さんによる実行団体への伴走支援の様子、2021年度事前評価WSの様子

■ 事業基礎情報【1】

資金分配団体一般財団法人 ちくご川コミュニティ財団
事業名

困難を抱える子ども若者の孤立解消と育成 ~子ども・若者が学び、自立するための居場所とふるさとをつくる~
<2020年度通常枠>

活動対象地域筑後川関係地域(福岡都市圏及びその周辺地域)
実行団体

・みんなの家みんか

・特定非営利活動法人 わたしと僕の夢

■ 事業基礎情報【2】    

資金分配団体一般財団法人 ちくご川コミュニティ財団
事業名

誰ひとり取り残さない居場所づくり<2021年度通常枠>

活動対象地域

筑後川関係地域(福岡県、佐賀県東部、大分県西部、熊本県北部)

実行団体

・一般社団法人 家庭教育研究機構・特定非営利活動法人 未来学舎・特定非営利活動法人 箱崎自由学舎ESPERANZA