資金分配団体&JANPIA プログラムオフィサーが行く! 甲信地域実行団体訪問記

休眠預金活用事業として実施されている「甲信地域支援と地域資源連携事業」。資金分配団体である「認定NPO法人 富士山クラブ」「公益財団法人長野県みらい基金」のコンソーシアムと、山梨県・長野県で子どもや若者たちを含む、困り事を抱えた人々が自ら課題解決できる力を持てる環境づくりに挑む5つの実行団体でこの事業を進めています。山梨県域で活動している3つの実行団体に、資金分配団体のプログラムオフィサー(以下、PO)とJANPIAのPOが視察もかねて訪問した様子を、レポートします。

NPO×自分の生業でゼロからイチを生む!〈河原部社〉

はじめの訪問先は山梨県韮崎市で活動する「NPO法人河原部社」。
河原部社は「やって、みせる」というポリシーのもと2016年に活動をスタートさせました。団体メンバーの平均年齢は30歳。代表理事を務める西田遥さんを中心に、地域おこし協力隊として参加するメンバーを加え、地元の有志8名で韮崎市を盛り上げようと取り組んでいます。

設立当時からビジネスとして「収益をきちんと得られる仕組みづくり」を視野に、「NPO×自分の生業」という働き方のスタンスを保ちながら活動。参加する若者たちがそれぞれのスキルを持ち寄り、活かしながら、社会に対して面白いことを仕掛けていこうと考えています。

既に行政の委託事業として、いくつかの実績を持つ河原部社。JR韮崎駅前にある青少年育成プラザ「Miacis(ミアキス)」の運営は5年目を迎え、立ち上げ当時から利用していた中高生が同社に入社したり、また韮崎市役所に就職したりするなど、後進の育成にも成功。同時にローカルメディア「にらレバ」を運営し、若者向けに地元に特化した情報を発信することで、就職や結婚なども含め、今後の人生の選択肢に「地元」を入れてもらえるようにと継続的に取り組んでいます。

「街のために何かチャレンジしたいという、僕らと同世代の若者がとても多いんです。若者のチャレンジをぜひ現実化したい、さらに自立できるようにビジネスとしても確立させてほしい。そこでまずは私たち自身の団体の組織基盤を強化するために休眠預金活用事業に申請させていただきました。」そう話す西田さん。

新たなプロジェクト「ニラサキサラニ」の拠点は韮崎中央公園前にある旧ガゾリンスタンド。

彼らが休眠預金活用事業として取り組むのは、「ニラサキサラニ 実践型若者プレイヤーズ育成プロジェクト」。
廃業をしたガソリンスタンドを拠点とし、「ゼロからイチを生み出す経験ができる場づくり」を目標にしています。「プレイヤー」と呼ばれる賛同者と共に活動をはじめるために、現在は本プロジェクトの一つとして「WORKSPACE TUM」の立ち上げと、これらに付随したイベントの企画を急ピッチで進めています。今後はSNSなどを利用し、オンラインでも参加者(TUM MATE)を増やす予定だと本プロジェクトのリーダー・本田美月さんはいいます。

かつての給油スペースは憩いの場に。併設されたカフェ「Parkside Parlor IRU」では、ソフトクリームやタコスなど、ご機嫌なメニューが楽しめます。誰でも利用可能です。
(写真左)隣接するガレージは、ペイントなど一部を河原部者スタッフやTUM MATEでDIY。若者たちのコワーキングスペースとして、またイベント会場として利用される予定。 (写真右)ガレージ前にて。西田遥さんと本田美月さん。
(写真左)隣接するガレージは、ペイントなど一部を河原部者スタッフやTUM MATEでDIY。若者たちのコワーキングスペースとして、またイベント会場として利用される予定。 (写真右)ガレージ前にて。西田遥さんと本田美月さん。

「TUMという名前には、経験や知識を積む場所、そして掛け算を意味する積から『アイデアが掛け合わさる場所』という意味を込めています。TUM MATEの皆さんと共に、さまざまな職域の方達との交流を経て、社会に対する思いを実現へと導くコミュニティを運営していく予定です。」

今回の訪問では、資金分配団体とJANPIAのPOと共に活動進捗を話しながら、どのように収益を上げるかで終わらず、一つ先の視点を継続して持ち、さらにこのプロジェクトを通じて力をつけてソーシャルビジネスなどへのステップアップを目指していくことを改めて共有できた皆さん。何もないところからスタートアップして、大きな団体として行政も巻き込み活動していくというサクセスストリーを描き、「韮崎モデル」として他県域にも広がることを願っています。

今回の訪問では、資金分配団体とJANPIAのPOと共に活動進捗を話しながら、どのように収益を上げるかで終わらず、一つ先の視点を継続して持ち、さらにこのプロジェクトを通じて力をつけてソーシャルビジネスなどへのステップアップを目指していくことを改めて共有できた皆さん。何もないところからスタートアップして、大きな団体として行政も巻き込み活動していくというサクセスストリーを描き、「韮崎モデル」として他県域にも広がることを願っています。

「社会的処方+学習支援」で地域課題に挑む〈ボンドプレイス〉

ボンドプレイスが主に個別相談や会議の場として使用している大きな古民家。廊下の窓を開けると目の前には富士山が!
ボンドプレイスが主に個別相談や会議の場として使用している大きな古民家。廊下の窓を開けると目の前には富士山が!

次に訪れたのは、同県南アルプス市の古民家を活動の拠点とするNPO法人bond place(ボンドプレイス)。「接着剤のボンド」と「場所を意味するプレイス」という意味を持つ同団体。現在、行政からの委託事業の一つとして南アルプス市、山梨市と辛い思いを抱えた子どもや若者たちに向けた「居場所づくりの事業」を中心に、孤独や孤立といった問題を抱える人に対してどのようなアプローチができるかを検討し、学習支援や子ども食堂などの利用を促す取り組みをおこなっています。そんな彼らが活動を通じて体感しているのは、こうした支援活動が各市町村単位での対応であること、また福祉など特定の分野に限られた課題設定となりがちであることでした。

「これまで公的な支援においてキャッチできなかった人や物事も多くあります。私たちは、いろいろなセーフティネットに助けられる機会を「学習支援」という入口から取り組んでいこうと考えました。個々が強くなるためではなく、その人たちの環境自体が変わっていくことに対してのアプローチを重要視し、山梨県から社会や環境を変えていきたい。そこで辿り着いたのが『社会的処方』というテーマでした」

「これまで公的な支援においてキャッチできなかった人や物事も多くあります。私たちは、いろいろなセーフティネットに助けられる機会を「学習支援」という入口から取り組んでいこうと考えました。個々が強くなるためではなく、その人たちの環境自体が変わっていくことに対してのアプローチを重要視し、山梨県から社会や環境を変えていきたい。そこで辿り着いたのが『社会的処方』というテーマでした」

そう話すのは理事を務める芦澤郁哉さん。「社会的処方」とは医療機関の取り組みの一つで、薬などの処方だけでなく、社会的な繋がりも処方するというもの。例えば、郵便局に隣接した場所で年金受給日に看護師さんが高齢者の健康相談に乗ったり、地域の資源を最大限に活用して、悩みを抱える人々と触れ合うことなどが挙げられます。こうした考えを実社会に置き換え、1つの分野だけでは解決し難い社会課題においてファシリテーターという役割を担い、「学び」という部分からさまざまな領域の人々を繋ぎ、地域の困りごとを解決する。法的な窓口ばかりに頼るのではなく、自分達から困っている人に出会いに行こうというのが今回の事業、「社会的処方を目指した生態系構築モデル」です。休眠預金を活用し、委託事業としてではなく、自主的な事業として確立できるようチャレンジすることになりました。

 プロジェクトの進捗、今後の展開について共有。襖に貼られた付箋からも活動の様子が伺えます。
プロジェクトの進捗、今後の展開について共有。襖に貼られた付箋からも活動の様子が伺えます。

2020年度にスタートした「社会的処方の学校」の講座では、分野を問わず参加者自身が自然と行動に移せる仲間づくりを目指し、3〜4人のチームに分かれて課題に取り組んできました。。相手の困りごとをこちら側が勝手に判断をしないことを念頭に、悩みを持つ本人との関係性を深め、向き合い方を捉え直して解決へと導く。さらに「(人が)力を持てる地域、環境づくり」を目指し、対象者が自らの力で歩き出せる環境を作るためにできることを考え、実践へと落とし込んでいく流れです。
同時に社会的処方を実践する上で、当事者に必要な人、物事、環境などを繋ぐ役割「リンクワーカー」の育成を目指します。

開講以来、全5回の講座を終えた今、同様の意味合いを持ちながらも異なる表現ですれ違いを起こしていた事柄も丁寧に言葉を紡ぐことで、専門領域を超え新たな視点からサポートを実現するという強い意識が芽生えているそうです。問題意識を持ちながら、今ある行政制度を底上げする。より良い効果が出る道の模索が続いています。

本プロジェクトのゴールである3年後を目指し、今後はより視点を広げた環境づくりに取り組み、純粋に社会的処方という考えや、リンクワーカーとして担うべきことを定義づけることに注力していくとのこと。課題解決に向けて、幅広い世代のスタッフと分野を超えた参加者の皆さんが力強く歩みを進めている様子が印象的でした。
ボンドプレイスを支える(写真左から)野口雅美さん、芦澤郁哉さん、加藤香さん。庭先から見える富士山を背に1枚!

本プロジェクトのゴールである3年後を目指し、今後はより視点を広げた環境づくりに取り組み、純粋に社会的処方という考えや、リンクワーカーとして担うべきことを定義づけることに注力していくとのこと。課題解決に向けて、幅広い世代のスタッフと分野を超えた参加者の皆さんが力強く歩みを進めている様子が印象的でした。

リユースお弁当箱で子育てママの孤立を救おう!〈スペースふう〉

最後は、子育て中のママさんたちを「食」を通じて応援する認定NPO法人スペースふうを訪れました。1999年に小さなリサイクルショップをオープンさせ、以来、南巨摩郡富士川町を拠点に地域活性や女性の自立支援などを中心に活動をしています。これまでの活動はもちろん、昨今の取り組みの中でスペースふうのメンバーが強く感じ取っていたのは、やはり「孤独」、「孤立」という問題。それらは、コロナ禍を受けて加速傾向にあります。自分が本当に必要とされているのか…、そんな不安を払拭しつつ、自分を大切にできる場所づくりにチャレンジすることにしました。そこで誕生したのが、休眠預金を活用した「リユースお弁当箱がつなぐ地域デザイン事業」です。産後のママさんをはじめ、子育て家庭に向けて「hottos(ホットス)プロジェクト」を立ち上げ、リユース食器などを使用した宅配お弁当サービスをスタートさせました。

事務所の横に隣接する建物は、たくさんのリユース食器の洗浄や保管をするスペースに。衛生面も徹底的に管理され、清潔な空間が保たれています。
事務所の横に隣接する建物は、たくさんのリユース食器の洗浄や保管をするスペースに。衛生面も徹底的に管理され、清潔な空間が保たれています。

特筆すべきは、リユースのお弁当箱(食器類)のメンテナンス、そしてお弁当を包む可愛らしい手ぬぐいをはじめ、hottosのロゴ、LINEの運用など、活動の中枢を子育て中のママさんたちが担っていること。長時間の労働が難しいママさんたちに、それぞれの強みを活かした新しい仕事、居場所を提供することで社会との繋がりや会話が生まれているのだそうです。

事務局の長池伸子さんはいいます。 「活動するための準備や特別な知識がない状態でも、社会課題と向き合うチャンスと思いを受け入れ、実践しながら活動に取り組めるのは休眠預金だからこそ。担当POのアドバイスを受けながら、近隣県域のNPO仲間等とも連携して一緒にゴールを目指せる環境が活動の支えになっています。 これからも誰に頼れば良いか分からないなど、気持ちや環境に余裕がない人をそっと見守る存在として、いい意味で新しい形のお節介をしていきたいですね」

事務局の長池伸子さんはいいます。 「活動するための準備や特別な知識がない状態でも、社会課題と向き合うチャンスと思いを受け入れ、実践しながら活動に取り組めるのは休眠預金だからこそ。担当POのアドバイスを受けながら、近隣県域のNPO仲間等とも連携して一緒にゴールを目指せる環境が活動の支えになっています。 これからも誰に頼れば良いか分からないなど、気持ちや環境に余裕がない人をそっと見守る存在として、いい意味で新しい形のお節介をしていきたいですね」

美味しいと評判のお弁当は、南アルプス市で活動する「Public House モモ」によるもの。注文は予約制で、祝日を除く毎週木曜日と金曜日にスタッフが手渡しでお届けしています。利用費用は、なんと一食100円。各種アレルギーなどにも対応し、肉や野菜など、種類豊富で彩りも豊かなおかず類は食べるのはもちろん、見た目にも楽しい気持ちになります。現在の利用者は富士川町に住む11名の新米ママさんや子育て家庭。まだまだ少数ではあるものの、「産後の大変な時に本当に助かったし、優しい言葉もかけてもらえてホッとした」といった声が届いています。連絡手段には、利用者世代のママさんが使いやすいLINEを導入し、繋がりやすさも工夫。利用者さんからの口コミで広がることの重要性を体感しているそうです。

(写真左)モモのスタッフが作るお弁当メニューを特別にいただきました。冷凍食などをできるだけ使わないようにするなど、愛情も満点!ごちそうさまでした。 (写真右)お弁当はボンドプレイスと共有している古民家の台所で作られています。
(写真左)モモのスタッフが作るお弁当メニューを特別にいただきました。冷凍食などをできるだけ使わないようにするなど、愛情も満点!ごちそうさまでした。 (写真右)お弁当はボンドプレイスと共有している古民家の台所で作られています。
現在は子育て世代を中心としているものの、今後はその枠を広げ、お弁当を通じたコミュニケーションから子どもたちや若者が社会課題を解決する力を持てる地域づくり、さらには次世代への橋渡しにも挑みたいという長池さん。本プロジェクトを遂行する上で、こうした活動の過程を開示しながら持続可能な組織として自立し、新たなビジネスモデルとしての確立が目下の課題であることを改めて担当POとの対話で再確認しました。
スペースふうの事務所にて。(写真左から)理事長 永井寛子さんと長池伸子さん。

現在は子育て世代を中心としているものの、今後はその枠を広げ、お弁当を通じたコミュニケーションから子どもたちや若者が社会課題を解決する力を持てる地域づくり、さらには次世代への橋渡しにも挑みたいという長池さん。本プロジェクトを遂行する上で、こうした活動の過程を開示しながら持続可能な組織として自立し、新たなビジネスモデルとしての確立が目下の課題であることを改めて担当POとの対話で再確認しました。

キーワードは「お弁当を開けた時のホッとする瞬間」。「孤独」や「孤立」から多くの人を見守る事業モデルに今後も注目していきたいと思います。

【事業基礎情報】

資金分配団体 

認定特定非営利活動法人 富士山クラブコンソーシアム構成団体:公益財団法人長野県みらい基金

助成事業
甲信地域支援と地域資源連携事業 ~こども若者が自ら課題を解決する力を持てる地域づくり事業~
活動対象地域
甲信地域(山梨県・長野県)
実行団体

★特定非営利活動法人 河原部社


★特定非営利活動法人 bond place


★認定特定非営利活動法人 スペースふう


特定非営利活動法人 こどもの未来をかんがえる会


一般社団法人 信州上田里山文化推進協会(旧:杜の風舎)


★印の団体が今回の訪問先です。



休眠預金活用シンポジウム(2022年5月開催)で放映した「休眠預金活用事業紹介ムービー」では紹介できなかった映像を再編集しました。ぜひご覧ください。

今回の活動スナップは、特定非営利活動法人芸術家と子どもたち(資金分配団体:特定非営利活動法人 まちぽっと)。休眠預金活用シンポジウム(2022年5月開催)で放映した「休眠預金活用事業紹介ムービー」の制作にご協力いただきました。シンポジウム用の動画ではご紹介できなかった動画を再編集し、撮影に同行したJANPIA職員のレポート共に紹介します。””

活動の概要

芸術家と子どもたちは、東京都豊島区を拠点に、現代アーティストと子どもが出会う「場づくり」を行っているNPO法人です。アーティストが小中学校や児童養護施設、特別支援学級などへ出かけていき、ダンスや演劇、音楽などのアートに関するワークショップを実施することで、多様な子どもたちに文化的な体験を提供してきました。

2020年からは3か年計画で休眠預金を活用し、母子生活支援施設や子ども食堂に通う子どもたち、外国にルーツを持つ子どもたちなどを対象にした活動をスタート。音楽や演劇、ダンスなどを用いて、自己表現力や自己肯定感、コミュニケーション能力を育んでいます。

活動スナップ

撮影に同行したJANPIA職員のレポート

堤康彦さん、撮影の様子。撮影はZAN FILMSの本山さん、もろこしさん。

「アーティストはモノの見方が新しくおもしろい。そういったアーティストの専門性やクリエイティビティと、子どもが出会うことで、どんな化学反応が起きるのかワクワクしませんか」

『芸術家と子どもたち』の代表を務める堤康彦さんが、活動を始めたきっかけを紹介してくれました。例えば、学校の授業では学習が難しく、突飛な行動をしてしまう子どもが、アーティスト・ワークショップではおもしろいアイデアを出して生き生きとリーダーシップを発揮するケース。正解や間違いがなく、おもしろがったり褒めあったりすることで「みんなが認め合える場」として、アーティスト・ワークショップを子どもに届けています。

一方で、活動の根幹には強い課題意識があります。日本社会、特に東京のような都市部で暮らす子どもは、日々の生活に困難さを感じているのではないか。子どもにとって大切な「体験する機会」が奪われていないか。コロナ禍で、貧困家庭やひとり親家庭の子どもはどう過ごしているのか。

『芸術家と子どもたち』がアーティスト・ワークショップを重視している理由は、子どものときから自分を素直に出して人とコミュニケーションをする体験が、とても有効だと考えているからです。自己肯定感が低くて自信を持てないことは、他者との関係構築が難しくなるなど、人間関係にさまざまな弊害をもたらすため、子どものときにありのままの自分を認める体験を届けようとしています。

休眠預金を活用し、資金分配団体である『まちぽっと』の伴走支援を受けて活動を進めるなかで、豊島区内の団体でのコラボレーションが実現しました。同じ豊島区で、子ども食堂や遊び場を運営する『豊島子どもWAKUWAKUネットワーク』との連携が実現し、食堂に集まる子どもを対象に演劇のワークショップを定期的に行っています。

この連携によって活動の幅が拡がっただけでなく、とても大切な気づきがあったと事務局長の中西麻友さんが教えてくれました。

中西麻友さん、撮影の様子。

「今までは児童養護施設などの既存施設にいる子どもを対象に活動してきましたが、今回活動してみたことで、その入所対象からは外れてしまうものの、困難な状況にいる子どもがいることを知りました。そういう子どもの存在は見えにくく、制度に置き去りにされています。彼らに対して私たちが何かできることはないか、と考え始めました」

この問題意識をもとに、福祉の現場で活動する団体との連携をさらに進め、母子生活支援施設※の子どもに向けたワークショップも開始しました。

※生活上のさまざまな課題を抱え、子どもの養育に困難を抱える母子世帯の生活と自立を支援する児童福祉施設。

ワークショップの最後に行う発表会には、地域の大人も招待しています。地域の人が見守っていてくれて、褒めてもらえると、子どもは「自分は見てもらえている」という実感を得ることになるからです。

「人とつながる経験は子どもの心に残って財産になり、成長して壁にぶつかったとしても、前向きな原動力になると信じています」

中西さんが力強く話してくれた言葉が、とても印象に残りました。

【事業基礎情報】

実行団体特定非営利活動法人芸術家と子どもたち
事業名プロの芸術家による表現ワークショップを通じた当事者の交流及び共同創作事業
活動対象地域東京都
資金分配団体特定非営利活動法人 まちぽっと
採択助成事業市民社会強化活動支援事業
〈2019年度通常枠〉
休眠預金活用事業の実行団体である、龍ケ崎市B&GUSC海洋クラブの活動紹介です。

今回の活動スナップは、上智大学の学生さんと、そのインターンシップ先である特定非営利活動法人グッド・エイジング・エールズのメンバーとの顔合わせの様子をお届けします。

活動の概要

JANPIAがつなぎ役となり、上智大学国際教養学部の学生さんが2つの資金分配団体「特定非営利活動法人 エティック(2019年度通常枠)」「READYFOR株式会社(2020年度緊急支援枠)(2021年度コロナ対応支援枠)」の実行団体として休眠預金を活用している『特定非営利活動法人 グッド・エイジング・エールズ』でインターンシップを行うことになりました。今回、学生の石川さんが、グッド・エイジング・エールズがコンソーシアムで運営しているLGBTQ+総合センター『プライドハウス東京レガシー』(新宿区)にて、代表の松中権さんはじめメンバーの皆さんにお会いするということで、JANPIA企画広報部メンバーが一緒に訪問してきました。

活動スナップ

インターンシップは、上智大学国際教養学部の科目の一環で今年度初めて実施されるもので、JANPIAは実行団体を紹介し伴走する形で連携しています。

上智大学の石川さんは、親友が2年ほど前からLGBTQ+の支援団体でインターンをしていた関係で、LGBTQ+の分野に非常に興味があり、今回グッド・エイジング・エールズでのインターンシップを希望したそうです。

約3か月間のインターン期間中、石川さんは主に得意の英語を活かした英語でのSNS発信と、公益社団法人東京青年会議所主催の6月11日-12日のイベントのブース出展、プライドハウス東京レガシー主催の8月20-21日に予定している24 歳以下の子ども・ユースの教育×LGBTQ+に関するカンファレンスの準備に携わる予定です。

グッド・エイジング・エールズの活動については、次の記事も是非ご覧ください。

世界でいちばんカラフルな場所を目指して!| グッド・エイジング・エールズ 松中権さん × エッセイスト 小島慶子さん【聞き手】

左から松中権さん、石川さん、スタッフの小野アンリさん
左から松中権さん、石川さん、スタッフの小野アンリさん

■事業基礎情報【1】

実行団体
特定非営利活動法人グッド・エイジング・エールズ
事業名

日本初の大型総合LGBTQセンター「プライドハウス東京」設立プロジェクト

-情報・支援を全国へ届ける仕組みを創り、LGBTQの子ども/若者も安心して

暮らせる未来へ-

活動対象地域東京都、及び全国
資金分配団体特定非営利活動法人エティック
採択助成事業

『子どもの未来のための協働促進助成事業

~不条理の連鎖を癒し、皆が共に生きる地域エコシステムの共創』

〈2019年度通常枠〉

■事業基礎情報【2】

実行団体
特定非営利活動法人グッド・エイジング・エールズ
事業名

LGBTQ中高齢者の働きがい・生きがい創出

活動対象地域全国
資金分配団体READYFOR株式会社
採択助成事業

『新型コロナウィルス対応緊急支援事業

 ~子ども・社会的弱者向け包括支援プログラム』

〈2020年度新型コロナウィルス対応緊急支援助成〉

■事業基礎情報【3】

実行団体
特定非営利活動法人グッド・エイジング・エールズ
事業名

LGBTQ+ユースの学習支援・相談事業

活動対象地域東京都
資金分配団体READYFOR株式会社
採択助成事業

深刻化する『コロナ学習格差』緊急支援事業

〈2021年度新型コロナウィルス対応支援助成〉

今回の活動スナップは、内閣府とJANPIAで共催した 2022年5月11日「休眠預金活用シンポジウム 休眠預金活用ノススメ」の写真と動画をご紹介します。

活動の概要

休眠預金とは、銀行等に預けられた預貯金のうち、10年以上にわたり入金・出金等がないお金のこと。国・自治体では対応が困難な社会課題に対し、NPOなどの民間の様々な団体が行う公益活動へ、休眠預金を活用する新しい仕組み(休眠預金活用制度)が2019年度よりはじまり、2022年で4年目を迎えます。活動支援の分野は『子供や若者の支援』、『日常生活などで困難を有する方の支援』、『社会的に困難な状況に直面する地域の支援』の3つです。今回のシンポジウムでは、休眠預金活用の更なる発展とソーシャルセクターの基盤強化に向けた機運の醸成を目的に、制度関係者や活動している団体、有識者をお招きし、この制度の現状や課題、今後の展望を議論しました。

活動スナップ

開催挨拶

開会挨拶 加藤 勝信様[前内閣官房長官/衆議院議員/休眠預金活用推進議員連盟 会長]
 開会挨拶|動画リンク


休眠預金活用事業の現状報告

報告 岡田 太造[一般財団法人 日本民間公益活動連携機構 理事]

 報告|動画リンク

第1部 「その時、扉が開いた」
基調講演

第1部 基調講演 菅 義偉 様[前内閣総理大臣/衆議院議員/休眠預金活用推進議員連盟 顧問]

 第1部 基調講演|動画リンク

第1部 「その時、扉が開いた」パネルディスカッション

第1部 
パネリスト
青柳 光昌様[一般財団法人 社会変革推進財団 専務理事]
野村 修也様[中央大学法科大学院 教授/休眠預金等活用審議会 委員]
山本 ともひろ様[衆議院議員/休眠預金活用推進議員連盟 幹事]

コーディネーター
谷合 正明様[参議院議員/休眠預金活用推進議員連盟 幹事]

 第1部パネルディスカッション|動画リンク

※ご登壇が予定されていた 駒崎 弘樹様[
認定特定非営利活動法人フローレンス 代表理事]はご都合によりご欠席となりました。

第2部 「実はここにも休眠預金」
基調講演

第2部 基調講演 野田 聖子様[内閣府特命担当大臣]
 第2部基調講演|動画リンク
※公務のご都合により、ビデオメッセージ

第2部 「実はここにも休眠預金」 パネルディスカッション

第2部 
パネリスト
石原 達也様[特定非営利活動法人 岡山NPOセンター 代表理事]
今村 久美様[認定特定非営利活動法人 カタリバ 代表理事]
山口 美知子様[公益財団法人 東近江三方よし基金 常務理事]
水津 陽子様[合同会社フォーティR&C 代表社員]

コーディネーター
大串 博志様[衆議院議員/休眠預金活用推進議員連盟 幹事長]

 第2部パネルディスカッション|動画リンク

第3部 「休眠預金の将来的な発展へ」パネルディスカッション

第3部 
パネリスト
鵜尾 雅隆様[認定特定非営利活動法人 日本ファンドレイジング協会 代表理事]
高橋 進様[株式会社日本総合研究所 チェアマン・エメリタス]
藤沢 久美様[株式会社国際社会経済研究所 理事長]
宮垣 健生様[但馬信用金庫 常務理事 総合企画部長]

コーディネーター 兼 パネリスト
二宮 雅也[一般財団法人 日本民間公益活動連携機構 理事長]

 第3部パネルディスカッション|動画リンク

※ご登壇が予定されていた 坂井 学様[衆議院議員/休眠預金活用推進議員連盟 事務局長]はご都合によりご欠席となりました

終了挨拶

終了挨拶 古川 元久 様[衆議院議員/休眠預金活用推進議員連盟 会長代理]
 終了挨拶|動画リンク

 

司会者/お花のご紹介

[司会] 矢作 奈穂子様

[お花] 一般社団法人ローランズプラス様[2020年度緊急支援枠・実行団体/資金分配団体:READYFOR株式会社]に依頼しました。

スタッフ

今回のシンポジウムは、配信スタッフ(ZAN FILMS)の皆さん、そして内閣府 休眠預金等活用担当室の皆さんとの連携で実現しました。この場を借りてお礼申し上げます。

▼シンポジウム当日の配信動画アーカイブはこちら▼

2022年5月11日に開催されました休眠預金活用シンポジウム「休眠預金活用ノススメ」の動画を

ご覧いただきやすいように、プログラムごとに編集しました。ぜひご覧ください!

  • 01 開催挨拶 
    https://youtu.be/gEEIjT9Wncw
  • 02 JANPIAからの報告 
    https://youtu.be/SYBxlNYHV-Y
  • 03 第一部 基調講演 
    https://youtu.be/KltSo5MVZFI
  • 04 第一部 パネルディスカッション 
    https://youtu.be/FTKuHPsZDsw
  • 05 第二部 基調講演 
    https://youtu.be/xWHJnoG-1j8
  • 06 第二部 パネルディスカッション 
    https://youtu.be/OcU1MIWmX-o
  • 07 第三部 パネルディスカッション 
    https://youtu.be/KxhxWoCtlhU
  • 08 終了挨拶 
    https://youtu.be/Lul3huDMGn4
  • 2022年5月11日開催「休眠預金活用シンポジウム」で上映した、休眠預金活用事業の紹介ムービーです。

    社会的規範への意識が低く、「非行少年」と呼ばれる未成熟な子どもたち。一度、社会のルールから外れてしまうと、日本のシステムにおいては、少年たちに繊細なサポートが行き届かない現状にあります。そんな彼らに手を差し伸べ、「就労支援」という形で立ち直りへの足掛かりをつくっているのが、2019年度通常枠(資金分配団体:更生保護法人 日本更生保護協会)の実行団体である「認定特定非営利活動法人 神奈川県就労支援事業者機構」です。今回は就労支援の現場に伺い、再犯防止にもつながる就労支援の活動を始めたきっかけや事業内容について、事務局長・竹内政昭さんと協力事業主の青木工務店代表・青木哲也さんにインタビューしました。

    木の香りに包まれる建具づくりの就労体験で、時おり笑顔も

    爽やかな木の香りに包まれる製作所で無心に鉋(かんな)をかける少年。まだ成長過程かと思われる華奢な体で、初めて触れたという鉋に体重をかけ、丁寧に細木を削っています

    ここは、青木工務店(神奈川県大和市)の中にある建具製作所。少年は家庭裁判所から神奈川県就労支援事業者機構に推薦され、職場体験に来ています。この事業での職場体験とは、非行少年が企業等での職場体験を通じて、人や社会に触れ合うことの喜びを知り、立ち直りのきっかけをつくることを目指す活動です。具体的には、少年たちを興味ある分野の職場で2日間実際に体験してもらいます。肌に合えばそのまま就職したり、別の職場を紹介してもらったりしながら、職場体験が社会への第一歩を踏み出すきっかけになります。

    今日の少年は建築大工と造園に興味があるといい、青木工務店が受け入れました。ここではまず、鉋を使って自分の箸をつくるよう指導します。最初は緊張ぎみだった少年も、指導員や立ち合い人の竹内政昭さん(認定特定非営利活動法人神奈川県就労支援事業者機構 事務局長)に筋の良さを褒められると、はにかむような笑顔を見せるようになりました。その後も時間をかけて何度も削り直し、やがてただの小さな木材は丁寧な作業によって美しい箸に変わります。引き続き、建具に入れ込む組木細工をやってみるかと問われ、小さくうなずきました。

    研修後、自らの手で仕上げた数本の箸と十文字の組木細工を手にした少年は、職場体験の感想をとつとつと、しかし自信を感じる声で話してくれました。「最初は簡単かと思っていたけど、やってみたら難しくて不安になりました。どんなふうに力を入れたらいいかを考えながら、自分なりに発想を広げてやってみました。いろいろな考え方を持つことができた気がします」。

    少年が作った箸と細木細工
    少年が作った箸と細木細工

    そう話す少年のそばには、これまで家庭裁判所から少年の職場体験の推薦を受けてからずっと寄り添って話を聞き、励ましてくれた竹内さんがいます。その大きな安心感があったからこそ、少年は研修での学びを前向きに考えられるようになったのかもしれない、と感じるひとコマでした。

    人手不足が深刻化する建設業界に光をもたらす、就労支援活動への協力

    少年を受け入れた青木工務店は、神奈川県大和市で100年の社歴があります。その4代目
    代表取締役を務める、青木哲也さん。人手不足が進む昨今の建設業界にあり、青木さんもまた担い手不足に悩んでいました。7~8年前、顧客だった保護司※に大工見習が集まらないことを話したところ、非行少年たちの立ち直り支援活動の一環として「就労支援」という活動があることを聞きます。青木さんは早速、非行少年の就労を受け入れる「協力雇用主」として登録。ここから、青木工務店による就労支援活動への協力が始まりました。

    <保護司>犯罪をした者や非行少年の社会復帰を助けるとともに、犯罪予防の啓発に努め、安心・安全の地域社会づくりに貢献することを使命としている。

    青木さんは笑顔で想いを語ってくださいました。
    青木さんは笑顔で想いを語ってくださいました。

    「誰かを救いたいとか、社会貢献などと崇高な意識を持っているのではなく、建築大工の不足を考えてのこと。一人でもこの職業に興味を持ってもらえればと思って、協力態勢を整えただけのことです」と笑う青木さん。

    ものごとを色眼鏡で見ない性格、とご自身を評するように、青木さんは誰に対してもニュートラルな姿勢で気負いがありません。

    少年たちを受け入れるときに青木さんが最も注意しているのが、「観察」と「声かけ」です。
    「これまで少年たちを見てきて分かったのですが、彼らの多くは自尊心が非常に低くなっています。自己肯定感がないので、ちょっとしたことで傷つき、自分を見失ってしまうんですね。職場体験後、入社してくれても先輩や親方に叱られただけで、突然寮からいなくなるケースは少なくありません」

    少年たちは周りの大人との出会いに恵まれていないことが多く、自らSOSを出すことが難しい状況にあるケースも少なくありません。困ったときに誰かに相談して解決策を見出すのではなく、そこから逃げることを選んでしまうのです。そのため青木さんは、日ごろから少年たちの表情や声の調子、立ち居振る舞いを観察し、今の状態を把握しています。困っていそうな子にはさりげなく声をかけて励まし、相談のきっかけをつくることもあるのだとか。

    「私は以前、子どもを病気で亡くしているんです。だから少年たちには、健康で生まれてきたのに人生を無駄にしてほしくない。その命を社会で守り、生かしてあげたいと思うんです。モノづくりは成果が目に見え、やりがいも大きい。職人の世界は厳しいけれど、技術を身につけるととても面白いので、ぜひ興味を持って臨んでほしいですね」と青木さん。辛い体験を通して感じてきた少年たちへの深い思いを、ちらりと覗かせてくれました。

    少年たちに居場所を用意し、再犯防止と健全な社会づくりの一助としたい

    青木工務店に就労支援への協力を依頼しているのは、認定特定非営利活動法人神奈川県就労支援事業者機構です。事務局長である竹内さんは、かつて法務省の保護観察所に勤務し、業務の中で非行少年らの生活指導にも携わっていました。しかし、就労支援に関しての業務はなく、これまでは保護司が個人的に知り合いの経営者などに頼み込んで雇ってもらうという形が主流でした。

    竹内さんは就労支援の重要性について、穏やかな熱意を込めて話してくれました。 「保護観察所にいたとき、個人が動ける範囲でしか就労支援ができない状況を残念に思っていました。少年たちには家庭的な問題や経済的事情を抱えているケースが多く、それが原因で道を踏み外すことになります。善良な大人のいる職場で仕事と健全な居場所をつくり、経済的に自立させることができれば、彼らはきっと立ち直れるはずなんです」 そんな思いが形となったのは2009年。全国就労支援事事業者機構から保護観察所や民間更生保護団体への働きかけ、設立事務に関する助言などの協力を得て、「神奈川県就労支援事業者機構」が設立されました。竹内さんも立ち上げから携わっています。
    少年から作った箸の報告を受ける神奈川県就労支援事業者機構 竹内さん

    竹内さんは就労支援の重要性について、穏やかな熱意を込めて話してくれました。 「保護観察所にいたとき、個人が動ける範囲でしか就労支援ができない状況を残念に思っていました。少年たちには家庭的な問題や経済的事情を抱えているケースが多く、それが原因で道を踏み外すことになります。善良な大人のいる職場で仕事と健全な居場所をつくり、経済的に自立させることができれば、彼らはきっと立ち直れるはずなんです」 そんな思いが形となったのは2009年。全国就労支援事事業者機構から保護観察所や民間更生保護団体への働きかけ、設立事務に関する助言などの協力を得て、「神奈川県就労支援事業者機構」が設立されました。竹内さんも立ち上げから携わっています。

    <全国就労支援事業者機構>経済界全体の協力により、罪を犯した人への就労支援などを行い、安全で安心な社会づくりに貢献するNPO団体


    立ち上げ当初から神奈川県就労支援事業者機構では、罪を犯した人や非行少年らの雇用に協力してくれる会社と連携し、罪を犯した人たちの就労を支援していましたが、川崎市で起こった中学生殺害事件を契機に、少年たち、取り分け非行の芽が小さな少年には、他の関係機関からも支援の手が届かないでいたことから、そうした少年にも支援を広げようと思うようになります。
    「スタッフたちと自己資金で回す覚悟をしていたところ、休眠預金活用事業を知り、申請をしました。」

    休眠預金活用事業の資金分配団体である日本更生保護協会からの助成を受け、2019年、無職の少年らに希望する職種で仕事の体験ができる職場体験活動と就職後も長く働けるように行う職場定着活動の2つの事業を立ち上げることができました。

    職場体験は15歳~20歳の少年を対象に実施しており、1日3~4時間程度の作業に2日間就いてもらいます。業種は幅広く、建築関係から農業、介護、理美容など多岐にわたります。たとえ就職につながらなくても、少年たちにとって職場の空気に触れることが、社会に出るきっかけになります。たとえば保育園の補助を体験して保育士に興味を持てば、資格を取るため学習意欲が湧き、学校へ戻ることもあるでしょう。大事なのは、職場体験を通じて働く喜びや社会と触れ合う意義を知ることなのです。

    就労支援に参加してくれる協力雇用主は、竹内さんらが個別に訪ねて開拓してきました。現在800社を超えるのですが、本事業の「非行少年の職場体験活動」にご協力いただいているのは現在40社ほどです。これまでに職場体験を通じて、ひきこもりの少年が職場体験から外に出られるようになったり、農業を選んだ少女が派手なつけ爪を外し、就職先の農場で日焼けしながら働いていたりするそうです。少年たちを気にかけて様子をうかがってきた竹内さんは、「こういう子が心を取り戻してくれるのを見るのが何より嬉しいです」とにっこり。

    協力雇用主との折衝は、竹内さんが最も留意するところです。代表者だけが就労支援について理解していても、職場で指導する社員や同僚に理解がないと禍根を残します。そのため、協力雇用主との打ち合わせの際は、少年への接し方から指導にあたる社員の対応、雇用した場合の注意点など細かいアドバイスを欠かしません。

    神奈川県就労支援事業者機構では、就労支援活動で少年が無事に就職ができた場合、1年後と3年後に調査し、1年続いたら会社へ、3年続いたら少年に記念となるものを渡すといいます。「1年はその会社の努力によるもの、3年も続くのは本人の努力によるものだから、それぞれの記念になればと思って」と竹内さん。

    陰となり日向となり、少年の更生に力を尽くしてくれる大人がいることが、少年たちの未来への強い支えになっていくことを願ってやみません。


    【事業基礎情報】

    実行団体認定特定非営利活動法人 神奈川県就労支援事業者機構
    事業名無職・非行等少年の職場体験・職場定着事業
    活動対象地域神奈川県
    資金分配団体更生保護法人日本更生保護協会
    採択助成事業

    安全・安心な地域社会づくり支援事業

    草の根活動支援事業・全国ブロック〈2019年度通常枠〉


    今回の助成では特に「公益的な事業で、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う影響を受け事業の推進に当たり支援を必要としている団体やポストコロナを見据えた新たなチャレンジ」に対して助成しました。