グラミン日本 2023年度休眠預金活用事業「デジタル・スキル研修&就労支援を通じたシングルマザーのエンパワーメントと地域格差の解消」に採択された徳島の実行団体ウィズワークラボの代表 角 香里さんのインタビュー動画をご紹介します。
公益財団法人パブリックリソース財団主催『活動報告セミナー第一弾「女性支援に求められるもの:研究と支援の現場より」』の動画をご紹介します。
「困窮女性の経済的自立を目指す、居住・生活支援から就労までの包括支援」 をテーマに女性ホームレスの生活実態調査結果や、愛媛県松山市や東京都台東区での実践報告などをもとに、困窮する女性達が抱える悩みや包括的な支援のあり方、行政等の関連機関とのネットワーク構築についての動画をご紹介します。
「盲ろう者」とは目(視覚)と耳(聴覚)の両方に障害を併せ持つ人のこと。厚生労働省の調査によると、その人数は全国に1万4千人ほどと推定されています。視覚と聴覚に障害があると、日常生活においてさまざまな困難が生じますが、そうした盲ろう者の自立と社会参加を目指して活動しているのが全国各地の「盲ろう者友の会」です。今回は、2021年度通常枠に採択された「NPO法人千葉盲ろう者友の会」(資金分配団体:社会福祉法人全国盲ろう者協会)を訪問。同会の活動や課題、今後の展望についてお話をうかがいました。インタビューに答えていただいたのは、ご自身も盲ろう者である理事長の加藤清道さん、事務局の田中幾子さん、奥村由貴子さん、秦綾子さん、時松周子さんです。
交流会からスタートし、さまざまな支援事業へと活動範囲を広げる
1991年に東京都で「東京盲ろう者友の会」が誕生したことをきっかけに、全国各地で盲ろう者友の会設立に向けての動きが活発になりました。千葉県では、かねてから県内の盲ろう者が交流会を開いており、そこから友の会設立に向けての動きが始まったそう。そんな中、2004年11月に任意団体として「千葉盲ろう者友の会」が設立され、2009年に NPO 法人化。現在に至っています。
加藤清道さん(以下、加藤)「任意団体の頃は、会員である盲ろう者の交流が活動の中心で、そのほかはPR活動くらいでした。NPO法人になった2009年からは千葉県の委託事業として盲ろう者向けの通訳・介助者の派遣事業や育成事業を行ったり、当事者に向けて生活訓練事業や相談支援事業も始めたりと、活動の幅を広げていきました」
NPO 化した当初から取り組んでいる活動の一つが、通訳・介助者を育成し、求めている人の元へ派遣することです。盲ろう者は、周りの人と会話することが難しく、情報が入りにくい。また、移動するのにも困難があり、一人では安心して外出することができない人もいます。そのため、盲ろう者が安全・快適な生活を送るには、通訳・介助者の存在は非常に重要です。
しかし、一言で盲ろう者といっても、人によって必要な支援は異なります。例えば、少し聴力が残っている方であれば、耳元や補聴器のマイクに向かって話しかけることができますし、視力が残っている場合は、紙や筆談ボードで見えやすい大きさの文字を書いて伝えることができます。まったく見えず聞こえない「全盲ろう」の場合は、手のひらに文字を書いたり(手のひら書き)、手話を手で触って読み取ってもらったり(触手話)して伝えることができます。そのため、通訳・介助者は、こうしたさまざまなコミュニケーション手段を身につけ、相手に応じたやり方でサポートしなければなりません。こうした専門的な知識や技術を持つ、通訳・介助者を世に送り出すことは、大切な活動です。

盲ろう者自身が声を上げることで、伝えられるものがある
最近は、支援を求めている盲ろう者を探す“掘り起こし”や、社会に向けた啓発活動にも力を入れています。今、千葉県内には視覚と聴覚両方の障害者手帳を持っている人は約300人と推計されていますが、千葉盲ろう者友の会で把握している人数は40人ほどにすぎません。つまり、県内でもまだ出会えていない盲ろう者がたくさんいるということ。その中には、必要な支援を受けられていない人や、孤独な状況に置かれている人もいるかもしれません。盲ろう者本人やその家族なども、周囲との交流がなく、ほかの盲ろう者がどのような生活をしているかを知らないことも多いのが現状です。
そこで、県内の全市町村を訪問し、盲ろう者についての説明やパンフレットを配布。「身近に目と耳の両方が不自由な方がいらっしゃったら教えてください」と呼びかけることで、盲ろう者とのつながりを広げていこうとしています。
また、多くの人に盲ろう者のことを正しく知ってもらうための啓発活動として、福祉関連イベント等に積極的に参加。当事者による講演会や、触手話や指点字といったコミュニケーションの体験会によって、盲ろう者への理解を深めてもらうことと、千葉盲ろう者友の会の認知向上を図っています。

加藤「適切なサポートを受けるためには、まずは知ってもらうこと。ですが、多くの人は、盲ろう者のことをあまり知りません。目も耳も不自由だとどんな生活をしているのだろうか、家にずっと引きこもっているのだろうか、などと思われがちです。盲ろう者はコミュニケーションに困難を抱えていますが、それでも自分の言葉で一生懸命に伝えることが、周囲の人の心を動かし、支援につながるのではないかと考えています。」
実際に、多くの人が想像している以上に、盲ろう者にはさまざまなことができるそう。加藤さんは自身の経験もまじえながら語ります。
加藤「私自身、40代半ばに盲ろう者になり、仕事を辞めようかと考えたこともあったのですが、会社に相談して拡大読書器や視覚障害者向けのソフトを購入してもらい、それらを使いこなすことで、60歳の定年退職の年まで勤め上げることができました。毎朝、千葉から東京まで1時間かけて通勤もしていましたね。こうした私自身の経験から、盲ろう者であっても本人の努力と周囲のサポートがあれば、できることがたくさんあると感じています。そのことを盲ろう者やその家族、そして盲ろう者のことを知らない人にも伝えたいんです」
資金不足の解消によって、新たな盲ろう者支援へと踏み出す
千葉盲ろう者友の会は、2021年度に社会福祉法人全国盲ろう者協会(資金分配団体)によって、「盲ろう者の地域団体の創業支援事業」の実行団体として採択され、その資金を活用して盲ろう者向け同行援護事業をスタート。盲ろう者の同行援護事業とは、盲ろう者の外出時における移動やコミュニケーションの支援を指します。

奥村由貴子さん(以下、奥村)「以前から同行援護事業に興味はあったのですが、資金が十分ではなく、現実的ではありませんでした。ですが、2018年に全国で、盲ろう者向けの同行援護事業が始まり、機運が高まったことで、私たちの会でもやってみたいという思いが高まりました。また、そもそも私たちの活動全般において、資金不足は長年の課題でした。予算に限りがあるために、通訳・介助者を思うように派遣できないというケースも。そこで、助成金を得ることができれば、同行援護事業にチャレンジできるのと同時に、会を運営する費用もまかなえるのではないかと考えたんです」
早速準備会を立ち上げ、実現のために動き出した友の会メンバー。まずは、同行援護事業のサービス提供責任者の資格を取得。これまでの盲ろう者向け通訳・介助員の皆さんに声をかけて、同行援護従業者のための研修会なども行い、人員を確保しました。その後、実行団体として無事に採択され、晴れて2023年1月に「同行援護事業所かがやき」を開所することができました。
秦綾子さん(以下、秦):「全国盲ろう者協会の方々には、書類の作成など、事務的な面でさまざまな相談に乗ってもらいました。経理のこともふくめて、基礎的なことから専門的なことまで、迷ったら相談できる存在がある点は、本当に助かりました」
助成金の用途としては、「同行援護事業所かがやき」の開所だけではなく、同行援護従業者の養成研修会をはじめとした人材育成、友の会のさまざまな活動について発信するホームページの制作などにも活用。さらに、盲ろう者の掘り起こしや社会啓発活動もさらに拡大していきました。今までも各市町村役場訪問や地域の福祉イベントなどには積極的に参加していましたが、千葉県は広いため、資金不足でなかなか訪問しづらい市町村もありました。それが解消されたことで範囲を広げることができました。2024年度中には千葉県内すべての市町村役場に足を運ぶことができる見込みです。
田中幾子さん(以下、田中):「市町村を直接訪問することは、私たちにとって大切な活動だと感じています。そもそも市町村では、管轄内の盲ろう者の数を正確に把握していないことがほとんどでした。なぜかというと、視覚障害者や聴覚障害者であれば、それぞれ視覚障害者手帳・聴覚障害者手帳を発行するので、その手続きを通じて人数を把握することができるのですが、両方の手帳を持っている人については、確認をしていなかったからです。今回、盲ろう者の数の把握や社会啓発活動のための訪問をしたいと、各市町村に事前に伝えてしておくことで、担当者の方が訪問時までに数を調べておいてくださるなどして、より正確な状況を把握することができました」
奥村:「ただ、個人情報のため私たちが行政を通じて対象者と直接つながることはできません。ですから、直接訪問した先の福祉イベントなどでパンフレットなどを配布し、『もしお近くに盲ろう者と思われる方がいたら、NPO法人千葉盲ろう者友の会のことを伝えていただけませんか』とお願いをしています」
時松周子さん(以下、時松):「そうした活動の甲斐があって、今年は新たに1名の盲ろう者の方と繋がることができました。数だけでみるとたった1名とも思えるかもしれませんが、その方には友の会のいろいろな活動に参加していただけるようになり、非常に大きな意義があったと思っています。
また、掘り起こしをしていく中で、国や県の基準からは外れていて、サポートを求めている人がたくさんいることも実感しました。例えば、千葉県の盲ろう者向け派遣事業では、原則として視覚障害者手帳と聴覚障害者手帳、両方を持つ人のみが、支援の対象となっています。でも実際には、どちらか一つの手帳しか持っていなくても、病気や加齢によって少しずつ視覚や聴覚が低下していき、生活に困難を抱えている人もいます。なので、私たちの同行援護事業は、そうした人にも利用してもらえるようにしています」
千葉盲ろう者友の会の活動の大きな特色となっているのは、こうした「支援を必要とする人のところに、可能な限り支援の手を伸ばす」という姿勢。盲ろう者といっても、その状況はさまざまです。大きく分けるだけでも、まったく見えず聞こえない「全盲ろう」、全く見えないが少し聞こえる「全盲難聴」、少し見えるが聞こえない「弱視ろう」、少し見えて少し聞こえる「弱視難聴」の4つのタイプがあり、それぞれの障害が生まれつきのものなのか、成年になってから徐々に進行したものなのかによっても、必要なサポートは異なるでしょう。そのため、同会では、公のルールにおける「盲ろう者」に限らず、視覚・聴覚が不自由な人を探し、何に困っているかを聞き、一人一人に寄り添った支援を提供しているのです。

盲ろうという障害がある人もない人も、共に生きる社会を実現したい
最後に、事務局の皆さんに、今後、どのような活動をしていきたいかを伺いました。盲ろう者といっても、障害の程度や状況もさまざまで、コミュニケーション方法も多様であり、だからこそ通訳・介助員といった支援者の育成が難しいという課題があるそうです。それでも、そうした課題を一つ一つ乗り越えて、盲ろう者にとってもっと社会参加がしやすい方向に進めていきたいとお話しくださいました。
加藤さんにも今後の活動や、その先にどのような社会を望んでいるのかを伺いました。
加藤「盲ろう者が社会から取り残されないような活動を目指していきたいですね。盲ろうという障害がある人とない人の間にあるバリアがなくなり、共に生きる社会を実現していきたいと思っています。そのためには、例えば情報機器の発達なども大きな力になると思います。盲ろう者の視覚や聴覚の代わりとなるような機器がどんどん発達していってほしいと思います。盲ろう者は障害によって一般的な会社で働くことが難しいという現状があります。ですが、これからは障害者だから福祉作業所という一択ではなく、もっと普通に働き、自分で稼ぎ、そのお金で旅行をしたりスポーツをしたり、芸術を楽しんだりできる社会になってほしい。人間らしく生きることができる社会ですね。私たちの会ができることは小さなことかもしれませんが、その小さな力を集めることで、大きなことが実現できると信じています」
【事業基礎情報】
実行団体 | NPO法人 千葉盲ろう者友の会 |
事業名 | 盲ろう者の地域団体の創業支援事業 |
活動対象地域 | 千葉県内 |
資金分配団体 | 社会福祉法人 全国盲ろう者協会 |
採択助成事業 | 2021年度通常枠 |
事業完了にあたり、成果の取りまとめるために実施されるのが「事後評価」です。事後評価は、事業の結果を総括するとともに、取り組みを通じて得られた学びを今後に生かせるよう、提言や知見・教訓を整理するために行われます。今回は、2023年3月末に事業完了した2020年度通常枠【居場所の包括連携によるモデル地域づくり|全国こども食堂支援センター・むすびえ[20年度通常枠]】の事後評価報告書をご紹介します。ぜひご覧ください。
事業概要等
事業概要などは、以下のページからご覧ください。
事後評価報告
事後評価報告書は、以下の外部リンクからご覧ください。
・資金分配団体
・実行団体
【事業基礎情報】
資金分配団 | 特定非営利活動法人全国こども食堂支援センター・むすびえ |
事業名 | 居場所の包括連携によるモデル地域づくり <2020年度通常枠> |
活動対象地域 | 全国 |
実行団体 | ・特定非営利活動法人新座子育てネットワーク ・社会福祉法人堺市社会福祉協議会 ・一般社団法人タウンスペースWAKWAK ・社会福祉法人坂井市社会福祉協議会 |
東京都足立区で、地域から孤立している生活困窮子育て家庭に対し、食糧支援や「子ども食堂」の運営などを行っている一般社団法人チョイふる。“生まれ育った環境に関わらず、全ての子ども達が将来に希望を持てるchoice-fulな社会を実現する”ことを目的に、活動しています。2022年に採択された休眠預金活用事業(緊急支援枠、資金分配団体:特定非営利活動法人Learning for All)では、居場所事業「あだちキッズカフェ」の拡充に取り組んできました。今回は、代表理事の栗野泰成さんと、居場所事業を担当している井野瀬優子さんに、団体の活動についてお話を伺いました。”
代表理事の原体験が、チョイふるを立ち上げるきっかけに
一般社団法人チョイふる(以下、チョイふる)は、社会経済的に困難を抱える子どもたちが「チョイス」(選択肢)を「ふる」(たくさん)に感じられる社会をつくりたい、という思いを込めて設立されました。立ち上げのきっかけとなったのは、代表理事の栗野さんの原体験です。栗野さんが育ったのは、鹿児島県の田舎の市営団地。大学進学に悩んでいた頃、新聞配達をすると学費が免除される新聞奨学金制度の存在を知りますが、知ったときにはすでに申し込みの期限を過ぎていて申し込みができなかったと言います。
栗野泰成さん(以下、栗野)「あのとき、『もっと早くに知っていれば』と思ったことが今の活動に結び付いています。困窮者世帯への支援制度はたくさんあるのですが、本当に困難を抱える人ほど必要な支援が届いていないのではないかと考えています。この『選択格差』を解消することが貧困問題を解決する一つの手段ではないかと考えるようになりました」

当時の思いを胸に、大学卒業後、小学校教員・JICA海外協力隊での教育現場を経て、栗野さんは2018年に任意団体を立ち上げます。当初は英語塾を運営していましたが、それでは支援を必要としている人に届かないと気づきます。
そこで、2020年に、食糧を家庭に届けるアウトリーチ(訪問支援)型の活動「あだち・わくわく便」と、親子に第3の居場所を提供する活動「あだちキッズカフェ」をスタート。その後、コロナ禍に入ってしまったため、「あだちキッズカフェ」は一時休止しますが、「あだち・わくわく便」の需要は高まっていきます。
そして、2021年に法人化し、一般社団法人チョイふるを設立。現在は、宅食事業「あだち・わくわく便」、居場所事業「あだちキッズカフェ」に加え、困窮者世帯を支援制度へと繋げる相談支援事業「繋ぎケア」の主に3つの事業を行っています。
孤立しがちな困窮子育て世帯とつながる 宅食事業
現在、チョイふるの活動の軸となっているのが、宅食事業「あだち・わくわく便」です。対象となっているのは0〜18歳の子どもがいる家庭で、食品配達をツールに地域から孤立しがちな困窮子育て家庭と繋がる活動をしています。
栗野「宅食事業を始めた頃は、シングルマザーの支援団体に情報を流してもらったり、都営団地にポスティングしたりと地道に活動していました。最初、LINEの登録は10世帯ほどでしたが、口コミで広がったことに加え、コロナ禍になったこともあり、登録世帯数が一気に増加。今では足立区からも信頼を得ることができ、区からもチョイふるの案内をしてもらっています」

現在のLINEの登録数は約400世帯。食品配達は月に1回か2ヶ月に1回、各家庭に配達するか、フードパントリーに取りに来てもらう場合もあります。また、配達をする際は「見守りボランティア」と呼ばれる人が、それぞれの子育て家庭に直接お届けし、会話をすることで信頼関係を築いています。
栗野「食品の紹介や雑談などから始まり、子どもの学校での様子を聞いたり、困りごとがなさそうかなど確認したりしています。次回の配達時にも継続的に話ができるよう、訪問時の様子は記録もしています」
つながりづくりから居場所づくりへ
コロナ禍では「あだち・わくわく便」をメインに活動してきたチョイふる。貧困家庭と繋がることはできましたが、そこから適切な支援に繋げるための関係構築を難しく感じていました。そこで、新型コロナウイルスの流行が少し落ち着いてきたタイミングで、居場所事業「あだちキッズカフェ」を再開します。
「あだちキッズカフェ」は、子ども食堂に遊びの体験をプラスした、家でも学校(職場)でもないサードプレイスをつくり、困窮子育て家庭を支える活動。こうした「コミュニティとしての繋がり」が作れる活動は、民間団体ならではの強みだと栗野さんは話します。
栗野「足立区は、東京都の中でも生活保護を受けている世帯数が多い地域です。区としても様々な施策に取り組んでいますが、行政ならではの制約もあります。たとえば、イベントを開いたとしても、時間は平日の日中に設定されることが多いですし、開催場所も公民館など公共の場が基本になります。一方で、僕たち民間団体は、家庭に合わせて時間や場所を設定することができます。行政と民間はできることが違うからこそ、僕たちの活動に意味があると思うんです」

「あだちキッズカフェ」の取り組みに力を入れ始めたチョイふるは、2022年度の休眠預金活用事業に申請。これに無事採択されると、これまで「あだちキッズカフェ」があった伊興本町と中央本町の2か所の運営体制を強化するとともに、千住仲町にも新設しました。
実際の「あだちキッズカフェ」では、お弁当やコスメセットの配布などを行い、子どもたちの居場所利用を促進。月2回実施している子ども食堂と遊びの居場所支援のほか、イベントも含めると67 人の子どもが参加しました。特に伊興本町の居場所にはリピーターが多く、子どもたちの利用が定着してきています。
栗野「とはいえ、『あだち・わくわく便』は400世帯が登録してくれているのに対し、『あだちキッズカフェ』の利用者は67人とまだまだ少ない。子どもだけで『あだちキッズカフェ』に来るのが難しかったり、交通費がかかったりするなど、様々な課題があると感じています」
休眠預金を活用し、社会福祉士を新たに採用
「あだちキッズカフェ」拡充のため、さまざまなところで休眠預金を活用してきましたが、なかでも一番助かったポイントは「人件費として使えたこと」だと井野瀬さんは話します。
井野瀬優子さん(以下、井野瀬)「『あだちキッズカフェ』常勤のスタッフを数人と、社会福祉士を4人採用しました。助成金の多くは人件費として活用できないので、本当にありがたかったです。常勤のスタッフがいると『いつもの人がいる』という安心感にも繋がりますし、社会福祉士にはLINEを通じて相談者とやり取り してもらうことで距離が近づき、『あだちキッズカフェ』の利用促進につながりました」
「あだち・わくわく便」の利用者には「あだちキッズカフェ」に行くのを迷っている人が多く、社会福祉士とのやり取りが利用を迷う人の背中を押しました。そのやり取りも、「『あだち・わくわく便』はどうでしたか?」といった会話からスタートし、他愛もない会話をするなかで困りごとを聞いたり、無理のないように「あだちキッズカフェ」に誘ったりしています。

また、DV被害に遭ったという母子が来た際には、スタッフに同じような経験をした当事者がいたため、経験者ならではの寄り添った対応ができました。
井野瀬「これまでであれば、ボランティアとして限られた時間しか関われなかったかもしれません。今回はそこに、きちんとお金を割くことができたので、居場所をより充実させることができました。来てくれる子どもたちが増えるのはもちろん、何度も来てくれる子の小さな成長が見られる瞬間もとてもうれしいですね」
伴走者がいることで、課題を把握できた
チョイふるは、2023年8月に休眠預金活用事業を開始し、2024年2月末に事業を完了しました。休眠預金活用事業では資金面以外に、資金分配団体のプログラム・オフィサー が伴走してくれる点も、事業を運営していくうえで助けになったと話します。
栗野「普段は日々の活動でいっぱいいっぱいなので、月1で振り返る機会を設けてもらったのがよかったですね。一緒にアクションプランを立てたり、“報連相”が課題になっていると気づいたりすることができました。第三者の目があることの大切さを痛感しました」
事業は終了しましたが、その後も取り組みの内容は変わらずに、「あだち・わくわく便」の提供量を増やしたり、「あだちキッズカフェ」の数を増やしたりといったことに注力しており、そのために、ほかの団体との連携も広げています。
栗野「10代の可能性を広げる支援を行っているNPO法人カタリバと月1回の定例会議を行い、情報交換をしています。ほかにも、医療的ケア児や発達の特性の強い子どもを支援している団体などと組んで、ワンストップの総合相談窓口を作ろうと動いているところです。資金確保は今後も課題になると思うので、寄付やクラウドファンディング、企業との連携などにも挑戦していきたいですね」
「選択肢の格差」が貧困を作り出し、抜け出せない状況を作っていると考える栗野さん。チョイふるはこれからも、その格差を少しでもなくすために貧困家庭への支援を続けていきます。
【事業基礎情報】
実行団体 | 一般社団法人チョイふる |
事業名 | 子育て世帯版包括支援センター事業 |
活動対象地域 | 東京都足立区 ①伊興本町(居場所1拠点目) ②中央本町(居場所2拠点目) ③千住仲町(居場所3拠点目) |
資金分配団体 | 特定非営利活動法人Learning for All |
採択助成事業 | 2022年度緊急支援枠 |
事業完了にあたり、成果の取りまとめるために実施されるのが「事後評価」です。事後評価は、事業の結果を総括するとともに、取り組みを通じて得られた学びを今後に生かせるよう、提言や知見・教訓を整理するために行われます。今回は、2023年3月末に事業完了した2020年度通常枠【甲信地域支援と地域資源連携事業|富士山クラブ[20年度通常枠]】の事後評価報告書をご紹介します。ぜひご覧ください。
事業概要等
事業概要などは、以下のページからご覧ください。
事後評価報告
事後評価報告書は、以下の外部リンクからご覧ください。
・資金分配団体
・実行団体
【事業基礎情報】
資金分配団 | 認定特定非営利活動法人 富士山クラブ |
事業名 | 甲信地域支援と地域資源連携事業 <2020年度通常枠> |
活動対象地域 | 甲信地域(山梨県・長野県) |
実行団体 | ・特定非営利活動法人 河原部社 ・一般社団法人 信州上田里山文化推進協会 ・特定非営利活動法人 bond place ・特定非営利活動法人 スペースふう ・特定非営利活動法人 こどもの未来をかんがえる会 |
事業完了にあたり、成果の取りまとめるために実施されるのが「事後評価」です。事後評価は、事業の結果を総括するとともに、取り組みを通じて得られた学びを今後に生かせるよう、提言や知見・教訓を整理するために行われます。今回は、2023年3月末に事業完了した2020年度通常枠【社会的養護下にある若者に対する社会包摂システム構築事業|公益財団法人ちばのWA地域づくり基金[20年度通常枠]】の事後評価報告書をご紹介します。ぜひご覧ください。
事業概要等
事業概要などは、以下のページからご覧ください。
事後評価報告
事後評価報告書は、以下の外部リンクからご覧ください。
・資金分配団体
・実行団体
【事業基礎情報】
資金分配団 | 公益財団法人 ちばのWA地域づくり基金 |
事業名 | 社会的養護下にある若者に対する社会包摂システム構築事業<2020年度通常枠> |
活動対象地域 | 千葉県 |
実行団体 | ・一般社団法人 はこぶね ・一般社団法人 いっぽの会 ・株式会社 ベストサポート ・ちば子ども若者アフターケアコンソーシアム |
事業完了にあたり、成果の取りまとめるために実施されるのが「事後評価」です。事後評価は、事業の結果を総括するとともに、取り組みを通じて得られた学びを今後に生かせるよう、提言や知見・教訓を整理するために行われます。今回は、2023年3月末に事業完了した2020年度通常枠【中核的フードバンクによる地域包括支援体制|パブリックリソース財団[20年度通常枠]】の事後評価報告書をご紹介します。ぜひご覧ください。
事業概要等
事業概要などは、以下のページからご覧ください。
事後評価報告
事後評価報告書は、以下の外部リンクからご覧ください。
・資金分配団体
・実行団体
【事業基礎情報】
資金分配団 | 公益財団法人 パブリックリソース財団 |
事業名 | 中核的フードバンクによる地域包括支援体制 <2020年度通常枠> |
活動対象地域 | 全国 |
実行団体 | ・フードバンクTAMA ・公益社団法人 フードバンクかながわ ・フードバンク山梨 ・特定非営利活動法人 フードバンクネット西埼玉 ・労働者協同組合 ワーカーズコープちば |
今回の活動スナップでは、山梨県富士川町で活動する実行団体スペースふう[資金分配団体: 富士山クラブ]の政策提言が実現したことを受け、活動の様子などをお伝えします。
活動概要
「リユースお弁当箱がつなぐ地域デザイン事業」は、山梨県富士川町で活動する実行団体スペースふうが2021年秋より、富士川町に住む「孤独」「孤立」を感じやすい産後のママさんをはじめ、子育て家庭を対象にリユース食器などを使用した宅配お弁当サービスです。この事業ではこれまでに、作る人、運ぶ人、情報発信する人など多くの人のサポートを受けながら、70人以上の産後ママに利用されてきました。お弁当は、地元の食材を使って作られた手作りで、自己負担金は1回100円で受け取ることができます。使用しているお弁当箱をリユースにすることで環境にもやさしく、届けるとき、容器を回収するときに産後のママさんや子育て中のお母さんとも多くのコミュニケーションを生み、社会との繋がりを感じられる事業が実施されてきました。
母親に配食支援 おむつ費も補助 | さんにちEye 山梨日日新聞電子版
政策提言

休眠預金活用事業で始まった宅配お弁当サービスが、助成期間の終了後も継続して行えるように政策提言がなされました。
政策提言が実現したことにより、産後のしんどさを個々で抱え、孤立しやすい時期の産後ママにとって、「産後うつ」「虐待」の手前の手前の予防策としても本事業は機能し続けます。また、行政の専門的な相談やサポートに加え、お弁当を手渡すときの何気ない言葉のやり取りが「この町の人たちの応援エール」として子育て家庭に届けられることで「安心して子育てできる富士川町」としてさらに町が充実し、発展していくことになると期待されます。
【事業基礎情報】
実行団体 | 認定特定非営利活動法人 スペースふう |
事業名 | リユースお弁当箱がつなぐ地域デザイン事業 |
活動対象地域 | 山梨県 峡南地域・中巨摩地域 |
資金分配団体 | 認定特定非営利活動法人 富士山クラブ |
採択助成事業 | 甲信地域支援と地域資源連携事業 ~こども若者が自ら課題を解決する力を持てる地域づくり事業~ |
千葉県北部の柏市、我孫子市、白井市、印西市などにまたがる湖沼・手賀沼。ここをフィールドに、地域の人々がつながり、縁をつくるコミュニティを運営しているのが「手賀沼まんだら」です。2019年の設立以来、イベントや場づくりに取り組んでおり、2020年と2022年度の休眠預金活用事業(コロナ枠)を活用したことで、コミュニティプレイスの創出や共食プロジェクトなど、さらに活動の場を広げてきました。今回は、「子ども」と「地域」をキーワードにはじまったという団体の取り組みや、設立から5年が経過してこそ思う活動のおもしろさ、今後の展望などについて、代表の澤田直子さんにお話を伺います。
子どもが成長して気づいた、地域コミュニティの重要性
「手賀沼まんだら」が設立されたのは、2019年1月のこと。代表・澤田直子さんが子育てを経験する中で感じるようになった、地域とのつながりに対する考え方の変化が、立ち上げの背景にはありました。
「子どもが成長して小学生になった頃、地元の公園で遊んだり、ご近所さんのお宅に伺うような機会が増えて、地域とのつながりを意識するようになりました。それまでは、手賀沼に暮らしていても、家族で遊びにいくとなったら他の市や他県のショッピングセンターやキャンプ場でした。けれども、小学生になった子どもたちは、どんどん地域に馴染んでいく。そういう環境の変化が、考え方の変化を生み出しました」

澤田さんは、当時、手賀沼ではない別の市の社会福祉協議会職員として勤務していました。地域同士のつながり、コミュニティをつくる重要性を誰よりも理解していた一人です。ところが、澤田さん自身地元の手賀沼一帯では、そういった地域内でのつながりがありませんでした。そこで、澤田さんは勤務していた社会福祉協議会を退職し、手賀沼でコミュニティづくりの活動をはじめることを決意。同じような課題感を抱えているママ友に声をかけ、「手賀沼まんだら」としての第一歩を踏み出したのです。立ち上げ初期の取り組みは、フィールドワークをはじめとした、子どもたちが手賀沼の自然や社会とつながりをつくる目的のアクティビティを中心としたものでした。その後、1年足らずでコロナ禍に差し掛かり、団体としての意思も変化していきます。「これまで学校に通っていた子どもたちが、急に家庭へと戻されました。いつまで休校が続くのかわからない世の中で、せめて子どもが楽しく過ごせる居場所をつくりたい。そう感じるようになり、一時のアクティビティやイベントだけではなく、長期的に子どもが集える場所づくりに取り組み始めました」 手始めとして、手賀沼の地主さんが所有していた山を一部借りて、子どもたちと一緒に山小屋やアスレチックづくりを行うことに。すると、澤田さんの目に映ったのは、家とも学校とも異なる、第三の居場所を知った子どもたちの朗らかな様子でした。子どもたちが安定的に集える空間をつくる重要性を感じた澤田さんは、休眠預金を活用した助成事業の公募に応募。本格的な居場所づくりへと舵を切ったのです。

二つの取り組みで休眠預金活用事業に採択
「手賀沼まんだら」では、応募した休眠預金活用事業で2度採択をされています。1度目が、2020年度コロナ枠として採択された、孤立解消の為のコミュニティプレイス〈ごちゃにわ〉の創出。コロナ禍を経て実感した、子どもたちの居場所をつくるための取り組みです。2度目は、2022年度コロナ枠として採択された、「共食」をキーワードに据えたプロジェクトでした。〈ごちゃにわ〉では、手賀沼一帯に暮らす子どもたちをはじめ、子育てに課題を抱えた父母、話し相手の欲しい高齢者、そして冬越しの場所を求める生物までもが集えることを目指した場所づくりを実施しました。澤田さんは、この空間づくりを経て、リアルな場が生み出す大きな影響を実感したといいます。「空間が生まれたことによる一番の変化は、地域の人々や地域にゆかりのある企業が頻繁に訪れるようになったことです。それによって、何気ない話から生まれる新しいアイデア、おもしろい企画などが数多くあり、それらをイベントとして実施するような流れができていきました。コミュニティの輪がどんどんと広まる感覚があり、手賀沼という地域で場づくりを行う喜び、やりがいを今まで以上に感じられるようになった気がします」
核家族化が進行する現代の日本、そしてコロナ禍という人との繋がりが希薄になりがちな状況では、家庭の悩みや困りごとをシェア、相談できる機会はそう多くはありません。けれども、地域コミュニティが生まれたことで、家族それぞれの困りごとを解消するタイミングができたり、これまでは経験できなかったさまざまな体験、アクティビティの機会をつくることができるようになりました。
「最初は、子どもたちが地域社会に溶け込める場所をつくりたいという思いばかりでしたが、実際に〈ごちゃにわ〉をつくってみると、お父さんやお母さんたちの居場所にもなっているように感じる場面が多々ありました。”子育て”という共通のキーワードがあるからか、場に集う親御さんたちも、知らず知らずのうちに仲良くなり、助け合える仲になっていたようです」最初こそ、実験の意味合いもあり、こぢんまりとした運営を予定していた〈ごちゃにわ〉。ところが、澤田さんの想像以上に、そういった場を必要とした地域の人々は多かったようです。現在では、小中学校の林間学校や、総合学習の授業の一環で〈ごちゃにわ〉を活用したいといった申し出が多数集まるほど。年間では600人以上の子どもが集う、手賀沼屈指の居場所として成長しました。

子どもたちの「食」の関心をどう高めていくのか?
「手賀沼まんだら」では、その後も、〈ごちゃにわ〉の運営だけでなく新しい取り組みも実施しています。特に、現在推し進めているのが、2022年度コロナ枠にて採択された「共食」のプロジェクト。手賀沼の豊かな自然を活用しながら、子どもたちの食に対する関心を高めることを目的に実施しています。「〈ごちゃにわ〉を運営しながら次なる取り組みを考えているなかで、衣食住の”食”にフォーカスを当てたいと考えるようになりました。暮らしの根本的な要素であると同時に、食は人の心を癒やしたり、コミュニケーションを生み出すきっかけになると思ったからです。「ごちゃにわ」を始めたときから、食が与える影響の大きさを実感していました」


このプロジェクトでは、手賀沼の風土に対する学びや食育を促進するため、5つのステップでプログラムを実施しています。子どもたちが参加することはもちろん、親御さんや近隣の農家さんの協力を仰ぐことで、地域コミュニティにおける多様なつながりをつくり出すことも目指しました。
① 〈ごちゃにわ〉内で食材を育て、収穫する
②手賀沼 流域農家さんから食材を購入したり、農作業を手伝ったり、思いのヒアリングなどを行う
③ 入手した食材を使ってどんな料理をつくるのか、メニューを考える
④ 食材の持つストーリーや思いを伝えるため、月に一度〈ごちゃにわ〉内で子どもレストランをオープンする
⑤ 月に一度、親子のエンパワメントの場として「食」に関する研修を開催する
「学校や習い事、塾などで忙しい子どもたち、忙しく働く親たちと話をする中で、家庭での「食」に対する重要度が下がってきていることを感じていました。それなら調理の機会を家庭以外の場所でも体験できないかなと考えるようになりました。」
そういった背景から、食材を知る機会、調理を学ぶ機会、食文化に触れる機会などを用意した、多角的なプログラムを実施しました。手賀沼には、生き物と畑の共生を目指す農家さんや、安心安全においしく食べられる平飼いニワトリの農家さんなど、一次産業に携わる魅力的な人々も数多くいます。そういった人の協力を仰ぐことで、子どもたちが「食」を知る、考える機会創出を目指しました。

自走しながら地域社会に溶け込む子どもたち
このプロジェクトを実施する際、澤田さんは、子どもたちに「与える」だけではなく「創り出してもらう」ことも意識しているそうです。それは、能動的に関わる機会を用意することで、子どもたちの成長を促したいという思いから。
具体的には、2〜3回ほどプログラムに参加してくれた子どもに、参加者としてだけではなく運営者として仕事を任せることで、プログラムを創る側に回ってもらっているのだそう。その役回りは、イベントの様子を撮影するカメラマン係、プログラム内で使用するノート作成係など、多岐にわたります。
「子どもたちの興味関心に触れる機会を少しでも多くつくるためと思って始めたことですが、彼らに仕事を任せてみて、大人があっと驚くような成長を遂げてくれるのだと知りました。たとえば、カメラマンを担当してくれている子が、SNSに投稿された写真を見て、『こんなカットがあったほうがわかりやすいはず』と撮影プランを考えてくれたり、ノート作成係の子は『このページにはこのイラストがあったほうが楽しんでもらえるかな?』と、アップデートプランを提案してくれたり。自主的に次のレストラン開催に向けてオリジナルレシピを考案してきてくれた子もいたほどです」
最初は受け身でプログラムをこなしているだけだった子どもたちが、高いモチベーションを抱きながら、自分自身の得意なことを活かして運営に携わってくれる。想像をはるかに上回る子どもたちの成長には、澤田さんをはじめとした、大人のほうが圧倒されるばかりだといいます。
「ほかにも、今まではお兄さん、お姉さんに頼ってばかりいた低学年の子どもたちが成長する様を見ることも多々あります。プログラムによっては、幼稚園生や小学1〜3年生のみを対象とする場合があるのですが、そういったときに率先して動いてくれるのは、今までなにもできなかったように見えた小学校低学年の子どもたち。高学年がどう助けてくれていたのかをよく見ていて、幼稚園生の子どもたちのサポートをしながら、主体的な姿勢で運営に携わってくれています」
「食」というキーワードを起点にはじまったこのプロジェクト。もちろん、プログラムを経て、食に関する学びや意識の変化も見られています。ただ、それ以上に、環境さえあればどこまででも変化できる子どもたちの無限の可能性を知る機会にもなったそう。共創による、地域コミュニティの大きな力を、この取り組みを通して、澤田さんは実感しています。
「手賀沼まんだら」が思い描く未来
2019年の設立から5年。時代の潮流にあわせて数多くの取り組みを行ってきた「手賀沼まんだら」ですが、現在は、将来を見据えた戦略立案、プロジェクト企画なども推進しているタイミングです。それにあたっては、資金分配団体であるNPO法人ACOBAが提供する、専門家派遣も活用しているのだそう。
「『手賀沼まんだら』を運営しているメンバーは、現在、私を含めて5名。そこに、6人目として戦略立案やマーケティングの得意な専門家を一時的に招き、団体の方向性や意思を表すための”ビジョンボード”というものを制作しています」

ビジョンボードとは、今まで文脈や空気感のみで意思疎通されてきていた、団体の役割や意味を可視化して表現した絵図。「手賀沼まんだら」に携わる人の数、規模が大きくなってきている今のタイミングで、価値観をお互いに共有するべく制作したものです。こうした具現化を行うことで、「手賀沼まんだら」の歩む未来も、より明確化してきています。
「『手賀沼まんだら』を立ち上げたことで、地域コミュニティの重要性を改めて実感する機会になりました。現在、取り組んでいるプロジェクトは、引き続き継続していきたいと強く思いますし、子どもたちをはじめ、手賀沼の人々のよりどころになりたいとも感じています。けれど、組織を大きくしたいという野望はあまりありません。ただ、必要としてくれる人にとっての居場所になれたら。そういうシンプルな願いを再認識できました」
学校や家庭だけではない、サードプレイスとして機能できるように。恵まれた自然との触れ合いや、子どもたちとのコミュニケーションが促進される場として、これから先も「手賀沼まんだら」は歩みを続けていくのでしょう。
「私たちのこの取り組みは、手賀沼だから実現できたものではなく、日本各地で実現できるようなものだと思います。そして、こういった場所を必要としている子どもたちはきっと全国にたくさんいる。もっと暮らしやすい世の中を実現するために、日本各地にこうした地域コミュニティが誕生してほしいと、今まで以上に願うようになりました」
澤田さんの願いが伝播し、人から人へとつながって大きな輪として成長したのが「手賀沼まんだら」。思っていたよりもずっと、その輪は強固で、豊かで、未知の価値を教えてくれたものでした。だからこそ、そうした共感が広がることでつくられる、心強く、力強いコミュニティの誕生を乞い願い、澤田さんは今日も「手賀沼まんだら」の活動を続けています。
【事業基礎情報①】
実行団体 | 手賀沼まんだら |
事業名 | 孤立解消の為のコミュニティプレイスの運営 |
活動対象地域 | 千葉県 |
資金分配団体 | 特定非営利活動法人 ACOBA |
採択助成事業 | 2020年度コロナ枠 |
【事業基礎情報②】
実行団体 | 手賀沼まんだら |
事業名 | 手賀沼版「美味しい革命」〜食べることは生きること〜 |
活動対象地域 | 手賀沼流域(我孫子市、柏市、松戸市、流山市) |
資金分配団体 | 特定非営利活動法人 ACOBA |
採択助成事業 | 2022年度コロナ枠 |