事業完了にあたり、成果の取りまとめるために実施されるのが「事後評価」です。事後評価は、事業の結果を総括するとともに、取り組みを通じて得られた学びを今後に生かせるよう、提言や知見・教訓を整理するために行われます。今回は、2025年3月末に事業完了した2021年度通常枠【地方における10代の居場所づくり支援事業|カタリバ[21年度通常枠]】の事後評価報告書をご紹介します。ぜひご覧ください。
事業概要等
事業概要などは、以下のページからご覧ください。
事後評価報告
事後評価報告書は、以下の外部リンクからご覧ください。
・資金分配団体
・実行団体
【事業基礎情報】
資金分配団 | 認定特定非営利活動法人 カタリバ [コンソーシアム構成団体] 特定非営利活動法人 エティック |
事業名 | 地方における10代の居場所づくり支援事業 <2021年度通常枠> |
活動対象地域 | 日本全国 |
実行団体 | ・特定非営利活動法人 ガクソー ・一般社団法人 YOUTH PACE(一般社団法人 第3職員室) ・一般社団法人 OMUTA BRIDGE ・一般社団法人 えらぶ手帖 ・特定非営利活動法人 WeD ・特定非営利活動法人 こおりやま子ども若者ネットワーク ・特定非営利活動法人 f.saloon ・特定非営利活動法人 みんなの ・特定非営利活動法人 SET ・特定非営利活動法人 むかいしまseeds ・一般社団法人 もも ・一般社団法人 スタイリィ ・一般社団法人 わのまち ・特定非営利活動法人 セブンシーズ |
株式会社オヤモコモは、佐賀県佐賀市を中心に、鳥栖市や福岡県久留米市などの親子を対象に、交流イベントや母親の起業支援などに取り組んでいます。産後に悩みを抱えたり、孤立したりしがちな親たちを支援したい——そんな思いから2012年に設立されました。2023年度の休眠預金活用事業(緊急枠、資金分配団体:一般財団法人ちくご川コミュニティ財団)に採択され、「もっと気軽に悩みを打ち明けられる仕組みを」との願いを込めて、オンライン双方向型情報サービス「みてるよ」の運営事業をスタート。今回は、代表取締役の山下千春さんに、活動の背景や事業の広がりなどについて伺いました。
母親たちの孤立は、社会課題。つながり合える深い交流を
日本では核家族化が進み、祖父母などに頼って子育てをするケースは減少しています。その結果、産後の不安や悩みを一人で抱え込み徐々に孤立してしまう母親は少なくありません。そうした人たちに寄り添い、居場所を提供しているのがオヤモコモです。設立は2012年。当時、山下さんには7歳、5歳、2歳の3人の子どもがいました。子育て真っ最中の多忙な時期に、なぜ自らこうした活動を始めたのでしょうか。
山下千春さん(以下、山下)「私自身が出産後、孤独でとてもさみしい思いを感じていたんです。それは出産前に抱いていた“赤ちゃんと暮らす”イメージとはかけ離れたものでした。どこかへ出かけても大人と会話するのはわずかで、知らない土地で子育てを始めたので仲の良い友人もいないし、夫は仕事が忙しくて帰りが遅い。“子育てって、こんなに寂しさや孤立感の中でするものだったのか”と、現実を突きつけられた気がしました。3人の子どもを育てながら感じたのは、私と同じような思いをしているお母さんがとても多いということ。これは個人の問題ではなく、社会全体の課題だと感じました。だからこそ母親同士がつながれる居場所をつくりたいと、オヤモコモの活動を始めたんです」

子育てセンターやパパママ教室といった、行政が手掛ける子育て支援の場は存在するものの、そこでの交流は一時的なものにとどまりがちです。そうではなく、もっと深い関係性を築ける場が必要だと、山下さんは考えました。自身が子育ての渦中にあったからこそ見えた課題や気付きを拾い上げ、当事者目線での支援のかたちを模索していったのです。
まず着手したのは、母親が主役になれるコミュニティづくり。子育ての悩みを共有したり、親子で楽しんだりすることも大切ですが、特に重視したのは、母親自身が心から楽しめる時間をつくることでした。
山下「子どもを持つと、仕事や趣味などで身につけたスキルや経験、好きなことがあるにもかかわらず、”自分はお母さんだから“という思いにとらわれて、そのことに目を向けなくなってしまいがちです。オヤモコモでは、そんなお母さんたちに何がしたいかを尋ねて、自らイベントなどを企画してもらい、それを実現できるようにサポートしています」
例えば、料理が好きでカフェを開きたいという夢を持つ人は、子どもと一緒に食を楽しめるカフェイベントを開催。ハンドメイドが得意な人には、作ったものを販売できる場所を提供しました。「自分が主役になって講師をしたり、何かをお披露目したり。お母さんたちの“やりたい”を集めた場づくりなんです」と山下さんは語ります。
どうすれば支援を続けられるか。継続のための試行錯誤
徐々にネットワークを広げ、活動は順調に進みましたが、その一方で資金面での課題が浮上します。山下さんがイベント運営費などを自ら負担し、手弁当での活動を続けざるを得ない状況に追い込まれていたのです。
山下「私がお金の苦労を背負ってみんなの笑顔を支えているような状態で、なんとかしようと寄付集めにも奔走しましたが、限界がありました。大変な思いをしてお金をいただいても、誰かのお力を借りて活動する責任ものしかかり、継続は難しいと判断しました」
そこで、なんとか自分たちで活動資金を生み出そうと始めたのが、オリジナルのベビー用品の開発と販売です。事業開始当初は山下さんが個人事業主として運営していましたが、これを機に株式会社として法人化。そうして収益化を図りながら、「どうすればもっと力になれるだろうか」と試行錯誤を重ね、活動は今年で13年目を迎えます。現在は代表取締役として事業を率いながら、「若い人たちにバトンをつなぎたい」とスタッフの育成にも力を入れています。
そんな山下さんが長く構想していた事業がありました。それは、親がより気軽に子育ての悩みを相談できる仕組みづくりです。トライアルとして、山下さん自身がLINEを通じて悩みに応えるサービスをスタートさせましたが、悩みを抱える人に真摯に対応したいと思えば思うほど、時間も労力もかかるものでした。
山下「利用者の皆さんに『もし有料のサービスだとしたら、いくら払えますか?』と聞いたところ、『サブスク(定額制)のような形で、月々1000円くらいなら』という声が返ってきました。ものすごく丁寧に、一つひとつお返事しても月に1000円なのか……と思い、このやり方で継続はできないと判断したんです」
そこで山下さんが着目したのが、AIチャットボットを活用したお悩み相談のシステムでした。これを事業として実現するため、休眠預金活用事業への応募を決意。社会課題の解決などを目的とした公益的な活動ではNPOなど非営利団体向けの補助金制度が多い中、株式会社でも申請できるという点は、休眠預金等活用制度を選んだポイントの一つでした。
24時間365日何でも話せるAIが、子育ての心強いサポーターに
2023年度の「緊急枠」として採択されたことを受け、スタートしたのが、オンライン相談サービス「みてるよ」です。LINEを通じて利用できるAIチャットボット型の仕組みで、先輩ママのキャラクター「マミさん」が24時間365日、利用者の質問や悩みに対して、自動で応えてくれます。年配の方には「AIなんて」と眉をひそめられることもあるそうですが、若い親は抵抗感なく活用しているとのこと。AIといっても機械的に回答するのではなく、「つらいわね」「よくわかるわ」など優しい言葉で寄り添い、必要な情報を丁寧に伝えるようにプログラムされています。2024年12月〜2025年2月の3カ月間で相談件数はのべ948件に上り、実施した満足度アンケートでは、利用者の91.5%が最高評価の5をつけるなど、高い満足感が示されました。
山下「最近のお母さんたちは特に、誰かに弱音を吐くことを極端に恐れているようです。“何かあっても行政に頼りたくない”と考える人も少なくありません。それは、周囲から“ダメな親と思われてしまうのではないか“と不安に感じるから。国や自治体が資金を投入してさまざまな産後サービスを打ち出していますが、そこにアクセスするのは気が引けるというのです。本当はSOSを出したいほど苦しい状況でも、自分の中に抱え込んでしまう。その結果、虐待などの問題につながってしまうケースもあります」

周りの人に頼ることを避ける親たちにとって、何でも遠慮なく話せるAIの存在は想像以上に心の拠り所となっているそうです。
山下「都市部ではなく、佐賀のような地域でAIが受け入れられるか不安でしたが、そんな心配は不要でした。特に初めての子育てだと、24時間気を張りつめて、ちょっとしたことでも不安になってしまう。ネットで検索しても正解が分からずに疲れてしまうんです。マミさんは、『あなたは頑張っているわよ』と、明るく励ましてくれるキャラクター。それに救われる人も多いようです」
悩みに応えてもらってもAIにはお礼は不要ですが、「ありがとう」「いつも助かっています」といった、まるで人間を相手にしているかのような返信をする利用者もいるのだとか。人間相手ではないからこそ、噂が広がったり、批判されたりする心配がなく、真夜中でもすぐに返事をもらえる。そんなAIの特性が、子育てに悩む親たちにとって大きな安心感につながっています。
休眠預金活用事業を通して得たリアルな声を、より良いサービスづくりに生かす
休眠預金を活用した事業のもう1つの柱は、交流イベントの企画・開催です。「みてるよ」を通じて参加者を募り、「オンラインだけでなくリアルなつながりも育みたい」という山下さんの思いがかたちになりました。イベントには運営スタッフの確保が必要でしたが、休眠預金を活用した助成金を基にスタッフの増員を図ったところ、想像以上の反響がありました。
山下「『他のお母さんの力になりたい』と申し出てくれる人がとても多くて。地域の中に、こんなにも同じ思いを持った人がたくさんいるのかと驚きました。私自身も産後うつになりかけた苦しい経験があったのですが、支援に手を挙げてくれた人たちの中にも、過去の自分の経験をきっかけに、行動してくれる人がたくさんいたんです」
現在はエリアごとに担当者を配置して、赤ちゃんのタッチケア、抱っこひもの使い方講座、ランチ会といったさまざまなイベントを企画し、親同士の交流を促しています。リアルなネットワークで情報交換を行い、人には言えないことはAIのマミさんに話す。2つの異なるサポートが、親たちの力になっています。

8カ月の緊急枠の助成期間が終了した今、課題は資金の確保です。AIの利用にかかる従量課金やLINEの月額利用料、交流会の広報費や人件費など、活動を続けるために必要な経費を捻出する必要があります。現在はクラウドファンディングに加え、企業・こども園などにスポンサーとしての協力を呼びかけているところだそう。幸いにも、子ども園からの出資が決まり、「この勢いでスポンサーを増やしていきたい」と山下さんは意欲を語ります。
「みてるよ」を通して多くの親たちのリアルな声を聞けたことは、企業として今後のサービスを考える上でも大きな手がかりとなりました。また、休眠預金活用事業への応募をきっかけに、これまで組織として脆弱だった部分を、資金分配団体のサポートを受けながら強固にしていったことも大きな成果の一つです。
山下「経理やガバナンス、コンプライアンスといった企業運営の基盤をこの機会にしっかり固めることができました。『みてるよ』の事業を進めていくだけで精一杯だった中、資金分配団体のちくご川コミュニティ財団さんには、細やかにご指導いただいてとても感謝しています。今、周囲で不登校支援などの活動を始めている方もいて、そうした人たちにも休眠預金活用事業の良さを伝えています」
900件を超える相談のやり取りから見えた、親たちのリアルな思い。これを大切な指針として、より良い子育て環境を目指して、オヤモコモの挑戦は続きます。
■資金分配団体POからのメッセージ
オヤモコモ様の取り組みは、AIを活用して親たちの孤立に寄り添うという点で、今回の休眠預金活用事業における「アクセシビリティ改善」という目的に非常に合致していました。とくに「AIだからこそ言えることがある」という当事者のリアルな声が見えたことは、大きな成果だったと感じています。また、短期間の中でも人材募集やネットワークづくりに力を尽くし、今後の発展に向けた基盤も築かれました。これからも、この事業で得た知見やつながりを生かし、より多くの親子支援に取り組まれることを期待しています。
(一般財団法人ちくご川コミュニティ財団 理事/事業部長 庄田清人さん)
【事業基礎情報】
実行団体 | オヤモコモ |
事業名 | 産後のセーフティネット構築プロジェクト「みてるよ」(2023年度緊急支援枠) |
活動対象地域 | 佐賀市東部、神埼市・吉野ヶ里町・鳥栖市・基山町・みやき町・上峰町、久留米市、小郡市などちくご川エリア |
資金分配団体 | 一般財団法人ちくご川コミュニティ財団 |
採択助成事業 | 子育てに困難を抱える家庭へのアクセシビリティ改善事業 |
休眠預金等活用法に基づく資金分配団体(助成)の公募に申請をご検討中の皆さまに向けて、2023年度通常枠・緊急支援枠、2021年度・2020年度通常枠の資金分配団体である「ちくご川コミュニティ財団」の栁田あかねさんに、休眠預金活用事業に申請した背景と現在の活動についてのお話を伺いました。
休眠預金活用事業に申請した背景を自団体の活動と合わせて教えてください
一般財団法人ちくご川コミュニティ財団は、人の役に立ちたいという思いと活動をつなぐプラットフォームです。2019年に市民の力を得て、福岡県で初めてのコミュニティ財団として設立されました。
初めて休眠預金活用事業にチャレンジしたのは、2020年度通常枠の事業です。3か年の計画で、困難を抱える子ども若者の孤立解消と育成というテーマに絞って事業を進めました。次の2021年度通常枠の事業では、誰一人取り残さない居場所づくり、学びの場における子ども若者の孤立解消と育成というテーマで、いわゆる不登校の子ども若者をサポートする実行団体と3年間の事業を始めました。2023年度通常枠の事業では、困難を抱える家庭を取り残さない仕組みづくり、子ども若者とその家族のためのコレクティブインパクトと題した3か年の事業を始めました。さらに2023年度第4次募集の緊急支援枠の事業にチャレンジして、子育てに困難を抱える家庭へのアクセシビリティ改善事業、多様なつながりが生まれる仕組みづくりということで、限られた期間の中でとにかく支援が必要な層に、必要な支援を届けようという事業をスタートさせました。
ちくご川コミュニティ財団は、この4つの事業を一連の流れとして取り組んでおります。
申請を行うために準備で取り組んだことを教えてください
4つの事業の申請をはじめるにあたり、最初に取り組んだことは、自団体のメンバーで話し合うことからでした。どこに社会課題を感じているか、どの地域でその事業を調査分析していくかなどをメンバー全員で考え、同じ目標を持つところから始めました。
次に、その対象地域の中で調査を始めました。その地域で活動している様々な市民社会組織の方々にアンケートを取り、アンケートの中で明らかになった社会課題を解決するために、市民社会組織の皆さんや行政などにヒアリングをしていきました。ヒアリングの結果を分析し、評価アドバイザーにも相談しながら、事業設計を行いました。
実行団体の伴走支援の内容や工夫していることを教えてください
私たちの伴走支援はすごく強力で、すごく濃密なものになっています。また、分野も多岐にわたっております。
例えば、休眠預金活用事業ですごく大事されている評価です。事前評価、中間それから事後、それぞれの評価のフェーズに沿って伴走しています。もちろん評価に取り組むことは、ある意味負荷がかかることでもあると私たちも思っていますが、評価に取り組むことで実行団体の事業終了後に絶対、力はつくと思っていますので、出口戦略の一つとしても、評価については力を入れています。また、事業そのものの運営を持続可能なものにするための資金調達では、ファンドレイザーの資格を持つPOがしっかり実行団体の無理のないように計画を立て、その時抱えている悩みと照らし合わせながら、資金調達の計画を一緒に立てていきます。広報の面では、例えば、伝わるウェブサイトにするにはどうしたらいいのか、定款や規程類をどういうところにおけば団体が信頼を得られるかかなども、一緒に考えています。
それから日々、受益者や支援してくれる方に向けて、あるいはその地域の行政や企業の方々に向けても、様々なステークホルダーごとの情報伝達の仕方について一緒に考えています。SNSだけではなく、紙で作るニュースレターなどの定期刊行物、アニュアルレポートの発行や編集のアドバイスもしています。
休眠預金活用事業を通じて、よかったことについて教えてください
休眠預金活用事業で一番いいと思うのは、三層構造だということです。JANPIAと資金分配団体と実行団体が同じ目標に向かって社会課題解決のために走っていく、この仕組みがすごくいいなと私は思っています。資金分配団体である私たちが助成金を交付するというフローにはなっていますが、お金を届けだけではなくて、実行団体の伴走も行います。また、何より資金分配団体の私たち自身も、JANPIAに伴走されており、3者そろって同じ目標に向かっていけるのが一番いいと思っているポイントにです。
申請を考えている方へメッセージをお願いします
休眠預金活用事業の資金分配団体になると、たくさんの仲間と出会うことができます。例えば、ちくご川コミュニティ財団の場合、最初はたったひとりのPOしかいませんでしたが、事業を始めて4年目の今は6人のPOがいます。自分たちの団体での仲間がだんだん増えていくだけではなく、地域で一緒に社会課題を解決するための仲間、つまり実行団体の方々と出会うことができます。
さらに、全国にいる資金分配団体の仲間と出会うことができます。横のつながりがどんどん広がっていくことによって、自分たちが日々やりたいことや解決したいことに向けてグッと背中を押してもらえる。そんな存在に、この休眠預金活用事業を通して出会えると思っています。
ぜひ、資金分配団体にチャレンジして、まだ出会っていない仲間のに出会ってください。
〈このインタビューは、YouTubeで視聴可能です! 〉
(取材日:2024年6月13日)
グラミン日本 2023年度休眠預金活用事業「デジタル・スキル研修&就労支援を通じたシングルマザーのエンパワーメントと地域格差の解消」に採択された徳島の実行団体ウィズワークラボの代表 角 香里さんのインタビュー動画をご紹介します。
2024年7月17日、JANPIA主催・九州経済団体連合会共催の休眠預金活用団体×企業「SDGsへの貢献につなげる九州マッチング会成果報告会」を福岡市の電気ビル共創館にて開催しました。会場とオンラインのハイブリット開催で、参加者は150名を超え、関心の高さがうかがえました。
2024年7月17日、休眠預金活用団体(NPO等)×企業「SDGsへの貢献につなげる九州マッチング会成果報告会」が開催されました。先立って2023年11月に同会場で実施したマッチング会には、21の実行団体と企業30社が参加。本会では、そこから生まれた30連携(協議中案件含む)の中から5事例についてご紹介しました。
<プログラム>
14:00~ | JANPIA・九経連 開会の挨拶 |
14:10~ | 休眠預金活用事業の概要の紹介 |
14:30~ | 事例紹介(5つの事例) |
15:50~ | パネルディスカッション(5事例の登壇企業) |
17:00 | クロージング |
開会の挨拶・休眠預金活用事業の概要の紹介
まずはJANPIAシニア・プロジェクト・コーディネーターの鈴木均、続いて九州経済連合会の堀江広重専務理事が開催の挨拶を行いました。次に、鈴木が休眠預金活用事業の概要を紹介しました。

JANPIAからの挨拶 JANPIA シニア・プロジェクト・コーディネーター 鈴木 均
動画〈YouTube〉|JANPIAからの挨拶[外部リンク]

九州経済連合会からの挨拶 九州経済連合会 専務理事 堀江広重氏
動画〈YouTube〉|九州経済連合会からの挨拶[外部リンク]

休眠預金活用事業の概要の紹介 JANPIA シニア・プロジェクト・コーディネーター 鈴木 均
動画〈YouTube〉|休眠預金活用事業の概要の紹介[外部リンク]
資料〈PDF〉|休眠預金活用事業の概要の紹介 [外部リンク]
連携が実現した5つの事例をご紹介
5つの事例紹介では、それぞれ連携企業と実行団体、及びコーディネーター(資金分配団体)が順に登壇して、今回の取り組みや成果、思いなどについて話をしました。福岡出身で京都市ソーシャルイノベーション研究所(SILK)の井上良子氏がコーディネーターを務めました。

ファシリテーター紹介 京都市ソーシャルイノベーション研究所(SILK) 井上 良子氏
動画〈YouTube〉|ファシリテーター紹介[外部リンク]
事例紹介1|耕作放棄地の活用による事業連携
連携団体の株式会社フリップザミントは、耕作放棄地でハーブを栽培し、フレグランスやお茶などを作る事業を行っています。連携企業の株式会社サワライズは、マッチング会で同社のプレゼンを聞いて、耕作放棄地や廃棄されるものを活用する意義を認識。お互いの課題解決と強みに注目して、幅広い自社の事業と連携する可能性を検討しました。その結果、敷地内でバジルの栽培、ヘアサロン事業で香りの活用、地域イベントでワークショップの企画を行いました。コーディネーターの一般社団法人SINKaは、フリップザミントはマッチング会で4社と縁があり、そのうちサワライズと連携を進めていて、今後一緒に社会インパクトを重視するビジネスを作ることを期待していると語りました。

事例紹介1|耕作放棄地の活用による事業連携
【連携企業】株式会社サワライズ
【連携団体】株式会社フリップザミント
【コーディネーター】一般社団法人SINKa
事例紹介2|職業体験会から始まる就労支援
連携団体のNPO法人未来学舎は、不登校の子どもや社会とつながれない若者を対象に、スクール事業やカフェの運営を行っています。連携企業の株式会社にしけいは、空港の手荷物検査業務などを行う警備会社で、人手不足や企業認知度の向上、SDGsへのさらなる活動に課題を感じていました。そこで、未来学舎の子どもたちに、にしけいが手荷物検査の職業体験会を実施。和気あいあいとした雰囲気で、参加した子どもから「素敵な仕事だなと思いました」「危険なものを1ミリも見逃さない意識で仕事に従事されているところがかっこいい」などの感想が聞かれて、双方が手応えを感じていました。長い目で就労につながっていければとの思いで連携を進めていきます。コーディネーターの一般財団法人ちくご川コミュニティ財団は、マッチング前に就労というニーズを把握し、資金分配団体も含めた関係構築が重要だったと話しました。

事例紹介2|職業体験会から始まる就労支援
【連携企業】株式会社にしけい
【連携団体】NPO法人未来学舎
【コーディネーター】一般財団法人ちくご川コミュニティ財団
動画〈YouTube〉|事例紹介2[外部リンク]
資料〈PDF〉|【連携企業】株式会社にしけい [外部リンク]
資料〈PDF〉|【連携団体】NPO法人未来学舎 [外部リンク]
資料〈PDF〉|【コーディネーター】一般財団法人ちくご川コミュニティ財団 [外部リンク]
事例紹介3|プロボノによる経理業務支援
連携団体の一般社団法人熊本県こども食堂ネットワークは、子ども食堂を運営する有志らが設立した団体です。11月のプレゼンで5つの課題を発表し、その中の1つは会計ソフトを導入したものの活用できていないという内容でした。そこで、会計監査のプロであるPwC JAPAN有限責任監査法人福岡事務所が連携企業として手を挙げました。PwCでは、担当者が会計やシステムに強みのある5人のチームを編成。団体が自走できることを目指して、シンプルなマニュアルを提供するとともに、団体の事務所を訪れて現場支援にあたりました。コーディネーターの認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえは、情報を開示し切ってプロの力をお借りできて、経営の透明性という大事なところをサポートしていただいたと振り返りました。

事例紹介3|プロボノによる経理業務支援
【連携企業】PwC Japan 有限責任監査法人 福岡事務所
【連携団体】一般社団法人熊本県こども食堂ネットワーク
【コーディネーター】認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ
動画〈YouTube〉|事例紹介3[外部リンク]
資料〈PDF〉|【連携企業】PwC Japan 有限責任監査法人 福岡事務所 [外部リンク]
資料〈PDF〉|【連携団体】一般社団法人熊本県こども食堂ネットワーク [外部リンク]
資料〈PDF〉|【コーディネーター】認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ [外部リンク]
事例紹介4|フードドライブから始める街づくり
連携団体の認定NPO法人フードバンク北九州ライフアゲインは、子どもの負の連鎖を断ち切るための手段として、フードバンク事業を展開しています。連携企業の株式会社西鉄ストアは、フードバンクに興味があったものの今まで実現する機会がなく、今回のマッチングをきっかけに北九州の2店舗で初めて実施しました。お客様や従業員から寄付が集まり、企業の価値向上や従業員の教育、自治体との関係性にもプラスの影響があったとのこと。今後も街の課題を解決するスーパーを目指して活動していきたいと思いを語りました。コーディネーターの一般社団法人全国フードバンク推進協議会は、間接的に実行団体の事業成果を高めることで最終受益者に支援を届けられて、企業のSDGsの受け皿にもなったと話しました。

事例紹介4|フードドライブから始める街づくり
【連携企業】株式会社西鉄ストア
【連携団体】認定NPO法人フードバンク北九州ライフアゲイン
【コーディネーター】一般社団法人全国フードバンク推進協議会
動画〈YouTube〉|事例紹介4[外部リンク]
資料〈PDF〉|【連携企業】株式会社西鉄ストア [外部リンク]
資料〈PDF〉|【連携団体】認定NPO法人フードバンク北九州ライフアゲイン [外部リンク]
資料〈PDF〉|【コーディネーター】一般社団法人全国フードバンク推進協議会 [外部リンク]
事例紹介5|団体の講師派遣による防災セミナー
連携企業の城山観光株式会社は、鹿児島で「城山ホテル鹿児島」を運営しています。11月のマッチング会で連携団体であるNPO法人YNFから被災者支援活動について話を聞き、災害支援のあり方や大規模災害への備えについて考えたいとアプローチしました。YNFが城山ホテル鹿児島を訪れ、従業員向けのセミナーを開催。ホテル周辺を視察して災害リスクの調査や備蓄倉庫のチェックも行いました。城山ホテル鹿児島にとって、大規模災害を自分事として捉え、ホテルが地域の二次避難所としても機能できると気づくきっかけになったと話しました。今後中長期的な連携関係に進めていく予定とのこと。YNFは顔の見える関係を作っておかないと、災害が起きてから協力を呼び掛けてもうまく進まないことがあると話しました。コーディネーターの認定NPO法人ジャパン・プラットフォームは、両者ができることと求めることを明確にし、すり合わせを行ったと説明しました。

事例紹介5|団体の講師派遣による防災セミナー
【連携企業】城山観光株式会社
【連携団体】NPO法人YNF
【コーディネーター】認定NPO法人ジャパン・プラットフォーム
動画〈YouTube〉|事例紹介5[外部リンク]
資料〈PDF〉|【連携企業】城山観光株式会社 [外部リンク]
資料〈PDF〉|【連携団体】NPO法人YNF [外部リンク]
資料〈PDF〉|【コーディネーター】認定NPO法人ジャパン・プラットフォーム [外部リンク]
パネルディスカッション
次に、連携企業の5人が登壇し、パネルディスカッションが行われました。まずはファシリテーターの井上氏が全員に対して「休眠預金活用事業だからこそ生まれた学びや価値はどんなところだったか」と質問を投げかけました。サワライズの猿渡氏は「休眠預金活用制度やソーシャルビジネスに触れたことがなく、アプローチ法が全く分からなかったが、マッチング会で糸口が見えてフォローもあり、やりやすくて助かった」、にしけいの勝野氏は「休眠預金活用のことを知らなかった。参加して3団体とマッチングできた。日頃のビジネス上のお付き合いとは違い、団体とのつながりから地域貢献や弊社のプラスになる事業が生まれてくるのではないかと期待している」、PwCの實政氏は「11月のマッチング会のピッチでは、連携団体が自分たちの課題と支援ニーズを簡潔に話されたので、自分たちがどの団体に何を提供できるか分かりやすかった」、西鉄ストアの渡邉氏は「皆さんと打ち合わせをする中で、それぞれの立場からアドバイスやサポートいただき、流れとして素晴らしいと思った」、城山観光の安川氏は「マッチング会当日はYNFさんと挨拶できずに帰ったが、JANPIAの方から何度もフォローいただいたので今回の企画を実現できた。マッチング会では九州全域でいろいろな団体が活動していると知り、さまざまな気づきがあった」と話しました。話を受けて、井上氏は「マッチング会の前後にもフォローや仕組みができていたからこそ、これだけのマッチングが成立したと改めて浮き彫りになった」とコメントしました。

次に、井上氏から各社に個別の質問をして、話を掘り下げていきました。もともと事業連携の機会が多かったのかと問われたサワライズの猿渡氏は「いろいろやってきたが、ソーシャル分野は糸口がなかった。今回の出会いによって種から芽が出てきたので、収穫までいけたらと思う」と答えました。就労支援を意識して、どんなことをしていきたいかと聞かれたにしけいの勝野氏は「弊社では子ども防犯教室などをやっていて、社会貢献としても仕事体験や経験の場を提供していきたい。最終的ににしけいに就職する人が出てくればいいかなと思っている」と話しました。支援チームの5人について問われたPwCの實政氏は「大阪と東京、福岡のメンバーで、会計に強い人やシステムに強い人などを集めて組成したことで、うまくいった。メンバーから自分たちにも多くの気づきがあるなどポジティブなフィードバックをもらった」と言いました。フードドライブをきっかけに街づくりにも発展させていきたいという意向を井上氏に確認された西鉄ストアの渡邉氏は「企業は利益を追い求めるので、その視点からNPO等との連携メリットなどについて社内でいろいろ説明して協力してもらい、ようやく1歩を踏み出せた。いろんな地域で広がっていけばと思う」と話しました。マッチング会に参加する前にどんな課題感があったのかと問われた城山観光の安川氏は「災害がいつ起こってもおかしくないという危機感を持って取り組んでいたかというと、そうではなかった。会社として災害分野で寄付をしてきたが、YNFの江崎さんの話を聞いて、必要なものを必要なときに必要な人に届けられていたかなと考えた。江崎さんの話を多くの人に聞いてほしい」と話しました。

続いて、井上氏から全員に「今回の経験を通常業務にどのように活かすか」と問いかけました。サワライズの猿渡氏は「今回つながってみて、意外と簡単にできると分かった。地域ごとに定期的に交流を続けていくことがいいのかなと思う」、にしけいの勝野氏は「公立の学校には常設されているAEDが、フリースクールには設置されていない。地域の防災や安心安全につながっていくように、行政の力を借りるなどして、配置できるように考えていかなければと思った」、PwCの實政氏は「取り組みとして点と点が結びつくだけでなく、こういう機会のように面と面が向き合って対話することが大事だと気づいた。」、西鉄ストアの渡邉氏は「従業員が働く意義を感じてモチべーションアップにつながると思う。また、スーパーは地域のプラットフォームで公民館的な存在として、いろんな人とつながって活動が発展する中心になれればと望んでいる」、城山観光の安川氏は「ホテルに泊まっている間に幸せであるのはもちろん、ホテルに関わったステークホルダーと一緒にウェルビーイングを目指していきたい。こういう場で得たつながりをどう継続していくかを考えながら、お互いに無理しない形で関係を作っていくことが大切だと思う」と話しました。

会場の参加者から全員に「今後も継続して支援していくつもりか」と質問が出ました。サワライズの猿渡氏は「支援というよりビジネスパートナーで、一緒に利益を生み出して社会に還元する発想でやっている。弊社にはいろいろなアセットやナレッジがあり、お互いに活かせば社会にいいものを残せる、お互いに良くなればいいなと思う」、にしけいの勝野氏は「3者と連携していて、継続して取り組んでいきたい。社会貢献的な活動がいずれ自社の採用に返ってくればいいと思っている」、PwCの實政氏は「こういう機会をたくさん作っていきたい。オフィシャルには期限を決める必要があるが、関係を続けていきたい」、西鉄ストアの渡邉氏は「事業を継続し拡大していきたい。デジタルを活用したマッチングもできるといいなと思う」、城山観光の安川氏は「ホテルとしてはコロナ禍に危機に直面し、地域の持続可能性と企業の持続可能性は相関関係があると痛感した。いらっしゃるお客様が幸せであればいいだけでなく、地域全体がどう幸せで持続可能であるかを追求して、活動を継続していきたい」と答えました。

最後に井上氏は「今後やっていきたいことをアピールしてください」と伝えました。サワライズの猿渡氏は「事業をやって、しっかりマネタイズして続けていくことが重要だと思っている。弊社にはいろいろな事業があるので、興味を持っていただけたらお声がけください」、にしけいの勝野氏は「留学生の就労支援として外国人雇用を本格的にスタートするので、アドバイスをいただければうれしい。また、幼稚園や学校でやっている防犯教室を、学校に行けない子どもが通うところでも実施していきたい」、PwCの實政氏は「社会課題に興味を持つ人が入社することも増えている。今、九州・山口で6つの休眠預金を活用する団体を支援していて、横につなげられるといいなと思っている」、西鉄ストアの渡邉氏は「九州の人がさらに地域を好きになれる街づくりを行っていきたい。全てのステークホルダーとつながって、ビジネスの循環もサステナビリティも両立させる街を目指したい」、城山観光の安川氏は「何ができるか日々考えながら取り組みを進めているが、ホテルで働いているだけでは気づけないことがある。団体さんからもお声がけいただきたい」と呼びかけました。
井上氏は「連携で大事なことは、自分たちでは見えていない可能性を一緒に探せることだと感じた。また、九州だからこその可能性があって、地域に根差す企業の皆様だからこそパートナーになりやすい。地域発のモデルケースを皆様と一緒に生み出して、ひいては日本全体が元気になればすごく楽しみだと思った」と総括しました。

パネルディスカッション
動画〈YouTube〉|パネルディスカッション[外部リンク]
2024年7月17日に開催しました「休眠預金活用団体(NPO 等)×企業『SDGsへの貢献につなげる九州マッチング会 成果報告会』」の動画をご紹介します。
2023年11月に実施したマッチング会には休眠預金活用21実行団体と企業30社が参加。そこから生まれた30連携(協議中案件含む)の中から5事例をご紹介します。
<プログラム>
■開会の挨拶
動画▶ https://youtu.be/f7GXdjTRnV8
■九経連の挨拶
動画▶ https://youtu.be/H_8jtGmqRwo
■休眠預金活用事業の紹介
動画▶ https://youtu.be/XkhGd-MsrG0
■ファシリテーター紹介
動画▶ https://youtu.be/Og3q1HawjbQ
■事例紹介1:耕作放棄地の活用による事業連携
動画▶ https://youtu.be/1VRWp9P5fXU
- 【連携企業】株式会社サワライズ
- 【連携団体】株式会社フリップザミント
- 【コーディネーター】一般社団法人SINKa
■事例紹介2:職業体験会から始まる就労支援
動画▶ https://youtu.be/4p8kmP31t0U
- 【連携企業】株式会社にしけい
- 【連携団体】NPO法人未来学舎
- 【コーディネーター】一般財団法人ちくご川コミュニティ財団
■事例紹介3:プロボノによる経理業務支援
動画▶ https://youtu.be/RtkbsfhPzzA
- 【連携企業】PwC Japan 有限責任監査法人 福岡事務所
- 【連携団体】一般社団法人熊本県こども食堂ネットワーク
- 【コーディネーター】認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ
■事例紹介4:フードドライブから始める街づくり
動画▶ https://youtu.be/zYjuYP77YPg
- 【連携企業】株式会社西鉄ストア
- 【連携団体】認定NPO法人フードバンク北九州ライフアゲイン
- 【コーディネーター】一般社団法人全国フードバンク推進協議会
■事例紹介5:団体の講師派遣による防災セミナー
動画▶ https://youtu.be/YVrg4UHDLWE
- 【連携企業】城山観光株式会社
- 【連携団体】NPO法人YNF
- 【コーディネーター】認定NPO法人ジャパン・プラットフォーム
■パネルディスカッション
動画▶ https://youtu.be/xmSSFeMiJJQ
学校帰りや週末に地元の子どもたちが三々五々集まり、一緒に食事をしたり、遊んだり、宿題をしたりしながら思い思いに過ごす「子どもの居場所」。地域により活動の内容はさまざまですが、子どもたちが年齢を超えて交流し、大人と触れ合い、さまざまな経験を重ねて健やかに成長してほしいという運営者たちの願いは同じです。2019年度の休眠預金を活用した「こども食堂サポート機能設置事業」(資金分配団体:一般社団法人全国食支援活動協力会)の支援を受け、一般社団法人コミュニティシンクタンク北九州と社会福祉法人那覇市社会福祉協議会が物資の供給や助成金の情報提供、ネットワーク化支援などを行っている居場所の中から9カ所を取り上げ、活動に込められた思いを取材しました。
行政とともに特色あるコミュニティづくりを通じた子どもの見守りを|一般社団法人 コミュニティシンクタンク北九州
製鉄や石炭産業の発展に伴い、戦後いち早く復興事業が進められ、官営八幡製鐵所をはじめ多くの近代化産業遺産を擁する北九州市。都心としてにぎわう小倉北区や、戦前の駐屯地が農地として払い下げられ宅地開発が進められてきた小倉南区、製鉄所の遊休地を生かした再開発が進む八幡東区など、地域によって特色のある街づくりが進められている同市ですが、その一方で、保護者の帰宅が遅い家庭が少なくありません。
そんな北九州市にある「子どもの居場所」は、市が自治会やPTA、警察、消防と連携して設置した「まちづくり協議会」の「市民センター」で活動していたり、フードバンクを行うNPOのサポートを受けながら食事支援や学習支援、生活習慣の習得支援に取り組んでいたり、女性の生理用品を配布していたりと、活動の内容も形態もさまざまです。しかし、どの居場所も、地元の子どもの見守りやコミュニティづくりに熱い思いを寄せる人たちが、「子ども食堂ネットワーク北九州」(一般社団法人コミュニティシンクタンク北九州がコーディネーターを担当)を通じて、北九州市役所や教育委員会を巻き込みながら活動を広げてきました。
2020年3月頃から始まったコロナ禍によって活動の一時中止を余儀なくされながらも、豊富な経験とネットワークを生かし、柔軟に形を変えつつ支援を続けてきた関係者たちの思いに迫りました。

コラム | 子ども食堂☆きらきら清水 | ネットワークで地域をつなぐ.pdf[外部リンク]
コラム | こあらのおうち | 若園地区に広がる賛同の輪.pdf[外部リンク]
コラム | 子ども食堂「尾倉っ子ホーム」 | 食卓を囲んで愛情を伝える.pdf[外部リンク]
コラム | 絆キッチン | 支援に依存しない居場所づくりを模索.pdf[外部リンク]
世代を超えた学び合いとコミュニティの新しい見守りの形を模索|社会福祉法人 那覇市社会福祉協議会
沖縄県は、一人親世帯や貧困家庭の割合が全国平均に比べて高い状況にあります。特に、県庁所在地の那覇市は、観光関連のサービス業に従事している人が多いため、親が夜遅くまで帰宅できない家庭も少なくありません。また、核家族化や少子高齢化も急速に進んでおり、大人と交流する機会がほとんどない子どもや、生活に困窮する高齢者が増加しているほか、長期にわたって引きこもる50代前後の子どもの面倒を80代前後の親がみなければならない「8050問題」も深刻化し、社会が直面する問題は年を追うごとに複雑になっています。
こうした状況を受け、那覇市でも多くの「子どもの居場所」が立ち上げられ、ユニークな活動を展開しています。地元で長年にわたり食堂を営んできた母娘や、子育てに悩んだ自分の経験から「家庭でも学校でもない、第三の居場所」をつくることを決意した女性、豊富なネットワークと知見を有する民生委員の経験者たちなど、運営者のバックグラウンドは居場所によって異なります。しかし、どの居場所の活動からも、社会福祉法人那覇市社会福祉協議会が運営する「糸」や「こども食堂サポートセンター那覇」に絶大な信頼を寄せ、密に連絡や相談をしながら取り組んでいる様子が浮かび上がってきます。
近隣の子ども食堂や自治体とも連携し、子どもに限らず保護者や高齢者も広く支援対象に入れ、世代を超えた学び合いの場をつくり、地域を盛り上げるとともに、現代ならではの課題に応えることでコミュニティの新しい見守りの形を実践しようと挑戦を続ける居場所の運営者たちに、それぞれの思いを聞きました。

コラム | こばんち | 母と子の居場所をつくりたい.pdf[外部リンク]
コラム | にじの森文庫 | 「生きる力を身に付けさせたい」 .pdf[外部リンク]
コラム | ほのぼのカフェ | 子ども食堂から始まるまちづくり.pdf[外部リンク]
コラム | にぬふぁぶし | たどり着いた「食支援ではなく学習支援を」という思い.pdf[外部リンク]
コラム | ワクワクゆんたく食堂 | 団地から広がる見守りの仕組み.pdf[外部リンク]
■ 事業基礎情報【1】
実行団体 | 一般社団法人 コミュニティシンクタンク北九州 |
事業名 | ⼦ども食堂ネットワーク北九州機能強化事業 |
活動対象地域 | 福岡県北九州市 |
採択事業 | 2019年度通常枠 |
■ 事業基礎情報【2】
実行団体 | 社会福祉法人 那覇市社会福祉協議会 |
事業名 | こども食堂等支援事業〈2019年度通常枠〉 |
活動対象地域 | 沖縄県那覇市 |
資金分配団体 | 一般社団法人 全国食支援活動協力会 |
採択事業 | 2019年度通常枠 |
バランスの良い食事とあたたかい団らんは、子どもの心身の健やかな成長に欠かせません。各地の「子どもの居場所」でボランティアメンバーたちが愛情を込めて準備している食卓には、民間企業からもさまざまな支援が寄せられているのをご存知でしょうか。地域に根差した企業が地元の新鮮な食材を寄附したり、全国に展開する食品企業が出来立てのお弁当を提供したりしながら、それぞれの強みを生かして子どもたちの食事を支えているのです。資金分配団体:全国食支援活動協力会の実行団体である一般社団法人コミュニティシンクタンク北九州や社会福祉法人那覇市社会福祉協議会と連携してユニークな支援を展開する株式会社吉野家と響灘菜園株式会社の担当者に、支援に寄せる思いを聞きました。
子どもを思う地域の人々をトマトがつなぐ|響灘菜園株式会社
関門海峡の北西に広がる響灘に面した響灘菜園株式会社は、食品大手のカゴメ株式会社(カゴメ)と電力会社の電源開発株式会社(Jパワー)によって設立され、2006年からトマトの通年栽培を行っています。敷地内には、東京ドームや福岡ドームよりも広大な8.5ヘクタールにおよぶ温室があり、ハイテクな栽培技術を駆使して20万本のトマトを栽培しており、年間の収穫量は3000トンに上ります。

そんな同社は、「トマトのファンを増やしたい」が口ぐせだという猪狩英之社長の強い後押しを受け、自社のトマトを通じた社会貢献に熱心に取り組んでいます。特に、市内の子ども食堂に対する支援は積極的で、コミュニティシンクタンク北九州が事務局を務める「こども食堂ネットワーク北九州」を通じて、年間2500キロ、約2万個のトマトを無償で提供しているほか、市内の大学や企業などと連携し、トマトを使ったレトルトカレーの開発にも取り組んでいます。
同社が手塩にかけて育てたトマトによって、子どもの見守りや、魅力的なコミュニティづくりに意欲を燃やす地元の人々が有機的につながり、思いが広がっていく様子を二度にわたって取材しました。誇りを持って菜園の中で働く同社の社員たちの姿とともに、ぜひお目通しください。

コラム | 響灘菜園 | トマトカレーがつなぐ思いの循環.pdf [外部リンク]
コラム | 響灘菜園 | トマトを通じて地域に貢献.pdf [外部リンク]
使命感から生まれた新しい寄附文化で広がる笑顔|株式会社吉野家
近年、日本では、所得が全国平均の半分に満たない、貧困状態の家庭で暮らす子どもや、一人で孤独に食事することが常態化している子どもが増加し、成長への悪影響が強く懸念されています。
株式会社吉野家は、未来を担う子どもたちの状況を憂い、「食に携わる企業として貢献したい」という意識を抱いていた河村泰貴・代表取締役社長のリーダーシップの下、2020年に子ども支援事業の立ち上げについて検討を開始しました。当初は連携先の選定に苦労していましたが、社会福祉法人那覇市社会福祉協議会が運営する「こども食堂サポートセンター那覇」との出会いを機に、両者は強力なタッグを組んで支援の形やオペレーション方法を詰めていき、同年9月には那覇市内の店舗で初となる牛丼弁当の配布にこぎつけました。
同社はその後、この方法を他の都市にも横展開し、各地の社会福祉協議会と連携しながら支援を広げています。プロジェクトの進捗や子どもたちの反応については全国1100店舗のスタッフにも報告を欠かさず、社を挙げて思いを共有するよう努めているうえ、他の飲食業の経営陣にもノウハウを積極的に伝えているという同社から伝わってくる使命感と矜持、そして芽吹きつつある新しい寄付文化の機運を、ぜひご覧ください。

コラム | 吉野家 | 一杯の牛丼に思いをのせて.pdf [外部リンク]
■ 事業基礎情報【1】
実行団体 | 一般社団法人 コミュニティシンクタンク北九州 |
事業名 | ⼦ども食堂ネットワーク北九州機能強化事業 |
活動対象地域 | 福岡県北九州市 |
採択事業 | 2019年度通常枠 |
■ 事業基礎情報【2】
実行団体 | 社会福祉法人 那覇市社会福祉協議会 |
事業名 | こども食堂等支援事業〈2019年度通常枠〉 |
活動対象地域 | 沖縄県那覇市 |
資金分配団体 | 一般社団法人 全国食支援活動協力会 |
採択事業 | 2019年度通常枠 |
JANPIAは2023年11月22日、休眠預金を活用して社会課題の解決を目指す団体と企業とのマッチング会「SDGsへの貢献につなげる 九州マッチング会」を福岡市の電気ビル共創館で開催しました。JANPIAとしては3回目のマッチング会で、福岡での対面開催は初となります。地元を中心とする企業30社、九州・沖縄・山口で休眠預金活用事業を進めている21の実行団体、そのパートナーである10の資金分配団体、行政機関などから多くの方々が参加して、とても熱気あふれる場となりました。
九州マッチング会はJANPIA主催・一般社団法人九州経済連合会共催で、電気ビル共創館3階のカンファレンスAにて14:00~17:00に開催しました。

<プログラム>
14:00~ | JANPIA・九経連 開会の挨拶 |
14:10~ | 休眠預金活用事業の概要の紹介 |
14:30~ | 休眠預金活用団体のショートプレゼンテーション |
15:30~ | 企業と休眠預金活用団体との対話会 |
16:50~ | 閉会 |
開会の挨拶と事業概要の紹介からスタート
まずは、JANPIA理事長の二宮雅也が挨拶をしました。JANPIAが2019年政府から指定活用団体に選定されて以来、170以上の助成事業が累計1000を超える実行団体で展開されており、ユニークな日本型モデルの構築が着実に進んでいると紹介。団体の皆様には企業と連携して社会課題の解決を目指したいという強い期待があり、企業も社会を構成する一員として、誰ひとり取り残すことなく未来の子どもたちにサステナブルな社会を引き継ぐために、ぜひ積極的に連携いただきたいと力を込めました。
次に、九州経済連合会専務理事の堀江広重氏が挨拶をしました。九経連では2022年9月に九州・沖縄・山口ESG投融資方針を策定して、2022年は環境省と環境投資の推進を目的としたマッチング会を行い、今年は人への投資を促進するこの会を開催している旨を話しました。

続いて、JANPIAシニア・プロジェクト・コーディネーターの鈴木均が「休眠預金活用事業の概要」と「企業との連携強化」について説明しました。

休眠預金活用団体によるショートプレゼンテーション
14:30からは、21の実行団体が次々に登壇し、活動内容や支援ニーズなどについて1団体3分程度でプレゼンテーションを行いました。登壇した団体は、次の通りです。
<福岡県>一般社団法人家庭教育研究機構(福岡県)、NPO法人未来学舎(福岡県久留米市)、認定NPO法人箱崎自由学舎ESPERANZA(福岡県)、一般社団法人みんなの家みんか(福岡県)、有限会社トラスト/株式会社マイソル(九州)、株式会社ホンジョー(九州)、株式会社ボーダレス・ジャパン(全国)、認定NPO法人フードバンク北九州ライフアゲイン(福岡県北九州市)、一般社団法人YOU MAKE IT(福岡県福岡市)、NPO法人YNF(福岡県・佐賀県・大分県・熊本県)、NPO法人ジャパンマック福岡(福岡県福岡市)、NPO法人福岡子どもホスピスプロジェクト(九州・山口) <佐賀県>一般社団法人さが・こども未来応援プロジェクト実行委員会(佐賀県) <長崎県>一般社団法人MIT(長崎県対馬市) <熊本県>一般社団法人熊本県こども食堂ネットワーク(熊本県)、株式会社フリップザミント(熊本県)、一般社団法人熊本私学教育支援事業団(熊本県学校法人 代々木学園のコンソーシアム構成団体)、ワールドフレンズ天草(熊本県天草地域) <鹿児島県>NPO法人かごしまこども食堂支援センターたくして(鹿児島県) <沖縄県>株式会社よしもとラフ&ピース(沖縄県) <山口県>NPO法人山口せわやきネットワーク(山口県) |
それぞれの団体が、活動のきっかけや活動内容、強み、課題、企業への連携の提案などを分かりやすく紹介しました。個性豊かで情熱的なプレゼンの数々に、参加者たちはどんどん引き込まれて、熱心に聞き入っていました。メモを取る方もいました。企業の参加者からは「休眠預金がこんなにしっかり活用されていることを知らなかったので、視野が広がりました。どのように関われるか考えてみます」、「実行団体の皆さんの熱意に驚きました。ポスターセッションで直接お話しできるのが楽しみです」という声が聞かれました。

企業と休眠預金活用団体との対話会
10分間の休憩を挟んで、15:40から1時間程度、企業と休眠預金活用団体との対話会を行いました。会場後方には実行団体の紹介パネルが設置されており、企業の方々は興味のある団体のところへ行き、名刺交換をして、じっくり話を聞いていました。どの団体も休憩時間から活発な交流が続き、予定の1時間を超えても対話が終わらないほど大いに盛り上がり、終始、会場は熱気に包まれていました。

資金分配団体の担当者は「企業とはなかなか接点がない中、今回は対面で活動と熱量まで伝えられるとても貴重な機会でした。企業の方々には親身になって話を聞いていただき、関心の高さがうかがえました。これを機にコミュニケーションを続けていければと思います」と感想を語りました。
実行団体の担当者は「そもそもフリースクールとは何か、子どもと社会にどんな課題があるのか、企業の方にはあまり知られていないと実感しました。私たちの活動をさらにかみ砕いて説明し、もっと広く知ってもらう必要があると改めて感じました」、「企業と連携することで支援いただくとともに、自分たちのリソースを使って企業に提供できることもたくさんあると気づき、さまざまな可能性が見えてきました」と、確かな手応えを感じていました。
企業の皆様からは「新たな価値の創造を目指す部署が社内に新設されて、自分たちができることを模索しています。今日はさまざまな分野で活動される団体とご縁ができたので、社内に持ち帰って、連携などについて具体的に検討していきたい」など、前向きなコメントが多く聞かれました。
皆様のご協力のおかげで、ここから新たな連携が次々と生まれていくことを期待できる、素晴らしいイベントとなりました。
