2013年に福岡県初のフードバンク団体として設立された、NPO法人フードバンク北九州ライフアゲインは、「すべての子どもたちが大切とされる社会」を目指し、子育て世帯を中心とした食料支援に取り組んでいます。コロナ禍で急増した「食料支援の需要」と「食品ロス」の問題を受けて、同団体は食料を配布するだけでなく、サプライチェーンの効率化やステークホルダーの連携促進にも尽力しています。食料品店、中間支援組織、行政等と協力して22年度に集まった食料品は136t以上。月35世帯ほどだった支援規模は月100〜150世帯にまで増加しました。こうした功績の背景にはどんな工夫があったのか。理事の陶山惠子さんにお話を伺いました。[コロナ枠の成果を探るNo.3]です。
「食料支援の需要」と「食品ロス」の問題に向き合い、延べ4,000世帯を支援
子どもの通う学校が休校になり、働きに出られず、職を失った。自宅にこもる時間が増え、ストレスが蓄積されたことで家庭が崩壊した。2020年、新型コロナウイルスがもたらしたこのような問題は北九州市でも深刻を極めていた、と陶山さんは振り返ります。
「コロナが原因で失職や離婚した家庭が増え、食料支援を求める世帯が急増。2019年度末には月30〜40世帯だったのが、2020年度にはゆうに100世帯を超えるほどに。同時に人の流れや物流が滞った影響で、土産品が売れ残ったり、給食用の食材も廃棄になったりと、食品ロスの問題も深刻化する一方でした」

この問題に立ち上がったのが、陶山さんが理事を務める、NPO法人フードバンク北九州ライフアゲイン(以下、ライフアゲイン)です。同団体は、2013年の設立時より、食品ロスを食料支援につなげる環境活動と、経済的に厳しい子育て家庭への支援という福祉活動の両方に取り組んできました。
コロナ禍において、ライフアゲインがLINE公式アカウントコミュニティ463名に対して実施したアンケートによると、257件あった回答のうち約7割が「家計の中で最も『食費』を充実させたい」と回答。こうした現場のニーズを出発点に、食料支援の体制を強化し、食品ロスの増加を食い止めるため、ライフアゲインによる休眠預金活用事業ははじまりました。

事務所の近くに食品を保管するための倉庫を借り、スタッフを雇用したり、食品棚や搬入用の機材を購入したり。休眠預金を主に食品の管理環境や体制を整えるために活用することで、より幅広い層へのスムーズな食料支援につながったと言います。
「主な支援の対象は子育て世帯ですが、生活困窮者の方たちにも、必要に応じて行政やケースワーカーさんを通じて食料支援をすることがあります。北九州市が積極的に取り組んでいる『子ども食堂』や連携先の大学で自主的なフードパントリー(※)を実施しました」
※日々の食品や日用品の入手が困難な方に対して、企業や団体などからの提供を受け、身近な地域で無料で配付する活動のこと

2022年末までの事業期間を経て、ライフアゲインが食品提供先として連携する福祉施設、および支援する団体の数は145団体(自治体福祉課・社会福祉協議会を除く)にのぼり、食品を提供した企業は188団体へ。
食料支援件数は延べ4,000世帯を超え、寄贈された食品の受け入れ重量は2021年は110t、2022年度は130t以上と、一般的なフードバンク事業と比較し、圧倒的な規模での支援実績を記録しました。
100を超える団体や行政と連携し、支援のアウトリーチを強化
なぜ、これだけの規模で各所から食品が集まり、支援が可能になったのか。取材を通じて見えてきたのは、ステークホルダーとの連携力の強さ。それを証明した取り組みの一つが、食料配布のサプライチェーンの効率化です。
2019年、ライフアゲインは福岡県リサイクル総合研究事業化センターが主催する「食品ロス」をテーマとした研究事業にチームリーダーとして参画し、複数の団体と協力して、食品ロスの削減に向けた取り組みを進めることに。 結果、福岡県内でフードバンク活動の機運を高めるために新設されたのが、「福岡県フードバンク協議会」です。

「現在、県内には8つのフードバンク団体が活動していますが、個別に食品を提供してくれる企業を開拓するのは大変ですし、企業にとっても一つひとつの団体と合意書を結ぶなどの対応をするのは相当な手間になります。逆に言えば、それらが解消されたなら、より多くの食品が効率的に集まるはず。そう考え、フードバンク団体と食品を提供する企業をつなぐ窓口の機能を一箇所にまとめるために協議会を設置しました」
食品寄贈企業の開拓を始め、寄贈された食品の受付や管理、フードバンク団体への支援を呼びかける啓蒙活動や行政への政策提言を含む広報活動…。こうした役割を福岡県フードバンク協議会が積極的に担う体制が実現したことで、以前よりも集まってくる食品の数は格段に増えたと言います。

そして、なにより重要なのは、集まった食品をいかに必要としている人に届けるか。北九州市内における相対的貧困世帯は母子世帯だけでも7,000にのぼると推測される一方、2019年度末時点で、ライフアゲインが支援する子育て世帯は50にとどまっていました。 当事者からの支援要請を待つのではなく、こちらから積極的に当事者とつながっていく「アウトリーチ」を強化する。その必要性を実感したライフアゲインは、支援希望者とつながるLINE公式アカウントを開設し、行政と連携して団体の活動を広く告知。これが支援者の拡大に大きく貢献したと、陶山さんは話します。
「市内の各区役所に案内を設置し、2021年の冬休み前には行政からの提案で、児童扶養手当の受給者を対象とした配布物の中にチラシを同封してもらいました。送付先は約1万人。当初は300世帯だった支援対象の幅を、思い切って1,000世帯にまで広げました。支援希望者にはLINE公式アカウントへの登録を促したところ、新たに1,200名とつながることができたんです」

口コミの力も相まって活動の認知はさらに広がり、取材時点でLINE公式アカウントに登録している支援希望者は1,800名にまで増加しました。現在も学校の長期休み前には、LINEを通じて食料支援の希望を聞いています。
「共に助け合う心」の強さ。未来の孤立を防ぐために
ステークホルダーとの連携により、これまで以上に幅広い世代への食料支援が実現したころ、ライフアゲインの事務所には支援を利用した方からのお礼のメッセージが続々と届き始めました。
「孤独じゃないと実感して勇気づけられた」「私たち家族のことを想ってくれる人がいると実感して元気が出た」ーーそんな感謝の声が溢れる中、とりわけ胸を打たれたメッセージについて、陶山さんは話してくれました。
「中学生の女の子から、こんな手紙が届いたのです。『ありがとうございます。これでお母さんと一緒にご飯が食べられます。お母さんはいつも私達がお腹いっぱい食べられるようにと、余りものばかりを食べて、まともな食事をしていません。食料を届けてくれたおかげで、家族みんなでご飯を食べられることが何より嬉しいです』と。食料支援を希望する人の生活は、私たちが想像するよりもはるかに厳しいのだと思い知らされると同時に、必要な人に支援が届くことの意義を実感できた瞬間でした」

「私は決して独りじゃなかった」。食料支援を受け取った多くの人がそう感じたように、ライフアゲインもまた、支援を実施する中でステークホルダーによるサポートの心強さを実感していました。
「1,000世帯に食料支援のボックスを届ける際、梱包作業がとにかく大変だったんです。そこで食料を寄贈してくださった企業にお声がけをしたら、多くの方が箱詰めのボランティアに参加してくれました。また、送料を賄うためにクラウドファンディングで支援を募ったら、目標金額を超える120万円の寄付が集まりましたし、資金分配団体の一般社団法人全国フードバンク推進協議会さんも他団体の参考になる情報を共有してくださるなど、常に相談しやすい関係性を築いてくださいました。
あとは何より、活動を続ける中で行政との関係性が変化してきたなと実感しています。最近では市が主催するフードバンクの事業に対して提言を求められることもあり、相互に頼り、頼られる関係性が醸成されてきたなと感じています」

つながり続ける関係の中で、助けを求めることは決して恥ずかしいことじゃないーー「家計は苦しいけれど、食料支援を受けるのは抵抗がある」という人も少なからずいる中、ライフアゲインはそんなメッセージを発信し続けてきたと言います。
困っている人には手を差し伸べ、自分が困っているなら周りに助けを求める。ライフアゲインの“共助”の姿勢は周囲にも伝播し、大きな力となって、誰一人孤立しない未来を引き寄せ続けるに違いありません。
最後に陶山さんは、団体の今後についてこう語ってくれました。
「昨今は物価高騰の問題もあり、子育て世代はもちろん、さまざまな事情から困窮し、孤立している人が増え続けています。私たちとしては、フードバンク事業を着実に続けながら、これまで以上に福祉活動にも力を入れたいなと。取り組みの一つとして、2022年からは家庭訪問型の子育て支援の準備も進めており、新しく借りた事業所ではさまざまな困りごとに耳を傾ける相談室を開こうと考えています。今後は食料支援を入口に、支援を必要としている一人でも多くの人とつながり、安心できる関係性を築くことで、困ったときには気軽に頼ってもらえる存在になりたいです」
【事業基礎情報】
実行団体 | 認定特定非営利活動法人フードバンク北九州 ライフアゲイン |
事業名 | コロナ禍でも届く持続可能な食支援強化事業 |
活動対象地域 | 北九州市及び近郊地域 |
資金分配団体 | 一般社団法人 全国フードバンク推進協議会 |
採択助成事業 | 2020年度新型コロナウイルス対応支援助成 |
内 容
00:00:00 開会
00:00:12 開会挨拶
00:01:21 事業概要
00:07:50 11団体の事業報告
00:44:35 事業実施によって明らかになった事象や気付きに関する報告
00:56:10 本事業の特徴(JANPIAのプログラムオフィサーからの視点)
01:06:54 パネルディスカッション 「市域におけるコミュニティ財団と旧身預金活用」
01:47:09 閉会挨拶
主 催
公益財団法人 東近江三方よし基金 https://3poyoshi.com/
公益財団法人 うんなんコミュニティ財団 https://www.unnan-cf.org/
公益財団法人 南砺幸せ未来基金 https://www.nantokikin.org/
後 援
一般財団法人 日本民間公益活動連携機構(JANPIA)
休眠預金活用事業の成果物として資金分配団体や実行団体で作成された報告書等をご紹介する「成果物レポート」。今回は、実行団体『保見団地プロジェクト[資金分配団体:一般財団法人 中部圏地域創造ファンド〈19年度通常枠〉]』が発行したパンフレット『保見団地将来ビジョンブック』を紹介します。
保見団地将来ビジョンブック
「住みやすく楽しい保見団地に」という想いのもと、色々な団体や人たちの力を合わせて3年間取り組んできた保見団地プロジェクト。
コロナ禍での苦労も乗り越え、その成果として、わたしたちの「夢」がたくさんつまった将来ビジョンが作成できたことを、心から喜んでいます。
この将来ビジョンを作成した後も、住民の方々と一緒に様々な取組を行い、ビジョンに盛り込まれた「夢」をひとつでも多く、現実のものにしていきたいと思っていますので、今後とも、よろしくお願いします。
【事業基礎情報】
資金分配団体 | 一般財団法人 中部圏地域創造ファンド |
事業名 | 日本社会における在留外国人が抱える課題解決への支援と多文化共生 |
活動対象地域 | 愛知県 |
実行団体 | <保見団地プロジェクト:チーム構成団体> |
愛知県県営住宅自治会連絡協議会 | |
県営保見自治区 | |
特定非営利活動法人 トルシーダ | |
保見プロジェクト(中京大学) | |
外国人との共生を考える会 | |
採択助成事業 | <2019年度通常枠> NPOによる協働・連携構築事業 副題:寄り添い型包括的支援で困難な課題にチャレンジ!創造性を応援! |
休眠預金活用事業として実施されている「甲信地域支援と地域資源連携事業」。資金分配団体である「認定NPO法人 富士山クラブ」「公益財団法人長野県みらい基金」のコンソーシアムと、山梨県・長野県で子どもや若者たちを含む、困り事を抱えた人々が自ら課題解決できる力を持てる環境づくりに挑む5つの実行団体でこの事業を進めています。山梨県域で活動している3つの実行団体に、資金分配団体のプログラムオフィサー(以下、PO)とJANPIAのPOが視察もかねて訪問した様子を、レポートします。
NPO×自分の生業でゼロからイチを生む!〈河原部社〉
はじめの訪問先は山梨県韮崎市で活動する「NPO法人河原部社」。
河原部社は「やって、みせる」というポリシーのもと2016年に活動をスタートさせました。団体メンバーの平均年齢は30歳。代表理事を務める西田遥さんを中心に、地域おこし協力隊として参加するメンバーを加え、地元の有志8名で韮崎市を盛り上げようと取り組んでいます。

設立当時からビジネスとして「収益をきちんと得られる仕組みづくり」を視野に、「NPO×自分の生業」という働き方のスタンスを保ちながら活動。参加する若者たちがそれぞれのスキルを持ち寄り、活かしながら、社会に対して面白いことを仕掛けていこうと考えています。
既に行政の委託事業として、いくつかの実績を持つ河原部社。JR韮崎駅前にある青少年育成プラザ「Miacis(ミアキス)」の運営は5年目を迎え、立ち上げ当時から利用していた中高生が同社に入社したり、また韮崎市役所に就職したりするなど、後進の育成にも成功。同時にローカルメディア「にらレバ」を運営し、若者向けに地元に特化した情報を発信することで、就職や結婚なども含め、今後の人生の選択肢に「地元」を入れてもらえるようにと継続的に取り組んでいます。
「街のために何かチャレンジしたいという、僕らと同世代の若者がとても多いんです。若者のチャレンジをぜひ現実化したい、さらに自立できるようにビジネスとしても確立させてほしい。そこでまずは私たち自身の団体の組織基盤を強化するために休眠預金活用事業に申請させていただきました。」そう話す西田さん。

彼らが休眠預金活用事業として取り組むのは、「ニラサキサラニ 実践型若者プレイヤーズ育成プロジェクト」。
廃業をしたガソリンスタンドを拠点とし、「ゼロからイチを生み出す経験ができる場づくり」を目標にしています。「プレイヤー」と呼ばれる賛同者と共に活動をはじめるために、現在は本プロジェクトの一つとして「WORKSPACE TUM」の立ち上げと、これらに付随したイベントの企画を急ピッチで進めています。今後はSNSなどを利用し、オンラインでも参加者(TUM MATE)を増やす予定だと本プロジェクトのリーダー・本田美月さんはいいます。


「TUMという名前には、経験や知識を積む場所、そして掛け算を意味する積から『アイデアが掛け合わさる場所』という意味を込めています。TUM MATEの皆さんと共に、さまざまな職域の方達との交流を経て、社会に対する思いを実現へと導くコミュニティを運営していく予定です。」

今回の訪問では、資金分配団体とJANPIAのPOと共に活動進捗を話しながら、どのように収益を上げるかで終わらず、一つ先の視点を継続して持ち、さらにこのプロジェクトを通じて力をつけてソーシャルビジネスなどへのステップアップを目指していくことを改めて共有できた皆さん。何もないところからスタートアップして、大きな団体として行政も巻き込み活動していくというサクセスストリーを描き、「韮崎モデル」として他県域にも広がることを願っています。
「社会的処方+学習支援」で地域課題に挑む〈ボンドプレイス〉

次に訪れたのは、同県南アルプス市の古民家を活動の拠点とするNPO法人bond place(ボンドプレイス)。「接着剤のボンド」と「場所を意味するプレイス」という意味を持つ同団体。現在、行政からの委託事業の一つとして南アルプス市、山梨市と辛い思いを抱えた子どもや若者たちに向けた「居場所づくりの事業」を中心に、孤独や孤立といった問題を抱える人に対してどのようなアプローチができるかを検討し、学習支援や子ども食堂などの利用を促す取り組みをおこなっています。そんな彼らが活動を通じて体感しているのは、こうした支援活動が各市町村単位での対応であること、また福祉など特定の分野に限られた課題設定となりがちであることでした。

「これまで公的な支援においてキャッチできなかった人や物事も多くあります。私たちは、いろいろなセーフティネットに助けられる機会を「学習支援」という入口から取り組んでいこうと考えました。個々が強くなるためではなく、その人たちの環境自体が変わっていくことに対してのアプローチを重要視し、山梨県から社会や環境を変えていきたい。そこで辿り着いたのが『社会的処方』というテーマでした」
そう話すのは理事を務める芦澤郁哉さん。「社会的処方」とは医療機関の取り組みの一つで、薬などの処方だけでなく、社会的な繋がりも処方するというもの。例えば、郵便局に隣接した場所で年金受給日に看護師さんが高齢者の健康相談に乗ったり、地域の資源を最大限に活用して、悩みを抱える人々と触れ合うことなどが挙げられます。こうした考えを実社会に置き換え、1つの分野だけでは解決し難い社会課題においてファシリテーターという役割を担い、「学び」という部分からさまざまな領域の人々を繋ぎ、地域の困りごとを解決する。法的な窓口ばかりに頼るのではなく、自分達から困っている人に出会いに行こうというのが今回の事業、「社会的処方を目指した生態系構築モデル」です。休眠預金を活用し、委託事業としてではなく、自主的な事業として確立できるようチャレンジすることになりました。

2020年度にスタートした「社会的処方の学校」の講座では、分野を問わず参加者自身が自然と行動に移せる仲間づくりを目指し、3〜4人のチームに分かれて課題に取り組んできました。。相手の困りごとをこちら側が勝手に判断をしないことを念頭に、悩みを持つ本人との関係性を深め、向き合い方を捉え直して解決へと導く。さらに「(人が)力を持てる地域、環境づくり」を目指し、対象者が自らの力で歩き出せる環境を作るためにできることを考え、実践へと落とし込んでいく流れです。
同時に社会的処方を実践する上で、当事者に必要な人、物事、環境などを繋ぐ役割「リンクワーカー」の育成を目指します。
開講以来、全5回の講座を終えた今、同様の意味合いを持ちながらも異なる表現ですれ違いを起こしていた事柄も丁寧に言葉を紡ぐことで、専門領域を超え新たな視点からサポートを実現するという強い意識が芽生えているそうです。問題意識を持ちながら、今ある行政制度を底上げする。より良い効果が出る道の模索が続いています。

本プロジェクトのゴールである3年後を目指し、今後はより視点を広げた環境づくりに取り組み、純粋に社会的処方という考えや、リンクワーカーとして担うべきことを定義づけることに注力していくとのこと。課題解決に向けて、幅広い世代のスタッフと分野を超えた参加者の皆さんが力強く歩みを進めている様子が印象的でした。
リユースお弁当箱で子育てママの孤立を救おう!〈スペースふう〉
最後は、子育て中のママさんたちを「食」を通じて応援する認定NPO法人スペースふうを訪れました。1999年に小さなリサイクルショップをオープンさせ、以来、南巨摩郡富士川町を拠点に地域活性や女性の自立支援などを中心に活動をしています。これまでの活動はもちろん、昨今の取り組みの中でスペースふうのメンバーが強く感じ取っていたのは、やはり「孤独」、「孤立」という問題。それらは、コロナ禍を受けて加速傾向にあります。自分が本当に必要とされているのか…、そんな不安を払拭しつつ、自分を大切にできる場所づくりにチャレンジすることにしました。そこで誕生したのが、休眠預金を活用した「リユースお弁当箱がつなぐ地域デザイン事業」です。産後のママさんをはじめ、子育て家庭に向けて「hottos(ホットス)プロジェクト」を立ち上げ、リユース食器などを使用した宅配お弁当サービスをスタートさせました。

特筆すべきは、リユースのお弁当箱(食器類)のメンテナンス、そしてお弁当を包む可愛らしい手ぬぐいをはじめ、hottosのロゴ、LINEの運用など、活動の中枢を子育て中のママさんたちが担っていること。長時間の労働が難しいママさんたちに、それぞれの強みを活かした新しい仕事、居場所を提供することで社会との繋がりや会話が生まれているのだそうです。

事務局の長池伸子さんはいいます。 「活動するための準備や特別な知識がない状態でも、社会課題と向き合うチャンスと思いを受け入れ、実践しながら活動に取り組めるのは休眠預金だからこそ。担当POのアドバイスを受けながら、近隣県域のNPO仲間等とも連携して一緒にゴールを目指せる環境が活動の支えになっています。 これからも誰に頼れば良いか分からないなど、気持ちや環境に余裕がない人をそっと見守る存在として、いい意味で新しい形のお節介をしていきたいですね」
美味しいと評判のお弁当は、南アルプス市で活動する「Public House モモ」によるもの。注文は予約制で、祝日を除く毎週木曜日と金曜日にスタッフが手渡しでお届けしています。利用費用は、なんと一食100円。各種アレルギーなどにも対応し、肉や野菜など、種類豊富で彩りも豊かなおかず類は食べるのはもちろん、見た目にも楽しい気持ちになります。現在の利用者は富士川町に住む11名の新米ママさんや子育て家庭。まだまだ少数ではあるものの、「産後の大変な時に本当に助かったし、優しい言葉もかけてもらえてホッとした」といった声が届いています。連絡手段には、利用者世代のママさんが使いやすいLINEを導入し、繋がりやすさも工夫。利用者さんからの口コミで広がることの重要性を体感しているそうです。


現在は子育て世代を中心としているものの、今後はその枠を広げ、お弁当を通じたコミュニケーションから子どもたちや若者が社会課題を解決する力を持てる地域づくり、さらには次世代への橋渡しにも挑みたいという長池さん。本プロジェクトを遂行する上で、こうした活動の過程を開示しながら持続可能な組織として自立し、新たなビジネスモデルとしての確立が目下の課題であることを改めて担当POとの対話で再確認しました。
キーワードは「お弁当を開けた時のホッとする瞬間」。「孤独」や「孤立」から多くの人を見守る事業モデルに今後も注目していきたいと思います。
【事業基礎情報】
資金分配団体 | 認定特定非営利活動法人 富士山クラブコンソーシアム構成団体:公益財団法人長野県みらい基金 |
助成事業 | 甲信地域支援と地域資源連携事業 ~こども若者が自ら課題を解決する力を持てる地域づくり事業~ |
活動対象地域 | 甲信地域(山梨県・長野県) |
実行団体 | ★特定非営利活動法人 河原部社 ★特定非営利活動法人 bond place ★認定特定非営利活動法人 スペースふう 特定非営利活動法人 こどもの未来をかんがえる会 一般社団法人 信州上田里山文化推進協会(旧:杜の風舎) ★印の団体が今回の訪問先です。 |
休眠預金活用事業の瞬間を写真で伝える「活動スナップ」!今回は、『特定非営利活動法人エティック(ETIC.)〈2019年度通常枠・資金分配団体〉』が、ウェブマガジン「DRIVE」に掲載している記事について連携いただきましたので、紹介します。
活動の概要
NPO法人ETIC.(エティック)は2019年度より休眠預金等活用法に基づき、資金分配団体として「子どもの未来のための協働促進助成事業」を推進しています。全国の子どもを支援する団体が、協働による地域の生態系醸成を実践すること目的に、そのモデルとなりうる実行団体に対して資金的・非資金的な支援を実施中です。
事業開始から2年目を迎え、6つの採択団体(実行団体)およびその連携団体へインタビューし、6回のシリーズで活動の状況をウェブマガジン「DRIVE」※に紹介していきます。
今回は、前半3団体の記事を紹介します。
※ETIC.が運営する「DRIVE」は、世界を変える、未来を創る、行動する人のためのウェブマガジンです。ビジネスアイデア・ワークスタイルから幅広いジャンルの記事を提供しています。
活動スナップ
NPO法人岡山NPOセンター

まちづくりや子ども支援の分野から拓く横断型子ども福祉のコレクティブインパクト。~自然治癒力の高い地域を目指して~ | DRIVE – ツクルゼ、ミライ!行動系ウェブマガジン
NPO法人MamaCan

誰もがなりうる「孤育て」を減らす。千葉県松戸市で進む、「達成したい未来」を共有した街ぐるみの連携 | DRIVE – ツクルゼ、ミライ!行動系ウェブマガジン
NPO法人Learning for All

セクターを超えた協働で「子どものヘルプ信号」をキャッチする~つくば市とNPO法人Learning for All の協働~ | DRIVE – ツクルゼ、ミライ!行動系ウェブマガジン
資金分配団体 | 特定非営利活動法人エティック(ETIC) |
助成事業 | 子どもの未来のための協働助成促進事業〈2019年通常枠〉 |
活動対象地域 | 全国 |
実行団体 | ★特定非営利活動法人岡山NPOセンター ★特定非営利活動法人MamaCan ★特定非営利活動法人Learning for All 特定非営利活動法人グッド・エイジング・エール 一般社団法人小豆島子ども・若者支援機構 特定非営利活動法人子育て運動えん ★:今回の記事で紹介されている団体 |