リスクマネジメントが組織を強くする。法務のプロフェッショナル・BLP-Networkが描く支援のかたち

BLP-Networkは、企業法務に関わる弁護士など、法務のプロフェッショナルが連携して、社会課題に取り組む企業やNPOを支援する団体です。2012年に任意団体として発足し、2023年7月に任意団体とは別に一般社団法人を設立。NPOなどの支援を志す弁護士とのマッチングやネットワークづくり、団体向けの研修・情報発信など、さまざまな活動に取り組んでいます。2023年度の休眠預金活用事業の活動支援団体に選定され、「リスクマネジメントに基づく運営・支援体制の確立」事業を実施。両団体で代表および代表理事を務める鬼澤秀昌さんに、活動の意義や今回の支援内容について伺いました。 

はじまりは、社会課題解決に関心のある弁護士のコミュニティづくり 

鬼澤さんがBLP-Networkを立ち上げたのは2012年のことです。法学部の学生時代にビジネスコンテストを運営するサークルに所属していたことや、ソーシャルビジネスに資金やプロボノ支援を提供をするNPOでインターンをしていたこともあり、社会活動を事業化しながら持続的に活動していくことに強い関心を持っていました。しかし、さまざまな弁護士と出会って話を聞いたり、自身が教育系NPOで活動したりする中で、事業化だけが持続可能性を担保するわけではないと気づき、寄付を資金源とする社会活動への関心が高まります。

鬼澤秀昌さん(以下、鬼澤)「ソーシャルセクターで法務の知識を活かしたいと思い、そういった活動をしている弁護士を探しましたが、個人で動いている方が数人いるだけで、互いに接点もない状況でした。そこで、司法試験が終了後、合格発表までの時期に、今が動けるタイミングだと考え、『みなさん集まりませんか』と声をかけたんです」

そうして設立したのが任意団体のBLP-Networkです。弁護士同士のコミュニティをつくることで相互に連携できるだけでなく、法務の専門家を必要とするNPO側からも認知されやすくなることが団体設立の狙いでした。鬼澤さんは団体として継続させることを第一の目標とし、その後約10年間にわたり、定期的な会合の開催や、NPOと弁護士をつなぐ法務案件のマッチングなどを続けています。

鬼澤「任意団体としてのBLP-Networkは、社会課題解決に関心のある弁護士のコミュニティをつくることで、弁護士同士で案件を紹介し合うなど、マッチングを主な活動としていました。このネットワークづくりを10年間継続させることができましたし、別の目標としていた書籍の出版も果たすことができました(現在も『NPOの法律相談 改訂新版』として発売中です)。そこから次に何を取り組むべきかを考え、浮かび上がったのが『リスクマネジメント』だったんです。NPOが活動の中で発生し得るさまざまなリスクを理解し、優先順位も明確することで、弁護士等との専門家との連携もしやすくなるのではないかと考えました」

オンラインでインタビューに答える鬼澤さん

活動支援団体の制度が、リスクマネジメント支援の追い風に

鬼澤さんがリスクマネジメントを通した支援を行いたいと考えていたタイミングで、休眠預金等活用制度に「活動支援団体」という新たな区分が設けられました。組織運営におけるさまざまな課題に対して、専門的なアドバイスなどの非資金的支援を担う「活動支援団体」は、鬼澤さんが実践したいリスクマネジメントによる支援にまさに合致するものでした。

鬼澤「安定した運営ができているNPOは、自分たちの活動のリスクについてもきちんと言語化できているという印象がありました。リスクを理解することで、それを踏まえた優先順位をつけてお金やリソースの配分を行い、事業目標を達成できるのではないかと思うんです。ですが、多くのNPOは、リスクマネジメントなどの運営基盤を整えたくても、そのためのお金や人手がないというジレンマを抱えています。そこで、支援の対象としてまず考えたのが、NPO等を支援する資金分配団体等の資金提供者でした。資金提供側がリスクマネジメントの重要性を理解すれば、その対応に必要な経費を助成に組み込みながら、NPO等の運営状況を適切に把握する視点が持てると考えたんです」

課題が異なる2団体に対応した伴走

BLP-Networkは2023年度の活動支援団体公募に申請し、採択されます。「リスクマネジメントに基づく運営・支援体制の確立」と題した事業を立ち上げ、支援対象団体の募集を開始。能登地域で震災復興や、地域資源を活用した事業を支援する、公益財団法人ほくりくみらい基金と、全国でフードバンク活動を推進する、一般社団法人全国フードバンク推進協議会の2団体が選ばれました。両団体は、既に休眠預金等活用制度における、資金分配団体として採択され、助成事業を展開しています。

BLP-Network が、採択された2団体と伴走弁護士と実施した勉強会の様子

両団体に対しては、弁護士による伴走型支援として、「リスクマネジメント支援」と「助成プログラム支援」を実施します。「リスクマネジメント支援」では、月1回程度の面談や、年2回の研修・ワークショップを通じて、団体のリスクの洗い出しや抽出、優先順位づけを行い、リスクマネジメント体制を構築、必要に応じて規程類の整備などを行いました。「助成プログラム支援」では、休眠預金等活用制度その他の助成事業の公募を行う時のリスク選好度(どのようなリスクをとって良いと考えているか)の言語化、それに基づく申請書類の項目や面談時の質問事項の整理などを行いました。

活動支援団体公募説明会で提示された、主な支援内容

鬼澤「ほくりくみらい基金さんは、設立して間もなく、事業基盤や仕組みを整えている最中でした。伴走支援が始まった当初は、ちょうど休眠預金の公募準備も進めていたため、まずは公募要項の作成や審査で重視すべきリスクを整理するなど、助成事業を進めるための準備を一緒に行い、その後にリスクマネジメントの伴走支援へと移行しました。一方、全国フードバンク推進協議会さんは、すでにある程度団体としての実績を持ち、加盟団体の強化も含めて次の段階を見据えた内容となりました。私たちは第三者として、リスクの洗い出し、優先順位づけを支援しましたが、その過程で団体内のリスク認識の違いが明らかになり、対話を通してそれを見直す機会となったように感じています」

ほくりくみらい基金さんとのリスク洗い出しワークショップの様子

リスクマネジメントは組織を強くするための前向きな手段

ほくりくみらい基金・代表理事の永井三岐子さんは、現在までの支援の成果をこう振り返ります。

永井三岐子さん「リスクマネジメント計画の策定や研修、リスク洗い出しワークショップ、面談などのサポートを受け、リスクの理解や実務の知識を取得することができました。大きな変化はリスクに対する意識の変化です。リスクはどんな組織にもあるもので、それにどう対応するかが重要であるという認識を持つことができました。また、専門家の伴走を受けることで、オフィスのスタッフが自信や安心感を持って運営に取り組んでいけるようになったと感じます。リスクとの向き合い方も変わったことで、団体の可能性を広げていきたいですね」

また、全国フードバンク推進協議会・代表理事の米山廣明さんは、支援を経て得られた成果について次のように話します。

米山廣明さん「これまでの支援により、日常的な活動に潜むリスクを客観的に『見える化』することができ、対応策を事前に検討する意識が根づいてきました。また、フードバンクの根幹である、食品寄附に関連するリスクだけでなく、組織内の情報共有や意思決定のプロセスについても見直す機会となり、より透明性の高い運営を行うための土台が少しずつ整ってきていると実感しています」

両団体からのコメントを受けて、鬼澤さんも確かな成果を感じているようです。

鬼澤「もともとリスクマネジメントの重要性を感じ始めたのは、組織のガバナンスを強化し、リスクに優先順位をつけて対応すると、結果的に資金調達のしやすさにもつながると気づいたのがきっかけです。リスクマネジメントと資金調達は、やや距離があるように感じられますが、リスクマネジメントによって、潜在的なリスクが明確化され、それに対する備えが整うことで、安心感と自信を持って事業に取り組めるようになっていただける。そうした姿勢が、結果的に資金調達にも好影響をもたらすのだと感じています。リスクマネジメントは一般的に『トラブルを避けるための備え』と捉えられがちですが、組織を強くする前向きな手段として受け止めてもらえたことは嬉しかったですね。

今回の支援を通して、各団体の事業に寄り添いながら、やりたいこととそのリスクを一緒に考える姿勢の大切さを学びました。普段の弁護士業務では、クライアントが相談したことに対して回答することが多いですが、活動支援団体としての支援ではそれよりも一歩踏み込んでいく意識がより重要だと感じています」

実態調査で見えた助成団体の現状とBLP-Networkの展望

今回の事業では団体への支援に加え、「助成事業におけるリスクマネジメントに関する実態調査」も実施。これは、助成事業を行う団体におけるリスクマネジメントの現状を把握し、課題を明らかにすることを目的としたもので、関西大学法学部・坂本治也教授の助言を受けて行われました。NPOなどの事業活動や組織基盤強化に関する助成事業についての調査はもともと数が少なく、なかでもリスクマネジメントの実態に着目した全国規模の調査は前例がありませんでした。

調査では、助成事業を運営している団体の属性やリスクマネジメントの実態、個別の団体では表に出しにくいトラブルの傾向などが明らかになり、貴重なデータが得られました。

鬼澤「これまで弁護士として多くのNPOに関わってきましたが、この調査を通じて、助成事業を行う団体の規模や助成額の目安、リスクマネジメントの実施状況といった実態を数値で把握できたことは、大きな成果だと感じています。また、回答をみると、助成事業を行う団体自身も『人』と『お金』が活動の課題となっていて、当たり前ではありますが、お金を出す側もまたNPOであり、助成を受ける側と同じ課題を抱えていることが明らかになりました。さらに、組織としての規模が大きくなるにつれてリスクマネジメントへの意識や取り組みが進んでいる傾向も見られ、やはり安定した組織運営にリスクマネジメントは欠かせないものだと実感しています」

こうした成果を受けて、鬼澤さんは今回の活動で得たネットワークを活かしながら、今後さらにリスクマネジメントの重要性を業界全体に広げていくことを目指しています。その取り組みの一つが、助成事業を行う団体及び助成金を申請しようとしている団体向けのリスクマネジメントに関するポータルサイトです。

これまでの取り組みを振り返り、BLP-Network自身も組織として成長できたといいます。

鬼澤「立ち上げてからの10年間、とにかく弁護士のネットワークをつくり、それを継続することに力を入れてきたこともあり、組織としての中長期計画というようなものは作っていませんでした。休眠預金の助成をいただき、助成が終わったあとの出口戦略まで考えなければいけないということになって、初めて詳細な3カ年計画などを作っています。また、私たちが目指しているのは、リスクマネジメントの重要性を共有し、『自分も支援したい』と感じる専門家が自然に集まる環境をつくることです。今回の事業を通じて、そうした仲間やネットワークが少しずつ広がり、私たち自身の方向性もより鮮明になったと実感しています」

【事業基礎情報】

活動支援団体一般社団法人BLP-Network
事業名リスクマネジメントに基づく運営・支援体制の確立
活動対象地域全国
支援対象団体・公益財団法人ほくりくみらい基金
・全国フードバンク推進協議会

 

NPOや市民活動団体などが地域課題の解決に取り組む中で、活動を持続・拡大するためには適切な事務局体制やガバナンスが欠かせません。しかし、2019年度から休眠預金等を活用した助成事業が展開される中、助成先団体の多くで組織運営上の課題を抱えていることが明らかになっています。「活動支援団体」は、こうした団体が抱える事業や組織の課題を解決するために、専門的なアドバイスや伴走支援を行う存在です。(「活動支援団体とは」
2023年度に活動支援団体として選定されたNPO法人ボランタリーネイバーズは、2024年度に3つの支援対象団体に対して「かなめびと(組織コアスタッフ)育成による組織基盤強化」と銘打ったサポートを実施。本記事では、同団体の理事・青木研輔さん、支援を受けたNPO法人ファミリーステーションRinの皆さんに、支援内容とその成果について詳しく伺いました。

複雑化する社会課題とNPOの世代交代問題 

2001年に設立されたボランタリーネイバーズは、25年近くにわたり、“NPOを支援するNPO”として活動を続けてきました。NPO法人の設立・運営支援、行政との協働推進、会計業務など、幅広い相談に応じて専門家と伴走支援を提供しています。長く中間支援組織としての役割を果たしてきた中で、休眠預金等活用制度の活動支援団体へ申請したのは、なぜなのか。青木研輔さんはこのように話します。

青木研輔さん(以下、青木)「1998年に特定非営利活動促進法が制定され、その後、多くのNPO法人が創設されました。それから30年近くが経ち、当時とは社会課題が大きく変化・複雑化しています。どの団体も目の前の課題に対応していくのがやっとで、組織体制を強固なものにするところまで手が回っていない。活動に伴走する中で、そういった現場を見ることが増えてきており、我々が力になりたいと思ったんです」
また、設立当初のメンバーが高齢化し、世代交代のタイミングを迎えている団体が全国的に増えている中で、次世代を担う人材の育成をサポートしたいと思ったのも、申請理由の1つだと青木さんは語ります。加えて、NPO法人NPOサポートセンターが2025年に発表した「NPO代表者白書」のデータに触れ、こう続けます。

青木「調査では、全国平均で56.2%の団体が中期計画のような将来を見据えた計画を策定していないという数字が出ています。あくまで目安ですが、これは多くの団体が先の見通しを立てて活動ができていないことを意味しています」

目の前のことに追われて、将来像を描いている暇がない。もしくは、描く手段がわからない。そうした団体に対して適切なサポートをし、日本のNPOをもっと元気にしたい。そんな思いを背景に、ボランタリーネイバーズは活動支援団体公募に申請し、採択されました。対象となったのは「かなめびと(組織コアスタッフ)育成による組織基盤強化」と題した事業。これは、団体を引っ張っていくコア人材の育成を目的に、各団体の課題に応じて専門家を派遣し、チームを組んで伴走支援を行うものです。

オンラインで取材に応じる青木さん

団体ごとに支援の仕方をアレンジし、チームを組んでサポート 

ボランタリーネイバーズの支援の特徴は、大きく2つあります。1つは、決まったフレームワークを持たないこと。団体によって抱える課題は異なり、その解決策もそれぞれに違うからです。

 

青木「各団体にヒアリングをし、課題を抽出した上でベストなサポート人材(専門家)と解決策を検討します。ファシリテートのプロと一緒にワークショップを行うこともありますし、弁護士と共にガバナンスやコンプライアンスに関する体制づくりをすることもある。会計ソフトの導入サポートをするために、税理士と一緒に現場でアドバイスをしたこともありました。可能な限りどんな相談にも応じられるように、柔軟にサポート内容を変えています」

 

支援を進めていく中でも、当初の設計にこだわらず、発生した疑問や新たに見つけた課題があれば、それに応えられるようにアップデートしているとのこと。また、もう1つの特徴は、外部の専門家の力を借りて、チームを組んで支援することです。

 

青木「中間支援に取り組む団体の中には、コーディネーター兼専門家のように、1人で全てに対応しているところもあるでしょう。けれど、ボランタリーネイバーズはあえてそれをしていない。それは、第三者を交えることで、“自分(伴走者)を超えた多様な視点”で支援できるからです。調整コストを考えたら面倒ではありますが、支援のプロセスを客観視できるような仕組みがあってこそ、独りよがりにならない支援ができると考えています」

 

ボランタリーネイバーズの「かなめびと育成」事業は、2024〜2027年の3年間で全4回の公募を行い、各団体に6カ月間の伴走支援を行うプログラム。初回の公募では3団体を採択し、組織体制や役割の明確化、規程類の整備、管理・経理業務の見直しなどに取り組みました。今回支援した団体の1つ、ファミリーステーションRinに対しては、専門家として経験豊富なファシリテーターを派遣し、全6回のワークショップ形式で支援を進めていきました。

 

青木「Rinさんは主に創業世代から次世代への事業承継を課題としていました。ヒアリングを重ね、次世代を担うメンバーたちが運営の核として持っておくべき共通認識、判断の軸が必要で、それを得るにはワークショップの実施がベストだと考えました」

ワークショップを通し、次世代メンバーの運営の「軸」を形成 

ファミリーステーションRinは、愛知県日進市を拠点に、子どもの一時預かりや子育て支援拠点の運営、訪問型サポート事業といった、子育て環境の改善を図る活動を展開しています。発足は2004年。創設メンバーの1人である代表理事の牛田由美子さんは、このように語ります。

 

牛田由美子さん「私たちの代から次の代へ、事業承継をする時期に差し掛かっています。ただ、青木さんがおっしゃったように、日々の業務に忙しく、なおかつ次世代のコアメンバーが事業ごとに分かれて仕事をしている状況で、法人運営についてしっかりと話し合う機会を持てていませんでした。それに加えて、世代交代に当たっては社会課題をしっかりと捉える感性を身に着けて、その中で主体的に関わるにはどうしたらいいのかを考えてほしいという思いがあったんです」

 

ワークショップに参加した5名のうちの1人である磯畑さんは、このように話します。

 

磯畑香苗さん(以下、磯畑)「どこかのタイミングで事業承継をするという意識はありつつも、具体的にいつ、どのようにやればいいのかわからずに、踏み出せないでいました。そんな中、ボランタリーネイバーズさんが支援対象団体を募集したチラシを拝見して、そこに “活動の広がりに合わせて、今の体制や現メンバーだけで続けていけるのかを見直してみませんか”といった趣旨が書かれており、『まさにうちのことだ!』と思い、サポートを受けたいと牛田に話をしたのを覚えています」

ワークショップの様子

 

ワークショップでは、組織課題を洗い出し、ファミリーステーションRinが大切にしている価値観の言語化、スタッフ一人ひとりの成長ステップを明確にするキャリアプラン表の作成、事業承継後を見据えた3年後の理想的な組織像の策定などが行われました。

 

一連の活動を経て得たものの大きさを、参加メンバーたちは語ります。

 

飯野良江さん「創業メンバーは、共有する思いがあって団体を設立したわけですが、途中から入った私たちはあらためて思いを話し合う機会を設けてきませんでした。ワークショップを通して、それぞれがどのように活動に向き合っているのかを知ることができましたし、そこから共通認識を確認することもできました」

 

浅井裕子さん「これまで関わっている事業からしかRinを見られていませんでしたが、客観的にRinの活動を見ることができ、あらためて存在意義を感じられたのはとても良かったです。自分たちだけでは後回しにしてしまいがちな話し合いも、ボランタリーネイバーズさんが入ってくださったことで、きちんとスケジュール通りに進められたのもありがたかったですね。こちらが言ったことを否定せず、常に肯定する言葉をかけてくださり、前向きな気持ちで取り組むことができました。毎回のワークショップが楽しみでした」

 

磯畑「最初に、話し合いのルールとして『自分の思っていることを包み隠さず、ぶつけ合おう』と決めたことで、それぞれが本音で話せたのが何よりも良かったです。普段は遠慮して話せないようなことも、ルールがある上でなら建設的に話し合えて、このプロセス自体が大きな財産になった気がします」

ワークショップで整理された「大切にしたい価値観」や「キャリアアップの方向性」

 

ここで策定された、ファミリーステーションRinが大切にしたい価値観やキャリアプランは、今後理事会などを通して、事業計画や人事評価制度などに落とし込まれていくとのこと。ワークショップを経たことでメンバー同士の結束力もより強くなり、話し合いの大切さを実感したそうです。

特別ではない、「普通の人」が支え合える社会に向けて

今後、活動支援団体として目指すのは、これまでの支援で培ったノウハウやツールを整理し、他地域の団体にも活用してもらえる形で共有していくことです。

 

青木「より多くの団体が適切な支援を受けるには、スーパーマンのような特定の誰かにしかできない支援活動であってはいけません。活動支援団体がコーディネートをして、専門家とチームを組んで支援するやり方なら、各地域で展開できるはず。専門家との連携の仕方などは我々が共有させていただきます」

 

近年、様々な分野で中間支援組織の役割が重要視されつつあり、そのような中でボランタリーネイバーズは、より一層力を発揮し、ノウハウを広く伝えてNPOが活動しやすい環境づくりを見据えています。

 

青木「ボランタリーネイバーズは『“よい社会”は市民がつくる』という理念を掲げています。ここでいう市民とは特別な人ではなく、どこにでもいる普通の人。誰もが誰かを支える活動ができる社会が、よい社会だと思っています。我々は直接的な支援の現場にいるわけではありませんが、現場で汗を流している多くのNPOを支える取り組みをこれからも続けていきたい。よりよい社会を作るために行動する市民を1人でも増やしたいですね」

 

【事業基礎情報】

資金分配団体 特定非営利活動法人ボランタリーネイバーズ
事業名 次のステージを支える「かなめびと(組織運営コアスタッフ)」養成による組織基盤強化
活動対象地域 愛知県及び隣接県(岐阜県、三重県、静岡県、長野県)
実行団体 ・NPO法人ファミリーステーションRin(※)
・からし種
・特定非営利活動法人トルシーダ
・特定非営利活動法人エム・トゥ・エム
※記事で取り上げられている団体

休眠預金活用事業に係るイベント・セミナー等をご案内するページです。今回は、NPO法人ボランタリーネイバーズ主催「持続可能な体制をつくる!かなめびと応援プロジェクト・セミナー『現場が自律的に動き、助け合えるチームを作るマネジメントと実践』」を紹介します。

持続可能な体制をつくる!かなめびと応援プロジェクト・セミナー
「現場が自律的に動き、助け合えるチームを作るマネジメントと実践」

NPOの活動は、いつも「手が足りない」状態の中で回しています。
さらに、環境の変化は早く、複雑な問題が日々発生する中、限られた人と時間で社会的課題を解決するには、どうしたらよいのでしょうか。
その鍵は、現場が自律的に動くこと、そして、メンバー同士が自然と助け合えること。それぞれのメンバーが目的を理解し、自分たちで次の一手を考えられるチームに変わることが求められています。
今回のセミナーでは、それぞれのチームが組織の目標を踏まえて自ら計画を立て、短い周期で小さな改善を積み重ねていく、そんなチームに育てるためのマネジメントと実践方法をお伝えします。

実際にこの手法を取り入れた組織では、
・「週次の目標をもとに自分のチームで日々の計画を自分で立てられるようになった」
・「早めに手を打てるようになり、本来の職務にあたることができるようになった」
・「自分にも他のメンバーをサポートできる部分があると気づいた」
という声が届いています。

メンバーの間で「何を目指して動いているのか」を共有し、チームで経験と学びを分かち合いながら計画と振り返りの精度を上げていくことで、組織の姿は大きく変わります。
当日はそのための考え方と、すぐに試せる実践のヒントをご紹介します。

 

【イベント情報】

日時2025年9月16日(火)19:00~21:00
開催形式

オンライン(Zoomを使用)

定員30名
対象・NPOの代表者や理事・幹部スタッフなど、組織の将来を担う立場にある方
・NPOの現場を支える若手スタッフ・中堅職員
・NPOのチームマネジメントに課題意識を持つ中間支援組織・行政担当者
・NPOのチームマネジメントに関心のある研究者・学生
参加費無料
プログラム(予定)19:00-19:05 開会、趣旨説明
19:05-20:05 講義
20:05-20:15 休憩
20:15-20:50 質疑
20:50-21:00 かなめびと事業の紹介、閉会

【講座内容】
・なぜ今、チームが自律的に動く必要があるのか
・チーム活動の基本構造である5つのステップ
・目的・ゴールを明確にするフレームの活用
・自律性を生み出す“日々の運営リズム”と情報の工夫

【講師】伊東かおり
(株式会社Hyper-collaboration
 コミュニティ オーガナイザー/トランジション アクセラレーター)
愛知県半田市出身。
経営コンサルタント会社でのインターン後、起業支援を行うNPOスタッフを経て、2011年ファシリテーターとして独立。
主に福祉事業所やまちづくりに関する人材育成・組織運営の支援に携わる。2016年札幌に移住。
NPOだけでなく、社会全般において働くことの価値の転換の必要性を感じ、企業の人材育成・組織開発に関わるようになり、2020年(株)Hyper-collaborationの立ち上げからメンバーとして参画。
北海道のファシリテーターが集まるNPO法人きたのわの理事としても活動中。
主催NPO法人ボランタリーネイバーズ
お申込みPeatixの参加申込フォームよりお申し込みください。
https://peatix.com/event/4528028
お問い合わせNPO法人ボランタリーネイバーズ
[住所]愛知県名古屋市東区東桜2-18-3、コープ野村東桜702
[連絡先]052-979-6446
     (担当:大久保 / 電話受付時間:平日10時~18時)
[E-mail]katudoushien@vns.or.jp
[URL]https://www.vns.or.jp/

 ★本事業は、休眠預金等活用法に基づく活動支援団体として実施しています。
 ぜひ、この機会にご参加いただき、活動の体制・基盤を整えましょう!

休眠預金活用事業に係るイベント・セミナー等をご案内するページです。今回は、NPO法人ボランタリーネイバーズ主催「持続可能な体制をつくる!かなめびと応援プロジェクト・セミナー 『経営戦略から描く、私たちらしい未来のかたち』」を紹介します。

持続可能な体制をつくる!かなめびと応援プロジェクト・セミナー
「経営戦略から描く、私たちらしい未来のかたち」

NPOとしての願いや社会的役割を、どんなかたちで未来へつなげていくのか。
今回のセミナーでは、経営戦略の考え方をヒントに、団体の未来を自分たちで描いていく方法を学びます。

戦略と聞くと少し難しそうに感じるかもしれませんが、今回は“どこに向かうかを決めるための考え方”として、やさしくお伝えします。

セミナーでは、日々の活動と理念をつなぐ視点や、将来の組織図づくりにも取り組みながら、“かなめびと”が団体の中でどんな役割を担っていけるのか、一緒に考えていきます。

当日は、NPO支援に関わる中小企業診断士が登壇し、「経営診断とは何か?」についてわかりやすく解説します。
経営診断では、団体の経営戦略、組織体制、財務状況、日々の業務などを多面的に整理・分析し、独自の能力、業界環境、課題などを明らかにしたうえで、今後の方針や改善の方向性を共に考えます。実際の支援事例の紹介も予定しています。

日々の活動を見直し、未来に向けた一歩を考える時間です。
関心のある皆さまの参加を、心よりお待ちしております。

 

【イベント情報】

日時2025年7月23日(水)19:00~21:00
開催形式

オンライン(Zoomを使用)

定員30名
対象・NPOの代表者や理事・幹部スタッフなど、組織の将来を担う立場
 にある方
・次世代のリーダー候補として活動している若手スタッフ・中堅職員
・NPOの経営・組織に課題意識を持つ中間支援組織・行政担当者
・NPOの経営・組織に関心のある研究者・学生
参加費無料
プログラム(予定)19:00-19:05 開会、趣旨説明
19:05-20:05 講義
20:05-20:15 休憩
20:15-20:50 質疑
20:50-21:00 診断士による支援の紹介、かなめびと事業の紹介、
       閉会

【講座内容】
・私たちの未来を思い描くために ~“目指す姿”をことばにする~
・経営戦略を考える ~これからの道をどう決める?~
・経営の全体像を描いてみる ~理念と日常をつなぐ~
・かなめびとって、どんな存在? ~未来の組織図から考える~
・経営診断と支援事例の紹介

【講師】
 愛知県内の企業内中小企業診断士

【愛知県内の企業内診断士の活動について】
愛知県内で企業に勤務する中小企業診断士によって構成されるメンバーが中心となり、企業で培った多様な専門性を持つメンバーが集い、互いに学び合いながら、社会貢献としてNPO支援にも力を入れています。
2020年以降、名古屋市市民活動推進センターやNPO中間支援組織ボランタリーネイバーズと連携し、NPO支援の仕組みづくりに取り組んできました。経営戦略立案支援、中期経営計画策定支援、組織診断、指定管理者応募のサポート、クレド作成支援など、多面的な支援を展開しています。
私たちの支援は、中小企業診断士がチームを組み、それぞれの強みを活かして現場に伴走するスタイルが特長です。
NPOの活動に寄り添い、中小企業診断士としての専門性を活かしながら、組織の持続的な発展を支える支援を目指しています。

★本事業は、休眠預金等活用法に基づく活動支援団体として実施しています。ぜひ、この機会にご参加いただき、活動の体制・基盤を整えましょう!
主催NPO法人ボランタリーネイバーズ
お申込みPeatixの参加申込フォームよりお申し込みください。
https://peatix.com/event/4460553/
お問い合わせNPO法人ボランタリーネイバーズ
[住所]愛知県名古屋市東区東桜2-18-3、コープ野村東桜702
[連絡先]052-979-6446
     (担当:大久保 / 電話受付時間:平日10時~18時)
[E-mail]katudoushien@vns.or.jp
[URL]https://www.vns.or.jp/

 

休眠預金活用事業に係るイベント・セミナー等をご案内するページです。今回は、一般社団法人BLP-Network主催「リスクマネジメントを一緒にはじめる勉強会~調査レポートから学びあう~(助成事業者編)」を紹介します。

リスクマネジメントを一緒にはじめる勉強会
~調査レポートから学びあう~【助成事業者編】(オンライン開催)

一般社団法人BLP-Networkは、NPO・NGO・社会的企業に対し、弁護士等とのマッチングやリスクマネジメント支援を行っています。
2024年度からは、休眠預金活用事業の一環として「リスクマネジメントに基づく運営・支援体制の確立」事業を実施し、助成団体の実態調査を行いました。
その結果、人材や財務など多様なリスクへの対応が課題であることが明らかになり、団体間の学び合いや情報発信の重要性が再認識されました。
つきましては、調査結果や当団体作成のポータルサイトを活用した勉強会を開催いたします。

参加申し込みは以下[外部リンク]よりお願いします!
調査のレポートは以下からダウンロードいただけます。

調査レポート(詳細版)はこちら

 

【イベント情報】

日時2025年7月1日(火)13:00~14:30
開催形式

Zoomミーティングを利用したオンライン開催

定員なし
対象助成事業を行う団体、助成事業に関心のある皆様
勉強会概要【第1部】調査結果報告・ポータルサイトの共有 
【第2部】パネルディスカッション
       パネリスト:認定NPO法人北海道NPOファンド理事
                高山 大祐 氏
                関西大学法学部教授 坂本 治也 氏
【第3部】参加者同士の議論・発表
主催一般社団法人BLP-Network
お申込みgoogleフォームまたは以下QRコードより、以下の事項を入力し、
お申込みください。

①氏名
➁メールアドレス
③所属団体
④役職
⑤プライバシーポリシーの同意
⑥その他聞きたいことや補足
※申込期限:2025年6月26日(木)まで
お問い合わせ一般社団法人BLP-Network
[Mail]info@blp-network.com

 

休眠預金活用事業に係るイベント・セミナー等をご案内するページです。今回は、NPO法人ボランタリーネイバーズ主催『持続可能な体制をつくる!かなめびと応援プロジェクト・セミナー「NPOの世代交代・事業承継、なにから始める?実践のヒントと支援のかたち」』を紹介します。

持続可能な体制をつくる!かなめびと応援プロジェクト・セミナー「NPOの世代交代・事業承継、なにから始める?実践のヒントと支援のかたち」

近年、NPOの現場では、創業期リーダーたちが次世代へバトンを渡す時期を迎えています。事業承継は、単なる役職の引き継ぎではなく、NPOの社会的ミッションを次世代に継続するための重要なプロセスです。

本セミナーでは、NPOの事業承継に関する調査研究を行ってきた研究者が、創設者の影響力、ガバナンス、承継計画の有無、組織規模や年齢、理事会の関わりなど、事業承継の成否を左右する要因を分析します。理論面と統計分析結果から見える傾向を学び、データと事例を通じて具体的な論点やヒントを参加者と一緒に考えます。

NPOが抱える世代交代・事業承継の課題にどう向き合い、どのような準備や工夫が可能かを皆さんと一緒に考え、NPOの未来を描く機会にしたいと思います。関心のある皆さまのご参加を心よりお待ちしております。

 

【イベント情報】

日時2025年5月30日(金)18:00~20:00
開催形式

オンライン(Zoomを使用)

対象NPOの代表者や理事・幹部スタッフなど、組織の将来を担う立場にある方
次世代のリーダー候補として活動している若手スタッフ・中堅職員
コアメンバーの高齢化と将来に課題意識を持つNPO役職員
NPOの事業承継に課題意識を持つ中間支援組織・行政担当者
非営利組織の経営・組織論に関心のある研究者・学生
参加費無料
プログラム(予定)18:00-18:05 開会、趣旨説明
18:05-19:05 講義
19:05-19:15 休憩
19:15-19:50 質疑
19:50-20:00 かなめびと事業の紹介、閉会
主催NPO法人ボランタリーネイバーズ
お申込みPeatixの参加申込フォームよりお申し込みください。
https://peatix.com/event/4374442
お問い合わせNPO法人ボランタリーネイバーズ
[住所]愛知県名古屋市東区東桜2-18-3、コープ野村東桜702
[連絡先]052-979-6446(担当:青木/電話受付時間平日10時~18時)
[E-mail]katudoushien@vns.or.jp
[URL]https://www.vns.or.jp/

 

事業完了にあたり、成果の取りまとめるために実施されるのが「事後評価」です。事後評価は、事業の結果を総括するとともに、取り組みを通じて得られた学びを今後に生かせるよう、提言や知見・教訓を整理するために行われます。今回は、2023年3月末に事業完了した2020年度通常枠【中核的フードバンクによる地域包括支援体制|パブリックリソース財団[20年度通常枠]】の事後評価報告書をご紹介します。ぜひご覧ください。

事業概要等

事業概要などは、以下のページからご覧ください。


事後評価報告

事後評価報告書は、以下の外部リンクからご覧ください。

・資金分配団体

・実行団体


【事業基礎情報】

資金分配団公益財団法人 パブリックリソース財団
事業名中核的フードバンクによる地域包括支援体制
<2020年度通常枠>
活動対象地域全国
実行団体・フードバンクTAMA
・公益社団法人 フードバンクかながわ
・フードバンク山梨
・特定非営利活動法人 フードバンクネット西埼玉
・労働者協同組合 ワーカーズコープちば

事業完了にあたり、成果の取りまとめるために実施されるのが「事後評価」です。事後評価は、事業の結果を総括するとともに、取り組みを通じて得られた学びを今後に生かせるよう、提言や知見・教訓を整理するために行われます。今回は、2022年3月末に事業完了した2019年度通常枠【子ども支援団体の組織基盤強化|パブリックリソース財団】の事後評価報告書をご紹介します。ぜひご覧ください。

事業概要等

事業概要などは、以下のページからご覧ください。


事後評価報告

事後評価報告書は、以下の外部リンクからご覧ください。

・資金分配団体

・実行団体


【事業基礎情報】

資金分配団公益財団法人 パブリックリソース財団
事業名子ども支援団体の組織基盤強化
〜実行団体の組織力向上による子ども支援サービスの拡充・安定化〜

<2019年度通常枠>(草の根活動支援事業)
活動対象地域全国
実行団体・一般社団法人 無限
・認定特定非営利活動法人 ブリッジフォースマイル
・認定特定非営利活動法人 発達わんぱく会
・特定非営利活動法人 沖縄青少年自立援助センターちゅらゆい

パブリックリソース財団が2023年2月22日に開催した、子ども支援団体の組織基盤強化事業 「成果報告会 -3年間におよぶ組織基盤強化の成功要因を探る-」の動画です。

パブリックリソース財団は、休眠預金等活用事業の中ではまだ珍しい「組織基盤強化」に対して、資金分配団体として支援を行いました。

  • NPO法人 沖縄青少年自立援助センターちゅらゆい https://www.churayui.org/index.html
  • 認定NPO法人 発達わんぱく会 https://www.wanpaku.org/recruit/index.html
  • 認定NPO法人 ブリッジフォースマイル https://www.b4s.jp/
  • 一般社団法人 無限 https://mugen-mugen.com/
  • 休眠預金活用事業として実施されている「甲信地域支援と地域資源連携事業」。資金分配団体である「認定NPO法人 富士山クラブ」「公益財団法人長野県みらい基金」のコンソーシアムと、山梨県・長野県で子どもや若者たちを含む、困り事を抱えた人々が自ら課題解決できる力を持てる環境づくりに挑む5つの実行団体でこの事業を進めています。山梨県域で活動している3つの実行団体に、資金分配団体のプログラムオフィサー(以下、PO)とJANPIAのPOが視察もかねて訪問した様子を、レポートします。

    NPO×自分の生業でゼロからイチを生む!〈河原部社〉

    はじめの訪問先は山梨県韮崎市で活動する「NPO法人河原部社」。
    河原部社は「やって、みせる」というポリシーのもと2016年に活動をスタートさせました。団体メンバーの平均年齢は30歳。代表理事を務める西田遥さんを中心に、地域おこし協力隊として参加するメンバーを加え、地元の有志8名で韮崎市を盛り上げようと取り組んでいます。

    設立当時からビジネスとして「収益をきちんと得られる仕組みづくり」を視野に、「NPO×自分の生業」という働き方のスタンスを保ちながら活動。参加する若者たちがそれぞれのスキルを持ち寄り、活かしながら、社会に対して面白いことを仕掛けていこうと考えています。

    既に行政の委託事業として、いくつかの実績を持つ河原部社。JR韮崎駅前にある青少年育成プラザ「Miacis(ミアキス)」の運営は5年目を迎え、立ち上げ当時から利用していた中高生が同社に入社したり、また韮崎市役所に就職したりするなど、後進の育成にも成功。同時にローカルメディア「にらレバ」を運営し、若者向けに地元に特化した情報を発信することで、就職や結婚なども含め、今後の人生の選択肢に「地元」を入れてもらえるようにと継続的に取り組んでいます。

    「街のために何かチャレンジしたいという、僕らと同世代の若者がとても多いんです。若者のチャレンジをぜひ現実化したい、さらに自立できるようにビジネスとしても確立させてほしい。そこでまずは私たち自身の団体の組織基盤を強化するために休眠預金活用事業に申請させていただきました。」そう話す西田さん。

    新たなプロジェクト「ニラサキサラニ」の拠点は韮崎中央公園前にある旧ガゾリンスタンド。

    彼らが休眠預金活用事業として取り組むのは、「ニラサキサラニ 実践型若者プレイヤーズ育成プロジェクト」。
    廃業をしたガソリンスタンドを拠点とし、「ゼロからイチを生み出す経験ができる場づくり」を目標にしています。「プレイヤー」と呼ばれる賛同者と共に活動をはじめるために、現在は本プロジェクトの一つとして「WORKSPACE TUM」の立ち上げと、これらに付随したイベントの企画を急ピッチで進めています。今後はSNSなどを利用し、オンラインでも参加者(TUM MATE)を増やす予定だと本プロジェクトのリーダー・本田美月さんはいいます。

    かつての給油スペースは憩いの場に。併設されたカフェ「Parkside Parlor IRU」では、ソフトクリームやタコスなど、ご機嫌なメニューが楽しめます。誰でも利用可能です。
    (写真左)隣接するガレージは、ペイントなど一部を河原部者スタッフやTUM MATEでDIY。若者たちのコワーキングスペースとして、またイベント会場として利用される予定。 (写真右)ガレージ前にて。西田遥さんと本田美月さん。
    (写真左)隣接するガレージは、ペイントなど一部を河原部者スタッフやTUM MATEでDIY。若者たちのコワーキングスペースとして、またイベント会場として利用される予定。 (写真右)ガレージ前にて。西田遥さんと本田美月さん。

    「TUMという名前には、経験や知識を積む場所、そして掛け算を意味する積から『アイデアが掛け合わさる場所』という意味を込めています。TUM MATEの皆さんと共に、さまざまな職域の方達との交流を経て、社会に対する思いを実現へと導くコミュニティを運営していく予定です。」

    今回の訪問では、資金分配団体とJANPIAのPOと共に活動進捗を話しながら、どのように収益を上げるかで終わらず、一つ先の視点を継続して持ち、さらにこのプロジェクトを通じて力をつけてソーシャルビジネスなどへのステップアップを目指していくことを改めて共有できた皆さん。何もないところからスタートアップして、大きな団体として行政も巻き込み活動していくというサクセスストリーを描き、「韮崎モデル」として他県域にも広がることを願っています。

    今回の訪問では、資金分配団体とJANPIAのPOと共に活動進捗を話しながら、どのように収益を上げるかで終わらず、一つ先の視点を継続して持ち、さらにこのプロジェクトを通じて力をつけてソーシャルビジネスなどへのステップアップを目指していくことを改めて共有できた皆さん。何もないところからスタートアップして、大きな団体として行政も巻き込み活動していくというサクセスストリーを描き、「韮崎モデル」として他県域にも広がることを願っています。

    「社会的処方+学習支援」で地域課題に挑む〈ボンドプレイス〉

    ボンドプレイスが主に個別相談や会議の場として使用している大きな古民家。廊下の窓を開けると目の前には富士山が!
    ボンドプレイスが主に個別相談や会議の場として使用している大きな古民家。廊下の窓を開けると目の前には富士山が!

    次に訪れたのは、同県南アルプス市の古民家を活動の拠点とするNPO法人bond place(ボンドプレイス)。「接着剤のボンド」と「場所を意味するプレイス」という意味を持つ同団体。現在、行政からの委託事業の一つとして南アルプス市、山梨市と辛い思いを抱えた子どもや若者たちに向けた「居場所づくりの事業」を中心に、孤独や孤立といった問題を抱える人に対してどのようなアプローチができるかを検討し、学習支援や子ども食堂などの利用を促す取り組みをおこなっています。そんな彼らが活動を通じて体感しているのは、こうした支援活動が各市町村単位での対応であること、また福祉など特定の分野に限られた課題設定となりがちであることでした。

    「これまで公的な支援においてキャッチできなかった人や物事も多くあります。私たちは、いろいろなセーフティネットに助けられる機会を「学習支援」という入口から取り組んでいこうと考えました。個々が強くなるためではなく、その人たちの環境自体が変わっていくことに対してのアプローチを重要視し、山梨県から社会や環境を変えていきたい。そこで辿り着いたのが『社会的処方』というテーマでした」

    「これまで公的な支援においてキャッチできなかった人や物事も多くあります。私たちは、いろいろなセーフティネットに助けられる機会を「学習支援」という入口から取り組んでいこうと考えました。個々が強くなるためではなく、その人たちの環境自体が変わっていくことに対してのアプローチを重要視し、山梨県から社会や環境を変えていきたい。そこで辿り着いたのが『社会的処方』というテーマでした」

    そう話すのは理事を務める芦澤郁哉さん。「社会的処方」とは医療機関の取り組みの一つで、薬などの処方だけでなく、社会的な繋がりも処方するというもの。例えば、郵便局に隣接した場所で年金受給日に看護師さんが高齢者の健康相談に乗ったり、地域の資源を最大限に活用して、悩みを抱える人々と触れ合うことなどが挙げられます。こうした考えを実社会に置き換え、1つの分野だけでは解決し難い社会課題においてファシリテーターという役割を担い、「学び」という部分からさまざまな領域の人々を繋ぎ、地域の困りごとを解決する。法的な窓口ばかりに頼るのではなく、自分達から困っている人に出会いに行こうというのが今回の事業、「社会的処方を目指した生態系構築モデル」です。休眠預金を活用し、委託事業としてではなく、自主的な事業として確立できるようチャレンジすることになりました。

     プロジェクトの進捗、今後の展開について共有。襖に貼られた付箋からも活動の様子が伺えます。
    プロジェクトの進捗、今後の展開について共有。襖に貼られた付箋からも活動の様子が伺えます。

    2020年度にスタートした「社会的処方の学校」の講座では、分野を問わず参加者自身が自然と行動に移せる仲間づくりを目指し、3〜4人のチームに分かれて課題に取り組んできました。。相手の困りごとをこちら側が勝手に判断をしないことを念頭に、悩みを持つ本人との関係性を深め、向き合い方を捉え直して解決へと導く。さらに「(人が)力を持てる地域、環境づくり」を目指し、対象者が自らの力で歩き出せる環境を作るためにできることを考え、実践へと落とし込んでいく流れです。
    同時に社会的処方を実践する上で、当事者に必要な人、物事、環境などを繋ぐ役割「リンクワーカー」の育成を目指します。

    開講以来、全5回の講座を終えた今、同様の意味合いを持ちながらも異なる表現ですれ違いを起こしていた事柄も丁寧に言葉を紡ぐことで、専門領域を超え新たな視点からサポートを実現するという強い意識が芽生えているそうです。問題意識を持ちながら、今ある行政制度を底上げする。より良い効果が出る道の模索が続いています。

    本プロジェクトのゴールである3年後を目指し、今後はより視点を広げた環境づくりに取り組み、純粋に社会的処方という考えや、リンクワーカーとして担うべきことを定義づけることに注力していくとのこと。課題解決に向けて、幅広い世代のスタッフと分野を超えた参加者の皆さんが力強く歩みを進めている様子が印象的でした。
    ボンドプレイスを支える(写真左から)野口雅美さん、芦澤郁哉さん、加藤香さん。庭先から見える富士山を背に1枚!

    本プロジェクトのゴールである3年後を目指し、今後はより視点を広げた環境づくりに取り組み、純粋に社会的処方という考えや、リンクワーカーとして担うべきことを定義づけることに注力していくとのこと。課題解決に向けて、幅広い世代のスタッフと分野を超えた参加者の皆さんが力強く歩みを進めている様子が印象的でした。

    リユースお弁当箱で子育てママの孤立を救おう!〈スペースふう〉

    最後は、子育て中のママさんたちを「食」を通じて応援する認定NPO法人スペースふうを訪れました。1999年に小さなリサイクルショップをオープンさせ、以来、南巨摩郡富士川町を拠点に地域活性や女性の自立支援などを中心に活動をしています。これまでの活動はもちろん、昨今の取り組みの中でスペースふうのメンバーが強く感じ取っていたのは、やはり「孤独」、「孤立」という問題。それらは、コロナ禍を受けて加速傾向にあります。自分が本当に必要とされているのか…、そんな不安を払拭しつつ、自分を大切にできる場所づくりにチャレンジすることにしました。そこで誕生したのが、休眠預金を活用した「リユースお弁当箱がつなぐ地域デザイン事業」です。産後のママさんをはじめ、子育て家庭に向けて「hottos(ホットス)プロジェクト」を立ち上げ、リユース食器などを使用した宅配お弁当サービスをスタートさせました。

    事務所の横に隣接する建物は、たくさんのリユース食器の洗浄や保管をするスペースに。衛生面も徹底的に管理され、清潔な空間が保たれています。
    事務所の横に隣接する建物は、たくさんのリユース食器の洗浄や保管をするスペースに。衛生面も徹底的に管理され、清潔な空間が保たれています。

    特筆すべきは、リユースのお弁当箱(食器類)のメンテナンス、そしてお弁当を包む可愛らしい手ぬぐいをはじめ、hottosのロゴ、LINEの運用など、活動の中枢を子育て中のママさんたちが担っていること。長時間の労働が難しいママさんたちに、それぞれの強みを活かした新しい仕事、居場所を提供することで社会との繋がりや会話が生まれているのだそうです。

    事務局の長池伸子さんはいいます。 「活動するための準備や特別な知識がない状態でも、社会課題と向き合うチャンスと思いを受け入れ、実践しながら活動に取り組めるのは休眠預金だからこそ。担当POのアドバイスを受けながら、近隣県域のNPO仲間等とも連携して一緒にゴールを目指せる環境が活動の支えになっています。 これからも誰に頼れば良いか分からないなど、気持ちや環境に余裕がない人をそっと見守る存在として、いい意味で新しい形のお節介をしていきたいですね」

    事務局の長池伸子さんはいいます。 「活動するための準備や特別な知識がない状態でも、社会課題と向き合うチャンスと思いを受け入れ、実践しながら活動に取り組めるのは休眠預金だからこそ。担当POのアドバイスを受けながら、近隣県域のNPO仲間等とも連携して一緒にゴールを目指せる環境が活動の支えになっています。 これからも誰に頼れば良いか分からないなど、気持ちや環境に余裕がない人をそっと見守る存在として、いい意味で新しい形のお節介をしていきたいですね」

    美味しいと評判のお弁当は、南アルプス市で活動する「Public House モモ」によるもの。注文は予約制で、祝日を除く毎週木曜日と金曜日にスタッフが手渡しでお届けしています。利用費用は、なんと一食100円。各種アレルギーなどにも対応し、肉や野菜など、種類豊富で彩りも豊かなおかず類は食べるのはもちろん、見た目にも楽しい気持ちになります。現在の利用者は富士川町に住む11名の新米ママさんや子育て家庭。まだまだ少数ではあるものの、「産後の大変な時に本当に助かったし、優しい言葉もかけてもらえてホッとした」といった声が届いています。連絡手段には、利用者世代のママさんが使いやすいLINEを導入し、繋がりやすさも工夫。利用者さんからの口コミで広がることの重要性を体感しているそうです。

    (写真左)モモのスタッフが作るお弁当メニューを特別にいただきました。冷凍食などをできるだけ使わないようにするなど、愛情も満点!ごちそうさまでした。 (写真右)お弁当はボンドプレイスと共有している古民家の台所で作られています。
    (写真左)モモのスタッフが作るお弁当メニューを特別にいただきました。冷凍食などをできるだけ使わないようにするなど、愛情も満点!ごちそうさまでした。 (写真右)お弁当はボンドプレイスと共有している古民家の台所で作られています。
    現在は子育て世代を中心としているものの、今後はその枠を広げ、お弁当を通じたコミュニケーションから子どもたちや若者が社会課題を解決する力を持てる地域づくり、さらには次世代への橋渡しにも挑みたいという長池さん。本プロジェクトを遂行する上で、こうした活動の過程を開示しながら持続可能な組織として自立し、新たなビジネスモデルとしての確立が目下の課題であることを改めて担当POとの対話で再確認しました。
    スペースふうの事務所にて。(写真左から)理事長 永井寛子さんと長池伸子さん。

    現在は子育て世代を中心としているものの、今後はその枠を広げ、お弁当を通じたコミュニケーションから子どもたちや若者が社会課題を解決する力を持てる地域づくり、さらには次世代への橋渡しにも挑みたいという長池さん。本プロジェクトを遂行する上で、こうした活動の過程を開示しながら持続可能な組織として自立し、新たなビジネスモデルとしての確立が目下の課題であることを改めて担当POとの対話で再確認しました。

    キーワードは「お弁当を開けた時のホッとする瞬間」。「孤独」や「孤立」から多くの人を見守る事業モデルに今後も注目していきたいと思います。

    【事業基礎情報】

    資金分配団体 

    認定特定非営利活動法人 富士山クラブコンソーシアム構成団体:公益財団法人長野県みらい基金

    助成事業
    甲信地域支援と地域資源連携事業 ~こども若者が自ら課題を解決する力を持てる地域づくり事業~
    活動対象地域
    甲信地域(山梨県・長野県)
    実行団体

    ★特定非営利活動法人 河原部社


    ★特定非営利活動法人 bond place


    ★認定特定非営利活動法人 スペースふう


    特定非営利活動法人 こどもの未来をかんがえる会


    一般社団法人 信州上田里山文化推進協会(旧:杜の風舎)


    ★印の団体が今回の訪問先です。