人権を守るために福祉を充実させる。富田林市人権協議会が取り組む「I♡新小校区福祉プロジェクト」

大阪府富田林市を拠点に、差別のない人権尊重のまちづくりの実現に向けて活動する「一般社団法人富田林市人権協議会」。時代の移り変わりから、地域コミュニティの低下が懸念されている昨今。2019年度の休眠預金活用事業(通常枠)では、「オープンなつながりでコミュニティをつなぎ直す」をテーマに、集いの場・居場所づくりや地域有償ボランティアシステムづくりなどに取り組みました。2022年度に採択された事業では、子ども食堂や居場所づくりをサポートしています。 今回は、同団体事務局長の長橋淳美さんにこれらの取り組みについてお話を伺いました。”

活動を始めたきっかけとは

富田林市人権協議会は、1984年に部落問題解決のための団体として設立されました。その後、市全域の人権問題全般を扱うようになり、現在は、人権相談に加え、就労支援事業、交流イベント事業、高齢者向け配食事業、子ども食堂や居場所の運営など幅広い活動を行っています。

お話を伺った、一般社団法人富田林市人権協議会 事務局長 長橋さん
お話を伺った、一般社団法人富田林市人権協議会 事務局長 長橋さん

「1922年に全国水平社(※)が結成された直後、地域内にも河内水平社が設立され、部落解放運動が盛んな地域ではありました」

昭和になり、国を挙げて部落問題に取り組む中で、児童館や市営住宅などが建設されます。その一つが、現在富田林市人権協議会の事務所がある富田林市立人権文化センターで、もともと解放会館と呼ばれていました。

「水平社結成から100年を迎えた今も、部落差別は解決していません。さらに、すべての人の人権を守るためには、福祉の充実が欠かせないという考えの基、市内で先駆けて始めたのが高齢者向けの宅配事業や子ども食堂といった福祉事業です」


※1922年に日本で初めて結成された全国的部落解放運動団体。2022年に結成100年を迎えた。

ニーズ把握から始まった「I♡新小校区福祉プロジェクト」

富田林市人権協議会が活動するのは、近鉄富田林駅から徒歩5分ほどの利便性の良いエリア。市内16校区あるうちの、富田林市新堂小学校区にあたります。市街地でありながら、中世からの古い街並みを残した町、駅近に新たに建てられたマンション群、海外からの労働者も多い中小企業団地などが混在し、さまざまな背景のある人々が暮らしています。

新堂地区の街並み
新堂地区の街並み

これまで新堂小学校区は、だんじり祭りを代表するように「古い町を中心に強い絆で結ばれていました」と話す長橋さんですが、時代の移り変わりと共に地縁は薄れつつあります。

「だんじりの引き手も少なくなり、地域コミュニティ力に綻びが生じてきています。同和問題にもアプローチしながら、地域の絆づくりに貢献できないかと考え、2019年度の休眠預金活用事業の助成(資金分配団体:一般財団法人 大阪府地域支援人権金融公社 )を受け、I♡新小校区福祉プロジェクトを開始しました」

I♡新小校区福祉プロジェクトの目標は三つあります。①身近な集の場づくり②誰もが参加できるボランティア活動の仕組みづくり③子どもを対象とした学習支援と居場所づくりです。

プロジェクトに取り組むにあたり、まずは住民のみなさんにアンケートを実施しました。 アンケートでは、「町内会へ加入しているか」「地域活動に参加したことがあるか」「今後やってみたいボランティア活動は何か」など、地域活動やボランティアに興味のある人のニーズを探りました。 校区の5,224世帯にアンケート用紙を配布し、回収率11.0%となる588の有効回答がありました。 アンケートからは、地域活動を活発にしていくためには、楽しく、学べて、たくさんの人と交流できる取組を行っていくことのニーズがあることがわかりました。同時に、悩みや困りごとを聞いたところ、健康や老後が気に掛かっている人が多く、孤独死を身近に感じている人が全体の46.1%いることが明らかになりました。

プロジェクトに取り組むにあたり、まずは住民のみなさんにアンケートを実施しました。 アンケートでは、「町内会へ加入しているか」「地域活動に参加したことがあるか」「今後やってみたいボランティア活動は何か」など、地域活動やボランティアに興味のある人のニーズを探りました。 校区の5,224世帯にアンケート用紙を配布し、回収率11.0%となる588の有効回答がありました。

アンケートからは、地域活動を活発にしていくためには、楽しく、学べて、たくさんの人と交流できる取組を行っていくことのニーズがあることがわかりました。同時に、悩みや困りごとを聞いたところ、健康や老後が気に掛かっている人が多く、孤独死を身近に感じている人が全体の46.1%いることが明らかになりました。

「57.3%が地域活動に参加したことがあると答え、7割程度の住民は機会があればボランティア活動を行ってもいいと考えていました。アンケートから、私たちが把握できていない、ボランティアをしたいという潜在的ニーズがあることがわかりました」

コロナ禍、集まれないからこそ生まれた数々の取組

そのような矢先、新型コロナウイルス感染症が蔓延。「①身近な集の場づくり」として、当初、各町の集会所を利用して、地域住民の集いの場・居場所づくりに取り組む計画を立てていましたが、見直しを余儀なくされます。
外出自粛により集まれない中、人と人の繋がりを強めたのが、SNSを活用した新たな繋がりづくりでした。

「プロジェクトメンバーもITツールには疎いのですが、スマホ教室、LINE活用教室を実施し、学びました。I♡新小校区福祉プロジェクトの公式LINEアカウントも開設し、情報発信をしています。プロジェクトの会議もLINE通話を使ってできるようになりました」

また、集まれないことを逆手にとり、2021年3月に「新小校区まち歩きスタンプラリー」を実施。校区に6ヶ所のスタンプポイントを設け、スタンプの数に合わせて景品をプレゼントする仕組みで、のべ833人が参加しました。

スタンプラリーの様子
スタンプラリーの様子

「助成金でお菓子やタオル、ティッシュなどを購入し、集めたスタンプの数に合わせてお渡ししました。長年、地域に住んでいても行ったことがない場所も多く、新たになまちを発見する機会になったとの声が届いています。また、小さいお子さんから家族連れ、高齢者までさまざまな方が参加できる企画で、楽しかったという方が多かったですね」

好評のため、2022年11月には第2回を開催。スタンプポイントも6ヶ所から8ヶ所に増やし、のべ1442人が参加しました。2023年11月には第3回を実施し、のべ2000人が参加。地域イベントとして定着しつつあります。

「スタンプポイントではクイズやゲームを準備しました。そのうちの1ヶ所では、公式輪投げ競技を取り入れていたのですが、子どもや高齢者、障害のある人など誰でも参加でき、健康づくりや世代間交流に効果があることがわかりました。校区全体に広げようと、助成金で輪投げセットを購入し、講習会を開催しました」

今後は、校区内で町会対抗輪投げ大会の開催を目指しているとのこと。また、新しいスポーツとして、市内全域に広げていくことをも視野に入れて活動を始めるなどの波及効果も生まれています。

ニーズを顕在化した、ボランティア活動の仕組みづくり

こうしたスタンプラリーや輪投げ競技の実施を支えるのが、ボランティアスタッフです。「②誰もが参加できるボランティア活動の仕組みづくり」に向けて、I♡新小校区福祉プロジェクトでは、2021年3月から4月にかけて5回のオリエンテーションを開催し、ボランティアへの参加を募りました。

「これまで知り合いのツテを頼ってボランティアスタッフを探してきましたが、地域イベントの開催以外にも、高齢者向けの配食協力や子ども食堂の運営など活動が広がり、人手が足りなくなりました。オリエンテーションにてでは各回、約10名ずつの参加があり、私たちと繋がりがない人も足を運んでボランティア登録してもらうことができました」

ボランティア活動にはさまざまなものがあり、個々の希望に合わせてお願いをしています。例えば、子ども食堂のボランティア。毎週木曜日に富田林市立人権文化センターで実施しており、コロナ禍以前は70〜100食、コロナ禍では弁当形式で60〜70食を提供していました。調理ボランティアは午後2時から下ごしらえ、午後5時までに弁当を詰めて、子どもが来たら受け渡しをしています。

また、かねてから富田林市人権協議会では、ひとり暮らしの高齢者や体が不自由な校区内の高齢者に向けて毎日昼食を届けています。お弁当を届けながら、声をかけて安否確認をしたり、必要に応じて関係機関への繋ぎを行ったりするのがボランティアの役割です。

子ども食堂、配食の様子
子ども食堂、配食の様子

こうした活動に継続的に携わってもらえるよう、2021年4月には「わくわくボランティアカード」を考案。ボランティア参加1回につき1個のスタンプを押し、スタンプの個数に応じて商品券と交換できるようにしました。

「スタンプ10個なら地元のスーパーで使える500円分の商品券、スタンプ20個なら地元の婦人服店で使える1000円分の商品券に交換できます。これが予想以上に好評で、みなさん楽しみながらスタンプを集めてくれました」

2023年1月時点で、ボランティア登録は107名、ボランティアカードを利用した方はのべ1290回になり、繰り返しボランティアに参加してくれていることがわかります。

子どもの学習支援と居場所づくりにも着手

富田林市人権協議会は、こうして新たな企画にも積極的にチャレンジしてきました。2018年から始めた子ども食堂の運営も、当時、市内では初となる取り組みでした。その中で、長橋さんはかねてより子どもの学習支援の必要性を感じていたと振り返ります。

そこでプロジェクトの3つ目の目標に掲げたのが、「③子どもを対象とした学習支援と居場所づくり」です。

「子ども食堂を実施し、子どもを家まで送っていくこともありました。すると、特にひとり親家庭では誰もいない真っ暗な家で子どもが一人で過ごす時間が多いこともわかってきました。勉強に集中できる学習環境が整っていないことを目の当たりにし、どうにか学習支援を実施したと考えたいたのです」

実施に動き出す後押しとなったのが、今回の休眠預金活用事業でした。2022年4月から、子ども食堂と連携した小学生学習支援活動「ぽかぽか」を毎週木曜日の17〜19時、中学生向けの学習支援活動「陽だまり」を毎週火曜日18時半から19時半まで実施しています。

「発達障害のお子さんもいますので、一対一で学習支援ができる環境が理想です。謝礼金を確保できたことで、ボランティアの登録者が10数名増え、丁寧な関わりができるようになりました。高齢者のみならず、元教師や近隣大学の学生ボランティアも活躍してくれていますよ」

「ぽかぽか」に通っていた子どもが中学生になり、ボランティアとして受付など手伝いに来てくれるケースもある
「ぽかぽか」に通っていた子どもが中学生になり、ボランティアとして受付など手伝いに来てくれるケースもある

富田林市人権協議会では、学習支援の中で、勉強を教えるだけではなくレクレーションの時間もとっています。「ぽかぽか」では毎週後半の時間にボランティアの特技を活かしたレクレーションを実施し、ツアーコンダクターをしている人が「バーチャル海外旅行〜入国審査体験〜」を開催するなど、子どもが楽しみながら社会体験できる機会をつくっています。

実行委員会形式だからこその連携が活きた

プロジェクト発足時に掲げた3つの目標に向けて着実に成果をあげてきた富田林市人権協議会。しかし、これらは富田林市人権協議会のみの力で成し遂げられたものではありません。

「主体は私たちですが、民生・児童委員や社会福祉協議会、地域の診療所で構成されるメンバーでI♡新小校区福祉プロジェクト実行委員会を結成し、助成いただいた3年間、月に一度、定期的に委員会を開催し、市や小学校とも連携して事業を進めてきました」

ニーズ調査のために実施したアンケート調査で、校区全域を対象にし、全世帯に配布することができたのも、各町会の役員さんの力添えがあったから。また、スタンプラリーではスタンプポイントの設置や運営に当たっても、各町会の協力があったことで、校区内一体となった取組にすることができました。

ボランティア活動を入り口に、広がる可能性

多くの人の協力を得て、助成期間の3年を走り切った富田林市人権協議会。地域コミュニティを育むために実施した、まち歩きスタンプラリーやボランティアシステムづくり、子どもの学習支援と居場所づくり以外にも、さまざまな成果が現れ始めています。

代表的な例が、ボランティアから民生委員になった井上結子さんです。
かつて社会福祉協議会のボランティア活動に参加しながらも、病気で体の不調から一時的に離れていた井上さん。しかし、何かしら地域に貢献したいと、アンケートにボランティア希望と記載いただき、熱いオファーが届きました。

「最初にとったアンケートで一番に連絡をくれたのが井上さんでした。社会福祉協議会の和田さんと面識があったので、すぐさま連絡をとってもらい、関わってもらうことにしました。体の調子に合わせて、高齢者配食のボランティアから始めてもらい、今では子ども食堂や学習支援にも協力してくれています。また、さまざまなところに顔を出されて地域住民からの信頼される存在になり、今では民生委員も担ってくれています」

「家から近いので無理なくボランティアに通いやすい」と井上さん。
「家から近いので無理なくボランティアに通いやすい」と井上さん。

以前は、井上さんの体調を心配したお子さんが、定期的に顔を出してくれていたとのことですが、ボランティア活動を始めてから日に日に元気になる姿を見て安心し、今では逆に用事をお願いされたりするようになったそう。

また、「民生委員の役割も変わってきた」と、以前から民生委員を代表してプロジェクトに関わっている川喜田敏音さんは話します。

「コロナ以前、この取り組みが始まるまでは、民生委員を名乗っているだけで積極的に活動されている方は少ないのが現状でした。しかし、プロジェクトが始まったことで、活動の幅が広がりました。スタンプラリーの時には、民生委員を各ポイントに配置して、まちのことを紹介したり、地域住民と会話をしたりしてもらうことができました。同じ地域に住んでいても、同じ学区でも距離が離れていると、接点がなく、知らないこともたくさんあります。僕らの活動を紹介する機会が増え、ネットワークも広がったのが大きな成果です」

川喜田さん
川喜田さん

市内全域に子どもの居場所をつくる、次のチャレンジへ

2022年度で助成期間は終了しましたが、その後も、取り組みは「新堂小学校区交流会議」と連携する形で継続しています。

また、2022年度には、富田林市社会福祉協議会とNPO法人きんきうぇぶとコンソーシアムを組み、特定非営利活動法人全国こども食堂支援センター・むすびえ が実施した休眠預金活用事業(通常枠)の公募に採択され、「人をつなげ支え合う持続可能な富田林市子ども食堂・居場所づくりトータルコーディネート事業 」に取り組んでいます。

「これからはますます居場所づくりが求められるのではないかと思い、チャレンジすることにしました」

目指すことは二つで、一つは市内16校区全てに、地域住民が誰でも訪れられるこども食堂や居場所を作ること。もう一つは、既存の子ども食堂や地域の居場所が持続的に運営していけるよう地域フードバンクを設立し、安定的な食材提供ができる環境を整えることです。

「生活保護や社会保険等の制度のはざまが大きく、僕らのところに相談があるのは働いていても困窮に陥っているワーキングプアの方が中心です。失業したり出産したりして働けなくなった途端に、生活が不安定になってしまう。そのような方に、子ども食堂で食事を食べてもらい、安定的な仕事を提供できるようにしたいです。ゆくゆくはフードバンクも雇用の場にしていければと考えています」

地に足のついた事業を続けてきたからこそ見えてきた地域ニーズ。そして、それに必要な事業を外部のリソースと内部のネットワークや担い手を組み合わせて展開してきた富田林市人権協議会。
「今後はファンドレイジングも強化しながら、事業を継続していきたい」と、長橋さんは意気込んでいました。

【事業基礎情報①】

実行団体

富田林市人権協議会

事業名
あい新小校区福祉プロジェクト
活動対象地域
大阪府富田林市
資金分配団体
一般財団法人 大阪府地域支援人権金融公社
採択助成事業2019年度通常枠

【事業基礎情報②】

実行団体

富田林市人権協議会

<コンソーシアム構成団体>

・特定非営利活動法人 きんきうぇぶ

・実行団体名 社会福祉法人富田林市社会福祉協議会

事業名
人をつなげ支え合う持続可能な富田林市子ども食堂・居場所づくりトータルコーディネート事業
活動対象地域
大阪府富田林市
資金分配団体
特定非営利活動法人全国こども食堂支援センター・むすびえ
採択助成事業2022年度通常枠

千葉県北部の柏市、我孫子市、白井市、印西市などにまたがる湖沼・手賀沼。ここをフィールドに、地域の人々がつながり、縁をつくるコミュニティを運営しているのが「手賀沼まんだら」です。2019年の設立以来、イベントや場づくりに取り組んでおり、2020年と2022年度の休眠預金活用事業(コロナ枠)を活用したことで、コミュニティプレイスの創出や共食プロジェクトなど、さらに活動の場を広げてきました。今回は、「子ども」と「地域」をキーワードにはじまったという団体の取り組みや、設立から5年が経過してこそ思う活動のおもしろさ、今後の展望などについて、代表の澤田直子さんにお話を伺います。

子どもが成長して気づいた、地域コミュニティの重要性

「手賀沼まんだら」が設立されたのは、2019年1月のこと。代表・澤田直子さんが子育てを経験する中で感じるようになった、地域とのつながりに対する考え方の変化が、立ち上げの背景にはありました。

「子どもが成長して小学生になった頃、地元の公園で遊んだり、ご近所さんのお宅に伺うような機会が増えて、地域とのつながりを意識するようになりました。それまでは、手賀沼に暮らしていても、家族で遊びにいくとなったら他の市や他県のショッピングセンターやキャンプ場でした。けれども、小学生になった子どもたちは、どんどん地域に馴染んでいく。そういう環境の変化が、考え方の変化を生み出しました」

インタビューに答える澤田さん
インタビューに答える澤田さん

澤田さんは、当時、手賀沼ではない別の市の社会福祉協議会職員として勤務していました。地域同士のつながり、コミュニティをつくる重要性を誰よりも理解していた一人です。ところが、澤田さん自身地元の手賀沼一帯では、そういった地域内でのつながりがありませんでした。そこで、澤田さんは勤務していた社会福祉協議会を退職し、手賀沼でコミュニティづくりの活動をはじめることを決意。同じような課題感を抱えているママ友に声をかけ、「手賀沼まんだら」としての第一歩を踏み出したのです。立ち上げ初期の取り組みは、フィールドワークをはじめとした、子どもたちが手賀沼の自然や社会とつながりをつくる目的のアクティビティを中心としたものでした。その後、1年足らずでコロナ禍に差し掛かり、団体としての意思も変化していきます。「これまで学校に通っていた子どもたちが、急に家庭へと戻されました。いつまで休校が続くのかわからない世の中で、せめて子どもが楽しく過ごせる居場所をつくりたい。そう感じるようになり、一時のアクティビティやイベントだけではなく、長期的に子どもが集える場所づくりに取り組み始めました」 手始めとして、手賀沼の地主さんが所有していた山を一部借りて、子どもたちと一緒に山小屋やアスレチックづくりを行うことに。すると、澤田さんの目に映ったのは、家とも学校とも異なる、第三の居場所を知った子どもたちの朗らかな様子でした。子どもたちが安定的に集える空間をつくる重要性を感じた澤田さんは、休眠預金を活用した助成事業の公募に応募。本格的な居場所づくりへと舵を切ったのです。

二つの取り組みで休眠預金活用事業に採択

「手賀沼まんだら」では、応募した休眠預金活用事業で2度採択をされています。1度目が、2020年度コロナ枠として採択された、孤立解消の為のコミュニティプレイス〈ごちゃにわ〉の創出。コロナ禍を経て実感した、子どもたちの居場所をつくるための取り組みです。2度目は、2022年度コロナ枠として採択された、「共食」をキーワードに据えたプロジェクトでした。〈ごちゃにわ〉では、手賀沼一帯に暮らす子どもたちをはじめ、子育てに課題を抱えた父母、話し相手の欲しい高齢者、そして冬越しの場所を求める生物までもが集えることを目指した場所づくりを実施しました。澤田さんは、この空間づくりを経て、リアルな場が生み出す大きな影響を実感したといいます。「空間が生まれたことによる一番の変化は、地域の人々や地域にゆかりのある企業が頻繁に訪れるようになったことです。それによって、何気ない話から生まれる新しいアイデア、おもしろい企画などが数多くあり、それらをイベントとして実施するような流れができていきました。コミュニティの輪がどんどんと広まる感覚があり、手賀沼という地域で場づくりを行う喜び、やりがいを今まで以上に感じられるようになった気がします」
核家族化が進行する現代の日本、そしてコロナ禍という人との繋がりが希薄になりがちな状況では、家庭の悩みや困りごとをシェア、相談できる機会はそう多くはありません。けれども、地域コミュニティが生まれたことで、家族それぞれの困りごとを解消するタイミングができたり、これまでは経験できなかったさまざまな体験、アクティビティの機会をつくることができるようになりました。

ごちゃにわの活動に集まる子どもたちの様子
ごちゃにわの活動に集まる子どもたちの様子

「最初は、子どもたちが地域社会に溶け込める場所をつくりたいという思いばかりでしたが、実際に〈ごちゃにわ〉をつくってみると、お父さんやお母さんたちの居場所にもなっているように感じる場面が多々ありました。子育てという共通のキーワードがあるからか、場に集う親御さんたちも、知らず知らずのうちに仲良くなり、助け合える仲になっていたようです」最初こそ、実験の意味合いもあり、こぢんまりとした運営を予定していた〈ごちゃにわ〉。ところが、澤田さんの想像以上に、そういった場を必要とした地域の人々は多かったようです。現在では、小中学校の林間学校や、総合学習の授業の一環で〈ごちゃにわ〉を活用したいといった申し出が多数集まるほど。年間では600人以上の子どもが集う、手賀沼屈指の居場所として成長しました。

ごちゃにわの活動に集まる子どもたちの様子②
ごちゃにわの活動に集まる子どもたちの様子②

子どもたちの「食」の関心をどう高めていくのか?

「手賀沼まんだら」では、その後も、〈ごちゃにわ〉の運営だけでなく新しい取り組みも実施しています。特に、現在推し進めているのが、2022年度コロナ枠にて採択された「共食」のプロジェクト。手賀沼の豊かな自然を活用しながら、子どもたちの食に対する関心を高めることを目的に実施しています。「〈ごちゃにわ〉を運営しながら次なる取り組みを考えているなかで、衣食住のにフォーカスを当てたいと考えるようになりました。暮らしの根本的な要素であると同時に、食は人の心を癒やしたり、コミュニケーションを生み出すきっかけになると思ったからです。「ごちゃにわ」を始めたときから、食が与える影響の大きさを実感していました」

子どもたちが収穫をお手伝いしている様子
子どもたちが収穫をお手伝いしている様子

このプロジェクトでは、手賀沼の風土に対する学びや食育を促進するため、5つのステップでプログラムを実施しています。子どもたちが参加することはもちろん、親御さんや近隣の農家さんの協力を仰ぐことで、地域コミュニティにおける多様なつながりをつくり出すことも目指しました。

① 〈ごちゃにわ〉内で食材を育て、収穫する
②手賀沼 流域農家さんから食材を購入したり、農作業を手伝ったり、思いのヒアリングなどを行う
③ 入手した食材を使ってどんな料理をつくるのか、メニューを考える
④ 食材の持つストーリーや思いを伝えるため、月に一度〈ごちゃにわ〉内で子どもレストランをオープンする
⑤ 月に一度、親子のエンパワメントの場として「食」に関する研修を開催する

「学校や習い事、塾などで忙しい子どもたち、忙しく働く親たちと話をする中で、家庭での「食」に対する重要度が下がってきていることを感じていました。それなら調理の機会を家庭以外の場所でも体験できないかなと考えるようになりました。」

子どもたちが料理をしている様子
子どもたちが料理をしている様子

そういった背景から、食材を知る機会、調理を学ぶ機会、食文化に触れる機会などを用意した、多角的なプログラムを実施しました。手賀沼には、生き物と畑の共生を目指す農家さんや、安心安全においしく食べられる平飼いニワトリの農家さんなど、一次産業に携わる魅力的な人々も数多くいます。そういった人の協力を仰ぐことで、子どもたちが「食」を知る、考える機会創出を目指しました。

プロジェクトの内容。4つのプログラムで構成されています。
プロジェクトの内容。4つのプログラムで構成されています。

自走しながら地域社会に溶け込む子どもたち

このプロジェクトを実施する際、澤田さんは、子どもたちに「与える」だけではなく「創り出してもらう」ことも意識しているそうです。それは、能動的に関わる機会を用意することで、子どもたちの成長を促したいという思いから。

具体的には、23回ほどプログラムに参加してくれた子どもに、参加者としてだけではなく運営者として仕事を任せることで、プログラムを創る側に回ってもらっているのだそう。その役回りは、イベントの様子を撮影するカメラマン係、プログラム内で使用するノート作成係など、多岐にわたります。

「子どもたちの興味関心に触れる機会を少しでも多くつくるためと思って始めたことですが、彼らに仕事を任せてみて、大人があっと驚くような成長を遂げてくれるのだと知りました。たとえば、カメラマンを担当してくれている子が、SNSに投稿された写真を見て、『こんなカットがあったほうがわかりやすいはず』と撮影プランを考えてくれたり、ノート作成係の子は『このページにはこのイラストがあったほうが楽しんでもらえるかな?』と、アップデートプランを提案してくれたり。自主的に次のレストラン開催に向けてオリジナルレシピを考案してきてくれた子もいたほどです」 

最初は受け身でプログラムをこなしているだけだった子どもたちが、高いモチベーションを抱きながら、自分自身の得意なことを活かして運営に携わってくれる。想像をはるかに上回る子どもたちの成長には、澤田さんをはじめとした、大人のほうが圧倒されるばかりだといいます。

手賀沼まんだらで過ごす子どもたちの様子
手賀沼まんだらで過ごす子どもたちの様子

「ほかにも、今まではお兄さん、お姉さんに頼ってばかりいた低学年の子どもたちが成長する様を見ることも多々あります。プログラムによっては、幼稚園生や小学1〜3年生のみを対象とする場合があるのですが、そういったときに率先して動いてくれるのは、今までなにもできなかったように見えた小学校低学年の子どもたち。高学年がどう助けてくれていたのかをよく見ていて、幼稚園生の子どもたちのサポートをしながら、主体的な姿勢で運営に携わってくれています」

「食」というキーワードを起点にはじまったこのプロジェクト。もちろん、プログラムを経て、食に関する学びや意識の変化も見られています。ただ、それ以上に、環境さえあればどこまででも変化できる子どもたちの無限の可能性を知る機会にもなったそう。共創による、地域コミュニティの大きな力を、この取り組みを通して、澤田さんは実感しています。

「手賀沼まんだら」が思い描く未来

2019年の設立から5年。時代の潮流にあわせて数多くの取り組みを行ってきた「手賀沼まんだら」ですが、現在は、将来を見据えた戦略立案、プロジェクト企画なども推進しているタイミングです。それにあたっては、資金分配団体であるNPO法人ACOBAが提供する、専門家派遣も活用しているのだそう。

「『手賀沼まんだら』を運営しているメンバーは、現在、私を含めて5名。そこに、6人目として戦略立案やマーケティングの得意な専門家を一時的に招き、団体の方向性や意思を表すための”ビジョンボード”というものを制作しています」

ビジョンボードとは、今まで文脈や空気感のみで意思疎通されてきていた、団体の役割や意味を可視化して表現した絵図。「手賀沼まんだら」に携わる人の数、規模が大きくなってきている今のタイミングで、価値観をお互いに共有するべく制作したものです。こうした具現化を行うことで、「手賀沼まんだら」の歩む未来も、より明確化してきています。

「『手賀沼まんだら』を立ち上げたことで、地域コミュニティの重要性を改めて実感する機会になりました。現在、取り組んでいるプロジェクトは、引き続き継続していきたいと強く思いますし、子どもたちをはじめ、手賀沼の人々のよりどころになりたいとも感じています。けれど、組織を大きくしたいという野望はあまりありません。ただ、必要としてくれる人にとっての居場所になれたら。そういうシンプルな願いを再認識できました」

学校や家庭だけではない、サードプレイスとして機能できるように。恵まれた自然との触れ合いや、子どもたちとのコミュニケーションが促進される場として、これから先も「手賀沼まんだら」は歩みを続けていくのでしょう。

「私たちのこの取り組みは、手賀沼だから実現できたものではなく、日本各地で実現できるようなものだと思います。そして、こういった場所を必要としている子どもたちはきっと全国にたくさんいる。もっと暮らしやすい世の中を実現するために、日本各地にこうした地域コミュニティが誕生してほしいと、今まで以上に願うようになりました」

澤田さんの願いが伝播し、人から人へとつながって大きな輪として成長したのが「手賀沼まんだら」。思っていたよりもずっと、その輪は強固で、豊かで、未知の価値を教えてくれたものでした。だからこそ、そうした共感が広がることでつくられる、心強く、力強いコミュニティの誕生を乞い願い、澤田さんは今日も「手賀沼まんだら」の活動を続けています。

【事業基礎情報①】

実行団体手賀沼まんだら
事業名孤立解消の為のコミュニティプレイスの運営
活動対象地域千葉県
資金分配団体特定非営利活動法人 ACOBA
採択助成事業2020年度コロナ枠

【事業基礎情報②】

実行団体手賀沼まんだら
事業名手賀沼版「美味しい革命」〜食べることは生きること〜
活動対象地域手賀沼流域(我孫子市、柏市、松戸市、流山市)
資金分配団体特定非営利活動法人 ACOBA
採択助成事業2022年度コロナ枠

人生で初めて海に入った日のことを、覚えていますか? 飛行機に乗ること、旅行に行くこと、自由に海で泳ぐこと。そんな体験をかけがえのない思い出として、医療的ケア児とその家族に届けている団体があります。2019年度通常枠の実行団体である「NPO法人Lino」です(資金分配団体:公益財団法人 お金をまわそう基金)。今回はLinoが立ち上げ当初から続けてきた、沖縄海洋リハビリツアーに密着。医療的ケア児とその家族が体験した初めての海、その先にLinoが目指す社会のあり方について、Lino代表の杉本ゆかりさんのお話とともにお届けします。

人生で初めて海に入る日

どこまでも晴れ渡った青空の下に広がる、南国の美しく澄んだ海。

沖縄県恩納村(おんなそん)の海では、大人も子どもも誰もが一緒になって、穏やかに海を眺めたり海に入って水遊びを楽しんだりと、それぞれの楽しみ方で海を満喫しています。

この海で2022年10月1日から3日に開催されたのが、NPO法人Lino(以下「Lino」)による「沖縄海洋リハビリツアー」です。

「海洋リハビリ」とは、生きるために医療的なケアを必要とする医療的ケア児に向けて、マリンスポーツの体験を提供すること。人工呼吸器や胃ろうなどを日常的に使用しているため、海に入ることが難しい医療的ケア児が、豊かな人生経験を得られるように実施されています。

Linoの沖縄海洋リハビリツアーは、2018年から実施されており、今回が6回目の開催。3日間の行程でメインイベントとなる海洋リハビリは、2日目の午前中に実施されました。

当日は朝から快晴。沖縄らしく、10月初旬にして最高気温30度と、海に入るのにぴったりな気候になりました。 まずは8時から、砂浜で開催されたヨガで1日をスタート。沖縄で海洋リハビリに取り組む団体・チャレンジドオーシャンのスタッフに教わりながら、医療的ケア児の家族も参加していました。

当日は朝から快晴。沖縄らしく、10月初旬にして最高気温30度と、海に入るのにぴったりな気候になりました。 まずは8時から、砂浜で開催されたヨガで1日をスタート。沖縄で海洋リハビリに取り組む団体・チャレンジドオーシャンのスタッフに教わりながら、医療的ケア児の家族も参加していました。

ヨガを終えたら、いよいよ海洋リハビリが始まります。準備を終えた医療的ケア児と、サポートに入るチャレンジドオーシャンのスタッフで顔合わせをしてから、順番に砂浜へ。海洋リハビリツアーで使用している「ホテルモントレ沖縄 スパ&リゾート」は、ホテルの部屋から砂浜の直前まで車椅子を使って移動できます。

今回参加した医療的ケア児は5名。うち4名が海に入るのはほとんど初めてだそうで、どこか緊張した様子です。

Linoの海洋リハビリツアーでは毎回、さまざまなアクティビティを用意。出発前に参加者向けのオンライン説明会にて、海洋リハでできることとやりたいことを確認し、それぞれの障害や性格に合わせてアクティビティを選択しました。

5人中4人が最初に参加したのが、船底から海の中が見えるグラスボートです。親子や兄弟で一緒に船に乗り込むと、あっという間にサンゴの見えるポイントへ。ガラス越しに好きな魚を探したり、海風に吹かれたり、思い思いに海上での時間を過ごします。

楽しい海上の旅は、あっという間に終わりました。船の乗り降りは、スタッフがお手伝いします。

続いて4人の医療的ケア児がチャレンジしたのは、ドラゴンボート。通常はボートの外側に乗ることが多いですが、医療的ケア児は姿勢を保っていられるようにボートの内側に座りました。

とはいえ、直接水しぶきがかかるドラゴンボートには出発前からどきどき。それでもKさんは、水しぶきが一番かかる先頭を引き受けてくれました。

初めての体験にどきどきしていたのは、医療的ケア児だけではありません。実はともに乗り込むお母さんが海上で酔いやすいとお話しされていました。

それでも娘と一緒に初めてのドラゴンボートを体験できるように、グッと力を入れて乗船します。初めての体験を前にする気持ちは、医療的ケアを必要とする当事者であろうとそうでなかろうと、みんな同じなのです。

帰ってきたときには全身ずぶ濡れでしたが、「親子で初めてドラゴンボートに乗って、海の色が変わる境界まで行けたことと、そのときに見た景色が忘れられません」との声が聞けました。

また、海との近づき方は人それぞれです。グラスボートにもドラゴンボートにも乗らなくても、波打ち際に座って、全身で波を体感したり、浮き輪で泳ぐ参加者もいました。

一人用の浮き輪をつけられない参加者も波に揺られる体験ができるように、全身を預けられる大きな浮き輪を用意。お母さんと一緒に海を楽しみました。さらにサップボードも登場。お母さんたちも、お子さんと一緒に初めての体験を満喫していました。

あるお母さんが「子どもの体力がないだろうと思っていたけれど、体力を発揮する機会がなかっただけなのかも」と話すほどに、医療的ケア児ひとりひとりが思いっきり海と向き合っていた4時間。 保護者の方々から「まさかうちの子どもが、初めてのことをここまで体験できると思っていなかった」と、お子さんの普段見られない表情に満足する声が多数聞けました。

そこにいた誰もが自分だけの「初めて」を経験したひとときは、きっと記憶に強く残ることでしょう。

医療的ケア児と一緒に旅行ができる人を増やす機会に

この海洋リハビリツアーを主催しているLinoの掲げるビジョンは、「健常者・障害者という垣根をなくし、自然と人が集まり、共存・助け合う世界をつくる
~ Diversity & Inclusionな世界の実現 ~」。代表理事の杉本ゆかりさんが2018年に立ち上げました。

杉本さんは娘が2歳半のときに医療的ケア児になって以来、家族として娘を支えています。自分が親にしてもらったことを娘にも全て経験させたい、との思いで、娘をハワイに連れて行ったり一緒に映画を観に行ったりと、積極的に出かけてきました。

「飛行機に乗って海外に行くことは大変だけれど、娘が飛行機に乗ったその先に楽しみがあると理解してから、飛行機に乗っている時間を我慢していられるようになったんです。本人にとって楽しみなことなんだなと伝わってきて、私もすごく嬉しかったです」

杉本さんも海洋リハビリに毎回親子で参加している。お子さんは泳ぐのが大好き。

子どもと一緒に体験してきた、かけがえのない思い出の数々。それによる子どもの変化を強く実感したからこそ、杉本さんは、他の医療的ケア児も同じように経験できたら、と思うようになっていきます。

「障害がなければ、親と一緒に旅行に行くことってあるじゃないですか。でも障害があると、『飛行機に乗るには人工呼吸器を持ち込めるのか、チケットをどう取ればいいのかわからない』『空の上で発作が出たらもうおしまい』と、飛行機に乗ることをあきらめざるを得ない人がたくさんいる。

でも、ちょっと頑張ってみたら得られるものがものすごくたくさんあるので、行ってみたい人には経験させてあげたかったし、それが難しいならお手伝いをしたいなと思いました」

この思いから、2018年にLinoを立ち上げてすぐに、沖縄海洋リハビリツアーの開催を決めます。重い障害を抱える子どものお母さんに、「沖縄にできればもう一回行けたらいいなと思っている」と打ち明けられたことがきっかけでした。

「呼吸器をつけていたり喉に穴が空いていたりすると、海に入るってすごくリスクが高くなるんです。学校ですら、なかなかプールに入れない。でも私は看護師で、看護師の先輩たちもサポートしてくれるから、工夫したら頑張れるんじゃないかと思って」

こうして沖縄で初開催した海洋リハビリツアーでは、チャレンジドオーシャンとタッグを組み、人工呼吸器をつけた参加者が海に入れたといいます。1回目の実施を経て杉本さんは、海洋リハビリの価値を強く実感しました。

「医療的ケア児の保護者が年齢を重ねたら、子どもを旅行に連れて行けなくなりますよね。でも医療的ケア児を旅行に連れていくサポートをしたことがある人が増えたら、旅行に行きたいと願う医療的ケア児を誰でも連れていけるようになる。だから海洋リハビリを続けていこうと決めました」

休眠預金の活用をきっかけに、関わる人が増えた

より多くの医療的ケア児に豊かな体験を届けるために、活動2年目に休眠預金活用事業への申請を決めた杉本さん。2019年度通常枠に実行団体として採択され、休眠預金活用事業をスタートします。

Linoに伴走する資金分配団体は、公益財団法人お金をまわそう基金です。生まれたてだったLinoにとって特に重要だったのは、「Linoを知ってもらうこと」でした。

「お金をまわそう基金の方が、Linoの活動を広めるために一緒に考えてくれて、いろいろな人とつなげてくれました。おかげでLinoを知ってくれる人が増えて、協力してくれる人も出てきたんです」

例えば、以前は全ての業務を杉本さんが対応していたことで、少しずつ手が回らない部分が出ていたのだそう。しかし休眠預金活用事業がスタートしたことで理事が加入し、協力者が増え、運営体制が安定していきました。

「団体としての意識が変わって、『私がここは責任を持って担当するよ』と言ってくれるメンバーが内部から出てきました。最近では社会人ボランティアの方々が関わってくれるようになって、それぞれの経験値をもとにLinoをどんどん良くしてくれています」 まずはLinoを知ってもらうこと。そう考え、協力者を増やすことからはじまった活動ですが、事業期間3年の間にLinoとしてできることを着実に増やしてきました。

「この3年間で組み立ててきたことは全て、休眠預金があったからこそ実現できました。関わってくれる人が増えたのって、休眠預金を活用するようになって団体として信用を得られたことが、理由として大きかったのかなと。自分のお金を使って活動していたら、ここまで多くの人と関わることはできなかったなと思いますね」

こうして少しずつ活動の幅を広げながら、Linoの目指す「自然と人が集まり、共存・助け合う世界」に向けて前進しています。

誰もが助け、助けられることを「当たり前」にする

Linoの海洋リハビリは、誰もが混ざり合える場です。
医療的ケア児かそうでないか、大人か子どもか、参加者なのか運営者なのか、泳げるのか泳げないのか。

Linoのつくり出す場には、一般的にいわれるそのような境界線はありません。その場にいた誰もが当たり前のように助け、助けられ、それぞれの「初めての体験」に体当たりしながら、一緒に過ごしています。

「海洋リハビリではあえて親子で離れてみる機会もつくって、お母さんだけでサップを経験してもらったり、スタッフが付き添う形でお子さんだけで泳いでもらったりしています」と杉本さんが話すとおり、親子に限らず、お互いに助け合いながら一緒に楽しむ関係性が生まれていました。

自分の子どもが気づいたら誰かに面倒を見てもらっていて、逆に自分も誰かに手を差し伸べる。杉本さんはこうした「ごちゃ混ぜ」の場で育まれる関係こそが、Linoの目指す社会のあり方につながっていくと考えています。

「障害を持っている子どもの親って、自分が子どもをつきっきりで見ることが多いから、全部面倒を見ようとしちゃうんですよね。でももし安心して子どもを預けられる存在がいたら、自分は離れられる。

そうやって誰かを頼る機会が結果的に、親である自分がこの世を去った後も子どもはきっと安心して生きていけるだろうな、と思えることにつながると思うんです」

自分がいつか、子どものそばにつきっきりでいられなくなる未来。そんな未来を見据えている杉本さんだからこそ、「自然とお互いに支え合える社会」を実現する一歩目として、Linoの場づくりを大切にしているのです。

海洋リハビリの日、医療的ケア児がのびのびと遊んでいる姿を笑顔で見つめながら、ある保護者の方が聞かせてくれました。 「子どもは本当は、海が好きだったんだなと今日わかりました。それなのに10年も連れて来られなくて、こんなに喜んでいる姿を見ていて申し訳ない気持ちになりました」

海洋リハビリの日、医療的ケア児がのびのびと遊んでいる姿を笑顔で見つめながら、ある保護者の方が聞かせてくれました。 「子どもは本当は、海が好きだったんだなと今日わかりました。それなのに10年も連れて来られなくて、こんなに喜んでいる姿を見ていて申し訳ない気持ちになりました」

日常的に医療的ケア児を全力でサポートしている保護者が、子どもへの「申し訳ない」という感情を抱え込まなければいけない現実があります。

誰も「申し訳ない」と思うことなく、望むように旅行ができること。子どもの将来に対して親が安心することができ、親子で今をもっと楽しむことができること。
そんな「当たり前」を可能にする関係性を育むために、Linoはこれからも、支え合いの輪を広げていきます。

取材・執筆:菊池百合子



【事業基礎情報】

実行団体
特定非営利活動法人 Lino
事業名
重症心身障害児・者と家族の学びの場を確保と生活の充実を図る事業
活動対象地域
全国
資金分配団体
公益財団法人 お金をまわそう基金
採択助成事業
医療的ケア児と家族の夢を寄付で応援

<2019年度通常枠>


「お金をまわそう基金」さんでも、今回のツアーが記事化されています。ぜひご覧ください!

今回の活動スナップは、株式会社よしもとラフ&ピース(資金分配団体:公益財団法人 九州経済調査協会)。BSよしもとで放映された『島ぜんぶでうむさんラブ「沖縄をソーシャルビジネスアイランドに!」』の動画が5本公開されましたので紹介します!

活動の概要

沖縄県41 市町村におけるソーシャルビジネスの起業支援・普及啓発を目的としたインキュベーション事業。那覇市に開設するインキュベーションセンターを拠点に、県内41 市町村でソーシャルビジネスの講習ワークショップ「出張インキュベーション(起業支援)」を実施。同時に、 2021 年12 月開局予定のBS 放送局「よしもとBS チャンネル」と連動し、支援対象ビジネスを同局にて番組化することで、事業を展開するモデルを生み出す。

活動スナップ

第1回

ソーシャルビジネスって何だろう?
「沖縄をソーシャルビジネスアイランドに!」をコンセプトに沖縄県内でソーシャルビジネスの普及活動を行っている『島ぜんぶでうむさんラブ』の取り組みを、番組ナビゲーターのハイビスカスパーティーちあきが紹介します!
ソーシャルビジネスとはどういうものか?を九州大学の教授であり、一般社団法人ユヌスジャパン代表理事の岡田昌治先生に教えていただきました!

※YouTubeの概要より転載

第2回

4月に行われた『島ラブ祭』の様子をお届けします。
前回に引き続きムハマド・ユヌス博士よりメッセージも頂きました!

※YouTubeの概要より転載

第3回

#3では、地元沖縄で長年人材育成に取り組み、今回の事業でもソーシャルビジネスの創出に共に活動している、株式会社うむさんラボの比屋根隆さんにお話をお聞きしています。また、島ラブアカデミー参加者のそれぞれの想いもお伝えしています。

第4回

#4からは島ラブ祭2022で発表されたそれぞれの事業を紹介します。今回は沖縄住みます芸人のありんくりんの比嘉竜太さんが登場しています。小学生を対象とした「漫才ワークショップ」を通して伝えたい想いとは?

第5回

さし草の魅力を発信しているさし草屋さんの活動を紹介します!

※YouTubeの概要より転載

休眠預金活用事業として実施されている「甲信地域支援と地域資源連携事業」。資金分配団体である「認定NPO法人 富士山クラブ」「公益財団法人長野県みらい基金」のコンソーシアムと、山梨県・長野県で子どもや若者たちを含む、困り事を抱えた人々が自ら課題解決できる力を持てる環境づくりに挑む5つの実行団体でこの事業を進めています。山梨県域で活動している3つの実行団体に、資金分配団体のプログラムオフィサー(以下、PO)とJANPIAのPOが視察もかねて訪問した様子を、レポートします。

NPO×自分の生業でゼロからイチを生む!〈河原部社〉

はじめの訪問先は山梨県韮崎市で活動する「NPO法人河原部社」。
河原部社は「やって、みせる」というポリシーのもと2016年に活動をスタートさせました。団体メンバーの平均年齢は30歳。代表理事を務める西田遥さんを中心に、地域おこし協力隊として参加するメンバーを加え、地元の有志8名で韮崎市を盛り上げようと取り組んでいます。

設立当時からビジネスとして「収益をきちんと得られる仕組みづくり」を視野に、「NPO×自分の生業」という働き方のスタンスを保ちながら活動。参加する若者たちがそれぞれのスキルを持ち寄り、活かしながら、社会に対して面白いことを仕掛けていこうと考えています。

既に行政の委託事業として、いくつかの実績を持つ河原部社。JR韮崎駅前にある青少年育成プラザ「Miacis(ミアキス)」の運営は5年目を迎え、立ち上げ当時から利用していた中高生が同社に入社したり、また韮崎市役所に就職したりするなど、後進の育成にも成功。同時にローカルメディア「にらレバ」を運営し、若者向けに地元に特化した情報を発信することで、就職や結婚なども含め、今後の人生の選択肢に「地元」を入れてもらえるようにと継続的に取り組んでいます。

「街のために何かチャレンジしたいという、僕らと同世代の若者がとても多いんです。若者のチャレンジをぜひ現実化したい、さらに自立できるようにビジネスとしても確立させてほしい。そこでまずは私たち自身の団体の組織基盤を強化するために休眠預金活用事業に申請させていただきました。」そう話す西田さん。

新たなプロジェクト「ニラサキサラニ」の拠点は韮崎中央公園前にある旧ガゾリンスタンド。

彼らが休眠預金活用事業として取り組むのは、「ニラサキサラニ 実践型若者プレイヤーズ育成プロジェクト」。
廃業をしたガソリンスタンドを拠点とし、「ゼロからイチを生み出す経験ができる場づくり」を目標にしています。「プレイヤー」と呼ばれる賛同者と共に活動をはじめるために、現在は本プロジェクトの一つとして「WORKSPACE TUM」の立ち上げと、これらに付随したイベントの企画を急ピッチで進めています。今後はSNSなどを利用し、オンラインでも参加者(TUM MATE)を増やす予定だと本プロジェクトのリーダー・本田美月さんはいいます。

かつての給油スペースは憩いの場に。併設されたカフェ「Parkside Parlor IRU」では、ソフトクリームやタコスなど、ご機嫌なメニューが楽しめます。誰でも利用可能です。
(写真左)隣接するガレージは、ペイントなど一部を河原部者スタッフやTUM MATEでDIY。若者たちのコワーキングスペースとして、またイベント会場として利用される予定。 (写真右)ガレージ前にて。西田遥さんと本田美月さん。
(写真左)隣接するガレージは、ペイントなど一部を河原部者スタッフやTUM MATEでDIY。若者たちのコワーキングスペースとして、またイベント会場として利用される予定。 (写真右)ガレージ前にて。西田遥さんと本田美月さん。

「TUMという名前には、経験や知識を積む場所、そして掛け算を意味する積から『アイデアが掛け合わさる場所』という意味を込めています。TUM MATEの皆さんと共に、さまざまな職域の方達との交流を経て、社会に対する思いを実現へと導くコミュニティを運営していく予定です。」

今回の訪問では、資金分配団体とJANPIAのPOと共に活動進捗を話しながら、どのように収益を上げるかで終わらず、一つ先の視点を継続して持ち、さらにこのプロジェクトを通じて力をつけてソーシャルビジネスなどへのステップアップを目指していくことを改めて共有できた皆さん。何もないところからスタートアップして、大きな団体として行政も巻き込み活動していくというサクセスストリーを描き、「韮崎モデル」として他県域にも広がることを願っています。

今回の訪問では、資金分配団体とJANPIAのPOと共に活動進捗を話しながら、どのように収益を上げるかで終わらず、一つ先の視点を継続して持ち、さらにこのプロジェクトを通じて力をつけてソーシャルビジネスなどへのステップアップを目指していくことを改めて共有できた皆さん。何もないところからスタートアップして、大きな団体として行政も巻き込み活動していくというサクセスストリーを描き、「韮崎モデル」として他県域にも広がることを願っています。

「社会的処方+学習支援」で地域課題に挑む〈ボンドプレイス〉

ボンドプレイスが主に個別相談や会議の場として使用している大きな古民家。廊下の窓を開けると目の前には富士山が!
ボンドプレイスが主に個別相談や会議の場として使用している大きな古民家。廊下の窓を開けると目の前には富士山が!

次に訪れたのは、同県南アルプス市の古民家を活動の拠点とするNPO法人bond place(ボンドプレイス)。「接着剤のボンド」と「場所を意味するプレイス」という意味を持つ同団体。現在、行政からの委託事業の一つとして南アルプス市、山梨市と辛い思いを抱えた子どもや若者たちに向けた「居場所づくりの事業」を中心に、孤独や孤立といった問題を抱える人に対してどのようなアプローチができるかを検討し、学習支援や子ども食堂などの利用を促す取り組みをおこなっています。そんな彼らが活動を通じて体感しているのは、こうした支援活動が各市町村単位での対応であること、また福祉など特定の分野に限られた課題設定となりがちであることでした。

「これまで公的な支援においてキャッチできなかった人や物事も多くあります。私たちは、いろいろなセーフティネットに助けられる機会を「学習支援」という入口から取り組んでいこうと考えました。個々が強くなるためではなく、その人たちの環境自体が変わっていくことに対してのアプローチを重要視し、山梨県から社会や環境を変えていきたい。そこで辿り着いたのが『社会的処方』というテーマでした」

「これまで公的な支援においてキャッチできなかった人や物事も多くあります。私たちは、いろいろなセーフティネットに助けられる機会を「学習支援」という入口から取り組んでいこうと考えました。個々が強くなるためではなく、その人たちの環境自体が変わっていくことに対してのアプローチを重要視し、山梨県から社会や環境を変えていきたい。そこで辿り着いたのが『社会的処方』というテーマでした」

そう話すのは理事を務める芦澤郁哉さん。「社会的処方」とは医療機関の取り組みの一つで、薬などの処方だけでなく、社会的な繋がりも処方するというもの。例えば、郵便局に隣接した場所で年金受給日に看護師さんが高齢者の健康相談に乗ったり、地域の資源を最大限に活用して、悩みを抱える人々と触れ合うことなどが挙げられます。こうした考えを実社会に置き換え、1つの分野だけでは解決し難い社会課題においてファシリテーターという役割を担い、「学び」という部分からさまざまな領域の人々を繋ぎ、地域の困りごとを解決する。法的な窓口ばかりに頼るのではなく、自分達から困っている人に出会いに行こうというのが今回の事業、「社会的処方を目指した生態系構築モデル」です。休眠預金を活用し、委託事業としてではなく、自主的な事業として確立できるようチャレンジすることになりました。

 プロジェクトの進捗、今後の展開について共有。襖に貼られた付箋からも活動の様子が伺えます。
プロジェクトの進捗、今後の展開について共有。襖に貼られた付箋からも活動の様子が伺えます。

2020年度にスタートした「社会的処方の学校」の講座では、分野を問わず参加者自身が自然と行動に移せる仲間づくりを目指し、3〜4人のチームに分かれて課題に取り組んできました。。相手の困りごとをこちら側が勝手に判断をしないことを念頭に、悩みを持つ本人との関係性を深め、向き合い方を捉え直して解決へと導く。さらに「(人が)力を持てる地域、環境づくり」を目指し、対象者が自らの力で歩き出せる環境を作るためにできることを考え、実践へと落とし込んでいく流れです。
同時に社会的処方を実践する上で、当事者に必要な人、物事、環境などを繋ぐ役割「リンクワーカー」の育成を目指します。

開講以来、全5回の講座を終えた今、同様の意味合いを持ちながらも異なる表現ですれ違いを起こしていた事柄も丁寧に言葉を紡ぐことで、専門領域を超え新たな視点からサポートを実現するという強い意識が芽生えているそうです。問題意識を持ちながら、今ある行政制度を底上げする。より良い効果が出る道の模索が続いています。

本プロジェクトのゴールである3年後を目指し、今後はより視点を広げた環境づくりに取り組み、純粋に社会的処方という考えや、リンクワーカーとして担うべきことを定義づけることに注力していくとのこと。課題解決に向けて、幅広い世代のスタッフと分野を超えた参加者の皆さんが力強く歩みを進めている様子が印象的でした。
ボンドプレイスを支える(写真左から)野口雅美さん、芦澤郁哉さん、加藤香さん。庭先から見える富士山を背に1枚!

本プロジェクトのゴールである3年後を目指し、今後はより視点を広げた環境づくりに取り組み、純粋に社会的処方という考えや、リンクワーカーとして担うべきことを定義づけることに注力していくとのこと。課題解決に向けて、幅広い世代のスタッフと分野を超えた参加者の皆さんが力強く歩みを進めている様子が印象的でした。

リユースお弁当箱で子育てママの孤立を救おう!〈スペースふう〉

最後は、子育て中のママさんたちを「食」を通じて応援する認定NPO法人スペースふうを訪れました。1999年に小さなリサイクルショップをオープンさせ、以来、南巨摩郡富士川町を拠点に地域活性や女性の自立支援などを中心に活動をしています。これまでの活動はもちろん、昨今の取り組みの中でスペースふうのメンバーが強く感じ取っていたのは、やはり「孤独」、「孤立」という問題。それらは、コロナ禍を受けて加速傾向にあります。自分が本当に必要とされているのか…、そんな不安を払拭しつつ、自分を大切にできる場所づくりにチャレンジすることにしました。そこで誕生したのが、休眠預金を活用した「リユースお弁当箱がつなぐ地域デザイン事業」です。産後のママさんをはじめ、子育て家庭に向けて「hottos(ホットス)プロジェクト」を立ち上げ、リユース食器などを使用した宅配お弁当サービスをスタートさせました。

事務所の横に隣接する建物は、たくさんのリユース食器の洗浄や保管をするスペースに。衛生面も徹底的に管理され、清潔な空間が保たれています。
事務所の横に隣接する建物は、たくさんのリユース食器の洗浄や保管をするスペースに。衛生面も徹底的に管理され、清潔な空間が保たれています。

特筆すべきは、リユースのお弁当箱(食器類)のメンテナンス、そしてお弁当を包む可愛らしい手ぬぐいをはじめ、hottosのロゴ、LINEの運用など、活動の中枢を子育て中のママさんたちが担っていること。長時間の労働が難しいママさんたちに、それぞれの強みを活かした新しい仕事、居場所を提供することで社会との繋がりや会話が生まれているのだそうです。

事務局の長池伸子さんはいいます。 「活動するための準備や特別な知識がない状態でも、社会課題と向き合うチャンスと思いを受け入れ、実践しながら活動に取り組めるのは休眠預金だからこそ。担当POのアドバイスを受けながら、近隣県域のNPO仲間等とも連携して一緒にゴールを目指せる環境が活動の支えになっています。 これからも誰に頼れば良いか分からないなど、気持ちや環境に余裕がない人をそっと見守る存在として、いい意味で新しい形のお節介をしていきたいですね」

事務局の長池伸子さんはいいます。 「活動するための準備や特別な知識がない状態でも、社会課題と向き合うチャンスと思いを受け入れ、実践しながら活動に取り組めるのは休眠預金だからこそ。担当POのアドバイスを受けながら、近隣県域のNPO仲間等とも連携して一緒にゴールを目指せる環境が活動の支えになっています。 これからも誰に頼れば良いか分からないなど、気持ちや環境に余裕がない人をそっと見守る存在として、いい意味で新しい形のお節介をしていきたいですね」

美味しいと評判のお弁当は、南アルプス市で活動する「Public House モモ」によるもの。注文は予約制で、祝日を除く毎週木曜日と金曜日にスタッフが手渡しでお届けしています。利用費用は、なんと一食100円。各種アレルギーなどにも対応し、肉や野菜など、種類豊富で彩りも豊かなおかず類は食べるのはもちろん、見た目にも楽しい気持ちになります。現在の利用者は富士川町に住む11名の新米ママさんや子育て家庭。まだまだ少数ではあるものの、「産後の大変な時に本当に助かったし、優しい言葉もかけてもらえてホッとした」といった声が届いています。連絡手段には、利用者世代のママさんが使いやすいLINEを導入し、繋がりやすさも工夫。利用者さんからの口コミで広がることの重要性を体感しているそうです。

(写真左)モモのスタッフが作るお弁当メニューを特別にいただきました。冷凍食などをできるだけ使わないようにするなど、愛情も満点!ごちそうさまでした。 (写真右)お弁当はボンドプレイスと共有している古民家の台所で作られています。
(写真左)モモのスタッフが作るお弁当メニューを特別にいただきました。冷凍食などをできるだけ使わないようにするなど、愛情も満点!ごちそうさまでした。 (写真右)お弁当はボンドプレイスと共有している古民家の台所で作られています。
現在は子育て世代を中心としているものの、今後はその枠を広げ、お弁当を通じたコミュニケーションから子どもたちや若者が社会課題を解決する力を持てる地域づくり、さらには次世代への橋渡しにも挑みたいという長池さん。本プロジェクトを遂行する上で、こうした活動の過程を開示しながら持続可能な組織として自立し、新たなビジネスモデルとしての確立が目下の課題であることを改めて担当POとの対話で再確認しました。
スペースふうの事務所にて。(写真左から)理事長 永井寛子さんと長池伸子さん。

現在は子育て世代を中心としているものの、今後はその枠を広げ、お弁当を通じたコミュニケーションから子どもたちや若者が社会課題を解決する力を持てる地域づくり、さらには次世代への橋渡しにも挑みたいという長池さん。本プロジェクトを遂行する上で、こうした活動の過程を開示しながら持続可能な組織として自立し、新たなビジネスモデルとしての確立が目下の課題であることを改めて担当POとの対話で再確認しました。

キーワードは「お弁当を開けた時のホッとする瞬間」。「孤独」や「孤立」から多くの人を見守る事業モデルに今後も注目していきたいと思います。

【事業基礎情報】

資金分配団体 

認定特定非営利活動法人 富士山クラブコンソーシアム構成団体:公益財団法人長野県みらい基金

助成事業
甲信地域支援と地域資源連携事業 ~こども若者が自ら課題を解決する力を持てる地域づくり事業~
活動対象地域
甲信地域(山梨県・長野県)
実行団体

★特定非営利活動法人 河原部社


★特定非営利活動法人 bond place


★認定特定非営利活動法人 スペースふう


特定非営利活動法人 こどもの未来をかんがえる会


一般社団法人 信州上田里山文化推進協会(旧:杜の風舎)


★印の団体が今回の訪問先です。



「沖縄をソーシャルビジネスアイランドに!」をコンセプトに沖縄県内でソーシャルビジネスの普及活動を行っている【島ぜんぶでうむさんラブ】の取り組みを紹介します。#1~#26の動画を掲載しておりますので、ぜひご覧ください!
              

  • 「沖縄をソーシャルビジネスアイランドに!」#1 :
    https://youtu.be/MgpL5cfJQuU
  • 「沖縄をソーシャルビジネスアイランドに!」#2 :
    https://youtu.be/D3iYli3fryQ
  • 「沖縄をソーシャルビジネスアイランドに!」#3 :
    https://youtu.be/xuWh0PGJwG0
  • 「沖縄をソーシャルビジネスアイランドに!」#4 :
    https://youtu.be/QdI2xAGTF28
  • 「沖縄をソーシャルビジネスアイランドに!」#5 :
    https://youtu.be/NZkSyVRFzMs
  • 「沖縄をソーシャルビジネスアイランドに!」#6 :
    https://youtu.be/nG7_1aYNxtE
  • 「沖縄をソーシャルビジネスアイランドに!」#7 :
    https://youtu.be/P_xF_0FHOEY
  • 「沖縄をソーシャルビジネスアイランドに!」#8 :
    https://youtu.be/TfMu06OPhgo
  • 「沖縄をソーシャルビジネスアイランドに!」#9 :
    https://youtu.be/-cD7yX6cr_8
  • 「沖縄をソーシャルビジネスアイランドに!」#10 :
    https://youtu.be/t67mn-Z_od4
  • 「沖縄をソーシャルビジネスアイランドに!」#11 :
    https://youtu.be/2CWXOo-NTCI
  • 「沖縄をソーシャルビジネスアイランドに!」#12 :
    https://youtu.be/3cJcU6JrVtc
  • 「沖縄をソーシャルビジネスアイランドに!」#13 :
    https://youtu.be/DtDrq8onets
  • 「沖縄をソーシャルビジネスアイランドに!」#14 :
    https://youtu.be/IskasYXdo4U
  • 「沖縄をソーシャルビジネスアイランドに!」#15 :
    https://youtu.be/iJS77RimQfE
  • 「沖縄をソーシャルビジネスアイランドに!」#16 :
    https://youtu.be/QAQCwKrtBG0
  • 「沖縄をソーシャルビジネスアイランドに!」#17 :
    https://youtu.be/hilch1u2ntI
  • 「沖縄をソーシャルビジネスアイランドに!」#18 :
    https://youtu.be/wVLxAUN221M
  • 「沖縄をソーシャルビジネスアイランドに!」#19 :
    https://youtu.be/Zqi0ZatKAVY
  • 「沖縄をソーシャルビジネスアイランドに!」#20 :
    https://youtu.be/Dowdasi4ORM
  • 「沖縄をソーシャルビジネスアイランドに!」#21 :
    https://youtu.be/rp710OEBRSA
  • 「沖縄をソーシャルビジネスアイランドに!」#22 :
    https://youtu.be/BCzJKHP5H2Q
  • 「沖縄をソーシャルビジネスアイランドに!」#23 :
    https://youtu.be/EuIxRJUw5Ms
  • 「沖縄をソーシャルビジネスアイランドに!」#24 :
    https://youtu.be/p7xFxTVvscc
  • 「沖縄をソーシャルビジネスアイランドに!」#25 :
    https://youtu.be/p4XjqNGo3TQ
  • 「沖縄をソーシャルビジネスアイランドに!」#26 :
    https://youtu.be/BBikeftb2qI
  •               

    休眠預金活用事業の実行団体である、龍ケ崎市B&GUSC海洋クラブの活動紹介です。
    2021年に実施した中間評価におけるナラティブな評価を映像にしました。
    今回の助成では特に「公益的な事業で、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う影響を受け事業の推進に当たり支援を必要としている団体やポストコロナを見据えた新たなチャレンジ」に対して助成しました。
    ジャパン・プラットフォーム(JPF)は、日本国際交流センター(JCIE)との共催で、2月28日(月)に公開シンポジウム「コロナ禍での支援現場の声を聞くー 危機で試される在留外国人支援」を開催いたしました。