医療を届ける新しい仕組み──能登半島地震から始まった「ヘルスケアMaaS事業」とDC-CATの挑戦

少子高齢化が進む日本において、特に高齢化が顕著な過疎地域の医療・ケアへのアクセスをどう実現していくかは大きな課題です。一般社団法人コミュニティヘルス研究機構は、2024年の能登半島地震に際し、被災地支援の一環として、医療・ケア専門職によるチーム「DC-CAT」を立ち上げ、支援活動を実施。2023年度の休眠預金活用事業(緊急枠、資金分配団体:特定非営利活動法人エティック)に採択され、被災によって医療・保健サービスにアクセスできない住民の「受療機会の担保」などを目的に新たな事業を立ち上げました。今回は、機構長・理事長の山岸暁美さんに、被災地での取り組みと地域への引き継ぎを前提とした支援のあり方などについてお話を伺いました。

地域に即した医療・ケアと継続可能な女性のキャリアを実現するために 

一般社団法人コミュニティヘルス研究機構は、医療・保健・福祉・健康に関する学術調査や臨床研究を通じて、現場の医療やケアの質向上、地域との連携促進に取り組む団体として、2017年4月に山岸暁美さんによって設立されました。山岸さんは、病院勤務や訪問看護に従事した後、厚生労働省で在宅医療政策などに携わる中で、「もっと地域の実情に即した支援がしたい」という思いを抱くようになります。そうした思いをかたちにするべく、慶應義塾大学医学部に籍を置きながら同機構を立ち上げ、理事長・機構長に就任。設立当初の動機の一つは、育児や介護によって中断しがちな女性のキャリアを継続できる仕組みをつくることでした。

オンラインで取材に応じる山岸さん

山岸暁美さん(以下、山岸)「私自身も経験しましたが、医療や看護などの仕事に携わる女性が子育てや介護によって仕事を離れると、履歴書上キャリアに空白ができてしまいます。その間、どこかに所属して可能な範囲で仕事ができるような仕組みを作れないかと考え、国や自治体から仕事を受託し、それを分担して行うという小さな活動からスタートしたんです」

主な事業は、在宅医療・看護、高齢者介護、高齢者救急、地域連携、コミュニティヘルスに関する事業支援、研究支援、実装支援など。また、BCP(業務継続計画)に関する厚生労働省の専門家委員会の委員長として、BCP策定支援研修やモデル事業にも取り組んでいます。

能登半島地震の直後から専門チームを立ち上げ、支援に動き出す

2024年1月1日、石川県能登地域で最大震度7を観測した大規模な地震が発生し、広範囲にわたって甚大な被害がもたらされました。

災害支援にはいくつかのフェーズがあり、発災直後は、命を救うため、特に手厚い公的支援が行われますが、状況が落ち着いていくと、地元の医療機関やケア機関などにバトンタッチしていくもの。しかし、今回のように大きな災害の場合は、通常の体制ではカバーしきれない部分が出てきます。特に、被害の大きかった奥能登地域(二市二町)のうち一市一町では、発災前から高齢化率が5割を超え、残る一市一町や激甚災害の認定を受けた6市町でもその割合は4割以上。こうした地域には、ケアを必要とする人がたくさん暮らしていました。そのため、建物の倒壊や土砂崩れなどに巻き込まれたことによる「災害直接死」だけではなく、発災から数週間〜数カ月経過した時期に怪我や病気の悪化、ストレスなどによって亡くなる「災害関連死」が増えることが心配されていました。こうした状況を受けて、山岸さんが1月8日にコミュニティヘルス研究機構のプロジェクトチームとして立ち上げたのが、公的支援のすき間を補い、中長期的に被災地の支援や復興に関わる医療・ケア専門職のチーム「DC-CAT(Disaster Community-Care Assistance Team)」です。チームのメンバーは現役の看護・ケア職であることから長期的な支援を行うことは難しいものの、「みんなの小さな力を集結して大きな力にしよう」という思いのもとに発足しました。

山岸「DC-CATの目的は、公的支援を補完しながら増大するケアニーズに対応することです。助かった命のその先の『生きる』を支え、災害関連死を阻止し、地域医療やケア機関の復旧プロセスの支援に動きました」

DC-CATは、まず石川県七尾市以北の6市町を活動エリアとし、県庁とタッグを組んで、支援要請を受けた避難所や福祉避難所に災害支援活動のスキルを持つケア専門職(看護師・介護福祉士・社会福祉士・薬剤師・歯科衛生士など)を派遣する支援を行いました。さらに、介護施設や障害者施設への支援にも多数のメンバーが参画。延べ2,000人のメンバーが現地支援に入りました。

調査から見えた課題をもとに「ヘルスケアMaaS事業」がスタート

発災から数カ月経過すると公的支援が撤退し始めます。被災した人たちも避難所から農作業などの仕事に向かうようになると、避難所や仮設住宅に戻ってから体調が悪くなる人が増えたため、夕方から夜間にかけて地元の医師会や保健師が電話対応をすることになりました。しかし地元の人たちだけでは負担が大きいため、DC-CATの看護師が地元の医療機関や保健師との盤石な連携体制を整備することを前提に、「電話対応であれば、被災地以外にいる医療・看護職でも対応できるのではないか」との考えから生まれたのが、健康相談ダイヤル事業です。

さらに、現地活動や地元保健師との連携、さまざまなデータから、被災地ではいまだに医療・保健サービスにアクセスできない人が多くいるという実態が見えてきました。こうした状況を踏まえ、コミュニティヘルス研究機構では、移動診療車を活用した、ヘルスケアMaaS事業を計画。特定非営利活動法人エティックが実施する休眠預金活用事業の2023年度緊急枠に申請し、採択されました。

山岸「保健師たちと一緒に、特にアクセスの悪い4地域に対して住民悉皆調査を行いました。調査によって判明したのは、震災前より医療機関の受診を控える人が多いこと、その主な理由が移動手段の不足であること、薬をもらいに行きづらいため薬を飲む量を減らしている人がいることなどです。また、オンライン診療については消極的な住民が多いものの、『看護師のサポートがあれば利用してみたい』という意向があることもわかりました。半年でむせやすくなった、体重が減った、夜眠れないといった声も多く、その場しのぎの医療ではなく、ケアや予防の視点からのアプローチが必要だと考えました。こうした背景から、モビリティの活用によってヘルスケア全般を支える取り組みとして『ヘルスケアMaaS(Mobility as a Service)事業』と名付けました」

志賀町ヘルスケアMaaS事業キックオフの様子。前列右から2番目が山岸さん

現地に足を運び、画面越しにつながる。オンラインで実現した医療・ケアのかたち

こうして始まった「ヘルスケアMaaS事業」。休眠預金活用事業の助成金は、移動診療車のリース、看護師の雇用などに活用。まずは7月に志賀町で、看護師が同乗した移動診察車が集会所などに出向き、車内のテレビ電話を使って診療所や病院の医師とつながるオンライン診療(D to P with N:Doctor to Patient with Nurse)をスタートさせました。

事業評価のための調査で患者さんからの評価が高かったこととして、医師による診療、薬剤師の服薬指導のあとに、看護師から「わからないところはなかったですか?」といったフォローがあることが挙げられました。また、集会所など、家から歩いていける場所で診療が受けられる点も、移動が困難な高齢者に好評。一方、医師にとっても、看護師が事前にバイタル測定やアセスメントを行い、その情報を要点化して伝えることで、診察の効率が高まるというメリットがありました。

移動診療車を使ってオンライン診療を実施
介護施設や障害者施設でも導入されたオンライン診療

穴水町では集会所が被災して集まれない地域があったため、その場合は看護師が患者さんのご自宅に出向いて、デバイスを操作しながらオンラインで診療を行いました。さらに、診療だけでなく、栄養士による栄養指導を行うなど、保健分野でも同様にオンラインの活用を広げていきました。

山岸「事業開始前は、関係者などから『インターネットに馴染みのない高齢者の方がオンライン診療を受け入れられるのか』という心配の声がありました。ただ、実際に画面越しにかかりつけ医の顔が映ると、『先生!』とうれしそうに呼びかける人たちの姿も見られ、想像以上に柔軟に受け入れられた印象です。当初はオンライン診療に対して消極的だった地域でも、新たに就任した地元病院の院長がオンラインで『研修医時代から能登にご縁があり、これからも住民の皆さんとここでの医療を支えていきたい』とお伝えされる姿に涙を流す住民の方もいて。そこから『ああやって先生と話せるのなら、受けてみようかな』とオンライン診療に前向きになる方が増えていきましたね」

地元病院の院長とオンラインでつないでおしゃべりする住民の皆さん

有事から平時へ。地域に引き継がれるヘルスケア事業

2024年6月から2025年2月にかけて実施された「ヘルスケアMaas事業」では、休眠預金活用事業の終了後も、地域で持続的にサービス提供ができるように体制づくりを進めました。具体的には、被災地に外部の支援チームが入り続けるのではなく、行政や地域の医療機関・人材で運用できるように、ノウハウの継承や環境整備を実施。県と県医師会、県看護協会が設立した第三セクター「石川県医療在宅ケア事業団」へ運営を引き継ぎました。

また、当初は被災直後という状況から、高額な遠隔診療システムや大型の移動診療車など、災害支援の即応性を重視した設備の導入が想定されていました。しかし、現地の医療関係者とも事業の継続性について検討を重ね、提案、実施、評価のサイクルを何度も重ねた結果、最終的に手軽に導入しやすいZoomの活用や軽自動車を用いた診療に切り替えるなど、運用の柔軟な見直しが行われました。さらに、事業の一環として始まったケースカンファレンス(事例検討会)も、初回の参加者12名から最終回には90名以上が集まる場へと発展。発災前はこうした6市町の医療者が一堂に会し、医療やケアについて話し合う場はなかったとのことで、このケースカンファレンスについても引き継がれていく予定です。

志賀町の意見交換会の様子

山岸さんは通常の仕事と並行しつつ、1年間で210日もの間、能登に入って現地で活動を続けてきたとのこと。能登半島での活動について、こう振り返ります。

山岸「住民の皆さんにも本当にたくさん助けていただきました。印象的だったのは、ビニールハウスに避難していた住民の方々が、自ら山水を引いて、薪を焚いて沸かしたお風呂に私たちにも入っていくように勧めてくれたことです。本来ボランティアは“自己完結”が原則ですが、その方たちが『やってもらうだけではこっちもしんどいんだよ』とおっしゃったことから、お言葉に甘えさせていただく形で一人1回利用させていただきました。通水して、皆さんが自宅に戻られるタイミングで御礼に伺ったところ、先述の住民さんたちが「あんたたちの世話していたら、えらい元気になってな」と満面の笑顔でおっしゃったのです。支援というのは一方通行ではなく、双方向で成り立つということを改めて実感しました」

能登半島での事業によって、有事に構築した医療・ケアサービスの仕組みが平時にも活用できることが実証されました。住民の医療アクセス向上に加えて、住民が住みたい場所で健康的に暮らすために未病・予防支援や医師の移動負担の軽減、診療の効率化など、住民と医療双方のニーズに適した地域医療への貢献が叶うことが示唆されたことはこの事業の大きな意義です。最後に今後の活動について、山岸さんに伺いました。

山岸「医療やケアは国民が生きるために欠かせないインフラです。しかし、医療制度や支援策が全国一律で設計されていることも多く、結果的に人口の多い地域を基準とした仕組みになってしまう傾向があります。また、全国的に医療・ケアの専門職の確保が難しく、また今の報酬制度では医療機関や介護事業者が経営的に厳しくなっています。これまで通りのやり方だけでは限界があり、やがて立ち行かなくなるでしょう。そうならないためにも、これまで取り組まれてこなかった方法にも挑戦し、その結果を検証して政策へとつなげていく。こうしたサイクルを地域の中で回していくことが必要だと考えていますし、私たちの機構はそのサイクルを支える役割を果たしていきたいと思っています」

【事業基礎情報】

実行団体一般社団法人コミュニティヘルス研究機構
事業名

被災地における新たな未来指向の医療・ケア提供体制構築伴走支援事業

活動対象地域石川県羽咋郡、志賀町、鳳珠郡、能登町、珠洲市
資金分配団体一般財団特定非営利活動法人エティック

採択助成事業

能登半島地震緊急支援および中長期的復興を見据えた基盤強化事業

 

株式会社オヤモコモは、佐賀県佐賀市を中心に、鳥栖市や福岡県久留米市などの親子を対象に、交流イベントや母親の起業支援などに取り組んでいます。産後に悩みを抱えたり、孤立したりしがちな親たちを支援したい——そんな思いから2012年に設立されました。2023年度の休眠預金活用事業(緊急枠、資金分配団体:一般財団法人ちくご川コミュニティ財団)に採択され、「もっと気軽に悩みを打ち明けられる仕組みを」との願いを込めて、オンライン双方向型情報サービス「みてるよ」の運営事業をスタート。今回は、代表取締役の山下千春さんに、活動の背景や事業の広がりなどについて伺いました。 

母親たちの孤立は、社会課題。つながり合える深い交流を 

日本では核家族化が進み、祖父母などに頼って子育てをするケースは減少しています。その結果、産後の不安や悩みを一人で抱え込み徐々に孤立してしまう母親は少なくありません。そうした人たちに寄り添い、居場所を提供しているのがオヤモコモです。設立は2012年。当時、山下さんには7歳、5歳、2歳の3人の子どもがいました。子育て真っ最中の多忙な時期に、なぜ自らこうした活動を始めたのでしょうか。

山下千春さん(以下、山下)「私自身が出産後、孤独でとてもさみしい思いを感じていたんです。それは出産前に抱いていた“赤ちゃんと暮らす”イメージとはかけ離れたものでした。どこかへ出かけても大人と会話するのはわずかで、知らない土地で子育てを始めたので仲の良い友人もいないし、夫は仕事が忙しくて帰りが遅い。“子育てって、こんなに寂しさや孤立感の中でするものだったのか”と、現実を突きつけられた気がしました。3人の子どもを育てながら感じたのは、私と同じような思いをしているお母さんがとても多いということ。これは個人の問題ではなく、社会全体の課題だと感じました。だからこそ母親同士がつながれる居場所をつくりたいと、オヤモコモの活動を始めたんです」

オンラインでインタビューに答える山下千春さん

子育てセンターやパパママ教室といった、行政が手掛ける子育て支援の場は存在するものの、そこでの交流は一時的なものにとどまりがちです。そうではなく、もっと深い関係性を築ける場が必要だと、山下さんは考えました。自身が子育ての渦中にあったからこそ見えた課題や気付きを拾い上げ、当事者目線での支援のかたちを模索していったのです。

まず着手したのは、母親が主役になれるコミュニティづくり。子育ての悩みを共有したり、親子で楽しんだりすることも大切ですが、特に重視したのは、母親自身が心から楽しめる時間をつくることでした。

山下「子どもを持つと、仕事や趣味などで身につけたスキルや経験、好きなことがあるにもかかわらず、”自分はお母さんだから“という思いにとらわれて、そのことに目を向けなくなってしまいがちです。オヤモコモでは、そんなお母さんたちに何がしたいかを尋ねて、自らイベントなどを企画してもらい、それを実現できるようにサポートしています」

例えば、料理が好きでカフェを開きたいという夢を持つ人は、子どもと一緒に食を楽しめるカフェイベントを開催。ハンドメイドが得意な人には、作ったものを販売できる場所を提供しました。「自分が主役になって講師をしたり、何かをお披露目したり。お母さんたちの“やりたい”を集めた場づくりなんです」と山下さんは語ります。

どうすれば支援を続けられるか。継続のための試行錯誤

徐々にネットワークを広げ、活動は順調に進みましたが、その一方で資金面での課題が浮上します。山下さんがイベント運営費などを自ら負担し、手弁当での活動を続けざるを得ない状況に追い込まれていたのです。

山下「私がお金の苦労を背負ってみんなの笑顔を支えているような状態で、なんとかしようと寄付集めにも奔走しましたが、限界がありました。大変な思いをしてお金をいただいても、誰かのお力を借りて活動する責任ものしかかり、継続は難しいと判断しました」

そこで、なんとか自分たちで活動資金を生み出そうと始めたのが、オリジナルのベビー用品の開発と販売です。事業開始当初は山下さんが個人事業主として運営していましたが、これを機に株式会社として法人化。そうして収益化を図りながら、「どうすればもっと力になれるだろうか」と試行錯誤を重ね、活動は今年で13年目を迎えます。現在は代表取締役として事業を率いながら、「若い人たちにバトンをつなぎたい」とスタッフの育成にも力を入れています。

そんな山下さんが長く構想していた事業がありました。それは、親がより気軽に子育ての悩みを相談できる仕組みづくりです。トライアルとして、山下さん自身がLINEを通じて悩みに応えるサービスをスタートさせましたが、悩みを抱える人に真摯に対応したいと思えば思うほど、時間も労力もかかるものでした。

山下「利用者の皆さんに『もし有料のサービスだとしたら、いくら払えますか?』と聞いたところ、『サブスク(定額制)のような形で、月々1000円くらいなら』という声が返ってきました。ものすごく丁寧に、一つひとつお返事しても月に1000円なのか……と思い、このやり方で継続はできないと判断したんです」

そこで山下さんが着目したのが、AIチャットボットを活用したお悩み相談のシステムでした。これを事業として実現するため、休眠預金活用事業への応募を決意。社会課題の解決などを目的とした公益的な活動ではNPOなど非営利団体向けの補助金制度が多い中、株式会社でも申請できるという点は、休眠預金等活用制度を選んだポイントの一つでした。

24時間365日何でも話せるAIが、子育ての心強いサポーターに

2023年度の「緊急枠」として採択されたことを受け、スタートしたのが、オンライン相談サービス「みてるよ」です。LINEを通じて利用できるAIチャットボット型の仕組みで、先輩ママのキャラクター「マミさん」が24時間365日、利用者の質問や悩みに対して、自動で応えてくれます。年配の方には「AIなんて」と眉をひそめられることもあるそうですが、若い親は抵抗感なく活用しているとのこと。AIといっても機械的に回答するのではなく、「つらいわね」「よくわかるわ」など優しい言葉で寄り添い、必要な情報を丁寧に伝えるようにプログラムされています。2024年12月〜2025年2月の3カ月間で相談件数はのべ948件に上り、実施した満足度アンケートでは、利用者の91.5%が最高評価の5をつけるなど、高い満足感が示されました。

山下「最近のお母さんたちは特に、誰かに弱音を吐くことを極端に恐れているようです。“何かあっても行政に頼りたくない”と考える人も少なくありません。それは、周囲から“ダメな親と思われてしまうのではないか“と不安に感じるから。国や自治体が資金を投入してさまざまな産後サービスを打ち出していますが、そこにアクセスするのは気が引けるというのです。本当はSOSを出したいほど苦しい状況でも、自分の中に抱え込んでしまう。その結果、虐待などの問題につながってしまうケースもあります」

先輩ママ「マミさん」が優しく寄り添ってくれる「みてるよ」のトーク画面

周りの人に頼ることを避ける親たちにとって、何でも遠慮なく話せるAIの存在は想像以上に心の拠り所となっているそうです。

山下「都市部ではなく、佐賀のような地域でAIが受け入れられるか不安でしたが、そんな心配は不要でした。特に初めての子育てだと、24時間気を張りつめて、ちょっとしたことでも不安になってしまう。ネットで検索しても正解が分からずに疲れてしまうんです。マミさんは、『あなたは頑張っているわよ』と、明るく励ましてくれるキャラクター。それに救われる人も多いようです」

悩みに応えてもらってもAIにはお礼は不要ですが、「ありがとう」「いつも助かっています」といった、まるで人間を相手にしているかのような返信をする利用者もいるのだとか。人間相手ではないからこそ、噂が広がったり、批判されたりする心配がなく、真夜中でもすぐに返事をもらえる。そんなAIの特性が、子育てに悩む親たちにとって大きな安心感につながっています。

休眠預金活用事業を通して得たリアルな声を、より良いサービスづくりに生かす

休眠預金を活用した事業のもう1つの柱は、交流イベントの企画・開催です。「みてるよ」を通じて参加者を募り、「オンラインだけでなくリアルなつながりも育みたい」という山下さんの思いがかたちになりました。イベントには運営スタッフの確保が必要でしたが、休眠預金を活用した助成金を基にスタッフの増員を図ったところ、想像以上の反響がありました。

山下「『他のお母さんの力になりたい』と申し出てくれる人がとても多くて。地域の中に、こんなにも同じ思いを持った人がたくさんいるのかと驚きました。私自身も産後うつになりかけた苦しい経験があったのですが、支援に手を挙げてくれた人たちの中にも、過去の自分の経験をきっかけに、行動してくれる人がたくさんいたんです」

現在はエリアごとに担当者を配置して、赤ちゃんのタッチケア、抱っこひもの使い方講座、ランチ会といったさまざまなイベントを企画し、親同士の交流を促しています。リアルなネットワークで情報交換を行い、人には言えないことはAIのマミさんに話す。2つの異なるサポートが、親たちの力になっています。

「みてるよ」の対面イベントに集まった多くの親子

8カ月の緊急枠の助成期間が終了した今、課題は資金の確保です。AIの利用にかかる従量課金やLINEの月額利用料、交流会の広報費や人件費など、活動を続けるために必要な経費を捻出する必要があります。現在はクラウドファンディングに加え、企業・こども園などにスポンサーとしての協力を呼びかけているところだそう。幸いにも、子ども園からの出資が決まり、「この勢いでスポンサーを増やしていきたい」と山下さんは意欲を語ります。

「みてるよ」を通して多くの親たちのリアルな声を聞けたことは、企業として今後のサービスを考える上でも大きな手がかりとなりました。また、休眠預金活用事業への応募をきっかけに、これまで組織として脆弱だった部分を、資金分配団体のサポートを受けながら強固にしていったことも大きな成果の一つです。

山下「経理やガバナンス、コンプライアンスといった企業運営の基盤をこの機会にしっかり固めることができました。『みてるよ』の事業を進めていくだけで精一杯だった中、資金分配団体のちくご川コミュニティ財団さんには、細やかにご指導いただいてとても感謝しています。今、周囲で不登校支援などの活動を始めている方もいて、そうした人たちにも休眠預金活用事業の良さを伝えています」

900件を超える相談のやり取りから見えた、親たちのリアルな思い。これを大切な指針として、より良い子育て環境を目指して、オヤモコモの挑戦は続きます。

■資金分配団体POからのメッセージ
オヤモコモ様の取り組みは、AIを活用して親たちの孤立に寄り添うという点で、今回の休眠預金活用事業における「アクセシビリティ改善」という目的に非常に合致していました。とくに「AIだからこそ言えることがある」という当事者のリアルな声が見えたことは、大きな成果だったと感じています。また、短期間の中でも人材募集やネットワークづくりに力を尽くし、今後の発展に向けた基盤も築かれました。これからも、この事業で得た知見やつながりを生かし、より多くの親子支援に取り組まれることを期待しています。

(一般財団法人ちくご川コミュニティ財団 理事/事業部長 庄田清人さん)

【事業基礎情報】

実行団体オヤモコモ
事業名

産後のセーフティネット構築プロジェクト「みてるよ」(2023年度緊急支援枠)


活動対象地域佐賀市東部、神埼市・吉野ヶ里町・鳥栖市・基山町・みやき町・上峰町、久留米市、小郡市などちくご川エリア
資金分配団体一般財団法人ちくご川コミュニティ財団

採択助成事業


子育てに困難を抱える家庭へのアクセシビリティ​改善事業​


 

事業完了にあたり、成果の取りまとめるために実施されるのが「事後評価」です。事後評価は、事業の結果を総括するとともに、取り組みを通じて得られた学びを今後に生かせるよう、提言や知見・教訓を整理するために行われます。今回は、2024年3月末に事業完了した2020年度通常枠【ローカルな総働で孤立した人と地域をつなぐ|東近江三方よし基金】の事後評価報告書をご紹介します。ぜひご覧ください。

事業概要等

事業概要などは、以下のページからご覧ください。


事後評価報告

事後評価報告書は、以下の外部リンクからご覧ください。

・資金分配団体

・実行団体

事後評価報告|地域の応援者を増やして、みらいのかのうせいをもっとたかめよう!|みかた麹杜(東近江三方よし基金|実行団体)[外部リンク] button icon 事後評価報告|引きこもりや精神障害があり孤立状態の人に社会参加の環境を創る|マーシ園(東近江三方よし基金|実行団体)[外部リンク] button icon 事後評価報告|地域みんなで産前産後・子育てを応援!!|産前産後ケアはぐ(東近江三方よし基金|実行団体)[外部リンク] button icon 事後評価報告|外国人住民のためのうんなん暮らし支援事業|うんなん多文化共生まちづくり協議会(東近江三方よし基金|実行団体)[外部リンク] button icon 事後評価報告|個性を育む創造プロジェクト|3C「夢」Club実行委員会(東近江三方よし基金|実行団体)[外部リンク] button icon 事後評価報告|桜ヶ池キャンプ場|ガラパゴス(東近江三方よし基金|実行団体)[外部リンク] button icon 事後評価報告|みんなで走らす湖東のバス企画|湖東まちづくり(東近江三方よし基金|実行団体)[外部リンク] button icon 事後評価報告|空き家を活用して命を守りつなぐ場づくり|Team Norishiro(東近江三方よし基金|実行団体)[外部リンク] button icon 事後評価報告|空き家対策・移住・定住促進事業|なんとおせっ会 移住応援団(東近江三方よし基金|実行団体)[外部リンク] button icon 事後評価報告|総働で地域につなぐ移住者支援拠点づくり|愛のまちエコ倶楽部(東近江三方よし基金|実行団体)[外部リンク] button icon 事後評価報告|お寺初!おかあさん目線の雇用創出事業|テラまちコネクト(東近江三方よし基金|実行団体)[外部リンク] button icon


【事業基礎情報】

資金分配団公益財団法人 東近江三方よし基金

[コンソーシアム構成団体]
・うんなんコミュニティ財団
・公益財団法人 南砺幸せ未来基金
事業名ローカルな総働で孤立した人と地域をつなぐ
<2020年度通常枠>
活動対象地域全国、市
実行団体・一般社団法人 みかた麹杜
・社会福祉法人 マーシ園
・産前産後ケアはぐ
・うんなん多文化共生まちづくり協議会
・3C「夢」Club実行委員会
・株式会社 ガラパゴス
・湖東まちづくり
・一般社団法人 Team Norishiro
・なんとおせっ会 移住応援団
・特定非営利活動法人 愛のまちエコ倶楽部
・テラまちコネクト

「みんなの配信とプラットフォーム事業」プログラム編の紹介動画です。
「みんなの配信とプラットフォーム事業」の紹介動画です。

事業完了にあたり、成果の取りまとめるために実施されるのが「事後評価」です。事後評価は、事業の結果を総括するとともに、取り組みを通じて得られた学びを今後に生かせるよう、提言や知見・教訓を整理するために行われます。今回は、2022年3月末に事業完了した2019年度通常枠【市民社会強化活動支援事業|まちぽっと】の事後評価報告書をご紹介します。ぜひご覧ください。

事業概要等

事業概要などは、以下のページからご覧ください。


事後評価報告

事後評価報告書は、以下の外部リンクからご覧ください。

・資金分配団体

・実行団体

事後評価報告|プロの芸術家による表現ワークショップを通じた当事者の交流及び共同創作事業|芸術家と子どもたち(まちぽっと|実行団体)[外部リンク] button icon 事後評価報告|子どもがつくる次世代型町内会|フリースクール木のねっこ(まちぽっと|実行団体)[外部リンク] button icon 事後評価報告|川崎市中原区の一軒家型シェアリングハウス「くるみのおうち」運営事業|くるみー来未(まちぽっと|実行団体)[外部リンク] button icon 事後評価報告|「女性に対する暴力」専門相談支援者育成事業|全国女性シェルターネット(まちぽっと|実行団体)[外部リンク] button icon 事後評価報告|新生児家庭を育む「新生児ファミリーミニステイ」実現のためのプラットフォームづくり|びーのびーの(まちぽっと|実行団体)[外部リンク] button icon 事後評価報告|小さなものづくりから始まる「しごとはじめ」×「誰でも学べる寺子屋」で、社会とのつながりに苦しさを抱える人たちに安心を|栃木県若年者支援機構(まちぽっと|実行団体)[外部リンク] button icon 事後評価報告|「地域資源をしごとにする!」担い手育成3か年計画|エコ・コミュニケーションセンター(まちぽっと|実行団体)[外部リンク] button icon 事後評価報告|フリースクール「あおもりサニーヒル」運営事業|コミュサーあおもり(まちぽっと|実行団体)[外部リンク] button icon 事後評価報告|児童養護施設との里山開拓活動とそれを支える企業向け里山研修事業|東京里山開拓団(まちぽっと|実行団体)[外部リンク] button icon 事後評価報告|市民社会の調査・発信力強化プロジェクト|Tansa(まちぽっと|実行団体)[外部リンク] button icon


【事業基礎情報】

資金分配団認定特定非営利活動法人 まちぽっと
事業名市民社会強化活動支援事業
<2019年度通常枠>
活動対象地域全国
実行団体・特定非営利活動法人 芸術家と子どもたち
・特定非営利活動法人 フリースクール木のねっこ
・特定非営利活動法人 くるみー来未
・特定非営利活動法人 全国女性シェルターネット
・認定特定非営利活動法人 びーのびーの
・一般社団法人 栃木県若年者支援機構
・特定非営利活動法人 エコ・コミュニケーションセンタ-(ECOM)
・特定非営利活動法人 コミュサーあおもり
・特定非営利活動法人 東京里山開拓団
・特定非営利活動法人 Tansa (旧:ワセダクロニクル)

事業完了にあたり、成果の取りまとめるために実施されるのが「事後評価」です。事後評価は、事業の結果を総括するとともに、取り組みを通じて得られた学びを今後に生かせるよう、提言や知見・教訓を整理するために行われます。今回は、2022年3月末に事業完了した2019年度通常枠【地域支援と地域資源連携事業|長野県みらい基金】の事後評価報告書をご紹介します。ぜひご覧ください。

事業概要等

事業概要などは、以下のページからご覧ください。


事後評価報告

事後評価報告書は、以下の外部リンクからご覧ください。

・資金分配団体

・実行団体


【事業基礎情報】

資金分配団公益財団法人 長野県みらい基金
事業名地域支援と地域資源連携事業
〜困難を有するこども若者その家庭の課題を地域ぐるみで解決する〜
<2019年度通常枠>
活動対象地域長野県
実行団体・特定非営利活動法人 Gland・Riche
・特定非営利活動法人 子ども・若者サポートはみんぐ
・特定非営利活動法人 ふくろうSUWA
・特定非営利活動法人 ITサポート銀のかささぎ
・特定非営利活動法人 いいだ人形劇センター
・一般社団法人 ぷれジョブ長野支部
・認定特定非営利活動法人 フードバンク信州

一般社団法人Kids Code Clubは、「子どもへのテクノロジー学習の支援を通じて、子どもたちが笑顔で希望を持って生きていける社会をつくる」というビジョンを掲げて活動しています。コロナ禍で、子どもたちが遊び・学び・交流する機会が激減する中、2020年度新型コロナウイルス対応緊急支援助成(資金分配団体:一般社団法人SINKa)を活用し、「生きる力を育む子どもの居場所づくり事業」に取り組まれた同団体の代表理事・石川麻衣子さんに話を伺いました。

自身の経験から「全ての子が学べる環境づくり」を志す

Kids Code Clubは、2016年から福岡を拠点として、プログラミング学習の機会を小中学生の子どもたちに無料で提供する活動を行っています。
「私たちの目的は、プログラミングのスキルをただ身につけてもらうことではありません。あくまでもプログラミング学習は手段であって、それを通して子どもの生きる力を育み、居場所をつくりたいと思っているのです」と石川さん。その思いは、ご自身の原体験から生まれています。

Kids Code Club 代表理事 石川麻衣子さん

石川さんはいわゆる貧困世帯で生まれ育ち、学費を払えずに九州大学を中退。「ひとり暮らしで日雇いバイトを続ける毎日。月給の仕事に就きたくても数日先のお金に困る状態で、生活はどん底でした」と当時を振り返ります。そんな中、友人から古いパソコンをもらい、ウェブサイトを作る方法を独学で懸命にマスターし、2008年に28歳でウェブの制作会社を立ち上げました。

2015年、貧困であるがゆえに子どもが命を落とすという悲惨な事件が千葉で起こり、連日報道されました。この事件に、母親になっていた石川さんは大きなショックを受けたといいます。
「私は生きる力を身につけて、貧困からどうにか生活を立て直しました。自分にできることがないかと考え、ちょうどその頃に注目され始めたプログラミング教育に着目して、どんな子でもプログラミングを学べる環境をつくろうと決意しました。」

海外とつなぐイベントやクラブを無料で開催

2016年、小中学生を対象として、プログラミングを体験できる無料のイベントをスタート。本業の傍ら、石川さんの思いに賛同したボランティアの人たちと一緒に、できる範囲で活動していました。
そのうち、シアトルのNPOから声がかかり、日本とシアトルをネット中継でつなぎ、現地の名だたるIT企業に勤める日本人エンジニアなどから学ぶ「英語で学ぶコンピュータ・サイエンス」プロジェクトも開始。当時、インターネットを介して授業を受けるスタイルは珍しく、先進的でした。

そして2020年、日本でコロナ感染症が拡大し、4月に全国一斉休校になりました。子どもが学ぶ機会や交流する場、居場所がなくなり、孤立してしまうことに危機感を抱いた石川さんは、「放課後プログラミングクラブ」を立ち上げました。毎週火曜と金曜の17:00~18:00、小中学生がオンラインで集まってプログラミングで作品づくりに取り組むクラブです。

「コロナ禍で休校が増えて、『子どもがずっと家にいて友達と遊べないので、どうにかしたい』と登録する親子がどんどん増えていきました」。
2020年11月からこれまで128回開催し、会員311人、参加者はのべ2307人にのぼります(2022年1月末現在)。

(左)コロナ禍以前に対面でやっていた時の「英語で学ぶコンピュータ・サイエンス」の様子、(右)事業期間中、オンラインに移行した「英語で学ぶコンピュータ・サイエンス」の様子

放課後プログラミングクラブでは、子どもたちがゲームやアニメなどの作品づくりに、自分のペースで取り組んでいます。バーチャル空間を会場として、分からないことはスタッフや子ども同士でサポート。活動を通して、子どもに変化も生まれてきたそうです。

「クラブに参加するのは元気な子やシャイな子、不登校や病気の子など、たくさんいます。最初はパソコンのカメラもマイクもオフにして、人がいない端っこにいた子が、何度か参加するうちに人の輪に近づいて、マイクをオンにして話し出すこともあります。いろんな背景を持つ子どもたちが、自分のペースで成長していると実感しています。子どもの居場所づくりは一朝一夕にはできなくて、継続していることで確実に変化が生まれています。」

他にもLINEでメッセージを送っても最初は無反応だった保護者から返信が来て「ありがとう。」と言われたり、ITは分からないと拒絶していた保護者が興味を持つケースもありました。
「オンラインでも、人と人がコミュニケーションを取り続けることは、すごく力があるんですよね。」と手応えを語ってくださいました。

コロナ禍でも、オンラインで成長できる居場所に

 2021年には、SINKaが資金分配団体となって実施した新型コロナウイルス対応緊急支援助成に実行団体として採択されて、「生きる力を育む子どもの居場所づくり事業」として活動を実施しました。

「Kids Code Clubの活動は全て無料で、講師やスタッフは全員プロボノ。大学や企業、行政、NPOの皆さんから会場や設備を提供いただき、支えてもらっています。本業の傍ら手弁当でやってきて、ファンドレイジングに力を入れる余裕がありませんでした。でも、背中を押してくれる人たちがいて、今回、SINKaさんの公募にチャレンジして、本当に良かったと思っています。」

応募に際しては、自分たちの強みを知るため、活動に参加する保護者など40人にヒアリングを行い、事業計画を練り上げました。

「話を聞いてみると『クラブが毎回楽しみで、パソコンの前で正座して待っている』とか、子どもたちの居場所になっていること、いきいきと楽しく成長するきっかけになっていることがよく分かりました。私たちは子どもが楽しむことを第一にして、おまけとして21世紀型スキルや自己肯定感、創造力、ITリテラシーなどがついてくると考えています。その思いが少しずつ形になっていると思えました」

(左)放課後プログラミングクラブのバーチャル会場の様子、(右)子どもたちのプログラミング作品。会員専用の作品サイトに掲載されています。

たくさんの方にご支援頂きながら、親子に多様でグローバルなIT体験・プログラミング学習の機会と、孤立を防ぐ居場所を展開。事業期間を通じて、福岡エリアで約300世帯、全国で約600世帯、のべ2,500名以上に提供し、コロナ禍の孤立と心の貧困の解消に尽力してきました。
主な活動と参加者数の実績は以下のとおりです。

主な活動と参加者数の実績

  • 放課後プログラミングクラブ 78回開催 のべ1850名参加
  • 英語でまなぶコンピュータ・サイエンス 13回開催 のべ370名参加
  • 親子で1分間プログラミング 21回開催 のべ300名参加
  • プログラミング学習サイトの運営 利用者数22万人(UU)
  • 子ども作品サイトの構築(会員のみ利用可)
  • PC操作やプログラミング学習に関するチャット相談受付 やりとり数1,000件以上

子どもの力を信じ、みんなで社会を変えていきたい

そして、Kids Code Clubは、次に向けて動き出しています。

「もともとパソコン環境がない子どもにも参加してほしいという思いがありました。今回の事業で自分たちの活動は意義があると自信を持てたので、次に2021年度新型コロナウイルス対応緊急支援助成(資金分配団体:READYFOR株式会社・特定非営利活動法人 キッズドア)の実行団体へ採択いただき、パソコンとWi-Fi30セットを無料貸与できました。他の団体さんと連携して、丁寧に研修した上で貸し出し、放課後クラブに入ってもらってサポートしています。」

石川さんには、さらなる夢があります。それは「お金がなくても子どもたちが学べる仕組みをつくる」こと。
「今はお金を払って大人に教えてもらうことが基本になっていて、お金がなければ教育を受けられません。子どもが支援を受けるだけでなく、子どもが誰かに教えられる仕組みができれば、少し光が見えてくると思っています。」

そこで、放課後クラブに「キッズTA(ティーチング・アシスタント)」制度を導入。プログラミング初心者をサポートしてくれる小中学生を募集したところ、予想以上に18人が集まりました。

(左)無償貸与を行っているパソコン。プログラミング作業に耐えられる性能のものを採用しています。(右)キッズTAたちが担当テーブルで他の子どもたちをサポートしている様子。

「放課後クラブは大人がつきっきりで教えるのではなく、子ども同士でも教え合うコミュニティになっています。それが世界に広がれば、どんな家庭環境の子でも学べる社会になるはず。そんな夢に向けて、小さな一歩を踏み出したところです。支援や参加をしてくださる皆さんのおかげでチャレンジできることに深く感謝していますし、必ず成果をあげたいと思っています。

子どもが子どもに教えられるのか疑問に思われるかもしれません。でも、きっとできると大人が信じて任せることで、今まで変わらなかったものが少しずつ変わっていくのではないでしょうか。私たちは子どもたちの力を信じて、子どもの力を原動力に、みんなで社会を変えていきたいと考えています。」と力強く語ってくださいました。

■休眠預金活用事業に参画しての感想は?
コロナの影響で本業の仕事が減る中、ボランティアで続けていくことは精神的にも厳しい状況になっていました。応募するにあたって自分たち団体の強みを徹底的に洗い出せたこと、採択という形で活動を認めてもらえたことをとてもうれしく思っています。そして、SINKaさんには先を見据えた伴走支援をしていただき、感謝しています。この実績をきっかけとして活動を広げていきたいです。(石川さん)

■資金分配団体POからのメッセージ
Kids Code Clubさんは「お金がなくても教育が受けられる社会をつくる」という壮大なビジョンに向かわれていて、私たちも一緒に向かっていきたいと思っています。いい成功事例として、ぜひどんどん表に出てほしいです。(SINKa 濱砂さん)
石川さんとは棚卸と評価についてよく話をしました。とても努力家で、しっかり考えて行動されています。大きく羽ばたかれるように応援していきたいです。(SINKa 外山さん)

【事業基礎情報I】

実行団体
一般社団法人Kids Code Club
事業名
生きる力を育む子どもの居場所づくり事業
活動対象地域福岡県
資金分配団体一般社団法人 SINKa
採択助成事業

福岡子ども若者、困窮者応援笑顔創造事業
〈2020年度緊急支援枠・随時募集3次〉

【事業基礎情報II】

実行団体一般社団法人Kids Code Club
事業名生きる力を育む子どもの居場所・体験事業
活動対象地域福岡県・全国
資金分配団体READYFOR株式会社
(コンソーシアム構成団体:特定非営利活動法人 キッズドア)
採択助成事業

深刻化する「コロナ学習格差」緊急支援事業
〈2021年度コロナ対応支援枠〉

2021年に実施した中間評価におけるナラティブな評価を映像にしました。
2021年に実施した中間評価におけるナラティブな評価を映像にしました。