NPO法人ボランタリーネイバーズ主催『持続可能な体制をつくる!かなめびと応援プロジェクト・セミナー「NPOの世代交代・事業承継、なにから始める?実践のヒントと支援のかたち」』のご案内

休眠預金活用事業に係るイベント・セミナー等をご案内するページです。今回は、NPO法人ボランタリーネイバーズ主催『持続可能な体制をつくる!かなめびと応援プロジェクト・セミナー「NPOの世代交代・事業承継、なにから始める?実践のヒントと支援のかたち」』を紹介します。

持続可能な体制をつくる!かなめびと応援プロジェクト・セミナー「NPOの世代交代・事業承継、なにから始める?実践のヒントと支援のかたち」

近年、NPOの現場では、創業期リーダーたちが次世代へバトンを渡す時期を迎えています。事業承継は、単なる役職の引き継ぎではなく、NPOの社会的ミッションを次世代に継続するための重要なプロセスです。

本セミナーでは、NPOの事業承継に関する調査研究を行ってきた研究者が、創設者の影響力、ガバナンス、承継計画の有無、組織規模や年齢、理事会の関わりなど、事業承継の成否を左右する要因を分析します。理論面と統計分析結果から見える傾向を学び、データと事例を通じて具体的な論点やヒントを参加者と一緒に考えます。

NPOが抱える世代交代・事業承継の課題にどう向き合い、どのような準備や工夫が可能かを皆さんと一緒に考え、NPOの未来を描く機会にしたいと思います。関心のある皆さまのご参加を心よりお待ちしております。

 

【イベント情報】

日時2025年5月30日(金)18:00~20:00
開催形式

オンライン(Zoomを使用)

対象NPOの代表者や理事・幹部スタッフなど、組織の将来を担う立場にある方
次世代のリーダー候補として活動している若手スタッフ・中堅職員
コアメンバーの高齢化と将来に課題意識を持つNPO役職員
NPOの事業承継に課題意識を持つ中間支援組織・行政担当者
非営利組織の経営・組織論に関心のある研究者・学生
参加費無料
プログラム(予定)18:00-18:05 開会、趣旨説明
18:05-19:05 講義
19:05-19:15 休憩
19:15-19:50 質疑
19:50-20:00 かなめびと事業の紹介、閉会
主催NPO法人ボランタリーネイバーズ
お申込みPeatixの参加申込フォームよりお申し込みください。
https://peatix.com/event/4374442
お問い合わせNPO法人ボランタリーネイバーズ
[住所]愛知県名古屋市東区東桜2-18-3、コープ野村東桜702
[連絡先]052-979-6446(担当:青木/電話受付時間平日10時~18時)
[E-mail]katudoushien@vns.or.jp
[URL]https://www.vns.or.jp/

 

中間支援組織として愛知県で活動するNPO法人ボランタリーネイバーズ。同団体は設立より20年間、地域をより良くするために奔走するNPO法人や市民団体の活動を支援してきました。漠然とした不安や課題に多くの活動団体が悩まされた未曾有のコロナ禍。そんな中ボランタリーネイバーズが2020年度緊急支援枠の実行団体(資金分配団体:READYFOR株式会社 )として実施したのは、活動団体の課題を言語化する勉強会の開催や、専門家や県外の中間支援組織と協働したチーム型の伴走支援でした。一体どんな取り組みだったのか? 理事長の中尾さゆりさん、理事・事務局長の遠山涼子さんにお話を伺いました。[コロナ枠の成果を探るNo.5]です。

“地域の活動団体”の課題を発見し、共有知を深める会を開催

「もっとこうなったらいいのに」という思いで地域のために活動する。そんな「ボランタリー(自発的)な市民の行動が身を結ぶ社会にしよう!」というミッションを掲げるNPO法人ボランタリーネイバーズ(以下、ボランタリーネイバーズ)。

2001年に愛知県で法人化した同団体は、NPO法人をはじめとする公益活動を行う人たちが活動しやすい土壌を耕してきました。

団体キャッチフレーズとイメージイラスト
団体キャッチフレーズとイメージイラスト

設立当初からNPO法人の設立や運営、まちづくりに関する相談や、助成金申請、組織基盤強化のための伴走支援、近年では活動の承継にかかわる個別支援など、活動者の個別ニーズに応じて相談対応していたボランタリーネイバーズ。コロナ禍になり個別相談の件数は急増するかと思いきや、対面での交流が激減したこともありほぼゼロに。その代わりに、別のニーズが見えてきたと言います。

中尾さゆりさん(以下、中尾)「未曾有のコロナ禍では、漠然と『困ってはいるけど、何が課題なのか、何をどう相談したらいいのか』と、自分たちの悩みを言語化するのが難しかったようです。だから『個別相談に来てくださいね』と呼びかけてもピンとこない。そこで、『〇〇をテーマに活動者同士で話してみませんか?』というセミナー+相談会の場を設けようと。他の人の話を聞く中で『自分が気にかかっていた問題はこれだったんだ』と課題を再認識する機会になればと思ったんです」

 
写真左:理事長の中尾さゆりさん、写真右:理事の遠山涼子さん
写真左:理事長の中尾さゆりさん、写真右:理事の遠山涼子さん

また、2021年3〜4月にかけて愛知県内の活動団体に実施したアンケート調査の結果も、テーマ型の相談会を企画する契機になりました。「コロナ禍で影響を受けましたか?」という設問に「受けた」と回答した団体のうち5つを対象に、コロナ禍発生当初からの活動の変遷についてヒアリングを実施しました。


遠山涼子さん(以下、遠山)「各支援団体が苦しい状況下でも、ITに詳しい身近な人材を頼って事業のオンライン化を進めるなど、試行錯誤をしながら活動を継続・発展させていました。不確実性の高いコロナ禍では、各団体が独自で工夫を続けるだけでなく、それらの工夫を共有した方が活動団体全体の底上げにつながるはず。だから複数の団体や専門家が集まり、各々の悩みを共有できる場を今こそ作るべきだと考えました」

休眠預金活用助成金セミナーの一幕(左) / 団体交流会での意見交換(右)
休眠預金活用助成金セミナーの一幕(左) / 団体交流会での意見交換(右)

他団体の事例から課題改善のヒントを見出す

2020年11月〜翌年10月までの事業期間のうち、オンラインで開催された相談会に参加した人数はのべ120人。「ビジネスコミュニケーションツールを活動継続に活かすには」「コロナ禍での労務問題の対応」「SNSの上手な活用方法」など、多様なテーマが設けられました。

テーマによって参加団体の分野もさまざまでしたが、総じて「市民活動センター」など中間支援の立場の方が積極的に参加していたと、二人は振り返ります。

中尾「愛知県は多くの市町村ごとに市民活動センターがあり、盛んに活動をしています。ところが、そのほとんどがコロナ禍で閉館を余儀なくされ『今、自分たちに何ができるのだろうか……』と悩んでいる様子でした。そうした方々がテーマ型の相談会で他の市町村の事例を聞いて再開のきっかけ探ったり、判断基準を参考にしたり、考える機会になっていたのかなと思います」

遠山「例えば、『介護施設でコロナ陽性者が発生したとき、どういう対応をすべきか』というテーマで話をする回があったのですが、関連情報が錯綜する中、自分たちで調べるだけでは『陽性者が出たら実際どうなるの?』のような疑問に答えが出なかった。それが、実際にコロナ陽性者が出た施設の方の事例を聞くことによって、今ある資源を活用して『うちだったらこんなことができそうだ』と対策や改善の糸口を掴んでいる様子でした」


実際、開催後のアンケートにて参加者からは「何から手をつけるべきか分からなかったが、まずは取り組むべきことが見え、一歩前進するきっかけになった」と前向きな回答が見受けられたと言います。

喜ばしいことに、相談会だけで終わらせず「この学びを他の人たちにも共有したい」という声をかけてもらったこともあったそうです。

中尾「最後にテーマ型の相談会の取り組みをまとめた報告書を作り、事例集として周りの関係者に配布した後に『市民活動センターのスタッフにも共有し、事例を学ぶことで相談対応に役立てたい』という声が寄せられました。支援センターの相談窓口は、経験や知識の差から代表クラスの方が一手に引き受けることが多くなりがちだと思います。ただ、他のスタッフもコロナ禍での事例を学べれば、支援先の困りごとを聞いて、類似の事例に関する情報をすぐに提供できる。団体と市民活動センタースタッフが共に育つ理想的なあり方だと思いました」

県を跨いだ連携により、支援策の幅が拡大

ボランタリーネイバーズの工夫は、相談会の実施だけに留まりません。東海地域で活動する団体が等しく機会を得られるよう岐阜県、三重県の中間支援組織であるNPO法人とつながり、月1でのミーティングを開催。それぞれの支援の経過や実績から得た学びを共有し合い、意見交換をしながら中間支援組織としてのナレッジを蓄積していきました。

ただ単に学び合うだけでなく、他県の事例を自分達の地域に応用できないか検討する議論を行ったり、会を重ねることでお互いの資源を必要な時に共有できる関係が構築できていた、と遠山さんは語ります。

遠山「例えば、三重県の個別支援の事例では、『コロナ禍で対面での販売機会を失った障がい福祉分野の事業所が、販売数をどう回復していくか』をテーマに情報共有会を実施。販売ルートの開拓はNPOに限らず一般の企業の仕組みを活かせる部分もあるという意見をもとに、愛知県の中小企業診断士・販売士をつなぐことで、専門家も交えた視点から意見交換の場を設けることができました」

「行政の政策の差」も県を跨いで話すからこそ見えたこと。他県の行政の対応を比較することで、行政への提言の方向性も含め「行政との関わり方の糸口が見えてきた」と言います。

中尾「毎月話し合う中で、県ごとのコロナ施策には違いがあり、NPOや地域の活動団体に対する政策も異なることを感じました。例えば、コロナ禍当初、岐阜県ではNPOが利用できる助成制度はありませんでしたが、県のNPOセンターが働きかけて使えるようになりました。また、三重県では早い段階でNPO向けの助成制度が用意され、活動を止めないような後押しがなされていました。こうした例から、「岐阜県のNPOセンターはどのように行政にかけあったのか」、「三重県はNPO向けの助成制度の財源をどこから捻出したのか」と話し合いを進め、自分たちの県では行政とどう連携していくべきかのヒントを見出せました」

休眠預金を活用する良さとは?

一般的に中間支援組織は行政と地域の間にいる影の立役者という性質上、助成金を受けづらいと言われることもしばしば。そんな中で、ボランタリーネイバーズが休眠預金活用事業に採択された背景裏にはどんな工夫があったのでしょうか?

中尾「『中間支援組織として助成金を受ける』というよりも、『その時々の社会のテーマやトピックに私たちがどう関与していけば、社会を良くできるか』という観点から応募するようにしています」

そもそも、休眠預金活用事業に申請した理由の一つは、他の助成金に比べて融通が効く点だったと話すのは、遠山さん。

遠山「助成金の中には『人件費は対象外』とするなど、経費の使い方に制約が大きいものもありますが、その点、休眠預金活用事業は経費使途に関して事業に必要な経費は認められるため柔軟だなと感じました。コロナ禍は特に不確実な要素も多かったので、調整コストがより多くかかります。そうした点でも比較的活用の幅がある助成金だなと思いました」

何より、資金分配団体であるREADYFOR株式会社が、事業期間中はペースメーカーになって伴走支援してくれたことが心強かったと話してくれました。


中尾「月1回の面談で話をする中で、自分たちはまだまだだと感じることがありましたが、READYFORさんが私たちの取り組みから見えてきた強みをフィードバックしてくださったので、活動のモチベーションを高めることができ、非常に助かりました。また、月次面談が先に進んでいる方の事例や、JANPIAへの報告を終えた方のお話を聞く機会を作っていただいたことも、大変参考になり良かったですね」

支援者も完璧じゃない。だから協働が大切になる

「支援者」と呼ばれる人たちも、自分たちだけで解決できないことがあれば、無理をせず信頼できる人たちの力を借りることも大切です。

中尾「“支援者”と呼ばれる人たちも100%何でもできるわけではありません。今回、岐阜や三重の団体と定期的に連絡を取って事業を進めるうちに、『自分のところで受けた案件でも、苦手な分野に関しては他者の声を聞くことがすごく大事』だと改めて実感したんです。それが結果的に支援先のためにもなると。

直接『〇〇を支援してください』と相談に来られた場合でも、話を聞くと違うアプローチにたどり着いた、なんてことも少なくありません。そうしたときには、そのアプローチに関して得意な人に繋げて支援先の真の課題を把握し、多様な繋がりを作ることで支援者自身もレベルアップすることが大切なんだと思います」

積極的に協働しようとするボランタリーネイバーズの影響もあってか、周囲にも「無理に自分たちだけで解決しようとせず、適切な相手に協力を求める」機会が増えてきました。

遠山「信頼のネットワークが構築され、活動者側も一歩前に進むためのルートや関係性ができたことは良かったと思います」

支援先団体の活動の様子(左)/ 支援先団体の事業所外観(右)
支援先団体の活動の様子(左)/ 支援先団体の事業所外観(右)

専門家や県外のNPO法人とも連携したチーム型の伴走支援は、行政の注目も得られた、と話す中尾さん。2022年度には名古屋市の事業として、チーム型での伴走支援事業の予算が設けられ、9団体を支援しました。

未曾有のコロナ禍だからこそ気づけた視点を味方に、ボランタリーネイバーズはこれからも活動者・支援者がともに一歩を踏み出しやすい社会を築いていきます。

中尾「コロナ禍でどう伴走支援をしていくのか。ひとつの形をやって見せられたことで、行政との新しい協働関係にも発展していきました。これからも県境にとらわれず、幅広い人たちや団体とつながり、お互いに連携することで、自発的なまちづくり活動をすすめてしていきたいと思います」

事業基礎情報

実行団体
特定非営利活動法人ボランタリーネイバーズ
事業名

Withコロナ時代の社会参加と雇用継続

活動対象地域
愛知県、岐阜県、三重県
資金分配団体
READYFOR株式会社

採択助成事業

2020年度コロナ枠

台風、地震、豪雨、洪水、土砂災害……日本はその立地や地形、気象などの条件から、災害が発生しやすい国土と言われています。いつどこで起きるかわからない災害に備えて活動されているのが、資金分配団体(2019年度通常枠)である「全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)」と、その3つの実行団体である「北の国災害サポートチーム」「いわて連携復興センター」「岡山NPOセンター」です。4団体が目標として掲げている共通のキーワードが「ネットワークの構築」。4団体への取材から、災害時に地域内外の団体が連携するためには、平時から組織を超えたつながりが大事だということが見えてきました。

災害時に求められる「ネットワーク」とは?

そもそも災害時に「ネットワーク」の形成が求められるようになった背景について、 特定非営利活動法人(NPO法人)全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)のプログラム・オフィサー(PO)である鈴木さんにお話を伺いました。

国内で大きな災害が発生したとき、支援の仕組みはまだまだ確立できていない現状があります。その現状があらわになったのが、2011年の東日本大震災でした。

一口に「民間の支援組織団体」と言っても、普段の活動領域も活動テーマもさまざま。東日本大震災では多様な団体が現場に入ったものの、それらの団体をどこが受け入れて調整するのか明確に決まっておらず、現場で混乱が発生したのです。

そうなると、どこでどのような支援が入っているのかわからず、支援を行う関係者間でも連携を取ることも難しくなりました。このように、災害支援に入る団体は多くあってもその連携が取れていないと、広範囲での効率的な支援が難しくなってしまいます。

そこで立ち上げられたのが、JVOADです。東日本大震災での経験を踏まえて、支援の調整ができる環境を整えた仕組みづくりを目指し、各都道府県での災害支援のネットワーク構築を目指しています。

この「ネットワーク」にはさまざまな関係の構築が必要とされますが、JVOADが特に重視しているのが、主に制度による支援を行う「行政」、災害ボランティアセンターを中心的に運営する「社会福祉協議会」、NPOや企業などが含まれる「民間の支援団体」による「三者連携」です。

JVOADは全国域でこの体制づくりを試みながら、同時に都道府県域でも三者の連携を目指しています。今回ご紹介する実行団体「北の国災害サポートチーム」、「いわて連携復興センター」、「岡山NPOセンター」はそういった都道府県の災害時の中間支援を担う団体として、三者連携をベースに支援関係者同士のネットワーク構築を目指して奔走しているのです。

ここからは、それぞれのエリアの特徴を踏まえてネットワークを構築する3団体と、その3団体のパートナーとして伴走するJVOADについてご紹介します。

北の国災害サポートチーム(きたサポ)

上段左から、北の国災害サポートチームの定森さん、本田さん、下段 篠原さん

北海道における災害中間支援組織、北の国災害サポートチーム(以下、きたサポ)の代表を務める篠原さんと、チームメンバーの本田さん、定森さんにお話を伺いました。

179の市町村があり、小規模自治体が多い北海道。交通網が止まったら外部から救援できなくなる土地柄に対して、NPOが蓄積しているノウハウにもばらつきがあり、災害時にどのようにして組織的支援を送るのかが課題になっていました。

2016年8月、台風第10号による災害が北海道で発生。NPOの中長期支援が動きづらい事態が発生し、これを契機に、全道各地で災害時にNPOが担うべき役割についての意見交換会が実施されました。

道内にNPOのネットワークが少しずつ生まれてきた矢先に、2018年9月、北海道胆振(いぶり)東部地震が発生。しかし2016年から積み重ねてきた活動により、胆振東部地震ではNPO間の連携が可能になりました。このような動きのなかで、これまで取り組んできたことを整理して「北の国災害サポートチーム」を組織したのです。

きたサポは、全道各地にあるNPOの中間支援センターも加盟しています。各エリアの中間支援センターは、エリア内で災害時に連携を取りやすいように行政やNPOと関係を構築しながら、きたサポで道内のネットワーク構築を進める仕組みです。

きたサポが、休眠預金活用事業で、北海道内で災害のリスクが高いと言われる釧路と有珠山周辺地域の2箇所でのネットワーク構築を重点的に行ってきました。意見交換会を開催したり周辺地域の団体と連携を図ったりと、重点地域を絞ったことで休眠預金を活用してきた成果が見られています。

全道域の多様な災害支援の関係者と連携した北海道フォーラムや、企業の協力による技術系研修会なども精力的に開催。

幹事団体がそれぞれ本業を持ち、複数の団体で事務局を組織しているきたサポのスタンスは、それぞれの団体が自主的に考えて動くこと。

どこで災害が起きても、交通網が遮断されればエリアを超えた支援が難しくなる可能性が高い土地柄を踏まえて、「きたサポの活動を通じて培ってきたことを各自で活かす。それでいいと思っています」。

そんな自主性を重視する姿勢は着実に広まり、重点地域である釧路と有珠山での災害シミュレーションに参加した別のエリアの中間支援センターが、自分たちのエリアでもシミュレーションを実施するなど、自発的な取り組みが道内各地に派生していくケースも増えています。

「休眠預金活用事業で手応えを感じているのは、胆振東部地震の記録をまとめたことです(きたサポ報告書「平成30年北海道胆振東部地震 情報共有会議の記録(A4版)」)。完成して嬉しかったですし、今後の活動に展開できる大切なものを作れたと思っています」

きたサポが窓口機能を担うことで、きたサポがなければ蓄積されていなかった情報と関係性がストックされてきた活動3年目。これからも北海道内で被災者支援の拡大ができる仕組みづくりや文化を根付かせるために、活動を続けていきます。

いわて連携復興センター

特定非営利活動法人いわて連携復興センターの瀬川さんと千葉さんには、同センターが事務局を担っている『いわてNPO災害支援ネットワーク(INDS)』の活動についてお話を伺いました。

左からINDSの千葉さん、瀬川さん

いわてNPO災害支援ネットワーク(以下、INDS)が立ち上がったのは、2016年9月。前月に台風
10号が発生し、東日本大震災からの復興途中であった岩手県に大きな傷跡が残されました。

災害支援において、連携と協働の必要性が浮き彫りになった東日本大震災。台風10号の際も、被害が大きかった岩泉町・久慈市・宮古市で災害ボランティアセンターが設置されて熱心な復旧作業が行われたものの、なかなか連携協働まで至らなかったと言います。

「実際はそこまで現場で混乱が生じたわけではないのですが、もっと情報連携できたら役場への問い合わせが一本化されたり、それぞれのNPO団体の得意分野が発揮できる支援をお願いできたりと、より効率的・効果的な支援をできたのではないかなと考えました。広範囲の岩手県をカバーする上で、調整し合うことが重要だと思います」

このような背景から「オール岩手」での取り組みを目指して立ち上げられたのが、いわてNPO災害ネットワークです。県内のさまざまなNPOによって構成され、JVOADと一緒に広域のコーディネートに動くこともあれば現場で泥出しの対応に入ることもあり、被災地に応じた支援に取り組んでいます。

休眠預金活用事業に応募したのは、より安定的な活動を展開する基盤づくりのため。岩手県の広域をカバーしながら県と県の社会福祉協議会と関係構築を進める上で、休眠預金活用事業が単年度ではなく長期的であることがメリットになっていると言います。

「支援活動のための関係構築には、日常のコミュニケーションがすごく重要になってきます。休眠預金活用事業が単年ではなく3年間だからこそ、年度を超えて長期的に会議を設定できたり計画的に研修を実施できたりするのはありがたいですね」

一言に「関係構築」といえど、行政の担当者には異動があり、コロナ禍で直接顔を合わせる機会が格段に減ってしまったため、この取り組みは容易ではありません。それでも県内でINDSの名前が知られるようになったりINDSと連携できる人が増えたりと、着実に変化が見られています。

「JVOADの伴走支援があることで、県内だけでなく県外での災害対応にも参加するようになりました。そこで最新の支援方法を知れたり県外の方々とつながれたりして、岩手に持ち帰れるものがあります。防災には終わりがないので、少しずつ仲間を増やしながら、見える成果を出していきたいです」

岡山NPOセンター

岡山NPOセンターが事務局を担っている『災害支援ネットワークおかやま』の活動について、同法人の詩叶(しかなえ)さんに伺いました。

岡山NPOセンターが掲げるのは「自然治癒力の高いまち」。問題が発生したら協働して解決していける。足りないところを補い合って、問題自体の発生を無くせるような「自然治癒力」を高めることが目標です。

そのため、岡山NPOセンターはNPOだけに限らず、セクターを越えて課題解決や価値創造の取組が生まれ、続いていくようにファシリテートしています。そのなかで2018年に立ち上げたのが「災害支援ネットワークおかやま」です。

2018年7月、「西日本豪雨」と呼ばれる広域に及ぶ被害をもたらした災害が発生しました。岡山NPOセンターは、発災した翌日には岡山県社会福祉協議会、岡山県と話し合い「災害支援ネットワークおかやま」を立ち上げ。ここまで迅速に動けたのは、岡山NPOセンターが平時から、行政、関係支援機関、民間団体、企業と協働で事業を通じて築き上げてきた関係性があったからです。

三者連携が進んできたとはいえ、組織文化か進め方も異なるためにまだまだ難しい行政機関と民間との災害支援に関する連携。災害支援ネットワークおかやまは平時の備えからの関係性の構築や継続を目指しています。

詩叶さんが理想的な関係を築けているケースのひとつとして挙げたのが、倉敷市一般廃棄物対策課との協働です。倉敷市の災害廃棄物の対策マニュアルの作成に参加して、訓練にも参加しましています。このようなマニュアル作成にNPOが参加したのは全国で初めてのケースだと言います。

「このような関係をどの市町村とも築けると、いつどのように発災しても、私たちから団体や企業をつなげますし、市町村も支援を受け入れられるんですよね。災害を平時の地域づくりから切り離さずに、常に地域を多面的に接続していくことが重要だと思います」

詩叶さんは休眠預金活用に参加してよかったことのひとつとして、通常の補助金では予算がつかないところにも予算をつけられる点を挙げられました。

「例えば水害時の復旧ロードマップは、デザイナーと編集者がいるからこそ、被災された住民の方に見て理解してもらえるものが完成しました。通常の助成金だと、そのように災害にデザインを持ち込むことが予算として認められないんですよね。でも休眠預金活用事業では予算として活用させていただけるので、その柔軟さがありがたいです」

左が岡山NPOセンターに伴走するJVOADの鈴木さん、右が岡山NPOセンターの詩叶さん。災害支援ネットワークおかやまが作成した「復旧ロードマップ」とともに。

普段からさまざまな部会をつくって話し合いをし、コミュニケーションを通じてアウトプットを決めている災害支援ネットワークおかやま。西日本豪雨の経験だけでなく、全国の災害中間支援組織とも連携しながら、常にアップデートした災害対応を県内外に伝えています。

全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)

左上がJVOADの明城さん、右上が小竹さん、左下が鈴木さん、右下が古越さん

ここまでご紹介してきた3団体の資金分配団体でありパートナーとして伴走を続けるのが、全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)です。JVOADの鈴木さん、明城さん、小竹(しの)さん、古越さんにお話を伺いました。

JVOADは「行政」、「社会福祉協議会」、「民間の支援団体」のによる災害支援のネットワーク構築のモデル化を目指しながら、全国域の災害中間支援組織と連携して情報共有を図っています。

「災害の文脈で『中間支援組織』について行政から語られるようになったのは、2018年の西日本豪雨の頃からです。それでも『中間支援組織』とは何なのか、どこまで何をやるのか定義されていないため、手探りで進めています。各地の災害に関する中間支援組織が目指すイメージもさまざまなので、まずは休眠預金を活用されている3道県と一緒に、目指すあり方を積み上げているところです」

JVOADは全国域の災害中間支援組織であり、先の3団体は県域の災害中間支援組織であるため、対応する範囲は違えど、同じ課題意識を持っているパートナー。

3団体が休眠預金活用事業を終えるのは、2023年3月。残り半年の活動期間で、3団体が積み重ねてきた活動を可視化したいと考えています。

「モデルとなる中核的災害支援ネットワークを確立し、三者連携の必要な要素を可視化することを休眠預金活用事業では目指しているので、3団体の皆さんが取り組んでこられたことをまとめていきたいと思います。災害中間支援組織の活動内容をできるだけわかりやすく伝えることで、この活動を他の地域へも展開したいと思っていただけるように橋渡ししたいです」

ゆくゆくは、全国47都道府県に災害中間支援組織がある状態を目指しているJVOAD。各地域で始まっている動きをサポートできるよう取り組んでいきたいです。

取材・執筆:菊池百合子

【事業基礎情報】

資金分配団体 特定非営利活動法人 全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)
助成事業中核的災害支援ネットワーク構築
〜大規模災害に備え、ネットワーキングから始まる地域の支援力強化〜
〈2019年度通常枠〉
活動対象地域全国
実行団体★北の国災害サポートチーム
 「広域・分散型 災害支援ネットワーク構築事業」

★特定非営利活動法人いわて連携復興センター
 「岩手県内の支援体制構築と支援者の育成・創出事業」

★特定非営利活動法人岡山NPOセンター
 「岡山県内市町村との連携体制と災害時支援スキームの確立事業」