地域の“協働”を促す潤滑油。都岐沙羅パートナーズセンターが描く、「公」のあるべき姿とは|コロナ枠の成果を探るNo.1

新潟県 村上市の「NPO法人都岐沙羅パートナーズセンター」は、設立から20年以上、地域の間をつなぐ中間支援組織として、多種多様なまちづくり事業をコーディネートしてきました。地域内の協働を促進する活動の根底にあるのは、次世代の「公」を追い求める姿勢。公のあるべき姿とは何か? よき“潤滑油”であるためには何が大切なのか? 休眠預金活用事業(コロナ枠)として採択されたフードバンク事業の事例をもとに、理事・事務局長の斎藤主税さん、事業コーディネーターの佐藤香さんにお話を伺いました。[コロナ枠の成果を探るNo.1]です。

「自力ではもう頑張れない……」。急増した食料支援のニーズ

1999年6月、新潟県の最北端にある村上市で、NPO法人都岐沙羅パートナーズセンター(以下、都岐沙羅パートナーズセンター)の母体は誕生しました。
行政、市民、NPO、企業の間に立ち、地域のあらゆる活動を支援する——中間支援組織の存在や必要性が、当時は十分に認識されていなかったものの、活動をスタートするや否や、地域から多種多様な要望が寄せられたと言います。

斎藤主税さん(以下、斎藤)「設立当初は世間の認知も低かった『コミュニティビジネス』の育成から、官民協働の事業のコーディネートをメインに担っていました。今では、住民参加型のまちづくりのコーディネートや観光系の事業など、さまざまな主体・分野・地域の間に立つ“地域密着型の潤滑油”として、地域にまつわる事業を幅広く手がけています

都岐沙羅パートナーズセンターの活動の様子
都岐沙羅パートナーズセンターの活動の様子

休眠預金活用事業に申請するきっかけとなったのは、2020年。新型コロナウイルスによる経済的なダメージが国内で声高に叫ばれ始めたころ、ここ村上市でも「経済的困窮者」が目に見えて増えてきたことが理由でした。

佐藤香さん(以下、佐藤)「市内の工業団地では失業が相次ぎ、あらゆる方面から『コロナで職を失った』という声が聞こえ始めました。離縁した相手が失業したことで、養育費が途絶えてしまったというシングルペアレントのご家庭もあって。『これまでも苦しい中でどうにか頑張ってきたが、自力ではもう限界』という人が、一気に増えた感覚がありました」

 斎藤さん(左)、佐藤さん(右) 
斎藤さん(左)、佐藤さん(右) 

コロナ禍で深刻化した社会問題に立ち向かうため、当初から官民を問わずに「地域ぐるみで何とかしよう」という機運は高まっており、“協働”以前に、各々が独自に動こうとする雰囲気があったと言います。

例として、民間からは生活困窮者に食料を支援する組織「フードバンクさんぽく」が立ち上がりました。しかし、行政からの支援はなく、地域内での物資調達に苦戦。企業とのタイアップで支援物資を集めている他地域のフードバンク組織から物資を分けてもらうも、その運搬だけで片道3時間かかる状況でした。

「『フードバンクさんぽく』は、ほぼ一人で運営されていたこともあり、地域内の調達の仕組みはもとより、組織基盤も整っていない状態でした。助成金の申請も検討したそうですが、手続きに労力がかかり、肝心の支援活動に集中できなくなってしまう。そこで、私たちが資金調達から支援に入り、地域内である程度の物資を賄える体制を構築することにしました

資金の調達先を探していたところ、2020年度新型コロナウイルス対応緊急支援助成(資金分配団体:一般社団法人全国コミュニティ財団協会)の公募を発見。審査を経て採択されたのち、2020年12月から半年間にわたって、フードバンク事業を軸に生活困窮者への支援システムの構築に奔走しました。

徹底的な情報収集力、緊張感のある関係性が「協働」を後押し

都岐沙羅パートナーズセンターが注力したのは、地域内の“協働”を促進すること。コロナ禍での強まった地域内の助け合いの風潮と、独自に活動していた支援の点と点を線で結び、「生活困窮者への物資支援」を展開していきました。
「『フードバンク村上』が発足する前から、村上市では『フードバンクさんぽく』が活動していたんです。それぞれ支援の対象者は異なりますが、困っている人の力になりたい気持ちは同じ。ならば、両者が競合ではなく協働となるよう、双方の話し合いの場を設けて連携を仲立ちしました。物資の寄付集めはもちろん、集まった物資のシェア、訪問先の分担に連名での広報まで協力してできる体制を整えました」

このような“協働”を推進するコツは何なのでしょうか? 都岐沙羅パートナーズセンターの取り組みから見えてきたのは、徹底的な「情報の収集と共有」です

例えば、生活困窮者と直に接する⽀援者たちへの聞き取りから「何が、いつ、どれくらい必要なのか?」といった⽀援物資のニーズや具体的な品目、量、提供のタイミングを明確にしたり。野菜などの生鮮食品の提供が可能な事業者の情報(物品、数量、連絡先)をリアルタイムで共有できるWebページを作成したり、必要な情報をかき集め、効率的に共有できるネットワークを整えることで、地域ぐるみでの“協働”を下支えしてきたのです。

市内のフードバンクや支援団体を紹介するページをお知らせする画像
市内のフードバンクや支援団体を紹介するページをお知らせする画像

「マスコミによる報道の追い風もあって、民間企業を含め、地域のあらゆる組織が独自に食料支援を始めました。地域内の支援が拡充するのは喜ばしいですが、誰がどこでいつ支援をしているのか、情報が錯綜していたんです。協働できる部分がないかを見極め、必要に応じて円滑な連携を促すためにも、散らばっている情報を整理して関係者に共有することはかなり意識していました」

佐藤「事務所にはひっきりなしにお客さんが来て、常にいろんな情報が飛び交います。お茶を飲んでいる何気ない時間に『みんながいる場では言えなかったけど……』と、本音を話してくださることもあるんです。日々のささやかな会話の中にも、重要な情報が隠れていることがあります。なので、情報収集のアンテナは常に張るようにしています」 

来訪者とお話ししている様子
来訪者とお話ししている様子

極めつけは、“中間支援組織”としての適度な距離感。藤さんは各方面に対して「癒着ではなく、緊張感のある協力体制」を心がけていると話します。

「必要なことは必要だと言いますが、無駄なことは無駄だとはっきり伝えます。行政にしろ、民間の組織にしろ、忖度のない関係性で付き合っているうちに『協働のボーダーライン』が見えてくるんです。これは無理そうだが、ここまでは協働してくれそうだと。べき論で語らずに、現状とそれぞれの組織の思惑まで把握したうえで双方の期待値をすり合わせる。これが協働を後押しする私たちの役割だと考えています」

村上市で広がり続ける、「公」のあるべき姿

これほどまでに地域内の協働を後押しする原動力はどこにあるのか? ヒントは、都岐沙羅パートナーズセンターのロゴマークに隠されていました。モチーフは、漢字の「公」。この由来について、団体の公式サイトには以下のように説明されています。

「都岐沙羅パートナーズセンターが目指している「公」のあるべき姿は、住民・NPO法人・民間企業・行政がそれぞれの資源を出し合い、地域内で共有する「財」をつくり、利用しあうことで、個々が自立している状態です」
「都岐沙羅パートナーズセンターが目指している「公」のあるべき姿は、住民・NPO法人・民間企業・行政がそれぞれの資源を出し合い、地域内で共有する「財」をつくり、利用しあうことで、個々が自立している状態です」

次世代の「公」を追い求める中、あくまでも自らは“潤滑油”の役割に徹し、各組織の当事者性と自発的な動きを尊重する。都岐沙羅パートナーズセンターの働きかけにより、村上市では積極的に協働し合う姿が見られるようになってきたと言います。

佐藤「『学生服をリユースしたい』とは言えても、『食べ物を支援してもらいたい』とは言いづらい。そんな人の話を聞いた学用品支援をしている団体が、当事者とフードドライブの組織をつなげてくださったことがあったんです。支援物資として地域内のお米が不足したときにも、『お米が不足して困っている』という声を聞きつけた地元の農家さんが、フードバンク組織にお米を届けてくださったこともありました」

お互いに情報を共有し、必要に応じて連携し合う。地域内で協働関係が育まれたことも後押しとなったのか、市内から調達した物資量は半年間で約8,800kgにのぼり、⽀援件数に対し95%以上の物資を市内で賄えるまでになりました。

フードバンク拠点に集まった物資
フードバンク拠点に集まった物資

潤滑油によって、さまざまな支援の歯車が上手くかみ合い、それぞれが自走しながらも、協働することでより大きな支援を可能にするーー中間支援組織が地域にもたらす価値は着実に広がっているように見えます。しかし依然として支援が実現するまでのハードルは高いと、斎藤さんは話します。

「都岐沙羅パートナーズセンターは民設民営型の組織なので、新しく事業を始めるときは当然『運営資金をどう工面するのか?』を考えるのがセットです。運営費を捻出するための事業も手がけますが、地域に本当に必要な事業であったとしても、必ずしも充分な資金が得られるものばかりではありません。日々支援のアイデアは生まれているので、休眠預金活用事業のような助成金の利用を検討するものの、新潟県を対象とした公募を行う資金分配団体が限られているため、全国を対象とした公募しか道がないことがほとんど。加えて私たちのようなローカルな取り組みは、波及効果の点から、採用されるハードルが高いんです」 また、助成金の中には、申請団体に事業費の2〜5割の自己負担を求めるものも少なくありません。助成金依存を防ぐために必要なシステムであることは理解しつつも、「資金繰りの面で手を上げづらいのが本音」だと、藤さんは吐露します。

「地域のプレーヤーの方々を結びつけて事業を作り上げていく、私たちのような事業体系では、申請団体に自己負担が求められると、手をあげるだけ損になってしまうんです。その点、今回の新型コロナウイルス対応支援助成は、自己負担が求められないことが助かりました。休眠預金活用事業では資金分配団体が伴走支援をしてくれる仕組みなのですが、私たちの場合は一般社団法人全国コミュニティ財団協会さんが、良き壁打ち相手になってくれて。月1のミーティングで事業の進捗を報告する中で、見直すべき点、より注力すべき点が明確になり、自分たちの行動を振り返る良い機会になりました」
休眠預金活用事業として一区切りがついたのは、2021年5月。事業期間中は、支援を求める人が増えると同時に、自ら支援の協力を申し出る人も増えたと言います。事業の終了から1年半以上が経った現在、当初はボランティアとして関わっていた人たちが、中心人物として生活困窮者への支援をする姿も見られるほどに。

都岐沙羅パートナーズセンターが描く「公」は、これからも進化し続けます。

執筆:なかがわあすか

【事業基礎情報】

実行団体
特定非営利活動法人 都岐沙羅パートナーズセンター
事業名
地域自走型の生活困窮者支援システムの形成/資金分配団体
活動対象地域
新潟県
資金分配団体
一般社団法人 全国コミュニティ財団協会

採択助成事業

2020年度新型コロナウイルス対応支援助成

今回の活動スナップは、休眠預金活用事業「課題・テーマ別 ラウンドテーブル」の第一弾として開催した「こども食堂ラウンドテーブル」の様子をお届けします。

活動概要

JANPIAでは、休眠預金活用事業を通じて団体が得た情報・ネットワークや知見などを、各団体同士で連携しながら、課題解決に向けどのように今後に生かしていくべきかを考える場として「課題・テーマ別 ラウンドテーブル」を企画しています。

その第一弾として、2022年6月9日に「こども食堂ラウンドテーブル」を開催しました。
当日は、休眠預金活用事業を通じてこども食堂の活動の支援を中心に社会の様々な諸課題に向き合う皆さまと、日ごろの取り組みを通じて感じていられることや、当該事業領域の未来をどう考えていくか、活発な意見交換が!

JANPIAでは、これからも様々な課題・テーマを取り上げてのラウンドテーブルを開催していきたいと考えています。

活動スナップ

第1部

第1部では、資金分配団体3団体、実行団体3団体の方から休眠預金活用事業の概況や、今後の課題などをお話しいただきました。 詳細は以下の取り組み概況の共有のPDFデータや動画をご覧ください。

1. 開会の挨拶 

2. 取り組み概況の共有

・平野 覚治 様(一般社団法人 全国食支援活動協力会 専務理事)

・湯浅 誠 様(認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ 理事長)

・松本 海南 様(公益財団法人 パブリックリソース財団 プログラムオフィサー)

・浦崎 直己 様(社会福祉法人 那覇市社会福祉協議会 居場所支援コーディネーター)

・坂本 純子 様(NPO法人 新座子育てネットワーク 代表理事)

・藤田 誠 様 (公益社団法人 フードバンクかながわ 事務局長)


 取り組み概況の共有 資料 

第2部

第2部では、「休眠預金×こども食堂」でどのような未来を描くことが出来るか、登壇者の皆さまや専門家の先生、またご視聴されている皆様からも「Slido(イベント中にリアルタイムに意見を伝えるツール)」を使って意見をいただきながら、議論を進めました。

当日、意見交換した内容や感想は以下の資料(PDF)に取りまとめています。
PDFデータや動画をぜひご覧ください。

【意見交換会】

・平野 覚治 (一般社団法人 全国食支援活動協力会 専務理事)

・湯浅 誠 様(認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ 理事長)

・松本 海南 様(公益財団法人 パブリックリソース財団 プログラムオフィサー)

・浦崎 直己 様(社会福祉法人 那覇市社会福祉協議会 居場所支援コーディネーター)

・坂本 純子 様NPO法人 新座子育てネットワーク 代表理事)

・藤田 誠 様 (公益社団法人 フードバンクかながわ 事務局長)


・阿部 彩 様(東京都立大学 教授)

・米田 佐知子 (子どもの未来サポートオフィス 代表)

・大島 巌 様(東北福祉大学 副学長・教授)

 

・ファシリテーター 鵜尾 雅隆 様JANPIA 理事 ・日本ファンドレイジング協会 代表理事)



 当日のご意見・ご感想のまとめ 

こども食堂ラウンドテーブル当日の様子

コロナ禍による失職や減収などの影響で、ひとり親世帯や若者など、さまざまな人たちに困窮が広がっています。そうしたなか、特定非営利活動法人eワーク愛媛(以下、eワーク愛媛)が従来からのフードバンク事業をベースにして始めたのは、必要なときに必要な食料品・日用品を無料で受け取れる「コミュニティパントリー」の拠点でした。さらに、困難を抱えた若者がコロナ禍で孤立したり、自立の機会を失ったりすることのないよう、居場所づくりや就労支援にも力を入れています。これらの活動を始めた背景について、eワーク愛媛・理事長の難波江任(なばえ・つとむ)さんに伺いました。

困窮が広がるなかでの「コミュニティパントリー」

愛媛県新居浜市にあるeワーク愛媛の事務所、その一角にはお米や保存食品、調味料やお菓子、日用品がずらり。ここに来た人は、買い物かごを持って思い思いに品物を選んでいきます。

小さな商店のようですが、これらはすべて無料提供。eワーク愛媛が、ひとり親世帯やコロナ禍で生活が苦しくなった人たちを対象に運営する「地域無料スーパーマーケット(コミュニティパントリー)」です。

一般社団法人全国コミュニティ財団協会が資金分配団体となって実施した「新型コロナウイルス対応緊急支援助成」を受けて、2020年12月末からコミュニティパントリーの事業を始めました。

この活動を始めた背景について、運営母体のeワーク愛媛で理事長を務める難波江任さんは、「コロナ禍で、シングルマザーの人たちなどを中心に、収入が減って生活が苦しくなったという話を耳にするようになったんです」と話します。

eワーク愛媛では、コミュニティパントリーの活動に先駆けて、2020年春に小中学校が一斉休校になった際に、ひとり親家庭の子どもたちに無料でお弁当を配布。このとき、コロナ禍でひとり親世帯の経済的・精神的な負担が増していることを実感したそうです。

お話を伺った eワーク愛媛 理事長の難波江任さん
お話を伺った eワーク愛媛 理事長の難波江任さん

もともとeワーク愛媛は、ひきこもり状態やニートなどのさまざまな困難を抱えた若者たちに就労支援を行う団体として、2003年に活動をスタートしました。現在では、フードバンク事業や地域再生事業にも活動を広げています。

「フードバンク事業に取り組むようになったのは、10年ほど前からです。就労支援の対象となる若者たちの多くが、経済格差や生活困窮の問題を抱えていると気づいたことがきっかけでした」

eワーク愛媛では、フードバンク事業を通じて一般家庭や企業、農家などから食品の寄付を集め、地域にある児童養護施設や自立援助ホーム、子ども食堂を運営する団体、ひとり親世帯や生活困窮者の支援団体などに提供してきました。

さらにeワーク愛媛が子ども食堂の主催も担い、ひとり親世帯を対象にした定期的にフードパントリー(無料食料配布)にも力を入れています。

「それでも、子ども食堂に足を運びづらい人や日時の都合が合わない人もいます。さらにコロナ禍で、ひとり親世帯に限らず生活が苦しくなる人が増えてきました。それなら、必要なときに必要なものを気兼ねなく取りに来られる場所をつくりたいと考えて、コミュニティパントリーを始めたんです」

気軽に来ることができて、相談しやすい場

eワーク愛媛のコミュニティパントリーの対象は、困窮者支援を担う社会福祉協議会やNPO、ひとり親世帯の支援団体、障がい者福祉施設などから紹介を受けた人。ひとり親世帯中心に、障がい者のいる世帯、生活に困窮する若者や高齢者など、さまざまな人が利用しています。

ポイントカードを利用して月5,000円程度の物資を無料で受け取れる仕組みで、食品の他に日用品や文房具などもあります。特に生理用品はすぐになくなるそうです。

コミュニティパントリーには、eワーク愛媛のスタッフが常駐。8時半から18時まで開いているので、利用者の都合に合わせて利用することができます。

「朝いちばんに来る方もいれば、仕事終わりに駆け込んで来る方もいるんですよ。遅い時間に『まだ行っても大丈夫ですか?』とLINEが来ることもあるので、スタッフがいるときは柔軟に対応しています」

通常のフードパントリーでは、寄付された食品を公平に分配するため、何を受け取るのかを選べないことも多いですが、コミュニティパントリーでは必要なものを自分で選ぶことができます。

難波江さんは、コミュニティパントリーが気軽に足を運べる拠点として機能することで、困ったときに相談がしやすい環境をつくりたいと考えています。

「コミュニティパントリーを利用する方から相談を受けて、専門支援機関に紹介したこともあります。スタッフに相談とまでいかなくても、ここで日常のちょっとした愚痴を話せるだけで、気持ちが少し楽になることもあるんじゃないでしょうか」

また、ひとり親のお母さんどうしが知り合いになって共通の悩みを相談し合ったり、子どもの服を譲ったりするつながりも生まれています。

就労相談会をきっかけに、コミュニティパントリーの利用につながった80代

これまでeワーク愛媛では、ひとり親世帯や若者を中心に支援してきましたが、コミュニティパントリーを始めたことがきっかけで、生活に困窮する高齢者の存在にも気づいたそうです。

「一人暮らしで年金が少ないために、自営で清掃業を続けている80代の方がいます。その方はコロナ禍で仕事が減り、eワーク愛媛が開催している就労相談会に参加したことがきっかけで、コミュニティパントリーの利用につながりました。この方のように大変な生活を送っている高齢者が、実はたくさんいるのではないかと思います」

コミュニティパントリーの立ち上げに活用した「新型コロナウイルス対応緊急支援助成」は2021年5月末で終了していますが、「この場所があって助かった」という利用者からの声があるため、愛媛県内の新居浜市・西条市の2ヶ所でコミュニティパントリー事業を継続しています。

「愛媛県は東予、中予、南予の大きく3地域に分かれます。今は東予地域でコミュニティパントリーを2ヶ所運営しているので、今後は中予地域と南予地域にも1ヶ所ずつつくりたい。そのために協力してくれる団体を探しているところです」

SOSを出せずにいる若者と出会うために

コミュニティパントリーの活動に加えて、eワーク愛媛では2021年6月から、もうひとつ新たな活動を始めました。

公益社団法人ユニバーサル志縁センターが実施する新型コロナウイルス対応緊急支援助成を活用して、発足当初から活動の柱としてきた「困難を抱える若者の相談と居場所づくり事業」を拡大しています。

「私たちは長年、ひきこもり状態の人やニートなど、就労に困難を抱えた人たちを支援してきました。そうした人の自立は、コロナ禍でさらに難しくなっているんです。ようやく自分に合う仕事を見つけたのに、コロナの影響で失職した人もいます。

こうした状況で、その人たちを孤立させないための支援も必要です。ただ、そもそもSOSを出せず、支援機関の存在さえ知らない若者も多くいます」
 
2018年に愛媛県保健福祉部が行った「ひきこもり等に関する実態調査」では、愛媛県内にひきこもり状態の人が約1,000人いるという結果が出ました。しかし、難波江さんは「隠れたひきこもり状態の人を含めると、実際にはその10倍はいるのではないか」と感じています。

「支援につながっていない若者との接点づくりが必要だとずっと思ってはいたのですが、自主事業ではそこまでの余裕がなく、目の前にいる相談者への対応で精一杯でした。今回、休眠預金活用事業の助成を受けられたことで、ようやく各地での定期的な相談会の実施や広報に力を入れることができたんです」

一人ひとりの得意・不得意を理解して支える

eワーク愛媛に相談に来る若者は10代から30代が中心で、「家から出るのが怖い」「コミュニケーションが苦手」「働く自信がない」といった、社会生活や就労になんらかの困難を抱えた人がほとんどだと言います。

「就職活動を始める前に、朝ちゃんと起きて身支度をする生活習慣を身につける必要がある人もいます。今回の助成で一つ増やすことができた『居場所スペース』のように、ひきこもっていた家から出る理由をつくり、孤立させないためにも、こうした居場所の存在は大切です」

eワーク愛媛では、こうした一人ひとりの状況に合わせて、職場見学やボランティア体験、就労体験など、相談者が社会に踏み出すために一歩ずつ支援しています。就労体験が難しい場合には、eワーク愛媛のフードバンク事業でボランティアを体験することも。生活に困窮している場合は、就労支援と同時にコミュニティパントリーで食料を提供しています。

「利用者のなかには発達障がいの傾向があって、普段の作業は問題なくこなせるのに、イレギュラーな対応ができなくて仕事が続かない人もいます。また、一人作業を行う能力は十分あって優秀なのに、チーム作業がどうしても苦手な人もいます」

こうした得意不得意を理解した上で、就労体験に協力してくれる地域の企業を見つけることも、難波江さんたちの役割です。チームで働くことが難しければ個人で作業ができる職場を探し、叱られるのが苦手な人の場合には職場の人たちに配慮してもらうなど、eワーク愛媛が若者と企業の橋渡しを担っています。

職場見学の様子
職場見学の様子

就労体験の受け入れ先は、製造業や飲食業、農業など多種多様。働ける場を探している若者がいる一方で、地域には人材不足で困っている業種も少なくありません。就労体験で企業とのマッチングがうまくいき、就職へとつながったケースもあります。

「できる限り就労を受け入れたいと言ってくれる企業も多いんですよ。ただ、利用者のなかには就労まで時間がかかる子もいますし、やっと就職しても辞めてしまう人もいます。就職後も長い目で地道にフォローを続けていくことが、この事業で最も大事なことなんです」

地域の困りごとを地域で解決できるように

ご紹介してきたように、eワーク愛媛では休眠預金を活用して、「コミュニティパントリー」による生活困窮者支援と「困難を抱える若者の相談と居場所づくり」の2つの事業に取り組んできました。それぞれの事業での資金分配団体の伴走について、難波江さんは「非常に勉強になることが多かった」と振り返ります。

「どちらの事業にも共通して言えることですが、資金分配団体と一緒に取り組めたおかげで、客観的な目標設定や実績を数字として表すことの重要性を学びました。

こうした活動の成果を示す数字は、私たちのところに相談に来る人にとって安心材料になりますよね。自分たちだけの事業として取り組んでいたら、目の前の活動に追われてしまい実現できなかったことだと思います」

対象も内容も異なる事業を手掛けるeワーク愛媛の根底には、「地域の困りごとを地域で解決したい」という思いがあります。

「『地域共生』という言葉をよく聞くようになりましたが、重要なのは、地域の困りごとを地域で解決できるようになっていくことだと思います。

働けなくて困っている若者がいるなら、地域の企業が支える。困っているひとり親世帯や高齢者がいるなら、地域の人たちが食料の寄付などで手を差し伸べる。eワーク愛媛の活動が、そんな地域の実現に向けたお手伝いになれば、と思っています」

■休眠預金活用事業に参画しての感想は?

自分たちの団体だけで事業に取り組んでいると、どうしても「思い」だけで進んでしまうところがありますが、今回の助成を受けたどちらの事業にも資金分配団体が伴走してくれたおかげで、成果管理や事業評価といったところにも目を向けることができました。(難波江さん)

■資金分配団体POからのメッセージ

一般社団法人全国コミュニティ財団協会 石本さん
「コミュニティパントリー」は、必要なものを自分で選ぶことができ、かつ相談できる場所でもある、今までになかった支援の形だと思います。このように多様な支援の形が地域にあることが、地域から誰一人取り残さないことにつながっていくのだと感じています。これからコミュニティパントリーが愛媛を中心に広がっていくことを期待しています。

公益社団法人ユニバーサル志縁センター 小田川さん
若者たちがいつでも来ることができるフードパントリーや居場所、スタッフによるアウトリーチ、そして協力企業とともに取り組む相談会、見学会、体験会など、さまざまな方法で、ひとりひとりの若者の次の一歩を支えてくださっています。eワーク愛媛さんの長年にわたる地元企業とのつながり、そして地域の社会福祉協議会やNPO、そして民生委員などの支援者とのつながりがあってこその取り組みだと思います。

公益社団法人ユニバーサル志縁センター  岡部さん
若者の就労支援のアウトカムとして、当事者のステップを10段階で評価する基準を設けている点が、社会に成果をわかりやすく発信する良い取り組みだと思います。今回の事業では、相談支援の対象となった若者89名(実数)中、58名(65.2%)が2段階ステップアップできたとのことでした。ぜひ今後も、eワーク愛媛さんの取り組みを多くの方に発信していっていただけたらと思います。

【事業基礎情報 

実行団体特定非営利活動法人eワーク愛媛
事業名地域無料スーパーマーケット事業
活動対象地域愛媛県
資金分配団体一般社団法人全国コミュニティ財団
採択助成事業2020年度新型コロナウイルス対応支援助成

【事業基礎情報 Ⅱ

実行団体特定非営利活動法人eワーク愛媛
事業名愛媛県若者サポートコミュニティ事業:困難を抱える若者の相談と居場所づくり事業
活動対象地域愛媛県
資金分配団体公益社団法人ユニバーサル志縁センター
採択助成事業2020年度新型コロナウイルス対応支援助成
2021年に実施した中間評価におけるナラティブな評価を映像にしました。
2021年に実施した中間評価におけるナラティブな評価を映像にしました。
今回の助成では特に「公益的な事業で、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う影響を受け事業の推進に当たり支援を必要としている団体やポストコロナを見据えた新たなチャレンジ」に対して助成しました。

今回の活動スナップは、浦和レッドダイヤモンズ株式会社(資金分配団体:一般社団法人RCF)が11月20日に実施した〈このゆびとまれっず!ハートフルケア〉イベントにJANPIAスタッフが参加した際の様子をお伝えします。

活動の概要

浦和レッドダイヤモンズ株式会社は、一般社団法人RCF(20年度緊急支援枠資金分配団体)の実行団体として、「スポーツクラブによる困窮世帯支援事業」に取り組んでいます。

「このゆびとまれっず」は、地域の課題解決を目指し、クラブがきっかけとなって(=浦和レッズが指を掲げて)、支援者・賛同者とともに(=仲間を募って)、継続・拡大していくことを目的とし、
休眠預金活用事業をきっかけに立ち上がったアクションプログラムです。

さいたま市内の子ども食堂を利用している子どもたちへの支援策として、
心と体をケアするスポーツプログラム「ハートフルケア」、
食料・飲料・文具などの物的支援を行う「REDS Santa」、
本活動を広く発信することで支援の輪を広げる「このゆびとまれっず!特設サイト」の
3つの柱で構成されています。

活動スナップ

2021年11月20日、〈このゆびとまれっず!ハートフルケア〉が実施されました。
当日はさいたま市の子ども食堂を利用している親子69組146名が参加しました。

 今回の活動の目標は以下の3つです。 「子どもたちに元気と勇気と笑顔を届け続けること」 「子どもたちがサッカーを好きになり、クラブを好きになり、スポーツを通じて心身とも健康に成長すること」 「日ごろなかなか経験できない非日常体験を通じ、家族の絆を深め、楽しい思い出の1コマを作ってもらうこと」
今回の活動の目標は以下の3つです。 「子どもたちに元気と勇気と笑顔を届け続けること」 「子どもたちがサッカーを好きになり、クラブを好きになり、スポーツを通じて心身とも健康に成長すること」 「日ごろなかなか経験できない非日常体験を通じ、家族の絆を深め、楽しい思い出の1コマを作ってもらうこと」
最初に日本代表のキャプテンを務めたこともあるハートフルクラブの落合キャプテンから、参加した子どもたちに向けて熱いメッセージ! 「これからサッカーを楽しんでいくうえでも、人生で色んな事にチャレンジするうえでも、 『一生懸命やる』『思いやりを持つ』『悩んで考える』 ことが大切。」
最初に日本代表のキャプテンを務めたこともあるハートフルクラブの落合キャプテンから、参加した子どもたちに向けて熱いメッセージ! 「これからサッカーを楽しんでいくうえでも、人生で色んな事にチャレンジするうえでも、 『一生懸命やる』『思いやりを持つ』『悩んで考える』 ことが大切。」
ハートフルサッカー体験では最初はなかなか輪に入り込めなかった子も、 コーチ達の掛け声によって気付けば一生懸命ボールを追いかけていました。 広いフィールドが子どもたちの元気な笑顔で溢れていました。
ハートフルサッカー体験では最初はなかなか輪に入り込めなかった子も、 コーチ達の掛け声によって気付けば一生懸命ボールを追いかけていました。 広いフィールドが子どもたちの元気な笑顔で溢れていました。
アンプティサッカー体験では、両手にクラッチ(杖)を持ち、一生懸命にプレー。 慣れない体験にも「こうやって重心をかければ上手くシュート出来るかな」と試行錯誤。 ゴールを決めて、クラッチでタッチをして、お互いに喜ぶ姿も!
アンプティサッカー体験では、両手にクラッチ(杖)を持ち、一生懸命にプレー。 慣れない体験にも「こうやって重心をかければ上手くシュート出来るかな」と試行錯誤。 ゴールを決めて、クラッチでタッチをして、お互いに喜ぶ姿も!

※アンプティサッカーとは

主に上肢、下肢の切断障害を持った選手がプレーするサッカー。義足・義手を外し、日常の生活やリハビリ医療目的で使用しているクラッチ(杖)で体を支えて競技を行います。

サッカー体験の最後は、みんなで集合写真をパチリ!
サッカー体験の最後は、みんなで集合写真をパチリ!


その後、子どもたちは埼玉スタジアムで浦和レッズの試合を観戦。 子どもたちの元気な声援もあってか、当日は浦和レッズの勝利! 応援することの楽しさも体験できました。
その後、子どもたちは埼玉スタジアムで浦和レッズの試合を観戦。 子どもたちの元気な声援もあってか、当日は浦和レッズの勝利! 応援することの楽しさも体験できました。
浦和レッズさんは、このプログラムをきっかけにして、スポンサー企業、埼玉県子ども食堂ネットワーク、埼玉県など、多様なステークホルダーとの関係性を深めてまいりました。 来年度以降も「このゆびとまれっず!」プログラムを、継続することを目指しています。
浦和レッズさんは、このプログラムをきっかけにして、スポンサー企業、埼玉県子ども食堂ネットワーク、埼玉県など、多様なステークホルダーとの関係性を深めてまいりました。 来年度以降も「このゆびとまれっず!」プログラムを、継続することを目指しています。
実行団体
浦和レッドダイヤモンズ株式会社
事業名
このゆびとまれっず!
活動対象地域
埼玉県
資金分配団体
一般社団法人RCF
採択助成事業
スポーツクラブによる困窮世帯支援事業2020度緊急支援枠 

資金分配団体である『認定NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえ』は、新型コロナウイルス対応緊急支援助成で実施する「子どもの居場所作り応援事業」をともにする5つの実行団体を巡り、日頃の活動状況や課題点などについて話す場を設けました。今回は、実行団体の1つである長野県の『諏訪圏域子ども応援プラットフォーム』の皆さんとオンラインで実施した「これまでの活動の振り返りや、途中経過の報告会」の様子をレポートします。”

原点へと立ち戻ることで意識を改革。 諏訪圏域ならではの草の根的支援活動

「自分がどんなふうに『触媒』として活動できるのかを見つけたい」。JANPIAのビジョンに触れたユニーク自己紹介から会議スタート!
「自分がどんなふうに『触媒』として活動できるのかを見つけたい」。JANPIAのビジョンに触れたユニーク自己紹介から会議スタート!

日本各地にある約5,000か所ものこども食堂の活動支援を行っている 『認定NPO法人 全国こども食堂支援センター・むずびえ』。休眠預金活用事業にて、コロナ禍でも日頃からの繋がりを生かし、創意工夫で活動するこども食堂を包括的に支援するために、各地域のこども食堂ネットワーク団体とともに活動をしています。
また実行団体の一つである『諏訪圏域子ども応援プラットフォーム』は、長野県の諏訪地域のこども食堂、そして子どもたちの居場所づくりを推進し、「子どもの成長を見守る地域づくり」を目指しています。プラットフォームには、子どもたちの居場所などを運営する団体をはじめ、子ども支援をする団体、自治体、地域における民間の福祉活動を推進する社会福祉協議会、地元企業、さらに個人的に取り組んでいる方などが参画。活動する団体や個人との連携体制を作っています。

諏訪圏域での休眠預金を活用した活動が始動してから約半年。今回は『むすびえ』のプログラム・オフィサー(PO)である渋谷雅人さん、三島理恵さんがファシリテーターとなり、『諏訪圏域子ども応援プラットフォーム』の皆さんと、これまでの活動の経緯はもちろん、他圏域での課題点などを例題に、さまざまな視点から「諏訪圏域のこども食堂の現状や未来」について話し合いました。

『諏訪圏域子ども応援プラットフォーム』からは5名のメンバーが参加しました。
事務局で企業や団体支援を担当する木村かほりさん、情報誌などの編集と団体支援を担当している上條美季さん、交流会と団体支援担当の村上朱夏さん、広報誌『月刊ぷらざ』内の「みんなの居場所」を掲載担当の小林佳代さん、そして会計担当の山田由紀乃さん。まずはどのようにしてこの事業をスタートさせたのかを改めて伺いました。

感染対策をしてのお弁当や食材配布の準備。小学生も受付のお手伝いをしてくれました。

「この事業を始めるときに、まず私が絵を描いて説明をしたんです。こうやってみたらきっといいはず!だから、皆さんよろしくお願いしますって(笑)(木村さん)」

そう話してくださったのは、事務局を務める木村さん。メンバー各自が不登校や発達障害を抱える子どもたちのサポートなど、それぞれの活動をする傍ら、子ども食堂の支援活動に取り組んできました。多くの団体と関わりを持つ中で、ときには「何のためにやっているのか?」と自問自答することもあったといいます。それでも前向きに活動を続けてこれた理由がありました。

「コロナ禍で休校を余儀なくされた子どもたちの学びの場が失われたことが、気づきのポイントでした。子ども食堂の運営継続を優先して議論すれば、必然的に子どもたちの声が後回しになってしまう。だからこそ、話すときは必ず『子どもたちのためである』いう原点に立ち戻るように心掛けています(上條さん)」

現在、情報誌などの編集をはじめ、団体支援も担当している上條さん。この活動に参加した当初は食材提供を担当し、現場へ足を運び続けた結果、運営者の方々と互いに意識を高めあう関係性を築くという経験をしました。

そして、交流会と団体支援担当の村上朱夏さんは、活動を通じて主体性が芽生えたそうです。

「上條さんに刺激を受けて、急激に学びに対する意識が生まれてきました。さらに、新たに子ども食堂を始めたいという方との出会いも大きなきっかけに。日頃の活動の様子を写真で伝えてくださったり、SNSの更新をお手伝いしたり。継続的に関係性を築けたことが嬉しかったですね(村上さん)」

こうした意識の変化は、諏訪圏域で子ども食堂を運営する各団体の方々にも波及し、原点に戻ることを念頭に活動してくださっている様子が感じ取れているといい、不足しがちであった子ども食堂同士の情報交換も解消されつつあります。

「とにかくコミュニケーションが増えたことが大きな要因ではないでしょうか。コロナ禍ではあるものの、訪問を続け、食材やハンドジェルなどを届けると自然と会話が生まれて、そこから「こんなことで困っている」と話してくださるようになり、お互いに支援に対する気づきが得られています。そこがスタッフの『やっていてよかった!』にもつながっていると思います(木村さん)」

(写真左)配布するお弁当作りの様子。子どももお手伝いしてくれる時があります。 (写真右)大学生もお弁当や食材をもらいにきます。食べ盛りなので、おかずやご飯の余りを余分にもたせることも。
(写真左)配布するお弁当作りの様子。子どももお手伝いしてくれる時があります。 (写真右)大学生もお弁当や食材をもらいにきます。食べ盛りなので、おかずやご飯の余りを余分にもたせることも。

そう木村さんはいいます。連携する近隣団体との関係性が目覚ましく向上しているのは、地道な取り組みから生まれた成果といっても過言ではありません。「子どもたちのために」という思いを共有し、原点に立ち戻るべく活動の意義を話し合える場所がある。こうした安心感もメンバーの原動力となっているのかもしれません。

互いに頼れる関係性の構築を。 行政や民間企業との連携を目指してチャレンジ

厳しい状況下でありながら自主性を持って実践する活動の様子は、他圏域で活動する団体にも波及し、最近では子ども食堂支援における相談ごとも増えてきたという『諏訪圏域子ども応援プラットフォーム』。今後は、行政はもちろん、SDGsゲームを共に実施するなどして民間企業との連携にも注力したいといいます。

「何をもって認めてもらうかはすごく難しい問題ですが、こういった活動が必要なんだと認めてもらうことが大切です。ただ好きで活動しているのではなく、意義を持って行動していることを知ってもらうことが必要です。金銭による支援、情報共有だけではなく、もっと根っこの部分の話し合いができ、いつでもプラットフォームを頼ってもらえる関係性を構築できるといいですね(上條さん)」

そんな上條さんの意見を受けて話してくださったのは、団体連絡担当として広報を担う小林さん。細かった情報という線が太くなり、張り巡らされることでネットワークが広がり始めているといいます。

『月刊ぷらざ』は長野県諏訪圏域で配布されている地域情報誌。これまで半面だった子ども食堂の情報が一面になるなど需要が高まっています。

「線を面にするには情報がとても重要なんです。私たちプラットフォームが情報を発信して、行政が必要な情報を得る。そして共有する。そういったメリットと私たちの活動がうまくつながるといいなと思います(小林さん)」

それぞれの経験を活かした継続的な活動を通じ、さまざまな団体との関係性を築きつつある今、プラットフォームの役割、そして価値をメンバー全員が自覚できるようになりました。行政や企業に対して、参加を呼び掛ける土台がようやくできてきたことを実感されているそうです。

支援活動の要は「否定をしない」環境づくり。 子どもたちの通訳者となって未来へとつなぐ

「これまでの団体活動は個々の想いや考えによるものが非常に多かったと思います。私自身、不登校の親の会をはじめる際に、『子どもが卒業したから』という理由で解散してしまった団体があることを知り、再び立ち上げるのにものすごくパワーを使ったんです。必要とする人がいつでも利用できる仕組みづくり、そして継続させていくことの必要性を強く感じています(木村さん)」

お弁当を配った後、オンラインでおしゃべりをしながら食事をしている様子。

過去の活動経験から、自分の活動は社会全体から見たときに役立つのだろうかと考えることで視点も変わり、各々の活動状況について意見交換するだけでも社会全体のことを考えるきっかけづくりになるではないかと木村さんは考えました。

「不登校の子どもたちのサポートを通じて、学校との関係性に疑問を持つことが多くあり、それらはさまざまな人との関係性にも当てはまることに気づいたんです。これが正しいと強要すれば反発も起こる。だからこそ、相手の意見を決して否定せず、受け入れる。(木村さん)」

「こうした環境づくりはネットワークをつないでいく上でも非常に大切なことで、年齢や性別を問わず、同じ目標へと向かう仲間づくりができることが大きなポイントなんです(小林さん)」

想いが強いばかりに衝突し、原点回帰するチャンスを逃してしまう方も見受けられる中で、大切なことは、きちんと自分の意見を言える環境と耳を傾ける姿勢。個々を尊重し、決して否定をしない環境づくりこそが、継続的な支援の要となっています。

「ミクロの視点とマクロの視点というのは、すごく大切だなと思うんです。日本社会の現状も知らず、子どもたちにとって何が必要であるかも分からない状態では乖離した活動になってしまいます。私たちは子どもたちと社会をつなぐ通訳者。子どもたちが苦しんでいることを社会へ伝え、同時に世の中の仕組みを子どもたちに伝える役割を担っていきたいと思っています(上條さん)」

自分はどんな人間であるのかといった自己分析の視点も持ちつつ、さまざまな人と触れ合いながら、素直に子ども支援活動と向き合える環境が『諏訪圏域子ども応援プラットフォーム』にはあります。

コロナ前のこども食堂の様子。 (写真左)子どもたちと一緒に巻き寿司づくり。初めて作るというママさんも。 (写真右)家族連れ、ひとり親、学生、地域の大人、大家族のようにみんなで食事をしていました。
コロナ前のこども食堂の様子。 (写真左)子どもたちと一緒に巻き寿司づくり。初めて作るというママさんも。 (写真右)家族連れ、ひとり親、学生、地域の大人、大家族のようにみんなで食事をしていました。

さまざまな会話に耳を傾けながら、自身のご両親も子ども食堂を運営しているという、メンバーの一人である山田由紀乃さんはいいました。

「今日の振り返りでメンバーの考えを改めて確認し、現状を振り返ったことで、諏訪圏域の未来に希望が持てました。このプラットフォームで活動できてとっても幸せです!(山田さん)」

本事業に携わる全員が、イコールパートナーとして同じ社会課題に対して向き合う場をこの半年間で築くことができていること、そして、仲間としての一体感を強く感じた1日でした。


■資金分配団体POからのメッセージ


定期的な面談や今回のお話を伺いながら、『諏訪圏域子ども応援プラットフォーム』の皆さんの活動は、まさに地域の子ども支援を通じた「未来づくりの種まき」なのだなと思っています。地域の力を信じて地域みんなの役割を引き出していく、そして、その役割を社会で発揮していくという受け皿をどのように促していくかといった課題と常に向き合っていますが、諏訪圏域の皆さんの活動は、活動するということを体現されていて、新しい互助会づくりのように思え、草の根活動からのイノベーションの第1章を見ているようで、本当に感動しっぱなしです。
(認定NPO法人 全国こども食堂支援センター・むずびえ / 三島理恵さん)


この半年間の休眠預金活用事業を通じて、「そもそもなぜ活動するのか」という根本に立ち返ることで新たな気づきを得たという皆さん。子どもの権利などを学ぶ場を設けるなど、さまざまな取り組や交流を通じて本当の意味で「活動の意義」に納得し、実行されているのだなと感じています。目の前の人をありのまま受け入れることで、各自の自主性が育まれる場が現実化しており、まさに「波及効果の原点」なのだと改めて実感することができました。

(認定NPO法人 全国こども食堂支援センター・むずびえ / 渋谷雅人さん)

【事業基礎情報】

実行団体

諏訪圏域子ども応援プラットフォーム

事業名コロナ禍でもつながる居場所推進事業いまこそ必要な地域の活動を支える
対象地域

長野県諏訪地域を中心

資金分配団体

認定NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえ

採択助成事業こども食堂への包括的支援事業こども食堂が地域の明日をひらく

2020年新型コロナウイルス対応緊急支援助成〉

JANPIAは、「経団連1%クラブ」と連携し、企業と休眠預金活用事業を実施する団体とを繋ぐ機会を創出しています。さらなる連携促進を目指し、「経団連1%クラブ」の会合に、連携事業を既に進めている資金分配団体・実行団体とともに参加し、休眠預金活用事業の現況と企業との連携事例の報告や、意見交換を行いましたので、その様子をご紹介いたします。

JANPIAは、一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)により設立された背景から、「経団連1%クラブ」と連携し、様々な活動を行っています。2021年3月26日に開催された「経団連1%クラブ」の会合では、実際に企業連携を実現している資金分配団体・実行団体とJANPIAの以下のメンバーが参加し報告を行いました。

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▼参加メンバー

 【2019年度通常枠「外国ルーツ青少年未来創造事業」報告者】
  資金分配団体:公益財団法人日本国際交流センター(JCIE) 執行理事 毛受 敏浩さん
  実行団体:NPO法人青少年自立援助センター 定住外国人支援事業部責任者 田中 宝紀さん

 【2019年度通常枠「こども食堂サポート機能設置事業」報告者】
  資金分配団体:一般社団法人全国食支援活動協力会 専務理事 平野 覚治さん
  実行団体:社会福祉法人那覇市社会福祉協議会 居場所支援コーディネーター 浦崎 直己さん

 【「休眠預金活用事業の現況」報告者】
  一般財団法人日本民間公益活動連携機構 事務局長 鈴木均

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会合は経団連会館で対面とオンラインのハイブリッド型で開催
会合は経団連会館で対面とオンラインのハイブリッド型で開催

休眠預金活用事業の概況と課題、企業との連携ニーズ

まずはじめにJANPIA事務局長の鈴木から、「休眠預金活用事業の概況」と「企業との連携事例」について報告。企業の専門性を生かした支援など連携強化をお願いしました。

休眠預金活用事業の現状

 現在、休眠預金活用事業では、2019、20年度<通常枠>と2020年度<新型コロナウイルス対応緊急支援助成(緊急支援枠)>が並行して進行しています。資金分配団体は延べ112団体、助成事業も80になります。その助成事業で採択された社会課題解決を進める実行団体数は500の規模に達しています。

 このように休眠預金活用事業の規模が拡大する中、行政や企業、NPOなど複数のセクターが個別にではなく、互いに強みやノウハウを持ち寄り、社会課題を解決しようとするコレクティブ・インパクト事業が増えています。2020年度通常枠では、採択した20事業のうち8事業がコレクティブ・インパクト関連事業です。
 現在、多くの団体から特に、企業が持つリソース(資金、人材、製品・サービス、知財など)を活かした連携に期待の声が寄せられています。

非営利セクターと企業による連携が多様な価値を創出

非営利セクターと連携し、社会課題解決事業に企業が参画することは、企業にとっては以下のような多様な価値の創出にもつながります。

1.多様な組織が混じ合うことで社会課題の解決に有効な革新的事業の創出や関係者が協働するという  
 日本らしいSDGs貢献モデルの創出。
2.プロボノ・ボランティアの活動を通じて社員の社会課題への感度を高め、社会課題解決型事業モデ
 ルの創出に向けたヒントを得ることが出来る
3. ESG(環境・社会・ガバナンス)評価やインパクト投資等につながる可能性。


「休眠預金等活用制度」は、もともと国民の財産を活用しているため、制度に参画する団体には、ガバナンス・コンプライアンス面においても高い信頼性を求めています。他にも「休眠預金等交付金に関わる資金の活用に関する基本方針」に基づき、自己評価を基本とした社会的インパクト評価も実践してもらっています。
そのため、企業が「休眠預金活用事業」を利用して、様々なセクターと連携して社会課題解決型の新事業を始めるにあたり、安心して連携していただくことができ、また実効性・革新性の実証の機会も得ることにもつながります。

JANPIA事務局長 鈴木から休眠預金活用事業の概況等を説明
JANPIA事務局長 鈴木から休眠預金活用事業の概況等を説明

企業等との連携事例のご紹介

事例1 JCIE×住友商事「外国ルーツ青少年未来創造事業」における連携

資金分配団体であるJCIEと住友商事(株)の連携は、2020年9月よりスタートしました。
住友商事の社員の海外におけるビジネスや生活経験などを生かし、日本で暮らす外国にルーツを持つ青少年とその支援をするJCIEが選定した7つの実行団体に対し、本格的なプロボノを中心とした支援を行っています。
連携内容は、「外国ルーツ青少年らを支援する団体の組織・事業運営基盤の強化支援」や、団体が運営する日本語・教科学習教室での生徒への「学習支援のサポート」です。

JCIE毛受さん、青少年自立援助センター 田中さん
JCIE毛受さん、青少年自立援助センター 田中さん

■資金分配団体 JCIE 毛受さん

「企業人にとっては、外国ルーツ青少年の現場を知ることで多様性を理解し、外国人との共生を進めるという未来の日本社会を知るヒントを得ることになります。」

■実行団体 青少年自立援助センター 田中さん

「外国ルーツの青少年が増加している中、企業の方へは学習支援や就労支援、資金調達、運営基盤強化支援など、幅広いご支援を期待しています。」

■住友商事ご担当者

 「参加した社員の満足度が非常に高く、継続して支援したいとの声が多くなっています。支援先
 団体の社会課題解決に対する熱意に触れて、社員の仕事に対する意識にも変化が現れつつありま
 す。」

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事例2 全国食支援活動協力会×吉野家HD「こども食堂サポート機能設置事業」における連携

資金分配団体である「一般社団法人全国食支援活動協力会」の「こども食堂サポート機能設置事業」と「(株)吉野家ホールディングス」(以下、吉野家HD)が連携し、2020年9月よりスタートした事業です。
連携内容は、「こども食堂サポート機能設置事業」にて選定した「沖縄のこども食堂サポートセンター那覇」(事務局:那覇市社会福祉協議会)と吉野家HDが、子どもと地域をつなぐ居場所として開放されている「子どもの居場所」へ牛丼弁当を無償提供する支援活動です。
現在、吉野家HDとの連携は、この事業で採択された他の3つの実行団体をはじめ、「休眠預金活用事業」の対象となった多くの子ども食堂等への支援に拡大しつつあります。

全国食支援活動協力会 平野さん、那覇市社会福祉協議会 浦崎さん
全国食支援活動協力会 平野さん、那覇市社会福祉協議会 浦崎さん
吉野家さんから牛丼提供の様子や、子どもたちからのメッセージを紹介
吉野家さんから牛丼提供の様子や、子どもたちからのメッセージを紹介

■資金分配団体 全国食支援活動協力会 平野さん

「子ども食堂への食支援には関連するインフラの構築や食材の安定供給などが必要で、リソースや知見を持つ企業との連携は必須です。「こども食堂サポート機能設置事業」の成功に向け、JANPIAの仲介で吉野家HDさんとの繋がりができたことはたいへんありがたいことです。その他にも企業連携が進みつつある中、さらなる連携拡充に向けて活動していきたい。」

■実行団体 那覇市社会福祉協議会 浦崎さん

「活動を開始して7カ月間で延べ23居場所、810食の牛丼を提供できており、多くの子どもたちからお礼の声が届いています。また、吉野家さんからは、子どもたちが牛丼を食べる場面に立ち会えることで、社員の仕事に対するモチベーションが上がり、意識啓発の効果があるとの声をいただいています。沖縄のモデルをベースにして、吉野家さんはこの取り組みを福岡や大阪など全国へ広げています。」

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今後の連携促進に向けて

報告の後の意見交換では、「事例紹介いただいた団体と企業がマッチングした経緯は?」などのご質問に対し、JANPIA鈴木から、経団連1%クラブでのつながりを機会に活動に発展したことなどをご説明しました。
また、他企業からも、今後の連携予定についての参考情報もありました。

最後に、今後の連携への期待について経団連事務局とJANPIAから挨拶し、今回のイベントは終了しました。

■JANPIA鈴木

「休眠預金事業での評価の取り組みを紹介することで、社会的インパクト評価を事業の中に取り入れることや、コレクティブ・インパクトの流れで、NPO、助成財団と企業が連携し同じゴールを目指して社会的インパクト評価を行うことなども可能性としてあります。企業の中ではESG評価やインパクト投資などは重要なテーマだと思うので、ぜひ学びあいの機会をいただきたいと思います。」

■経団連事務局

「企業では社会的インパクト評価の関心が高くなっていると思うので、例えば企業に対して休眠預金活用事業での評価の取り組み報告や研修等を行うことも考えられます。
コロナ禍で、もともとあった社会課題が顕在化している中、今回ご紹介いただいた事例の他にも多くの活動が行われています。そういった活動に企業が協働することで社会課題解決の実効性が高まり、共通価値の創造や自社の商品・サービスの開発創出、社員の意識啓発等いろんな効果が出てくると思います。今後も、いろんな人たちと連携しながら対話の場を設けていきたいと考えます。」

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【本記事に関する問い合わせ先】JANPIA 企画広報部 info@janpia.or.jp

「コロナ禍であっても地域のつながりを途絶えさせないために、何かできないか」と考え、発案したキッチンカー事業。資金分配団体であるちばのWA地域づくり基金 『地域連携型アフターコロナ事業構築』で採択された「キッチンカーでGO!」事業を実施する「特定非営利活動法人ワーカーズコレクティブういず」理事長 北田恵子さんにお話を伺いました。

コロナ禍のしわ寄せが、弱い立場の人たちを直撃

特定非営利活動法人ワーカーズコレクティブういず(千葉県柏市)

2004年に協同組合形式で女性6人で立ち上あがった「特定非営利活動法人ワーカーズコレクティブういず(千葉県柏市)」は、これまで子育て支援事業や居場所づくり事業など地域からのニーズに合わせて、様々な事業を展開してきました。現在の事務所に移転したのは2008年。古民家風の素敵な一軒家を借りることができたおかげで、居場所づくり事業から助け合い事業に発展し、最近では自治体から生活総合支援事業実施の相談をいただくなど、活動は順調に拡大していました。

しかし2020年に入ってのコロナ禍。2020年3月から6月まで居場所は閉鎖となり、活動は事実上ストップせざるを得ない状況になりました。そして聞こえてきたのは、これまで居場所に来てくれていた人たちが苦しむ声――「高齢の利用者の要介護度が上がってしまった」「外に出られず、鬱状態だ」「常連のお子さんのネグレクトが疑われる」・・・。コロナ禍のしわ寄せが、弱い立場の人たちを直撃していました。

コロナ禍の中でも人のつながりを。「キッチンカーでGO!」が生まれるまで

そのような中、他の団体に教えてもらって休眠預金を活用した「新型コロナウイルス対応支援助成」を知りました。
「コロナ禍によって貧困や孤独が加速している状況の中、それを解消していくためには、やっぱり人だと考えました。助成を活用しながら、人が集まる居場所ではなくても、人とのつながりを保ちながら社会の分断を抑える‘居場所の機能’が展開できないかと考え始めたんです。」(北田さん)

そして人に集まってもらうのではなくて自らが外に飛び出していく「キッチンカー事業」の発想が生まれました。

お話を伺った北田恵子さん

そして人に集まってもらうのではなくて自らが外に飛び出していく「キッチンカー事業」の発想が生まれました。

「移動できるキッチンカーを多目的に活用することで、こども食堂やあおぞらカフェを開催できます。地域の皆さまにご利用いただけるし、キッチンカーによってスタッフにも活躍の場を提供することができます。そして、なによりキッチンカーを購入するってワクワクしませんか?コロナ禍で社会全体が落ち込んでいる中、そのようなみんなでワクワクできることが、大切だと思ったんです。」(北田さん)

その後、「キッチンカーでGO!〜どこでもこども食堂&暮らしのサポート〜」という計画を資金分配団体であるちばのWA地域づくり基金 『地域連携型アフターコロナ事業構築』に申請し、2020年9月に採択されました。

キッチンカーをきっかけに、地域に必要なサポートを届けたい

採択後、諸手続きを経てキッチンカーを購入し11月13日には念願の事業がスタート。当面は2か所に拠点を絞って「あおぞらカフェ」や「子ども食堂」を実施しています。柏市の子供福祉課とも連携し、地域のひとり親世帯に実施日をメールで連絡してもらうことで、参加者にも広がりが出ています。

また地域包括との連携で、介護度の高い方や単身高齢者世帯にランチの無料配達も実施中です。最近では、「子ども食堂を支援したい」と近所の農家さんなどから野菜の寄付も受けています。キッチンカーが街を走ることで取り組みの認知度向上にもつながっているとのことです。 しかし北田さんたちの思いは、キッチンカーでの食事提供にとどまりません。
キッチンカーの様子

また地域包括との連携で、介護度の高い方や単身高齢者世帯にランチの無料配達も実施中です。最近では、「子ども食堂を支援したい」と近所の農家さんなどから野菜の寄付も受けています。キッチンカーが街を走ることで取り組みの認知度向上にもつながっているとのことです。 しかし北田さんたちの思いは、キッチンカーでの食事提供にとどまりません。

「キッチンカーで華やかに見えるのは、食事作りや食事の提供です。もちろんそれは大切なことですが、私たちが本当にやりたいことは、キッチンカーをきっかけにして地域のお困りごとを聞き、地域に必要なサポートをお届けしていく仕組みづくりです。そのために利用者にアンケートにもご協力いただいています。 小さな活動ではありますが、キッチンカーを核とした活動を継続していくことで地域に連携を生み、地域のみんなが輝く場・みんなが集まることで他の人も輝ける場をお互いに作りあっていけるのではないかと考えています。そして孤立・孤独によって生まれる地域課題に素早く気づき、解決につなげられるようにしていきたいです。」(北田さん)
お一人お一人に温かいお弁当を手渡し

「キッチンカーで華やかに見えるのは、食事作りや食事の提供です。もちろんそれは大切なことですが、私たちが本当にやりたいことは、キッチンカーをきっかけにして地域のお困りごとを聞き、地域に必要なサポートをお届けしていく仕組みづくりです。そのために利用者にアンケートにもご協力いただいています。 小さな活動ではありますが、キッチンカーを核とした活動を継続していくことで地域に連携を生み、地域のみんなが輝く場・みんなが集まることで他の人も輝ける場をお互いに作りあっていけるのではないかと考えています。そして孤立・孤独によって生まれる地域課題に素早く気づき、解決につなげられるようにしていきたいです。」(北田さん)

スタッフの皆さん


■休眠預金活用事業に参画しての感想は?

これまで色々な助成を活用して活動してきましたが、休眠預金活用事業のように団体の運営費(家賃や人件費など)まで経費が下りる助成は初めてで、大変ありがたかったです。(北田さん)




■資金分配団体POからのメッセージ

休眠預金等活用事業ならではの大規模な助成を活用してキッチンカーを投入したことでインパクトのある活動が実践できています。ういずさんが拠点を2か所に絞って、じっくりと地域の方と向き合い、関係を築き継続・定着できてきており、担い手のみなさんも生き生きと活動しており、本事業がもたらす効果を実感しています。(公益財団法人 ちばのWA地域づくり基金)

【事業基礎情報】

実行団体
特定非営利活動法人ワーカーズコレクティブういず(千葉県柏市)
事業名
キッチンカーでGO!〜どこでもこども食堂&暮らしのサポート〜
活動対象地域千葉県柏市
資金分配団体公益財団法人 ちばのWA地域づくり基金
採択助成事業

『地域連携型アフターコロナ事業構築』(対象地域:千葉県)

〈2020年新型コロナウイルス対応緊急支援助成〉