メディア向け報告会「能登半島地震支援団体、地元団体からの緊急発信:被災者支援と復興への道筋」を開催しました

1月15日、一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)は「能登半島地震支援団体、地元団体からの緊急発信:被災者支援と復興への道筋」と題して、メディア向け報告会を開催いたしました。昨年末より、JANPIAでは同日に別テーマでの「メディア懇談会」を開催する予定で準備を進めていました。そのような中、元日に起きた令和6年能登半島地震を受けて、急遽テーマを変更して開催したものです。その内容の一部を紹介いたします。 なお、本報告会では、評論家でラジオパーソナリティーでもある荻上チキさんが進行を務めました。”

「能登半島地震における被災者支援と復興への道筋」

【登壇者】
・認定NPO法人ジャパン・プラットフォーム 地域事業部部長 藤原 航 さん
・NPO法人ワンファミリー仙台 理事長 立岡 学 さん
・NPO法人YNF 代表理事 江﨑 太郎 さん

資金分配団体であるジャパン・プラットフォーム(JPF)の実行団体であるワンファミリー仙台とコンソーシアムを組むYNFは、「防災・減災に取り組む民間団体等への災害ケースマネジメントノウハウ移転事業 (2020年度通常枠)」のなかで、2023年5月に起きた奥能登地震による被災者の生活再建支援を進めるため、1月4日から石川県珠洲市に向かう予定でした。しかし、令和6年度能登半島地震発災を受けて急遽、珠洲市での緊急支援に入りました。

今回のメディア向け報告会では、JPFとワンファミリー仙台、YNFの3団体にそれぞれの立場から「能登半島地震支援団体、地元団体からの緊急発信:被災者支援と復興への道筋」をテーマお話いただきました。

甚大・頻発化する国内災害。行政と民間の力が必要

報告会では、まずJPFの藤原さんから、国内災害が年々甚大化・広域化し、地震や豪雨など含めて頻発化しているなか、もはや行政の支援だけでは間に合わず、民間と行政と両方の力が必要になっているという状況について説明がありました。

「災害が頻発している一方で、防災や減災のソフト面の整備には、なかなかお金がつきにくいのが現状です。2020年度通常枠で採択された3年間の休眠預金活用事業によって、私たちは念願だった防災・減災に取り組むことができました。具体的には、避難所の運営ノウハウや被災者の個別支援、生活再建の方法、発災時の物流や在留外国人支援などに対して、災害リスクの高い地域での民間支援団体や自治体とともに体制の整備を進めてきたところです。能登半島地震でも残念ながらこうした課題が出ています」(藤原さん)

現在、JPFでは能登半島地震の被災者支援にあたって休眠預金や民間資金なども使いながら、「人命救助」「二次被害防止(物資やQOLの維持)」、「生活再建事業」の3つに取り組んでいます。そのなかで、いま必要とされている緊急的な支援を行いながらも、なるべく早くに長期的な支援を見据えた「生活再建事業」に着手することが重要になると藤原さんは訴えました。JPFは、実行団体であるワンファミリー仙台やYNFを通じて、被災者一人ひとりの状況に寄り添った支援を行う「災害ケースマネジメント」の被災地での適用を進めているところです。

「昨年7月に秋田で起きた豪雨災害でも、いまだに家屋が修繕できていない状況で暮らしている人たちがいます。能登半島地震でも、今後、被災地の報道がされなくなったあとに取り残されてしまう人たちが出てくることが懸念されます。そうならないように支援に取り組んでいきたいと思っています」(藤原さん)

JPF 藤原航氏
JPF 藤原航氏

「災害ケースマネジメント」で生活再建を支える

 ワンファミリー仙台の立岡さんからは、東日本大震災のときに被災者の仮設住宅への入居から転居までの長期にわたる支援に関わってきた経験から、能登半島地震の被災者の方々にとって必要になってくるのは「この先の見通し」であるというお話がありました。

「いま国でも進められている『災害ケースマネジメント』は、被災者一人ひとりの状況をしっかり把握して、その人に寄り添った生活再建を支えていく考え方です。能登半島地震はまだ緊急支援のフェーズではありますが、これから被災者が仮設住宅などに移っていく段階において、見守りや相談支援のセンター機能をつくり、きちんとした支援体制を構築していく必要があります」と立岡さん。

その際に厚労省の「被災者見守り・相談支援事業」を能登半島地震でバージョンアップしながら生かすことができるのではないかという提案もありました。

「被災地域では高齢化が進んでいるため、今回の避難によって人口減少がさらに進むのではないかという不安を抱えながら行政職員は支援にあたっている状況です。地域から人口を流出させない、街をなくさないという発想のもと、自力で広域避難している人たちへの自治体からの情報発信などのアプローチなども施策にしっかり入れていく必要があるだろうと思っています」

報告のなかで立岡さんは、これまでの災害から得た知見を活かし、「この先どうしたらいいのか」という不安を抱えている被災者への丁寧な情報発信や、避難所での生活を含めた被災者の状況把握、共通アセスメントシートによるデータの蓄積、行政部局を横断した連携など、生活再建までのきめ細やかな支援体制を整える必要性を強調しました。

NPO法人ワンファミリー仙台 立岡学氏
NPO法人ワンファミリー仙台 立岡学氏

関心が薄れていかないようメディアの力を

最後に、石川県珠洲市内で連日支援にあたっているYNFの江崎さんからは、現状についての報告をいただきました。

「いま感じている大きな課題は、断水や道路の寸断、雪などが原因となった生活環境の悪さです。避難所での食事の質も低く、冷たい床の上で高齢者が寝ている光景は珠洲市では珍しくありません。また、、南から北へ向かうルートしかない地理的状況ですべての道路が被災しており、『陸の孤島』での支援の難しさを痛感しているところです」

1月3日に珠洲市に入った江崎さんは、住民や役所の方たちが「これは長期戦になる」と口にしていたことが印象的だったと話します。その一方で、近年の災害では中長期的な支援が十分に行われてこなかったことを指摘。

「私たちの団体では、珠洲市で能登半島地震の支援をしながら、いまも福岡県久留米市で昨年7月に発生した豪雨災害の被災者対応を続けています。各地で災害が頻発していますが、官も民も支援体制がまだまだ足りていません。そうしたなか、休眠預金活用事業で、この3年間にわたって『防災・減災に取り組む民間団体等への災害ケースマネジメントノウハウ移転事業』を続けてきたおかげで、今回の能登半島地震では支援の初動がスムーズにできたと感じています」(江崎さん)

能登半島地震では一般のボランティアがなかなか入りにくい状況が続いていますが、江崎さんは「全国からの関心が過疎化を防ぐ一助にもなる。本格的にボランティアが入れるのは暖かくなる春以降ではないかと思いますが、それまでに皆さんの関心が薄れてしまうことを恐れています。どうぞ、そういったところでもメディアの皆様の力を貸していただきたい」と話し、報告を締めくくりました。

NPO法人YNF 江﨑太郎氏
NPO法人YNF 江﨑太郎氏

「令和6年能登半島地震 災害支援基金の立ち上げについて」

【登壇者】
・公益財団法人 ほくりくみらい基金(石川県) 代表理事 永井 三岐子 さん

ほくりくみらい基金は、全国コミュニティ財団協会(CFJ)が実施する休眠預金活用事業2021年度通常枠助成「地域の資金循環とそれを担う組織・若手支援者を生み出す人材育成事業」で採択され、石川県初のコミュニティ財団として2023年4月に設立された団体です。代表理事の永井さんから被災地や基金の現状、今後の支援についてお話をいただきました。

公益財団法人 ほくりくみらい基金 永井三岐子氏
公益財団法人 ほくりくみらい基金 永井三岐子氏

発災後、すぐに立ち上げた「災害支援基金」

2023年4月に設立された石川県初のコミュニティ財団「ほくりくみらい基金」ですが、設立後すぐに奥能登地震が起こり、その際にはボランティアのマッチングなど人と人をつなぐ支援を行いました。さらに設立から1年も経たない2024年の元日に起きたのが能登半島地震でした。

「理事メンバーのひとりが奥能登に住んでいることもあり、急いで安否確認をするとともに、周辺情報の収集を始めました。1月2日にはCFJと緊急会議を開き、被災地で支援活動を行うNPO等の団体を応援するための基災害支援基金を立ち上げました」と永井さん。

災害支援資金の呼びかけに対して、クラウドファンディングを通じて9日間で1000万円以上が集まり、1月12日には第1次緊急助成プログラムとして総額200万円の公募を開始。1月15日時点で8団体への助成が確定しました(※現在は第3次緊急助成プログラム募集が終了)。

「通常の助成では審査にある程度の時間をかけますが、今回は緊急のためスマホからも申請でき、審査をスピーディにして、申告者負担を減らすことを意識しました。申請から24時間で審査をして、各団体に最短3日で資金を届けています」

今回、ほくりくみらい基金が助成した各団体では、被災者への食事提供、炊き出し、ペット猫・地域猫の捕獲と保護、避難高校生の学習支援、被災地での子ども預かりと専門家による育児支援など、さまざまな支援活動を行っています。

「設立から間もない私たちが、震災から2週間ほどでこうした活動を実現できたのは、休眠預金活用事業の資金分配団体であるCFJや、その実行団体である各地のコミュニティ財団との連携があったからです」

中長期支援で市民団体と地域の未来をつくる

今回、地震によって被災したのが農林水産業や輪島塗といった、生業と生活が強く結びついた方が多い地域であることから、「避難によって自分の街を離れたら『もう戻ってこられないのではないか』という住民の不安や恐怖は大きい。そのなかで避難をお願いする行政側のつらさも非常に感じています」と永井さん。

今後に向けては、やはり「中長期の支援」の必要性を挙げていました。

「災害支援基金によって立ち上がった緊急支援は、被災者の『今』を助けるものですが、今後は私たちが助成・支援する市民団体のアンテナを通じて、どの地域がどんなフェーズにあるのかを的確に把握して支援していく必要があります。そして、今回支援に立ち上がった市民団体を支援・育成しながら支援ネットワークを構築し、一緒にこれからの地域の未来をつくっていくことが必要だろうと思っています」

休眠預金活用事業での能登半島地震への支援

今回の報告会では、いまだ緊急的な支援が必要な能登半島地震の被災地での現状とともに、今後の生活再建や地域復興を見据えた中長期的な支援体制を構築することの大切さや、継続的なメディア報道による支援の必要性が伝えられました。

JANPIAでは、2023年度「原油価格・物価高騰、子育て及び新型コロナ対応支援」の第5次募集において、能登半島地震の影響によって深刻化、顕在化した社会課題への緊急的な支援などを対象とした事業を採択しました。また、来年度以降は、通常枠において、生活再建や地域復興にむけた支援に関する資金分配団体などの申請を是非お待ちしております。

当日の様子

会場の様子
会場の様子

なお、今回の報告会では、登壇者の皆様に加え、メディア論をはじめ、政治経済やサブカルチャーまで幅広い分野で活躍する評論家で、ラジオパーソナリティーも務める荻上チキさんにもご協力いただきました。この場を借りてお礼申し上げます。

進行役を務めた荻上チキさん
進行役を務めた荻上チキさん

【事業基礎情報①】

実行団体

特定非営利活動法人ワンファミリー仙台

コンソーシアム構成団体
・特定非営利活動法人YNF

事業名

災害ケースマネジメントによる被災者支援事業

活動対象地域石川県、和歌山県、三重県、福岡県、秋田県
資金分配団体特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム
採択助成事業

災害ケースマネジメントによる被災者支援事業

2020年度通常枠〉(災害支援事業)

【事業基礎情報②】

実行団体

公益財団法人ほくりくみらい基金

事業名

当事者のエンパワーメントとコレクティブインパクトで作る課題解決モデル事業

活動対象地域石川県
資金分配団体一般社団法人 全国コミュニティ財団協会
採択助成事業

地域の資金循環とそれを担う組織・若手支援者を生み出す人材育成事業

2021年度通常枠〉(草の根活動支援事業

『誰ひとり取り残さないために災害時に向けて平時からできること ~ネットワーキングの重要性を考える~[2022年10月26日開催]』の様子をお届けします。

活動概要

「課題・テーマ別ラウンドテーブル」の第2弾を開催。テーマは『災害対応』です。

大小様々な自然災害(地震、豪雨、豪雪等)が多発する昨今、休眠預金活用事業が対象とするあらゆる領域において平常時からの災害への備えが重要という認識が広まりつつあります。

休眠預金活用事業のプラットフォームにおいて、日頃からどのような連携ができるのか…。どのようなネットワーキングをすれば、万が一の発災の際に慌てることなく目の前の社会課題解決に取り組むことができるのか…。『誰ひとり取り残さないため』に平時からできることを、“災害”に特化した団体ではない皆様と考える場とし、意見交換を行い、発災時にすみやかに、そして円滑に機能するネットワークづくりについて皆さまと議論・共有しました。

※本イベントではご要望をいただき、「手話同時通訳」を試験的に実施しました。一部動画がうまく反映できていない部分もありますがご了承ください。

221026開催‗災害対応ラウンドテーブル‗当日のご意見紹介.pdf[外部リンク]

活動スナップ

登壇者のご紹介

左上より​  大阪公立大学 大学院文学研究科 人間行動学専攻 准教授 菅野拓さん​  特定非営利活動法人 エティック  山内幸治さん​  公益財団法人 地域創造基金さなぶり 副理事長  白川由利枝さん​  特定非営利活動法人 岡山 NPO センター 代表理事  石原達也さん​  特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム 瀧田真理さん​ ※JANPIAとして初めて、手話同時通訳を導入いたしました! ​
左上より​  大阪公立大学 大学院文学研究科 人間行動学専攻 准教授 菅野拓さん​  特定非営利活動法人 エティック  山内幸治さん​  公益財団法人 地域創造基金さなぶり 副理事長  白川由利枝さん​  特定非営利活動法人 岡山 NPO センター 代表理事  石原達也さん​  特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム 瀧田真理さん​ ※JANPIAとして初めて、手話同時通訳を導入いたしました! ​

【第1部】 平時のネットワーキングに取り組む皆様からお話を聞く!

第1部は災害支援の現場の実践を通じた学びや、既にネットワーク形成に取り組んでおられる皆様から事例のご紹介いただきました。

【第2部】 平時からの様々な関係者との連携について考える

第2部は、平時からのネットワーキングや活動の担い手の確保、様々な関係者の巻き込みや、企業との連携、休眠預金活用事業にかかわっている皆様で連携することでできることはないか?、等の視点で皆様と議論を深めました。

台風、地震、豪雨、洪水、土砂災害……日本はその立地や地形、気象などの条件から、災害が発生しやすい国土と言われています。いつどこで起きるかわからない災害に備えて活動されているのが、資金分配団体(2019年度通常枠)である「全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)」と、その3つの実行団体である「北の国災害サポートチーム」「いわて連携復興センター」「岡山NPOセンター」です。4団体が目標として掲げている共通のキーワードが「ネットワークの構築」。4団体への取材から、災害時に地域内外の団体が連携するためには、平時から組織を超えたつながりが大事だということが見えてきました。

災害時に求められる「ネットワーク」とは?

そもそも災害時に「ネットワーク」の形成が求められるようになった背景について、 特定非営利活動法人(NPO法人)全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)のプログラム・オフィサー(PO)である鈴木さんにお話を伺いました。

国内で大きな災害が発生したとき、支援の仕組みはまだまだ確立できていない現状があります。その現状があらわになったのが、2011年の東日本大震災でした。

一口に「民間の支援組織団体」と言っても、普段の活動領域も活動テーマもさまざま。東日本大震災では多様な団体が現場に入ったものの、それらの団体をどこが受け入れて調整するのか明確に決まっておらず、現場で混乱が発生したのです。

そうなると、どこでどのような支援が入っているのかわからず、支援を行う関係者間でも連携を取ることも難しくなりました。このように、災害支援に入る団体は多くあってもその連携が取れていないと、広範囲での効率的な支援が難しくなってしまいます。

そこで立ち上げられたのが、JVOADです。東日本大震災での経験を踏まえて、支援の調整ができる環境を整えた仕組みづくりを目指し、各都道府県での災害支援のネットワーク構築を目指しています。

この「ネットワーク」にはさまざまな関係の構築が必要とされますが、JVOADが特に重視しているのが、主に制度による支援を行う「行政」、災害ボランティアセンターを中心的に運営する「社会福祉協議会」、NPOや企業などが含まれる「民間の支援団体」による「三者連携」です。

JVOADは全国域でこの体制づくりを試みながら、同時に都道府県域でも三者の連携を目指しています。今回ご紹介する実行団体「北の国災害サポートチーム」、「いわて連携復興センター」、「岡山NPOセンター」はそういった都道府県の災害時の中間支援を担う団体として、三者連携をベースに支援関係者同士のネットワーク構築を目指して奔走しているのです。

ここからは、それぞれのエリアの特徴を踏まえてネットワークを構築する3団体と、その3団体のパートナーとして伴走するJVOADについてご紹介します。

北の国災害サポートチーム(きたサポ)

上段左から、北の国災害サポートチームの定森さん、本田さん、下段 篠原さん

北海道における災害中間支援組織、北の国災害サポートチーム(以下、きたサポ)の代表を務める篠原さんと、チームメンバーの本田さん、定森さんにお話を伺いました。

179の市町村があり、小規模自治体が多い北海道。交通網が止まったら外部から救援できなくなる土地柄に対して、NPOが蓄積しているノウハウにもばらつきがあり、災害時にどのようにして組織的支援を送るのかが課題になっていました。

2016年8月、台風第10号による災害が北海道で発生。NPOの中長期支援が動きづらい事態が発生し、これを契機に、全道各地で災害時にNPOが担うべき役割についての意見交換会が実施されました。

道内にNPOのネットワークが少しずつ生まれてきた矢先に、2018年9月、北海道胆振(いぶり)東部地震が発生。しかし2016年から積み重ねてきた活動により、胆振東部地震ではNPO間の連携が可能になりました。このような動きのなかで、これまで取り組んできたことを整理して「北の国災害サポートチーム」を組織したのです。

きたサポは、全道各地にあるNPOの中間支援センターも加盟しています。各エリアの中間支援センターは、エリア内で災害時に連携を取りやすいように行政やNPOと関係を構築しながら、きたサポで道内のネットワーク構築を進める仕組みです。

きたサポが、休眠預金活用事業で、北海道内で災害のリスクが高いと言われる釧路と有珠山周辺地域の2箇所でのネットワーク構築を重点的に行ってきました。意見交換会を開催したり周辺地域の団体と連携を図ったりと、重点地域を絞ったことで休眠預金を活用してきた成果が見られています。

全道域の多様な災害支援の関係者と連携した北海道フォーラムや、企業の協力による技術系研修会なども精力的に開催。

幹事団体がそれぞれ本業を持ち、複数の団体で事務局を組織しているきたサポのスタンスは、それぞれの団体が自主的に考えて動くこと。

どこで災害が起きても、交通網が遮断されればエリアを超えた支援が難しくなる可能性が高い土地柄を踏まえて、「きたサポの活動を通じて培ってきたことを各自で活かす。それでいいと思っています」。

そんな自主性を重視する姿勢は着実に広まり、重点地域である釧路と有珠山での災害シミュレーションに参加した別のエリアの中間支援センターが、自分たちのエリアでもシミュレーションを実施するなど、自発的な取り組みが道内各地に派生していくケースも増えています。

「休眠預金活用事業で手応えを感じているのは、胆振東部地震の記録をまとめたことです(きたサポ報告書「平成30年北海道胆振東部地震 情報共有会議の記録(A4版)」)。完成して嬉しかったですし、今後の活動に展開できる大切なものを作れたと思っています」

きたサポが窓口機能を担うことで、きたサポがなければ蓄積されていなかった情報と関係性がストックされてきた活動3年目。これからも北海道内で被災者支援の拡大ができる仕組みづくりや文化を根付かせるために、活動を続けていきます。

いわて連携復興センター

特定非営利活動法人いわて連携復興センターの瀬川さんと千葉さんには、同センターが事務局を担っている『いわてNPO災害支援ネットワーク(INDS)』の活動についてお話を伺いました。

左からINDSの千葉さん、瀬川さん

いわてNPO災害支援ネットワーク(以下、INDS)が立ち上がったのは、2016年9月。前月に台風
10号が発生し、東日本大震災からの復興途中であった岩手県に大きな傷跡が残されました。

災害支援において、連携と協働の必要性が浮き彫りになった東日本大震災。台風10号の際も、被害が大きかった岩泉町・久慈市・宮古市で災害ボランティアセンターが設置されて熱心な復旧作業が行われたものの、なかなか連携協働まで至らなかったと言います。

「実際はそこまで現場で混乱が生じたわけではないのですが、もっと情報連携できたら役場への問い合わせが一本化されたり、それぞれのNPO団体の得意分野が発揮できる支援をお願いできたりと、より効率的・効果的な支援をできたのではないかなと考えました。広範囲の岩手県をカバーする上で、調整し合うことが重要だと思います」

このような背景から「オール岩手」での取り組みを目指して立ち上げられたのが、いわてNPO災害ネットワークです。県内のさまざまなNPOによって構成され、JVOADと一緒に広域のコーディネートに動くこともあれば現場で泥出しの対応に入ることもあり、被災地に応じた支援に取り組んでいます。

休眠預金活用事業に応募したのは、より安定的な活動を展開する基盤づくりのため。岩手県の広域をカバーしながら県と県の社会福祉協議会と関係構築を進める上で、休眠預金活用事業が単年度ではなく長期的であることがメリットになっていると言います。

「支援活動のための関係構築には、日常のコミュニケーションがすごく重要になってきます。休眠預金活用事業が単年ではなく3年間だからこそ、年度を超えて長期的に会議を設定できたり計画的に研修を実施できたりするのはありがたいですね」

一言に「関係構築」といえど、行政の担当者には異動があり、コロナ禍で直接顔を合わせる機会が格段に減ってしまったため、この取り組みは容易ではありません。それでも県内でINDSの名前が知られるようになったりINDSと連携できる人が増えたりと、着実に変化が見られています。

「JVOADの伴走支援があることで、県内だけでなく県外での災害対応にも参加するようになりました。そこで最新の支援方法を知れたり県外の方々とつながれたりして、岩手に持ち帰れるものがあります。防災には終わりがないので、少しずつ仲間を増やしながら、見える成果を出していきたいです」

岡山NPOセンター

岡山NPOセンターが事務局を担っている『災害支援ネットワークおかやま』の活動について、同法人の詩叶(しかなえ)さんに伺いました。

岡山NPOセンターが掲げるのは「自然治癒力の高いまち」。問題が発生したら協働して解決していける。足りないところを補い合って、問題自体の発生を無くせるような「自然治癒力」を高めることが目標です。

そのため、岡山NPOセンターはNPOだけに限らず、セクターを越えて課題解決や価値創造の取組が生まれ、続いていくようにファシリテートしています。そのなかで2018年に立ち上げたのが「災害支援ネットワークおかやま」です。

2018年7月、「西日本豪雨」と呼ばれる広域に及ぶ被害をもたらした災害が発生しました。岡山NPOセンターは、発災した翌日には岡山県社会福祉協議会、岡山県と話し合い「災害支援ネットワークおかやま」を立ち上げ。ここまで迅速に動けたのは、岡山NPOセンターが平時から、行政、関係支援機関、民間団体、企業と協働で事業を通じて築き上げてきた関係性があったからです。

三者連携が進んできたとはいえ、組織文化か進め方も異なるためにまだまだ難しい行政機関と民間との災害支援に関する連携。災害支援ネットワークおかやまは平時の備えからの関係性の構築や継続を目指しています。

詩叶さんが理想的な関係を築けているケースのひとつとして挙げたのが、倉敷市一般廃棄物対策課との協働です。倉敷市の災害廃棄物の対策マニュアルの作成に参加して、訓練にも参加しましています。このようなマニュアル作成にNPOが参加したのは全国で初めてのケースだと言います。

「このような関係をどの市町村とも築けると、いつどのように発災しても、私たちから団体や企業をつなげますし、市町村も支援を受け入れられるんですよね。災害を平時の地域づくりから切り離さずに、常に地域を多面的に接続していくことが重要だと思います」

詩叶さんは休眠預金活用に参加してよかったことのひとつとして、通常の補助金では予算がつかないところにも予算をつけられる点を挙げられました。

「例えば水害時の復旧ロードマップは、デザイナーと編集者がいるからこそ、被災された住民の方に見て理解してもらえるものが完成しました。通常の助成金だと、そのように災害にデザインを持ち込むことが予算として認められないんですよね。でも休眠預金活用事業では予算として活用させていただけるので、その柔軟さがありがたいです」

左が岡山NPOセンターに伴走するJVOADの鈴木さん、右が岡山NPOセンターの詩叶さん。災害支援ネットワークおかやまが作成した「復旧ロードマップ」とともに。

普段からさまざまな部会をつくって話し合いをし、コミュニケーションを通じてアウトプットを決めている災害支援ネットワークおかやま。西日本豪雨の経験だけでなく、全国の災害中間支援組織とも連携しながら、常にアップデートした災害対応を県内外に伝えています。

全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)

左上がJVOADの明城さん、右上が小竹さん、左下が鈴木さん、右下が古越さん

ここまでご紹介してきた3団体の資金分配団体でありパートナーとして伴走を続けるのが、全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)です。JVOADの鈴木さん、明城さん、小竹(しの)さん、古越さんにお話を伺いました。

JVOADは「行政」、「社会福祉協議会」、「民間の支援団体」のによる災害支援のネットワーク構築のモデル化を目指しながら、全国域の災害中間支援組織と連携して情報共有を図っています。

「災害の文脈で『中間支援組織』について行政から語られるようになったのは、2018年の西日本豪雨の頃からです。それでも『中間支援組織』とは何なのか、どこまで何をやるのか定義されていないため、手探りで進めています。各地の災害に関する中間支援組織が目指すイメージもさまざまなので、まずは休眠預金を活用されている3道県と一緒に、目指すあり方を積み上げているところです」

JVOADは全国域の災害中間支援組織であり、先の3団体は県域の災害中間支援組織であるため、対応する範囲は違えど、同じ課題意識を持っているパートナー。

3団体が休眠預金活用事業を終えるのは、2023年3月。残り半年の活動期間で、3団体が積み重ねてきた活動を可視化したいと考えています。

「モデルとなる中核的災害支援ネットワークを確立し、三者連携の必要な要素を可視化することを休眠預金活用事業では目指しているので、3団体の皆さんが取り組んでこられたことをまとめていきたいと思います。災害中間支援組織の活動内容をできるだけわかりやすく伝えることで、この活動を他の地域へも展開したいと思っていただけるように橋渡ししたいです」

ゆくゆくは、全国47都道府県に災害中間支援組織がある状態を目指しているJVOAD。各地域で始まっている動きをサポートできるよう取り組んでいきたいです。

取材・執筆:菊池百合子

【事業基礎情報】

資金分配団体 特定非営利活動法人 全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)
助成事業中核的災害支援ネットワーク構築
〜大規模災害に備え、ネットワーキングから始まる地域の支援力強化〜
〈2019年度通常枠〉
活動対象地域全国
実行団体★北の国災害サポートチーム
 「広域・分散型 災害支援ネットワーク構築事業」

★特定非営利活動法人いわて連携復興センター
 「岩手県内の支援体制構築と支援者の育成・創出事業」

★特定非営利活動法人岡山NPOセンター
 「岡山県内市町村との連携体制と災害時支援スキームの確立事業」

2019年、台風による水害に遭った福島県いわき市。地域を形づくっていたはずのコミュニティは一気に薄まっていました。「コロナ禍の前から、この地域はずっと自粛状態だったんです」と語られるとおり、失われた日常は未だに戻ってきていません。そのような状況で、コミュニティサロンの活動を通じて地域をつなぎ直すハブとなっているのが一般社団法人Teco(てこ)です。資金分配団体である一般社団法人RCFの採択事業として、水害を機にサロン活動を始め、場づくりから地域の新たな可能性を生み出しています。そんなTecoを動かす原動力は、どこにあるのでしょうか。※この記事には2019年の台風19号によっていわき市内で発生した水害の写真が含まれています。”

水害で求められる長期的なサポート

今回ご紹介する一般社団法人Teco(以下「Teco」)は、福島県いわき市で活動を始めました。市内には、原発事故で被災した人々が暮らす復興公営住宅が16箇所あります。

Tecoを設立した3人は、設立以前はNPOに在籍し、復興支援住宅でのコミュニティ支援に携わっていました。新たに一般社団法人を立ち上げた理由を、Tecoの代表理事である小沼満貴(おぬま まき)さんはこのように話します。 「NPOだからできる活動もたくさんあったのですが、私たちはもう少し小さい規模で、何かあったらすぐに動けるチームでありたいなと思ったんです」
▲ Tecoのサロン活動に関わるメンバー。左から2人目が、今回取材に答えてくださった小沼さん

Tecoを設立した3人は、設立以前はNPOに在籍し、復興支援住宅でのコミュニティ支援に携わっていました。新たに一般社団法人を立ち上げた理由を、Tecoの代表理事である小沼満貴(おぬま まき)さんはこのように話します。

「NPOだからできる活動もたくさんあったのですが、私たちはもう少し小さい規模で、何かあったらすぐに動けるチームでありたいなと思ったんです」

そうして2019年5月、一般社団法人Tecoが誕生。しかし立ち上げから5ヶ月経った10月、いわき市を台風19号が襲います。市内を流れる夏井川が氾濫し、約7,000世帯が罹災しました。

このとき、市内でも特に被害状況がひどかったのが「平窪地区」です。住宅の1階部分に川から氾濫した泥水が流れ込み、日常が一瞬して奪われました。

▲ 水害時の平窪地区

事務所を平窪地区に設置していたことがきっかけで、Tecoも平窪地区で活動することを決めます。

「災害直後に求められる浸水した家の片付けや泥のかき出しも、すごく重要な役割です。ただ、私たちは避難を余儀なくされている方々に寄り添うことや、地域で失われてしまったコミュニティを再構築することなどの長期的な支援も欠かせないと感じています。

行政の目が行き届かなくて支援が必要な方が取りこぼされたり、生活がガラッと変わって高齢の方に精神症状が現れたり。これまで復興公営住宅で見てきた事態は、平窪地区でも今後おこりうると考えました」

こうしてTecoは、復興公営住宅での自分たちの経験を活かした支援を始めたのです。

言えなかった「助けて」を言える場をつくる

水害の直後、生活の再建が最優先で求められていた平窪地区は、どのような状況だったのでしょうか。

「家の1階が水没していても、2階で生活する在宅避難の方が多くいらっしゃいます。外に出てみれば、庭も公園もゴミの山。子どもを外で遊ばせられない状況で、2階で家族みんなで暮らすのは相当ストレスが大きいはずです。 それに、車が水没しているので、買い物や病院に行きたくても行く術がない。炊き出しや物資配布がいつどこで実施されているのか、情報が入ってこないまま暮らしている方も多かったですね」
▲ 水害後、公園や道路脇には使えなくなった家財道具が集められた

「家の1階が水没していても、2階で生活する在宅避難の方が多くいらっしゃいます。外に出てみれば、庭も公園もゴミの山。子どもを外で遊ばせられない状況で、2階で家族みんなで暮らすのは相当ストレスが大きいはずです。 それに、車が水没しているので、買い物や病院に行きたくても行く術がない。炊き出しや物資配布がいつどこで実施されているのか、情報が入ってこないまま暮らしている方も多かったですね」

水害前の日常に戻りたくても、戻れない──そんな平窪地区で始まった支援物資配布とサロン活動にTecoも加わり、被災した方への対応を始めました。

「みなさん憔悴しきっていましたから、ほっとする時間を持てたらいいなと思ったんです。そこでまずは、いつでも誰でも、何の用事がなくても立ち寄れる場所を設けました。先が見えなくて不安でいっぱいの毎日で、一瞬でも笑顔になれたりほっとできたりする場が必要なんだな、と強く実感しましたね」

行政だと困りごとの内容によって対応できる部署が分かれているため、何をどこで相談すればいいのかわからない人もいたようです。だからこそ、Tecoでは不安な気持ちの受け皿になるために、「悩みごとがあったらぜんぶ言ってくださいね」と声をかけるようにしていました。

「水害のように地域全体が大変な目に遭ったとき、『弱音を吐いてはいけない』『みんな頑張ってるんだから』と気を張る方が多いように思います。そういうときに『助けて』と言える関係性になるためにも、些細なことを話して、面と向かって心を通わせる。人と人が触れ合う時間が重要なんだな、と気づかされました」

コロナ禍でも、人と人がつながることを守るために

いつ行っても、誰かがいる場所をつくりたい。不定期のサロン活動を経て、Tecoは定期的なサロン活動を模索していきます。その過程で知ったのが、休眠預金活用事業でした。

「一時的にイベントを開催することもひとつの方法ですが、私たちのサロン活動の場合、続けることが重要だと思いました。ですから長期的に活動を持続できる仕組みを求めていたんです」

こうしてTecoは、資金分配団体である一般社団法人RCFに2019年度の休眠預金の活用を申請します。その後審査を経て採択され、2020年2月に「コミュニティ創出と健康支援の継続的な仕組みの構築」事業をスタートしました。

「朝9時から夕方4時まで毎日サロンを開いていました。1日で50人程度、多いと100人近くの方々が寄ってくれるようになって、世代も立ち寄る目的もさまざまです。学校帰りに顔を出してくれる子もいれば、お茶を飲んで帰られる年配の方もいて、毎日にぎやかで。こういう、いつでも誰でも行ける場所って、ありそうでないんですよね」

▲ 2020年2月、はるな愛さんがTecoを訪問

しかし休眠預金で活動を始めた直後、新型コロナの影響がいわき市内にも及びます。人と関わることを重視してきたTecoにとって「人と人が会えなくては、コミュニティ支援なんてできない」と悩んだ時期もありましたが、それでも活動を完全に中止することはありませんでした。

「地域のコミュニティをつくり直そうとしていた時期にTecoが活動を中止したら、地域の方々がますます人とつながることを萎縮してしまう、と思いました。

コロナの影響が出てくる半年以上前の水害のときから、この地域ではみなさんずっと自粛している状態なんです。『とにかく私たちはここにいるから、いつでも来てね』というメッセージを届けたくて、コロナ禍でもコミュニケーションをとる方法を模索してきました」

サロン活動は一時休止しながらも、お便りをつくってポスティングしたり、外のプランターで野菜をつくったり。いっぱいに実った野菜から「ここには誰かが来ているんだな」というメッセージを受け取り、久しぶりに顔を出してくれた方もいたといいます。

▲ 回覧板やポスティングで地域に情報を届ける「てこてこ通信」

感染対策に留意しながら、2020年7月にはサロン活動を再開。8月に久しぶりに開催したイベントは夏祭りでした。その後もハロウィンやクリスマス会、お花見など、精力的に季節のイベントを続けました。

「季節の変化や非日常を一瞬でも味わってもらうことで、次の楽しみまでなんとか心を持たせられるような、拠り所になったらいいなと思いました」

さらに、Tecoに集う利用者どうしの出会いから、サークル活動も生まれました。例えば、サロン活動を始めてすぐに動き出した「ママサークル」。メンバーの得意分野を活かしてレジンアクセサリーを制作したりダンスを発表したりと活動していくうちに、今では地元のマルシェで出店するようになりました。

「いろいろな方とお話していくうちに、この方とこんなことできそう、この方と一緒にこれ楽しめそうだな、と思いつくんです。

控えめなお父さんと話していくうちに、お花の先生の資格を持っているとわかったので、クリスマスのフラワーアレンジメントをつくるイベントで講師をしてもらったことがありました。そうやって普段の会話からつながりを引き出して、サロン活動で広がっていくことはよくありますね」

「何かしてほしい、よりも、何かしてあげたい、と思っている方も多いと思います。実際、野菜のつくり方とか平窪地区の歴史とか、いろいろなことを地域のみなさんから教わっているんです。 だから私たちが『支援している』という感覚もなくて、みなさんに対して『わからないので教えてください』とか『それってすごいですね』と同じ目線でお話しています」
▲ Tecoの場には、地域コミュニティに存在していた助け合いの関係が広がっています。

「何かしてほしい、よりも、何かしてあげたい、と思っている方も多いと思います。実際、野菜のつくり方とか平窪地区の歴史とか、いろいろなことを地域のみなさんから教わっているんです。 だから私たちが『支援している』という感覚もなくて、みなさんに対して『わからないので教えてください』とか『それってすごいですね』と同じ目線でお話しています」

続けることでつながる縁と可能性を信じて

2021年8月に終了した、今回の休眠預金活用事業。コロナ禍を挟みながらも、2020年2月からの1年半で、サロン登録人数は183人に増え、サロン利用者数とイベント参加者数は延べ5,997人にのぼりました。

Tecoはその後も形を変えながら、平窪地域で活動を続けていきます。その関わり方のひとつが、防災とコミュニティを組み合わせたまちづくり。水害があったからこそ、防災意識が高い街を目指しています。

休眠預金活用事業の活動や広報の積み重ねをきっかけにいわき市からTecoに声がかかり、休眠預金活用事業終了後は、いわき市の補助を受けて防災に関わる事業を継続できることになりました。

「Tecoで防災講話のイベントを開催したら、すごく好評だったんです。というのも、以前開催された防災イベントの参加者は、年配の男性がほとんどだったみたいで。でもTecoで開催したら、いつものサロンと同じように、子どもからお年寄りまで来てくださったんです。

こうやって、他の組織が得意なことと、私たちが得意なことを補い合いながら、平窪がどこよりも住みやすい街になるように携わっていきたいなと思います」

Tecoにとって、2年近く活動してきた平窪地区は「住民のみなさんが私たちにも家族のように接してくださるおかげで、『地元』のよう」といいます。

「Tecoの由来は、小さな力で大きなパワーを発揮する『てこ』の原理です。できることはちょっとかもしれないけれど、これからも出会いを大切にしながら、少しずつ縁を広げていきたいです」

■休眠預金活用事業に参画しての感想は?
水害によって目の前に困っている方々がいる状態で、Tecoとして早く活動を始められたのは、今回の助成がとても充実していたからです。長期にわたって活動に集中できたため、この事業だから関われた方や携われたことがたくさんありました。それから、資金分配団体としてRCFさんが伴走くださったことも心強かったです。助成金を出して終わりではなく、必要な人に必要な支援が行き届くための仕組みだと思います。(Teco 小沼さん)

■資金分配団体POからのメッセージ
Tecoさんの活動は「人に寄り添う」ことを徹底的に続けていらっしゃいます。事業を始めてから歩みを止めずに活動されてきたからこそ、数値に表れる成果はもちろんのこと、数値だけでは見えないTecoさんの役割の大きさを感じてきました。私たちとしても、こういう活動が休眠預金活用事業のなかで実現できたのはありがたいことだなと思います。(一般社団法人 RCF)

取材・執筆:菊池百合子

【事業基礎情報】

実行団体
一般社団法人 Teco(福島県いわき市)
事業名
コミュニティ創出と健康支援の継続的な仕組みの構築
活動対象地域福島県いわき市
資金分配団体一般社団法人 RCF
採択助成事業

『大災害後の生活再建推進事業
 ~企業・地域・NPOが連携し地域コミュニティと経済再生を目指す』

〈2019年度通常枠〉