バランスの良い食事とあたたかい団らんは、子どもの心身の健やかな成長に欠かせません。各地の「子どもの居場所」でボランティアメンバーたちが愛情を込めて準備している食卓には、民間企業からもさまざまな支援が寄せられているのをご存知でしょうか。地域に根差した企業が地元の新鮮な食材を寄附したり、全国に展開する食品企業が出来立てのお弁当を提供したりしながら、それぞれの強みを生かして子どもたちの食事を支えているのです。資金分配団体:全国食支援活動協力会の実行団体である一般社団法人コミュニティシンクタンク北九州や社会福祉法人那覇市社会福祉協議会と連携してユニークな支援を展開する株式会社吉野家と響灘菜園株式会社の担当者に、支援に寄せる思いを聞きました。
子どもを思う地域の人々をトマトがつなぐ|響灘菜園株式会社
関門海峡の北西に広がる響灘に面した響灘菜園株式会社は、食品大手のカゴメ株式会社(カゴメ)と電力会社の電源開発株式会社(Jパワー)によって設立され、2006年からトマトの通年栽培を行っています。敷地内には、東京ドームや福岡ドームよりも広大な8.5ヘクタールにおよぶ温室があり、ハイテクな栽培技術を駆使して20万本のトマトを栽培しており、年間の収穫量は3000トンに上ります。

そんな同社は、「トマトのファンを増やしたい」が口ぐせだという猪狩英之社長の強い後押しを受け、自社のトマトを通じた社会貢献に熱心に取り組んでいます。特に、市内の子ども食堂に対する支援は積極的で、コミュニティシンクタンク北九州が事務局を務める「こども食堂ネットワーク北九州」を通じて、年間2500キロ、約2万個のトマトを無償で提供しているほか、市内の大学や企業などと連携し、トマトを使ったレトルトカレーの開発にも取り組んでいます。
同社が手塩にかけて育てたトマトによって、子どもの見守りや、魅力的なコミュニティづくりに意欲を燃やす地元の人々が有機的につながり、思いが広がっていく様子を二度にわたって取材しました。誇りを持って菜園の中で働く同社の社員たちの姿とともに、ぜひお目通しください。

コラム | 響灘菜園 | トマトカレーがつなぐ思いの循環.pdf [外部リンク]
コラム | 響灘菜園 | トマトを通じて地域に貢献.pdf [外部リンク]
使命感から生まれた新しい寄附文化で広がる笑顔|株式会社吉野家
近年、日本では、所得が全国平均の半分に満たない、貧困状態の家庭で暮らす子どもや、一人で孤独に食事することが常態化している子どもが増加し、成長への悪影響が強く懸念されています。
株式会社吉野家は、未来を担う子どもたちの状況を憂い、「食に携わる企業として貢献したい」という意識を抱いていた河村泰貴・代表取締役社長のリーダーシップの下、2020年に子ども支援事業の立ち上げについて検討を開始しました。当初は連携先の選定に苦労していましたが、社会福祉法人那覇市社会福祉協議会が運営する「こども食堂サポートセンター那覇」との出会いを機に、両者は強力なタッグを組んで支援の形やオペレーション方法を詰めていき、同年9月には那覇市内の店舗で初となる牛丼弁当の配布にこぎつけました。
同社はその後、この方法を他の都市にも横展開し、各地の社会福祉協議会と連携しながら支援を広げています。プロジェクトの進捗や子どもたちの反応については全国1100店舗のスタッフにも報告を欠かさず、社を挙げて思いを共有するよう努めているうえ、他の飲食業の経営陣にもノウハウを積極的に伝えているという同社から伝わってくる使命感と矜持、そして芽吹きつつある新しい寄付文化の機運を、ぜひご覧ください。

コラム | 吉野家 | 一杯の牛丼に思いをのせて.pdf [外部リンク]
■ 事業基礎情報【1】
実行団体 | 一般社団法人 コミュニティシンクタンク北九州 |
事業名 | ⼦ども食堂ネットワーク北九州機能強化事業 |
活動対象地域 | 福岡県北九州市 |
採択事業 | 2019年度通常枠 |
■ 事業基礎情報【2】
実行団体 | 社会福祉法人 那覇市社会福祉協議会 |
事業名 | こども食堂等支援事業〈2019年度通常枠〉 |
活動対象地域 | 沖縄県那覇市 |
資金分配団体 | 一般社団法人 全国食支援活動協力会 |
採択事業 | 2019年度通常枠 |
JANPIAは2023年11月22日、休眠預金を活用して社会課題の解決を目指す団体と企業とのマッチング会「SDGsへの貢献につなげる 九州マッチング会」を福岡市の電気ビル共創館で開催しました。JANPIAとしては3回目のマッチング会で、福岡での対面開催は初となります。地元を中心とする企業30社、九州・沖縄・山口で休眠預金活用事業を進めている21の実行団体、そのパートナーである10の資金分配団体、行政機関などから多くの方々が参加して、とても熱気あふれる場となりました。
九州マッチング会はJANPIA主催・一般社団法人九州経済連合会共催で、電気ビル共創館3階のカンファレンスAにて14:00~17:00に開催しました。

<プログラム>
14:00~ | JANPIA・九経連 開会の挨拶 |
14:10~ | 休眠預金活用事業の概要の紹介 |
14:30~ | 休眠預金活用団体のショートプレゼンテーション |
15:30~ | 企業と休眠預金活用団体との対話会 |
16:50~ | 閉会 |
開会の挨拶と事業概要の紹介からスタート
まずは、JANPIA理事長の二宮雅也が挨拶をしました。JANPIAが2019年政府から指定活用団体に選定されて以来、170以上の助成事業が累計1000を超える実行団体で展開されており、ユニークな日本型モデルの構築が着実に進んでいると紹介。団体の皆様には企業と連携して社会課題の解決を目指したいという強い期待があり、企業も社会を構成する一員として、誰ひとり取り残すことなく未来の子どもたちにサステナブルな社会を引き継ぐために、ぜひ積極的に連携いただきたいと力を込めました。
次に、九州経済連合会専務理事の堀江広重氏が挨拶をしました。九経連では2022年9月に九州・沖縄・山口ESG投融資方針を策定して、2022年は環境省と環境投資の推進を目的としたマッチング会を行い、今年は人への投資を促進するこの会を開催している旨を話しました。

続いて、JANPIAシニア・プロジェクト・コーディネーターの鈴木均が「休眠預金活用事業の概要」と「企業との連携強化」について説明しました。

休眠預金活用団体によるショートプレゼンテーション
14:30からは、21の実行団体が次々に登壇し、活動内容や支援ニーズなどについて1団体3分程度でプレゼンテーションを行いました。登壇した団体は、次の通りです。
<福岡県>一般社団法人家庭教育研究機構(福岡県)、NPO法人未来学舎(福岡県久留米市)、認定NPO法人箱崎自由学舎ESPERANZA(福岡県)、一般社団法人みんなの家みんか(福岡県)、有限会社トラスト/株式会社マイソル(九州)、株式会社ホンジョー(九州)、株式会社ボーダレス・ジャパン(全国)、認定NPO法人フードバンク北九州ライフアゲイン(福岡県北九州市)、一般社団法人YOU MAKE IT(福岡県福岡市)、NPO法人YNF(福岡県・佐賀県・大分県・熊本県)、NPO法人ジャパンマック福岡(福岡県福岡市)、NPO法人福岡子どもホスピスプロジェクト(九州・山口) <佐賀県>一般社団法人さが・こども未来応援プロジェクト実行委員会(佐賀県) <長崎県>一般社団法人MIT(長崎県対馬市) <熊本県>一般社団法人熊本県こども食堂ネットワーク(熊本県)、株式会社フリップザミント(熊本県)、一般社団法人熊本私学教育支援事業団(熊本県学校法人 代々木学園のコンソーシアム構成団体)、ワールドフレンズ天草(熊本県天草地域) <鹿児島県>NPO法人かごしまこども食堂支援センターたくして(鹿児島県) <沖縄県>株式会社よしもとラフ&ピース(沖縄県) <山口県>NPO法人山口せわやきネットワーク(山口県) |
それぞれの団体が、活動のきっかけや活動内容、強み、課題、企業への連携の提案などを分かりやすく紹介しました。個性豊かで情熱的なプレゼンの数々に、参加者たちはどんどん引き込まれて、熱心に聞き入っていました。メモを取る方もいました。企業の参加者からは「休眠預金がこんなにしっかり活用されていることを知らなかったので、視野が広がりました。どのように関われるか考えてみます」、「実行団体の皆さんの熱意に驚きました。ポスターセッションで直接お話しできるのが楽しみです」という声が聞かれました。

企業と休眠預金活用団体との対話会
10分間の休憩を挟んで、15:40から1時間程度、企業と休眠預金活用団体との対話会を行いました。会場後方には実行団体の紹介パネルが設置されており、企業の方々は興味のある団体のところへ行き、名刺交換をして、じっくり話を聞いていました。どの団体も休憩時間から活発な交流が続き、予定の1時間を超えても対話が終わらないほど大いに盛り上がり、終始、会場は熱気に包まれていました。

資金分配団体の担当者は「企業とはなかなか接点がない中、今回は対面で活動と熱量まで伝えられるとても貴重な機会でした。企業の方々には親身になって話を聞いていただき、関心の高さがうかがえました。これを機にコミュニケーションを続けていければと思います」と感想を語りました。
実行団体の担当者は「そもそもフリースクールとは何か、子どもと社会にどんな課題があるのか、企業の方にはあまり知られていないと実感しました。私たちの活動をさらにかみ砕いて説明し、もっと広く知ってもらう必要があると改めて感じました」、「企業と連携することで支援いただくとともに、自分たちのリソースを使って企業に提供できることもたくさんあると気づき、さまざまな可能性が見えてきました」と、確かな手応えを感じていました。
企業の皆様からは「新たな価値の創造を目指す部署が社内に新設されて、自分たちができることを模索しています。今日はさまざまな分野で活動される団体とご縁ができたので、社内に持ち帰って、連携などについて具体的に検討していきたい」など、前向きなコメントが多く聞かれました。
皆様のご協力のおかげで、ここから新たな連携が次々と生まれていくことを期待できる、素晴らしいイベントとなりました。

今回のJANPIAスナップは、10月6日にJANPIA主催で開催いたしました「ボランティア・プロボノマッチング会 第2回成果報告会」の様子をご紹介します!JANPIAでは、社会課題を解決する団体(NPO等)とCSRや社会貢献、ソーシャルインパクトを目指す企業との連携を推進しております。ボランティア・プロボノによる企業連携の事例をご報告いただきましたので、ぜひご覧ください。”
活動概要
JANPIAでは、休眠預金を活用して社会課題を解決する団体と企業との連携を推進しています。今回の成果報告会では、2023年3月7日に経団連後援のもと開催いたしました企業と団体との第2回マッチング会での連携事例のご紹介と、パネルディスカッションを実施いたしました。
第1部の事例紹介では3つの事例について、支援企業、支援先団体、コーディネーターそれぞれのお立場からボランティア・プロボノマッチングに関するご報告をしていただきました。第2部のパネルディスカッションでは、ご登壇された企業の方々からボランティア・プロボノを企業内で導入するためのポイント等についてお話いただきました。
本開催では、企業54社、団体・個人39名、合計137名の方にお申込みいただきました。
ご参加・ご視聴いただいた皆さま、ありがとうございました。
活動スナップ
開会の挨拶

開会の挨拶・本セミナーの趣旨説明
JANPIAシニア・プロジェクト・コーディネーター
鈴木 均
動画〈YouTube〉|開会の挨拶・本セミナーの趣旨説明[外部リンク]
資料〈PDF〉|開会の挨拶・本セミナーの趣旨説明 [外部リンク]
経団連の挨拶

経団連の挨拶
一般社団法人 日本経済団体連合会 常務理事
長谷川 知子 氏
動画〈YouTube〉|経団連のご挨拶[外部リンク]
事例紹介

事例紹介|モデレーター
株式会社NTTデータグループ サステナビリティ経営推進部
シニア・スペシャリスト
金田 晃一 氏
動画〈YouTube〉|事業紹介|導入(社員プロボノの類型整理)[外部リンク]
資料〈PDF〉|社員プロボノの類型整理 [外部リンク]
1. ブランディング強化に向けた広報戦略・方針の整理

支援企業
富士通株式会社 総務本部 コミュニティ推進室
井上 悠起氏(右上)
資料〈PDF〉|広報支援プロジェクト|富士通株式会社|プロボノ [外部リンク]
コーディネーター
認定特定非営利活動法人全国子ども食堂支援センター・むすびえ 理事
三島 理恵 氏(左下)
動画〈YouTube〉|1. ブランディング強化に向けた広報戦略・方針の整理[外部リンク]
2.組織内にビジョンを浸透させるための方法・ステップ等の提案

動画〈YouTube〉|2.組織内にビジョンを浸透させるための方法・ステップ等の提案[外部リンク]
3.スケジュール管理と情報共有の電子化

コーディネーター
一般財団法人大阪府人権協会
前村 静香氏(右下)
資料〈PDF〉|資金分配団体としてプロボノに携わって [外部リンク]
動画〈YouTube〉|3.スケジュール管理と情報共有の電子化[外部リンク]
パネルディスカッション

「社員がプロボノやボランティアに参加していることは人事評価などに反映されているか。また、反映されている場合どのように評価に反映させているか。」と、会場からご質問をいただきました。
【登壇者】
辻 信行 氏 [PwCあらた パートナー](下段:左から3番目)
呉藤 舞 氏[三井住友フィナンシャルグループ サステナビリティ企画部 社会貢献グループ 部長代理](下段:右から3番目)
池田 俊一 氏[NEC 経営企画部門 コーポレートコミュニケーション部](オンライン参加)
三橋 敏 氏[PwCあらた 企画管理本部 ディレクター](下段:左から2番目)
山﨑 友里加 氏[SMBC日興証券 ホールセール企画部 第一業務課](下段:左から4番目)
藤田 英利 氏[NECソリューションイノベータ デジタルビジネス推進本部 DX推進グループ シニアマネージャ](下段:右から2番目)
【モデレーター】
tab-stops:center 212.6pt>金田 晃一 氏[NTTデータグループ サステナビリティ経営推進部 シニア・スペシャリスト](下段:左から1番目)
tab-stops:center 212.6pt>
【コメンテーター】
嵯峨 生馬 氏[認定特定非営利活動法人 サービスグラント 代表理事](下段:右から1番目)
資料〈PDF〉|サービスグラントのご紹介 [外部リンク]
資料〈PDF〉|継続的にsocial impactを生み出すために [外部リンク]
資料〈PDF〉|SMBCグループプロボノワークプロジェクト [外部リンク]
資料〈PDF〉|NECプロボノイニシアティブのご紹介 [外部リンク]
動画〈YouTube〉|パネルディスカッション プレゼンテーション[外部リンク]
動画〈YouTube〉|パネルディスカッション[外部リンク]
閉会の挨拶

閉会の挨拶
JANPIA 理事長 二宮雅也
動画〈YouTube〉|閉会の挨拶[外部リンク]
当日スナップ写真
登壇者の皆さん

司会者/配信スタッフの皆さん
今回のセミナーは、ご登壇頂いた皆さまはもとより、司会者の南 恭子さん、配信スタッフのZAN FILMSの皆さん、会場となった日比谷国際ビル コンファレンス スクエアの皆さんとの連携で実現しました。この場を借りてお礼申し上げます。

「経団連1%クラブ」は、経団連企業行動・SDGs委員会の下部組織として、企業による社会貢献活動の進展のために活動する、企業の知見の共有・共通課題の検討の場です。 2023年6月9日、この経団連1%クラブの会合にて、JANPIAが実施している企業連携についての報告を行いました。その概要を紹介いたします。
JANPIAは、一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)により設立された背景から、「経団連1%クラブ」と連携し、様々な活動を行っています。2023年6月9日、この経団連1%クラブの会合にて、JANPIAが実施している企業連携についての報告を行いました。その概要を紹介いたします。
まずJANPIAシニア・プロジェクト・コーディネーターの鈴木均から、企業連携の現状とアンケート調査の結果、そして企業連携の意義や可能性についてお話しました。
[JANPIAからの報告]企業との連携強化に向けて ~SDGs達成への貢献につながるパートナーシップ(連携)~
企業連携の現状
鈴木:JANPIA設立以来、重要な課題の一つとして企業連携に取り組んできました。経団連との連携に基づいて、1%クラブでの事例紹介、企業と助成先団体とのマッチング会、個別フォローアップ、企業セミナーなど、多種多様な活動をしています。その結果、企業と資金分配団体・実行団体の連携実績は、累計325件(2023年3月末時点)になっています。
また毎年、企業連携に関する休眠預金を活用する団体へのアンケート調査を行っていますが、2022年度に実施したアンケートの結果でも、資金分配団体、実行団体の多くが企業連携に強い関心を示しています。その中で連携したい企業像としては「協働で社会課題解決を目指す」が多くあがっており、さらに継続的な支援関係、資金的支援などへの期待もあります
連携による企業にとってのメリットや価値
休眠預金活用事業における連携は、企業側にも多様なメリット・価値を提供することをご紹介します。
●信頼性、信用性の高い団体へのアクセス
休眠預金活用事業では団体の選定にあたって、ガバナンスとコンプライアンスを重視しており、事業を推進するなかでも、基盤強化支援もしっかり行っていますので、安心して連携していただけます。
●資金分配団体とJANPIAによる企業と実行団体間のコーディネーション支援
連携の際にひとつのハードルとなるのがコーディネーションですが、現在は資金分配団体とJANPIAが仲介・調整を行っています。
●「社会的インパクト評価の知見獲得、インパクト志向の高い事業との接続」
すべての団体が社会的インパクト評価を実施しており、この活動を通して社会的インパクト評価の知見などの収集獲得も可能になります。
●ボランティア・プロボノを通じた社員の社会参画
社会貢献、人材育成の面、あるいはSDGsに貢献するような新しい事業の創出といった点からも非常にメリットがあります。
●社会価値と経済価値の両立を目指すSDGs起点の新しい事業機会の創出
「企業の高い技術力(シーズ)、豊富なリソース、組織力」と「NPO・ソーシャルベンチャーの社会課題に関する専門性、機動力、現場力」が相乗効果となって、インパクトのある事業を創出する機会が生まれます。
●広報面への貢献、SDGs貢献の訴求など
連携によって先進的な取り組みを創出することで広報効果も高まります。
[企業連携 事例紹介1] 〈三井住友海上×アレッセ高岡〉
三井住友海上火災保険株式会社
【発表者 経営企画部 SX推進チーム 唐澤篤子様 山ノ川実夏様
三井住友海上火災保険株式会社の社会貢献制度
唐澤:三井住友海上火災保険株式会社では、社員の社会貢献活動を促進する制度として「部支店で年に1つは環境・貢献活動」というものがございます。全国に160部支店があり、ライン部支店長が推進責任者となり、部支店長が推進役として「環境・社会活動サポーター」を選任する流れになっています。
JANPIAとの連携は3年目になり、ご提供いただいた休眠預金等活用事業を実施している団体のリストを社内に紹介しています。部支店から希望する活動、協働したい団体について連絡があると、まずJANPIAとつないで、資金分配団体、支援先団体となる実行団体、当社サポーターの4者でZoom面談を行い、マッチングすれば活動を開始しています。

アレッセ高岡へのプロボノ活動
山ノ川:特定非営利活動法人アレッセ高岡へのプロボノ活動について紹介します。まず資金分配団体である日本国際交流センターを交えてのミーティングを行い、アレッセ高岡の活動内容や、活動をしていくうえで困っていることなどを伺いました。アレッセ高岡は富山県で活動されていますので、富山支店の業務課長にも都合がつくときはオブザーブ参加してもらっていました。
2021年7月から支援を開始して、隔週月曜の14時から30分間のオンラインミーティングを実施してきました。具体的な相談事例としては、文書の作成、経理、事務などのような内容があります。
【文書】役員会議事録の書き方、著名人への支援依頼の手紙の添削、助成金申請書など、
【経理】出納帳の構成、助成金の管理方法、領収証の書き方、預り金の扱いなど
【事務】規定類のまとめ方、エクセルの操作方法、差込印刷の方法など
【管理】人事労務管理など
富山県と東京とで距離は離れていますが、オンラインで30分だけでも支援ができ、役に立つことができるのは発見でした。富山支店のメンバーに、現地での週末のイベントに顔を出してもらうなど、地元でのつながりもできています。
今回は会社としてプロボノ活動の検討を行うために私と唐澤の二人が業務時間を使って担当しましたが、就業中のプロボノを制度化するのは難しく、かといって時間外・週末の活動に積極的な社員は多くない感触があります。そのため、プロボノに興味のある社員の発掘が今後の課題です。

特定非営利活動法人 アレッセ高岡
【発表者】 理事長 青木由香様、事務局長 滝下典子様
「団体内だけで問題を解決するのは困難だった」
滝下:アレッセ高岡が活動する富山県高岡市は製造業がさかんで、1990年頃から日系ブラジル人の入植が増え、その方々の子どもたちが公立学校に入学するようになりました。理事長の青木はブラジルでの日本語教師の派遣を終え、高岡で外国人相談員として仕事をするなかで、日系ブラジル人の高校進学率が低いことに問題意識をもち、2010年に「高岡外国人の子どものことばと学力を考える会」(アレッセ高岡)の活動を始めました。現在は、学習支援事業、情報支援事業、市民性教育事業を行っております。
多方面から活動への高い評価をいただいてはおりますが、理事はじめ事務局員は会社勤めの経験者も少なく、何を始めるにも右往左往しており、団体内だけで課題を解決するのは困難な状態でした。
今回、三井住友海上火災保険の山ノ川さん、唐澤さんには、事務局員としての業務の基本を教えていただきました。
また、「これは専門家に聞いたほうがいい」「これは団体内で決める内容である」など、日々の細々した問題に対して答えの導き方のヒントを教えてもらいました。初めて作成した銀行への助成金申請が通ったときは、とてもうれしく感じました。また、高岡にも足をお運びいただきました。

地方都市では人的リソースが絶対的に不足
青木:小さい地方都市では、人的リソースが絶対的に少ないのが現状です。課題を打破するために新しい事業を考えても、「じゃあ、それを担える人は?」となり、事業が止まってしまいがちです。おそらく、みなさまからしたら「そんなことで?」と思うようなところで、つまずいていました。
私たちは普段、外国ルーツの子どもたちのサポートをしていますが、パラレルな形で私たち自身がサポートを必要としており、三井住友海上火災保険の山ノ川さんや唐澤さんが寄り添って日々の小さな障壁を一緒にクリアしてくれることで、立ち往生せず、挫けることなく事務局機能を実務的にも、精神的にも安定させることができています。

企業との「協働」から得た支援者としての学び
滝下:私たちは、これまでボランティアベースでやっていましたが、休眠預金等活用制度によって事業を進めるにあたり、事務局員を2名雇用しました。そのうちのひとりは外国ルーツの若者です。つまり事務局は外国ルーツの若者の成長と活躍の場でもあり、そういう意味では今回のプロボノ支援で私たちの事業をダイレクトに支えてもらいました。
プロボノ支援を受けるなかで、支援者としての外国ルーツの子どもたちへの向き合い方も見直すことになりました。背景の異なる者同士の協働とはどういうものかを私たち自身が学んだということです。それは当初、私たちが想像していなかった成果でした。
こうした支援のスパイラルが全国各地に広まってほしいと思います。コロナ禍を機にオンラインツールが普及しましたので、地理的距離にかかわらずリソースのマッチングも可能になりました。こうした輪がつながっていく先に、私たちが目指している多文化社会があるのではないかと思います。

[企業連携 事例紹介2] 〈アビーム×リディラバ×SIIF〉
アビームコンサルティング株式会社
【発表者】 エンタープライズドトランスフォーメーションビジネスユニット
デジタルプロセス&イノベーショングループFMCセクター
兼サステナビリティーユニット ダイレクター原田航平様
専門スキルを生かしたプロボノ支援
原田:アビームコンサルティング株式会社にて、プロボノという形で支援した事例を紹介するにあたって、まず支援先であるRidiloverが取り組む「旅する学校」がどんな事業なのかを簡単に説明いたします。
経済情勢や労働環境の悪化、教育・子ども支援における政策予算の少なさなどから、家庭の経済的状況による子どもたちの「体験格差」が存在しています。教育水準の違いだけでなく、新幹線に一度も乗ったことがない、旅行をしたことがないといった子どもたちもたくさんいます。こうした体験格差が義務教育後の望まないキャリア選択につながっている部分もあるのが現状です。これらに対して、「旅する学校」事業は、「誰もが希望をもって自分の生き方を選択できる社会」をつくり出すことを目指しています。
事業の対象は2つあります。ひとつは「奨学金をもとにした『多様な体験から学ぶ』旅の提供」として多様な体験を格差のある子どもたちに直接提供して、学んでもらうもの。ふたつ目は、子どもの体験格差に関する調査研究・情報発信・政策提言があります。

「旅する学校」における課題・支援ニーズ
この事業を継続し、社会的インパクトを拡大するにあたっては、多様で安定的な財源が必要になります。また、社会課題自体の認知を拡大して社会課題解決を加速させていくために、個人へのアプローチも重要です。こうしたことから、「『企業人材の個人寄付』に関する調査・寄付獲得に向けた支援が欲しい」という支援ニーズが Ridiloverから挙げられていました。
このニーズを踏まえて、昨年は2つのプロボノプロジェクトを実施しました。
第一弾として「企業人材の個人寄付」に関する調査を行いました。調査のなかでZ世代やミドル世代など世代ごとの意識の違い、さらに細分化したターゲットによって「寄付についての自分ごと化」を進めるために最適な施策が異なることも見えてきました。
このプロジェクトの期間は約2カ月間で、体制としては、弊社から私の稼働が15%(一日1時間程度)、シニアマネージャー1名が25%(一日2時間程度)、そして現場のコンサルタントを1名専任でアサインメントしました。さらに、第一弾の結果を踏まえて、第二弾の「企業人材の接点となる企業向け研修イベントの企画・トライアル実施」を行い、弊社メンバーに子どもの体験格差について学ぶ対面イベントに参加してもらい実証しました。


プロボノ連携に取り組む意義
会社としてプロボノ連携に取り組む意義ですが、大前提に「社会へのインパクト」があります。実行団体の社会課題への取り組みを支援することは、直接的に課題解決への貢献につながります。
それに加えて、自社への好影響として以下があげられます。
・企業としての知見・視点の獲得
ソーシャル領域における知見やリレーション、および将来の事業を考える視点の獲得という点で、有意義な活動ととらえています。
・従業員の能力開発
支援先と協力しながら問題解決を行うことによって視野や動き方の幅が広がります。このプロジェクトに携わった社員は、本業でも成果を上げるようになりました。
・従業員エンゲージメント
こうした活動を通して、本業の社会的意義や社会とのつながりをとらえるようになり、業務に対する主体性、責任感の向上につながっていると感じています。

株式会社 Ridilover
【発表者】 事業開発チームサブリーダー 高際俊介様
事業と政策の「はざま」にある問題
高際:Ridiloverは2009年に学生団体として立ち上がり、一般社団法人を経て、いまは主に株式会社として運営しています。特定の領域を設けずに社会課題に対して企業との事業開発あるいは省庁や自治体と連携しての政策・制度によって解決を進めるという、2つの側面でのアプローチをしています。
今回取り組んでいる事業では、「体験格差」を解消して子どもたちが自分らしく生きていくのに必要な力を育むことを目指していますが、この問題が悩ましい部分は、個々の子どもにとって、どんな体験があればプラスに作用するのかがわかりづらいところだと考えました。
また、行政からすれば、社会インパクトのロジックモデルが可視化できていないと制度設計が非常にしづらいということになります。加えて、体験格差が起こるのは経済困窮状態にある方々に多いため受益者負担も難しく、事業面でのアプローチにもハードルがあります。制度化も事業化も難しい、まさにはざまにある問題なのです。

お互いの専門性を発揮することができた
事業サイクルの持続可能性という観点からいうと、体験格差を問題視する人の総量を増やして個人寄付の導線をいかにつくっていくかが大事です。アビームのみなさまには、まさに事業の土台となる「企業人材の個人寄付」という部分に関してご協力をいただきました。
企業に勤めている方々が、個人寄付に対してどういうインサイトをもち、どうアプローチすれば「自分ごと化」していくのかを調査するのは難易度が高いのではないかと思っておりましたが、アビームのみなさまの本業での分析力を生かしていただきました。同時に、まさに社員のみなさまがターゲット層でもあるということで、非常にありがたいパートナーだったと思っています。また、専門ではない部分をプロボノ支援に頼ることができたことで、我々は本来の専門性を発揮できる部分に注力できたことは、今回、非常に大きかった点です。
一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)
【発表者】 インパクト・オフィサー 田立紀子様
田立:SIIFは、資金分配団体としてRidiloverさんと事業を実施しております。今回、私はアビームさんとRidiloverさんのコーディネーターとして伴走支援をさせていただきました。マッチングまでのヒアリングでは、双方の目的を揃えることが非常に重要です。私は地元では支援を受ける側として地域活動も行っておりますので、その経験も踏まえて、よりよいプロボノ実施のために支援企業側の窓口となるみなさまに知っていただきたいことを今回お伝えいたします。
1. 短期でできる仕事は「つまらないもの」に見えることが多い、それでよければ短期でも歓迎される
企業サイドから見ると簡単でつまらないものに感じる業務でも、人もお金もない支援先団体にとって、それらを担ってもらえることは大歓迎です。また短期で現場を見たいという声も聞きますが、そのような場合は支援先団体の疲弊を招かないか注意が必要です。
2. 大事なクライアントは支援先団体であることを忘れない
支援企業のなかには社員が何人参加したか、社員の満足度はどうかばかりを気にされる場合もあるようです。プロボノを実施していく中で、支援先団体が置き去りにされていないか、KPIをぜひチェックしてみてください。
3. 窓口にコーディネーション機能を備えることが重要
休眠預金活用事業では、資金分配団体が伴走しますが、プロボノを成功させるためには企業の窓口担当者が適切な座組をつくれるかが重要だと考えます。
4. 支援先団体も工数がかかるプロボノは、タダでも嫌がられることがある
支援先団体も往々にしてリソースが潤沢ではないため、支援先団体側の体制に配慮することが大事です。支援企業からの支援を受けるためには、支援先団体側も準備をする必要があるからです。ゴールへの低いコミットメントや、団体の現状や意向に寄り添えない場合は、疲弊につながる可能性があります。

事業完了にあたり、成果の取りまとめるために実施されるのが「事後評価」です。事後評価は、事業の結果を総括するとともに、取り組みを通じて得られた学びを今後に生かせるよう、提言や知見・教訓を整理するために行われます。今回は、2022年3月末に事業完了した2019年度通常枠【医療的ケア児と家族の夢を寄付で応援|お金をまわそう基金】の事後評価報告書をご紹介します。ぜひご覧ください。
事業概要等
事業概要などは、以下のページからご覧ください。
事後評価報告
事後評価報告書は、以下の外部リンクからご覧ください。
・資金分配団体
・実行団体
【事業基礎情報】
資金分配団 | 公益財団法人 お金をまわそう基金 |
事業名 | 医療的ケア児と家族の夢を寄付で応援 <2019年度通常枠> |
活動対象地域 | 全国 |
実行団体 | ・公益社団法人 難病の子どもとその家族へ夢を ・特定非営利活動法人 Lino ・公益社団法人 ア・ドリーム ア・デイ IN TOKYO |
2023年1月25日に開催しました「SDGs達成に貢献する ボランティア・プロボノセミナー」の動画をご紹介します。
本セミナーでは、ボランティア・プロボノに先進的に取りまれている3社の事例紹介とパネルディスカッションを行いました。
<プログラム>
00:00:00 開会のご挨拶・本セミナーの趣旨説明等:鈴木 均 (JANPIA シニア・プロジェクト・コーディネーター)
00:15:52 経団連のご挨拶:長谷川 知子 (経団連 常務理事)
00:21:50 事例紹介
00:55:52 パネルディスカッション
01:51:22 閉会のご挨拶:二宮 雅也 (JANPIA 理事長)
今回の活動スナップは、『公益財団法人長野県みらい基金』と『PwCあらた有限責任監査法人(以下、PwCあらた)』の企業連携の活動や、PwCあらたとJANPIAが企業連携を協働した背景などについて対談を行った記事をご案内します
活動の概要
PwCあらたは、2021年からJANPIAが推進している企業連携活動に参画しています。その最初のプロジェクトとして取り組んだのが、公益財団法人長野県みらい基金(2019年度通常枠・資金分配団体)への経営基盤強化支援です。今回は、長野県みらい基金 高橋理事長、JANPIA 事務局長鈴木とPwCあらた担当者の対談記事が、PwCあらたのコーポレートサイトで掲載されましたのでご紹介します。
活動スナップ
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)策定から見えてきた、地域に根ざす公益財団法人とPwCの役割

長野県みらい基金 高橋理事長とPwCあらた有限責任監査法人 シニアマネージャー 大久保 穣氏が、今回連携したプロジェクトの振り返りや公益法人と企業の連携がもたらす相乗効果について対談しました。
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)策定から見えてきた、地域に根ざす公益財団法人とPwCの役割
持続可能な地域社会を実現する、企業×公益法人の連携の形とは?「休眠預金」で未来をつくる活動を拡げるために――

PwCあらた有限責任監査法人 パートナー 辻 信行氏とJANPIA 事務局長 鈴木が、企業の専門性を団体の活動に活かす企業連携として協働した背景や企業と公益法人の連携の理想的な未来像について対談しました。