事業完了にあたり、成果の取りまとめるために実施されるのが「事後評価」です。事後評価は、事業の結果を総括するとともに、取り組みを通じて得られた学びを今後に生かせるよう、提言や知見・教訓を整理するために行われます。今回は、2022年3月末に事業完了した2019年度通常枠【北海道未来社会システム創造事業|北海道総合研究調査会】の事後評価報告書をご紹介します。ぜひご覧ください。
事業概要等
事業概要などは、以下のページからご覧ください。
事後評価報告
事後評価報告書は、以下の外部リンクからご覧ください。
・資金分配団体
・実行団体
【事業基礎情報】
資金分配団 | 一般社団法人 北海道総合研究調査会 |
事業名 | 北海道未来社会システム創造事業 〜休眠預金活用による道内地域課題の効果的・効率的な解決に向けて〜 <2019年度通常枠> |
活動対象地域 | 北海道 |
実行団体 | ・特定非営利活動法人 ezorock ・特定非営利活動法人 地域生活支援ネットワークサロン ・公益財団法人 さっぽろ青少年女性活動協会 ・株式会社 ヒトココチ ・北海道レインボー・リ ソースセンター L-Port ・一般社団法人 ちくだいKIP ・特定非営利活動法人 かしわのもり「ここから実験室」 ・一般社団法人 国際交流団体ブロック ・特定非営利活動法人 旭川NPOサポートセンター ・特定非営利活動法人 飛んでけ車いすの会 |
事業完了にあたり、成果の取りまとめるために実施されるのが「事後評価」です。事後評価は、事業の結果を総括するとともに、取り組みを通じて得られた学びを今後に生かせるよう、提言や知見・教訓を整理するために行われます。今回は、2022年3月末に事業完了した2019年度通常枠【外国ルーツ青少年未来創造事業|日本国際交流センター】の事後評価報告書をご紹介します。ぜひご覧ください。
事業概要等
事業概要などは、以下のページからご覧ください。
事後評価報告
事後評価報告書は、以下の外部リンクからご覧ください。
・資金分配団体
・実行団体
【事業基礎情報】
資金分配団 | 公益財団法人 日本国際交流センター |
事業名 | 外国ルーツ青少年未来創造事業 〜外国にルーツをもつ子供・若者の社会的包摂のための社会基盤作り〜 <2019年度通常枠> |
活動対象地域 | 全国 |
実行団体 | ・特定非営利活動法人 IKUNO・多文化ふらっと ・社会福祉法人 さぽうとにじゅういち(さぽうと21) ・特定非営利活動法人 ABCジャパン ・特定非営利活動法人 glolab ・一般社団法人 DiVE.tv ・特定非営利活動法人 アレッセ高岡 ・特定非営利活動法人 青少年自立援助センター |
事業完了にあたり、成果の取りまとめるために実施されるのが「事後評価」です。事後評価は、事業の結果を総括するとともに、取り組みを通じて得られた学びを今後に生かせるよう、提言や知見・教訓を整理するために行われます。今回は、2022年3月末に事業完了した2019年度通常枠【医療的ケア児と家族の夢を寄付で応援|お金をまわそう基金】の事後評価報告書をご紹介します。ぜひご覧ください。
事業概要等
事業概要などは、以下のページからご覧ください。
事後評価報告
事後評価報告書は、以下の外部リンクからご覧ください。
・資金分配団体
・実行団体
【事業基礎情報】
資金分配団 | 公益財団法人 お金をまわそう基金 |
事業名 | 医療的ケア児と家族の夢を寄付で応援 <2019年度通常枠> |
活動対象地域 | 全国 |
実行団体 | ・公益社団法人 難病の子どもとその家族へ夢を ・特定非営利活動法人 Lino ・公益社団法人 ア・ドリーム ア・デイ IN TOKYO |
事業完了にあたり、成果の取りまとめるために実施されるのが「事後評価」です。事後評価は、事業の結果を総括するとともに、取り組みを通じて得られた学びを今後に生かせるよう、提言や知見・教訓を整理するために行われます。今回は、2022年3月末に事業完了した2019年度通常枠【がん患者支援の助成事業|日本対がん協会】の事後評価報告書をご紹介します。ぜひご覧ください。
事業概要等
事業概要などは、以下のページからご覧ください。
事後評価報告
事後評価報告書は、以下の外部リンクからご覧ください。
・資金分配団体
・実行団体
【事業基礎情報】
資金分配団 | 公益財団法人 日本対がん協会 |
事業名 | がん患者支援の助成事業 <2019年度通常枠> |
活動対象地域 | 全国 |
実行団体 | ・一般社団法人 日本希少がん患者会ネットワーク ・公益財団法人 がんの子どもを守る会 ・一般社団法人 仕事と治療の両立支援ネット – ブリッジ ・特定非営利活動法人 日本キャリア開発協会 ・認定特定非営利活動法人 キャンサーネットジャパン ・一般社団法人 CSRプロジェクト |
事業完了にあたり、成果の取りまとめるために実施されるのが「事後評価」です。事後評価は、事業の結果を総括するとともに、取り組みを通じて得られた学びを今後に生かせるよう、提言や知見・教訓を整理するために行われます。今回は、2022年3月末に事業完了した2019年度通常枠【市民社会強化活動支援事業|まちぽっと】の事後評価報告書をご紹介します。ぜひご覧ください。
事業概要等
事業概要などは、以下のページからご覧ください。
事後評価報告
事後評価報告書は、以下の外部リンクからご覧ください。
・資金分配団体
・実行団体
【事業基礎情報】
資金分配団 | 認定特定非営利活動法人 まちぽっと |
事業名 | 市民社会強化活動支援事業 <2019年度通常枠> |
活動対象地域 | 全国 |
実行団体 | ・特定非営利活動法人 芸術家と子どもたち ・特定非営利活動法人 フリースクール木のねっこ ・特定非営利活動法人 くるみー来未 ・特定非営利活動法人 全国女性シェルターネット ・認定特定非営利活動法人 びーのびーの ・一般社団法人 栃木県若年者支援機構 ・特定非営利活動法人 エコ・コミュニケーションセンタ-(ECOM) ・特定非営利活動法人 コミュサーあおもり ・特定非営利活動法人 東京里山開拓団 ・特定非営利活動法人 Tansa (旧:ワセダクロニクル) |
事業完了にあたり、成果の取りまとめるために実施されるのが「事後評価」です。事後評価は、事業の結果を総括するとともに、取り組みを通じて得られた学びを今後に生かせるよう、提言や知見・教訓を整理するために行われます。今回は、2022年3月末に事業完了した2019年度通常枠【質の高い継続的な被災地支援|ジャパン・プラットフォーム】の事後評価報告書をご紹介します。ぜひご覧ください。
事業概要等
事業概要などは、以下のページからご覧ください。
事後評価報告
事後評価報告書は、以下の外部リンクからご覧ください。
・資金分配団体
・実行団体
【事業基礎情報】
資金分配団 | 特定非営利活動法人 ジャパン・プラットフォーム |
事業名 | 質の高い継続的な被災地支援 (台風15・19号被災地支援プログラム対応含) <2019年度通常枠> |
活動対象地域 | 全国 |
実行団体 | ・特定非営利活動法人 SEEDS Asia ・公益財団法人 共生地域創造財団 ・特定非営利活動法人 ながのこどもの城いきいきプロジェクト ・一般社団法人 日本インターナショナル・ サポート・プログラム |
事業完了にあたり、成果の取りまとめるために実施されるのが「事後評価」です。事後評価は、事業の結果を総括するとともに、取り組みを通じて得られた学びを今後に生かせるよう、提言や知見・教訓を整理するために行われます。今回は、2022年3月末に事業完了した2019年度通常枠【地域支援と地域資源連携事業|長野県みらい基金】の事後評価報告書をご紹介します。ぜひご覧ください。
事業概要等
事業概要などは、以下のページからご覧ください。
事後評価報告
事後評価報告書は、以下の外部リンクからご覧ください。
・資金分配団体
・実行団体
【事業基礎情報】
資金分配団 | 公益財団法人 長野県みらい基金 |
事業名 | 地域支援と地域資源連携事業 〜困難を有するこども若者その家庭の課題を地域ぐるみで解決する〜 <2019年度通常枠> |
活動対象地域 | 長野県 |
実行団体 | ・特定非営利活動法人 Gland・Riche ・特定非営利活動法人 子ども・若者サポートはみんぐ ・特定非営利活動法人 ふくろうSUWA ・特定非営利活動法人 ITサポート銀のかささぎ ・特定非営利活動法人 いいだ人形劇センター ・一般社団法人 ぷれジョブ長野支部 ・認定特定非営利活動法人 フードバンク信州 |
保見団地は小高い丘陵地帯に広がるマンモス団地。一時期は10,000人を超える住民を擁していたそうですが、他地域の団地と同様に住民の減少と高齢化が進んでいます。一方、1980年代後半から近隣の自動車製造企業等の企業に働きに来たにブラジルやペルー等の人々の入居率が高まってきています。その中で生じたのが、日本人と外国人との間で起こる、言葉や文化・習慣の違いからのさまざまな問題です。その1つ1つの問題の解決めざし、日本人も外国人もそこに暮らす者同士として共生し、保見団地を“多文化多様性が輝く場”にするために立ち上がった休眠預金を活用した事業『保見団地プロジェクト』(資金分配団体:一般財団法人中部圏地域創造ファンド)を取材しました。”
住民の7~8割が外国人という環境
広場に設えられた屋台式のカフェのそばで、おしゃべりを楽しんでいる数人の外国人であろう若者たち。彼らに「銀行に行こうと思ったら、コーヒーの香りがしたから来ちゃった」と気軽に話しかける、白い割烹着を着た日本人女性。この光景が繰り広げられているのは、愛知県豊田市の北西部にある保見団地です。土曜日の午後の一コマであるそんな光景にも、この場が秘めている多様性の楽しさを感じます。
保見団地は豊田市の北西側に位置するマンモス団地。一戸建て住宅の保見緑苑自治区、UR 都市再生機構の公団保見ケ丘自治区、保見ケ丘六区自治区、県営住宅の県営保見自治区の 4 つの住民組織があり、通称「保見団地」と呼ばれています。保見団地の居住者の半数はブラジルの方々です。さらに県営住宅では、800世帯入居するなか住民は約2,000人で、その7割がブラジル人の方々です。その他にペルー人、中国人、ベトナム人なども暮らしていますが、ブラジル人は87%を占めています。
こうした中で、言葉・生活習慣や文化の違いから、さまざまな問題が起こってきました。例えば、ゴミを収集日以外の日にゴミ捨て場に出してしまう、ルール通りの分別をしていない、夜間に騒音をたてる人がいる等です。
2020年12月に保見団地プロジェクトが実施した調査では、生活で困っていることとして外国人では「近所付き合いが少ない」、日本人では「規則を守らない」ということが1位に上がりました。さらに日本人の生活で困ったことを見ると、「言葉が通じない」「習慣の違い」が続きました。

取材日、お話を伺った県営保見自治区で副区長を務める藤田パウロさんは言います。
「外国人がマナーを守らないということがあります。確かに、守らない人もいます。でも、反対に日本人が暮らしのマナーを彼らに伝える努力を充分にしてきたのでしょうか? 外国人と日本人がともに暮らしていくためには、互いの考えや習慣を知って、理解し合うことが大切です。なかなか伝わらないから、あきらめるのではなく、たとえ一人であっても伝えれば、そのうち一人が二人。二人が三人にと増え、それが重なっていけば外国人も日本のマナーも理解して暮らせるようになるのだと思います」と。
さまざまな壁はあるとしても、互いに互いの文化・習慣を理解しようとしながら関係を築いていくことで解決への道筋がある。そのことに気づき、行動しようとした人たちがつながり、保見団地プロジェクトははじまっていったのです。
事業のきっかけとなった、「HOMIアートプロジェクト」
保見団地では、前述のように言葉・生活習慣や文化の違いから、さまざまな問題が生まれていました。愛知県県営住宅自治会連絡協議会や、県営保見自治区の方々がその解決に向けて議論を進め試行錯誤してきましたが、団地の住民を一斉に集めて交流をはかっていく試みは、あまり成功したことがありませんでした。
そのような中、地域の外国籍の子どもたちに学習支援で関わっていたNPO法人トルシーダが、アートの力で、より豊かな団地をつくろうと2019年に「HOMIアートプロジェクト」を始めました。
このプロジェクトは、子どもから大人まで国籍に関係なく、団地の外国人を中心とした住民と アートを通して言葉を超えた交流の機会をつくるものです。プロジェクトには、アーティストのほか、中京大学、外国人との共生を考える会もメンバーも加わりました。

プロジェクトの集大成は、2020年3月に実施された壁面アート制作です。 場所は団地の憩いの場として設けられていたスペース。円形のベンチが設置され、床にはタイルが敷き詰められたそのスペースは、アートプロジェクトに取り掛かる以前は落書きで白い壁は汚され「憩い」とはほど遠い状況でした。
しかし、その場所が子どもたちやアーティストたちの手によって美しい壁画に変わったのです。壁画を一つ一つ丁寧に見ていくと、テレビなどで見かけるタレントや団地内で見かける人の顔を見つけることができます。また名刹の庭に見るような枝ぶりの松や風神雷神のような獅子、楽園に集う人々など、それぞれに表情豊かな絵が描かれました。

トルシーダのワークショップなどを通してアートに触れ、表情豊かに生まれ変わった壁を目にし、子どもたちは、隣接する23棟・24棟にも壁画を描く愛知県立大学の学生による活動にも、目を輝かせて参加したということです。
「やっぱりきれいになると嬉しくて、次は自分たちが住むところもキレイにしたくなるんです」と語る県営保見自治区で区長を務める木村友彦さんも、アートが生み出す力を感じたといいます。

トルシーダによる「HOMIアートプロジェクト」は、言葉が通じなくてもきっかけとつながりがあれば、住民たちが課題解決にむけて協力しあうことができることを示した、象徴的な取り組み。また、この活動を通じて、保見団地で活動する複数団体の分野横断的な協働も始まりました。
その一つが、中京大学の教員・学生との連携です。中京大学と保見団地は近い場所にあります。2019 年度秋学期に現代社会学部で実施された「国際理解教育Ⅱ」という科目で取り組んだ内閣府・豊田市・中京大学の3 者連携による規制緩和事業で、履修者たちが取りまとめた「多文化共生」に関しての提言を背景に、当時現代社会学部で教鞭をとっていた斉藤尚文さんのもと、学生たちがプロジェクトに参加したことで連携が実現しました。
「HOMIアートプロジェクト」は、住民の心の変化を呼び起こすきっかけであるとともに、「保見団地プロジェクト」のきっかけにもなったのです。
5つの団体と休眠預金を活用し具現化した『保見団地プロジェクト』
「HOMIアートプロジェクト」から生まれた保見団地の課題を解決していく「きっかけ」ですが、さらに取り組みを拡げていくためには、多くの人の協力と資金が必要になります。
ちょうどこのとき中部圏地域創造ファンドが、タイミングよく休眠預金を活用して市民活動への助成を行う「NPOによる協働・連携構築事業」を公募していることがわかりました。その公募要領には、チームを組んで申請することとあります。そこでトルシーダ、県営保見自治区、保見プロジェクト(中京大学)、外国人の共生を考える会、愛知県県営住宅自治会連絡協議会の5団体が「保見団地プロジェクト」としてチームを組んで申請し、審査に臨みました。そして、みごと採択され具体的な活動が始まったのです。
この「チームを組んで」という条件について、資金分配団体である中部圏地域創造ファンドの大西光夫さんに聞きました。
「地域で課題解決に取り組む団体にはさまざまに強みを持った団体があります。団体がそれぞれに自律した活動を展開しながら、さらに協働して取り組みを進めていくことができれば、団体が単体で活動するよりも、大きな成果を得ることができます。それは支援を受ける側にとっていいことです。加えて、協働して取り組むことで助成終了後にも持続する関係が作れるのだと考えています。保見団地においても、様々な立場の組織が助け合いのコミュニティづくりに取り組むことで、地域が抱える多様な課題を解決していけるのではないかと考えました。」
こうして生まれたのが、保見団地を「住みやすく、きれいに、楽しい場所」にするために、「ゴミ」「子育て」「高齢者」「アート」「防災」「団地自治」等の多角的なテーマに取り組む「保見団地プロジェクト」です。
このプロジェクトを構成する団体とその役割は次の図の通りです。

これに加えて、中京大学の学生としてトルシーダの活動等に参加していた吉村迅翔さんが代表を務める「JUNTOS(じゅんとす)」という団体が、中京大学の保見プロジェクトと連携し活動を展開しています。外国にルーツを持つ方々に語学学習や交流の場を提供し、さまざまな面で選択肢を広げることを目指しています。いまでは保見団地プロジェクトにおいて、欠かせない存在となっています。
活動のポイントは「一緒に過ごす時間を長く作る」こと
それぞれの団体が担う役割や思いは異なり、様々な活動が展開されました。主な活動は以下の通りです。
活動内容 |
▶子ども食堂、高齢者サロン等による集会所を拠点とした交流の促進 ▶集会所・アートプロジェクトの空間・公園等を活用した自主的な交流活動の進展 ▶生活課題を抱える人に対する食糧配布等の支援、出前型支援、相談体制の充実 ▶外国にルーツを持つ子どもの教育支援、地域活動参加の促進 ▶自主サークル、防災活動、コミュニティビジネスを通じた外国人住民の自治活動の促進 ▶ルール違反のごみ問題に対する住民参加型のごみ回収、ルールの啓発 ▶生活や自治活動に関わる情報を住民に届ける多言語情報発信 |
活動トピックス1:移動式公民館 |

活動トピック2:自治区と中京大が協働したゴミに関わる取り組み 自治区で行う清掃活動に中京大生がお手伝いを行う他、ゴミ出しについての多言語放送、分別ルールの動画づくり、ルール違反のゴミ観察を行って防止用の照明を設置する取り組みなど、チーム団体間で力を合わせることで、今までとは異なるアプローチ・工夫が可能になりました。結果、より多くの住民がゴミ問題を意識するようになってきています。 |

しかし、プロジェクトを進めるなかには、同じように考え、足並みをそろえながらの作業が求められる場合もあるはず。そんな場合の難しさはなかったのでしょうか。
「もちろんありましたよ!一例をあげると、2020年に行った団地住民へのアンケートの時のことです。そこで最も付き合いが長く理解し合っていたはずのトルシーダと私がぶつかったのです」と斉藤さん。
その衝突はアンケート発送間際に発覚したミスの対応だったそう。この件は、話し合いをしたものの、結局、折衷案を見つけられずに、トルシーダがその対応を行ったとのこと。様々な活動を進める中では、実際に保見団地の住民を代表してまとめる立場である人と、斉藤さんたち実行団体のメンバーのように外部から入ってきた人たちの間にも、時には思いの違いから折り合いがつかない場面もあったといいます。それらをうまく乗り越えるためのコツを、斉藤さんは次のように教えてくれました。
「最大のポイントは、相手と一緒に過ごす時間を長く作ることです。何気ないやり取り、雑談を重ねる中で、お互いに気心が知れる関係を築くことができます。」

一方で、住民代表である県営保見自治区自治区 区長の木村さんは、ぶつかり合うことにも前向きです。 「居住者のなかには、外部からさまざまな人たちが入ってきて活動することを反対する人もいます。でも、私は斉藤さんをはじめとした皆さんは県営住宅をよりよくしようとの思いから、さまざまなことに取り組んでくれていることがわかっています。だから大賛成!多少、ルールの壁があったとしても、よりよくなればいいのです。」
多様な人とのつながりの中で活動を実施するためには、衝突を避けることができません。互いの主張が違うのは当たり前。多様性への理解が、活動を前へと進めているのです。
保見団地プロジェクトを支える手
チーム団体以外にも、保見団地プロジェクトの連携は広がっています。例えば、保見団地内には介護・ホームヘルプ事業等を担う「ケアセンターほみ」。ここは、訪問ホームヘルプ、障がい児デイサービス、障がい者の訪問サービス等を行っていて、県営保見自治区で副区長の藤田さんやJUNTOSの吉村さんも児童指導員として勤務しています。センターは、土曜日はJUNTOSの学習支援の場として一般の子どもたちに開放され、子どもたちは宿題をしたり、おしゃべりをしたり、遊んだりして過ごします。
実は、JUNTOSは学習支援を集会所で行っていたのがコロナ禍で使えなくなってしまいました。それを知った「ケアセンターほみ」を運営する上江洲恵子さんが、ケアセンターを使ってもよいとの声を掛けてくれたのです。今は、毎週金曜日にトルシーダと保見プロジェクトで行うフードパントリー・子ども食堂でも、センターの軒下を使わせていただいています。
県営保見自治区 副区長の藤田さんは、ケアセンターほみに関わる中で、気づきがあったといいます。「日本人と外国人には言葉の壁があると言います。でも、わたしは障害をもつ子との関わりを通して、それは関係ないと感じているのです。言葉を話すことができない子は、全身を使って私や上江洲さんに会えた喜びや要求を伝えてきます。言葉がなくても、しっかり私たちに伝わってくるのです。言葉よりも日々を共に過ごすことの積み重ねが、何よりも大切です。これはよりよい保見団地を考えていく上でも、大切な視点だと感じています。」と話してくれました。
「ケアセンターほみ」が単なるケアセンターとしてだけではなく、団地内の人々と保見団地プロジェクトの実行団体やその活動、そして心をつなぐハブセンターになっています。
保見団地プロジェクトは、このように「ケアセンターほみ」に代表される様々な支え手にも恵まれながら、着実に前に進んでいるのです。

活動のビジョンづくりは住民主体で
保見団地プロジェクトを実施中に、新たな出会いがありました。建築家の筒井伸さんです。筒井さんはコロナ禍以前は南米の都市や建築・文化に関する調査や建築設計を主に活動としていましたが、コロナ禍でそれが難しくなり、そこで、学生時代の友人が住んでいた保見団地なら南米に関する活動ができるのではないか、との思いから保見団地プロジェクトのメンバーとなりました。トルシーダが行う移動式公民館やアートプロジェクト(=プラゴミにアイロンを使ってバッグをつくるワークショップ)に参画。現在では、「保見団地プロジェクト」が取り組む保見団地の将来ビジョンを検討する会議のファシリテーターとして関わっています。
筒井さんは、保見団地プロジェクトのビジョンづくりの特徴を次のように話します。
「一般的にまちづくりのビジョン作成は、アンケート調査やマーケティング調査などを行って、その結果を基にまとめるといった作られ方が多いと思います。しかし、保見団地の場合は違います。ワークショップを開くなどして住民の方の意見を聞き、地域の方々がどんな場所を作りたいかといった思いを聴きだし、それを我々が形にします。ですから、もし地域の方々の気持ちが変われば、その段階でビジョンも更新するといった方法です。住民の皆さんの声を聞き入れTrial and error を重ねながら希望のかたちを作り上げていきます」
ワークショップは計4回開催。大人も子どもも外国人も日本人も、様々な人が参加し、だんだんとビジョンが形作られていきました。

こうして2023年2月には、「保見団地将来ビジョンブック」が完成しました。
この中には、「保見団地の歴史」や「将来ビジョン策定のプロセス」などが掲載されているとともに、ワークショップを通じて参加者が体感した多様な価値観を、さらに拡大し未来につなげていこうという思いのもと生まれた、将来ビジョンのコンセプト「保見21世紀のユートピア」というキャッチフレーズや、そのイメージ図なども掲載されています。

2023年3月で休眠預金活用事業の「保見団地プロジェクト」は終了となりましたが、4月以降は「保見団地センター」という名称で活動を引き続き展開していく計画です。
「保見団地プロジェクト」から生まれた様々なつながりを背景に「保見団地センター」は、「将来ビジョン」の実現に向けて、これからも一歩一歩、歩んでいきます。
【事業基礎情報】
実行団体 | <保見団地プロジェクト:チーム構成団体> |
事業名 | 日本社会における在留外国人が抱える課題解決への支援と多文化共生 |
活動対象地域 | 愛知県 |
資金分配団体 | 一般財団法人中部圏地域創造ファンド |
採択助成事業 | <2019年度通常枠>NPOによる協働・連携構築事業副題 :寄り添い型包括的支援で困難な課題にチャレンジ!創造性を応援! |
パブリックリソース財団は、休眠預金等活用事業の中ではまだ珍しい「組織基盤強化」に対して、資金分配団体として支援を行いました。
活動の概要
一般社団法人えんがおは、地域の高齢者や精神・知的障がいを抱えた人、若者などが一緒に集える場づくりをとおして、多様な世代間交流を促進し、孤立の予防と解消に取り組んでいます。活動拠点は栃木県大田原市です。
具体的には、中高生や大学生の勉強場所、高齢者が集う地域サロン、障がい者グループホームなどを全て徒歩圏内に開設し、日常的な交流を意識的に促すことで、コロナ禍でより一層深刻になった孤立対策を進めています。
2021年度に休眠預金を活用し、新たに精神・知的障がい者向けグループホームの男性棟を開設。既存の女性棟の入居者とともに、入居者が日常的に地域と関わりながら生活することが可能となるよう、専門スタッフによるサポートを行いました。
活動スナップ
撮影に同行したJANPIA職員のレポート
車窓から目に入る景色が彩り豊かな季節、一般社団法人えんがおの地域サロンを訪問。ガラスの引き戸をあけると「どうぞ、いらっしゃーい」と、ふたりのおばあちゃんが暖かく迎えてくれました。
もともと酒屋だった2階建ての家屋の1階がサロンとして、2階が中高生・大学生の勉強場所として、地域に開放されています。この日は、近所で暮らしているおばあちゃんたちがお茶をしながら、不登校の中学生や通信制高校に通う高校生、大学生がえんがおのスタッフとおしゃべりしていました。

えんがおでは、高齢者のお困りごとに対応する「生活サポート事業」も行っています。高齢のひとり暮らしが多いため、「電球を交換してほしい」「寒くなってきたから毛布をもう一枚追加したいんだけど、押し入れの奥から出せない」といった依頼が寄せられ、そのサポートをしているのです。
訪問した日も「庭木の植え替えを手伝ってほしい」という依頼があり、スタッフや学生ボランティアがスコップを抱えて出かけていきました。
このように行政の制度からこぼれ落ちるニーズへ対応しながら、つながりが希薄になりがちな高齢者に生活の安心感や社会とのつながりを提供しています。

えんがお代表の濱野さんにお話を伺うと、特にコロナ禍によって高齢者と地域との分断が進んだと感じている、と聞かせてくれました。家に閉じこもりがちになり、認知症が進んだ事例も少なくないそうです。 そんな課題を抱える地域で濱野さんは、えんがおの活動を通じてつくりたい景色があります。
「行政の制度では、どうしても『高齢者』『子ども』『障がい者』などと対象ごとに事業や予算が区切られてしまいます。でもそうやって区切るのではなく、高齢者も子どもも障がい者もみんなが毎日一緒に過ごして『ごちゃまぜな景色』が地域の日常になっている。その状態をえんがおの活動で目指しています」
実際にえんがおでは、すでに「ごちゃませな景色」がうまれていました。お茶飲みをしているおばあちゃんたちがいて、そこに小さい子どもを連れたお母さんが立ち寄る。午後になれば、学校が終わった中高生が宿題をしに来て、仕事を終えた知的障がいのある人がその日の仕事について話をし、大学生がそれに応える、といった日常があります。
精神・知的障がいのある人が地域に関わることのハードルは高いと言われていますが、えんがおでは自然に溶け込み、おじいちゃんおばあちゃんの手伝いをしたり、えんがおのペットの世話をしたりと、それぞれの役割を担っています。
このように精神・知的障がいのあるグループホーム入居者がサロンに溶け込めるようになるまでに、えんがおスタッフの約半年間にわたる丁寧なサポートがありました。グループホーム入居後に生活を軌道に乗せるお手伝いをしたり、高齢者や若者たちの輪の中に入っていけるように声がけや橋渡しをしたりと、意識的に地域の人々とのつながりが生まれるように働きかけをしてきたのです。
今後は、サロンの向かい側に学童保育の施設をオープンする予定もあります。えんがおはこれからも地域の困りごとに寄り添い、一緒に解決策を考え、実践していくとのことです。
【事業基礎情報】
実行団体 | 一般社団法人 えんがお |
事業名 | コロナ禍で分断されたつながりの再構築事業 |
活動対象地域 | 栃木県 |
資金分配団体 | 特定非営利活動法人 とちぎボランティアネットワーク |
採択助成事業 | とちぎ新型コロナウイルス対応緊急助成事業 |