休眠預金活用団体 (NPO等)×企業「SDGsへの貢献につなげる九州マッチング会成果報告会」を開催!

2024年7月17日、JANPIA主催・九州経済団体連合会共催の休眠預金活用団体×企業「SDGsへの貢献につなげる九州マッチング会成果報告会」を福岡市の電気ビル共創館にて開催しました。会場とオンラインのハイブリット開催で、参加者は150名を超え、関心の高さがうかがえました。

2024年7月17日、休眠預金活用団体(NPO等)×企業「SDGsへの貢献につなげる九州マッチング会成果報告会」が開催されました。先立って2023年11月に同会場で実施したマッチング会には、21の実行団体と企業30社が参加。本会では、そこから生まれた30連携(協議中案件含む)の中から5事例についてご紹介しました。

<プログラム>

14:00~JANPIA・九経連 開会の挨拶
14:10~休眠預金活用事業の概要の紹介
14:30~事例紹介(5つの事例)
15:50~パネルディスカッション(5事例の登壇企業)
17:00クロージング

開会の挨拶・休眠預金活用事業の概要の紹介

まずはJANPIAシニア・プロジェクト・コーディネーターの鈴木均、続いて九州経済連合会の堀江広重専務理事が開催の挨拶を行いました。次に、鈴木が休眠預金活用事業の概要を紹介しました。

JANPIAからの挨拶 JANPIA シニア・プロジェクト・コーディネーター 鈴木 均

 動画〈YouTube〉|JANPIAからの挨拶[外部リンク]

九州経済連合会からの挨拶 九州経済連合会 専務理事 堀江広重氏

 動画〈YouTube〉|九州経済連合会からの挨拶[外部リンク]

休眠預金活用事業の概要の紹介 JANPIA シニア・プロジェクト・コーディネーター 鈴木 均

動画〈YouTube〉|休眠預金活用事業の概要の紹介[外部リンク]

資料〈PDF〉|休眠預金活用事業の概要の紹介 [外部リンク]

連携が実現した5つの事例をご紹介

5つの事例紹介では、それぞれ連携企業と実行団体、及びコーディネーター(資金分配団体)が順に登壇して、今回の取り組みや成果、思いなどについて話をしました。福岡出身で京都市ソーシャルイノベーション研究所(SILK)の井上良子氏がコーディネーターを務めました。

ファシリテーター紹介 京都市ソーシャルイノベーション研究所(SILK) 井上 良子氏

 動画〈YouTube〉|ファシリテーター紹介[外部リンク]

事例紹介1|耕作放棄地の活用による事業連携

連携団体の株式会社フリップザミントは、耕作放棄地でハーブを栽培し、フレグランスやお茶などを作る事業を行っています。連携企業の株式会社サワライズは、マッチング会で同社のプレゼンを聞いて、耕作放棄地や廃棄されるものを活用する意義を認識。お互いの課題解決と強みに注目して、幅広い自社の事業と連携する可能性を検討しました。その結果、敷地内でバジルの栽培、ヘアサロン事業で香りの活用、地域イベントでワークショップの企画を行いました。コーディネーターの一般社団法人SINKaは、フリップザミントはマッチング会で4社と縁があり、そのうちサワライズと連携を進めていて、今後一緒に社会インパクトを重視するビジネスを作ることを期待していると語りました。

事例紹介1|耕作放棄地の活用による事業連携
【連携企業】株式会社サワライズ
【連携団体】株式会社フリップザミント
【コーディネーター】一般社団法人SINKa

事例紹介2|職業体験会から始まる就労支援

連携団体のNPO法人未来学舎は、不登校の子どもや社会とつながれない若者を対象に、スクール事業やカフェの運営を行っています。連携企業の株式会社にしけいは、空港の手荷物検査業務などを行う警備会社で、人手不足や企業認知度の向上、SDGsへのさらなる活動に課題を感じていました。そこで、未来学舎の子どもたちに、にしけいが手荷物検査の職業体験会を実施。和気あいあいとした雰囲気で、参加した子どもから「素敵な仕事だなと思いました」「危険なものを1ミリも見逃さない意識で仕事に従事されているところがかっこいい」などの感想が聞かれて、双方が手応えを感じていました。長い目で就労につながっていければとの思いで連携を進めていきます。コーディネーターの一般財団法人ちくご川コミュニティ財団は、マッチング前に就労というニーズを把握し、資金分配団体も含めた関係構築が重要だったと話しました。

事例紹介2|職業体験会から始まる就労支援

【連携企業】株式会社にしけい
【連携団体】NPO法人未来学舎
【コーディネーター】一般財団法人ちくご川コミュニティ財団

動画〈YouTube〉|事例紹介2[外部リンク]

資料〈PDF〉|【連携企業】株式会社にしけい [外部リンク]

資料〈PDF〉|【連携団体】NPO法人未来学舎 [外部リンク]

資料〈PDF〉|【コーディネーター】一般財団法人ちくご川コミュニティ財団 [外部リンク]

事例紹介3|プロボノによる経理業務支援

連携団体の一般社団法人熊本県こども食堂ネットワークは、子ども食堂を運営する有志らが設立した団体です。11月のプレゼンで5つの課題を発表し、その中の1つは会計ソフトを導入したものの活用できていないという内容でした。そこで、会計監査のプロであるPwC JAPAN有限責任監査法人福岡事務所が連携企業として手を挙げました。PwCでは、担当者が会計やシステムに強みのある5人のチームを編成。団体が自走できることを目指して、シンプルなマニュアルを提供するとともに、団体の事務所を訪れて現場支援にあたりました。コーディネーターの認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえは、情報を開示し切ってプロの力をお借りできて、経営の透明性という大事なところをサポートしていただいたと振り返りました。

事例紹介3|プロボノによる経理業務支援

【連携企業】PwC Japan 有限責任監査法人 福岡事務所
【連携団体】一般社団法人熊本県こども食堂ネットワーク
【コーディネーター】認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ

動画〈YouTube〉|事例紹介3[外部リンク]

資料〈PDF〉|【連携企業】PwC Japan 有限責任監査法人 福岡事務所 [外部リンク]

資料〈PDF〉|【連携団体】一般社団法人熊本県こども食堂ネットワーク [外部リンク]

資料〈PDF〉|【コーディネーター】認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ [外部リンク]

事例紹介4|フードドライブから始める街づくり

連携団体の認定NPO法人フードバンク北九州ライフアゲインは、子どもの負の連鎖を断ち切るための手段として、フードバンク事業を展開しています。連携企業の株式会社西鉄ストアは、フードバンクに興味があったものの今まで実現する機会がなく、今回のマッチングをきっかけに北九州の2店舗で初めて実施しました。お客様や従業員から寄付が集まり、企業の価値向上や従業員の教育、自治体との関係性にもプラスの影響があったとのこと。今後も街の課題を解決するスーパーを目指して活動していきたいと思いを語りました。コーディネーターの一般社団法人全国フードバンク推進協議会は、間接的に実行団体の事業成果を高めることで最終受益者に支援を届けられて、企業のSDGsの受け皿にもなったと話しました。

事例紹介4|フードドライブから始める街づくり

【連携企業】株式会社西鉄ストア
【連携団体】認定NPO法人フードバンク北九州ライフアゲイン
【コーディネーター】一般社団法人全国フードバンク推進協議会

動画〈YouTube〉|事例紹介4[外部リンク]

 資料〈PDF〉|【連携企業】株式会社西鉄ストア [外部リンク]

 資料〈PDF〉|【連携団体】認定NPO法人フードバンク北九州ライフアゲイン [外部リンク]

 資料〈PDF〉|【コーディネーター】一般社団法人全国フードバンク推進協議会 [外部リンク]

事例紹介5|団体の講師派遣による防災セミナー

連携企業の城山観光株式会社は、鹿児島で「城山ホテル鹿児島」を運営しています。11月のマッチング会で連携団体であるNPO法人YNFから被災者支援活動について話を聞き、災害支援のあり方や大規模災害への備えについて考えたいとアプローチしました。YNFが城山ホテル鹿児島を訪れ、従業員向けのセミナーを開催。ホテル周辺を視察して災害リスクの調査や備蓄倉庫のチェックも行いました。城山ホテル鹿児島にとって、大規模災害を自分事として捉え、ホテルが地域の二次避難所としても機能できると気づくきっかけになったと話しました。今後中長期的な連携関係に進めていく予定とのこと。YNFは顔の見える関係を作っておかないと、災害が起きてから協力を呼び掛けてもうまく進まないことがあると話しました。コーディネーターの認定NPO法人ジャパン・プラットフォームは、両者ができることと求めることを明確にし、すり合わせを行ったと説明しました。

事例紹介5|団体の講師派遣による防災セミナー

【連携企業】城山観光株式会社
【連携団体】NPO法人YNF
【コーディネーター】認定NPO法人ジャパン・プラットフォーム

動画〈YouTube〉|事例紹介5[外部リンク]

資料〈PDF〉|【連携企業】城山観光株式会社 [外部リンク]

資料〈PDF〉|【連携団体】NPO法人YNF [外部リンク]

資料〈PDF〉|【コーディネーター】認定NPO法人ジャパン・プラットフォーム [外部リンク]

パネルディスカッション

次に、連携企業の5人が登壇し、パネルディスカッションが行われました。まずはファシリテーターの井上氏が全員に対して「休眠預金活用事業だからこそ生まれた学びや価値はどんなところだったか」と質問を投げかけました。サワライズの猿渡氏は「休眠預金活用制度やソーシャルビジネスに触れたことがなく、アプローチ法が全く分からなかったが、マッチング会で糸口が見えてフォローもあり、やりやすくて助かった」、にしけいの勝野氏は「休眠預金活用のことを知らなかった。参加して3団体とマッチングできた。日頃のビジネス上のお付き合いとは違い、団体とのつながりから地域貢献や弊社のプラスになる事業が生まれてくるのではないかと期待している」、PwCの實政氏は「11月のマッチング会のピッチでは、連携団体が自分たちの課題と支援ニーズを簡潔に話されたので、自分たちがどの団体に何を提供できるか分かりやすかった」、西鉄ストアの渡邉氏は「皆さんと打ち合わせをする中で、それぞれの立場からアドバイスやサポートいただき、流れとして素晴らしいと思った」、城山観光の安川氏は「マッチング会当日はYNFさんと挨拶できずに帰ったが、JANPIAの方から何度もフォローいただいたので今回の企画を実現できた。マッチング会では九州全域でいろいろな団体が活動していると知り、さまざまな気づきがあった」と話しました。話を受けて、井上氏は「マッチング会の前後にもフォローや仕組みができていたからこそ、これだけのマッチングが成立したと改めて浮き彫りになった」とコメントしました。

次に、井上氏から各社に個別の質問をして、話を掘り下げていきました。もともと事業連携の機会が多かったのかと問われたサワライズの猿渡氏は「いろいろやってきたが、ソーシャル分野は糸口がなかった。今回の出会いによって種から芽が出てきたので、収穫までいけたらと思う」と答えました。就労支援を意識して、どんなことをしていきたいかと聞かれたにしけいの勝野氏は「弊社では子ども防犯教室などをやっていて、社会貢献としても仕事体験や経験の場を提供していきたい。最終的ににしけいに就職する人が出てくればいいかなと思っている」と話しました。支援チームの5人について問われたPwCの實政氏は「大阪と東京、福岡のメンバーで、会計に強い人やシステムに強い人などを集めて組成したことで、うまくいった。メンバーから自分たちにも多くの気づきがあるなどポジティブなフィードバックをもらった」と言いました。フードドライブをきっかけに街づくりにも発展させていきたいという意向を井上氏に確認された西鉄ストアの渡邉氏は「企業は利益を追い求めるので、その視点からNPO等との連携メリットなどについて社内でいろいろ説明して協力してもらい、ようやく1歩を踏み出せた。いろんな地域で広がっていけばと思う」と話しました。マッチング会に参加する前にどんな課題感があったのかと問われた城山観光の安川氏は「災害がいつ起こってもおかしくないという危機感を持って取り組んでいたかというと、そうではなかった。会社として災害分野で寄付をしてきたが、YNFの江崎さんの話を聞いて、必要なものを必要なときに必要な人に届けられていたかなと考えた。江崎さんの話を多くの人に聞いてほしい」と話しました。

続いて、井上氏から全員に「今回の経験を通常業務にどのように活かすか」と問いかけました。サワライズの猿渡氏は「今回つながってみて、意外と簡単にできると分かった。地域ごとに定期的に交流を続けていくことがいいのかなと思う」、にしけいの勝野氏は「公立の学校には常設されているAEDが、フリースクールには設置されていない。地域の防災や安心安全につながっていくように、行政の力を借りるなどして、配置できるように考えていかなければと思った」、PwCの實政氏は「取り組みとして点と点が結びつくだけでなく、こういう機会のように面と面が向き合って対話することが大事だと気づいた。」、西鉄ストアの渡邉氏は「従業員が働く意義を感じてモチべーションアップにつながると思う。また、スーパーは地域のプラットフォームで公民館的な存在として、いろんな人とつながって活動が発展する中心になれればと望んでいる」、城山観光の安川氏は「ホテルに泊まっている間に幸せであるのはもちろん、ホテルに関わったステークホルダーと一緒にウェルビーイングを目指していきたい。こういう場で得たつながりをどう継続していくかを考えながら、お互いに無理しない形で関係を作っていくことが大切だと思う」と話しました。

会場の参加者から全員に「今後も継続して支援していくつもりか」と質問が出ました。サワライズの猿渡氏は「支援というよりビジネスパートナーで、一緒に利益を生み出して社会に還元する発想でやっている。弊社にはいろいろなアセットやナレッジがあり、お互いに活かせば社会にいいものを残せる、お互いに良くなればいいなと思う」、にしけいの勝野氏は「3者と連携していて、継続して取り組んでいきたい。社会貢献的な活動がいずれ自社の採用に返ってくればいいと思っている」、PwCの實政氏は「こういう機会をたくさん作っていきたい。オフィシャルには期限を決める必要があるが、関係を続けていきたい」、西鉄ストアの渡邉氏は「事業を継続し拡大していきたい。デジタルを活用したマッチングもできるといいなと思う」、城山観光の安川氏は「ホテルとしてはコロナ禍に危機に直面し、地域の持続可能性と企業の持続可能性は相関関係があると痛感した。いらっしゃるお客様が幸せであればいいだけでなく、地域全体がどう幸せで持続可能であるかを追求して、活動を継続していきたい」と答えました。

最後に井上氏は「今後やっていきたいことをアピールしてください」と伝えました。サワライズの猿渡氏は「事業をやって、しっかりマネタイズして続けていくことが重要だと思っている。弊社にはいろいろな事業があるので、興味を持っていただけたらお声がけください」、にしけいの勝野氏は「留学生の就労支援として外国人雇用を本格的にスタートするので、アドバイスをいただければうれしい。また、幼稚園や学校でやっている防犯教室を、学校に行けない子どもが通うところでも実施していきたい」、PwCの實政氏は「社会課題に興味を持つ人が入社することも増えている。今、九州・山口で6つの休眠預金を活用する団体を支援していて、横につなげられるといいなと思っている」、西鉄ストアの渡邉氏は「九州の人がさらに地域を好きになれる街づくりを行っていきたい。全てのステークホルダーとつながって、ビジネスの循環もサステナビリティも両立させる街を目指したい」、城山観光の安川氏は「何ができるか日々考えながら取り組みを進めているが、ホテルで働いているだけでは気づけないことがある。団体さんからもお声がけいただきたい」と呼びかけました。
 井上氏は「連携で大事なことは、自分たちでは見えていない可能性を一緒に探せることだと感じた。また、九州だからこその可能性があって、地域に根差す企業の皆様だからこそパートナーになりやすい。地域発のモデルケースを皆様と一緒に生み出して、ひいては日本全体が元気になればすごく楽しみだと思った」と総括しました。

パネルディスカッション

 動画〈YouTube〉|パネルディスカッション[外部リンク]

2024年7月17日に開催しました「休眠預金活用団体(NPO 等)×企業『SDGsへの貢献につなげる九州マッチング会 成果報告会』」の動画をご紹介します。

2023年11月に実施したマッチング会には休眠預金活用21実行団体と企業30社が参加。そこから生まれた30連携(協議中案件含む)の中から5事例をご紹介します。

<プログラム>

■開会の挨拶
 動画▶ https://youtu.be/f7GXdjTRnV8

■九経連の挨拶
 動画▶ https://youtu.be/H_8jtGmqRwo

■休眠預金活用事業の紹介
 動画▶ https://youtu.be/XkhGd-MsrG0

■ファシリテーター紹介
 動画▶ https://youtu.be/Og3q1HawjbQ

■事例紹介1:耕作放棄地の活用による事業連携
 動画▶ https://youtu.be/1VRWp9P5fXU

  • 【連携企業】株式会社サワライズ
  • 【連携団体】株式会社フリップザミント
  • 【コーディネーター】一般社団法人SINKa
  •  

■事例紹介2:職業体験会から始まる就労支援
 動画▶ https://youtu.be/4p8kmP31t0U

  • 【連携企業】株式会社にしけい
  • 【連携団体】NPO法人未来学舎
  • 【コーディネーター】一般財団法人ちくご川コミュニティ財団
  •  

■事例紹介3:プロボノによる経理業務支援
 動画▶ https://youtu.be/RtkbsfhPzzA

  • 【連携企業】PwC Japan 有限責任監査法人 福岡事務所
  • 【連携団体】一般社団法人熊本県こども食堂ネットワーク
  • 【コーディネーター】認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ
  •  

■事例紹介4:フードドライブから始める街づくり
 動画▶ https://youtu.be/zYjuYP77YPg

  • 【連携企業】株式会社西鉄ストア
  • 【連携団体】認定NPO法人フードバンク北九州ライフアゲイン
  • 【コーディネーター】一般社団法人全国フードバンク推進協議会
  •  

■事例紹介5:団体の講師派遣による防災セミナー
 動画▶ https://youtu.be/YVrg4UHDLWE

  • 【連携企業】城山観光株式会社
  • 【連携団体】NPO法人YNF
  • 【コーディネーター】認定NPO法人ジャパン・プラットフォーム
  •  

■パネルディスカッション
 動画▶ https://youtu.be/xmSSFeMiJJQ

大阪府富田林市を拠点に、差別のない人権尊重のまちづくりの実現に向けて活動する「一般社団法人富田林市人権協議会」。時代の移り変わりから、地域コミュニティの低下が懸念されている昨今。2019年度の休眠預金活用事業(通常枠)では、「オープンなつながりでコミュニティをつなぎ直す」をテーマに、集いの場・居場所づくりや地域有償ボランティアシステムづくりなどに取り組みました。2022年度に採択された事業では、子ども食堂や居場所づくりをサポートしています。 今回は、同団体事務局長の長橋淳美さんにこれらの取り組みについてお話を伺いました。”

活動を始めたきっかけとは

富田林市人権協議会は、1984年に部落問題解決のための団体として設立されました。その後、市全域の人権問題全般を扱うようになり、現在は、人権相談に加え、就労支援事業、交流イベント事業、高齢者向け配食事業、子ども食堂や居場所の運営など幅広い活動を行っています。

お話を伺った、一般社団法人富田林市人権協議会 事務局長 長橋さん
お話を伺った、一般社団法人富田林市人権協議会 事務局長 長橋さん

「1922年に全国水平社(※)が結成された直後、地域内にも河内水平社が設立され、部落解放運動が盛んな地域ではありました」

昭和になり、国を挙げて部落問題に取り組む中で、児童館や市営住宅などが建設されます。その一つが、現在富田林市人権協議会の事務所がある富田林市立人権文化センターで、もともと解放会館と呼ばれていました。

「水平社結成から100年を迎えた今も、部落差別は解決していません。さらに、すべての人の人権を守るためには、福祉の充実が欠かせないという考えの基、市内で先駆けて始めたのが高齢者向けの宅配事業や子ども食堂といった福祉事業です」


※1922年に日本で初めて結成された全国的部落解放運動団体。2022年に結成100年を迎えた。

ニーズ把握から始まった「I♡新小校区福祉プロジェクト」

富田林市人権協議会が活動するのは、近鉄富田林駅から徒歩5分ほどの利便性の良いエリア。市内16校区あるうちの、富田林市新堂小学校区にあたります。市街地でありながら、中世からの古い街並みを残した町、駅近に新たに建てられたマンション群、海外からの労働者も多い中小企業団地などが混在し、さまざまな背景のある人々が暮らしています。

新堂地区の街並み
新堂地区の街並み

これまで新堂小学校区は、だんじり祭りを代表するように「古い町を中心に強い絆で結ばれていました」と話す長橋さんですが、時代の移り変わりと共に地縁は薄れつつあります。

「だんじりの引き手も少なくなり、地域コミュニティ力に綻びが生じてきています。同和問題にもアプローチしながら、地域の絆づくりに貢献できないかと考え、2019年度の休眠預金活用事業の助成(資金分配団体:一般財団法人 大阪府地域支援人権金融公社 )を受け、I♡新小校区福祉プロジェクトを開始しました」

I♡新小校区福祉プロジェクトの目標は三つあります。①身近な集の場づくり②誰もが参加できるボランティア活動の仕組みづくり③子どもを対象とした学習支援と居場所づくりです。

プロジェクトに取り組むにあたり、まずは住民のみなさんにアンケートを実施しました。 アンケートでは、「町内会へ加入しているか」「地域活動に参加したことがあるか」「今後やってみたいボランティア活動は何か」など、地域活動やボランティアに興味のある人のニーズを探りました。 校区の5,224世帯にアンケート用紙を配布し、回収率11.0%となる588の有効回答がありました。 アンケートからは、地域活動を活発にしていくためには、楽しく、学べて、たくさんの人と交流できる取組を行っていくことのニーズがあることがわかりました。同時に、悩みや困りごとを聞いたところ、健康や老後が気に掛かっている人が多く、孤独死を身近に感じている人が全体の46.1%いることが明らかになりました。

プロジェクトに取り組むにあたり、まずは住民のみなさんにアンケートを実施しました。 アンケートでは、「町内会へ加入しているか」「地域活動に参加したことがあるか」「今後やってみたいボランティア活動は何か」など、地域活動やボランティアに興味のある人のニーズを探りました。 校区の5,224世帯にアンケート用紙を配布し、回収率11.0%となる588の有効回答がありました。

アンケートからは、地域活動を活発にしていくためには、楽しく、学べて、たくさんの人と交流できる取組を行っていくことのニーズがあることがわかりました。同時に、悩みや困りごとを聞いたところ、健康や老後が気に掛かっている人が多く、孤独死を身近に感じている人が全体の46.1%いることが明らかになりました。

「57.3%が地域活動に参加したことがあると答え、7割程度の住民は機会があればボランティア活動を行ってもいいと考えていました。アンケートから、私たちが把握できていない、ボランティアをしたいという潜在的ニーズがあることがわかりました」

コロナ禍、集まれないからこそ生まれた数々の取組

そのような矢先、新型コロナウイルス感染症が蔓延。「①身近な集の場づくり」として、当初、各町の集会所を利用して、地域住民の集いの場・居場所づくりに取り組む計画を立てていましたが、見直しを余儀なくされます。
外出自粛により集まれない中、人と人の繋がりを強めたのが、SNSを活用した新たな繋がりづくりでした。

「プロジェクトメンバーもITツールには疎いのですが、スマホ教室、LINE活用教室を実施し、学びました。I♡新小校区福祉プロジェクトの公式LINEアカウントも開設し、情報発信をしています。プロジェクトの会議もLINE通話を使ってできるようになりました」

また、集まれないことを逆手にとり、2021年3月に「新小校区まち歩きスタンプラリー」を実施。校区に6ヶ所のスタンプポイントを設け、スタンプの数に合わせて景品をプレゼントする仕組みで、のべ833人が参加しました。

スタンプラリーの様子
スタンプラリーの様子

「助成金でお菓子やタオル、ティッシュなどを購入し、集めたスタンプの数に合わせてお渡ししました。長年、地域に住んでいても行ったことがない場所も多く、新たになまちを発見する機会になったとの声が届いています。また、小さいお子さんから家族連れ、高齢者までさまざまな方が参加できる企画で、楽しかったという方が多かったですね」

好評のため、2022年11月には第2回を開催。スタンプポイントも6ヶ所から8ヶ所に増やし、のべ1442人が参加しました。2023年11月には第3回を実施し、のべ2000人が参加。地域イベントとして定着しつつあります。

「スタンプポイントではクイズやゲームを準備しました。そのうちの1ヶ所では、公式輪投げ競技を取り入れていたのですが、子どもや高齢者、障害のある人など誰でも参加でき、健康づくりや世代間交流に効果があることがわかりました。校区全体に広げようと、助成金で輪投げセットを購入し、講習会を開催しました」

今後は、校区内で町会対抗輪投げ大会の開催を目指しているとのこと。また、新しいスポーツとして、市内全域に広げていくことをも視野に入れて活動を始めるなどの波及効果も生まれています。

ニーズを顕在化した、ボランティア活動の仕組みづくり

こうしたスタンプラリーや輪投げ競技の実施を支えるのが、ボランティアスタッフです。「②誰もが参加できるボランティア活動の仕組みづくり」に向けて、I♡新小校区福祉プロジェクトでは、2021年3月から4月にかけて5回のオリエンテーションを開催し、ボランティアへの参加を募りました。

「これまで知り合いのツテを頼ってボランティアスタッフを探してきましたが、地域イベントの開催以外にも、高齢者向けの配食協力や子ども食堂の運営など活動が広がり、人手が足りなくなりました。オリエンテーションにてでは各回、約10名ずつの参加があり、私たちと繋がりがない人も足を運んでボランティア登録してもらうことができました」

ボランティア活動にはさまざまなものがあり、個々の希望に合わせてお願いをしています。例えば、子ども食堂のボランティア。毎週木曜日に富田林市立人権文化センターで実施しており、コロナ禍以前は70〜100食、コロナ禍では弁当形式で60〜70食を提供していました。調理ボランティアは午後2時から下ごしらえ、午後5時までに弁当を詰めて、子どもが来たら受け渡しをしています。

また、かねてから富田林市人権協議会では、ひとり暮らしの高齢者や体が不自由な校区内の高齢者に向けて毎日昼食を届けています。お弁当を届けながら、声をかけて安否確認をしたり、必要に応じて関係機関への繋ぎを行ったりするのがボランティアの役割です。

子ども食堂、配食の様子
子ども食堂、配食の様子

こうした活動に継続的に携わってもらえるよう、2021年4月には「わくわくボランティアカード」を考案。ボランティア参加1回につき1個のスタンプを押し、スタンプの個数に応じて商品券と交換できるようにしました。

「スタンプ10個なら地元のスーパーで使える500円分の商品券、スタンプ20個なら地元の婦人服店で使える1000円分の商品券に交換できます。これが予想以上に好評で、みなさん楽しみながらスタンプを集めてくれました」

2023年1月時点で、ボランティア登録は107名、ボランティアカードを利用した方はのべ1290回になり、繰り返しボランティアに参加してくれていることがわかります。

子どもの学習支援と居場所づくりにも着手

富田林市人権協議会は、こうして新たな企画にも積極的にチャレンジしてきました。2018年から始めた子ども食堂の運営も、当時、市内では初となる取り組みでした。その中で、長橋さんはかねてより子どもの学習支援の必要性を感じていたと振り返ります。

そこでプロジェクトの3つ目の目標に掲げたのが、「③子どもを対象とした学習支援と居場所づくり」です。

「子ども食堂を実施し、子どもを家まで送っていくこともありました。すると、特にひとり親家庭では誰もいない真っ暗な家で子どもが一人で過ごす時間が多いこともわかってきました。勉強に集中できる学習環境が整っていないことを目の当たりにし、どうにか学習支援を実施したと考えたいたのです」

実施に動き出す後押しとなったのが、今回の休眠預金活用事業でした。2022年4月から、子ども食堂と連携した小学生学習支援活動「ぽかぽか」を毎週木曜日の17〜19時、中学生向けの学習支援活動「陽だまり」を毎週火曜日18時半から19時半まで実施しています。

「発達障害のお子さんもいますので、一対一で学習支援ができる環境が理想です。謝礼金を確保できたことで、ボランティアの登録者が10数名増え、丁寧な関わりができるようになりました。高齢者のみならず、元教師や近隣大学の学生ボランティアも活躍してくれていますよ」

「ぽかぽか」に通っていた子どもが中学生になり、ボランティアとして受付など手伝いに来てくれるケースもある
「ぽかぽか」に通っていた子どもが中学生になり、ボランティアとして受付など手伝いに来てくれるケースもある

富田林市人権協議会では、学習支援の中で、勉強を教えるだけではなくレクレーションの時間もとっています。「ぽかぽか」では毎週後半の時間にボランティアの特技を活かしたレクレーションを実施し、ツアーコンダクターをしている人が「バーチャル海外旅行〜入国審査体験〜」を開催するなど、子どもが楽しみながら社会体験できる機会をつくっています。

実行委員会形式だからこその連携が活きた

プロジェクト発足時に掲げた3つの目標に向けて着実に成果をあげてきた富田林市人権協議会。しかし、これらは富田林市人権協議会のみの力で成し遂げられたものではありません。

「主体は私たちですが、民生・児童委員や社会福祉協議会、地域の診療所で構成されるメンバーでI♡新小校区福祉プロジェクト実行委員会を結成し、助成いただいた3年間、月に一度、定期的に委員会を開催し、市や小学校とも連携して事業を進めてきました」

ニーズ調査のために実施したアンケート調査で、校区全域を対象にし、全世帯に配布することができたのも、各町会の役員さんの力添えがあったから。また、スタンプラリーではスタンプポイントの設置や運営に当たっても、各町会の協力があったことで、校区内一体となった取組にすることができました。

ボランティア活動を入り口に、広がる可能性

多くの人の協力を得て、助成期間の3年を走り切った富田林市人権協議会。地域コミュニティを育むために実施した、まち歩きスタンプラリーやボランティアシステムづくり、子どもの学習支援と居場所づくり以外にも、さまざまな成果が現れ始めています。

代表的な例が、ボランティアから民生委員になった井上結子さんです。
かつて社会福祉協議会のボランティア活動に参加しながらも、病気で体の不調から一時的に離れていた井上さん。しかし、何かしら地域に貢献したいと、アンケートにボランティア希望と記載いただき、熱いオファーが届きました。

「最初にとったアンケートで一番に連絡をくれたのが井上さんでした。社会福祉協議会の和田さんと面識があったので、すぐさま連絡をとってもらい、関わってもらうことにしました。体の調子に合わせて、高齢者配食のボランティアから始めてもらい、今では子ども食堂や学習支援にも協力してくれています。また、さまざまなところに顔を出されて地域住民からの信頼される存在になり、今では民生委員も担ってくれています」

「家から近いので無理なくボランティアに通いやすい」と井上さん。
「家から近いので無理なくボランティアに通いやすい」と井上さん。

以前は、井上さんの体調を心配したお子さんが、定期的に顔を出してくれていたとのことですが、ボランティア活動を始めてから日に日に元気になる姿を見て安心し、今では逆に用事をお願いされたりするようになったそう。

また、「民生委員の役割も変わってきた」と、以前から民生委員を代表してプロジェクトに関わっている川喜田敏音さんは話します。

「コロナ以前、この取り組みが始まるまでは、民生委員を名乗っているだけで積極的に活動されている方は少ないのが現状でした。しかし、プロジェクトが始まったことで、活動の幅が広がりました。スタンプラリーの時には、民生委員を各ポイントに配置して、まちのことを紹介したり、地域住民と会話をしたりしてもらうことができました。同じ地域に住んでいても、同じ学区でも距離が離れていると、接点がなく、知らないこともたくさんあります。僕らの活動を紹介する機会が増え、ネットワークも広がったのが大きな成果です」

川喜田さん
川喜田さん

市内全域に子どもの居場所をつくる、次のチャレンジへ

2022年度で助成期間は終了しましたが、その後も、取り組みは「新堂小学校区交流会議」と連携する形で継続しています。

また、2022年度には、富田林市社会福祉協議会とNPO法人きんきうぇぶとコンソーシアムを組み、特定非営利活動法人全国こども食堂支援センター・むすびえ が実施した休眠預金活用事業(通常枠)の公募に採択され、「人をつなげ支え合う持続可能な富田林市子ども食堂・居場所づくりトータルコーディネート事業 」に取り組んでいます。

「これからはますます居場所づくりが求められるのではないかと思い、チャレンジすることにしました」

目指すことは二つで、一つは市内16校区全てに、地域住民が誰でも訪れられるこども食堂や居場所を作ること。もう一つは、既存の子ども食堂や地域の居場所が持続的に運営していけるよう地域フードバンクを設立し、安定的な食材提供ができる環境を整えることです。

「生活保護や社会保険等の制度のはざまが大きく、僕らのところに相談があるのは働いていても困窮に陥っているワーキングプアの方が中心です。失業したり出産したりして働けなくなった途端に、生活が不安定になってしまう。そのような方に、子ども食堂で食事を食べてもらい、安定的な仕事を提供できるようにしたいです。ゆくゆくはフードバンクも雇用の場にしていければと考えています」

地に足のついた事業を続けてきたからこそ見えてきた地域ニーズ。そして、それに必要な事業を外部のリソースと内部のネットワークや担い手を組み合わせて展開してきた富田林市人権協議会。
「今後はファンドレイジングも強化しながら、事業を継続していきたい」と、長橋さんは意気込んでいました。

【事業基礎情報①】

実行団体

富田林市人権協議会

事業名
あい新小校区福祉プロジェクト
活動対象地域
大阪府富田林市
資金分配団体
一般財団法人 大阪府地域支援人権金融公社
採択助成事業2019年度通常枠

【事業基礎情報②】

実行団体

富田林市人権協議会

<コンソーシアム構成団体>

・特定非営利活動法人 きんきうぇぶ

・実行団体名 社会福祉法人富田林市社会福祉協議会

事業名
人をつなげ支え合う持続可能な富田林市子ども食堂・居場所づくりトータルコーディネート事業
活動対象地域
大阪府富田林市
資金分配団体
特定非営利活動法人全国こども食堂支援センター・むすびえ
採択助成事業2022年度通常枠

休眠預金活用事業の成果物として資金分配団体や実行団体で作成された報告書等をご紹介する「成果物レポート」。今回は、実行団体『保見団地プロジェクト[資金分配団体:一般財団法人 中部圏地域創造ファンド〈19年度通常枠〉]』が発行したパンフレット『保見団地将来ビジョンブック』を紹介します。

保見団地将来ビジョンブック

「住みやすく楽しい保見団地に」という想いのもと、色々な団体や人たちの力を合わせて3年間取り組んできた保見団地プロジェクト。
コロナ禍での苦労も乗り越え、その成果として、わたしたちの「夢」がたくさんつまった将来ビジョンが作成できたことを、心から喜んでいます。
この将来ビジョンを作成した後も、住民の方々と一緒に様々な取組を行い、ビジョンに盛り込まれた「夢」をひとつでも多く、現実のものにしていきたいと思っていますので、今後とも、よろしくお願いします。

 

【事業基礎情報】

資金分配団体一般財団法人 中部圏地域創造ファンド
事業名

日本社会における在留外国人が抱える課題解決への支援と多文化共生

活動対象地域愛知県
実行団体<保見団地プロジェクト:チーム構成団体>
愛知県県営住宅自治会連絡協議会
県営保見自治区
特定非営利活動法人 トルシーダ
保見プロジェクト(中京大学)
外国人との共生を考える会
採択助成事業<2019年度通常枠>

NPOによる協働・連携構築事業

副題:寄り添い型包括的支援で困難な課題にチャレンジ!創造性を応援!