1月15日、一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)は「能登半島地震支援団体、地元団体からの緊急発信:被災者支援と復興への道筋」と題して、メディア向け報告会を開催いたしました。昨年末より、JANPIAでは同日に別テーマでの「メディア懇談会」を開催する予定で準備を進めていました。そのような中、元日に起きた令和6年能登半島地震を受けて、急遽テーマを変更して開催したものです。その内容の一部を紹介いたします。 なお、本報告会では、評論家でラジオパーソナリティーでもある荻上チキさんが進行を務めました。”
「能登半島地震における被災者支援と復興への道筋」
【登壇者】
・認定NPO法人ジャパン・プラットフォーム 地域事業部部長 藤原 航 さん
・NPO法人ワンファミリー仙台 理事長 立岡 学 さん
・NPO法人YNF 代表理事 江﨑 太郎 さん
資金分配団体であるジャパン・プラットフォーム(JPF)の実行団体であるワンファミリー仙台とコンソーシアムを組むYNFは、「防災・減災に取り組む民間団体等への災害ケースマネジメントノウハウ移転事業 (2020年度通常枠)」のなかで、2023年5月に起きた奥能登地震による被災者の生活再建支援を進めるため、1月4日から石川県珠洲市に向かう予定でした。しかし、令和6年度能登半島地震発災を受けて急遽、珠洲市での緊急支援に入りました。
今回のメディア向け報告会では、JPFとワンファミリー仙台、YNFの3団体にそれぞれの立場から「能登半島地震支援団体、地元団体からの緊急発信:被災者支援と復興への道筋」をテーマお話いただきました。
甚大・頻発化する国内災害。行政と民間の力が必要
報告会では、まずJPFの藤原さんから、国内災害が年々甚大化・広域化し、地震や豪雨など含めて頻発化しているなか、もはや行政の支援だけでは間に合わず、民間と行政と両方の力が必要になっているという状況について説明がありました。
「災害が頻発している一方で、防災や減災のソフト面の整備には、なかなかお金がつきにくいのが現状です。2020年度通常枠で採択された3年間の休眠預金活用事業によって、私たちは念願だった防災・減災に取り組むことができました。具体的には、避難所の運営ノウハウや被災者の個別支援、生活再建の方法、発災時の物流や在留外国人支援などに対して、災害リスクの高い地域での民間支援団体や自治体とともに体制の整備を進めてきたところです。能登半島地震でも残念ながらこうした課題が出ています」(藤原さん)
現在、JPFでは能登半島地震の被災者支援にあたって休眠預金や民間資金なども使いながら、「人命救助」「二次被害防止(物資やQOLの維持)」、「生活再建事業」の3つに取り組んでいます。そのなかで、いま必要とされている緊急的な支援を行いながらも、なるべく早くに長期的な支援を見据えた「生活再建事業」に着手することが重要になると藤原さんは訴えました。JPFは、実行団体であるワンファミリー仙台やYNFを通じて、被災者一人ひとりの状況に寄り添った支援を行う「災害ケースマネジメント」の被災地での適用を進めているところです。
「昨年7月に秋田で起きた豪雨災害でも、いまだに家屋が修繕できていない状況で暮らしている人たちがいます。能登半島地震でも、今後、被災地の報道がされなくなったあとに取り残されてしまう人たちが出てくることが懸念されます。そうならないように支援に取り組んでいきたいと思っています」(藤原さん)
「災害ケースマネジメント」で生活再建を支える
ワンファミリー仙台の立岡さんからは、東日本大震災のときに被災者の仮設住宅への入居から転居までの長期にわたる支援に関わってきた経験から、能登半島地震の被災者の方々にとって必要になってくるのは「この先の見通し」であるというお話がありました。
「いま国でも進められている『災害ケースマネジメント』は、被災者一人ひとりの状況をしっかり把握して、その人に寄り添った生活再建を支えていく考え方です。能登半島地震はまだ緊急支援のフェーズではありますが、これから被災者が仮設住宅などに移っていく段階において、見守りや相談支援のセンター機能をつくり、きちんとした支援体制を構築していく必要があります」と立岡さん。
その際に厚労省の「被災者見守り・相談支援事業」を能登半島地震でバージョンアップしながら生かすことができるのではないかという提案もありました。
「被災地域では高齢化が進んでいるため、今回の避難によって人口減少がさらに進むのではないかという不安を抱えながら行政職員は支援にあたっている状況です。地域から人口を流出させない、街をなくさないという発想のもと、自力で広域避難している人たちへの自治体からの情報発信などのアプローチなども施策にしっかり入れていく必要があるだろうと思っています」
報告のなかで立岡さんは、これまでの災害から得た知見を活かし、「この先どうしたらいいのか」という不安を抱えている被災者への丁寧な情報発信や、避難所での生活を含めた被災者の状況把握、共通アセスメントシートによるデータの蓄積、行政部局を横断した連携など、生活再建までのきめ細やかな支援体制を整える必要性を強調しました。
関心が薄れていかないようメディアの力を
最後に、石川県珠洲市内で連日支援にあたっているYNFの江崎さんからは、現状についての報告をいただきました。
「いま感じている大きな課題は、断水や道路の寸断、雪などが原因となった生活環境の悪さです。避難所での食事の質も低く、冷たい床の上で高齢者が寝ている光景は珠洲市では珍しくありません。また、、南から北へ向かうルートしかない地理的状況ですべての道路が被災しており、『陸の孤島』での支援の難しさを痛感しているところです」
1月3日に珠洲市に入った江崎さんは、住民や役所の方たちが「これは長期戦になる」と口にしていたことが印象的だったと話します。その一方で、近年の災害では中長期的な支援が十分に行われてこなかったことを指摘。
「私たちの団体では、珠洲市で能登半島地震の支援をしながら、いまも福岡県久留米市で昨年7月に発生した豪雨災害の被災者対応を続けています。各地で災害が頻発していますが、官も民も支援体制がまだまだ足りていません。そうしたなか、休眠預金活用事業で、この3年間にわたって『防災・減災に取り組む民間団体等への災害ケースマネジメントノウハウ移転事業』を続けてきたおかげで、今回の能登半島地震では支援の初動がスムーズにできたと感じています」(江崎さん)
能登半島地震では一般のボランティアがなかなか入りにくい状況が続いていますが、江崎さんは「全国からの関心が過疎化を防ぐ一助にもなる。本格的にボランティアが入れるのは暖かくなる春以降ではないかと思いますが、それまでに皆さんの関心が薄れてしまうことを恐れています。どうぞ、そういったところでもメディアの皆様の力を貸していただきたい」と話し、報告を締めくくりました。
「令和6年能登半島地震 災害支援基金の立ち上げについて」
【登壇者】
・公益財団法人 ほくりくみらい基金(石川県) 代表理事 永井 三岐子 さん
ほくりくみらい基金は、全国コミュニティ財団協会(CFJ)が実施する休眠預金活用事業2021年度通常枠助成「地域の資金循環とそれを担う組織・若手支援者を生み出す人材育成事業」で採択され、石川県初のコミュニティ財団として2023年4月に設立された団体です。代表理事の永井さんから被災地や基金の現状、今後の支援についてお話をいただきました。
発災後、すぐに立ち上げた「災害支援基金」
2023年4月に設立された石川県初のコミュニティ財団「ほくりくみらい基金」ですが、設立後すぐに奥能登地震が起こり、その際にはボランティアのマッチングなど人と人をつなぐ支援を行いました。さらに設立から1年も経たない2024年の元日に起きたのが能登半島地震でした。
「理事メンバーのひとりが奥能登に住んでいることもあり、急いで安否確認をするとともに、周辺情報の収集を始めました。1月2日にはCFJと緊急会議を開き、被災地で支援活動を行うNPO等の団体を応援するための基災害支援基金を立ち上げました」と永井さん。
災害支援資金の呼びかけに対して、クラウドファンディングを通じて9日間で1000万円以上が集まり、1月12日には第1次緊急助成プログラムとして総額200万円の公募を開始。1月15日時点で8団体への助成が確定しました(※現在は第3次緊急助成プログラム募集が終了)。
「通常の助成では審査にある程度の時間をかけますが、今回は緊急のためスマホからも申請でき、審査をスピーディにして、申告者負担を減らすことを意識しました。申請から24時間で審査をして、各団体に最短3日で資金を届けています」
今回、ほくりくみらい基金が助成した各団体では、被災者への食事提供、炊き出し、ペット猫・地域猫の捕獲と保護、避難高校生の学習支援、被災地での子ども預かりと専門家による育児支援など、さまざまな支援活動を行っています。
「設立から間もない私たちが、震災から2週間ほどでこうした活動を実現できたのは、休眠預金活用事業の資金分配団体であるCFJや、その実行団体である各地のコミュニティ財団との連携があったからです」
中長期支援で市民団体と地域の未来をつくる
今回、地震によって被災したのが農林水産業や輪島塗といった、生業と生活が強く結びついた方が多い地域であることから、「避難によって自分の街を離れたら『もう戻ってこられないのではないか』という住民の不安や恐怖は大きい。そのなかで避難をお願いする行政側のつらさも非常に感じています」と永井さん。
今後に向けては、やはり「中長期の支援」の必要性を挙げていました。
「災害支援基金によって立ち上がった緊急支援は、被災者の『今』を助けるものですが、今後は私たちが助成・支援する市民団体のアンテナを通じて、どの地域がどんなフェーズにあるのかを的確に把握して支援していく必要があります。そして、今回支援に立ち上がった市民団体を支援・育成しながら支援ネットワークを構築し、一緒にこれからの地域の未来をつくっていくことが必要だろうと思っています」
休眠預金活用事業での能登半島地震への支援
今回の報告会では、いまだ緊急的な支援が必要な能登半島地震の被災地での現状とともに、今後の生活再建や地域復興を見据えた中長期的な支援体制を構築することの大切さや、継続的なメディア報道による支援の必要性が伝えられました。
JANPIAでは、2023年度「原油価格・物価高騰、子育て及び新型コロナ対応支援」の第5次募集において、能登半島地震の影響によって深刻化、顕在化した社会課題への緊急的な支援などを対象とした事業を採択しました。また、来年度以降は、通常枠において、生活再建や地域復興にむけた支援に関する資金分配団体などの申請を是非お待ちしております。
当日の様子
なお、今回の報告会では、登壇者の皆様に加え、メディア論をはじめ、政治経済やサブカルチャーまで幅広い分野で活躍する評論家で、ラジオパーソナリティーも務める荻上チキさんにもご協力いただきました。この場を借りてお礼申し上げます。
【事業基礎情報①】
実行団体 | 特定非営利活動法人ワンファミリー仙台 コンソーシアム構成団体 |
事業名 | 災害ケースマネジメントによる被災者支援事業 |
活動対象地域 | 石川県、和歌山県、三重県、福岡県、秋田県 |
資金分配団体 | 特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム |
採択助成事業 | 災害ケースマネジメントによる被災者支援事業 〈2020年度通常枠〉(災害支援事業) |
【事業基礎情報②】
実行団体 | 公益財団法人ほくりくみらい基金 |
事業名 | 当事者のエンパワーメントとコレクティブインパクトで作る課題解決モデル事業 |
活動対象地域 | 石川県 |
資金分配団体 | 一般社団法人 全国コミュニティ財団協会 |
採択助成事業 | 地域の資金循環とそれを担う組織・若手支援者を生み出す人材育成事業 〈2021年度通常枠〉(草の根活動支援事業) |
今回のJANPIAスナップでは、JANPIA×RISTEX共催イベントを開催した様子をお届けします。
イベント概要
JANPIAはRISTEXとの共催イベントとして、2024年1月24日に第1弾ラウンドテーブル「孤立・孤独という社会課題にどう向き合うか?~直面する課題に立ち向かう現場×研究による予防的アプローチ~」、2月1日に、第2弾セミナー「現場と研究のつながりが社会課題解決を促進する~企業がつないだ事例「シングルペアレンツ・エンパワメント・プログラム」から~」を開催しました。
第1弾:ラウンドテーブル「孤立・孤独という社会課題にどう向き合うか?~直面する課題に立ち向かう現場×研究による予防的アプローチ~」
「社会的孤立・孤独」の課題に対し、当事者への日常的な直接の支援に取り組むJANPIAの民間団体と、孤立が発生する因子にフォーカスした研究に取り組むRISTEXの研究者が登壇し、相互の活動を知り、知見の交換を図るラウンドテーブルを行いました。
様々な孤独、孤立を考えるにあたり、フィールドが異なる皆様から、ご報告いただきました。
多様な世代へのアプローチ、アウトリーチ、子ども・若者(ユース世代)の分野では、相談できる場所がない、親に頼れないなどの事情を抱えているケースが多い。
また、地域によっては「世間体」を気にする人が多くオーダーメイド方式で対応している。本人が「孤立」している、「孤独」を自覚している人がいないなど地域の文脈を理解しながら支援することが必要であるというコメントがありました。
登壇者のご紹介

当日の動画
第2弾:「現場と研究のつながりが社会課題解決を促進する~企業がつないだ事例「シングルペアレンツ・エンパワメント・プログラム」から~」

異なるセクターの協働による社会課題解決事業の参考となる事例として、企業が研究者と民間公益活動を行う団体をつなぎ実施している「シングルペアレンツ・エンパワメント・プログラム※」の事例を参考に、同じ社会課題解決を目指す研究者と非営利組織、企業がどのような役割をもって事業を実施してきたのかを振り返りながら、マルチセクターで協働するメリットや、有機的なつながりをつくるコツなど、課題解決において相乗効果を生むために役立つヒントについて、セミナー形式で行いました。

当日の動画
当プログラムをマネジメントする立場であるAVPN伊藤氏をファシリテーターとし、秋山氏からは民間公益活動を行う団体の視点から、大岡氏からは研究者として、佐藤氏は企業として活動をサポートする立場から、シングルペアレントの居住問題とメンタルヘルスが、なぜセットで語られるのか?に目をむけ、シングルペアレントの背景を知り連携することで、シナジーを生み出している事例が紹介されました。
また、NPOなどの支援者が居住支援にかかわる様々な支援者がトラウマのことをよく知って関わる姿勢(トラウマインフォームドケア)を学ぶことで、トラウマを抱えたシングルペアレントの背景を尊重しながらケアをしていくことが重要であり、この連携事例が大きな意味を持つことが確認されました。
さらには、企業視点での連携における難しさやそれを克服するための工夫なども紹介され、それぞれが違う立場で同じ目標に向かって活動を推進することの意義が話し合われました。
※シングルペアレンツ・エンパワメント・プログラム by American Express
アメリカン・エキスプレスの支援により2023年4月から2024年3月までAVPNが運営する事業です。複数の企業と非営利組織の連携により、対象者(いわゆる「シングルマザー」や予期せぬ妊娠をした方)が必要とする住まいとメンタルヘルスケアのサービスを提供しています。
JANPIAは2023年12月1日、日本財団主催の「アジア・フィランソロピー会議 2023」の中で、「多様な「はたらく」、「まなぶ」の意思を尊重、機会創出の実現へ! ~休眠預金活用事業の事例から~」というセッションを企画・発表しました。「アジア・フィランソロピー会議」は、アジア地域におけるフィランソロピー活動に焦点を当てた国際的な会議で、今回のテーマは、 DE&I(多様性、公平性、包括性)。JANPIAのセッションでは、今回のテーマに関わる事業に取り組まれている実行団体の代表者と、休眠預金活用事業の可能性などについて対話しました。
活動概要
2023年12月1日、公益財団法人 日本財団の主催による「アジア・フィランソロピー会議」が、ホテル雅叙園東京にて開催されました。2回目の開催となる今回は、「DE&I(多様性、公平性、包括性)」(※1)をテーマとし、社会課題の解決に取り組む財団をはじめとしたアジアのフィラソロピーセクターのリーダーが一堂に会し、各セッションに分かれ様々な議論が行われました。
同会議のパラレルセッション4にて、JANPIAは、『多様な「はたらく」、「まなぶ」の意思を尊重、機会創出の実現へ!~休眠預金活用事業の事例から~』と題し、休眠預金活用事業の事例を紹介しました。
セッション4の様子は、動画と記事でご覧いただけます。

※1:「DE&I」は、Diversity(ダイバーシティ、多様性)、Equity(エクイティ、公平性)、Inclusion(インクルージョン、包括性)の頭文字を取った略称。
活動紹介
休眠預金活用事業説明(JANPIA)

はじめに、JANPIA 事務局長の大川より、休眠預金活用事業の紹介と今回のセッションの説明をしました。 「休眠預金等活用法よりJANPIAが2019年に指定活用団体に選定されて以来、全国で1,000を超える実行団体が休眠預金を活用し、社会課題の解決に取り組んでいます。今回は、その中から、今回の会議のテーマに合った事業に取り組まれている団体の代表者をお招きしました。会場やオンラインの皆様含めて、様々な観点から意見交換できたらと思います。」
▲JANPIA 事務局長 大川 資料〈PDF〉|休眠預金活用事業説明|JANPIA[外部リンク]
各団体の取り組み
[1]一般社団法人 ローランズプラスの事例紹介
株式会社ローランズ 代表取締役 / 一般社団法人 ローランズプラス 代表理事 福寿 満希氏
福寿:私たちは東京都の原宿をメイン拠点としながら、花や緑のサービスを提供している会社です。特徴的なのは、従業員80名のうち7割の約50名が、障害や難病と向き合いながら働いているということです。私たちは、「排除なく、誰もが花咲く社会を作る」をスローガンとしており、Flower&Green事業、就労継続支援事業、障害者雇用サポート事業の大きく3つの活動を行っています。

休眠預金活用事業には、過去に3回採択されています。1つ目の「障害者共同雇用の仕組み作り」という事業(※2)は、READYFOR株式会社が資金分配団体で、新型コロナウイルス対応緊急支援助成で採択されました。コロナ禍により、障害当事者の方たちの失業率が高まり、特に中小企業での雇用維持が大変でした。1社だけでは雇用が難しいため、例えば10企業でグループを作り、グループ全体で仕事をつくり、雇用を生み出していきましょうという仕組みづくりです。この事業によって30名程の新しい雇用が生まれ、助成終了後の今も、自走してしっかり回っている状態になっています。
2つ目は、「花を通じた働く人のうつ病予防project」事業(※3)です。資金分配団体は、特定非営利活動法人 こどもたちのこどもたちのこどもたちのために 様で、花を通してうつ病を予防していくという取り組みです。企業の花を通じたウェルネスプログラムとして、会社から従業員に対して、10分割できる花をプレゼントし、10人に「ありがとう」を伝える機会をプレゼントします。ある調査では、「ありがとう」の言葉は、伝える側の方が幸福度が高くなるというデータが出ています。「ありがとう」の伝えることの重要性を知り、求めるのではなく、自発的にその言葉を伝えていければ、幸福度が高まる機会が増え、結果的にうつ病が予防されていく仕組み作りに挑戦しています。3年間で4千人へアプローチすることを目標に取り組んでいます。
3つ目は、資金分配団体である株式会社トラストバンク 様と取り組んでいる「地域循環型ファームパーク構築」事業(※4)です。神奈川県横須賀市で花の生産と体験型農業(ファームパーク)の運営を行うことで、地域の障害当事者の就労機会を創ることに取り組んでいます。慣れ親しんだ地域に仕事を作り、障害当事者が地元で活き活きと働き、その対価を得ながら地域循環の元で生活をしていけるモデルを作ろうとしています。横須賀地域の福祉団体と連携して、福祉団体から採用していくという流れをとっています。先ずは横須賀で形をつくり、そこから、その他の地域循環モデルが広がっていったら良いなと思い取り組んでいます。

※2:2020年度 緊急枠 「ウィズコロナ時代の障がい者共同雇用事業」
(資金分配団体:READYFOR株式会社)【関連記事】ウィズコロナ時代の障がい者共同雇用
※3:2022年度 通常枠 「植物療法を通じた働く人のうつ病予防プロジェクト」
(資金分配団体:特定非営利活動法人 こどもたちのこどもたちのこどもたちのために〈イノベーション企画支援事業〉)
※4:2022年度 通常枠 「障がい当事者が活躍できる地域循環型ファームパーク構築事業」
(資金分配団体:株式会社トラストバンク〈ソーシャルビジネス形成支援事業〉)
[2]認定NPO法人 グッド・エイジング・エールズの事例紹介
認定NPO法人 グッド・エイジング・エールズ 代表 松中 権氏
松中:まず「プライドハウス東京」というプロジェクトについてご説明します。まだまだ社会の中にはLGBTQ+(※5)の方への差別偏見があり、孤独感を感じている方も少なくありません。そこで、性的マイノリティの方々が横で繋がったり、安心・安全に訪れることができる場所をつくろうという取り組みが、「プライドハウス東京」です。2023年11月現在、31の団体・専門家、32の企業、19の駐⽇各国⼤使館などと連携して取り組んでいます。

【関連記事】
世界でいちばんカラフルな場所を目指して!| グッド・エイジング・エールズ 松中権さん × エッセイスト 小島慶子さん【聞き手】
「プライドハウス東京」設立プロジェクトは、特定非営利活動法人エティックが資金分配団体を務める事業で採択され(※6)、当初は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の時期に合わせて期間限定の場所をつくり、その後、2022年頃に常設の大型のセンターを造ろうという計画でした。
しかし2020年に緊急アンケートを行ったところ、新型コロナウイルス感染拡大の影響でLGBTQ+の若者が大変な状況にあるということが分かってきました。実は、73.1%の方々が、同居人の方との生活に困難を抱えていることが分かりました。また、36.4%のLGBTQ+の若者が、コロナ禍でセクシュアリティについて安⼼して話せる相⼿や場所との繋がりを失ってしまったと回答しました。この緊急アンケートによって明らかになった「居場所のニーズ」により、当初の計画を前倒しし、2020年の秋、常設のセンターを開設することになりました。
LGBTQ+に関する様々な調査の中で、政府も調査していることの一つが自殺の事です。政府が自殺対策の指針として定める「自殺総合対策大綱」によると、性的マイノリティはハイリスク層と言われています。そうした方々が、安心・安全に集えるようなコミュニティスペースが、「プライドハウス東京レガシー」です。また、休眠預金を活用した事業が動き出したことによって、「プライドハウス東京」に関する高い信頼が得られ、翌年には厚生労働省の自殺対策(自殺防止対策事業)の交付金を受けることになりました。自殺対策の相談窓口は電話やSNSが多いですが、「プライドハウス東京レガシー」では、対面型の相談サービスを提供しています。2023年11⽉現在の来館者数は、延べ1万人を超えたというところです。

※5:LGBTQ+…レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランジェンダー、クエスチョニング(自分の性別や性的指向に疑問を持ったり迷ったりしている人)/ クィア(規範的な性のあり方に違和を感じている人や性的少数者を包摂する言葉)の英語表記の頭文字を並べ、LGBTQだけではない性の多様性を「+」で表現している。
※6:2019年度 通常枠
「日本初の大型総合LGBTQセンター「プライドハウス東京」設立プロジェクト」
(資金分配団体:特定非営利活動法人エティック(子どもの未来のための協働促進助成事業))
パネルセッション
続いて、JANPIA 加藤の進行により、パネルセッションが行われました。本セッションでは、お互いの発表に対する意見交換から始まり、続いて今回のテーマである「DE&I(多様性、公平性、包括性)」について、そして最後に、休眠預金活用事業への期待や展望について、登壇者の二人からお話を伺いました。

登壇者:
・株式会社ローランズ 代表取締役 / 一般社団法人ローランズプラス 代表理事 福寿 満希氏
・認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ 代表 松中 権氏
司会:
一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)
企画広報部 広報戦略担当 加藤 剛

休眠預金の活用について、福寿氏は、「やりたかったけれどもやれていない事業や、やったら絶対に意義があると思っているけど、資金的・人的リソースが足りず、なかなか挑戦できない新規の事業で申請することが多かった」「障害者手帳をお持ちではないグレーゾーンの方もいらっしゃったりするので、そのような制度に引っ掛からない方たちにも支援が届けられたらと思った」と語りました。グッド・エイジング・エールズの松中氏は、「一般的な助成だと一番大切な居場所をつくるための家賃や人件費がサポートいただけないことが多かったので、休眠預金を知ったときは、これだったら居場所がつくれるのではないかと思い、申請した。常勤のスタッフが安心して働けるからこそ、新しいプロジェクトや寄付金が集められる」と続けました。また、お互いの活動について、松中氏は、「是非、連携させていただきたいと思った」と、今後の事業連携の可能性について盛り上がりました。
今回のテーマ『DE&I~すべての人々が自分の能力を最大限に発揮できる社会を目指して~』について、松中氏は、「LGBTQ+の当事者の若者が、卒業後に働く現場の一つとして、これらのコミュニティに関わるとか、企業のDE&Iに関わる部署への配属を希望できるようになるなど、卒業後にDE&Iを仕事としていくことが想像できるようになると良いなと考えている」と回答。また、福寿氏は、「障害者手帳もそうだが、名称の括りがあると、何か特別なものように思ってしまいがちなので、たまたま障害当事者のために業務を分かり易くしたところ、結果としてそれが同じ拠点で働くみんなのためにもなったといったように、障害者雇用が特別なものではない社会になったら良いなと思って取り組んでいる」と答えました。
また、休眠預金活用事業への期待や展望について、松中氏は、「取り組みの地域格差をどれくらい埋められるかというのが課題だと思っている。例えば、LGBTQ+センターは東京だけではなく、全国各地にあった方が良いと考えるが、地域によっては資金分配団体がなかったり、あったとしても掲げるテーマからなかなか採択に至るのは難しい状況もある。もっと全国各地の団体が参画しやすい仕組みになれば良いなと思う」と話しました。福寿氏は、「通常枠は約3年だが、自走できる仕組みづくりには時間がかかり、形ができてやっと活動を拡げるという手前で事業が終了してしまうので、拡がりが期待できる事業に対しては、ネクストチャレンジのような仕組みがあったら良いなと思う。有難いことに3つの事業で採択していただいており、現在2事業が実施中だが、どれも休眠預金が無ければ挑戦できなかった事業。社会課題の解決を後押ししてくれる制度なので、是非活用する事業者の方が増えていったら嬉しい」と話しました。
最後に、JANPIA 事務局長の大川より挨拶があり、「今日の学びを制度全体の発展にも活かせるよう、私どもJANPIAもしっかり取り組んで参りたい」と、このパネルセッションを締め括りました。

登壇者の皆さん

【1】事業基礎情報
実行団体 | 一般社団法人 ローランズプラス |
事業名 | ウィズコロナ時代の障がい者共同雇用事業 |
活動対象地域 | 全国 |
資金分配団体 | READYFOR株式会社 |
採択助成事業 | 新型コロナウイルス対応緊急支援事業 〈2020年度緊急支援枠〉 |
【4】事業基礎情報
実行団体 | 特定非営利活動法人グッド・エイジング・エールズ |
事業名 | 日本初の大型総合LGBTQセンター「プライドハウス東京」設立プロジェクト -情報・支援を全国へ届ける仕組みを創り、 LGBTQの子ども/若者も安心して暮らせる未来へー |
活動対象地域 | 東京都、及び全国 |
資金分配団体 | 特定非営利活動法人エティック |
採択助成事業 | 子どもの未来のための協働促進助成事業 ー不条理の連鎖を癒し、皆が共に生きる地域エコシステムの共創ー 〈2019年度通常枠〉 |
【5】事業基礎情報
実行団体 | 特定非営利活動法人グッド・エイジング・エールズ |
事業名 | LGBTQ中高齢者の働きがい・生きがい創出 |
活動対象地域 | 全国 |
資金分配団体 | READYFOR株式会社 |
採択助成事業 | 新型コロナウィルス対応緊急支援事業 ー子ども・社会的弱者向け包括支援プログラムー 〈2020年度新型コロナウィルス対応緊急支援助成〉 |
【2】事業基礎情報
実行団体 | 一般社団法人 ローランズプラス |
事業名 | 植物療法を通じた働く人のうつ病予防プロジェクト -花のチカラでうつ病発症を食い止めるー |
活動対象地域 | 東京都 |
資金分配団体 | 特定非営利活動法人 こどもたちのこどもたちのこどもたちのために |
採択助成事業 | うつ病予防支援 〜東京で働く人をうつ病にさせない〜 〈2022年度通常枠〉(イノベーション企画支援事業) |
【3】事業基礎情報
実行団体 | 一般社団法人 ローランズプラス |
事業名 | 障がい当事者が活躍できる地域循環型ファームパーク構築事業 ー障がい当事者が地域経済に参画することで、新しい社会包摂モデルを構築するー |
活動対象地域 | 神奈川県横須賀市 |
資金分配団体 | 株式会社トラストバンク |
採択助成事業 | 地域特産品及びサービス開発を通じた、 地域事業者によるソーシャルビジネス形成の支援事業 〈2022年度通常枠〉(イノベーション企画支援事業) |
今回のJANPIAスナップでは、休眠預金活用事業POギャザリング2023の開催の様子をお届けします。
活動の趣旨
休眠預金を活用し、全国各地で社会の諸課題の解決を目指す資金分配団体のPOをはじめとした休眠預金活用事業の関係者のヨコの繋がりをつくる機会として、コロナ禍でなかなか実現されなかった対面での交流の場を「休眠預金活用事業POギャザリング2023」として実現しました。”社会課題の解決に向けて一緒に議論できる仲間ができる。””団体や地域を超えて、相談できる同志ができる。”ことなどを目的に様々な交流企画やセッションを実施いたしました。
当日は資金分配団体のPOを中心に参加者74名、ご登壇者25名の総勢99名の方に会場に集まりました。
当日の様子







JANPIAでは今後も「誰ひとり取り残されない社会への触媒となる」ことを目指し、今回のようなギャザリングなどイベントを企画していきます。
ご参加、ご協力いただきました皆さま、誠にありがとうございました。
今回のJANPIAスナップは、JANPIA主催「休眠預金活用事業シンポジウム2023 -ともに創る未来:伴走支援から生まれる社会の変化と担い手の成長」「公募説明会」の様子をお届けします。
活動概要
2023年11月16日(木)、JANPIAは、「休眠預金活用事業シンポジウム2023 -ともに創る未来:伴走支援から生まれる社会の変化と担い手の成長」「公募説明会」を開催しました。
初回採択事業である2019年度事業の事例をもとに、伴走支援を始めとした団体間の連携から生まれた、社会課題へのアプローチの成果や事業実施団体の成長についてお話を伺ったほか、「休眠預金活用事業のこれから」と題し、休眠預金活用事業方針等についての説明を行いました。
また、後半では、2023年度 通常枠〈第2回〉および「原油価格・物価高騰、子育て及び新型コロナ対応支援枠」の公募説明会を実施しました。
当日は、資金分配団体・実行団体の皆さまをはじめ、申請をご検討されている団体や、企業、自治体、ソーシャルセクターの皆さまからのお申し込みを頂きました。ご参加・ご視聴いただいた皆さま、ありがとうございました。

活動スナップ
JANPIAからの挨拶

JANPIAからの挨拶 JANPIA 理事長 二宮 雅也
動画〈YouTube〉|JANPIAからの挨拶[外部リンク]
基調講演

基調講演 国際社会経済研究所(IISE)理事長/JANPIA 評議員 藤沢 久美氏
トークセッション
〈Part1〉
「地域支援と地域資源連携事業」を実施して(2019年度通常枠)

【登壇者】

[資金分配団体]
公益財団法人 長野県みらい基金 理事長 高橋 潤氏[上段、右]
[実行団体]
特定非営利活動法人 いいだ人形劇センター 事務局長 木田 敬貴氏[上段、左]
[モデレーター]
武蔵野大学 人間科学部 社会福祉学科 助教 清水 潤子氏[下段]
動画〈YouTube〉|トークセッション| Part1 [外部リンク]
資料〈PDF〉|公益財団法人 長野県みらい基金 [外部リンク]
資料〈PDF〉|特定非営利活動法人 いいだ人形劇センター [外部リンク]
〈Part2〉
休眠預金活用事業を通じて生まれた個と組織の成長

[登壇者]

・認定特定非営利活動法人 全国こども食堂支援センター・むすびえ 理事 三島 理恵氏[上段、左]
・一般財団法人 ちくご川コミュニティ財団 理事/事業部長 庄田 清人氏[上段、右]
[コメンテーター]
武蔵野大学 人間科学部 社会福祉学科 助教 清水 潤子氏[下段、右]
[進行]
JANPIA 事業部長 和田 泰一[下段、左]
動画〈YouTube〉|トークセッション | Part2 [外部リンク]
質疑応答

動画〈YouTube〉|質疑応答 [外部リンク]
休眠預金活用事業のこれから

事務局説明 JANPIA 事務局長 大川 昌晴
動画〈YouTube〉|休眠預金活用事業のこれから [外部リンク]
資料〈PDF〉|休眠預金活用事業のこれから [外部リンク]
公募説明会
※2023年度 通常枠〈第2回〉および「原油価格・物価高騰、子育て及び新型コロナ対応支援枠」について

事務局説明 JANPIA 事務局長 大川 昌晴
動画〈YouTube〉|公募説明会 [外部リンク]
資料 ①〈PDF〉|5年後の見直し方針を踏まえた事業計画のポイント [外部リンク]
資料 ②〈PDF〉|2023年度 通常枠〈第2回〉公募要領[外部リンク]
資料 ③〈PDF〉|原油価格・物価高騰、子育て及び新型コロナ対応支援枠[外部リンク]
資料(参考)〈PDF〉|国外活動を対象とする場合の留意点[外部リンク]
資料(参考)〈PDF〉|事業設計図補足資料[外部リンク]
当日スナップ写真
登壇者の皆さん

シンポジウム終了後に、登壇者の皆さんで集合写真を撮影しました。
左から、長野県みらい基金 高橋さん、全国こども食堂支援センター・むすびえ 三島さん、ちくご川コミュニティ財団 庄田さん、いいだ人形劇センター 木田さん、武蔵野大学 清水さんです。
司会者/配信スタッフの皆さん

[司会]南 恭子 さん[左]
[配信スタッフ]ZAN FILMSの皆さん[右]
今回のセミナーは、ご登壇頂いた皆さまはもとより、司会者の南 恭子さん、配信スタッフのZAN FILMSの皆さん、会場となった日比谷国際ビル コンファレンス スクエアの皆さんとの連携で実現しました。この場を借りてお礼申し上げます。
JANPIAは2023年11月22日、休眠預金を活用して社会課題の解決を目指す団体と企業とのマッチング会「SDGsへの貢献につなげる 九州マッチング会」を福岡市の電気ビル共創館で開催しました。JANPIAとしては3回目のマッチング会で、福岡での対面開催は初となります。地元を中心とする企業30社、九州・沖縄・山口で休眠預金活用事業を進めている21の実行団体、そのパートナーである10の資金分配団体、行政機関などから多くの方々が参加して、とても熱気あふれる場となりました。
九州マッチング会はJANPIA主催・一般社団法人九州経済連合会共催で、電気ビル共創館3階のカンファレンスAにて14:00~17:00に開催しました。

<プログラム>
14:00~ | JANPIA・九経連 開会の挨拶 |
14:10~ | 休眠預金活用事業の概要の紹介 |
14:30~ | 休眠預金活用団体のショートプレゼンテーション |
15:30~ | 企業と休眠預金活用団体との対話会 |
16:50~ | 閉会 |
開会の挨拶と事業概要の紹介からスタート
まずは、JANPIA理事長の二宮雅也が挨拶をしました。JANPIAが2019年政府から指定活用団体に選定されて以来、170以上の助成事業が累計1000を超える実行団体で展開されており、ユニークな日本型モデルの構築が着実に進んでいると紹介。団体の皆様には企業と連携して社会課題の解決を目指したいという強い期待があり、企業も社会を構成する一員として、誰ひとり取り残すことなく未来の子どもたちにサステナブルな社会を引き継ぐために、ぜひ積極的に連携いただきたいと力を込めました。
次に、九州経済連合会専務理事の堀江広重氏が挨拶をしました。九経連では2022年9月に九州・沖縄・山口ESG投融資方針を策定して、2022年は環境省と環境投資の推進を目的としたマッチング会を行い、今年は人への投資を促進するこの会を開催している旨を話しました。

続いて、JANPIAシニア・プロジェクト・コーディネーターの鈴木均が「休眠預金活用事業の概要」と「企業との連携強化」について説明しました。

休眠預金活用団体によるショートプレゼンテーション
14:30からは、21の実行団体が次々に登壇し、活動内容や支援ニーズなどについて1団体3分程度でプレゼンテーションを行いました。登壇した団体は、次の通りです。
<福岡県> 一般社団法人家庭教育研究機構(福岡県)、NPO法人未来学舎(福岡県久留米市)、認定NPO法人箱崎自由学舎ESPERANZA(福岡県)、一般社団法人みんなの家みんか(福岡県)、有限会社トラスト/株式会社マイソル(九州)、株式会社ホンジョー(九州)、株式会社ボーダレス・ジャパン(全国)、認定NPO法人フードバンク北九州ライフアゲイン(福岡県北九州市)、一般社団法人YOU MAKE IT(福岡県福岡市)、NPO法人YNF(福岡県・佐賀県・大分県・熊本県)、NPO法人ジャパンマック福岡(福岡県福岡市)、NPO法人福岡子どもホスピスプロジェクト(九州・山口) <佐賀県> 一般社団法人さが・こども未来応援プロジェクト実行委員会(佐賀県) <長崎県> 一般社団法人MIT(長崎県対馬市) <熊本県> 一般社団法人熊本県こども食堂ネットワーク(熊本県)、株式会社フリップザミント(熊本県)、一般社団法人熊本私学教育支援事業団(熊本県)、ワールドフレンズ天草(熊本県天草地域) <鹿児島県> NPO法人かごしまこども食堂支援センターたくして(鹿児島県) <沖縄県> 株式会社よしもとラフ&ピース(沖縄県) <山口県> NPO法人山口せわやきネットワーク(山口県) |
それぞれの団体が、活動のきっかけや活動内容、強み、課題、企業への連携の提案などを分かりやすく紹介しました。個性豊かで情熱的なプレゼンの数々に、参加者たちはどんどん引き込まれて、熱心に聞き入っていました。メモを取る方もいました。企業の参加者からは「休眠預金がこんなにしっかり活用されていることを知らなかったので、視野が広がりました。どのように関われるか考えてみます」、「実行団体の皆さんの熱意に驚きました。ポスターセッションで直接お話しできるのが楽しみです」という声が聞かれました。

企業と休眠預金活用団体との対話会
10分間の休憩を挟んで、15:40から1時間程度、企業と休眠預金活用団体との対話会を行いました。会場後方には実行団体の紹介パネルが設置されており、企業の方々は興味のある団体のところへ行き、名刺交換をして、じっくり話を聞いていました。どの団体も休憩時間から活発な交流が続き、予定の1時間を超えても対話が終わらないほど大いに盛り上がり、終始、会場は熱気に包まれていました。

資金分配団体の担当者は「企業とはなかなか接点がない中、今回は対面で活動と熱量まで伝えられるとても貴重な機会でした。企業の方々には親身になって話を聞いていただき、関心の高さがうかがえました。これを機にコミュニケーションを続けていければと思います」と感想を語りました。
実行団体の担当者は「そもそもフリースクールとは何か、子どもと社会にどんな課題があるのか、企業の方にはあまり知られていないと実感しました。私たちの活動をさらにかみ砕いて説明し、もっと広く知ってもらう必要があると改めて感じました」、「企業と連携することで支援いただくとともに、自分たちのリソースを使って企業に提供できることもたくさんあると気づき、さまざまな可能性が見えてきました」と、確かな手応えを感じていました。
企業の皆様からは「新たな価値の創造を目指す部署が社内に新設されて、自分たちができることを模索しています。今日はさまざまな分野で活動される団体とご縁ができたので、社内に持ち帰って、連携などについて具体的に検討していきたい」など、前向きなコメントが多く聞かれました。
皆様のご協力のおかげで、ここから新たな連携が次々と生まれていくことを期待できる、素晴らしいイベントとなりました。

今回の活動スナップは、JANPIAが主催した開催した「データ集を読む会」の様子をお届けします。
活動概要
JANPIAでは年に1回、事業報告書と合わせて付属資料としてのデータ集を発行しています。また、2023年11月には休眠預金活用事業を実施した・している団体の事業情報が検索できるサイト(休眠預金活用事業 情報公開サイト)を公開しました。
今回のイベントでは、公開されている情報の価値や活用方法について、非営利セクターやメディア、研究者の方とJANPIAの職員と一緒にアイディアを出し合うワークショップなどを行いました。
活動スナップ
前半は、JANPIA企画広報部長の芥田より、休眠預金活用事業の概要紹介や会の趣旨説明がありました。
その後、参加者同士で自己紹介を行ったあと、データ集と情報公開サイトの紹介、そして休眠預金活用事業のデータに関わるクイズを行いました。


後半は、モジョコンサルティング合同会社 長浜 洋二氏の全体進行の元、4つのグループに分かれて、公開されている情報の活⽤⽅法と、今後の改善に向けた様々なご意見をいただきました。
代表的なものとして、
・加工しやすいフォーマットでの情報公開
・白書の作成
・国際比較
・社会課題の解説との組み合わせ
といったご意見がありました。

JANPIAでは、いただいたご意見を踏まえ、関係者と連携しながら、今後の情報公開に活かしていければと考えております。

クイズの回答:②約50% (※イベント開催時点の公開情報に基づきますと、NPO 法人が全体の 41.8%で、認定 NPO 法人(8.0%)を含めると、49.8%をNPO 法人が占めています。)
今回のJANPIAスナップは、10月6日にJANPIA主催で開催いたしました「ボランティア・プロボノマッチング会 第2回成果報告会」の様子をご紹介します!JANPIAでは、社会課題を解決する団体(NPO等)とCSRや社会貢献、ソーシャルインパクトを目指す企業との連携を推進しております。ボランティア・プロボノによる企業連携の事例をご報告いただきましたので、ぜひご覧ください。”
活動概要
JANPIAでは、休眠預金を活用して社会課題を解決する団体と企業との連携を推進しています。今回の成果報告会では、2023年3月7日に経団連後援のもと開催いたしました企業と団体との第2回マッチング会での連携事例のご紹介と、パネルディスカッションを実施いたしました。
第1部の事例紹介では3つの事例について、支援企業、支援先団体、コーディネーターそれぞれのお立場からボランティア・プロボノマッチングに関するご報告をしていただきました。第2部のパネルディスカッションでは、ご登壇された企業の方々からボランティア・プロボノを企業内で導入するためのポイント等についてお話いただきました。
本開催では、企業54社、団体・個人39名、合計137名の方にお申込みいただきました。
ご参加・ご視聴いただいた皆さま、ありがとうございました。
活動スナップ
開会の挨拶

開会の挨拶・本セミナーの趣旨説明
JANPIAシニア・プロジェクト・コーディネーター
鈴木 均
動画〈YouTube〉|開会の挨拶・本セミナーの趣旨説明[外部リンク]
資料〈PDF〉|開会の挨拶・本セミナーの趣旨説明 [外部リンク]
経団連の挨拶

経団連の挨拶
一般社団法人 日本経済団体連合会 常務理事
長谷川 知子 氏
動画〈YouTube〉|経団連のご挨拶[外部リンク]
事例紹介

事例紹介|モデレーター
株式会社NTTデータグループ サステナビリティ経営推進部
シニア・スペシャリスト
金田 晃一 氏
動画〈YouTube〉|事業紹介|導入(社員プロボノの類型整理)[外部リンク]
資料〈PDF〉|社員プロボノの類型整理 [外部リンク]
1. ブランディング強化に向けた広報戦略・方針の整理

支援企業
富士通株式会社 総務本部 コミュニティ推進室
井上 悠起氏(右上)
資料〈PDF〉|広報支援プロジェクト|富士通株式会社|プロボノ [外部リンク]
コーディネーター
認定特定非営利活動法人全国子ども食堂支援センター・むすびえ 理事
三島 理恵 氏(左下)
動画〈YouTube〉|1. ブランディング強化に向けた広報戦略・方針の整理[外部リンク]
2.組織内にビジョンを浸透させるための方法・ステップ等の提案

動画〈YouTube〉|2.組織内にビジョンを浸透させるための方法・ステップ等の提案[外部リンク]
3.スケジュール管理と情報共有の電子化

コーディネーター
一般財団法人大阪府人権協会
前村 静香氏(右下)
資料〈PDF〉|資金分配団体としてプロボノに携わって [外部リンク]
動画〈YouTube〉|3.スケジュール管理と情報共有の電子化[外部リンク]
パネルディスカッション

「社員がプロボノやボランティアに参加していることは人事評価などに反映されているか。また、反映されている場合どのように評価に反映させているか。」と、会場からご質問をいただきました。
【登壇者】
辻 信行 氏 [PwCあらた パートナー](下段:左から3番目)
呉藤 舞 氏[三井住友フィナンシャルグループ サステナビリティ企画部 社会貢献グループ 部長代理](下段:右から3番目)
池田 俊一 氏[NEC 経営企画部門 コーポレートコミュニケーション部](オンライン参加)
三橋 敏 氏[PwCあらた 企画管理本部 ディレクター](下段:左から2番目)
山﨑 友里加 氏[SMBC日興証券 ホールセール企画部 第一業務課](下段:左から4番目)
藤田 英利 氏[NECソリューションイノベータ デジタルビジネス推進本部 DX推進グループ シニアマネージャ](下段:右から2番目)
【モデレーター】
tab-stops:center 212.6pt>金田 晃一 氏[NTTデータグループ サステナビリティ経営推進部 シニア・スペシャリスト](下段:左から1番目)
tab-stops:center 212.6pt>
【コメンテーター】
嵯峨 生馬 氏[認定特定非営利活動法人 サービスグラント 代表理事](下段:右から1番目)
資料〈PDF〉|サービスグラントのご紹介 [外部リンク]
資料〈PDF〉|継続的にsocial impactを生み出すために [外部リンク]
資料〈PDF〉|SMBCグループプロボノワークプロジェクト [外部リンク]
資料〈PDF〉|NECプロボノイニシアティブのご紹介 [外部リンク]
動画〈YouTube〉|パネルディスカッション プレゼンテーション[外部リンク]
動画〈YouTube〉|パネルディスカッション[外部リンク]
閉会の挨拶

閉会の挨拶
JANPIA 理事長 二宮雅也
動画〈YouTube〉|閉会の挨拶[外部リンク]
当日スナップ写真
登壇者の皆さん

司会者/配信スタッフの皆さん
今回のセミナーは、ご登壇頂いた皆さまはもとより、司会者の南 恭子さん、配信スタッフのZAN FILMSの皆さん、会場となった日比谷国際ビル コンファレンス スクエアの皆さんとの連携で実現しました。この場を借りてお礼申し上げます。

「経団連1%クラブ」は、経団連企業行動・SDGs委員会の下部組織として、企業による社会貢献活動の進展のために活動する、企業の知見の共有・共通課題の検討の場です。 2023年6月9日、この経団連1%クラブの会合にて、JANPIAが実施している企業連携についての報告を行いました。その概要を紹介いたします。
JANPIAは、一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)により設立された背景から、「経団連1%クラブ」と連携し、様々な活動を行っています。2023年6月9日、この経団連1%クラブの会合にて、JANPIAが実施している企業連携についての報告を行いました。その概要を紹介いたします。
まずJANPIAシニア・プロジェクト・コーディネーターの鈴木均から、企業連携の現状とアンケート調査の結果、そして企業連携の意義や可能性についてお話しました。
[JANPIAからの報告]企業との連携強化に向けて ~SDGs達成への貢献につながるパートナーシップ(連携)~
企業連携の現状
鈴木:JANPIA設立以来、重要な課題の一つとして企業連携に取り組んできました。経団連との連携に基づいて、1%クラブでの事例紹介、企業と助成先団体とのマッチング会、個別フォローアップ、企業セミナーなど、多種多様な活動をしています。その結果、企業と資金分配団体・実行団体の連携実績は、累計325件(2023年3月末時点)になっています。
また毎年、企業連携に関する休眠預金を活用する団体へのアンケート調査を行っていますが、2022年度に実施したアンケートの結果でも、資金分配団体、実行団体の多くが企業連携に強い関心を示しています。その中で連携したい企業像としては「協働で社会課題解決を目指す」が多くあがっており、さらに継続的な支援関係、資金的支援などへの期待もあります
連携による企業にとってのメリットや価値
休眠預金活用事業における連携は、企業側にも多様なメリット・価値を提供することをご紹介します。
●信頼性、信用性の高い団体へのアクセス
休眠預金活用事業では団体の選定にあたって、ガバナンスとコンプライアンスを重視しており、事業を推進するなかでも、基盤強化支援もしっかり行っていますので、安心して連携していただけます。
●資金分配団体とJANPIAによる企業と実行団体間のコーディネーション支援
連携の際にひとつのハードルとなるのがコーディネーションですが、現在は資金分配団体とJANPIAが仲介・調整を行っています。
●「社会的インパクト評価の知見獲得、インパクト志向の高い事業との接続」
すべての団体が社会的インパクト評価を実施しており、この活動を通して社会的インパクト評価の知見などの収集獲得も可能になります。
●ボランティア・プロボノを通じた社員の社会参画
社会貢献、人材育成の面、あるいはSDGsに貢献するような新しい事業の創出といった点からも非常にメリットがあります。
●社会価値と経済価値の両立を目指すSDGs起点の新しい事業機会の創出
「企業の高い技術力(シーズ)、豊富なリソース、組織力」と「NPO・ソーシャルベンチャーの社会課題に関する専門性、機動力、現場力」が相乗効果となって、インパクトのある事業を創出する機会が生まれます。
●広報面への貢献、SDGs貢献の訴求など
連携によって先進的な取り組みを創出することで広報効果も高まります。
[企業連携 事例紹介1] 〈三井住友海上×アレッセ高岡〉
三井住友海上火災保険株式会社
【発表者 経営企画部 SX推進チーム 唐澤篤子様 山ノ川実夏様
三井住友海上火災保険株式会社の社会貢献制度
唐澤:三井住友海上火災保険株式会社では、社員の社会貢献活動を促進する制度として「部支店で年に1つは環境・貢献活動」というものがございます。全国に160部支店があり、ライン部支店長が推進責任者となり、部支店長が推進役として「環境・社会活動サポーター」を選任する流れになっています。
JANPIAとの連携は3年目になり、ご提供いただいた休眠預金等活用事業を実施している団体のリストを社内に紹介しています。部支店から希望する活動、協働したい団体について連絡があると、まずJANPIAとつないで、資金分配団体、支援先団体となる実行団体、当社サポーターの4者でZoom面談を行い、マッチングすれば活動を開始しています。

アレッセ高岡へのプロボノ活動
山ノ川:特定非営利活動法人アレッセ高岡へのプロボノ活動について紹介します。まず資金分配団体である日本国際交流センターを交えてのミーティングを行い、アレッセ高岡の活動内容や、活動をしていくうえで困っていることなどを伺いました。アレッセ高岡は富山県で活動されていますので、富山支店の業務課長にも都合がつくときはオブザーブ参加してもらっていました。
2021年7月から支援を開始して、隔週月曜の14時から30分間のオンラインミーティングを実施してきました。具体的な相談事例としては、文書の作成、経理、事務などのような内容があります。
【文書】役員会議事録の書き方、著名人への支援依頼の手紙の添削、助成金申請書など、
【経理】出納帳の構成、助成金の管理方法、領収証の書き方、預り金の扱いなど
【事務】規定類のまとめ方、エクセルの操作方法、差込印刷の方法など
【管理】人事労務管理など
富山県と東京とで距離は離れていますが、オンラインで30分だけでも支援ができ、役に立つことができるのは発見でした。富山支店のメンバーに、現地での週末のイベントに顔を出してもらうなど、地元でのつながりもできています。
今回は会社としてプロボノ活動の検討を行うために私と唐澤の二人が業務時間を使って担当しましたが、就業中のプロボノを制度化するのは難しく、かといって時間外・週末の活動に積極的な社員は多くない感触があります。そのため、プロボノに興味のある社員の発掘が今後の課題です。

特定非営利活動法人 アレッセ高岡
【発表者】 理事長 青木由香様、事務局長 滝下典子様
「団体内だけで問題を解決するのは困難だった」
滝下:アレッセ高岡が活動する富山県高岡市は製造業がさかんで、1990年頃から日系ブラジル人の入植が増え、その方々の子どもたちが公立学校に入学するようになりました。理事長の青木はブラジルでの日本語教師の派遣を終え、高岡で外国人相談員として仕事をするなかで、日系ブラジル人の高校進学率が低いことに問題意識をもち、2010年に「高岡外国人の子どものことばと学力を考える会」(アレッセ高岡)の活動を始めました。現在は、学習支援事業、情報支援事業、市民性教育事業を行っております。
多方面から活動への高い評価をいただいてはおりますが、理事はじめ事務局員は会社勤めの経験者も少なく、何を始めるにも右往左往しており、団体内だけで課題を解決するのは困難な状態でした。
今回、三井住友海上火災保険の山ノ川さん、唐澤さんには、事務局員としての業務の基本を教えていただきました。
また、「これは専門家に聞いたほうがいい」「これは団体内で決める内容である」など、日々の細々した問題に対して答えの導き方のヒントを教えてもらいました。初めて作成した銀行への助成金申請が通ったときは、とてもうれしく感じました。また、高岡にも足をお運びいただきました。

地方都市では人的リソースが絶対的に不足
青木:小さい地方都市では、人的リソースが絶対的に少ないのが現状です。課題を打破するために新しい事業を考えても、「じゃあ、それを担える人は?」となり、事業が止まってしまいがちです。おそらく、みなさまからしたら「そんなことで?」と思うようなところで、つまずいていました。
私たちは普段、外国ルーツの子どもたちのサポートをしていますが、パラレルな形で私たち自身がサポートを必要としており、三井住友海上火災保険の山ノ川さんや唐澤さんが寄り添って日々の小さな障壁を一緒にクリアしてくれることで、立ち往生せず、挫けることなく事務局機能を実務的にも、精神的にも安定させることができています。

企業との「協働」から得た支援者としての学び
滝下:私たちは、これまでボランティアベースでやっていましたが、休眠預金等活用制度によって事業を進めるにあたり、事務局員を2名雇用しました。そのうちのひとりは外国ルーツの若者です。つまり事務局は外国ルーツの若者の成長と活躍の場でもあり、そういう意味では今回のプロボノ支援で私たちの事業をダイレクトに支えてもらいました。
プロボノ支援を受けるなかで、支援者としての外国ルーツの子どもたちへの向き合い方も見直すことになりました。背景の異なる者同士の協働とはどういうものかを私たち自身が学んだということです。それは当初、私たちが想像していなかった成果でした。
こうした支援のスパイラルが全国各地に広まってほしいと思います。コロナ禍を機にオンラインツールが普及しましたので、地理的距離にかかわらずリソースのマッチングも可能になりました。こうした輪がつながっていく先に、私たちが目指している多文化社会があるのではないかと思います。

[企業連携 事例紹介2] 〈アビーム×リディラバ×SIIF〉
アビームコンサルティング株式会社
【発表者】 エンタープライズドトランスフォーメーションビジネスユニット
デジタルプロセス&イノベーショングループFMCセクター
兼サステナビリティーユニット ダイレクター原田航平様
専門スキルを生かしたプロボノ支援
原田:アビームコンサルティング株式会社にて、プロボノという形で支援した事例を紹介するにあたって、まず支援先であるRidiloverが取り組む「旅する学校」がどんな事業なのかを簡単に説明いたします。
経済情勢や労働環境の悪化、教育・子ども支援における政策予算の少なさなどから、家庭の経済的状況による子どもたちの「体験格差」が存在しています。教育水準の違いだけでなく、新幹線に一度も乗ったことがない、旅行をしたことがないといった子どもたちもたくさんいます。こうした体験格差が義務教育後の望まないキャリア選択につながっている部分もあるのが現状です。これらに対して、「旅する学校」事業は、「誰もが希望をもって自分の生き方を選択できる社会」をつくり出すことを目指しています。
事業の対象は2つあります。ひとつは「奨学金をもとにした『多様な体験から学ぶ』旅の提供」として多様な体験を格差のある子どもたちに直接提供して、学んでもらうもの。ふたつ目は、子どもの体験格差に関する調査研究・情報発信・政策提言があります。

「旅する学校」における課題・支援ニーズ
この事業を継続し、社会的インパクトを拡大するにあたっては、多様で安定的な財源が必要になります。また、社会課題自体の認知を拡大して社会課題解決を加速させていくために、個人へのアプローチも重要です。こうしたことから、「『企業人材の個人寄付』に関する調査・寄付獲得に向けた支援が欲しい」という支援ニーズが Ridiloverから挙げられていました。
このニーズを踏まえて、昨年は2つのプロボノプロジェクトを実施しました。
第一弾として「企業人材の個人寄付」に関する調査を行いました。調査のなかでZ世代やミドル世代など世代ごとの意識の違い、さらに細分化したターゲットによって「寄付についての自分ごと化」を進めるために最適な施策が異なることも見えてきました。
このプロジェクトの期間は約2カ月間で、体制としては、弊社から私の稼働が15%(一日1時間程度)、シニアマネージャー1名が25%(一日2時間程度)、そして現場のコンサルタントを1名専任でアサインメントしました。さらに、第一弾の結果を踏まえて、第二弾の「企業人材の接点となる企業向け研修イベントの企画・トライアル実施」を行い、弊社メンバーに子どもの体験格差について学ぶ対面イベントに参加してもらい実証しました。


プロボノ連携に取り組む意義
会社としてプロボノ連携に取り組む意義ですが、大前提に「社会へのインパクト」があります。実行団体の社会課題への取り組みを支援することは、直接的に課題解決への貢献につながります。
それに加えて、自社への好影響として以下があげられます。
・企業としての知見・視点の獲得
ソーシャル領域における知見やリレーション、および将来の事業を考える視点の獲得という点で、有意義な活動ととらえています。
・従業員の能力開発
支援先と協力しながら問題解決を行うことによって視野や動き方の幅が広がります。このプロジェクトに携わった社員は、本業でも成果を上げるようになりました。
・従業員エンゲージメント
こうした活動を通して、本業の社会的意義や社会とのつながりをとらえるようになり、業務に対する主体性、責任感の向上につながっていると感じています。

株式会社 Ridilover
【発表者】 事業開発チームサブリーダー 高際俊介様
事業と政策の「はざま」にある問題
高際:Ridiloverは2009年に学生団体として立ち上がり、一般社団法人を経て、いまは主に株式会社として運営しています。特定の領域を設けずに社会課題に対して企業との事業開発あるいは省庁や自治体と連携しての政策・制度によって解決を進めるという、2つの側面でのアプローチをしています。
今回取り組んでいる事業では、「体験格差」を解消して子どもたちが自分らしく生きていくのに必要な力を育むことを目指していますが、この問題が悩ましい部分は、個々の子どもにとって、どんな体験があればプラスに作用するのかがわかりづらいところだと考えました。
また、行政からすれば、社会インパクトのロジックモデルが可視化できていないと制度設計が非常にしづらいということになります。加えて、体験格差が起こるのは経済困窮状態にある方々に多いため受益者負担も難しく、事業面でのアプローチにもハードルがあります。制度化も事業化も難しい、まさにはざまにある問題なのです。

お互いの専門性を発揮することができた
事業サイクルの持続可能性という観点からいうと、体験格差を問題視する人の総量を増やして個人寄付の導線をいかにつくっていくかが大事です。アビームのみなさまには、まさに事業の土台となる「企業人材の個人寄付」という部分に関してご協力をいただきました。
企業に勤めている方々が、個人寄付に対してどういうインサイトをもち、どうアプローチすれば「自分ごと化」していくのかを調査するのは難易度が高いのではないかと思っておりましたが、アビームのみなさまの本業での分析力を生かしていただきました。同時に、まさに社員のみなさまがターゲット層でもあるということで、非常にありがたいパートナーだったと思っています。また、専門ではない部分をプロボノ支援に頼ることができたことで、我々は本来の専門性を発揮できる部分に注力できたことは、今回、非常に大きかった点です。
一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)
【発表者】 インパクト・オフィサー 田立紀子様
田立:SIIFは、資金分配団体としてRidiloverさんと事業を実施しております。今回、私はアビームさんとRidiloverさんのコーディネーターとして伴走支援をさせていただきました。マッチングまでのヒアリングでは、双方の目的を揃えることが非常に重要です。私は地元では支援を受ける側として地域活動も行っておりますので、その経験も踏まえて、よりよいプロボノ実施のために支援企業側の窓口となるみなさまに知っていただきたいことを今回お伝えいたします。
1. 短期でできる仕事は「つまらないもの」に見えることが多い、それでよければ短期でも歓迎される
企業サイドから見ると簡単でつまらないものに感じる業務でも、人もお金もない支援先団体にとって、それらを担ってもらえることは大歓迎です。また短期で現場を見たいという声も聞きますが、そのような場合は支援先団体の疲弊を招かないか注意が必要です。
2. 大事なクライアントは支援先団体であることを忘れない
支援企業のなかには社員が何人参加したか、社員の満足度はどうかばかりを気にされる場合もあるようです。プロボノを実施していく中で、支援先団体が置き去りにされていないか、KPIをぜひチェックしてみてください。
3. 窓口にコーディネーション機能を備えることが重要
休眠預金活用事業では、資金分配団体が伴走しますが、プロボノを成功させるためには企業の窓口担当者が適切な座組をつくれるかが重要だと考えます。
4. 支援先団体も工数がかかるプロボノは、タダでも嫌がられることがある
支援先団体も往々にしてリソースが潤沢ではないため、支援先団体側の体制に配慮することが大事です。支援企業からの支援を受けるためには、支援先団体側も準備をする必要があるからです。ゴールへの低いコミットメントや、団体の現状や意向に寄り添えない場合は、疲弊につながる可能性があります。

資金分配団体と指定活用団体であるJANPIAが、よりよい休眠預金活用事業を作り上げていくために、共に取り組む「業務改善PT(プロジェクトチーム)」。2022年度業務改善PTの「その他制度関連(POの役割等)検討チーム」の活動を紹介します。
2022年度業務改善PT 「その他制度関連(POの役割等)検討チーム」で目指すこと
事業規模・POの役割・3層構造 等、現場目線でのこれまでの状況を踏まえての制度全体を俯瞰した議論を行います。他のチームが対象としてない検討領域なども幅広くカバーしていきます。
本年度のメンバーは、9団体10名(+オブザーバー1団体1名)となりました。
活動報告
2022年7月20日 第1回キックオフミーティング
アジェンダ
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[議論概要]
この制度運営で中核的な役割を担う「 PO の役割」、そして「資金分配団体の役割」について、現在の事業運営の現状から、まず議論し整理をすることとなりました。
段階的に、以下のような検討テーマへの優先順にをつけながら議論を進めて、方向性を整理していくこととしました。
[検討テーマ優先順]
- 制度運営の建付けに関すること
(1)POの役割の整理
(2)PO関連経費の検証
(3)三層構造の効果検証 - 担い手のすそ野拡大、支援を広げていく
(4)同一事業の連続申請の可否
(5)休眠預金活用の地域偏在の解消
(6)制度全般について
2022年8月5日 第2回
アジェンダ
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[議論概要]
- メンバーの共通理解を図るため、JANPIAが過去公開した資料や、「資金分配団体 代表者意見交換会」でいただいたご意見などをメンバーに共有し、これまでのPOの役割に関する議論の振り返りを行いました。
- 意見交換では、以下のような発言がありました。
★実行団体への伴走支援という視点
ー「資金分配団体としての役割」「PO個人としての役割」という2つの側面から整理をしていく必要がある
ー組織としての知識ノウハウの蓄積、標準化にあたっては多様性の視点が欠かせない 等
★PO業務の統一感 業務の標準化
ー POの事務的な業務の標準化の視点から検討する
ーPOの専門性向上、支援の手法等は、それぞれの担当する事業の特性や、当該POのバックグラウンド等も踏まえて多様性に留意するべき 等
2022年9月8日 第3回
アジェンダ
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[議論概要]
- 資金分配団体の役割、POの役割全般について、事務的なスキル・ノウハウといったハード面の標準化、ソフト面(各団体の多様性をふまえての組織対応力やPO個人の人間力的な要素)の整理を行いました。
2022年10月12日 第4回
アジェンダ
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[議論概要]
- 前回の会議で整理したPOの役割をもとに、事務局で整理した「休眠預金活用事業における資金分配団体におけるプログラムオフィサーの役割」をたたき台として、参加者からの情報提供もいただきながら改めて内容について議論を行いました。
- 次回、合同会議にてこのチームから提案する検討内容について確認を行いました。
2022年11月16日 第4回(資金管理等検討チームと合同開催)
アジェンダ
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[議論概要]
主な議論内容は以下の通りです。議題(1)
- エキスパートが事務作業を行い、POは状況を把握しながら伴奏支援、特にアウトカムの創出に注力している。資金分配団体を増やすためには、団体の持ち出しをいかに減らせるかも重要で、優秀な人材を集めるには今のPO人件費について十分かどうかについては、疑問を感じる。
- 地方の人材不足については、すそ野を広げていくために未経験の方を雇用することが必須であると感じる。その人材育成に関するコストを「POの役割」の中でどう明記していくか検討されるとよい。
- 案件形成が重要だと考えているが、そこから関わってもらうときに案件形成から公募に至るプロセスのコストをどうするかというところに課題感がある。
等
議論(2)
- 困ったときに専門家に相談できるという体制が、評価関連経費を活用して作れたのでありがたい。また専門家は大学の先生であることが多く、休眠預金の理解を深めていただく必要があることが多いが、事前・中間・事後評価で継続的にかかわっていただけるのでありがたい。
- 資金分配団体の評価関連経費5%は多いかと感じていたが、3年目にして使い切る見込みである。また、経費は人件費には当てず、評価アドバイザー謝金とアドボカシー活動に利用している。評価業務は外部に委託する専門的領域だと思う。POは基本的な評価の枠組みだけ理解し、専門家の方をコントロール(実践的なところは評価アドバイザーが実施)していった方が負荷の削減につながり、効率的な評価関連経費の使われ方になると考える。全団体において評価アドバイザーを使ってもらうようにしてはどうか。
等
