資金分配団体からのメッセージ〈21年春〉|日本国際交流センター 毛受さん

「資金分配団体の公募〈通常枠〉」へ申請検討中の団体に向けて、活動中の資金分配団体にお話を伺いました。

現在JANPIAでは「資金分配団体の公募〈通常枠〉」を実施中です。2021年度 資金分配団体の公募〈通常枠〉の申請をご検討中の皆さま向けに、19年度資金分配団体である「公益財団法人 日本国際交流センター 執行理事 毛受(めんじゅ) 敏浩さん」から、メッセージをいただきました。

日本国際交流センター(JCIE)の休眠預金活用事業 基礎情報

■2019年度 通常枠 新規企画支援事業

<事業名>外国ルーツ青少年未来創造事業-外国にルーツをもつ子ども・若者の社会的包括のための社会基盤づくり

■2020年度 緊急支援枠(随時募集)

<事業名>支援が届かない在留外国人等への人道的支援-孤立に陥らないための支援体制の基礎づくり
*「特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム」とのコンソーシアム申請

 

休眠預金活用事業に申請した背景を自団体の活動と合わせて教えてください。

日本国際交流センター(JCIE)は、「多文化共生」というテーマについて、20年くらい前から取り組んでいます。現在、300万人近くの外国人の方が日本にいらっしゃいますが、日本の社会を担っていく存在としてなかなか認めてもらえてきませんでした。一方で、日本で生まれ育つ若者が実は増えています。「誰ひとり取り残さない」というSDGsの理念がありますが、この方たちがまさに取り残された人達であると、活動している中で気がつきました。
それを支えるNPO法人も資金が不足しており、なんとか支援できないだろうかと考えていた中、休眠預金活用事業に行き当たりました。この事業は比較的大きなお金で、3年間という長い期間を支援できますので、外国人の子どもたちをささえるNPOにとって一過性のお金ではなく、組織全体をささえ、自立していくための基盤を作るという意味で重要な役割を果たすのではないかと考え、この事業に申し込みをさせていただきました。

助成事業(2019年度採択事業)を開始して1年半が経ちました。自団体や支援先に起こった変化があれば教えてください。

JCIEの中では、新しい事業ということで、新しいスタッフも雇用することができましたし、「多文化共生」という活動の中でも大きな柱に位置付けることができました。それから支援先の実行団体もコロナ禍でとても苦労されているわけですが、その中で外国人の子どもたちへの支援を途切らせないという強い思いをもって、新しいやり方を工夫しながら支援されていらっしゃいます。我々もそれを側面的に支援するのですが、当初の計画を変更する場合でも、一緒に協議しながら柔軟に進められ、そして継続できる。有意義な1年半だったと思っています。

助成事業を通じて、よかったこと、苦労していることはどんなことがありますか。

外国ルーツの子どもたちの問題を社会にうったえるというのが、我々の大きな仕事であるわけです。そのために文科省、文化庁、経済団体、一部財団とも連携をとって働きかけをいたしました。徐々に風向きは変わりつつあると思いますが、まだまだその認識は低い現状です。しかし同時に日本は、人口減少、人手不足が深刻化しています。そこで、これまで潜在能力があるのに発掘されてこなかったのが外国ルーツの子どもたちの可能性です。支援が必要なだけではなく、次の日本を担う大きな可能性をもっているのが、この人たちだろうと思うわけです。そのことをご理解していただける方が、徐々に増えていると考えています。

またJANPIAの仲介で、住友商事の社員の皆さんからJCIEが選定した実行団体に対し、本格的なプロボノを中心とした支援をしてもらっています。支援内容は、「団体の組織・事業運営基盤の強化の取り組み」や、団体が運営する日本語・教科学習教室での生徒への「学習支援のサポート」です。この取り組みの中で、例えば参加した社員の方に「誰ひとり取り残さない社会とは、海外の発展途上国の話かと思っていたが、日本でもこんなことが起きているのか」と自分たちにとって身近なところで社会課題を捉えてもらえるようになりました。
休眠預金活用事業を通じて、単に助成をおこなってもらうだけではなく、想定していなかった形で自分たちの考えている課題を様々な方に共有でき、未来に向けて発展できているのもありがたいと感じています。
〈関連記事「企業連携事例を経団連「1%クラブ会員企業」にご紹介!さらなる連携促進を目指して」(2020年6月9日掲載)〉

休眠預金を活用したことで、行政や社会・企業とのかかわりで、何か変化はありましたか。

よかったこととしては、まず実行団体への支援を通じて外国人の子どもたちに支援ができたということです。外国ルーツの子どもたちが日本に存在するということが、まだまだ知られていないので、社会への啓発という点も同時にやってこれたのもよかったと思っています。まだまだ始まったばかりですが、そのきっかけができたということ、それから一部のメディアも関心をもっていただけるようになってきたというのは、非常にありがたいと感じています。

苦労というと、この分野において支援する先が脆弱なNPOが多く、まただからこそ支援していくことが大切と感じていますが、複雑な制度をご理解いただいて、しっかり対応していただくということにおいて、双方とも大変な思いがあったと思います。

JCIE 毛受さんのインタビューの様子
JCIE 毛受さんのインタビューの様子

休眠預金活用事業を経て、3年後・5年後に どのような社会にしていきたいですか。

これから人口減少がさらに本格化していく日本の中で、外国人の方々の活躍をどのように促していくのかは、大きなテーマだと思います。外国人の方々が本当の意味で日本社会で活躍していくには、彼らを一緒に社会を作っていくパートナーとしてしっかり受け止めて、彼らを受け止めることにより日本人側も活性化され、本当の意味でWINWINになっていく社会を目指すべきだと思っています。
そのためには子どもたちの教育が一番重要になってきます。また教育を終えた子どもたちが、社会で雇用され、しっかり活躍できる。外国人の方々は起業意欲を持った方が多いので、そういった方が活躍することで、日本の若者にも大きな刺激になってきます。その好循環をどうやって作っていくか…。3年・5年でできるとは思っておりませんが、そのきっかけをこの休眠預金活用事業で作っていきたいと思っています。

申請をご検討の団体の皆さんに、メッセージをお願いします。

他の財団にはない大きな規模の助成が受けられます。また、人件費を含めて、しっかりした支援をいただけるのは非常にありがたい制度だと思います。いっぽう、社会的インパクト評価、資金計画のいろいろな手続き、これは多くの団体にとっては悩ましいところだとも思います。我々もやりながら苦労をしておりますが、その苦労を乗り越えてでもやる価値のあるものだと思っています。皆さんがやりたいと思っている活動を、日本の社会においてしっかり位置付けていくためには、規模の大きな活動をしていかないと社会は変わっていきません。そういう意味でチャレンジのしがいのある活動であると思っております。

〈このインタビューは、YouTubeで視聴可能です! 〉

https://youtu.be/c8ZZ-0gwfro

※動画では時間の関係でカットとなったお話も、記事に含んでいます。
※この動画は公募説明会で上映したものです。

(取材日:2021年5月7日)

JANPIAは、「経団連1%クラブ」と連携し、企業と休眠預金活用事業を実施する団体とを繋ぐ機会を創出しています。さらなる連携促進を目指し、「経団連1%クラブ」の会合に、連携事業を既に進めている資金分配団体・実行団体とともに参加し、休眠預金活用事業の現況と企業との連携事例の報告や、意見交換を行いましたので、その様子をご紹介いたします。

JANPIAは、一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)により設立された背景から、「経団連1%クラブ」と連携し、様々な活動を行っています。2021年3月26日に開催された「経団連1%クラブ」の会合では、実際に企業連携を実現している資金分配団体・実行団体とJANPIAの以下のメンバーが参加し報告を行いました。

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▼参加メンバー

 【2019年度通常枠「外国ルーツ青少年未来創造事業」報告者】
  資金分配団体:公益財団法人日本国際交流センター(JCIE) 執行理事 毛受 敏浩さん
  実行団体:NPO法人青少年自立援助センター 定住外国人支援事業部責任者 田中 宝紀さん

 【2019年度通常枠「こども食堂サポート機能設置事業」報告者】
  資金分配団体:一般社団法人全国食支援活動協力会 専務理事 平野 覚治さん
  実行団体:社会福祉法人那覇市社会福祉協議会 居場所支援コーディネーター 浦崎 直己さん

 【「休眠預金活用事業の現況」報告者】
  一般財団法人日本民間公益活動連携機構 事務局長 鈴木均

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会合は経団連会館で対面とオンラインのハイブリッド型で開催
会合は経団連会館で対面とオンラインのハイブリッド型で開催

休眠預金活用事業の概況と課題、企業との連携ニーズ

まずはじめにJANPIA事務局長の鈴木から、「休眠預金活用事業の概況」と「企業との連携事例」について報告。企業の専門性を生かした支援など連携強化をお願いしました。

休眠預金活用事業の現状

 現在、休眠預金活用事業では、2019、20年度<通常枠>と2020年度<新型コロナウイルス対応緊急支援助成(緊急支援枠)>が並行して進行しています。資金分配団体は延べ112団体、助成事業も80になります。その助成事業で採択された社会課題解決を進める実行団体数は500の規模に達しています。

 このように休眠預金活用事業の規模が拡大する中、行政や企業、NPOなど複数のセクターが個別にではなく、互いに強みやノウハウを持ち寄り、社会課題を解決しようとするコレクティブ・インパクト事業が増えています。2020年度通常枠では、採択した20事業のうち8事業がコレクティブ・インパクト関連事業です。
 現在、多くの団体から特に、企業が持つリソース(資金、人材、製品・サービス、知財など)を活かした連携に期待の声が寄せられています。

非営利セクターと企業による連携が多様な価値を創出

非営利セクターと連携し、社会課題解決事業に企業が参画することは、企業にとっては以下のような多様な価値の創出にもつながります。

1.多様な組織が混じ合うことで社会課題の解決に有効な革新的事業の創出や関係者が協働するという  
 日本らしいSDGs貢献モデルの創出。
2.プロボノ・ボランティアの活動を通じて社員の社会課題への感度を高め、社会課題解決型事業モデ
 ルの創出に向けたヒントを得ることが出来る
3. ESG(環境・社会・ガバナンス)評価やインパクト投資等につながる可能性。


「休眠預金等活用制度」は、もともと国民の財産を活用しているため、制度に参画する団体には、ガバナンス・コンプライアンス面においても高い信頼性を求めています。他にも「休眠預金等交付金に関わる資金の活用に関する基本方針」に基づき、自己評価を基本とした社会的インパクト評価も実践してもらっています。
そのため、企業が「休眠預金活用事業」を利用して、様々なセクターと連携して社会課題解決型の新事業を始めるにあたり、安心して連携していただくことができ、また実効性・革新性の実証の機会も得ることにもつながります。

JANPIA事務局長 鈴木から休眠預金活用事業の概況等を説明
JANPIA事務局長 鈴木から休眠預金活用事業の概況等を説明

企業等との連携事例のご紹介

事例1 JCIE×住友商事「外国ルーツ青少年未来創造事業」における連携

資金分配団体であるJCIEと住友商事(株)の連携は、2020年9月よりスタートしました。
住友商事の社員の海外におけるビジネスや生活経験などを生かし、日本で暮らす外国にルーツを持つ青少年とその支援をするJCIEが選定した7つの実行団体に対し、本格的なプロボノを中心とした支援を行っています。
連携内容は、「外国ルーツ青少年らを支援する団体の組織・事業運営基盤の強化支援」や、団体が運営する日本語・教科学習教室での生徒への「学習支援のサポート」です。

JCIE毛受さん、青少年自立援助センター 田中さん
JCIE毛受さん、青少年自立援助センター 田中さん

■資金分配団体 JCIE 毛受さん

「企業人にとっては、外国ルーツ青少年の現場を知ることで多様性を理解し、外国人との共生を進めるという未来の日本社会を知るヒントを得ることになります。」

■実行団体 青少年自立援助センター 田中さん

「外国ルーツの青少年が増加している中、企業の方へは学習支援や就労支援、資金調達、運営基盤強化支援など、幅広いご支援を期待しています。」

■住友商事ご担当者

 「参加した社員の満足度が非常に高く、継続して支援したいとの声が多くなっています。支援先
 団体の社会課題解決に対する熱意に触れて、社員の仕事に対する意識にも変化が現れつつありま
 す。」

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事例2 全国食支援活動協力会×吉野家HD「こども食堂サポート機能設置事業」における連携

資金分配団体である「一般社団法人全国食支援活動協力会」の「こども食堂サポート機能設置事業」と「(株)吉野家ホールディングス」(以下、吉野家HD)が連携し、2020年9月よりスタートした事業です。
連携内容は、「こども食堂サポート機能設置事業」にて選定した「沖縄のこども食堂サポートセンター那覇」(事務局:那覇市社会福祉協議会)と吉野家HDが、子どもと地域をつなぐ居場所として開放されている「子どもの居場所」へ牛丼弁当を無償提供する支援活動です。
現在、吉野家HDとの連携は、この事業で採択された他の3つの実行団体をはじめ、「休眠預金活用事業」の対象となった多くの子ども食堂等への支援に拡大しつつあります。

全国食支援活動協力会 平野さん、那覇市社会福祉協議会 浦崎さん
全国食支援活動協力会 平野さん、那覇市社会福祉協議会 浦崎さん
吉野家さんから牛丼提供の様子や、子どもたちからのメッセージを紹介
吉野家さんから牛丼提供の様子や、子どもたちからのメッセージを紹介

■資金分配団体 全国食支援活動協力会 平野さん

「子ども食堂への食支援には関連するインフラの構築や食材の安定供給などが必要で、リソースや知見を持つ企業との連携は必須です。「こども食堂サポート機能設置事業」の成功に向け、JANPIAの仲介で吉野家HDさんとの繋がりができたことはたいへんありがたいことです。その他にも企業連携が進みつつある中、さらなる連携拡充に向けて活動していきたい。」

■実行団体 那覇市社会福祉協議会 浦崎さん

「活動を開始して7カ月間で延べ23居場所、810食の牛丼を提供できており、多くの子どもたちからお礼の声が届いています。また、吉野家さんからは、子どもたちが牛丼を食べる場面に立ち会えることで、社員の仕事に対するモチベーションが上がり、意識啓発の効果があるとの声をいただいています。沖縄のモデルをベースにして、吉野家さんはこの取り組みを福岡や大阪など全国へ広げています。」

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今後の連携促進に向けて

報告の後の意見交換では、「事例紹介いただいた団体と企業がマッチングした経緯は?」などのご質問に対し、JANPIA鈴木から、経団連1%クラブでのつながりを機会に活動に発展したことなどをご説明しました。
また、他企業からも、今後の連携予定についての参考情報もありました。

最後に、今後の連携への期待について経団連事務局とJANPIAから挨拶し、今回のイベントは終了しました。

■JANPIA鈴木

「休眠預金事業での評価の取り組みを紹介することで、社会的インパクト評価を事業の中に取り入れることや、コレクティブ・インパクトの流れで、NPO、助成財団と企業が連携し同じゴールを目指して社会的インパクト評価を行うことなども可能性としてあります。企業の中ではESG評価やインパクト投資などは重要なテーマだと思うので、ぜひ学びあいの機会をいただきたいと思います。」

■経団連事務局

「企業では社会的インパクト評価の関心が高くなっていると思うので、例えば企業に対して休眠預金活用事業での評価の取り組み報告や研修等を行うことも考えられます。
コロナ禍で、もともとあった社会課題が顕在化している中、今回ご紹介いただいた事例の他にも多くの活動が行われています。そういった活動に企業が協働することで社会課題解決の実効性が高まり、共通価値の創造や自社の商品・サービスの開発創出、社員の意識啓発等いろんな効果が出てくると思います。今後も、いろんな人たちと連携しながら対話の場を設けていきたいと考えます。」

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【本記事に関する問い合わせ先】JANPIA 企画広報部 info@janpia.or.jp

新型コロナウイルス感染症の影響を受け、不要不急の活動停止を余儀なくされたことで、老若男女問わず、心も身体も疲弊する日々が続く昨今。資金分配団体である「みらいファンド沖縄」では、休眠預金を活用して子どもたちを支援する実行団体からの取り組み報告を通じ、彼らが抱える「困りごと」を明確にし、どのような改善策があるのかを2回にわたる「円卓会議」で検討しました。

地域の「困りごと」を社会課題として捉える 「地域円卓会議」の仕組みとは?

オンラインで開催された第一回の「円卓会議」の様子。
オンラインで開催された第一回の「円卓会議」の様子。

オンラインでの意見交換を取り入れつつ、全2回開催された本会議は、公益財団法人みらいファンド沖縄が過去10年間で開催してきた「地域円卓会議」の94回目、95回目にあたります。みらいファンド沖縄では、こうした会議を地域の「困りごと」を社会課題として共有・共感する場(イシューレイジング※1)として定義し、それぞれが抱える課題、そして社会課題を市民がしっかりと受け止め、議論ができる場所として参加者を募っています。
※1 「イシューレイジング」とは?・・・・・・「イシュー=テーマ」を世の中に認知してもらうことを指す。

特筆すべきは、「円卓会議」と呼ばれるスタイルで開催されている点。論点提供者と着席者と呼ばれる各関係分野の専門家を中心に参加者が円を描くように丸く座り、それを一般参加者であるオーディエンスが取り囲むスタイルで進行します。

今回の会議の第1回(円卓会議の94回目)は、『みらいファンド沖縄』の副理事長・平良斗星氏のあいさつからはじまり、休眠預金活用事業の資金分配団体として資金的支援・伴走支援をしている5つの実行団体の代表者が論点提供者となり、センターメンバーと呼ばれるパネリスト(着席者)3名を迎え、オーディエンスはオンラインにて参加するという形で実施されました。

各支援団体の現場報告から考える、 コロナ禍における子どもたちの放課後の過ごし方の変化

第一回の「地域円卓会議」のテーマは、「コロナ禍において、子どもたちの放課後の過ごし方はどう変化したのか?各現場の報告から考える。」です。

会議は、休眠預金を活用した「新型コロナウイルス対応緊急支援助成事業」の一環として開催され、各実行団体が1年後の事業目標として、それぞれの事業を継続できる体制を整え、社会的に孤立する人々の支援、またその取り組みによって課題の明確化と社会との共有を目指すというもの。それぞれの現場の声をもとに新しいセーフティネットの政策提言の発信を行っていきます。

会議の大きな流れは、論点提供者(6名)から、現在子どもたちと関わる各団体が抱えている課題や疑問に対しての解決策などを、地域の方、またステークホルダに対して論点を話すことからはじまりました。テーマに基づいて論点提供者(前述の各実行団体の発表者)から実際に取り組んでいることと、解決に向けた意見(セッション)が出されると、これらを踏まえて、センターメンバーである各分野の専門家によるコメントを受け、次に幾つかのグループに分かれた一般の方々に討論をしていただくサブセッションを実施。最後は各グループの代表者による意見発表を通じ、再びセンターメンバーたちがテーマを掘り下げていきます。

「地域円卓会議」の振り返りができる手書きの記録。会議を進行しながら作成されています。
「地域円卓会議」の振り返りができる手書きの記録。会議を進行しながら作成されています。

こうした会議内の様子や意見は手書きの記録が残され、パネリストからオーディエンスまで全員で振り返りができる仕組みになっています。テーマや取り組みに対する認識を改めて深められるのも大きな魅力の一つです。

参加した実行団体の方々は、いずれも、沖縄県内で学童や児童館、不登校やひきこもりなど、地域に密着して支援を行っている皆さんです。初回は6団体のうち子ども関連の活動をしている5つの実行団体による現場の活動と成果・課題などが発表され、二回目の会議には5つの実行団体からの報告をもとにそれを深めた議論をして、政策提言につなげるための議論が行われました。

大切なのは子どもの視点で考えること。行政と民間支援の連携で「困りごと」の解消を目指す

沖縄大学の島村先生(左)と本会議の進行を務めるみらいファンド沖縄の平良氏(右)。
沖縄大学の島村先生(左)と本会議の進行を務めるみらいファンド沖縄の平良氏(右)。

各実行団体の取り組み報告を通じて、コロナ禍におけるさまざまな制約によって間接的に子どもたちの時間が奪われたことから、生活リズムの崩れ、DV、ネグレクトといった深刻な問題が浮き彫りになりました。

その反面、音楽を通じた成功体験から自信を取り戻していく姿、ICT化で不登校やひきこもりの子どもたちに新たな道を示せたこと、さらに少人数での預かりを実施した学童保育などではトラブルも軽減し、施設内はもちろん、家庭内でも子どもたちと丁寧に向きあうことができたなど、子ども一人ひとりに最適化したケアの視点が得られたといった結果報告が上がりました。

プロのジャズ演奏者による楽器指導と地域とつなぐ子どもたちの社会教育の一例。
プロのジャズ演奏者による楽器指導と地域とつなぐ子どもたちの社会教育の一例。
活動地域と繋がる子どもの遊び見守り。
活動地域と繋がる子どもの遊び見守り。

こうした現場の意見を踏まえ、沖縄大学の島村先生をはじめとする着席者は、子どもの視点で考えることの重要性、また市民が議論をして行政にあげることも大切だが、市民活動でどこをどのようにフォローしていくのかを検討することも非常に重要であると投げ掛けます。


また一般参加者による発表を受け、各支援団体の方からは、こうした円卓で支援者間のネットワーキングができることで行政と繋がる際の座組を想定できること、加えて、各団体が行政に話をしにいくことを遠慮し過ぎていたことも課題点としてあげ、行政と民間で得意なことを活かした連携ができるような仕組みづくりを目指すべきといった感想もでていました。

子どもの権利保障やケアの重要性を再認識 。「円卓会議」を終えて見えてきた今後の課題

進行を務める平良氏より、二回の会議を総括する最後のまとめとして「緊急時の優先順位で行政はやるべきことが多い。そんな中で、それでも重要な子どもの権利の保障、ケアのための「連携」を「有機的に」していくためには、どのような権限移譲、そして予算設定をすればよいのか?」という問いが立てられました。


着席者からは、「学校と福祉、それぞれが持つ子どもたちの情報を一元化して管理できるような専門セクションを作るべきである」といった意見がだされました。これは、まさに今話題の子ども庁の構想と重なる内容であり、現場で強く求められていることを再認識することができました。

行政に対しては、アウトプット指標だけではなく、アウトカム指標を見て欲しいという評価に関連するニーズがあること、加えて民間の支援者たちとの連携や支援における権限についての意見も多くあがり、継続的な課題として検討を重ねていくことになりそうです。


■資金分配団体POからのメッセージ

子どもの居場所活動は多岐にわたっています。本事業においても、厳しい環境におかれた子どもたちを主とした対象とする、公民館活動の中の学童、児童館、子ども食堂、放課後音楽活動などさまざまです。現場で日々子どもたちに接している実行団体の報告は迫力もあり、子どもたちへの愛が詰まっていて、大変興味深い内容でした。私たちはこうした円卓会議などを通して、相互に学び合いつつ、共通の課題について話し合い、コロナ後の活動に繋げることを目指しています。
(公益財団法人みらいファンド沖縄『コロナ禍で孤立したNPOとその先の支援』事業 / 鶴田厚子氏)

この会議の様子はアーカイブとしてYouTubeで視聴可能です!

【事業基礎情報】

資金分配団体      

公益財団法人みらいファンド沖縄

助成事業
コロナ禍で孤立したNPOとその先の支援~アフターコロナに必要な団体の存続のために
〈2020年新型コロナウイルス対応緊急支援助成〉
活動対象地域

沖縄県

実行団体

・特定非営利活動法人1万人井戸端会議
特定非営利活動法人沖縄NGOセンター
NPO法人沖縄県学童・保育支援センター
一般社団法人おきなわジュニア科学クラブ
特定非営利活動法人沖縄青少年自立援助センターちゅらゆい
一般社団法人琉球フィルハーモニック

2021年3月13日(土)、東京都江戸川区立船堀小学校の6年生を対象に「出前授業」を実施しました。出前授業とは、社会人講師が小中学校へ出向き、それぞれが得意とする分野などについて特別授業を行うこと。今回は私たちJANPIAがワークショップを織り交ぜながら、「休眠預金活用」についての授業を行いました。

中庭から見た出前授業の様子。みんな集中しています。
中庭から見た出前授業の様子。みんな集中しています。

身近なところから考えよう。誰ひとり取り残さない、持続可能な社会づくり

講師の熊谷香菜子先生。
講師の熊谷香菜子先生。

広々と明るい印象の校舎に、元気な声が響きわたります。中庭の見える開放的な教室にちょっぴり緊張した表情の6年生が集まりました。始業の鐘とともに挨拶を終えると、講師の熊谷先生が話はじめました。

「JANPIAは、“誰ひとり取り残さない、持続可能な社会づくり”を目指す団体です。それは、困った人を放っておかないこと、そして、その状態がずっと続く社会の仕組みがあることを指しています。では、どうやったらそれを実現できるのでしょうか?」

社会の授業では東日本大震災の復興について学んだという船堀小学校の子どもたち。被災から約10年を経た今、その状況を例に取り上げ、モニターに映る資料を見ながら先生が分かりやすく説明していきます。

「震災で被災した人たちは突然の出来事に困っていました。そこで復興に向けて、国が法律をつくり、予算を決め、県や市町村といった行政が仮設住宅の建設や日々の暮らしを支援しています。その費用は、皆さんから集めた税金です。こうして困っている人たちを助けることにも役立てられているんですね」

「震災で被災した人たちは突然の出来事に困っていました。そこで復興に向けて、国が法律をつくり、予算を決め、県や市町村といった行政が仮設住宅の建設や日々の暮らしを支援しています。その費用は、皆さんから集めた税金です。こうして困っている人たちを助けることにも役立てられているんですね」

「あれ?でも、仮設住宅に住むこの人は、住む場所があるのに困った顔ですね。ほかにも困っている人がいるようです」

被災した人ばかりではなく、今、私たちが暮らしている社会を見回してみると、実はいろいろなところで困っている人がたくさんいます。今日は「困っている4人」を例に、どうしたら現状の問題を解決できるのかをみんなで一緒に考えていきます。

困っていることを見つけて、たくさんの「友達」を助けよう!

年齢はもちろん、異なった環境で困っている4人の人たちを例にワークに取り組みます。
年齢はもちろん、異なった環境で困っている4人の人たちを例にワークに取り組みます。

熊谷先生からお話のあった「困っている4人」が、どのようなことに悩み、自分たちはどんなことをしてあげられるのかを、ワークを通して学びます。

困りごとを抱えている例の4人は、被災者で高齢のAさん、介護事業所を経営するBさん、刑務所を出所したCさん、ひきこもりのDさん。それぞれの状況、困りごとが書かれた資料を見ながら、まずは5名ほどの班に分かれて「どんなことに困っているか」を話し合ってもらいました。

子どもたちにアドバイスしながら、JANPIAスタッフも一緒に考えました。
子どもたちにアドバイスしながら、JANPIAスタッフも一緒に考えました。

「皆さんは、この4人のことを『友達』だと思ってください。え?大人の友達?しかも犯罪者?!と思うかもしれませんが、親戚の人、近所の人、習い事の先生など、皆さんの周りにも大人の知り合いがたくさんいますよね。その人たちの困っていることを解決してあげようという気持ちで考えてみてください」

文章を読みながら、どんなことに困っているかを懸命に考える様子が印象的でした。
文章を読みながら、どんなことに困っているかを懸命に考える様子が印象的でした。

先生と一緒に4人がどんな困りごとを抱えているのか確認をしたら、Aさん、Bさん、Cさん、Dさんを各班に振り分け、A3用紙にプリントされた文章を読みながら、それぞれが困っていると思われる部分を丸で囲みます。真剣なまなざしで話を聞き入っていた子どもたち。開始の合図とともに、一斉に話し合いをはじめました。

「お助けカード」で探してみよう。身近にある困りごと解決のヒント

困りごとを丸で囲んだことで、具体的にどんなことに困っているのかを理解し、さらに「こんなことにも困っているかも!」といった新たな問題にも気づくことができました。次のワークでは、困りごとの解決方法を考えていきます。

今回使用した「お助けカード」。このカードは、実際に休眠預金を活用して行われている活動をもとに作られています。

ここで登場するのが11枚の「お助けカード」です。はがきよりやや小さなサイズの紙には、福祉に関わる取り組み・職業が書かれています。使い方は簡単。例えば、被災したAさんを助けるために1番のお助けカードの人にこんな困りごとを解決してもらおう!といった具合です。苦しい思いをしている人が少しでも楽になると思ったアイデア、小学生の自分では難しいけれど、あの人に相談したら解決しそう!など、思いつく限りの意見を各班で交換し、解決への糸口を模索します。

「この人たちにはきっと音楽プログラムを使った方がいいと思うな!」
「リハビリが必要で働けない人にはタブレットで内職ができるようにしてみよう」
「募金をするのもいいのかな?」

わずか15分ほどの話し合いながら、教室は熱気に溢れていました。笑顔で意見を交わす子、何度も文章を読み返す子、小学生ながらしっかりとした意見を述べる様子は大人も顔負けです。

相手を思いやる豊かな想像力が、大きな支援に繋がります

話し合いを終えたところで、各班みんなで見つけた「困りごと」と「解決方法」について発表をしてもらいました。ここでは、その一部をご紹介します。

▼被災者で仮設住宅に一人で暮らすAさん
・LINE通話やZOOMで子どもや孫と会話ができるようにお助けカード(タブレット教室)を使います。
・いつでも誰かと話せる「居場所カフェ」を開いてみたい。

▼リハビリ施設を運営する介護事業者のBさん
・コロナウイルス感染症を気にして通所しなくなってしまったお年寄りには、タブレットやDVDを使って動画でリハビリの方法を教えてあげる!
・クラウドファンディングをはじめて内職するのはどうだろう?

▼刑務所を出たばかりのCさん
・就職先が無くて困っているので、お助けカード4番(罪を犯した人の立ち直り支援)の人に相談して紹介してもらいます。
・友達がいなくて辛いという悩みは、心理カウンセラーさんに話すのもよいかな。

▼仕事がつらくてひきこもりになってしまったDさん
・10番のカード(就職支援)を使って、お試しで挑戦できる仕事を紹介してもらってみては?
・「孤独の会」を作って、同じ境遇の人が集まって気持ちを分かち合うとよいと思う。
「もし友達が困っていたら?」そんな視点で考えることで、親近感が沸き、より具体的なイメージができたようです。誰かを思いやり、共感する力が困っている人たちを支える発想へと結びつきます。

困ったら「助けて」といえる社会へ。休眠預金で困った人を助ける活動をサポートしています

小学生ならではの柔軟なアイデアが次々に飛び出し、短時間でたくさんの意見が飛び交った出前授業。最後は、講師の熊谷先生からJANPIAのスタッフにバトンタッチし、「誰ひとり取り残さない、持続可能な社会づくり」のために大切なことを改めて子どもたちに伝えます。

「皆さんは『休眠預金』を知っていますか? 休眠預金とは、銀行にある預金を10年間預けたり引き出したりしていなかった預金のことです。これまでは、休眠預金になると銀行の持ち物になっていましたが、法律が変わり、困っている人たちのために役立てることができるようになりました」

現代社会では、本当に困っている人ほど、自分からSOSの声をあげられない場合が多く見受けられます。こうした人と出会ったとき、私たちはどのようなことを心掛けておけばよいのでしょうか。

「もし東京に大地震がきたり、巨大な台風がきて江戸川が氾濫したり、突然、災害が起こったら自分が困った人になります。また、溺れている人がいれば浮き輪を投げてあげる、警察や消防署に連絡をするなど、小学生の皆さんでも、困っている人を助けるためにできることはたくさんあります。大切なことは自分たちが困ったら「助けて!」と声を上げること、そして「助けて!」といいやすい社会であること、さらにそうしたSOSを見つけたらできるだけ早く助けてあげられる活動を増やしていくことです」

今日のワークショップで配られたお助けカードに登場していた人たちは、自分たちで団体を作ったり、会社を興したり、さまざまな困りごとを助ける活動をしている「民間」の実在する人たち。休眠預金は、こうした人たちの活動資金として活用されています。それをサポートするのが私たちJANPIAのお仕事です。

「僕は今日はじめて休眠預金について知りました。明日、自分が困った人になるかもしれないと考えたら、お助けカードの人たちと同じように、まず自分に何ができるのかを考えて助けられるようにしていこうと思います!」 未来を担う子どもたちの柔軟な思考と、誰かを思いやる心、そして心強い感想に刺激を受けた出前授業でした。

「僕は今日はじめて休眠預金について知りました。明日、自分が困った人になるかもしれないと考えたら、お助けカードの人たちと同じように、まず自分に何ができるのかを考えて助けられるようにしていこうと思います!」 未来を担う子どもたちの柔軟な思考と、誰かを思いやる心、そして心強い感想に刺激を受けた出前授業でした。

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【本記事に関する問い合わせ先】JANPIA 企画広報部 info@janpia.or.jp

2020年12月16日、休眠預金を活用した事業のシンボルマークの標語 表彰式を開催しました。標語は、公募で集まった315件の案の中から選ばれました。休眠預金を活用した事業のメイン標語の作者である、B&G財団 根本さんのお話を、一般財団法人日本民間公益活動連携機構 理事長 二宮雅也が伺いました。

[左] B&G財団 根本さん、[右] JANPIA理事長 二宮
[左] B&G財団 根本さん、[右] JANPIA理事長 二宮

JANPIA理事長 二宮(以下、二宮) :根本さん、この度はおめでとうございます。休眠預金を活用した事業の資金分配団体であるB&G財団のプログラム・オフィサーとしてご活躍中の根本さんの標語が選ばれたとのことで、大変うれしく思っています。

B&G財団 根本さん(以下、根本) :ありがとうございます。初めにJANPIAの事務局から標語選定のご連絡をいただいたときは、大変驚きました。応募数も多かったと伺いましたので、まさか選ばれるとは思っていませんでした。

二宮:標語の審査会では、応募者の情報はまったく共有せずに標語のみを見て選定を行いました。決まった後に応募者の情報を見て、この事業に深く関わっている方がつくられた標語だということがわかり、我々も驚きました。標語にはどのような思いを込められたのですか?

根本:標語のモチーフとなったのは、大空を背景として舞うタンポポの綿毛のイラストです。
私も資金分配団体のプログラム・オフィサーとして活動しておりますので、休眠預金というものがいかに大切なもので、有意義に使わなければいけないということをよく理解しています。またこの資金は、民間公益活動を行う団体である実行団体の活動の支援の他、組織の基盤を強化する支援などにも活用されています。ですから休眠預金を活用した活動が、このデザインのように大空を舞って広がり、タンポポのように地域に根付いて花開いてほしいという思いを標語にも込めました。

二宮:標語の審査会では、応募者の情報はまったく共有せずに標語のみを見て選定を行いました。決まった後に応募者の情報を見て、この事業に深く関わっている方がつくられた標語だということがわかり、我々も驚きました。標語にはどのような思いを込められたのですか?

根本:標語のモチーフとなったのは、大空を背景として舞うタンポポの綿毛のイラストです。
私も資金分配団体のプログラム・オフィサーとして活動しておりますので、休眠預金というものがいかに大切なもので、有意義に使わなければいけないということをよく理解しています。またこの資金は、民間公益活動を行う団体である実行団体の活動の支援の他、組織の基盤を強化する支援などにも活用されています。ですから休眠預金を活用した活動が、このデザインのように大空を舞って広がり、タンポポのように地域に根付いて花開いてほしいという思いを標語にも込めました。

二宮:今回、本当にたくさんの標語をご応募いただきました。その中には綿毛のイメージから「飛んでゆけ」「はばたけ」という言葉を使われた作品はあったのですが、「舞い上がれ」という言葉を選ばれた方は根本さんだけでした。また、「社会を変える」「みんなの力」という言葉にも、この取り組みに関わるすべての人たちの「社会に良い変化をもたらしたい」という思いが表現されていると感じています。これらの言葉を考えるにあたって、大切にされたことはありますか。

根本:このデザインを見た時に、大空に雲がありますので、そのイラストから私は風を感じました。綿毛が風を受けて飛んでいく姿を表現したいと考えた時、「舞い上がれ」という言葉がふさわしいと考えました。またSDGsもそうですが、現在コロナ禍ということで、突発的にこれまでにないさまざまな社会課題が生まれています。それらにスピーディに対応していく必要性を日々感じており、「社会を変える」というフレーズが思い浮かびました。
加えて、私たちB&G財団では、休眠預金を活用した事業の中で「子どもたちの体験格差を解消する取り組み」を行っていますが、この取り組みを進めていくにあたっては、活動現場の指導者はもちろんのこと、子どもたちの保護者、団体のスタッフ、また活動によっては社会福祉協議会などとも広く連携しています。さまざまな人の力で活動を行っていますし、これからもこの活動に参画する人がさらに増えてほしいと考えています。また休眠預金も元はと言えば国民の資産ということで、それは言い換えれば「みんなの力」とも言えると思いました。そのような考えから、「みんなの力」という言葉を選びました。

二宮:根本さんの日々の活動で実感されている思いがこの標語の言葉に込められているのですね。これから、この標語とデザインが一体となったシンボルマークが、全国の「休眠預金を活用した事業」で表示されることになります。

根本:このシンボルマークを通じて、まさにタンポポのようにさまざまな場所で、活動が花開いていくことを願っています。

二宮:JANPIAとしてもシンボルマークをさまざまな場面で活用し、「休眠預金を活用した事業」への認知と共感を拡げていきたいと考えています。本日はありがとうございました。

[参考ページ]

シンボルマークの紹介ページはこちら

 

(2020年12月23日掲載記事より転載)
【本記事に関する問い合わせ先】JANPIA 企画広報部 info@janpia.or.jp

「コロナ禍であっても地域のつながりを途絶えさせないために、何かできないか」と考え、発案したキッチンカー事業。資金分配団体であるちばのWA地域づくり基金 『地域連携型アフターコロナ事業構築』で採択された「キッチンカーでGO!」事業を実施する「特定非営利活動法人ワーカーズコレクティブういず」理事長 北田恵子さんにお話を伺いました。

コロナ禍のしわ寄せが、弱い立場の人たちを直撃

特定非営利活動法人ワーカーズコレクティブういず(千葉県柏市)

2004年に協同組合形式で女性6人で立ち上あがった「特定非営利活動法人ワーカーズコレクティブういず(千葉県柏市)」は、これまで子育て支援事業や居場所づくり事業など地域からのニーズに合わせて、様々な事業を展開してきました。現在の事務所に移転したのは2008年。古民家風の素敵な一軒家を借りることができたおかげで、居場所づくり事業から助け合い事業に発展し、最近では自治体から生活総合支援事業実施の相談をいただくなど、活動は順調に拡大していました。

しかし2020年に入ってのコロナ禍。2020年3月から6月まで居場所は閉鎖となり、活動は事実上ストップせざるを得ない状況になりました。そして聞こえてきたのは、これまで居場所に来てくれていた人たちが苦しむ声――「高齢の利用者の要介護度が上がってしまった」「外に出られず、鬱状態だ」「常連のお子さんのネグレクトが疑われる」・・・。コロナ禍のしわ寄せが、弱い立場の人たちを直撃していました。

コロナ禍の中でも人のつながりを。「キッチンカーでGO!」が生まれるまで

そのような中、他の団体に教えてもらって休眠預金を活用した「新型コロナウイルス対応支援助成」を知りました。
「コロナ禍によって貧困や孤独が加速している状況の中、それを解消していくためには、やっぱり人だと考えました。助成を活用しながら、人が集まる居場所ではなくても、人とのつながりを保ちながら社会の分断を抑える‘居場所の機能’が展開できないかと考え始めたんです。」(北田さん)

そして人に集まってもらうのではなくて自らが外に飛び出していく「キッチンカー事業」の発想が生まれました。

お話を伺った北田恵子さん

そして人に集まってもらうのではなくて自らが外に飛び出していく「キッチンカー事業」の発想が生まれました。

「移動できるキッチンカーを多目的に活用することで、こども食堂やあおぞらカフェを開催できます。地域の皆さまにご利用いただけるし、キッチンカーによってスタッフにも活躍の場を提供することができます。そして、なによりキッチンカーを購入するってワクワクしませんか?コロナ禍で社会全体が落ち込んでいる中、そのようなみんなでワクワクできることが、大切だと思ったんです。」(北田さん)

その後、「キッチンカーでGO!〜どこでもこども食堂&暮らしのサポート〜」という計画を資金分配団体であるちばのWA地域づくり基金 『地域連携型アフターコロナ事業構築』に申請し、2020年9月に採択されました。

キッチンカーをきっかけに、地域に必要なサポートを届けたい

採択後、諸手続きを経てキッチンカーを購入し11月13日には念願の事業がスタート。当面は2か所に拠点を絞って「あおぞらカフェ」や「子ども食堂」を実施しています。柏市の子供福祉課とも連携し、地域のひとり親世帯に実施日をメールで連絡してもらうことで、参加者にも広がりが出ています。

また地域包括との連携で、介護度の高い方や単身高齢者世帯にランチの無料配達も実施中です。最近では、「子ども食堂を支援したい」と近所の農家さんなどから野菜の寄付も受けています。キッチンカーが街を走ることで取り組みの認知度向上にもつながっているとのことです。 しかし北田さんたちの思いは、キッチンカーでの食事提供にとどまりません。
キッチンカーの様子

また地域包括との連携で、介護度の高い方や単身高齢者世帯にランチの無料配達も実施中です。最近では、「子ども食堂を支援したい」と近所の農家さんなどから野菜の寄付も受けています。キッチンカーが街を走ることで取り組みの認知度向上にもつながっているとのことです。 しかし北田さんたちの思いは、キッチンカーでの食事提供にとどまりません。

「キッチンカーで華やかに見えるのは、食事作りや食事の提供です。もちろんそれは大切なことですが、私たちが本当にやりたいことは、キッチンカーをきっかけにして地域のお困りごとを聞き、地域に必要なサポートをお届けしていく仕組みづくりです。そのために利用者にアンケートにもご協力いただいています。 小さな活動ではありますが、キッチンカーを核とした活動を継続していくことで地域に連携を生み、地域のみんなが輝く場・みんなが集まることで他の人も輝ける場をお互いに作りあっていけるのではないかと考えています。そして孤立・孤独によって生まれる地域課題に素早く気づき、解決につなげられるようにしていきたいです。」(北田さん)
お一人お一人に温かいお弁当を手渡し

「キッチンカーで華やかに見えるのは、食事作りや食事の提供です。もちろんそれは大切なことですが、私たちが本当にやりたいことは、キッチンカーをきっかけにして地域のお困りごとを聞き、地域に必要なサポートをお届けしていく仕組みづくりです。そのために利用者にアンケートにもご協力いただいています。 小さな活動ではありますが、キッチンカーを核とした活動を継続していくことで地域に連携を生み、地域のみんなが輝く場・みんなが集まることで他の人も輝ける場をお互いに作りあっていけるのではないかと考えています。そして孤立・孤独によって生まれる地域課題に素早く気づき、解決につなげられるようにしていきたいです。」(北田さん)

スタッフの皆さん


■休眠預金活用事業に参画しての感想は?

これまで色々な助成を活用して活動してきましたが、休眠預金活用事業のように団体の運営費(家賃や人件費など)まで経費が下りる助成は初めてで、大変ありがたかったです。(北田さん)




■資金分配団体POからのメッセージ

休眠預金等活用事業ならではの大規模な助成を活用してキッチンカーを投入したことでインパクトのある活動が実践できています。ういずさんが拠点を2か所に絞って、じっくりと地域の方と向き合い、関係を築き継続・定着できてきており、担い手のみなさんも生き生きと活動しており、本事業がもたらす効果を実感しています。(公益財団法人 ちばのWA地域づくり基金)

【事業基礎情報】

実行団体
特定非営利活動法人ワーカーズコレクティブういず(千葉県柏市)
事業名
キッチンカーでGO!〜どこでもこども食堂&暮らしのサポート〜
活動対象地域千葉県柏市
資金分配団体公益財団法人 ちばのWA地域づくり基金
採択助成事業

『地域連携型アフターコロナ事業構築』(対象地域:千葉県)

〈2020年新型コロナウイルス対応緊急支援助成〉

2021年3月11日、JANPIAは、2019年度及び2020年度に採択された資金分配団体のプログラム・オフィサー(PO)や事業統括者向けに、非資金的支援の勉強会をオンラインで開催しました。全資金分配団体から希望者を募り、JANPIA事務局と合わせて総勢65名の参加がありました。

プログラム・オフィサーとは?

休眠預金活用制度の特徴の一つとして、資金分配団体が資金的な支援だけでなく、実行団体の運営や活動をサポートする「非資金的支援」(伴走支援)があります。その中心的役割を担うのがプログラム・オフィサー(以下、PO)です。通常枠(最長3年事業)で採択される資金分配団体においてはPOを雇用した場合などに、その確保育成や活動に関する経費も助成しています。現在、2019年度・2020年度事業合わせて137名のPOが登録されています。
JANPIAでは、PO研修等、JANPIA 主催の研修プログラムなどを実施 してPOの担い手を育てることとしており、今回の研修はその一環で行いました。

「非資金的支援の勉強会」の研修内容のご紹介

2019年度採択の資金分配団体にとっては「中間評価」を見据えて、2020年度採択の団体にとっては選定された実行団体への伴走支援を考える材料として、非資金的支援について集中的に学ぶため、2名の講師による講義の後、グループに分かれての感想共有や全体での質疑応答の時間がありました。

「追いかけたくなる指標」

まず、東洋大学社会学科教授の米原あき講師からは、「非資金的支援を促進するための評価と指標の考え方」について説明しました。

評価(Evaluation)という言葉が、価値(value)を引き出す(extract)という言葉から来ていることから、たこ焼きにどういった価値があるのかという例え話から始まり、実際の資金分配団体の非資金的支援のアウトカムやその指標を見ながら、参加者の参考になる改善ポイントを確認しました。

評価指標を立てる際の考え方に関しては、「『追いかけたくなる指標』という発想が大切」と話す米原講師。多くの参加者の印象にも残ったようです。また、目標に関しては、初期値の確認やその増減だけでなく、「ある状況の維持や変化の仕方に注目すべき場合もある」と伝えられました。

「フィランソロピー3.0へ」

「休眠預金活用の制度は、日本のフィランソロピーを、フィランソロピー1.5からフィランソロピー3.0に進める大きなきっかけになる」と話すのは、多摩大学社会的投資研究所 主任研究員の小林立明講師。

グローバルなフィランソロピーの発展段階における、日本の休眠預金制度の位置づけを踏まえたうえで、多摩大学社会的投資研究所が受託を受けて実施した業務から見えてきた、資金分配団体の非資金的支援計画の分析結果について解説いただきました。

非資金的支援のアウトカム設定について、6類型(組織基盤構築、評価、事業運営、資金調達、ネットワーク形成、普及・啓発)に区分した上で、2019年度採択の資金分配団体がどのようなアウトカム類型を選択したかを調査したところ、2項目以上のアウトカムを設定した団体が多かったとのこと。一定の評価をしつつも、制度の趣旨に照らせば「組織基盤構築やネットワーク形成はもっと進めていってほしい」と期待されていました。

「ビジョンからのバックキャスティング」

その後のグループワークや全体ディスカッションでは、各POの感想共有や、事業を実施するうえでの悩みなどの共有があり、採択された年度を超えての交流が見受けられました。

2020年度に採択された資金分配団体のあるPOは、実行団体から「指標を設定することで数字に縛られる。達成できなかったらマイナス評価になるのではないか。」という不安を打ち明けられた際に戸惑いを感じていました。それに対して2019年度採択団体のPOは「団体が目指す方向性と合致していれば大丈夫。」とアドバイス。講義をきっかけにした年度を超えての交流は、日々のPO活動に気づき与える場にもなったようです。

米原講師も「評価や指標は活動をしばるものではなく、改善のために活用するもの」と強調。また、米原講師も小林講師も、アウトカムや指標を設定する際は、団体が目指すビジョンからバックキャスティング(未来からの逆算)することが大事であると声をそろえて話されていました。

講師プロフィール:

〇 米原 あき 氏 東洋大学 社会学部 教授 専門社会調査士

比較教育政策学、国際協力論、人間開発論、またこれらの分野に関わる政策評価を専門分野とする。また、JICAの評価専門家や行政の政策評価委員を務めるなど、多くの実務実績がある。主要著書に、”Human development policy in the global era”(単著)、「プログラム評価ハンドブック」(共著)等がある。

〇 小林 立明 氏 多摩大学 社会的投資研究所 主任研究員

ソーシャル・ファイナンスを専門とされており、そのほかにも、戦略的グラント・メイキング、社会的インパクト評価、NPOマネジメント等、国内外問わずソーシャルの分野を中心に深く研究をされている。主要著書に、「フィランソロピーのニューフロンティア」(翻訳)、「英国チャリティ:その変容と日本への示唆」(共著)、「入門ソーシャルセクター」(共著)等がある。


今回のZIBATSUニュースには、担当する宮田香司さんをゲストに招き、企画内容を伺います。
今回のZIBATSUニュースには、利根川源流の群馬県みなかみ町の奥の奥から、北山郁人さんが登場してくれます。