「業務改善PT(プロジェクト)」とは、指定活用団体であるJANPIAと資金分配団体が、よりよい休眠預金 活用事業を作り上げていくために、改善内容ごとに検討・議論など行う活動です。今回は2023年度業務改善PTの「出資プロジェクトチーム」の活動内容をご紹介します。
2023年度業務改善PT「出資プロジェクトチーム」について
5年後見直しを受け、解禁された出資事業に関し、制度の活用などについて等についての意見交換が行われました。また、事務局側で現行の資金分配団体以外にも、他の民間公益活動を行う団体やそれを支援する投資家等にも広く意見を聴取し、フィードバックをすることで現実的であり、休眠預金 活用事業としてあるべき出資事業について検討しました。
今年度の業務改善PT「出資プロジェクトチーム」は、14団体15名の資金分配団体有志メンバーで構成され、全日オンラインにて開催しました。
※利益相反に留意するため、現行の事業の担い手が直接制度設計を行うことにならないよう配慮した上での議論が重ねられました。
活動報告
2023年7月3日 第1回検討会
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[議論概要]
- 新しく始まる制度である出資事業において、自由に意見交換を行いました。PTメンバーからは、ターゲットとなる事業のイメージ、経済的リターン・インパクトリターンの求め方、今後の議論テーマ等について広く意見が出されました。
2023年7月28日 第2回検討会
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[議論概要]
- 既存の出資事業とは異なる、休眠預金活用事業の目的に即した出資事業について意見交換を行いました。PTメンバーからは、ヒアリング結果を参考にしつつもあらかじめ一定のコンセプト案を中心に据えた議論展開について提案がありました。
- リターンに関しては、金銭的な利回りやリスクについて検討されたほか、金銭的な価値だけではなく、社会課題の解決促進を含む広義の意味での価値創造を意識していく必要性についても言及されました。

2023年10月10日 第3回検討会
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[議論概要]
- 出資事業に求められていることは、社会的成果の最大化と収益性の実現の両立であるという方向性で議論が進められました。両立を実現させることを考えられた際に、JANPIAや資金分配団体の出口戦略をどのように図っていくのか 、収益性に期待する投資家にどのように参画をしてもらうか明確に示していく必要があることが示唆され、様々な方法や案が提示されました。
- 出資事業が開始されることにともない、助成事業との役割分担についても意見が交換されました。
2023年11月9日 第4回検討会
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[議論概要]
- 内閣府の出資事業の概要を確認しながら、休眠預金としての出資事業の在り方について確認がされました。検討会を重ねるうちに漠然としていた出資事業の活動内容がより具体的なイメージを共有しながら議論が進められるようになりました。
- 休眠預金が対象にしている、困難を抱える人や地域への出資を行うことは短期間での成果や収益は得られないが、初期投資として休眠預金を活用することで、後に大きなインパクトへつながるとの期待感が示されました。
2023年12月21日 第5回検討会
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[議論概要]
- 内閣府の出資事業の概要やパブリックコメントの結果を確認しながら、出資事業の方向性について確認がされました。
- 社会的課題の性質にあわせた支援の形式となるように、整理をした上で制度設計が議論をされていくとよいという意見が示されました。
- また、全体として出資事業の方向性が良いものにまとまってきたので、今後は事業を行っていく段階にあるという意見も示されました。
「業務改善PT(プロジェクト)」とは、指定活用団体であるJANPIAと資金分配団体が、よりよい休眠預金活用事業を作り上げていくために、改善内容ごとに検討・議論など行う活動です。今回は2023年度業務改善PTの「評価の在り方検討チーム」の活動内容をご紹介します。
2023年度業務改善PT「評価の在り方検討チーム」について
今年度の業務改善PT「評価の在り方検討チーム」は、資金分配団体有志メンバー12団体 14名で構成され、2019年度事業の事後評価報告書から資金分配団体の評価の本質を深堀し、主に以下の3点について議論してきました。
- 自己評価における評価目的の設定と定期的確認〜「誰のため、何のため」の評価か
- 社会課題解決のための自律的・持続的な仕組みの構築:出口戦略をいかに評価するか
- 評価における資金分配団体と実行団体の協業のあり方:非資金的支援をいかに評価するか
全6回にわたる検討会および各タスクチームでのミーティング等を経た議論の結果は、成果物としてまとめて公表予定です。
活動報告
第1回検討会 2023年7月5日
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[議論概要]
- 22年度のJANPIA評価チーム、業務改善PT評価チームの実績を受け、23年度業務改善PT評価チームの進め方について意見交換を行いました。

第2回検討会 2023年9月11日
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[議論概要]
- 前回共有されたメンバーからの意見に基づいて、JANPIA から活動案「事例からみる評価の本質」を提案。メンバーで合意の上、19 年度事業の事後評価報告書を読み合わせながら、評価の在り方を議論し、評価に関するヒントやアイデアの蓄積を目指すこととなりました。
- 「事例からみる評価の本質」について、評価の本質を整理するときの獲得目標を整理する必要性や、深堀の視点を協議しました。
[検討内容]
① 評価の本質を整理するときの獲得目標を整理する。
②「深堀の視点」を考える(19 年度以後評価報告書どういう視点から見るか/例えば、非資金的支援の評価のあり方、指標の設定、連携の拡がり、深堀したい分野など)
- また、プラスαの活動として昨年度に引き続き「ピアラーニング」を行っていくことを決定しました。
ランチ勉強会
第3回開催までに深堀視点を明確化するため、 ランチ勉強会を企画しました。
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[概要]
- 第2回での「深堀の視点」の議論をJANPIAで3つの視点(1)社会課題解決のための自律的・持続的な仕組みの構築 2)(資金支援の)資金分配団体と実行団体の評価の分業 3)非資金的支援の評価。)に整理。視点を意識して、2019年度の事後評価報告の報告書の共有や評価方法について発表いただきました。


第3回検討会 2023年11月7日
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[議論概要]
- 第2回での「深堀の視点」の議論をJANPIAで整理した結果、3つの視点になることを説明しました。1)社会課題解決のための自律的・持続的な仕組みの構築 2)(資金支援の)資金分配団体と実行団体の評価の分業 3)非資金的支援の評価。これをもとに議論が重ねられ、深堀の視点を2つの内容に修正しました。
1)社会課題解決のための自律的・持続的な仕組みの構築(出口戦略、連携のあり方、地域・分野での広げ方)
2)評価における資金分配団体と実行団体の協業のあり方(非資金的支援の評価を含む)
- 決定した2つの視点でタスクチームを設定し、メンバーは希望するチームに参加。次回の検討会までに2019年度の事後評価報告書から、深堀りするのに相応しい報告書を検討し、読み合わせや輪読を行うことが決定しました。
- ピアラーニングについて、今後各タスクチームの視点で読み込んだ報告書の執筆団体にヒアリングを行うことに決定しました。
第4回検討会(対面開催) 2023年12月14日
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[議論概要]
- 第4回検討会は対面で開催し、活発な議論が行われました。JANPIA評価チームから活動の共有がなされ、評価PTメンバーと様々な意見交換が行われました。
- 各タスクチームは、評価報告書の目的の解像度を上げることや活用方法、そのために記されるべき内容や形態、事後評価報告書には多様な表現方法、定性評価を数値化等、どの要素を共通項目として必要か等を議論。これらの気づきを改善につなげられる方法を今後検討することになりました。
- 各タスクチームは、次回までに事後評価報告書を読み込み、報告書の執筆担当者にオンラインでヒアリングを実施しておくことが決定されました。
<タスクチーム1>
テーマ:社会課題解決のための自律的・持続的な仕組みの構築
事後報告書:19年度事業 パブリックリソース財団 黒木さん
<タスクチーム2>
テーマ:評価における資金分配団体と実行団体の協業のあり方
事後報告書:19年度事業 中国5県コンソーシアム 松村さん


第5回検討会 2024年2月6日
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[議論概要]
- 第4回以降に、タスクチームごとにオンラインでミーティング等を重ね、対象とした事後評価報告書の執筆担当者にヒアリングを実施しました。その結果を踏まえ、第5回の検討会では、今まで議論してきた内容がどのように今後の評価に反映できるのかJANPIAへの提言を意識して議論がなされました。
- タスクチームごとの深堀の視点からさらにポイントを絞って検討がなされ、「誰のための」「どのような目的」を持った評価報告書にしていくのか議論されました。
第6回検討会 2024年3月12日
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[議論概要]
- 評価PT議論でメンバーが活用した用語「総括的評価と形成的評価」「アカウンタビリティ」の考え方について、本評価PTアドバイザー今田氏(CSOネットワーク)がミニ講義を行い、全員が意味を理解できるようにしました。
- 今までの議論を受けて、JANPIA評価チームが「JANPIAが評価から求めるもの」を改めて整理した結果をメンバーに説明しました。
- 今までの議論を評価PTアドバイザー今田氏が、深堀結果と浮彫になった課題に整理してまとめた内容をメンバーで確認。強調すべきポイント、不足点、追加コメント等を話し合いました。
- 本年度の成果物は第6回の意見、オンライン上での意見交換、ミーティングを踏まえて、(仮題)「2019 年度事後評価報告書から学ぶ資金分配団体自己評価の現状と今後に向けての提言」として、まとめられます。
2024年3月6日に開催されました公益財団法人パブリックリソース財団主催 <2020年度>休眠預金活用事業『食支援を支えるインフラ「中核的フードバンク」の可能性を探る~中核的フードバンクによる地域包括支援体制事業~』の成果報告会の動画をご紹介します。
今回のJANPIAスナップでは、PwC Japanグループ×SMBCグループの共催で行われた『企業の垣根を越えたコレクティブインパクトへの第一歩 「ソーシャルな視野が広がる1Dayプロボノワークショップ」』の様子をお届けします。
イベント概要
2024年2月17日(土)、PwC Japanグループ(以下、PwC Japan)と株式会社三井住友フィナンシャルグループ(以下、SMBCグループ)は、企業の垣根を越えたコレクティブインパクトの創出を目指し、「ソーシャルな視野が広がる1Dayプロボノワークショップ」を共同で開催しました。
本イベントは、昨年10月6日(金)にJANPIA主催で実施した 「ボランティア・プロボノマッチング会 第2回成果報告会」でご登壇いただいた PwC Japan有限責任監査法人、SMBCグループの方々が、その場で連携に向けた対話をされたことがきっかけで実施に繋がったものとなります。
【関連記事】「ボランティア・プロボノマッチング会 第2回成果報告会」を開催!
活動スナップ

当日は、「異なる組織の共創により社会の持続的な変革の体現を目指す」という趣旨に賛同した企業12社から、約130名が参加し、7つの NPO等の団体が抱えるさまざまな課題に対する解決策の提案が行われました。
参加団体7団体のうち、休眠預金活用事業の採択団体からは、以下の4団体が参加しました。
・特定非営利法人 サンカクシャ
・公益財団法人 長野県みらい基金
・認定特定非営利法人 フードバンク信州
・認定特定非営利活動法人 Learning for All
当日の様子は、PwC Japanグループ及びSMBCグループの公式サイトよりご覧いただけます。
1月15日、一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)は「能登半島地震支援団体、地元団体からの緊急発信:被災者支援と復興への道筋」と題して、メディア向け報告会を開催いたしました。昨年末より、JANPIAでは同日に別テーマでの「メディア懇談会」を開催する予定で準備を進めていました。そのような中、元日に起きた令和6年能登半島地震を受けて、急遽テーマを変更して開催したものです。その内容の一部を紹介いたします。 なお、本報告会では、評論家でラジオパーソナリティーでもある荻上チキさんが進行を務めました。”
「能登半島地震における被災者支援と復興への道筋」
【登壇者】
・認定NPO法人ジャパン・プラットフォーム 地域事業部部長 藤原 航 さん
・NPO法人ワンファミリー仙台 理事長 立岡 学 さん
・NPO法人YNF 代表理事 江﨑 太郎 さん
資金分配団体であるジャパン・プラットフォーム(JPF)の実行団体であるワンファミリー仙台とコンソーシアムを組むYNFは、「防災・減災に取り組む民間団体等への災害ケースマネジメントノウハウ移転事業 (2020年度通常枠)」のなかで、2023年5月に起きた奥能登地震による被災者の生活再建支援を進めるため、1月4日から石川県珠洲市に向かう予定でした。しかし、令和6年度能登半島地震発災を受けて急遽、珠洲市での緊急支援に入りました。
今回のメディア向け報告会では、JPFとワンファミリー仙台、YNFの3団体にそれぞれの立場から「能登半島地震支援団体、地元団体からの緊急発信:被災者支援と復興への道筋」をテーマお話いただきました。
甚大・頻発化する国内災害。行政と民間の力が必要
報告会では、まずJPFの藤原さんから、国内災害が年々甚大化・広域化し、地震や豪雨など含めて頻発化しているなか、もはや行政の支援だけでは間に合わず、民間と行政と両方の力が必要になっているという状況について説明がありました。
「災害が頻発している一方で、防災や減災のソフト面の整備には、なかなかお金がつきにくいのが現状です。2020年度通常枠で採択された3年間の休眠預金活用事業によって、私たちは念願だった防災・減災に取り組むことができました。具体的には、避難所の運営ノウハウや被災者の個別支援、生活再建の方法、発災時の物流や在留外国人支援などに対して、災害リスクの高い地域での民間支援団体や自治体とともに体制の整備を進めてきたところです。能登半島地震でも残念ながらこうした課題が出ています」(藤原さん)
現在、JPFでは能登半島地震の被災者支援にあたって休眠預金や民間資金なども使いながら、「人命救助」「二次被害防止(物資やQOLの維持)」、「生活再建事業」の3つに取り組んでいます。そのなかで、いま必要とされている緊急的な支援を行いながらも、なるべく早くに長期的な支援を見据えた「生活再建事業」に着手することが重要になると藤原さんは訴えました。JPFは、実行団体であるワンファミリー仙台やYNFを通じて、被災者一人ひとりの状況に寄り添った支援を行う「災害ケースマネジメント」の被災地での適用を進めているところです。
「昨年7月に秋田で起きた豪雨災害でも、いまだに家屋が修繕できていない状況で暮らしている人たちがいます。能登半島地震でも、今後、被災地の報道がされなくなったあとに取り残されてしまう人たちが出てくることが懸念されます。そうならないように支援に取り組んでいきたいと思っています」(藤原さん)
「災害ケースマネジメント」で生活再建を支える
ワンファミリー仙台の立岡さんからは、東日本大震災のときに被災者の仮設住宅への入居から転居までの長期にわたる支援に関わってきた経験から、能登半島地震の被災者の方々にとって必要になってくるのは「この先の見通し」であるというお話がありました。
「いま国でも進められている『災害ケースマネジメント』は、被災者一人ひとりの状況をしっかり把握して、その人に寄り添った生活再建を支えていく考え方です。能登半島地震はまだ緊急支援のフェーズではありますが、これから被災者が仮設住宅などに移っていく段階において、見守りや相談支援のセンター機能をつくり、きちんとした支援体制を構築していく必要があります」と立岡さん。
その際に厚労省の「被災者見守り・相談支援事業」を能登半島地震でバージョンアップしながら生かすことができるのではないかという提案もありました。
「被災地域では高齢化が進んでいるため、今回の避難によって人口減少がさらに進むのではないかという不安を抱えながら行政職員は支援にあたっている状況です。地域から人口を流出させない、街をなくさないという発想のもと、自力で広域避難している人たちへの自治体からの情報発信などのアプローチなども施策にしっかり入れていく必要があるだろうと思っています」
報告のなかで立岡さんは、これまでの災害から得た知見を活かし、「この先どうしたらいいのか」という不安を抱えている被災者への丁寧な情報発信や、避難所での生活を含めた被災者の状況把握、共通アセスメントシートによるデータの蓄積、行政部局を横断した連携など、生活再建までのきめ細やかな支援体制を整える必要性を強調しました。
関心が薄れていかないようメディアの力を
最後に、石川県珠洲市内で連日支援にあたっているYNFの江崎さんからは、現状についての報告をいただきました。
「いま感じている大きな課題は、断水や道路の寸断、雪などが原因となった生活環境の悪さです。避難所での食事の質も低く、冷たい床の上で高齢者が寝ている光景は珠洲市では珍しくありません。また、、南から北へ向かうルートしかない地理的状況ですべての道路が被災しており、『陸の孤島』での支援の難しさを痛感しているところです」
1月3日に珠洲市に入った江崎さんは、住民や役所の方たちが「これは長期戦になる」と口にしていたことが印象的だったと話します。その一方で、近年の災害では中長期的な支援が十分に行われてこなかったことを指摘。
「私たちの団体では、珠洲市で能登半島地震の支援をしながら、いまも福岡県久留米市で昨年7月に発生した豪雨災害の被災者対応を続けています。各地で災害が頻発していますが、官も民も支援体制がまだまだ足りていません。そうしたなか、休眠預金活用事業で、この3年間にわたって『防災・減災に取り組む民間団体等への災害ケースマネジメントノウハウ移転事業』を続けてきたおかげで、今回の能登半島地震では支援の初動がスムーズにできたと感じています」(江崎さん)
能登半島地震では一般のボランティアがなかなか入りにくい状況が続いていますが、江崎さんは「全国からの関心が過疎化を防ぐ一助にもなる。本格的にボランティアが入れるのは暖かくなる春以降ではないかと思いますが、それまでに皆さんの関心が薄れてしまうことを恐れています。どうぞ、そういったところでもメディアの皆様の力を貸していただきたい」と話し、報告を締めくくりました。
「令和6年能登半島地震 災害支援基金の立ち上げについて」
【登壇者】
・公益財団法人 ほくりくみらい基金(石川県) 代表理事 永井 三岐子 さん
ほくりくみらい基金は、全国コミュニティ財団協会(CFJ)が実施する休眠預金活用事業2021年度通常枠助成「地域の資金循環とそれを担う組織・若手支援者を生み出す人材育成事業」で採択され、石川県初のコミュニティ財団として2023年4月に設立された団体です。代表理事の永井さんから被災地や基金の現状、今後の支援についてお話をいただきました。
発災後、すぐに立ち上げた「災害支援基金」
2023年4月に設立された石川県初のコミュニティ財団「ほくりくみらい基金」ですが、設立後すぐに奥能登地震が起こり、その際にはボランティアのマッチングなど人と人をつなぐ支援を行いました。さらに設立から1年も経たない2024年の元日に起きたのが能登半島地震でした。
「理事メンバーのひとりが奥能登に住んでいることもあり、急いで安否確認をするとともに、周辺情報の収集を始めました。1月2日にはCFJと緊急会議を開き、被災地で支援活動を行うNPO等の団体を応援するための基災害支援基金を立ち上げました」と永井さん。
災害支援資金の呼びかけに対して、クラウドファンディングを通じて9日間で1000万円以上が集まり、1月12日には第1次緊急助成プログラムとして総額200万円の公募を開始。1月15日時点で8団体への助成が確定しました(※現在は第3次緊急助成プログラム募集が終了)。
「通常の助成では審査にある程度の時間をかけますが、今回は緊急のためスマホからも申請でき、審査をスピーディにして、申告者負担を減らすことを意識しました。申請から24時間で審査をして、各団体に最短3日で資金を届けています」
今回、ほくりくみらい基金が助成した各団体では、被災者への食事提供、炊き出し、ペット猫・地域猫の捕獲と保護、避難高校生の学習支援、被災地での子ども預かりと専門家による育児支援など、さまざまな支援活動を行っています。
「設立から間もない私たちが、震災から2週間ほどでこうした活動を実現できたのは、休眠預金活用事業の資金分配団体であるCFJや、その実行団体である各地のコミュニティ財団との連携があったからです」
中長期支援で市民団体と地域の未来をつくる
今回、地震によって被災したのが農林水産業や輪島塗といった、生業と生活が強く結びついた方が多い地域であることから、「避難によって自分の街を離れたら『もう戻ってこられないのではないか』という住民の不安や恐怖は大きい。そのなかで避難をお願いする行政側のつらさも非常に感じています」と永井さん。
今後に向けては、やはり「中長期の支援」の必要性を挙げていました。
「災害支援基金によって立ち上がった緊急支援は、被災者の『今』を助けるものですが、今後は私たちが助成・支援する市民団体のアンテナを通じて、どの地域がどんなフェーズにあるのかを的確に把握して支援していく必要があります。そして、今回支援に立ち上がった市民団体を支援・育成しながら支援ネットワークを構築し、一緒にこれからの地域の未来をつくっていくことが必要だろうと思っています」
休眠預金活用事業での能登半島地震への支援
今回の報告会では、いまだ緊急的な支援が必要な能登半島地震の被災地での現状とともに、今後の生活再建や地域復興を見据えた中長期的な支援体制を構築することの大切さや、継続的なメディア報道による支援の必要性が伝えられました。
JANPIAでは、2023年度「原油価格・物価高騰、子育て及び新型コロナ対応支援」の第5次募集において、能登半島地震の影響によって深刻化、顕在化した社会課題への緊急的な支援などを対象とした事業を採択しました。また、来年度以降は、通常枠において、生活再建や地域復興にむけた支援に関する資金分配団体などの申請を是非お待ちしております。
当日の様子
なお、今回の報告会では、登壇者の皆様に加え、メディア論をはじめ、政治経済やサブカルチャーまで幅広い分野で活躍する評論家で、ラジオパーソナリティーも務める荻上チキさんにもご協力いただきました。この場を借りてお礼申し上げます。
【事業基礎情報①】
実行団体 | 特定非営利活動法人ワンファミリー仙台 コンソーシアム構成団体 |
事業名 | 災害ケースマネジメントによる被災者支援事業 |
活動対象地域 | 石川県、和歌山県、三重県、福岡県、秋田県 |
資金分配団体 | 特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム |
採択助成事業 | 災害ケースマネジメントによる被災者支援事業 〈2020年度通常枠〉(災害支援事業) |
【事業基礎情報②】
実行団体 | 公益財団法人ほくりくみらい基金 |
事業名 | 当事者のエンパワーメントとコレクティブインパクトで作る課題解決モデル事業 |
活動対象地域 | 石川県 |
資金分配団体 | 一般社団法人 全国コミュニティ財団協会 |
採択助成事業 | 地域の資金循環とそれを担う組織・若手支援者を生み出す人材育成事業 〈2021年度通常枠〉(草の根活動支援事業) |
今回のJANPIAスナップでは、JANPIA×RISTEX共催イベントを開催した様子をお届けします。
イベント概要
JANPIAはRISTEXとの共催イベントとして、2024年1月24日に第1弾ラウンドテーブル「孤立・孤独という社会課題にどう向き合うか?~直面する課題に立ち向かう現場×研究による予防的アプローチ~」、2月1日に、第2弾セミナー「現場と研究のつながりが社会課題解決を促進する~企業がつないだ事例「シングルペアレンツ・エンパワメント・プログラム」から~」を開催しました。
第1弾:ラウンドテーブル「孤立・孤独という社会課題にどう向き合うか?~直面する課題に立ち向かう現場×研究による予防的アプローチ~」
「社会的孤立・孤独」の課題に対し、当事者への日常的な直接の支援に取り組むJANPIAの民間団体と、孤立が発生する因子にフォーカスした研究に取り組むRISTEXの研究者が登壇し、相互の活動を知り、知見の交換を図るラウンドテーブルを行いました。
様々な孤独、孤立を考えるにあたり、フィールドが異なる皆様から、ご報告いただきました。
多様な世代へのアプローチ、アウトリーチ、子ども・若者(ユース世代)の分野では、相談できる場所がない、親に頼れないなどの事情を抱えているケースが多い。
また、地域によっては「世間体」を気にする人が多くオーダーメイド方式で対応している。本人が「孤立」している、「孤独」を自覚している人がいないなど地域の文脈を理解しながら支援することが必要であるというコメントがありました。
登壇者のご紹介

当日の動画
第2弾:「現場と研究のつながりが社会課題解決を促進する~企業がつないだ事例「シングルペアレンツ・エンパワメント・プログラム」から~」

異なるセクターの協働による社会課題解決事業の参考となる事例として、企業が研究者と民間公益活動を行う団体をつなぎ実施している「シングルペアレンツ・エンパワメント・プログラム※」の事例を参考に、同じ社会課題解決を目指す研究者と非営利組織、企業がどのような役割をもって事業を実施してきたのかを振り返りながら、マルチセクターで協働するメリットや、有機的なつながりをつくるコツなど、課題解決において相乗効果を生むために役立つヒントについて、セミナー形式で行いました。

当日の動画
当プログラムをマネジメントする立場であるAVPN伊藤氏をファシリテーターとし、秋山氏からは民間公益活動を行う団体の視点から、大岡氏からは研究者として、佐藤氏は企業として活動をサポートする立場から、シングルペアレントの居住問題とメンタルヘルスが、なぜセットで語られるのか?に目をむけ、シングルペアレントの背景を知り連携することで、シナジーを生み出している事例が紹介されました。
また、NPOなどの支援者が居住支援にかかわる様々な支援者がトラウマのことをよく知って関わる姿勢(トラウマインフォームドケア)を学ぶことで、トラウマを抱えたシングルペアレントの背景を尊重しながらケアをしていくことが重要であり、この連携事例が大きな意味を持つことが確認されました。
さらには、企業視点での連携における難しさやそれを克服するための工夫なども紹介され、それぞれが違う立場で同じ目標に向かって活動を推進することの意義が話し合われました。
※シングルペアレンツ・エンパワメント・プログラム by American Express
アメリカン・エキスプレスの支援により2023年4月から2024年3月までAVPNが運営する事業です。複数の企業と非営利組織の連携により、対象者(いわゆる「シングルマザー」や予期せぬ妊娠をした方)が必要とする住まいとメンタルヘルスケアのサービスを提供しています。
2024年3月5日に開催されました公益財団法人パブリックリソース財団主催・一般社団法人 居住支援全国ネットワーク共催『特別フォーラム「人権としての住宅」~住まいから始まる再生にNPOや企業はどう取り組むか~』の動画をご紹介します。
本フォーラムでは、NPO等が取り組む「支援付き住宅」のモデル事例を紹介するとともに、この領域にいかに民間の資金や資源を取り込むことができるか、休眠預金活用事業から見えてきた実例をもとに<2022年度コロナ緊急支援助成枠>コロナ禍の住宅困窮者支援事業2の活動報告をご紹介します。
JANPIAは2023年12月1日、日本財団主催の「アジア・フィランソロピー会議 2023」の中で、「多様な「はたらく」、「まなぶ」の意思を尊重、機会創出の実現へ! ~休眠預金活用事業の事例から~」というセッションを企画・発表しました。「アジア・フィランソロピー会議」は、アジア地域におけるフィランソロピー活動に焦点を当てた国際的な会議で、今回のテーマは、 DE&I(多様性、公平性、包括性)。JANPIAのセッションでは、今回のテーマに関わる事業に取り組まれている実行団体の代表者と、休眠預金活用事業の可能性などについて対話しました。
活動概要
2023年12月1日、公益財団法人 日本財団の主催による「アジア・フィランソロピー会議」が、ホテル雅叙園東京にて開催されました。2回目の開催となる今回は、「DE&I(多様性、公平性、包括性)」(※1)をテーマとし、社会課題の解決に取り組む財団をはじめとしたアジアのフィラソロピーセクターのリーダーが一堂に会し、各セッションに分かれ様々な議論が行われました。
同会議のパラレルセッション4にて、JANPIAは、『多様な「はたらく」、「まなぶ」の意思を尊重、機会創出の実現へ!~休眠預金活用事業の事例から~』と題し、休眠預金活用事業の事例を紹介しました。
セッション4の様子は、動画と記事でご覧いただけます。

※1:「DE&I」は、Diversity(ダイバーシティ、多様性)、Equity(エクイティ、公平性)、Inclusion(インクルージョン、包括性)の頭文字を取った略称。
活動紹介
休眠預金活用事業説明(JANPIA)

はじめに、JANPIA 事務局長の大川より、休眠預金活用事業の紹介と今回のセッションの説明をしました。 「休眠預金等活用法よりJANPIAが2019年に指定活用団体に選定されて以来、全国で1,000を超える実行団体が休眠預金を活用し、社会課題の解決に取り組んでいます。今回は、その中から、今回の会議のテーマに合った事業に取り組まれている団体の代表者をお招きしました。会場やオンラインの皆様含めて、様々な観点から意見交換できたらと思います。」
▲JANPIA 事務局長 大川 資料〈PDF〉|休眠預金活用事業説明|JANPIA[外部リンク]
各団体の取り組み
[1]一般社団法人 ローランズプラスの事例紹介
株式会社ローランズ 代表取締役 / 一般社団法人 ローランズプラス 代表理事 福寿 満希氏
福寿:私たちは東京都の原宿をメイン拠点としながら、花や緑のサービスを提供している会社です。特徴的なのは、従業員80名のうち7割の約50名が、障害や難病と向き合いながら働いているということです。私たちは、「排除なく、誰もが花咲く社会を作る」をスローガンとしており、Flower&Green事業、就労継続支援事業、障害者雇用サポート事業の大きく3つの活動を行っています。

休眠預金活用事業には、過去に3回採択されています。1つ目の「障害者共同雇用の仕組み作り」という事業(※2)は、READYFOR株式会社が資金分配団体で、新型コロナウイルス対応緊急支援助成で採択されました。コロナ禍により、障害当事者の方たちの失業率が高まり、特に中小企業での雇用維持が大変でした。1社だけでは雇用が難しいため、例えば10企業でグループを作り、グループ全体で仕事をつくり、雇用を生み出していきましょうという仕組みづくりです。この事業によって30名程の新しい雇用が生まれ、助成終了後の今も、自走してしっかり回っている状態になっています。
2つ目は、「花を通じた働く人のうつ病予防project」事業(※3)です。資金分配団体は、特定非営利活動法人 こどもたちのこどもたちのこどもたちのために 様で、花を通してうつ病を予防していくという取り組みです。企業の花を通じたウェルネスプログラムとして、会社から従業員に対して、10分割できる花をプレゼントし、10人に「ありがとう」を伝える機会をプレゼントします。ある調査では、「ありがとう」の言葉は、伝える側の方が幸福度が高くなるというデータが出ています。「ありがとう」の伝えることの重要性を知り、求めるのではなく、自発的にその言葉を伝えていければ、幸福度が高まる機会が増え、結果的にうつ病が予防されていく仕組み作りに挑戦しています。3年間で4千人へアプローチすることを目標に取り組んでいます。
3つ目は、資金分配団体である株式会社トラストバンク 様と取り組んでいる「地域循環型ファームパーク構築」事業(※4)です。神奈川県横須賀市で花の生産と体験型農業(ファームパーク)の運営を行うことで、地域の障害当事者の就労機会を創ることに取り組んでいます。慣れ親しんだ地域に仕事を作り、障害当事者が地元で活き活きと働き、その対価を得ながら地域循環の元で生活をしていけるモデルを作ろうとしています。横須賀地域の福祉団体と連携して、福祉団体から採用していくという流れをとっています。先ずは横須賀で形をつくり、そこから、その他の地域循環モデルが広がっていったら良いなと思い取り組んでいます。

※2:2020年度 緊急枠 「ウィズコロナ時代の障がい者共同雇用事業」
(資金分配団体:READYFOR株式会社)【関連記事】ウィズコロナ時代の障がい者共同雇用
※3:2022年度 通常枠 「植物療法を通じた働く人のうつ病予防プロジェクト」
(資金分配団体:特定非営利活動法人 こどもたちのこどもたちのこどもたちのために〈イノベーション企画支援事業〉)
※4:2022年度 通常枠 「障がい当事者が活躍できる地域循環型ファームパーク構築事業」
(資金分配団体:株式会社トラストバンク〈ソーシャルビジネス形成支援事業〉)
[2]認定NPO法人 グッド・エイジング・エールズの事例紹介
認定NPO法人 グッド・エイジング・エールズ 代表 松中 権氏
松中:まず「プライドハウス東京」というプロジェクトについてご説明します。まだまだ社会の中にはLGBTQ+(※5)の方への差別偏見があり、孤独感を感じている方も少なくありません。そこで、性的マイノリティの方々が横で繋がったり、安心・安全に訪れることができる場所をつくろうという取り組みが、「プライドハウス東京」です。2023年11月現在、31の団体・専門家、32の企業、19の駐⽇各国⼤使館などと連携して取り組んでいます。

【関連記事】
世界でいちばんカラフルな場所を目指して!| グッド・エイジング・エールズ 松中権さん × エッセイスト 小島慶子さん【聞き手】
「プライドハウス東京」設立プロジェクトは、特定非営利活動法人エティックが資金分配団体を務める事業で採択され(※6)、当初は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の時期に合わせて期間限定の場所をつくり、その後、2022年頃に常設の大型のセンターを造ろうという計画でした。
しかし2020年に緊急アンケートを行ったところ、新型コロナウイルス感染拡大の影響でLGBTQ+の若者が大変な状況にあるということが分かってきました。実は、73.1%の方々が、同居人の方との生活に困難を抱えていることが分かりました。また、36.4%のLGBTQ+の若者が、コロナ禍でセクシュアリティについて安⼼して話せる相⼿や場所との繋がりを失ってしまったと回答しました。この緊急アンケートによって明らかになった「居場所のニーズ」により、当初の計画を前倒しし、2020年の秋、常設のセンターを開設することになりました。
LGBTQ+に関する様々な調査の中で、政府も調査していることの一つが自殺の事です。政府が自殺対策の指針として定める「自殺総合対策大綱」によると、性的マイノリティはハイリスク層と言われています。そうした方々が、安心・安全に集えるようなコミュニティスペースが、「プライドハウス東京レガシー」です。また、休眠預金を活用した事業が動き出したことによって、「プライドハウス東京」に関する高い信頼が得られ、翌年には厚生労働省の自殺対策(自殺防止対策事業)の交付金を受けることになりました。自殺対策の相談窓口は電話やSNSが多いですが、「プライドハウス東京レガシー」では、対面型の相談サービスを提供しています。2023年11⽉現在の来館者数は、延べ1万人を超えたというところです。

※5:LGBTQ+…レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランジェンダー、クエスチョニング(自分の性別や性的指向に疑問を持ったり迷ったりしている人)/ クィア(規範的な性のあり方に違和を感じている人や性的少数者を包摂する言葉)の英語表記の頭文字を並べ、LGBTQだけではない性の多様性を「+」で表現している。
※6:2019年度 通常枠
「日本初の大型総合LGBTQセンター「プライドハウス東京」設立プロジェクト」
(資金分配団体:特定非営利活動法人エティック(子どもの未来のための協働促進助成事業))
パネルセッション
続いて、JANPIA 加藤の進行により、パネルセッションが行われました。本セッションでは、お互いの発表に対する意見交換から始まり、続いて今回のテーマである「DE&I(多様性、公平性、包括性)」について、そして最後に、休眠預金活用事業への期待や展望について、登壇者の二人からお話を伺いました。

登壇者:
・株式会社ローランズ 代表取締役 / 一般社団法人ローランズプラス 代表理事 福寿 満希氏
・認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ 代表 松中 権氏
司会:
一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)
企画広報部 広報戦略担当 加藤 剛

休眠預金の活用について、福寿氏は、「やりたかったけれどもやれていない事業や、やったら絶対に意義があると思っているけど、資金的・人的リソースが足りず、なかなか挑戦できない新規の事業で申請することが多かった」「障害者手帳をお持ちではないグレーゾーンの方もいらっしゃったりするので、そのような制度に引っ掛からない方たちにも支援が届けられたらと思った」と語りました。グッド・エイジング・エールズの松中氏は、「一般的な助成だと一番大切な居場所をつくるための家賃や人件費がサポートいただけないことが多かったので、休眠預金を知ったときは、これだったら居場所がつくれるのではないかと思い、申請した。常勤のスタッフが安心して働けるからこそ、新しいプロジェクトや寄付金が集められる」と続けました。また、お互いの活動について、松中氏は、「是非、連携させていただきたいと思った」と、今後の事業連携の可能性について盛り上がりました。
今回のテーマ『DE&I~すべての人々が自分の能力を最大限に発揮できる社会を目指して~』について、松中氏は、「LGBTQ+の当事者の若者が、卒業後に働く現場の一つとして、これらのコミュニティに関わるとか、企業のDE&Iに関わる部署への配属を希望できるようになるなど、卒業後にDE&Iを仕事としていくことが想像できるようになると良いなと考えている」と回答。また、福寿氏は、「障害者手帳もそうだが、名称の括りがあると、何か特別なものように思ってしまいがちなので、たまたま障害当事者のために業務を分かり易くしたところ、結果としてそれが同じ拠点で働くみんなのためにもなったといったように、障害者雇用が特別なものではない社会になったら良いなと思って取り組んでいる」と答えました。
また、休眠預金活用事業への期待や展望について、松中氏は、「取り組みの地域格差をどれくらい埋められるかというのが課題だと思っている。例えば、LGBTQ+センターは東京だけではなく、全国各地にあった方が良いと考えるが、地域によっては資金分配団体がなかったり、あったとしても掲げるテーマからなかなか採択に至るのは難しい状況もある。もっと全国各地の団体が参画しやすい仕組みになれば良いなと思う」と話しました。福寿氏は、「通常枠は約3年だが、自走できる仕組みづくりには時間がかかり、形ができてやっと活動を拡げるという手前で事業が終了してしまうので、拡がりが期待できる事業に対しては、ネクストチャレンジのような仕組みがあったら良いなと思う。有難いことに3つの事業で採択していただいており、現在2事業が実施中だが、どれも休眠預金が無ければ挑戦できなかった事業。社会課題の解決を後押ししてくれる制度なので、是非活用する事業者の方が増えていったら嬉しい」と話しました。
最後に、JANPIA 事務局長の大川より挨拶があり、「今日の学びを制度全体の発展にも活かせるよう、私どもJANPIAもしっかり取り組んで参りたい」と、このパネルセッションを締め括りました。

登壇者の皆さん

【1】事業基礎情報
実行団体 | 一般社団法人 ローランズプラス |
事業名 | ウィズコロナ時代の障がい者共同雇用事業 |
活動対象地域 | 全国 |
資金分配団体 | READYFOR株式会社 |
採択助成事業 | 新型コロナウイルス対応緊急支援事業 〈2020年度緊急支援枠〉 |
【4】事業基礎情報
実行団体 | 特定非営利活動法人グッド・エイジング・エールズ |
事業名 | 日本初の大型総合LGBTQセンター「プライドハウス東京」設立プロジェクト -情報・支援を全国へ届ける仕組みを創り、 LGBTQの子ども/若者も安心して暮らせる未来へー |
活動対象地域 | 東京都、及び全国 |
資金分配団体 | 特定非営利活動法人エティック |
採択助成事業 | 子どもの未来のための協働促進助成事業 ー不条理の連鎖を癒し、皆が共に生きる地域エコシステムの共創ー 〈2019年度通常枠〉 |
【5】事業基礎情報
実行団体 | 特定非営利活動法人グッド・エイジング・エールズ |
事業名 | LGBTQ中高齢者の働きがい・生きがい創出 |
活動対象地域 | 全国 |
資金分配団体 | READYFOR株式会社 |
採択助成事業 | 新型コロナウィルス対応緊急支援事業 ー子ども・社会的弱者向け包括支援プログラムー 〈2020年度新型コロナウィルス対応緊急支援助成〉 |
【2】事業基礎情報
実行団体 | 一般社団法人 ローランズプラス |
事業名 | 植物療法を通じた働く人のうつ病予防プロジェクト -花のチカラでうつ病発症を食い止めるー |
活動対象地域 | 東京都 |
資金分配団体 | 特定非営利活動法人 こどもたちのこどもたちのこどもたちのために |
採択助成事業 | うつ病予防支援 〜東京で働く人をうつ病にさせない〜 〈2022年度通常枠〉(イノベーション企画支援事業) |
【3】事業基礎情報
実行団体 | 一般社団法人 ローランズプラス |
事業名 | 障がい当事者が活躍できる地域循環型ファームパーク構築事業 ー障がい当事者が地域経済に参画することで、新しい社会包摂モデルを構築するー |
活動対象地域 | 神奈川県横須賀市 |
資金分配団体 | 株式会社トラストバンク |
採択助成事業 | 地域特産品及びサービス開発を通じた、 地域事業者によるソーシャルビジネス形成の支援事業 〈2022年度通常枠〉(イノベーション企画支援事業) |
中間支援組織として愛知県で活動するNPO法人ボランタリーネイバーズ。同団体は設立より20年間、地域をより良くするために奔走するNPO法人や市民団体の活動を支援してきました。漠然とした不安や課題に多くの活動団体が悩まされた未曾有のコロナ禍。そんな中ボランタリーネイバーズが2020年度緊急支援枠の実行団体(資金分配団体:READYFOR株式会社 )として実施したのは、活動団体の課題を言語化する勉強会の開催や、専門家や県外の中間支援組織と協働したチーム型の伴走支援でした。一体どんな取り組みだったのか? 理事長の中尾さゆりさん、理事・事務局長の遠山涼子さんにお話を伺いました。[コロナ枠の成果を探るNo.5]です。
“地域の活動団体”の課題を発見し、共有知を深める会を開催
「もっとこうなったらいいのに」という思いで地域のために活動する。そんな「ボランタリー(自発的)な市民の行動が身を結ぶ社会にしよう!」というミッションを掲げるNPO法人ボランタリーネイバーズ(以下、ボランタリーネイバーズ)。
2001年に愛知県で法人化した同団体は、NPO法人をはじめとする公益活動を行う人たちが活動しやすい土壌を耕してきました。

設立当初からNPO法人の設立や運営、まちづくりに関する相談や、助成金申請、組織基盤強化のための伴走支援、近年では活動の承継にかかわる個別支援など、活動者の個別ニーズに応じて相談対応していたボランタリーネイバーズ。コロナ禍になり個別相談の件数は急増するかと思いきや、対面での交流が激減したこともありほぼゼロに。その代わりに、別のニーズが見えてきたと言います。
中尾さゆりさん(以下、中尾)「未曾有のコロナ禍では、漠然と『困ってはいるけど、何が課題なのか、何をどう相談したらいいのか』と、自分たちの悩みを言語化するのが難しかったようです。だから『個別相談に来てくださいね』と呼びかけてもピンとこない。そこで、『〇〇をテーマに活動者同士で話してみませんか?』というセミナー+相談会の場を設けようと。他の人の話を聞く中で『自分が気にかかっていた問題はこれだったんだ』と課題を再認識する機会になればと思ったんです」

また、2021年3〜4月にかけて愛知県内の活動団体に実施したアンケート調査の結果も、テーマ型の相談会を企画する契機になりました。「コロナ禍で影響を受けましたか?」という設問に「受けた」と回答した団体のうち5つを対象に、コロナ禍発生当初からの活動の変遷についてヒアリングを実施しました。
遠山涼子さん(以下、遠山)「各支援団体が苦しい状況下でも、ITに詳しい身近な人材を頼って事業のオンライン化を進めるなど、試行錯誤をしながら活動を継続・発展させていました。不確実性の高いコロナ禍では、各団体が独自で工夫を続けるだけでなく、それらの工夫を共有した方が活動団体全体の底上げにつながるはず。だから複数の団体や専門家が集まり、各々の悩みを共有できる場を今こそ作るべきだと考えました」

他団体の事例から課題改善のヒントを見出す
2020年11月〜翌年10月までの事業期間のうち、オンラインで開催された相談会に参加した人数はのべ120人。「ビジネスコミュニケーションツールを活動継続に活かすには」「コロナ禍での労務問題の対応」「SNSの上手な活用方法」など、多様なテーマが設けられました。
テーマによって参加団体の分野もさまざまでしたが、総じて「市民活動センター」など中間支援の立場の方が積極的に参加していたと、二人は振り返ります。
中尾「愛知県は多くの市町村ごとに市民活動センターがあり、盛んに活動をしています。ところが、そのほとんどがコロナ禍で閉館を余儀なくされ『今、自分たちに何ができるのだろうか……』と悩んでいる様子でした。そうした方々がテーマ型の相談会で他の市町村の事例を聞いて再開のきっかけ探ったり、判断基準を参考にしたり、考える機会になっていたのかなと思います」
遠山「例えば、『介護施設でコロナ陽性者が発生したとき、どういう対応をすべきか』というテーマで話をする回があったのですが、関連情報が錯綜する中、自分たちで調べるだけでは『陽性者が出たら実際どうなるの?』のような疑問に答えが出なかった。それが、実際にコロナ陽性者が出た施設の方の事例を聞くことによって、今ある資源を活用して『うちだったらこんなことができそうだ』と対策や改善の糸口を掴んでいる様子でした」
実際、開催後のアンケートにて参加者からは「何から手をつけるべきか分からなかったが、まずは取り組むべきことが見え、一歩前進するきっかけになった」と前向きな回答が見受けられたと言います。
喜ばしいことに、相談会だけで終わらせず「この学びを他の人たちにも共有したい」という声をかけてもらったこともあったそうです。
中尾「最後にテーマ型の相談会の取り組みをまとめた報告書を作り、事例集として周りの関係者に配布した後に『市民活動センターのスタッフにも共有し、事例を学ぶことで相談対応に役立てたい』という声が寄せられました。支援センターの相談窓口は、経験や知識の差から代表クラスの方が一手に引き受けることが多くなりがちだと思います。ただ、他のスタッフもコロナ禍での事例を学べれば、支援先の困りごとを聞いて、類似の事例に関する情報をすぐに提供できる。団体と市民活動センタースタッフが共に育つ理想的なあり方だと思いました」
県を跨いだ連携により、支援策の幅が拡大
ボランタリーネイバーズの工夫は、相談会の実施だけに留まりません。東海地域で活動する団体が等しく機会を得られるよう岐阜県、三重県の中間支援組織であるNPO法人とつながり、月1でのミーティングを開催。それぞれの支援の経過や実績から得た学びを共有し合い、意見交換をしながら中間支援組織としてのナレッジを蓄積していきました。
ただ単に学び合うだけでなく、他県の事例を自分達の地域に応用できないか検討する議論を行ったり、会を重ねることでお互いの資源を必要な時に共有できる関係が構築できていた、と遠山さんは語ります。
遠山「例えば、三重県の個別支援の事例では、『コロナ禍で対面での販売機会を失った障がい福祉分野の事業所が、販売数をどう回復していくか』をテーマに情報共有会を実施。販売ルートの開拓はNPOに限らず一般の企業の仕組みを活かせる部分もあるという意見をもとに、愛知県の中小企業診断士・販売士をつなぐことで、専門家も交えた視点から意見交換の場を設けることができました」
「行政の政策の差」も県を跨いで話すからこそ見えたこと。他県の行政の対応を比較することで、行政への提言の方向性も含め「行政との関わり方の糸口が見えてきた」と言います。
中尾「毎月話し合う中で、県ごとのコロナ施策には違いがあり、NPOや地域の活動団体に対する政策も異なることを感じました。例えば、コロナ禍当初、岐阜県ではNPOが利用できる助成制度はありませんでしたが、県のNPOセンターが働きかけて使えるようになりました。また、三重県では早い段階でNPO向けの助成制度が用意され、活動を止めないような後押しがなされていました。こうした例から、「岐阜県のNPOセンターはどのように行政にかけあったのか」、「三重県はNPO向けの助成制度の財源をどこから捻出したのか」と話し合いを進め、自分たちの県では行政とどう連携していくべきかのヒントを見出せました」
休眠預金を活用する良さとは?
一般的に中間支援組織は行政と地域の間にいる影の立役者という性質上、助成金を受けづらいと言われることもしばしば。そんな中で、ボランタリーネイバーズが休眠預金活用事業に採択された背景裏にはどんな工夫があったのでしょうか?
中尾「『中間支援組織として助成金を受ける』というよりも、『その時々の社会のテーマやトピックに私たちがどう関与していけば、社会を良くできるか』という観点から応募するようにしています」
そもそも、休眠預金活用事業に申請した理由の一つは、他の助成金に比べて融通が効く点だったと話すのは、遠山さん。
遠山「助成金の中には『人件費は対象外』とするなど、経費の使い方に制約が大きいものもありますが、その点、休眠預金活用事業は経費使途に関して事業に必要な経費は認められるため柔軟だなと感じました。コロナ禍は特に不確実な要素も多かったので、調整コストがより多くかかります。そうした点でも比較的活用の幅がある助成金だなと思いました」
何より、資金分配団体であるREADYFOR株式会社が、事業期間中はペースメーカーになって伴走支援してくれたことが心強かったと話してくれました。
中尾「月1回の面談で話をする中で、自分たちはまだまだだと感じることがありましたが、READYFORさんが私たちの取り組みから見えてきた強みをフィードバックしてくださったので、活動のモチベーションを高めることができ、非常に助かりました。また、月次面談が先に進んでいる方の事例や、JANPIAへの報告を終えた方のお話を聞く機会を作っていただいたことも、大変参考になり良かったですね」
支援者も完璧じゃない。だから協働が大切になる
「支援者」と呼ばれる人たちも、自分たちだけで解決できないことがあれば、無理をせず信頼できる人たちの力を借りることも大切です。
中尾「“支援者”と呼ばれる人たちも100%何でもできるわけではありません。今回、岐阜や三重の団体と定期的に連絡を取って事業を進めるうちに、『自分のところで受けた案件でも、苦手な分野に関しては他者の声を聞くことがすごく大事』だと改めて実感したんです。それが結果的に支援先のためにもなると。
直接『〇〇を支援してください』と相談に来られた場合でも、話を聞くと違うアプローチにたどり着いた、なんてことも少なくありません。そうしたときには、そのアプローチに関して得意な人に繋げて支援先の真の課題を把握し、多様な繋がりを作ることで支援者自身もレベルアップすることが大切なんだと思います」
積極的に協働しようとするボランタリーネイバーズの影響もあってか、周囲にも「無理に自分たちだけで解決しようとせず、適切な相手に協力を求める」機会が増えてきました。
遠山「信頼のネットワークが構築され、活動者側も一歩前に進むためのルートや関係性ができたことは良かったと思います」

専門家や県外のNPO法人とも連携したチーム型の伴走支援は、行政の注目も得られた、と話す中尾さん。2022年度には名古屋市の事業として、チーム型での伴走支援事業の予算が設けられ、9団体を支援しました。
未曾有のコロナ禍だからこそ気づけた視点を味方に、ボランタリーネイバーズはこれからも活動者・支援者がともに一歩を踏み出しやすい社会を築いていきます。
中尾「コロナ禍でどう伴走支援をしていくのか。ひとつの形をやって見せられたことで、行政との新しい協働関係にも発展していきました。これからも県境にとらわれず、幅広い人たちや団体とつながり、お互いに連携することで、自発的なまちづくり活動をすすめてしていきたいと思います」
事業基礎情報
実行団体 | 特定非営利活動法人ボランタリーネイバーズ |
事業名 | Withコロナ時代の社会参加と雇用継続 |
活動対象地域 | 愛知県、岐阜県、三重県 |
資金分配団体 | READYFOR株式会社 |
採択助成事業 | 2020年度コロナ枠 |
2024年2月5日に開催されました【2021年度通常枠 休眠預金活用における社会イノベーション事業】『誰もが活躍できる信州「働き」「学び」「暮らし」づくり事業』各実行団体より事業進捗状況と中間成果発表会の動画をご紹介します。