特定非営利活動法人ワーカーズコレクティブういず主催「ロジハブ学習会inちば」のご案内

休眠預金活用事業に係るイベント・セミナー等をご案内するページです。今回は、特定非営利活動法人ワーカーズコレクティブういず主催「ロジハブ学習会inちば」を紹介します。

ロジハブ学習会inちば

地域食堂、こども食堂、「食」のある居場所、会食会、配食など、地域の食支援活動を応援する寄付食品の流通ネットワークづくりに向けて、県や市町村を越える流通の役割と寄付された食品のトレーサビリティを確保する仕組みを学びます。
ご興味のある方はぜひご参加ください。

 

【イベント情報】

日時2025年6月20日(金)14:00~16:00
開催形式

会場+オンラインでのハイブリッド開催

会場ラコルタ柏2階 多目的研修室1・2

(〒277-0005 千葉県柏市柏5丁目-8-12 教育福祉会館内)【MAP】
定員会場参加は先着40名(オンライン参加も可)
対象◆企業:食品等の寄付、配送・保管の支援、資金的支援ほかの社会貢献に関心のある企業
◆行政:子育て支援、生活支援、地域福祉、まちづくり、食品ロス削減等
◆地域の活動を支援する団体:社協、中間支援組織フードバンク、地域のネットワーク など
参加費参加無料(要申込)
プログラム◆地域の食支援活動を応援する仕組みづくり
 ・(一社)全国食支援活動協力会
◆県域の配送拠点(ロジ拠点)の状況
 ・(特非)ワーカーズコレクティブういず
◆地域の配送拠点(ハブ拠点)からの事例報告―寄付食品の活用と効果、今後の課題など
 ・さくらあったか食堂ネットワーク(佐倉市社会福祉協議会)
 ・印西フードバンクISS
 ・八千代こどもネットワーク
◆自治体と連携した寄付食品の活用
 ・(特非)ワーカーズコレクティブういず、柏市こども福祉課
◆連携企業からの事例報告
 ・(株)伊藤ハム 米久プラント株式会社
 ・(株)信濃運輸株式会社
◆講 評:千葉大学人文科学研究院・教授・清水洋行さん
◆質疑応答・意見交換
◆名刺交換タイム
主催特定非営利活動法人ワーカーズコレクティブういず
共催一般社団法人全国食支援活動協力会
お申込み以下のQRコードよりお申し込みください。
お問い合わせ特定非営利活動法人 ワーカーズコレクティブういず
[携帯]090-2318-8949
[E-mail]withhappy0927@gmail.com

 

休眠預金活用事業に係るイベント・セミナー等をご案内するページです。今回は、NPO法人青少年自立支援センター、公益財団法人日本国際交流センター共催「初めて外国ルーツ当事者と出会う支援者に知ってほしい―外国ルーツ支援・基本のき― 」を紹介します。

初めて外国ルーツ当事者と出会う支援者に知ってほしい
―外国ルーツ支援・基本のき―

 近年、在留外国人が増加しているのはご存じですか?生活の中で外国ルーツの方を目にする機会も増えているのではないでしょうか。もしかしたら既に皆様の支援現場にも外国籍、外国ルーツの方々がつながり始めているかもしれません。その際、どのように対応したらよいのだろうと悩むことはありませんか?
 例えば、子ども食堂にイスラム教徒のお子さんがつながってきたり、生活相談の現場に日本語が話せない方々が来たりすることもあるのではないでしょうか。
本セミナーでは、2010年度より外国にルーツを持つ子供・若者を対象に日本語教育、教科学習支援、進学・就労支援などを実施してきたYSC・グローバルスクールが、外国ルーツ支援の現状や課題を整理しつつ、支援を考える上での基本となるポイントをお伝えいたします。
 また、今夏から公募を始める予定の休眠預金活事業の支援対象団体向け「外国ルーツ支援における地域的・分野的広がり応援事業」のプレ説明会も実施いたします。

 

【イベント情報】

日時2025年6月11日(水)13:00~14:30(※途中入退室可)
開催形式

オンライン配信(Zoom)

※開催日前日にZOOMのURLをご連絡いたします。
※希望者には、後日配信をいたします。
参加費無料
内容①ソーシャルセクターにおける外国ルーツの現状と課題の整理
➁休眠預金活用事業 支援対象団体向け「外国ルーツ支援における地域的・分野的ひろがり応援事業」(研修、基盤整備等)の説明
登壇者NPO法人青少年自立援助センター 定住外国人支援事業部責任者

田中 宝紀(たなか いき)
共催NPO法人青少年自立支援センター
公益財団法人日本国際交流センター
お申込み事前申し込み制 ※希望者のみ後日配信有
参加・後日配信希望の申し込みはこちら(2025年6月10日午後12時まで)
https://forms.gle/sxUkmPfPgYse2AHc8
お問い合わせNPO法人青少年自立支援センター
[E-mail]activity-support-24@npo-ysc.jp

 

2025年度の資金分配団体〈通常枠第1回・緊急枠第1次〉の公募要領のポイントの説明とともに公募申請様式の記入提出にかかる留意点について解説しております。

資料

休眠預金活用事業に係るイベント・セミナー等をご案内するページです。今回は、JANPIA主催『「身寄りのない高齢者等問題」とインパクト投資の可能性~社会課題の構造をひもとき、解決に向けたアクションを考える~』を紹介します。

「身寄りのない高齢者等問題」とインパクト投資の可能性
~社会課題の構造をひもとき、解決に向けたアクションを考える~

本イベントでは、「身寄りのない高齢者等問題」を取り上げます。
この社会課題は、まだ広く知られてはいないものの、社会的な広がりを見せ始めている重要な課題です。

問題が複雑であるため、全体像をつかみやすくするために「社会課題構造化マップ」を作成。
「本人/制度/周囲にいる関係者」の視点で整理し、高齢者本人の状態の変化に応じて生じる様々な問題を可視化しました。

今回は、社会課題構造化マップ作成にご協力いただいた、黒澤 史津乃さん(株式会社OAGウェルビーR 代表取締役)、沢村 香苗さん(日本総研創発戦略センターシニアスペシャリスト)お二人の専門家をパネリストとしてお迎えし、社会課題構造化マップをもとに課題の構造をひもとき、解決策の方向性や現状の課題、インパクト投資の可能性について、幅広い議論を進めていきます。

すでにこの領域で活動されている方はもちろん、
・社会課題解決に資する事業や投資を検討しているインパクト投資家の皆さま
・福祉・医療・介護・ライフエンディング分野に携わる事業者や起業家の皆さま
・高齢者支援に関心のあるNPO・自治体関係者の皆さま

など、多くの皆さまのご参加を心よりお待ちしております。

 

【イベント情報】

日時2025年6月26日(木)11:00~12:00
開催形式

オンライン(Zoomウェビナー形式)

※参加登録をいただいた方へ前日までにウェビナーURL等のご案内をお送りします。
対象・社会課題解決に資する事業や投資を検討しているインパクト投資家の皆さま
・福祉・医療・介護・ライフエンディング分野に携わる事業者や起業家の皆さま
・高齢者支援に関心のあるNPO・自治体関係者の皆さま など
プログラム(予定)1.開催趣旨説明
2.パネリスト紹介
3.課題MAP解説
4.パネルトーク
5.質疑応答
6.クロージング
主催一般財団法人 日本民間公益活動連携機構(JANPIA)出資事業部
お申込み以下フォームよりお一人ずつお申込みをお願いします。
https://forms.office.com/r/wyaFx2zdZt
【申込締切】2025年6月24日(火)17:00まで
お問い合わせ一般財団法人 日本民間公益活動連携機構(JANPIA)出資事業部
・電話:03-5511-2020(代表)
・メール:investment@janpia.or.jp

 

休眠預金等活用法に基づく資金分配団体(助成)の公募に申請をご検討中の皆さまに向けて、2023年度通常枠・緊急支援枠、2021年度・2020年度通常枠の資金分配団体である「ちくご川コミュニティ財団」の柳田あかねさんに、休眠預金活用事業に申請した背景と現在の活動についてのお話を伺いました。 

休眠預金活用事業に申請した背景を自団体の活動と合わせて教えてください

一般財団法人ちくご川コミュニティ財団は、人の役に立ちたいという思いと活動をつなぐプラットフォームです。2019年に市民の力を得て、福岡県で初めてのコミュニティ財団として設立されました。

初めて休眠預金活用事業にチャレンジしたのは、2020年度通常枠の事業です。3か年の計画で、困難を抱える子ども若者の孤立解消と育成というテーマに絞って事業を進めました。次の2021年度通常枠の事業では、誰一人取り残さない居場所づくり、学びの場における子ども若者の孤立解消と育成というテーマで、いわゆる不登校の子ども若者をサポートする実行団体と3年間の事業を始めました。2023年度通常枠の事業では、困難を抱える家庭を取り残さない仕組みづくり、子ども若者とその家族のためのコレクティブインパクトと題した3か年の事業を始めました。さらに2023年度第4次募集の緊急支援枠の事業にチャレンジして、子育てに困難を抱える家庭へのアクセシビリティ改善事業、多様なつながりが生まれる仕組みづくりということで、限られた期間の中でとにかく支援が必要な層に、必要な支援を届けようという事業をスタートさせました。

ちくご川コミュニティ財団は、この4つの事業を一連の流れとして取り組んでおります。

申請を行うために準備で取り組んだことを教えてください

4つの事業の申請をはじめるにあたり、最初に取り組んだことは、自団体のメンバーで話し合うことからでした。どこに社会課題を感じているか、どの地域でその事業を調査分析していくかなどをメンバー全員で考え、同じ目標を持つところから始めました。

次に、その対象地域の中で調査を始めました。その地域で活動している様々な市民社会組織の方々にアンケートを取り、アンケートの中で明らかになった社会課題を解決するために、市民社会組織の皆さんや行政などにヒアリングをしていきました。ヒアリングの結果を分析し、評価アドバイザーにも相談しながら、事業設計を行いました。

実行団体の伴走支援の内容や工夫していることを教えてください

私たちの伴走支援はすごく強力で、すごく濃密なものになっています。また、分野も多岐にわたっております。

例えば、休眠預金活用事業ですごく大事されている評価です。事前評価、中間それから事後、それぞれの評価のフェーズに沿って伴走しています。もちろん評価に取り組むことは、ある意味負荷がかかることでもあると私たちも思っていますが、評価に取り組むことで実行団体の事業終了後に絶対、力はつくと思っていますので、出口戦略の一つとしても、評価については力を入れています。また、事業そのものの運営を持続可能なものにするための資金調達では、ファンドレイザーの資格を持つPOがしっかり実行団体の無理のないように計画を立て、その時抱えている悩みと照らし合わせながら、資金調達の計画を一緒に立てていきます。広報の面では、例えば、伝わるウェブサイトにするにはどうしたらいいのか、定款や規程類をどういうところにおけば団体が信頼を得られるかかなども、一緒に考えています。

それから日々、受益者や支援してくれる方に向けて、あるいはその地域の行政や企業の方々に向けても、様々なステークホルダーごとの情報伝達の仕方について一緒に考えています。SNSだけではなく、紙で作るニュースレターなどの定期刊行物、アニュアルレポートの発行や編集のアドバイスもしています。

休眠預金活用事業を通じて、よかったことについて教えてください

休眠預金活用事業で一番いいと思うのは、三層構造だということです。JANPIAと資金分配団体と実行団体が同じ目標に向かって社会課題解決のために走っていく、この仕組みがすごくいいなと私は思っています。資金分配団体である私たちが助成金を交付するというフローにはなっていますが、お金を届けだけではなくて、実行団体の伴走も行います。また、何より資金分配団体の私たち自身も、JANPIAに伴走されており、3者そろって同じ目標に向かっていけるのが一番いいと思っているポイントにです。

申請を考えている方へメッセージをお願いします

休眠預金活用事業の資金分配団体になると、たくさんの仲間と出会うことができます。例えば、ちくご川コミュニティ財団の場合、最初はたったひとりのPOしかいませんでしたが、事業を始めて4年目の今は6人のPOがいます。自分たちの団体での仲間がだんだん増えていくだけではなく、地域で一緒に社会課題を解決するための仲間、つまり実行団体の方々と出会うことができます。

さらに、全国にいる資金分配団体の仲間と出会うことができます。横のつながりがどんどん広がっていくことによって、自分たちが日々やりたいことや解決したいことに向けてグッと背中を押してもらえる。そんな存在に、この休眠預金活用事業を通して出会えると思っています。

ぜひ、資金分配団体にチャレンジして、まだ出会っていない仲間のに出会ってください。

〈このインタビューは、YouTubeで視聴可能です! 〉



(取材日:2024年6月13日)

フードバンク活動とは、品質には問題がないのに包装の破損や過剰在庫、印字ミスなどで流通に出すことができない食品を企業などが寄贈し、必要としている施設や団体、困窮世帯に無償で提供する取り組みのことです。生活困窮者への支援とともに食品ロス削減にもつながる活動として、ここ数年で注目が高まっています。今回は、2023年度緊急枠に採択された「フードバンクふじさわ等冷凍食品物流・保管機能の強化支援事業」の実行団体「認定NPO法人ぐるーぷ藤」をはじめとする関連団体・組織の方々に集まっていただき、これまでの取り組みや今後の展望について伺いました。

コロナ禍での困窮者支援に立ち上がった、地域福祉の草の根活動メンバーたち

フードバンクふじさわが設立されたのは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、生活困窮者の支援が急務となっていた2021年3月のことです。神奈川県藤沢市内の地域福祉に携わるNPO法人が集う「ふじさわ福祉NPO法人連絡会」では、地域のさまざまな課題を共有しながら支援の方向性が議論されていました。そこで浮き彫りになった喫緊の課題の1つが、ひとり親家庭など孤立しがちな生活困窮者への支援です。その解決策を模索する中で、食品ロスを減らしながら必要な人に食品を届けるフードバンクかながわの取り組みに関心が寄せられ、フードバンクの設立が検討されました。

こうした背景のもと、フードバンクふじさわ設立準備会が発足し、関係者が協力して準備を開始。当時の経緯について、フードバンクふじさわ代表の野副妙子さんに聞きました。

野副妙子さん(以下、野副)「食品支援の必要性について話し合っている時に、フードバンクかながわから『藤沢市にもフードバンクをつくらないか』という声かけがありました。そこで、フードバンクかながわに足繁く通って、現場を見て学び、フードバンクふじさわの構想が固まり始めたころ、折悪しくコロナ禍が始まりました。『状況が落ち着いてから立ち上げよう』という声もありましたが、困難な時期だからこそ『今立ち上げなくてどうする』という、ふじさわ福祉NPO法人連絡会代表の鷲尾さんの提言があり、設立準備を進めました。そして、藤沢市内のさまざまな福祉団体や賛同する市民の方、行政、社協、企業、フードバンクかながわの協力により、フードバンクふじさわを立ち上げることができたのです」

フードバンクふじさわ 代表 野副妙子さん

市民団体と一体となって活動する市や社会福祉協議会

フードバンクふじさわの発足に先駆け、藤沢市社会福祉協議会(以下、社協)は2018年からフードバンクかながわと連携し、支援を必要とする人々に食品の提供を行ってきました。フードバンクふじさわ発足以降は、フードドライブ(家庭で余っている食品を集める仕組み)を通じて集めた食品を、市役所や社協の職員が食品保管・仕分けの拠点へ配送するほか、拠点の借り上げや企業との窓口になるなど、幅広い支援を行っています。

社会福祉法人 藤沢市社会福祉協議会 事務局長・村上尚さん(以下、村上)「フードバンクふじさわは、さまざまな団体・組織が協力する共同体です。比較的珍しいケースだと思いますが、私たち社協もその一員として活動に参加しています。立ち上げ時から社協が加わり、共に活動してきました。『地域をよくしていこう』という共通の目標を見据えることが連携のカギだと思います。

そもそも市の社会福祉協議会という組織は地域福祉を推進する団体。地域の課題に対して、先駆的に柔軟に取り組むことが使命です。制度化された支援では対応しきれない部分をフードバンク活動が補い、市民団体と連携することで、ひとり親家庭などへの個別支援も可能になりました。フードバンク活動はすべてをバックアップできるわけではありませんが、困窮に陥っている方々が一息ついてもらうための支えになります。連携を通し、地域支援のために私たちができることの幅が大きく広がっていると思います」

藤沢市社会福祉協議会 事務局長 村上尚さん

コロナ禍以降も物価高騰の影響で利用者が急増し、ニーズに応えきれない状況に

フードバンクふじさわ設立翌月の4月には、市内3カ所に、食品支援を必要としている方が食品を受け取れる拠点としてフードパントリーを設置し、第1回の食品配布を実施。ひとり親世帯やひとり暮らしの大学生ら(※)に、米やカップ麺、缶詰、飲料などを無償で提供しました。

※ 大学生への提供は2023年10月まで

その後、2022年3月までの1年間でのべ2,195人の利用があり、翌22年度は2,805人と増加。23年度は最初の2カ月で利用者が500人を超えるなど、コロナ禍は落ち着いたものの物価高騰の影響で利用者が大幅に増えていました。しかし、利用者が増加する反面、物価高騰により缶詰やレトルト食品などの常温保存できる食品の寄付は減少しており、ニーズに応えきれない状況に陥っていました。

これは全国のフードバンク共通の課題でもありました。フードバンクかながわは、取り扱う食品を増やすため、神奈川県内に食品倉庫を持つマルハニチロ株式会社に寄付を依頼。その結果、ツナ缶などの常温食品は市場でのニーズが高く余剰がほとんどないものの、冷凍食品は外箱の破損などで廃棄されるものがあり、提供が可能だと回答を受けます。ただ、冷凍食品の寄付を受けるには、品質を保つためのコールドチェーン(冷蔵・冷凍といった所定の温度を維持したまま輸送・保管などの流通プロセスをつなげること)を作り上げることと、寄付した商品がどこに届けられたのかというトレーサビリティを実現することが条件でした。

野副「フードバンクかながわから冷凍食品の取り扱いについて打診があり、そのための準備を行いました。当時は少しだけの取り扱いしかできませんでしたが、冷凍食品は、電子レンジさえあればすぐに食べられるためとても人気がありました」

そんな時、フードバンクかながわが「神奈川県及びその周辺の食支援ネットワーク発展のために〜冷凍食品を活かした支援食品のレベル向上」という事業で、休眠預金活用事業の資金分配団体に採択されたことを知り、フードバンクふじさわも応募を考えましたが、法人格がないことから、一緒に活動を共にしてきた認定NPO法人ぐるーぷ藤を代表団体として申請し、採択されるに至りました。

休眠預金の活用で取り扱い食品量が大幅に増え、子ども食堂にも提供が可能に

フードバンクふじさわは助成金を活用して、冷凍車、冷凍庫、保冷ケースを購入し、コールドチェーンをつくり上げます。また、フードパントリー利用者にも保冷バッグによる持ち帰りを厳守とし、冷凍食品の品質管理を徹底しています。

村上「2024年9月には待望の冷凍車が購入され、冷凍食品の物流倉庫がある神奈川県川崎市の扇島まで直接受け取りにいくことができるようになりました。また、大型の冷凍庫4台も購入され、社協が福祉物流拠点として借り上げている湘南藤沢地方卸売市場の店舗内の一区画に設置しています。実は、冷凍車いっぱいに冷凍食品を積み込むと、ちょうどこの4台の冷凍庫に収まりきるようになっているんです。
集まった食品は、フードパントリー拠点で配布する分や子ども食堂で使ってもらう分へと仕分けします。本格的に冷凍食品を取り扱うことで、フードバンク活動だけでなく子ども食堂にも提供できるほどの量を調達できるようになったのは、本当にありがたいですね」

冷凍食品の保管と輸送体制を強化するため導入された冷凍庫と冷凍車

野副「休眠預金活用事業のおかげで、大きな課題であった利用者の増加に伴う食品ニーズの拡大に応えることができるようになりました。寄付でいただく冷凍食品には業務用のものもあるため、それらは子ども食堂で使っていただいています。冷凍食品は歓迎されていて、特にからあげなどの肉類は子どもたちに大人気です」

認定NPO法人ぐるーぷ藤 理事長・藤井美和さん(以下、藤井)「私たちのフードバンク活動でのおもな支援対象は、ひとり親世帯のため、誰でも簡単に調理ができる冷凍食品はニーズに合っているようです。取り扱い量が増えたことで、親子で好きなものを選んでもらうこともできるようになりました。嬉しそうに保冷バッグを持って帰る姿を見ると、本当にやりがいを感じます。また、冷凍食品はお弁当にも適しているので、子育て中の世帯にはそういった点でも非常に喜んでもらえているようです」

利用者に寄り添う「伴走型」の支援で、新たな窓口への橋渡しも

フードバンクふじさわの活動は、食品の支援にとどまりません。地域の居場所づくりや生活支援コーディネート業務等に携わってきたメンバーも数多く参加していることから、フードパントリーでも訪れた人に積極的に声をかけ、支援が必要な人には適切な窓口への橋渡しなども行っています。また、ひきこもりの当事者をフードバンク活動のボランティアとして受け入れ、その後の就業へと結びつけるなど、ひきこもり支援と連携した活動も展開しています。

藤井「ぐるーぷ藤の理念は『歳をとっても病気になっても障がいがあってもいつまでも自分らしく暮らせる街を創りたい』というもの。お互いさまの気持ちを大切に、地域住民同士の助け合いを目指しています。フードバンク活動においても『伴走型』が基本。相手に寄り添い、食品支援にとどまらないサポートを行っています」

ぐるーぷ藤 理事長 藤井美和さん

村上「フードパントリーに来られる方の中には課題を抱えて困っている方も多くいます。そうした人と顔を合わすことで、社協の相談支援へつなげることができるのです。逆に、私たちが普段相談を受けている方の中で、ひとり親の方などフードバンク活動の対象となる方には、食品配布の紹介をすることもあります。いきなり社協や市の窓口に相談に来るのはハードルが高いと思う方もいると思いますが、フードバンクを通じて自然につながることができるのは、大きな意義があると感じています」


人と人とのつながりを、大切にすることが活動の基本

最後に、フードバンクふじさわの活動を支えるメンバーに、今後に向けた取り組みについて語ってもらいました。

野副「藤沢市の取り組みが、ほかの市にも広がっていくことを願っています。社協と自治体が連携しながら生活困窮者への支援に力を尽くしてくれていることが伝われば、地域の市民団体も一緒にがんばっていこうという気持ちになってくれると思いますから。また、フードバンクふじさわの報告会に、毎年市長をはじめ、社会福祉協議会の会長や、民生委員児童委員協議会の会長、企業の皆さんといった方々が参加してくれます。これが『藤沢型フードバンク』と私たちが称しているゆえんです」

フードバンクふじさわ事務局・小野淑子さん「フードバンクふじさわは、『小さく産んで大きく育てる』の合言葉のもと任意団体としてスタートし丸4年が経ちました。そして2025年4月には一般社団法人化を予定しています。これまで任意団体でありながらも多くの支援をいただいてきましたが、法人化によって、さらに信頼を得ることができ、活動が広がっていくのではないかと期待しています」

藤井「フードバンクふじさわの活動で生まれた人と人とのつながりがこの先も続いていくことを願っています。伴走型の活動によっていろいろな縁があり、ぐるーぷ藤で就労された方もいますし、障害のある方の就労のきっかけにもなっています。食品を提供するだけでなく、人のつながりを広げる場として活動していきたいです」

村上「地域の困窮者を支える方法やしくみづくりは、社会全体で考えていかないといけない問題ですが、すぐに解決できるものはありません。だから、フードバンクの活動はそういう人たちの『今』を支える大切な役割を果たしていると思います。また、フードドライブなど、みんなが地域福祉に関心を持つきっかけにもなってほしいですね。そして、今フードパントリーに来ている子どもたちが、将来『地域のために何かしよう』と思えるような循環が生まれる場であり続けてほしいです」

社会福祉法人 藤沢市社会福祉協議会 事務局参与・倉持泰雄さん「フードバンク活動は、困難を抱えた方を地域社会で支える大切なしくみです。助成金のおかげでコールドチェーンが整いましたが、今後は冷凍車の管理運営など新たな課題に取り組んでいく必要があります。引き続き、地域の支援のために尽力していきたいです」

取材に対応してくださった方々。左からフードバンクかながわの萩原妙子さん、フードバンクふじさわの小野淑子さん・野副妙子さん、ぐるーぷ藤の藤井美和さん、藤沢市社会福祉協議会の倉持泰雄さん・村上尚さん、フードバンクかながわの藤田誠さん
 



■資金分配団体POからのメッセージ

フードバンク活動に対して社会の認知も少しずつ高まってきましたが、まだまだ具体的な活動について知らない団体、企業、行政担当者もいらっしゃいます。具体的にどんな活動ができるのか、1人でも多くの人に知ってほしいですね。また、フードバンク活動は食品ロスの削減にも貢献し、ゴミ処理費用の削減やCO2排出削減にもつながります。ぜひ小さな子どもさんから大人まで、多くの人に関心を持ってもらえたら嬉しいです。

(公益社団法人フードバンクかながわ/事務局長 藤田 誠さん)

フードバンクかながわには多くの冷凍食品が集まる中、私たちだけではなかなか輸送や保管、配布に回しきれない状況となっています。そのため、神奈川県の各自治体に1つはフードバンクが必要となっており、さらにハブとなる拠点を作ることが重要だと考えています。フードバンクふじさわのように活動ができる団体が今後もっと増えていくために、冷凍食品のフードバンク活動の価値を広め、全国で「うちのフードバンクでも冷凍食品を扱いたい」という声が自治体を動かすことを期待しています。

(公益社団法人フードバンクかながわ/理事 萩原妙子さん)

【事業基礎情報】

実行団体
NPO法人ぐるーぷ藤
事業名

フードバンクふじさわ等冷凍食品物流・保管機能の強化支援事業(2023年度緊急枠)

活動対象地域
神奈川県藤沢市
資金分配団体
公益社団法人フードバンクかながわ

採択助成事業

神奈川県及びその周辺の食支援ネットワーク発展のために

休眠預金活用事業の成果物として資金分配団体や実行団体で作成された報告書等をご紹介する「成果物レポート」。今回は、資金分配団体 公益財団法人みらいファンド沖縄が発行したレポート『「認知症と共生する これからの地域づくり白書」わたしが認知症になっても、自分らしく生き続ける社会を目指して』を紹介します。

認知症と共生する これからの地域づくり白書~わたしが認知症になっても、自分らしく生き続ける社会を目指して~

我が国では、65歳以上の10人に約1人が認知症、3人に約1人が認知機能に関わる症状があると推定されています。
この白書は認知症の方々に対して「地域」でできることを、当事者の「外出支援」と「居場所づくり」という視点から調査と実証に取り組んだ5団体とともに作成した報告と提案です。

この事業に至った馴れ初めは、2007年に愛知で起こった、認知症の方が起こしてしまった踏切事故に対して、鉄道会社がその家族に高額賠償請求を起こした訴訟が、メディアをにぎわせていた2016年初頭(同年3月に最高裁が逆転判決無罪に!)のことでした。

この訴訟は、「家族が責任を問われるなら、認知症患者は家に閉じ込めておくしかないということか」という問いを世に投げかけました。

ちょうどそのころ(公財)みらいファンド沖縄に持ち込まれた、自動販売機を通して社会貢献ができないかという相談案件があり、前段の問いへのソリューションとして、自販機の特徴を活かした捜索システムを事業開発しようということで、徘徊時(当時は道迷いを徘徊という言葉を使っていた)に、早期に認知症の方を見つける「ミマモライド」というシステムを開発し、その事業会社を起こすこととなります。ミマモライドが沖縄県宜野湾市に採択され、一定の手応えが出てくる中で、道迷いになってしまう方々の自治体のエリアを超えて見守る必要性から、その広域化と認知症の方々の行ける場所の開発を目論んだ「認知症の方々も安心・安全な外出を担保できるまちづくり事業」を企画し、休眠預金活用事業に採択される運びとなったのです。

公募により、5つの団体を採択し、2022年から事業はスタートします。コロナの余波も色濃く残る時期、事業自体は様々な理由で進捗が遅れ、決して順風満帆といえる足取りとはいえないものでした。これらの固難に対して、事業担当のプログラムオフィサーは奮闘し、課題を共有し、一緒に乗り越える伴走をしてもらったことに敬意を表します。

この道程で我々は多くの気付きがあり、何度かの路線変更を経て事業を遂行し、この白書発行にたどり着きました。
この事業はこれまでの地域での「見守り」という活動のあり方に一石を投じるのもとなったと確信しております。私どもの提案を、これから示す報告とともに味わっていただければ幸いです。

 

【事業基礎情報】

資金分配団体特定公益財団法人 みらいファンド沖縄
公益社団法人 沖縄県地域振興協会
事業名

認知症の方々も安心・安全な外出を担保できるまちづくり

活動対象地域宜野湾市及びその周辺
実行団体認定特定非営医療法人 アガぺ会
合同会社 GreenStarOKINAWA
特定非営利活動法人 グランアーク
南風原町社会福祉協議会
西原町社会福祉協議会

休眠預金活用事業の成果物として資金分配団体や実行団体で作成された報告書等をご紹介する「成果物レポート」。今回は、実行団体 宝塚NPOセンター作成したレポート『「With」事業報告書2022.3-2025.2』を紹介します。

「With」事業報告書2022.3-2025.2

認定NPO法人宝塚NPOセンター(兵庫県宝塚市)は、一般社団法人 全国古民家再生協会(東京都千代田区)の2021年度「空き家・古民家を活用した母子家庭向けハウス設立事業」で実行団体として「孤立孤独/生活苦を抱える若者への緊急支援事業」事業を実施しました。

宝塚市内在住、あるいは宝塚市に転居を希望する“非正規雇用で働く母親とその子どもで構成されているひとり親世帯”を対象にしたシングルマザーハウス「With」での活動をまとめた事業報告書を公開します。

 

【事業基礎情報】

実行団体認定特定非営利活動法人 宝塚NPOセンター
事業名

地域で支える母子ハウス事業

活動対象地域兵庫県宝塚市
資金分配団体一般社団法人 全国古民家再生協会

 

休眠預金活用事業に係るイベント・セミナー等をご案内するページです。今回は、NPO法人ボランタリーネイバーズ主催『持続可能な体制をつくる!かなめびと応援プロジェクト・セミナー「NPOの世代交代・事業承継、なにから始める?実践のヒントと支援のかたち」』を紹介します。

持続可能な体制をつくる!かなめびと応援プロジェクト・セミナー「NPOの世代交代・事業承継、なにから始める?実践のヒントと支援のかたち」

近年、NPOの現場では、創業期リーダーたちが次世代へバトンを渡す時期を迎えています。事業承継は、単なる役職の引き継ぎではなく、NPOの社会的ミッションを次世代に継続するための重要なプロセスです。

本セミナーでは、NPOの事業承継に関する調査研究を行ってきた研究者が、創設者の影響力、ガバナンス、承継計画の有無、組織規模や年齢、理事会の関わりなど、事業承継の成否を左右する要因を分析します。理論面と統計分析結果から見える傾向を学び、データと事例を通じて具体的な論点やヒントを参加者と一緒に考えます。

NPOが抱える世代交代・事業承継の課題にどう向き合い、どのような準備や工夫が可能かを皆さんと一緒に考え、NPOの未来を描く機会にしたいと思います。関心のある皆さまのご参加を心よりお待ちしております。

 

【イベント情報】

日時2025年5月30日(金)18:00~20:00
開催形式

オンライン(Zoomを使用)

対象NPOの代表者や理事・幹部スタッフなど、組織の将来を担う立場にある方
次世代のリーダー候補として活動している若手スタッフ・中堅職員
コアメンバーの高齢化と将来に課題意識を持つNPO役職員
NPOの事業承継に課題意識を持つ中間支援組織・行政担当者
非営利組織の経営・組織論に関心のある研究者・学生
参加費無料
プログラム(予定)18:00-18:05 開会、趣旨説明
18:05-19:05 講義
19:05-19:15 休憩
19:15-19:50 質疑
19:50-20:00 かなめびと事業の紹介、閉会
主催NPO法人ボランタリーネイバーズ
お申込みPeatixの参加申込フォームよりお申し込みください。
https://peatix.com/event/4374442
お問い合わせNPO法人ボランタリーネイバーズ
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コロナ禍による入国規制の解除後、日本で難民認定を申請する外国人が増えています。申請中で在留資格のない外国人は就労できず、公的支援も受けられないため、生活が困窮し、精神的にも追い詰められる傾向にあります。こうした難民認定申請者や非正規滞在者を支援するため、2023年度の休眠預金活用事業(緊急支援枠、資金分配団体:NPO法人青少年自立援助センター)による緊急人道支援を行っているのがNPO法人アクセプト・インターナショナルです。同団体は国内外で紛争や人道危機、社会的排除などの問題解決に取り組んでいます。今回は、団体の活動やその背景などについて、代表理事の永井陽右さん、国内事業局 局長の吉野京子さんを中心にお話を伺いました。

ソマリアから始まった「平和の担い手」を増やす取り組み

アクセプト・インターナショナルは「誰しもが平和の担い手となり、共に憎しみの連鎖をほどいていく」ことを目指し、世界の紛争地や日本で活動する団体です。2011年、大学1年生だった永井陽右さんは、世界で最も深刻な紛争国の一つとされていたソマリアの惨状を知り、「このまま見過ごしてはいけない」との思いから、仲間とともに活動を開始しました。

当時のソマリアは、頻発するテロや紛争によって貧困や飢餓が深刻化し、2年間で約26万人もの人々が命を落としていました。それにもかかわらず「危険すぎる」「解決策がない」からと、世界から見放されている状況に「そんな理由で支援が届かないのはおかしい」と強く感じた永井さん。「支援が必要とされているのに、難しさを理由に誰も手を差し伸べないのであれば、自分たちがやる」——その決意が活動の原点となっています。

永井さんたちはソマリアのテロや紛争を止めようと、若者が武装組織から抜け出し、社会復帰する支援を開始。2017年にはNPO法人アクセプト・インターナショナルを設立し、イエメンやケニア、インドネシア、コロンビア、パレスチナなど、世界の紛争地へと取り組みを広げていきました。

永井陽右さん(以下、永井)「テロリストの多くは、社会に居場所がないことや生活苦、脅迫などから武器を持たざるを得なかった若者たち。彼らを排除しても負の連鎖は終わりません。私たちが目指すのは、彼らが本来の若者らしく希望を持って生き、私たちと一緒に平和な世界をつくっていくことです」

団体設立の背景についてお話しされる永井陽右さん
団体設立の背景についてお話しされる永井陽右さん

海外での経験を活かし、日本でも「難しくて取り残されている問題」に着手

海外の経験を活かして日本でも「解決の担い手がいない難しい問題」に取り組もうと、2020年からは国内事業も開始。コロナ禍で海外事業の継続が困難になった時期とも重なり、国内の課題にあらためて目を向けるようになりました。現在は主に、非行少年の更生支援と、在日ムスリム(イスラム教徒)を中心とした在日外国人支援の2つの事業を展開しています。

非行少年の更生支援では、とくに社会の受け入れが難しい、重い犯罪に関与した若者の社会復帰を支援。相談支援をはじめ、社会復帰を後押しするための社会定着支援、居住支援、生活支援を実施し、さらに、啓発や教育の一環としてオンラインゼミも開講しています。

在日外国人支援では、日本社会におけるムスリムへの理解不足や文化の違いなどから、在日ムスリムが孤立しやすい現状をふまえ、とくにコロナ禍で生活が困窮している在日ムスリムを支援。現在もイスラム教徒が食べることができる「ハラル食品」の提供や生活相談、在日ムスリムによる共助ネットワークづくりなどを行っています。

「海外事業も日本事業も、つまるところは、課題を抱える当事者が社会の一員として主体的に生きていくための伴走支援。本質は変わりません」と永井さん。海外事業でテロの加害者だった若者と向き合ってきた経験が非行少年の更生事業に、多くのイスラム教徒と活動してきた経験が在日ムスリム支援に活かされるなど、これまでの知見が国内支援でも活かされています。

休眠預金を活用し、行き場のない難民認定申請者に緊急支援を実施

国内に活動を広げる中、コロナ禍が明けると、在日外国人からの相談にある変化が生じます。入国規制の解除にともない日本への入国者数が増え、それに比例して、難民認定申請者や非正規滞在者など在留資格が不安定な外国人からの食料や住居を求める相談が急増しました。それまでは定住している在日外国人からの相談が大半を占めていましたが、相談者も相談内容も大きく変わったのです。長年にわたり難民支援に携わってきた吉野さんは、その背景をこう説明します。

吉野京子さん(以下、吉野)「難民認定申請者は、紛争や迫害などさまざまな事情から逃れる中、たまたま日本の観光ビザを取得して日本へ来たという方がほとんど。入国後に難民申請するものの、その多くは難民認定がおりないまま、在留資格がない状態で日本に留まることになります。在留資格がなければ行政サービスを受けられず、国民健康保険にも加入できず、働くこともできないため、生活は困窮し、路上生活に追いこまれる人も……。収入がなく、行政の支援にもつなげられない彼らを、民間の支援団体や個人だけで支えるのには限界があり、支援から取り残されていたのです」

難民認定申請者が直面する課題や、支援の必要性について説明する吉野京子さん
難民認定申請者が直面する課題や、支援の必要性について説明する吉野京子さん

「これは自分たちがやるべき問題」と判断したアクセプト・インターナショナルは、 NPO法人 青少年自立援助センターが公募していた2023年度緊急支援枠の休眠預金活用事業に申請。これに採択され、難民認定申請者と非正規滞在者に向けた緊急人道支援事業を始めます。具体的には、食料物資の支援や、一時的に住む場所を確保する緊急居住支援、日本語教育、利用できる支援サービスへの橋渡しなどです。また、アウトリーチの手段として、世界で普及しているメッセージングアプリの「WhatsApp」を活用。これにより、支援情報が瞬く間に拡散し、短期間で多くの支援を必要とする外国人にリーチすることができました。

取材時点(2025年1月28日)で、相談登録者は約170名。フードパントリーやWhatsAppを通して相談者のニーズを聞き取り、それぞれが必要とする支援を届けています。イスラム教徒にはハラル食品を、フルーツが必要な人にはパイナップルやミカンなどの缶詰を、自分で料理をしたい人には小麦粉や豆、オイルなどの食材を提供するなど、個々の希望に寄り添った支援を実施。食料以外にも、子どもがいる家庭には成長に合わせた衣服を、女性には生理用品を配るなど、生活状況に応じたきめ細かなサポートを行っています。

吉野「こちらが良かれと思って送った食料でも、相手にとってはそうではないことが何度かありました。そんなときは、『何か別のものが必要だったのかな?』と考えるようにしています。可能な限りどんなものが必要かを聞き取ることで、本当に必要なものを知ることができ、相手も『受け止めてもらえた』と安心してもらえます。その安心感が、信頼につながりますから」

イスラム教徒が安心して食べられる「ハラル食品」の提供を含む食料物資支援を実施
イスラム教徒が安心して食べられる「ハラル食品」の提供を含む食料物資支援を実施

日本語を学びたいというニーズも高く、希望者には週1回、1人30分のオンライン日本語教室を実施。授業を担当するメルテンス甲斐さんは、単なる言語学習にとどまらず、コミュニケーションの場としての役割も大切にしています。

メルテンス甲斐さん「家族友人と遠く離れ、コミュニティから隔絶された生活を送る受講者にとって、授業は人とつながることのできる数少ない機会です。雑談を交えたり、生活相談を受けたりすることで、少しでも孤立感の解消につながればと思っています」

一方、「相談を待つだけでなく、こちらから能動的にアプローチすることも大切」と話すのは、食料物資支援を担当する冨山里桜さん。 

冨山里桜さん「相談者の中には、特にムスリマ(イスラム教徒の女性)のように、宗教的な背景や文化的な要因、周囲に頼れる人が少ないことなどから、支援を必要としていても声をあげられないケースもあります。実際、WhatsAppで連絡がつかないので訪問してみると、電気もガスも止まっていたという母子家庭のケースがありました。そうした方たちも取り残さないよう、こちらからこまめにコンタクトを取ることでフォローし、支援につなげるようにしています」

社会参加を通じて未来を切り開く支援のかたち

日本では難民認定率が低く、多くの難民認定申請者が中長期の展望を持ちにくい状況にあります。そんな中、「今回の事業では、まずは緊急支援として、難民認定申請者が人間として最低限の尊厳を保てることを第一の目標にしています」と吉野さん。その上で、専門家と連携し、相談者自身も交えて中長期的なプランを話し合い、日本で安定した生活を送るための法的支援も行っているそうです。また、在留資格がない外国人の子どもでも学校に通える制度を活用し、自治体と交渉して就学機会を確保するなど、今できる支援を重ねながら希望をつなげています。

こうした相談者のニーズを満たす支援だけでなく、相談者の主体性を促すはたらきかけも大切にしています。例えば、ガーナ人の青年に「公園で寝て過ごしているなら、うちへ来たら?」と事務所に誘ったところ、メンバーと一緒に食料物資支援の整理や荷物運びをするように。最初はほとんど口をきかなかったのが、今やアクセプト・インターナショナルの頼もしいメンバーになっているのだそうです。

永井「ボランティアでも小さいことでも、社会に参加することに大きな意義があります。困難な状況にある彼らだからこそ、できることがたくさんあるはず。その可能性に光を当て、引き出していくことも私たちの役割です。彼らが参加できる場をたくさんつくって、新たなステップにつながる機会を少しでも多く提供していきたいですね」


ホームレス状態にある人々への食料支援の様子
ホームレス状態にある人々への食料支援の様子

休眠預金活用事業をきっかけに生まれた3団体の連携

アクセプト・インターナショナルがこの事業を通じて得られた大きな成果の一つが、団体同士の連携です。同時期に休眠預金活用事業の実行団体として採択されたのを機に、Mother’s Tree Japan、つくろい東京ファンドの2団体とつながり、思いがけない強力な支援ネットワークが生まれました。例えば、路上生活をしていたムスリマの妊婦のケースでは、Mother’s Tree Japanが出産可能な病院を探し、イスラム教の文化に配慮して女医を手配。つくろい東京ファンドが居所を確保し、アクセプト・インターナショナルがハラル食品の提供を実施しました。各団体の専門性を活かした支援が迅速に展開され、適切なサポートを提供することができたのです。

吉野「自分たちが不得意なところは、得意な団体にお任せする大切さを改めて学びました。今も3団体で情報を共有しながら、連携を深めています」

「後進の育成」も今回の事業を通じて得られた大きな成果です。日本では難民支援の経験者が少ない中、今回の事業を通して若手メンバーが多様なケースを経験し、実践を積む機会を得ました。

吉野「若手メンバーが現場での経験を重ねることで、知識やノウハウをしっかり継承できました。今では、自ら判断し行動できるまでに成長し、今後のさらなる支援につながると期待しています」

アクセプト・インターナショナルは事業終了後も、当事者が中長期の展望を持てるよう、可能な限りバックアップを継続。「平和の担い手を増やす」活動として、テロ・紛争に関わる若者を保護する活動に加え、在日ムスリムのネットワーク強化など、国内外の活動に引き続き力を入れていきます。

永井「私は、テロリストも非行少年も、在日ムスリムも難民もみんな、社会の担い手、平和の担い手になれると心から思っています。これからも彼らに伴走し、その可能性を探り続けていくとともに、まだアプローチできていない『解決の担い手がいない難しい問題』にもチャレンジしていきます」


取材に対応してくださった、アクセプト・インターナショナルのメンバー。左から冨山さん、吉野さん、永井さん、メルテンスさん
取材に対応してくださった、アクセプト・インターナショナルのメンバー。左から冨山さん、吉野さん、永井さん、メルテンスさん

■資金分配団体POからのメッセージ
アクセプト・インターナショナルの強みは、「難しい問題こそ自分たちがやる」という高いプロフェッショナル意識と、海外で培った独自のノウハウにあると考えています。今回その強みを活かし、既存の支援団体では対応が難しかった在留資格が不安定な在日外国人への支援が可能になりました。また、私たちが資金分配団体を務めるにあたり重視していたのが、団体同士のつながりです。実際に実行団体間の連携が生まれ、情報共有も進んだことは、大きな成果の一つです。今後さらに、さまざまな強みを持つ団体同士の連携が進み、支援の輪が広がることを願っています。

(NPO法人 青少年自立援助センター YSC Global School/浅倉みさきさん)

【事業基礎情報】

実行団体
特定非営利活動法人 Accept International
事業名

難民認定申請者及び非正規滞在者への緊急人道支援事業(2023年度緊急支援枠)

活動対象地域
東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県
資金分配団体
特定非営利活動法人 青少年自立援助センター

採択助成事業

急増する「海外にルーツを持つ子育て家庭・若者・困窮者」緊急支援事業