資金分配団体と指定活用団体であるJANPIAが、よりよい休眠預金活用事業を作り上げていくために、共に取り組む「業務改善PT(プロジェクトチーム)」。2022年度業務改善PTの「資金管理等検討チーム」の活動を紹介します。
2022年度業務改善PT 「資金管理等検討チーム」で目指すこと
2021年度業務改善PTの「資金管理関連検討チームでの議論をベースに、制度見直しに向けた議論を実施します。本年のメンバーは、9団体10名+オブザーバー1団体1名となりました。
活動報告
2022年7月11日 第1回キックオフミーティング
アジェンダ ・2021年度業務改善PT 資金管理関連検討チームでの議論の振り返り・「5年後の制度見直し」におけるポイント ・今後の検討方法等意見交換 など |
[議論概要]
- 2021年度の振り返りと、次年度の課題として調整中の事案(自己資金の確保 等)について確認を行いました。
- 事務局と19年度通常枠の資金分配団体が「制度の5年後見直しに関する意見交換」を実施中であることを報告。意見交換の内容も踏まえ、課題を整理して議論を進めたいという事務局の提案についてメンバーで意見交換し、進め方の同意を得ました。
2022年8月4日 第2回
アジェンダ ・自己資金について |
[議論概要]
資金分配団体と実行団体とでは役割・立場が違うため、自己資金の在り方はそれぞれに検討すべきであることを前提に議論を進めました。
以下は、議論の過程で抽出された、資金分配団体及び実行団体に共通する主な課題感です。
- 資金分配団体と実行団体それぞれの役割を明確化する必要がある
- 団体の置かれたフェーズや活動分野により状況が異なるため、一律で自己資金の割合は決められるものではない
- 団体の置かれたフェーズや活動分野により状況が異なるため、休眠預金活用事業でどのような団体を支援したいか特定することも大事
- 休眠預金活用事業の中で自己資金を調達することと、団体の資金調達力向上(自立)や事業の継続性は必ずしも一致しない
2022年9月22日 第3回
アジェンダ ・第2回検討会の振り返り(自己資金確保のあり方)・資金分配団体に対する自己資金に関するアンケート調査結果について ・各経費に関する議論 ➢管理的経費について ➢PO関連経費について ➢評価関連経費について |
[議論概要]
- ①休眠預金等活用制度を利用する団体の自立、②ソーシャルセクター全体に民間資金を呼び込みやすくするための環境整備といった観点から取り組みが求められていた自己資金の確保について、通常枠を実施する44資金分配団体を対象に行ったアンケート結果について報告を行いました。
- 各経費の考え方について議論を行った他、制度関連4チーム(事業規模・3層構造のメリデメ・POの役割)においてPOの役割に関する議論が深まりつつあるため、当該チームと合同でPO関連経費にかかる検討会を開催することとしました。
2022年11月16日 第4回(その他制度関連(POの役割等)検討チームと合同開催)
「その他制度関連(POの役割等)検討チーム」のページをご参照ください
資金分配団体と指定活用団体であるJANPIAが、よりよい休眠預金活用事業を作り上げていくために、共に取り組む「業務改善PT(プロジェクトチーム)」。2022年度業務改善PTの「出資・貸付検討チーム」の活動を紹介します。
2022年度業務改善PT 出資・貸付検討チームの目指すこと
2022年度休眠預金等活用基本計画(内閣府)に示されている通り、本年度において「休眠預金を活用した 貸付けや出資の在り方、手法等について検討を進め、結論を得る。」とされています。
本テーマについて、実務関係者で議論するのが「出資・貸付検討チーム」です。本年度は7団体7名、オブザーバー2団体2名となりました。
活動報告
2022年7月12日 第1回キックオフミーティング
アジェンダ ・自己紹介等 ・出資・貸付に関する検討の方向感 ・今後の進め方の意見交換 |
[議論概要]
- 参加している資金分配団体から提案された全体的な進め方やインプット等を行っていくことで異論なしと確認しました。
- 出資・貸付のビジョンやニーズ、仕組み等を議論したい意見があり、次回、ブレスト的に意見を出し合うこととしました。
2022年8月2、3日 第2回
アジェンダ ・[8月2日]出資に関するブレスト・[8月3日]貸付に関するブレスト |
[議論概要]
- 出資・貸付に関し、それぞれ「現場のニーズ」「意義(ビジョン)」いついて、ブレストを実施しました

2022年10月27日 第3回
アジェンダ ・審議会等での「出資・貸付の議論」の検討状況の共有・意見交換 |
[議論概要]
- 意見交換では以下のような発言がありました。
ー休眠預金の出資については、より社会的インパクトを重視する等の配慮が必要。
ーモデルケースを作ることや法改正などの状況を見据えつつ、出資の実現に向けた実務面での取り組みのロードマップが必要
ー現行の助成事業において出資のモデルケースとなりうる事業もあるとの意見があり、次回、その内容について共有の場を設けることとした
2022年11月17日 第4回
アジェンダ ・現在の議員連盟等の出資・貸付の議論の検討状況の共有 ・事例紹介・共有 ・意見交換 |
[議論概要]
- 意見交換では、以下のような発言がありました。
ー出資に関する取り組みを検討するワーキングチームなどを作ってはどうか
ー出資を本格的に実施する前に、モデル事業的なものを運用し、効果検証を行うなども考えられるのではないか 等
資金分配団体と指定活用団体であるJANPIAが、よりよい休眠預金活用事業を作り上げていくために、共に取り組む「業務改善PT(プロジェクトチーム)」。2022年度業務改善PTの「緊急助成の在り方検討チーム」の活動を紹介します。
2022年度業務改善PT「緊急助成の在り方検討チーム」について
主には、災害支援領域にとどまらない、地域課題解決等に向き合う皆様と、休眠預金活用事業における緊急助成の在り方について議論をし、今後の当該事業領域での事業プログラムのありかたなどを模索・検討し、事業モデルの想定などをまとめるチームです。本年度のメンバーは、4団体5名(+オブザーバー1団体1名)となりました。
活動報告
2022年7月8日 第1回 キックオフミーティング
アジェンダ ・チームの目的の確認・チームメンバー自己紹介 ・今後の進め方 ・フリーディスカッション |
[議論概要]
- 今後の進め方について、以下を確認しました。
ー「休眠預金活用事業で何ができるのか?」を含め、「緊急助成の在り方」について議論していく
ー「緊急支援(災害支援等)事業領域に関するラウンドテーブル」を開催。議論を深める場として活用する。
2022年8月19日 第2回
アジェンダ
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[議論概要]
- 9月を目途にテーマ別ラウンドテーブルを計画中。壇者やファシリテーター、ラウンドテーブルの中身について本PTメンバーの意見を伺いました。
- 本PTの議題については、優先的に話したいことをメンバーより提案いただき、次回以降進めていくこととしました。
2022年9月28日 第3回
アジェンダ
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[議論概要]
議題①
- 災害に関するラウンドテーブルの企画案について、事務局から出席者に共有した。
- 「緊急助成の在り方検討チーム」を代表して、1名が登壇することとなった。
議題②
- チームで共通の課題認識であった、「資金分配団体における、事業の緊急性を踏まえた円滑な事業開始」についての意見交換を行いました。
- 発災後、迅速に事業を開始するため、タイムロスを極力減らす必要がある中、発災を事前に想定できない中での計画をどう立てるか、実行団体をどう掘り起こすか、実行団体のがバナンス・コンプライアンス体制の整備をどうするのかといった、課題が挙げられました。
等
2023年1月10日 第4回
アジェンダ
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[議論概要]
- 意見交換で、以下のような発言がありました。
ー発災後に資金分配団体の公募から始めると、実行団体の採択までに約200日を要する。主に、契約作業とガバナンス・コンプライアンス整備にかかる作業が長いので、この部分を短縮できるとよい。例えば、発災前に資金分配団体と実行団体のガバナンス・コンプライアンス体制に関する一次試験的なことを実施しておけば、採択に要する期間が短くなるのではないか。
ー南海トラフ地震や首都直下型地震など大規模の災害では、通常のスキームでは対応しきれないのではないか。現在あるコロナ枠を緊急支援に使えるように発展させられないか。 等
イベント開催
2022年10月26日 災害ラウンドテーブル
2022年10月26日に災害ラウンドテーブル『誰ひとり取り残さないために災害時に向けて平時からできること ~ネットワーキングの重要性を考える~』を開催しました。詳しくはリンク先記事をご覧ください。
資金分配団体と指定活用団体であるJANPIAが、よりよい休眠預金活用事業を作り上げていくために、共に取り組む「業務改善PT(プロジェクトチーム)」。2022年度業務改善PTの「その他制度関連(POの役割等)検討チーム」の活動を紹介します。
2022年度業務改善PT 「その他制度関連(POの役割等)検討チーム」で目指すこと
事業規模・POの役割・3層構造 等、現場目線でのこれまでの状況を踏まえての制度全体を俯瞰した議論を行います。他のチームが対象としてない検討領域なども幅広くカバーしていきます。
本年度のメンバーは、9団体10名(+オブザーバー1団体1名)となりました。
活動報告
2022年7月20日 第1回キックオフミーティング
アジェンダ
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[議論概要]
この制度運営で中核的な役割を担う「 PO の役割」、そして「資金分配団体の役割」について、現在の事業運営の現状から、まず議論し整理をすることとなりました。
段階的に、以下のような検討テーマへの優先順にをつけながら議論を進めて、方向性を整理していくこととしました。
[検討テーマ優先順]
- 制度運営の建付けに関すること
(1)POの役割の整理
(2)PO関連経費の検証
(3)三層構造の効果検証 - 担い手のすそ野拡大、支援を広げていく
(4)同一事業の連続申請の可否
(5)休眠預金活用の地域偏在の解消
(6)制度全般について
2022年8月5日 第2回
アジェンダ
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[議論概要]
- メンバーの共通理解を図るため、JANPIAが過去公開した資料や、「資金分配団体 代表者意見交換会」でいただいたご意見などをメンバーに共有し、これまでのPOの役割に関する議論の振り返りを行いました。
- 意見交換では、以下のような発言がありました。
★実行団体への伴走支援という視点
ー「資金分配団体としての役割」「PO個人としての役割」という2つの側面から整理をしていく必要がある
ー組織としての知識ノウハウの蓄積、標準化にあたっては多様性の視点が欠かせない 等
★PO業務の統一感 業務の標準化
ー POの事務的な業務の標準化の視点から検討する
ーPOの専門性向上、支援の手法等は、それぞれの担当する事業の特性や、当該POのバックグラウンド等も踏まえて多様性に留意するべき 等
2022年9月8日 第3回
アジェンダ
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[議論概要]
- 資金分配団体の役割、POの役割全般について、事務的なスキル・ノウハウといったハード面の標準化、ソフト面(各団体の多様性をふまえての組織対応力やPO個人の人間力的な要素)の整理を行いました。
2022年10月12日 第4回
アジェンダ
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[議論概要]
- 前回の会議で整理したPOの役割をもとに、事務局で整理した「休眠預金活用事業における資金分配団体におけるプログラムオフィサーの役割」をたたき台として、参加者からの情報提供もいただきながら改めて内容について議論を行いました。
- 次回、合同会議にてこのチームから提案する検討内容について確認を行いました。
2022年11月16日 第4回(資金管理等検討チームと合同開催)
アジェンダ
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[議論概要]
主な議論内容は以下の通りです。議題(1)
- エキスパートが事務作業を行い、POは状況を把握しながら伴奏支援、特にアウトカムの創出に注力している。資金分配団体を増やすためには、団体の持ち出しをいかに減らせるかも重要で、優秀な人材を集めるには今のPO人件費について十分かどうかについては、疑問を感じる。
- 地方の人材不足については、すそ野を広げていくために未経験の方を雇用することが必須であると感じる。その人材育成に関するコストを「POの役割」の中でどう明記していくか検討されるとよい。
- 案件形成が重要だと考えているが、そこから関わってもらうときに案件形成から公募に至るプロセスのコストをどうするかというところに課題感がある。
等
議論(2)
- 困ったときに専門家に相談できるという体制が、評価関連経費を活用して作れたのでありがたい。また専門家は大学の先生であることが多く、休眠預金の理解を深めていただく必要があることが多いが、事前・中間・事後評価で継続的にかかわっていただけるのでありがたい。
- 資金分配団体の評価関連経費5%は多いかと感じていたが、3年目にして使い切る見込みである。また、経費は人件費には当てず、評価アドバイザー謝金とアドボカシー活動に利用している。評価業務は外部に委託する専門的領域だと思う。POは基本的な評価の枠組みだけ理解し、専門家の方をコントロール(実践的なところは評価アドバイザーが実施)していった方が負荷の削減につながり、効率的な評価関連経費の使われ方になると考える。全団体において評価アドバイザーを使ってもらうようにしてはどうか。
等

『誰ひとり取り残さないために災害時に向けて平時からできること ~ネットワーキングの重要性を考える~[2022年10月26日開催]』の様子をお届けします。
活動概要
「課題・テーマ別ラウンドテーブル」の第2弾を開催。テーマは『災害対応』です。
大小様々な自然災害(地震、豪雨、豪雪等)が多発する昨今、休眠預金活用事業が対象とするあらゆる領域において平常時からの災害への備えが重要という認識が広まりつつあります。
休眠預金活用事業のプラットフォームにおいて、日頃からどのような連携ができるのか…。どのようなネットワーキングをすれば、万が一の発災の際に慌てることなく目の前の社会課題解決に取り組むことができるのか…。『誰ひとり取り残さないため』に平時からできることを、“災害”に特化した団体ではない皆様と考える場とし、意見交換を行い、発災時にすみやかに、そして円滑に機能するネットワークづくりについて皆さまと議論・共有しました。
※本イベントではご要望をいただき、「手話同時通訳」を試験的に実施しました。一部動画がうまく反映できていない部分もありますがご了承ください。
221026開催‗災害対応ラウンドテーブル‗当日のご意見紹介.pdf[外部リンク]
活動スナップ
登壇者のご紹介

【第1部】 平時のネットワーキングに取り組む皆様からお話を聞く!
第1部は災害支援の現場の実践を通じた学びや、既にネットワーク形成に取り組んでおられる皆様から事例のご紹介いただきました。
【第2部】 平時からの様々な関係者との連携について考える
第2部は、平時からのネットワーキングや活動の担い手の確保、様々な関係者の巻き込みや、企業との連携、休眠預金活用事業にかかわっている皆様で連携することでできることはないか?、等の視点で皆様と議論を深めました。
パブリックリソース財団は、休眠預金等活用事業の中ではまだ珍しい「組織基盤強化」に対して、資金分配団体として支援を行いました。
仮放免者をはじめとする困窮する外国人の方の医療支援を行っている『北関東医療相談会』。2021年度コロナ枠〈資金分配団体:公益財団法人 日本国際交流センター〉の実行団体として活動している。 今回は、北関東医療相談会の長澤正隆さんと大澤優真さんに、困窮する外国人を取り巻く医療の現状や休眠預金を活用した活動の内容などを、評論家でラジオパーソナリティーでもある荻上チキさんが伺いました。その様子をレポートします。
▼インタビューは、動画と記事でご覧いただけます▼
医療につながりにくい在留外国人の実態
荻上チキさん(以下、荻上):
北関東医療相談会から今日は長澤さんと大澤さんにお越しいただきました。よろしくお願いします。早速ですが、北関東医療相談会はどういった活動をなさっているのでしょうか。
長澤正隆さん(以下、長澤):外国人で在留資格のない人たちに、健康相談会を中心とした健康支援をする団体として立ち上げました。

荻上:活動のきっかけは、どういったものだったんでしょうか。
長澤:そうですね。1985年前後に外国人が日本に大変多く入ってきた時期あり、その頃から活動しています。その頃、あるフィリピン人男性が病院に入院されてがんの手術を受けるいうので、補償人になってほしいと相談があったんです。もちろんOKして、手術が終わってから3日経ってお見舞いにいったところいったところ、亡くなっていたんです。
適切な時期に健康診断が受けられていれば、こういうことはなかったんじゃないかと思い、何かいい方法はないのかということを考えました。そのよう中、「市民でつくる健康診断会というのがあるよ」という話を聞いて、いろいろと教えてもらいながら、健康診断会を続けてきました。
荻上:元々在留資格のない方には医療提供の機会というのは乏しかったんでしょうか?
長澤:「在留資格がない」と働くことができません。そして、社会資源を活用した支援を全く受けられないということになりますから、健康保険も何もないんですね。だからそういった意味で大変です。
コロナで増えた在留資格のない外国人、そして困窮する支え手
荻上:大澤さんにお伺いします。これまでの様々な活動と、コロナ禍以降の活動で何か変わったと感じるところはありますでしょうか。
大澤優真さん(以下、大澤):そうですね。私たちが支援してる人は、主に「仮放免」という状態の人たちが多いんですけれども。まず、コロナをきっかけにして仮放免者の方が増えたんです。というのも、入管施設に収容していると、施設が密になって駄目だということで、仮放免になるということがありました。2021年末現在で約6000人の方が仮放免ということになっています。
しかし、これまで仮放免の方を支えてきた人たちも、このコロナで困窮状態に陥ってしまった。日本人も外国人もみな困窮してしまい、コミュニティで仮放免者を支えられなくなったという現状があります。そのような背景から、仮放免者はより深刻に困窮してるっていう現状があります。

荻上:これまで入管施設が仮放免を渋ってきたこと自体にも、もちろん課題がありますが、他方で一気に収容者の方が仮放免となるとコミュニティを支える力というのがなかなか厳しいということですね。先ほどもお話がありましたけれども、仮放免の方は就労が禁じられているので、医療もそうですし、貧困の中での課題が多いですね。
大澤:そうですね。就労が認められていなくて雇われるのも駄目ですし、何か自営業的に働いてお金もらうってこともできません。その一方で、国は健康保険を出さないと言っています。生活保護も出ません。「働いてはいけない」し「何の手当もしません」と言われていて、文字通り生きていけない状況です。
荻上:保険適用されないということは自費診療ということに一般的にはなるんですね。

大澤:100%自己負担になります。保険証が使えれば3割負担ですけども、それが100%なので、風邪だけで病院に行っても2万円、3万円が一気に飛んでしまいます。病院によっては、通常の2倍、3倍を請求されることもあります。2倍、3倍というのは、100%の2倍3倍になるので、本当に大変な状況です。
荻上:なるほど。そうすると相談会に来られて、例えばご病気が発覚されたとして、そこから治療に繋げるという中でも、色々な課題がありそうですが、そこはいかがでしょうか?
大澤:そうですね。まずお金が圧倒的に足りないですね。先ほどお話ししたように風邪でも2万円3万円かかってしまうので、仮放免の方たちは小さい病気では病院に行けないんです。我慢して、我慢して、重症化してしまって、最後に私たちの目の前に来るときには、本当に大きな病気になってしまっている。そして、いざ病院に行くと「がんの手術が必要だ」ということになっていて、50万円、100万円、300万円必要だということになる。そして病院によっては、その2倍や3倍になってしまうので、600万円とか900万円とかかってしまう現状があります。
荻上:それを普段でしたら、コミュニティが一生懸命支えていたという状況が続いていたわけですね。
大澤:コロナ前はなんとか支えることができていたかもしれないのですが、コロナ以降、本当に圧倒的に深刻な困窮状態になってます。
休眠預金の活用には、現状を多くの人に知らせるためという意味も
荻上:そうしたコロナ禍の中で、コロナ対応支援枠で休眠預金活用事業に参画されています。まずはどうしてこの休眠預金を活用しようと思われたのでしょうか。また、どんな活動に生かされているのでしょうか。
長澤:申請した背景は、二つあります。一つは、他の助成金と比べて助成額が大きいことです。
もう一つは、新しい枠組みの助成だからこそ、こういう状態にある人たちがいることを知ってほしい、情報を広めたいと考えました。この二つの意味を持って申請しました。
荻上:なるほど。申請そのものを「コミュニケーション手段」として考えているということですね。
長澤:そうですね。世の中には、色々な団体があるのですが、やはり「こういった人たちがいる」ということを知ってもらい、「どうしてこんなに大変なんだ」ということをよく理解してもらって、社会を良くしていかなければいけません。そのためには、やはり助成金を出してるところに知ってもらうのが一番だと考えています。
荻上:「外国から来られた方込みの日本社会が、既にあるんだ」ということを、伝えたかったということですね。休眠預金活用事業にコロナ対応支援枠に2020年度・2021年度で2回採択されて、どのように活用されているのですか。
長澤:基本的には、医療支援ですね。健康診断会を開催し、そこから出てきた病気の方たちを病院に連れて行き、そこでの支払いに活用しています。1回目の採択時には、家賃支援ですとか水道光熱費などの生活そのものを支えることにも使いました。平たく言えば、「生活保護」です。
実際上、私たちがやってる活動を全部見直したら、「これはもしかして生活保護」だなと感じました。しかし、家賃の支払いだと、今の状態では1ヶ月か2ヶ月しか支援できない。生活保護であれは、1年間やれますけれども。それを活動でやり始めたら、もうとても医療支援はできません。1財団さんにお願いする枠をはるかに超える金額になるので、それは難しいと思います。

荻上:一人一人の生活そのもの、コミュニティそのものを支えるだけの財源が必要となってくるわけですね。1団体でできることの限界というのも、併せて見てこられたわけですね。
長澤:当初は健康診断会やって、病院連れて行くことからスタートしました。その次は病院でどうやって病気を治すかということを考えました。健康診断会で病気と思われる人には病院を教えて行ってもらうわけですが、支払い能力がないわけです。しかし病院の方は、応召義務(診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合、正当な事由がなければ拒んではいけない)があるので、来た人を「お金がない」という理由では断れないわけです。
そのような中、どんどんそのような方を連れて行くと病院の方が嫌がってしまい、先ほど大澤が申したように2倍、3倍というお金を徴収するようになってしまう。ですから、最初から私たちが介入し、100%のうちに「私たちが払うから」と説明して繋いでいくほうが全体がうまくいくわけです。

荻上:仮放免の方は移動制限があるので、多くの方が近くの病院に行きたいと考えると思います。しかし、近くの病院が排除的な状況ですと、医療そのものから断たれてしまうという状況になってしまいます。そこでも、現実を知ってもらうというコミュニケーションが発生するんですね。
大澤:そもそも存在を知られていないですね、そこが大前提であるかなと思います。例えば仮放免であっても使える制度っていうのは、若干ですけどあるんです。例えば入院助産っていう出産のお金です。これオーバーステイの人に使えるのですけども、「使えますよ」って病院に行っても「いや、うちでは」とか、「うちの自治体でやらない」と。昔の国の文書を見ると使えるって書いてあるのですけど、なかなか存在を知られていないがゆえに理解も全然進んでない。いろんな問題ありますけど、まずは知ってもらわないといけないなと思いますね。
荻上:知っていただいた上で病院側が変わったというケースもあるんですか。
長澤:「ずいぶん変わってきているな」という実感はありますね。はじめ、仮放免というのか、在留資格のないような人が病院に行くと、断られるんです。そのような中、(在留資格のない人でも使える制度などの)いろんな資料をもって病院に説明に行き、院長先生が資料を読んでくださり、その後、「仮放免許可書を持ってきた人は無料で診るから、送ってくださっていいよ」とおっしゃっていただいた例がありました。皆さん、知らないんです。でも知ると変わるんです。
私が活動を始めた頃は行政もそうで、県の担当者に話しても「仮放免って何ですかって。教えてください。」というところからスタートしました。そこから「無料・低額診療制度」を使えないのはおかしいということで、健康課の担当の方に連絡をして話をしてもらい、制度が使えるようになって、その翌年から一気にいろんな病院で制度利用が可能となりました。やっぱり、地域行政との関係の中においても、働きかけや知ってもらうためのアクションは必要です。
仮放免者の方々の状況を伝え、市民の力で支えたい
荻上:最後に今後の活動でどういった点力を入れていきたいのかなどをお聞かせください。
大澤:はい。まず「目の前で生きていけないほどに困窮している仮放免の方々の生活を守る」というとこが大前提ですね。そのためにどうするかっていうとこなんですけども。行政とか病院とか、いろんな人とコミュニケーションを取りつつ、今私が一番したいのは多くの人に仮放免者の存在や状況を知ってほしいっていうことです。
先日、川口駅近くで「難民フェス」というものをやったんです。当日はあいにくの雨で寒かったんですが、そこには1000人を超えるぐらいの人が参加したと聞いてます。関心のある人はいるんです。ですから、そういった人に、この仮放免者の状況をしっかり伝えて、いろいろと動いていく基盤を作りたいなと思ってます。

荻上:来年以降の活動や展望について、長澤さんいかがですか。
長澤:そうですね。広く活動を広げていって。あとは、病気になった人を、私たちの市民の手で治せるかどうかっていうのは定かではないですが、チャレンジの一つと捉えてやっていこうと考えています。去年も色々な記者会見をやらせてもらったり、報告をさせてもらったりして、ずいぶん皆さんから寄付をいただいていて、ほとんどの寄付を治療費に使うことができ、とても喜んでいます。今後も、同じような形態でやれたらいいなと考えています。加えて、私たちの側から別な形態を考えて、例えば、海外へのアプローチを含めて寄付の範囲を広げていきたいと考えています。 荻上:今回は休眠預金活用事業 がどういうものか知りたいという方や、休眠預金が適切に活用されているかを知りたいという方も多いと思いますが、そうした関心からであったとしても、まずはこの仮放免者や様々な背景をお持ちの方が、日本でどのように暮らされているかをぜひ知ってほしいですね。
長澤:そうですね。まさにその通りで、正直、休眠預金を活用したコロナ対応支援枠での活動がなかったら、多分、私たちは行き詰まってたんじゃないかなと思うんですね。これまで自分たちで長年お金を集めて活動してきましたが、パワーが違います。そして、休眠預金活用事業は、落としどころをきちっとつければ、意外と活用については自由度が高いっていうことがよくわかりました。
今、仮放免者は約6000人弱ぐらいいます。私たちは、どこもやらないのであれば、自分たち市民の力でなんとか支えたいと考えています。しかし仮に、6000人に生活保護150万円ぐらいの支援をするとなると、とんでもない金額がかかります。それは本来、行政がやる仕事です。生活保護を市民社会で実現できないのであれば、どこかで支えなければいけないと、そういう思いでいます。
荻上:これまである種の共助の仕組みを通じて支援してきたわけですが、その限界が見えてきました。ならば公助の枠組みを問うという、そういったコミュニケーションも、ぜひこのインタビューを見る方にも考えてほしいですね。
本日は、ありがとうございました。ありがとうございました。

【事業基礎情報 Ⅰ】
実行団体 | 特定非営利活動法人 北関東医療相談会 |
事業名 | 外国人が生きていくための医療相談、新型コロナウイルス対策事業 |
活動対象地域 | 関東(群馬県、栃木県、茨城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、川口市) |
資金分配団体 | 公益財団法人 日本国際交流センター |
採択助成事業 | 2021年度新型コロナウイルス対応支援助成 |
【事業基礎情報 Ⅱ】
実行団体 | 特定非営利活動法人 北関東医療相談会 |
事業名 | 医療からほど遠い在留外国人の側に立つ |
活動対象地域 | 北関東 |
資金分配団体 | 特定非営利活動法人 ジャパン・プラットフォーム |
採択助成事業 | 2020年度新型コロナウイルス対応緊急支援助成【事業完了】 |
■長澤正隆さん プロフィール■
酪農学園大学卒業後、食品会社に就職。2006年にカトリックさいたま教区終身助祭となる。北関東医療相談会の前身となる「外国人の為の医療相談会」を1993年に群馬県で発足。以来、生活に困窮する人の健康診断の費用や治療費、食料や家賃などの支援に取り組む。
■大澤優真さん プロフィール■
法政大学大学院人間社会研究科博士後期課程修了。博士(人間福祉)。大学非常勤講師。2018年より困窮外国人支援団体「北関東医療相談会」事務局スタッフとして、仮放免者など困窮する外国人の支援を行う。
■荻上チキさん プロフィール■
メディア論をはじめ、政治経済やサブカルチャーまで幅広い分野で活躍する評論家。自ら執筆もこなす編集者として、またラジオパーソナリティーとしても人気を集める。その傍ら、NPO法人ストップいじめ!ナビの代表理事を務め、子どもの生命や人権を守るべく、「いじめ」関連の問題解決に向けて、ウェブサイトなどを活用した情報発信や啓蒙活動を行なっている。
社会調査支援機構チキラボ 代表
今回の活動スナップは、JANPIA主催「SDGs達成に貢献する ボランティア・プロボノセミナー[1月25日開催]」の様子をお届けします。
活動概要
JANPIAでは、休眠預金を活用して社会課題を解決する団体と企業との連携を推進しています。
その一環として、今回 経団連後援のもと、企業の方を対象としたボランティア・プロボノセミナーを企画しました。
本セミナーでは、ボランティア・プロボノに先進的に取り組む企業3社と、ボランティア・プロボノを推進するために必要な体制整備や導入のポイント、活動のメリット(SDGs達成への貢献、社員の社会課題の感度の醸成や仕事のモチベーションアップなど)を中心にパネルディスカッションを実施しました。
本セミナーは、69社・29団体、合計157名の皆さまにお申込みいただきました。
ご参加・ご視聴いただいた皆さま、ありがとうございました。
活動スナップ
開会|開会の挨拶・セミナーの趣旨説明
開会
開会のご挨拶・本セミナーの趣旨説明等
|鈴木 均(JANPIA シニア・プロジェクト・コーディネーター)
動画〈YouTube〉|開会|開会のご挨拶・本セミナーの趣旨説明 [外部リンク]
資料〈PDF〉|開会のご挨拶・本セミナーの趣旨説明等 [外部リンク]
経団連のご挨拶
経団連のご挨拶|長谷川 知子(経団連常務理事)
動画〈YouTube〉|経団連のご挨拶[外部リンク]
資料〈PDF〉|経団連のご挨拶 [外部リンク]
事例紹介

- 社会貢献活動におけるプロボノの位置づけ
金田 晃一氏(NTTデータ サステナビリティ経営推進部 シニア・スペシャリスト)[左下] - PwCにおけるSocial Impact活動紹介
辻 信行氏 (PwCあらた パートナー)[左上] - SMBC日興証券「プロボノワーク」について
古路 祐子氏 (SMBC日興証券 経営企画部 サステナビリティ推進室)[中央上] - NECプロボノイニシアティブのご紹介
池田 俊一氏 (NEC 経営企画部門 コーポレートコミュニケーション部 プロフェッショナル)[右上] - 企業におけるプロボノ導入のポイント
嵯峨 生馬氏 (サービスグラント 代表理事)[右下]
動画〈YouTube〉|事例紹介 [外部リンク]
資料〈PDF〉|1.社会貢献活動におけるプロボノの位置づけ [外部リンク]
資料〈PDF〉|2.PwCにおけるSocial Impact活動紹介 [外部リンク]
資料〈PDF〉|3.SMBC日興証券「プロボノワーク」について [外部リンク]
資料〈PDF〉|4.NECプロボノイニシアティブのご紹介 [外部リンク]
資料〈PDF〉|5.企業におけるプロボノ導入のポイント [外部リンク]
パネルディスカッション

【登壇者】
辻 信行氏 (PwCあらた パートナー)[下段、左から2番目]
古路 祐子氏 (SMBC日興証券 経営企画部 サステナビリティ推進室)[下段、中央]
池田 俊一氏 (NEC 経営企画部門 コーポレートコミュニケーション部 プロフェッショナル)[下段、右から2番目]
[モデレーター]
金田 晃一氏 (NTTデータ サステナビリティ経営推進部 シニア・スペシャリスト)[下段、左]
[コメンテーター]
嵯峨 生馬氏 (サービスグラント 代表理事)[下段、右]
動画〈YouTube〉|パネルディスカッション [外部リンク]
閉会のご挨拶
閉会のご挨拶|二宮 雅也 (JANPIA 理事長)
動画〈YouTube〉|閉会のご挨拶 [外部リンク]
当日スナップ写真
登壇者の皆さん
セミナー終了後に、登壇者の皆さんで集合写真を撮影しました。
左から、金田さん・辻さん・古路さん・池田さん・嵯峨さんです。
今回は大変お世話になりました。今後とも引き続き、連携のほどよろしくお願いいたします。
司会者/配信スタッフの皆さん

[司会]南 恭子 さん [左]
[配信スタッフ]ZAN FILMSの皆さん [右]
今回のセミナーは、ご登壇頂いた皆さまはもとより、司会者の南 恭子さん、配信スタッフのZAN FILMSの皆さん、会場となった日比谷国際ビル コンファレンス スクエアの皆さんとの連携で実現しました。この場を借りてお礼申し上げます。
2023年1月25日に開催しました「SDGs達成に貢献する ボランティア・プロボノセミナー」の動画をご紹介します。
本セミナーでは、ボランティア・プロボノに先進的に取りまれている3社の事例紹介とパネルディスカッションを行いました。
<プログラム>
00:00:00 開会のご挨拶・本セミナーの趣旨説明等:鈴木 均 (JANPIA シニア・プロジェクト・コーディネーター)
00:15:52 経団連のご挨拶:長谷川 知子 (経団連 常務理事)
00:21:50 事例紹介
00:55:52 パネルディスカッション
01:51:22 閉会のご挨拶:二宮 雅也 (JANPIA 理事長)
公益財団法人パブリックリソース財団が2022年11月29日に開催した、「休眠預金活用事業特別シンポジウム」の動画です。
2019年度より、全国に先駆けて、新しく制度化された日常生活支援住居施設の制度を活用し取り組んできた、休眠預金活用事業「支援付き住宅と支援人材育成」の現場から、実践を通じてみえてきた現状の同制度の問題点と改善提案を示します。 さらに “人権としての住宅”という視点から、社会保障としての住宅制度の在り方を展望し、日本における「社会住宅」というインフラ整備の必要性を訴えます。
◎基調講演 “生活困窮者支援をめぐる制度の変遷と展望”
【登壇者】
岡田太造氏(日本民間公益活動連携機構(JANPIA)専務理事、元厚生労働省 社会・援護局長)
◎パネルディスカッション “「人権としての住宅」を展望する~日住制度の改善と支援付き住宅の広がり~”
【モデレーター】
高橋紘士氏(全国日常生活支援住居施設協議会顧問、元立教大教授)
岸本幸子(公益財団法人パブリックリソース財団 代表理事・専務理事)
【パネリスト】
奥田知志氏(認定NPO法人抱樸 理事長)
瀧脇憲氏(NPO法人自立支援センターふるさとの会 代表理事)
立岡学氏(NPO法人ワンファミリー仙台 理事長)
- 特定非営利活動法人 自立支援センターふるさとの会 http://www.hurusatonokai.jp/
- 特定非営利活動法人 抱樸 https://www.houboku.net/
- 特定非営利活動法人 ワンファミリー仙台 https://www.onefamily-sendai.jp/
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